【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 生物工学会誌 Vol.89.7 2011(平成23年7月25日 公益社団法人 日本生物工学会 発行) 生物工学会誌 Vol.89.7 2011(別冊)第63回日本生物工学会大会プログラム(平成23年7月25日 公益社団法人 日本生物工学会 発行) 第63回日本生物工学会大会 講演要旨集(平成23年8月25日 公益社団法人 日本生物工学会 発行)
【文献】
古林万木夫,醤油の新しい機能性 醤油の低アレルゲン性と抗アレルギー活性,日本食生活学会誌,2007年,Vol.17,No.4,Page.26-31
【文献】
橋本忠明 他,醤油多糖類SPSの分子量分画と抗アレルギー活性について,日本生物工学会大会講演要旨集,2007年,Vol.59th,Page.172
【文献】
J Agric Food Chem. 2009 Nov 11;57(21):10471-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩類、又はアスコルビン酸の脂肪酸エステル類から選ばれるいずれか一種以上と、次の1)〜3)のいずれかに記載の大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類を混合することを特徴とする抗アレルギー剤の製造方法。
1)醤油にエタノールを添加して発生した沈殿物を水に溶解分散させ、分画分子量6,000の透析膜で透析脱塩して得られる非透析物に含まれる多糖類
2)醤油を脱塩した後、エタノールを添加して発生した沈殿物を酸性の水に分散させ、この酸可溶性物質を分画して得られる酸性画分に含まれる多糖類
3)次の(1)〜(3)によって得られる酸性画分に含まれる多糖類
(1)大豆種皮に酸性溶液を加えて加熱し、固液分離して得られる澄明な液を分画分子量6,000の透析膜で透析する
(2)上記(1)によって得られる透析内液にエタノールを添加して発生した沈殿物を乾燥する
(3)上記(2)によって得られる乾燥物を水に分散させた後、酸性に調整して発生した沈殿物をろ過し、澄明な液を得て、これを分画して得られる酸性画分に含まれる多糖類
【背景技術】
【0002】
現在、日本においては国民の20−30%が何らかのアレルギー症状を有していると考えられ、身近な花粉症やアトピー性皮膚炎の増加はその一例といえる。このアレルギー症状の増加は大きな社会的問題となっている。
一般的にアレルギーとは、免疫学上4つに分類されるアレルギー反応においてI型に分類される即時性のものを言う。I型アレルギーは、花粉・ダニ・卵・牛乳などに含まれるアレルゲンに接することで、ヒト等において免疫応答が誘導され、アレルギーの原因となる抗体(IgE)が産生されることにより起こる。産生されたIgEは、体中に運搬された後、肥満細胞や好塩基球上に発現しているFc受容体を介して結合する。そして、再び体内に取り込まれたアレルゲンが、このIgEと架橋することにより、肥満細胞あるいは好塩基球に蓄えられていたヒスタミンの遊離とロイコトリエンの産生が促されることで、即時性のアレルギー症状が惹起されることになる。
【0003】
これまでに、I型アレルギー症状の緩和・抑制・治療を目的として、様々な薬剤や食品
素材が開発されており、その一つとしてペクチンが挙げられている。ペクチンの抗アレルギー活性は、動物細胞を用いた試験(in vitro)や、マウス、ヒト等に摂取させた試験(in vivo)によって示唆、あるいは確認されている。
例えば、非特許文献1では、ペクチンが、抗アレルギー活性の指標として考えられるヒスタミンの遊離を抑制する効果を有することが動物細胞を用いた実験で確認されている。また、特許文献1では、花粉症患者の静脈血を用いた試験によって、ポリガラクツロン酸がスギ花粉抗原との特異的な抗原抗体反応を阻害し、ヒスタミンの遊離を抑制することが開示されている。
さらに、特許文献2では、ヒト(成人)に対して22.2g/日のリンゴ由来ペクチン(ペクチン等量として9.99g/日)を3週間摂取させた結果、血漿中のヒスタミン濃度が低下したことが確認されており、リンゴ由来ペクチンがアレルギー性疾病の治療又は予防に効果を有することが確認されている。
また、非特許文献2では、5%のペクチンを含む餌をラットに2週間投与したところ、血清中のIgEが低下し、リンパ球のIFN−γが有意に増加することが確認されている。この試験では、体重1kgあたりおよそ7.2g/日となるようにペクチンが投与されている(計算値)。
そして、特許文献3では、マウスに対して抗原を耳に塗布するとともに、エステル化度35%のペクチン100mg/kgに相当する量を水に懸濁して4週間にわたり計9回、ゾンデによって経口投与した結果、抗体であるIgEの産生が抑制されたことやTh1/Th2バランスが改善されたことが確認されている。
このようにペクチンは、アレルギーの発症の直接の原因である肥満細胞からのヒスタミンの遊離を抑制する作用や、アレルギー発症に関与する抗体の産生を抑制する免疫改善効果を有することが確認されている。
しかしながら、これらの文献に開示されているように、ペクチンが抗アレルギー効果を発揮するには、動物やヒトへの投与から2週間以上経過することを要しており、アレルギーが発症する2週間以上前から摂取しなければ効果が期待できないという問題があった。そのため、より短時間で効果が現れる物質の開発が要望されている。
【0004】
本発明者らは、特許文献4において、大豆から得られる酸もしくは食塩水可溶性の高分子物質をマウスに経口投与したところ、抗アレルギー活性を発揮したことを確認している。この製造方法において得られる高分子物質の主体は多糖類であろうと考えられたが、具体的な成分は特定されていなかった。
また醤油に含まれる高分子多糖類が抗アレルギー作用や免疫調節効果を有することが確認されており(特許文献5、6)、この物質がガラクツロン酸を含有する酸性多糖類であって、分子量50,000以下の画分において、強い抗アレルギー活性を示すことも開示されている(非特許文献3,4)。しかし、さらなる成分の特定はされておらず、大豆や醤油等の大豆の発酵処理物から得られる抗アレルギー活性を有する物質において、特に抗アレルギー活性に関与する成分を特定し、さらに強い抗アレルギー活性を有する物質を得ることが望まれていた。
【0005】
アスコルビン酸も、1日数gを成人に投与すると、血中ヒスタミン濃度を低下することや、好中球の走化性を促進すること等が報告されている(非特許文献5)。
アスコルビン酸は、充血に対して止血効果を有することが知られており、特許文献7において、充血の抑制を目的として、重炭酸ソーダおよびホウ酸を含む溶媒等を用いた抗アレルギー点眼薬に加えることが開示されている。また、特許文献8ではフィランサス・エンブリカ抽出物を有効成分とする抗アレルギー食品の味覚の改善のためにアスコルビン酸を添加することも開示されている。さらに、特許文献9では、ポリフェノールおよび/又はアスコルビン酸を含有するアセロラ抽出物が抗アレルギー作用を有すること等も開示されている。しかし、いずれの文献においても、アスコルビン酸自体の抗アレルギー効果については具体例に開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のペクチン関連の抗アレルギー剤と比べて、短期間で効果を発揮する活性の強い抗アレルギー剤の提供を課題とする。さらに、該抗アレルギー剤を含む機能性食品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類が抗アレルギー活性を有することを見出した。
そして、本発明者らは、該多糖類をアスコルビン酸、アスコルビン酸の塩類又は脂肪酸エステル類から選ばれるいずれか一種以上と併用することによって、抗アレルギー効果が相乗的に増強された新規な抗アレルギー剤や、該抗アレルギー剤を含む機能性食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(8)に示される抗アレルギー剤および該抗アレルギー剤を含む機能性食品等に関する。
(1)アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩類、又はアスコルビン酸の脂肪酸エステル類から選ばれるいずれか一種以上と、大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類を含むことを特徴とする抗アレルギー剤。
(2)大豆を原料に含有する物質が、大豆を含有する原料を麹菌により処理した発酵物である上記(1)に記載の抗アレルギー剤。
(3)大豆を含有する原料を麹菌により処理した発酵物が醤油である上記(2)に記載の抗アレルギー剤。
(4)大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類が次の1)〜3)のいずれかである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗アレルギー剤。
1)次のa〜cの特徴を有する多糖類
a.エタノールに不溶である
b.ガラクツロン酸を含有し、かつ、酸に可溶な酸性多糖類を主成分とする
c.含有している酸性多糖類のキシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である
2)次のa〜dの特徴を有する多糖類
a.酸に可溶である
b.エタノールに不溶である
c.ガラクツロン酸を含有し、かつ、酸に可溶な酸性多糖類を主成分とする
d.含有している酸性多糖類のキシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である
3)次のa〜eの特徴を有する多糖類
a.酸に可溶である
b.エタノールに不溶である
c.酸性多糖類である
d.ガラクツロン酸を含有する
e.キシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である
(5)大豆を原料に含有する物質が、大豆又は大豆皮である上記(1)に記載の抗アレルギー剤。
(6)大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類が、次のa〜eの特徴を有する多糖類である上記(5)に記載の抗アレルギー剤。
a.酸に可溶である
b.エタノールに不溶である
c.酸性多糖類である
d.ガラクツロン酸を含有する
e.キシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である
(7)多糖類が10%以上のガラクツロン酸を含有する多糖類である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の抗アレルギー剤。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の抗アレルギー剤を含む機能性食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗アレルギー剤は、大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類と、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩類、又はアスコルビン酸の脂肪酸エステル類から選ばれるいずれか一種以上とを含むことにより、従来のペクチンや大豆や醤油等の大豆醗酵物から得られる抗アレルギー剤と異なり、3日等の短期間の経口投与で強い抗アレルギー活性を示すものである。このような抗アレルギー剤の提供により、アレルギー症状に対し、より有用な薬剤の提供が可能となる。また、該抗アレルギー剤を含むことにより、有用で、かつ簡易に摂食できる、アレルギー食品等の機能性食品の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の「抗アレルギー剤」とは、アレルギー症状の発生予防や症状の緩和、治療等に有用な剤のことをいう。このような本発明の「抗アレルギー剤」は、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩類又は脂肪酸エステル類から選ばれるいずれか一種以上と、大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類とを含むものであれば良く、これら以外の成分を含むものであってもよい。
【0013】
ここで、「大豆を原料に含有する物質」は、原料に大豆を含むものであればよく、大豆そのもの、大豆種皮を除いたものや除かれた大豆種皮そのものであってもよい。また、蒸煮等により加熱した大豆を用いることもでき、醤油、味噌、納豆等の大豆を含有する原料を麹菌により処理した発酵物であってもよい。
【0014】
本発明の「大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類」は、大豆を原料に含有する物質から得られる多糖類であって、かつ、分画分子量6,000以上の多糖類であればよい。さらに次の1)〜3)のような特徴を有する多糖類であることが好ましい。
1)次のa〜cの特徴を有する多糖類
a.エタノールに不溶である
b.ガラクツロン酸を含有し、かつ、酸に可溶な酸性多糖類を主成分とする
c.含有している酸性多糖類のキシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である
2)次のa〜dの特徴を有する大豆を原料に含有する物質から得られる多糖類
a.酸に可溶である
b.エタノールに不溶である
c.ガラクツロン酸を含有し、かつ、酸に可溶な酸性多糖類を主成分とする
d.含有している酸性多糖類のキシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である
3)次のa〜eの特徴を有する多糖類
a.酸に可溶である
b.エタノールに不溶である
c.酸性多糖類である
d.ガラクツロン酸を含有する
e.キシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である
【0015】
ここで、本発明の「大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類」は酸に可溶な酸性多糖類であることが好ましい。また、成分としてガラクツロン酸を10%以上、好ましくは15%以上、20%以上の比率で含有していることがより好ましい。また、キシロース/ガラクツロン酸比は、重量比として0.2以上であれば良く、特に0.2以上であって、1.0程度より少ないことが好ましい。
ここで、「酸に可溶」とは、酸性の溶液に可溶であることをいい、酸性の溶液としてはpH2の溶液に可溶であればいい。このような溶液としては、pH2のクエン酸水溶液やHCl溶液等の溶液が挙げられる。このような特徴を有する本発明の「大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類」としては、例えば、ペクチン等が挙げられる。
【0016】
このような本発明の多糖類とともに含まれる「アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩類又は脂肪酸エステル類」としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸パルミテートなどが利用できる。本発明においては、これらの「アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩類又は脂肪酸エステル類」を一種以上含んでいれば良く、複数組み合わせて用いても良い。
本発明の「多糖類」と「アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩類又は脂肪酸エステル類」との配合比(重量比)は特に規定されるものではないが、好ましくは多糖類1に対して0.1〜5、より好ましくは0.2〜2の範囲である。
【0017】
このような本発明の抗アレルギー剤は、本発明の「抗アレルギー剤」が製造できる方法であれば、従来知られているいずれの方法、機器等を用いて製造しても良い。例えば、本発明の「多糖類」の製造において、酸性画分を得る際に、分画に用いる樹脂は、陰イオン交換樹脂であればいずれのものも用いることができる。
【0018】
本発明において、「機能性食品」とは、本発明の抗アレルギー剤を含む食品であって、摂取することにより、例えばアレルギーの予防、緩和、治療等の様々な機能を示す食品のことをいう。このような本発明の「機能性食品」は、本発明の抗アレルギー剤のみからなる食品であっても良く、それ以外の成分を含む食品であってもよい。
【0019】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
1)脱脂大豆と丸大豆を用いて定法通り製造した醤油諸味を圧搾、ろ過して得られた生醤油に、2倍量のエタノールを添加して発生した沈殿を採取した。この沈殿物を少量の水に溶解分散させ、分画分子量6,000の透析膜で透析脱塩し、非透析物を採取した(試料3−1)。
2)上記1)にて採取した非透析物の一部を水に分散させた後、塩酸でpH2に調整して発生した沈殿をろ過し、澄明な液を採取した(試料3−2)。
3)上記2)において採取した澄明な液の一部を陰イオン交換樹脂により分画し、陰イオン交換樹脂に吸着する性質を持つ酸性画分(試料3−3)を得た。
この陰イオン交換樹脂による分画はTSKgel DEAE−5PWを充填した21.5×150mmカラム(TOSOH社)を用いたHPLC分取によって行った。溶出液として、A液(50mM酢酸緩衝液(pH5.0))とB液(1M−酢酸ナトリウムを添加した50mM酢酸緩衝液(pH5))の直線グラジエントを用いた(流速5ml/min、0〜5分はA液100%、5〜30分はA液100%からB液100%にグラジエント、30〜60分(終了)はB液100%)。溶離した酸性画分を採取して透析脱塩した後凍結乾燥させた。この操作を繰り返し、試験に必要な量を確保した。
【0021】
上記1)〜3)において得られた試料3−1〜3−3について、それぞれ成分組成及び構成糖組成を次のように調べ、表1及び表2に示した。
1)成分組成
タンパク質含量はブラッドフォードでBSA換算し、エステル化度はNaOH加水分解後のメタノールをGLCにより定量することにより測定した。灰分含量は600℃で4時間灰化して測定した。脂質はエチルエーテル抽出法で測定した。炭水化物は100−(水分+タンパク質+脂質+灰分)とした。
【0022】
【表1】
【0023】
2)構成糖組成
ウロン酸はm−ヒドロキシジフェニル法(Blumenkrantzらの方法)でガラクツロン酸に換算した。中性糖(ラムノース、フコース、アラビノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、マンノース)はTFA分解後、糖アルコールアセテート誘導体としてGCMSにより定量した。これらの方法により測定したガラクツロン酸及び中性糖を合わせて構成糖質量として、この質量に対する各構成糖の割合を構成糖組成とした。
【0024】
【表2】
【0025】
成分組成及び構成糖組成を調べた結果、いずれの試料も分画分子量が6,000以上と大きく、試料3−3は陰イオン交換樹脂に吸着する酸性画分であって、表1に示されるように構成成分のほとんどが炭水化物であることから酸性多糖類であることが確認された。また、表1に示されるように、試料3−1も試料3−3と同様の成分組成を示すことから、試料3−3の酸性多糖類を主成分とするものであると示唆された。さらに、この試料3−1のうちの酸に可溶な成分として得た試料3−2も同様に試料3−3の酸性多糖類を主成分とするものであると考えられた。
従って、これらの結果より、試料3−1は、大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類であって、a.エタノールに不溶である、b.ガラクツロン酸を含有し、かつ、酸に可溶な酸性多糖類を主成分とする、および、c.含有している酸性多糖類のキシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である、という特徴を有する多糖類であることが示唆された。
また、試料3−2は、大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類であって、a.酸に可溶である、b.エタノールに不溶である、c.ガラクツロン酸を含有し、かつ、酸に可溶な酸性多糖類を主成分とする、および、d.含有している酸性多糖類のキシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である、という特徴を有する多糖類であることが示唆された。
さらに、試料3−3は、大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類であって、a.酸に可溶である、b.エタノールに不溶である、c.酸性多糖類である、d.ガラクツロン酸を含有する、および、e.キシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である、という特徴を有する多糖類であることが示唆された。
【0026】
[試験例1]
マクロファージ活性化による抗アレルギー効果の評価
実施例1の試料3−3と同様に得た多糖類(以下、試料3−3と示す場合がある)を用いて、アスコルビン酸との併用によるマクロファージ活性加効果を評価した。
マクロファージ活性化効果の試験は以下のように行った。
すなわち、1週間予備飼育した6週齢の雄性BALB/Cマウス(日本クレア(株))5匹を1群とし、標準粉末飼料CE−2(日本クレア(株))に対して表3に示した配合で多糖類(試料3−3)とアスコルビン酸とを配合して調製した飼料(飼料1〜5および対照飼料)を各群に2週間自由摂取させた。
その後、各群のマウスの腹腔に7mlのハンクス溶液(HBSS)を注入し、マッサージを行った後、マクロファージを含む溶液を回収した。回収した溶液は遠心分離を行い、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むRPMI1640培地(RPMI−10%FBS)に分散し、マクロファージを4×10
6cells/200μlの濃度で、96穴プレートに分注した。37℃、5%CO
2存在下で2時間培養を行った後、HBSSでプレートを3回洗浄して浮遊細胞を取り除いた。続いて、1μg/mlのlipopolysaccharide(LPS)を含む、RPMI−10% FBSを200μl分注してマクロファージの単層が付着したプレートを得た。37℃、5%CO2存在下で72時間培養後、培養上清中のグルコース量を測定した。
表3に各群におけるグルコース消費量を示した。グルコース消費量が大きいほどマクロファージが活性化されたことを示しており、多糖類(試料3−3)とアスコルビン酸とを含む飼料5を摂取させた群において、有意にマクロファージの活性化が起こることが確認できた。
【0027】
【表3】
【0028】
[試験例2]
PCA反応抑制効果による抗アレルギー活性の評価(1)
実施例1の試料3−1と同様に得た多糖類(以下、試料3−1と示す場合がある)、又は試料3−2と同様に得た多糖類(以下、試料3−2と示す場合がある)と、アスコルビン酸ナトリウム(以下、アスコルビン酸Naと示す場合がある)との併用による抗アレルギー活性をPCA反応抑制効果によって評価した。
【0029】
PCA反応抑制効果試験は以下のように行った。
1)1週間予備飼育した7週齢の雄性BALB/cマウス(日本クレア(株))6匹を1群とし、標準粉末飼料CE−2(日本クレア(株))に対して表4に示した配合で多糖類(試料3−1)、又は多糖類(試料3−2)とアスコルビン酸Naとを配合して調製した飼料(飼料1〜5および対照飼料)を各群に4日間自由摂取させた。
2)2μgのanti−TNP IgE(BD Pharmingenブランド、日本ベクトン・ディッキンソン社)を含む0.1%BSA(ナカライテスク社)入りリン酸緩衝液100μLを、上記1)のマウス尾静脈に注射し、30分間放置後、シックネスゲージ(尾崎製作所)を用いて耳の厚さを測定した。
3)0.8%塩化ピクリルを含むアセトン:オリーブオイル混合液(1:1(v/v))20μLをマウスの耳に塗布し、2時間放置後、シックネスゲージを用いて耳の厚さを再度測定した。
4)反応前後の耳の厚さの差を耳の腫れとし、各群(6匹)の結果を統計的に検定して抗アレルギー効果を評価した結果を表4に示した。耳の腫れが小さいほどPCA反応抑制効果、すなわち抗アレルギー効果が強いと判定できる。
【0030】
【表4】
【0031】
その結果、表4に示されるように、多糖類(試料3−1)、又は多糖類(試料3−2)は、いずれもアスコルビン酸Naと併用することにより、強い抗アレルギー効果を示すことが示され、その効果は相乗的であった。
【0032】
[試験例3]
PCA反応抑制効果による抗アレルギー活性の評価(2)
多糖類(試料3−3)とアスコルビン酸ナトリウム(アスコルビン酸Na)との併用による抗アレルギー活性をPCA反応抑制効果によって評価した。表5に各飼料における多糖類(試料3−3)とアスコルビン酸ナトリウム(アスコルビン酸Na)との配合量を示した。PCA反応抑制効果はマウスへの各飼料の投与期間を3日とした以外は試験例2と同様の方法によって調べた。
【0033】
【表5】
【0034】
その結果、表5に示したように、多糖類(試料3−3)及びアスコルビン酸NaはいずれもPCA反応による耳の腫れ(耳介浮腫)を抑制するが、これらを併用することによって、効果が相乗的に増強されることが確認できた。また、多糖類(試料3−3)は3日間の単独投与で、表3の多糖類(試料3−1)、又は多糖類(試料3−2)を4日間単独投与したときより強い抑制効果を示しており、多糖類(試料3−3)の抗アレルギー効果が特に強いものであることが確認できた。
【実施例2】
【0035】
多糖類の製造(2)
1)醤油(ヒガシマル醤油株式会社)を脱塩した後、3倍量のエタノールを添加して発生した沈殿物を乾燥して醤油高分子物質を得た(試料2)。
2)上記1)にて得た醤油高分子物質をpH2の水に分散させ、遠心分離によって酸可溶性物質と酸不溶性物質に分けた。さらに酸可溶性物質を実施例1と同様の方法で陰イオン交換樹脂にDEAEカラムにより分画すると、その95%以上が酸性画分として得られた。得られた酸性画分を脱塩後乾燥させたものを酸性画分(試料21−A)とし、さらに、酸性画分(試料21−A)の一部をビバスピン(サルトリウス)を用いて分子量分画し、1万以上、1−0.5、0.5万以下の3画分に分けた。
【0036】
上記1)及び2)において得られた試料2、試料21−A、試料21−A(1万以上)、試料21−A(1−0.5万)及び試料21−A(0.5万以下)について、試験例1と同様に成分組成との構成糖の組成を調べた。その結果、いずれの試料の成分組成も乾物あたりのタンパク質が1%以下、灰分4〜6%、脂質0%で、炭水化物含量は93〜95%であった。構成糖組成におけるガラクツロン酸、キシロースの含量及び比率は表6に示した。
【0037】
また、上記1)及び2)において得られた試料2、試料21−A、試料21−A(1万以上)、試料21−A(1−0.5万)及び試料21−A(0.5万以下)について、PCA反応抑制効果の試験を行った。
PCA反応抑制効果試験は投与期間を3日又は4日とした他は試験例2と同様の方法で行った。効果の判定も同様に行い、対照群に比べて危険率5%以下で有意に耳の腫れが小さいときを+、危険率1%以下で有意に耳の腫れが小さいときを++、また、統計的有意差がないときを−として評価し、結果を表6に示した。
【0038】
また、各試料の酸への溶解性は、試料20mgを少量のイソプロパノールに分散し、pH2のHCl溶液1mlを加えて、25℃の水中で超音波5分攪拌後目視によって判定した。判定結果は、澄明に溶解したものを+、少量の不溶物や曇りがあるものを±、明らかに濁りや沈殿があるものを−として表6に示した。
【0039】
【表6】
【0040】
表6に示したように、試料21−Aは試料2に比べて明らかに抗アレルギー活性が強かった。また、試料21−Aのうち、分子量1万以上、1−0.5万の画分も活性が強かった。一方、試料21−Aの分子量0.5万以下の画分は活性が低かったことから、強い抗アレルギー活性を示すためには、表6より示唆されるようにガラクツロン酸も一定量以上含有することが必要であるといえ、その量は構成糖質重量あたり、10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上であると示唆された。
このうち、特に試料21−Aの分子量1万以上のものは、アスコルビン酸と併用することによって、さらに相乗的に抗アレルギー活性が高まることも確認できた。
このような試料21−Aの分子量1万以上のものは、陰イオン交換樹脂に吸着する酸性画分であって、構成成分のほとんどが炭水化物であることから酸性多糖類であることが確認され、大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類であって、a.酸に可溶である、b.エタノールに不溶である、c.酸性多糖類である、d.ガラクツロン酸を含有する、及び、e.キシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である、という特徴を有する多糖類であると示唆された。
【実施例3】
【0041】
多糖類の製造(3)
1)粉砕した大豆種皮1部に3%のクエン酸水溶液(約pH2)9部を加えて90℃で5時間加熱し、固液分離すると約6部の澄明な液が得られた。これを分画分子量6,000の透析膜により流水中で20時間透析し、透析内液に2倍量の95%エタノールを加えて攪拌、静置後、発生した沈殿を遠心分離により集めて乾燥した(試料1)。
2)上記1)において得られた乾燥物の一部を実施例1と同様の方法により陰イオン交換樹脂により分画した。非吸着部と吸着部に分画してそれぞれ透析脱塩した後凍結乾燥させた。この操作を繰り返し、試験に必要な量を確保した。非吸着部を中性画分(試料1−N)、吸着部を本発明の多糖類である酸性画分(試料1−A)とした。中性画分と酸性画分の回収量はそれぞれおよそ1:1であった。
3)上記2)において得られた酸性画分(試料1−A)の成分組成と構成実施例1と同様の方法によって調べ、得られた結果を表7〜8に示した。その結果、酸性画分(試料1−A)の構成成分のほとんどが炭水化物であり、分画分子量が6,000以上と大きく、陰イオン交換樹脂に吸着することから、主成分が酸性多糖類であることが示唆された。
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
実施例3において得られた試料1、試料1−N及び試料1−Aの抗アレルギー活性を実施例2と同様の方法によるPCA反応抑制効果によって評価した。
試料1、試料1−N、1−Aの他、比較として市販のペクチン及び大豆多糖類を用いた。ポリガラクツロン酸(和光純薬工業社)、LM12−1(GENUペクチン、三晶社)、HM(GENUペクチン、三晶社)、レモン製ペクチン(和光純薬工業社)、リンゴ製ペクチン(和光純薬工業社)及び大豆多糖類(SM−700、三栄源社)を用いた。また、各試料の酸への溶解性も、実施例2と同様に調べ、表9に示した。
【0045】
【表9】
【0046】
表9に示したように、酸性画分である試料1−Aは強い抗アレルギー活性を示したが、中性画分である試料1−Nや比較として用いた市販のペクチン、ポリガラクツロン酸等においては抗アレルギー活性が見られなかった。これらの試料1−Nや比較として用いた市販のペクチン、ポリガラクツロン酸等は、キシロースを含んでいるもののガラクツロン酸は含有していないものや、キシロース/ガラクツロン酸の比率は0.1以下のものであった。
これに対し、強い抗アレルギー活性を示す試料1−Aは、成分組成及び構成糖組成を調べた結果、分画分子量が6,000以上と大きく、陰イオン交換樹脂に吸着する酸性画分であって、構成成分のほとんどが炭水化物であることから酸性多糖類であることが確認され、大豆を原料に含有する物質から得られる分画分子量6,000以上の多糖類であって、a.酸に可溶である、b.エタノールに不溶である、c.酸性多糖類である、d.ガラクツロン酸を含有する、及び、e.キシロース/ガラクツロン酸比が0.2以上である、という特徴を有する多糖類であることが示唆された。
なお、この試料1−Aもアスコルビン酸と併用することによって、さらに相乗的に抗アレルギー活性が高まることも確認できた。
【実施例4】
【0047】
機能性食品の製造
1.抗アレルギー剤の調製
脱脂大豆を用いて定法通り製造した醤油諸味を圧搾、ろ過して得られた生醤油100Lを脱塩した後、2倍量のエタノールを添加して発生した沈殿を採取した。この沈殿物に65%エタノール5Lを加えて攪拌後、沈殿部分を遠心分離によって採取した。これに希塩酸によってpH2に調整した水10Lを加えて攪拌・分散させた。この液を遠心分離して澄明な液を採取し、炭酸ナトリウムで中和した。この液はおよそ1kgの固形分(多糖類)を含んでおり、実施例1のように分画すると、分画分子量6,000以上であり、およそ90%の酸性多糖類を含有していた。
この液に1kgのデキストリンを加えて溶解後、スプレードライすると、約2kgの粉末が得られた(以下、多糖類粉末とする場合がある)。この粉末中の本発明の多糖類含量はおよそ50%であった。
【0048】
2.上記において調製した多糖類粉末を抗アレルギー剤として、これを含む機能性食品の一例として、次の1)〜4)の食品をそれぞれ製造した。
1)カプセル状健康食品の製造
多糖類粉末20gとアスコルビン酸5gを均一に混合し、ゼラチンとグリセリンからなるカプセルに、1カプセル当たり本発明の多糖類100mg、アスコルビン酸50mg、及びデキストリン100mgを含む健康食品を得た。
2)錠剤型健康食品の製造
多糖類粉末200gに対してアスコルビン酸30gを加え、糖類であるマルトース、マルチトールをそれぞれ30g、微量の香料と打錠補助剤としてのショ糖脂肪酸エステルと二酸化ケイ素それぞれ5gを加えて均一に混ぜ、合計300gの混合物を得た。これを1粒あたり300mgになるように打錠して錠剤タイプの健康食品を得た。この錠剤1錠に本発明の多糖類100mgとアスコルビン酸30mgを含有する。
3)粉末状食品の製造
多糖類粉末200gに対してアスコルビン酸50g、アスコルビン酸Na50g、味覚調整用の少量のステビア及びデキストリン300gを加えて均一に混合し、粉末状食品としてスティック状袋に2gずつ充填した。この粉末状食品はそのまま、あるいは水やジュースに加えて飲むことができる。
4)飲料の製造
多糖類粉末5g、アスコルビン酸4g及びアスコルビン酸Na1gを、リンゴ果汁990gに溶解させ、80℃に加温して200mlガラス瓶に充填した。このように製造した飲料は、リンゴジュースとして違和感なく摂取できた。