(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記複数の荷重検出手段のそれぞれは、両端が概略半球状に突出するように形成された概略柱状の起歪体を有するダブルコンベックス型のロードセルであり、該起歪体の一方端を上記載置台に接触させると共に該起歪体の他方端を上記基礎部に接触させるように該起歪体を直立させた姿勢にある、
請求項1に記載の車両計量台。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の従来技術では、傾動台上に各荷重計が配設されているため、例えば特許文献1の第5図に示されるように、当該傾動台が傾斜姿勢にあるときには、各荷重計は互いに異なる高さ位置にある。そして、各荷重計によって支持された載荷盤もまた、傾動台と同様、傾斜姿勢にある。このとき、載荷盤は、これに自重(および車両が載置されている場合には当該車両の重量)による力が作用することにより、その傾斜方向に動こうと(言わば滑り落ちようと)するが、この載荷盤の動きは、規制手段によって規制される。この規制手段の具体例として、一対のロッドが採用されており、それぞれのロッドの一方端が枢軸を介して載荷盤に連結されると共に、当該それぞれのロッドの他方端が別の枢軸を介して傾動台に連結されることにより、載荷盤の動きが規制される。
【0005】
ここで、載荷盤が傾斜姿勢にあるときの当該載荷盤とそれぞれのロッド(の一方端)との連結部分に注目して、この連結部分に作用する力の関係を図示すると、例えば
図7のようになる。この
図7において、Qという符号が付されている点が、載荷盤とそれぞれのロッドとの連結部分を表す。また、θは、載荷盤の水平方向に対する傾斜角度を表す。この
図7によれば、連結部分Qを基点として、載荷盤の自重(および車両が載置されている場合には当該車両の重量)による力Waが当該載荷盤の傾斜方向に沿って(厳密には傾斜を下る方向に向かって)作用する。併せて、当該連結部分Qを基点として、ロッドに掛かる力Waの反力
Wbが当該ロッドの延伸方向に沿って(厳密にはロッドの一方端から他方端に向かう方向に)作用する。このとき、載荷盤の傾斜方向とロッドの延伸方向とが全く正反対であるのが理想であり、細かく言えば力Waの方向と反力Wbの方向とが全く正反対であるのが理想である。そして、この理想の状態にあるとき、力Waの大きさと反力Wbの大きさとが全く等価になる。
【0006】
しかしながら、この
図7に示す状態は、飽くまでも理想であり、現実には、このような理想の状態となる保証はない。これは、載荷盤および傾動台に対するそれぞれのロッドの連結位置や連結状態等に起因する。即ち、載荷盤および傾動台に対するそれぞれのロッドの連結位置や連結状態等によっては、載荷盤の傾斜方向と当該それぞれのロッドの延伸方向とが正反対とならず、つまり力Waの方向と反力Wbの方向とが正反対とならないことがある。例えば、
図8に示すように、ロッドの延伸方向が理想的な方向からαという角度だけずれる、とすると、力Waと反力Wbとの合力Wcが連結部分Qに作用する。そして、この合力Wcが各荷重計に作用することによって、当該各荷重計による荷重検出値に誤差が生じ、ひいては車両の重心高さの計量精度が低下する。なお、
図8は、ロッドの延伸方向が理想的な方向よりも低い方向にずれた場合を示すが、これとは逆に、当該ロッドの延伸方向が理想的な方向よりも高い方向にずれること、つまり合力Wcが上向きに作用することも、有り得る。特に、載荷盤に車両が載置されることによって当該載荷盤が撓んだ場合が、これに当たる。しかも、載荷盤の撓み方は、これに載置される車両の重量や位置によって変わるので、これに伴い、合力Wcの大きさも変わる。さらに、載荷盤が撓んだ場合には、傾動台上に固定された各荷重計の当該載荷盤との接合部分(頭頂部)に対して不本意な方向の力が加わり、詳しくは各荷重計が検出対象とする力(特許文献1の第5図におけるW1”およびW2”)の方向を横切るいわゆる横方向の力が加わる恐れがある。この横方向の力は、各荷重計に対して曲げモーメントとして作用するため、当該各荷重計に曲げ歪が発生する。そして、この曲げ歪の発生によっても、各荷重計による荷重検出値に誤差が生じ、ひいては車両の重心高さの計量精度が低下する。
【0007】
加えて、特許文献1の第3図には、別の構成が開示されており、具体的には、被測定物が載置される載荷盤と、この載荷盤の一端を支持する荷重計と、この荷重計を水平方向に移動可能とする可動支持脚と、雄ねじを介して載荷盤の他端を支持する別の荷重計と、当該雄ねじを上下動させる駆動装置と、を具備する構成が開示されている。ここで、載荷盤と各荷重計とは、枢支という言わば半固定的な態様で接合されている。このように載荷盤と各荷重計とが枢支という半固定的な態様で接合されているので、例えば載荷盤が傾斜姿勢にあるときでも、当該載荷盤が滑り落ちることはない。ただし、載荷盤が傾斜姿勢にあるときには、当該載荷盤の自重(および車両が載置されている場合には当該車両の重量)による力の作用により、各荷重計に対して当該載荷盤の傾斜方向に沿う(厳密には傾斜を下る方向に向かう)力が加わり、要するに横方向の力が加わる。そして、この横方向の力は、各荷重計に対して曲げモーメントとして作用し、この結果、当該各荷重計に曲げ歪が発生する。特に、雄ねじを介して載荷盤に接合されている(特許文献1の第3図において右側の)荷重計には、当該雄ねじの伸長量に応じた大きな曲げモーメントが作用し、これに伴い、大きな曲げ歪が発生する。そして、この曲げ歪が発生することによって、各荷重計による荷重検出値に誤差が生じ、ひいては車両の重心高さの計量精度が低下する。また、この特許文献1の第3図に示される構成においても、載荷盤が撓んだときに、各荷重計に曲げ歪が発生する。詳しくは、上述の如く載荷盤と各荷重計とが枢支という半固定的な態様で接合されているため、当該載荷盤が撓むと、これに引っ張られるようにして各荷重計に横方向の力が加わり、つまり曲げモーメントが作用する。そして、この曲げモーメントの作用によって、各荷重計に曲げ歪が発生する。特に、雄ねじを介して載荷盤に接合されている荷重計には、当該雄ねじの伸長量に応じた大きな曲げ歪が発生する。そして、この載荷盤の撓みに起因する曲げ歪によっても、各荷重計による荷重検出値に誤差が生じ、ひいては車両の重心高さの計量精度が低下する。いずれにせよ、この特許文献1の第3図に示される構成を含む従来技術では、車両の重心高さを精確にに求めることができない、という問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、車両の重心高さを含む重心情報を従来よりも精確に求めることができる車両計量装置用の車両計量台を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、車両の重心高さを含む重心情報を求める機能を備えた車両計量装置に用いられる車両計量台であって、当該車両に属する全てまたは一部の車輪が載置されると共に当該全てまたは一部の車輪が載置されたときに車両が傾斜姿勢となる構造の載置台と、この載置台と当該載置台の下方にある基礎部との間に挟まれた状態で当該載置台を支持すると共に当該載置台を介して印加される荷重を検出して重心情報の演算に供する複数の荷重検出手段と、を具備する。ここで、それぞれの荷重検出手段は、鉛直方向の力を検出する姿勢にある。そして、載置台と各荷重検出手段との接合部分は、同一水平面上にある。さらに、基礎部と各荷重検出手段との接合部分もまた、同一水平面上にある。
【0010】
この構成によれば、車両に属する全てまたは一部の車輪が載置台に載置されると、当該車両は傾斜姿勢となる。この状態で、それぞれの荷重検出手段は、載置台を介して自身に印加される荷重を検出する。そして、各荷重検出手段による荷重の検出結果に基づいて、車両の重心高さを含む重心情報の演算が行われる。ここで、それぞれの荷重検出手段は、載置台と当該載置台の下方にある基礎部との間に挟まれた状態にある。そして、それぞれの荷重検出手段は、鉛直方向の力を検出する姿勢にあり、つまり荷重を検出するのに理想的(言わば正規)な姿勢にある。さらに、載置台と各荷重検出手段との接合部分は、同一水平面上にあり、つまり同じ高さ位置にある。従って、各荷重検出手段によって支持された載置台が滑り落ちることはない。言い換えれば、上述の従来技術におけるような規制手段が設けられる必要がない。また、当該従来技術(特許文献1)の第3図に示される構成とは異なり、各荷重検出手段の載置台との接合部分に対して、当該載置台の自重(および車両が載置されている場合には当該車両の重量)による横方向の力が作用することはない。さらに、基礎部と各荷重検出手段との接合部分もまた、同一水平面上にあり、つまり同じ高さ位置にある。従って、各荷重検出手段の基礎部との接合部分に対しても、載置台の自重(および車両が載置されている場合には当該車両の重量)による横方向の力が作用することはない。即ち、各荷重検出手段に対して、載置台の自重(および車両が載置されている場合には当該車両の重量)による曲げモーメントが作用することはない。
【0011】
なお、本発明において、それぞれの荷重検出手段は、両端が概略半球状に突出するように形成された概略柱状の起歪体を有するダブルコンベックス型のロードセルであってもよい。この場合、それぞれの荷重検出手段は、起歪体の一方端を載置台に接触させると共に、当該起歪体の他方端を基礎部に接触させるように、当該起歪体を直立させた姿勢とされる。つまり、それぞれの荷重検出手段(起歪体の一方端)と載置台とは、言わば可動的に接合されており、当該それぞれの荷重検出手段(起歪体の他方端)と基礎部ともまた、可動的に接合されている。この構成によれば、例えば載置台に車両が載置されることにより当該載置台が撓むと、これに追従して、それぞれの荷重検出手段(起歪体)が傾転し、詳しくはそれぞれの起歪体の載置台との接合部分と当該起歪体の基礎部との接合部分とが或る鉛直線に関して対称(厳密には当該鉛直線上の或る点に関して点対称)となるように傾転する。このとき、それぞれの荷重検出手段に対して、その傾転方向とは反対方向に自身を復元させようとする力が自ずと発生する。この復元力の発生によって、それぞれの荷重検出手段(起歪体)に作用する曲げモーメントの大きさが低減(相殺)され、ひいては曲げ歪の発生が低減される。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、本発明によれば、従来技術におけるような規制手段が設けられる必要がないので、当該規制手段が設けられることによる計量誤差は生じない。また、従来技術(特許文献1)の第3図に示される構成とは異なり、各荷重検出手段に対して載置台の自重(および車両が載置されている場合には当該車両の重量)による曲げモーメントが作用することはなく、ゆえに、当該載置台の自重(および車両が載置されている場合には当該車両の重量)による曲げ歪も発生しない。従って、車両の重心高さを含む重心情報を従来よりも精確に求めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、
図1に示す車両計量システム10を例に挙げて説明する。
【0015】
この
図1に示すように、本実施形態に係る車両計量システム10は、水平計量台20と、本発明が適用された傾斜計量台30と、これら水平計量台20および傾斜計量台30が電気的に接続されたプロセッサ40と、を備えている。このうちの水平計量台20は、適当な敷地内に敷設された通行路(路面)50の一部を形成するように配置されており、傾斜計量台30は、当該通行路50の別の一部を形成するように配置されている。そして、プロセッサ40は、同じ敷地内にある管理室等の適当な屋内に配置されている。なお、通行路50は、被計量物としての車両100を所定の順路に従って(
図1においては左側から右側に向かって)通行させるよう敷設されており、その表面は、(水平計量台20および傾斜計量台30が配置されている部分を除いて)アスファルトやコンクリート等の適当な舗装材料によって舗装されている。また、後述するように、通行路50のうち水平計量台20が配置されている部分の周辺は、水平であり、傾斜計量台30が配置されている部分の周辺は、車両100の進行方向(通行路50の延伸方向)においては水平であるものの、当該車両100の進行方向を垂直に横切る方向(通行路50の幅方向)においては水平方向に対して所定角度θを成して傾斜している。この所定角度θは、鋭角であり、例えば10度である。
【0016】
より具体的に説明すると、水平計量台20は、
図2に示すように、車両100に属する全ての左側車輪(タイヤ)110,110,…が同時に載置可能な左側水平載置台210と、当該車両100に属する全ての右側車輪120,120,…が同時に載置可能な右側水平載置台220と、を有している。これら左側水平載置台210および右側水平載置台220は、互いに同一形状かつ同一寸法の概略矩形の金属製平板であり、それぞれの一方主面が上面として真上に向けられると共に、それぞれの他方主面が下面として真下に向けられ、さらに、車両100の進行方向に沿う直線、例えば通行路50の中央線50a、に関して線対称の位置関係にあり、併せて、それぞれの一方長辺が当該中央線50aを挟んで平行を成すように、設けられている。なお、左側水平載置台210および右側水平載置台220それぞれの長辺寸法、言わば長さ寸法L1は、車両100の最遠軸距(最前輪軸と最後輪軸との相互間距離)Laよりも大きい(L1>La)。そして、当該左側水平載置台210および右側水平載置台220の総合の幅寸法L2は、車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…間の最大距離(外側面間距離)Lbよりも大きい(L2>Lb)。さらに、当該左側水平載置台210および右側水平載置台220のそれぞれは、図示しないリブ等の適当な補強部材によって補強されている。
【0017】
水平計量台20は、上述の如く通行路50の一部を形成するが、厳密には、左側水平載置台210および右側水平載置台220それぞれの上面によって、当該通行路50の一部が形成される。このため、通行路50には、概略矩形穴状のピット52が設けられており、このピット52内に、左側水平載置台210および右側水平載置台220が、それぞれの上面を通行路50の表面(厳密には通行路50の表面のうち左側水平載置台210および右側水平載置台220それぞれの表面を除く部分)に揃えた状態で、言い換えれば当該通行路50の表面と共に一連の水平面54を形成するように、収容されている。さらに、左側水平載置台210および右側水平載置台220は、ピット52内において複数のロードセル212,212,…および222,222,…によって支持されている。
【0018】
例えば、左側水平載置台210は、6台のロードセル212,212,…によって支持されている。各ロードセル212,212,…は、互いに同一仕様のものであり、詳しくは両端が概略半球状に突出するように形成された概略円柱状の起歪体を有するダブルコンベックス型のものである。また、図示は省略するが、起歪体の外周壁には複数の歪ゲージが貼着されており、これら複数の歪ゲージはホイートストンブリッジ接続されることで荷重検出回路を構成している。各ロードセル212,212,…は、左側水平載置台210の下面の周縁近傍、詳しくは四隅近傍および各長辺の中央近傍、の6箇所において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該左側水平載置台210の下面と基礎部としてのピット52の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。なお、左側水平載置台210の下面と各ロードセル212,212,…(起歪体)の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、言わば可動的に接合されている。併せて、この左側水平載置台210の下面における各ロードセル212,212,…の上方側端部との接合(接触)部分は、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されている。また、ピット52の底面と各ロードセル212,212,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、言わば可動的に接合されている。併せて、このピット52の底面における各ロードセル212,212,…の下方側端部との接合部分もまた、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されている。
【0019】
右側水平載置台220も同様に、6台のロードセル222,222,…によって支持されている。これらの言わば右側ロードセル222,222,…は、上述の左側ロードセル212,212,…と同一仕様のものであり、右側水平載置台220の下面の周縁近傍において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該右側水平載置台220の下面とピット52の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。そして、右側水平載置台220の下面と各右側ロードセル222,222,…の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、当該右側水平載置台220の下面における各右側ロードセル222,222,…との接合部分は、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されている。また、ピット52の底面と各右側ロードセル222,222,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、当該ピット52の底面における各右側ロードセル222,222,…の下方側端部との接合部分は、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されている。
【0020】
このように構成された水平計量台20によれば、車両100が通行路50を通行する途中で、当該車両100に属する全ての左側車輪110,110,…が左側水平載置台210に載置されると共に、全ての右側車輪120,120,…が右側水平載置台220に載置される状態が形成され、つまり車両100が水平計量台20に完全に載置される状態が形成される。この状態にあるとき、車両100は、水平姿勢となる。そして、左側水平載置台210を支持する各左側ロードセル212,212,…のそれぞれは、当該左側水平載置台210を介して自身に印加された荷重に応じた大きさ(例えば電圧値)を持つアナログ荷重検出信号を出力する。この言わば左側アナログ荷重検出信号は、プロセッサ40に入力される。併せて、右側水平載置台220を支持する各右側ロードセル222,222,…のそれぞれもまた、当該右側水平載置台220を介して自身に印加された荷重に応じた大きさを持つアナログ荷重検出信号を出力する。この右側アナログ荷重検出信号もまた、プロセッサ40に入力される。
【0021】
ここで、改めてそれぞれの左側ロードセル212に注目すると、上述したように、当該それぞれの左側ロードセル212は、起歪体を直立させた姿勢にあり、つまり荷重という鉛直方向の力を検出するのに理想的な姿勢にある。そして、左側水平載置台210の下面における当該それぞれの左側ロードセル212との接合部分は、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されており、つまり荷重の印加方向である鉛直方向に垂直な平面を成している。従って、当該接合部分を力点としてそれぞれの左側ロードセル212に印加される荷重は、当該それぞれの左側ロードセル212に対して真っ直ぐに印加される。さらに、それぞれの左側ロードセル212に印加された荷重は、ピット52の底面によって受け止められる。言い換えれば、ピット52の底面からの当該荷重の反力が、それぞれの左側ロードセル212に印加される。そして、ピット52の底面におけるそれぞれの左側ロードセル212との接合部分もまた、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されており、つまり鉛直方向に垂直な平面を成している。従って、当該接合部分を力点としてそれぞれの左側ロードセル212に印加される荷重反力は、鉛直方向に沿って、つまりそれぞれの左側ロードセル212に対して真っ直ぐに、印加される。ゆえに、それぞれの左側ロードセル212は、自身に印加された荷重を精確に検出する。
【0022】
加えて、それぞれの左側ロードセル212は、ダブルコンベックス型のものであるので、次のような利点がある。即ち、車両100(左側車輪110,110,…)の載置によって左側水平載置台210が撓むと、これに追従して、それぞれの左側ロードセル212が傾転し、詳しくはそれぞれの当該左側水平載置台210との接合部分とピット52の底面との接合部分とが或る鉛直線に関して対称(厳密には当該鉛直線上の或る点に関して点対称)となるように傾転する。このとき、それぞれの左側ロードセル212に対して、その傾転方向とは反対方向に自身を復元させようとする力が自ずと発生する。そして、この復元力の発生によって、それぞれの左側ロードセル212に対する曲げモーメントの作用が低減(相殺)され、ひいては曲げ歪の発生が低減される。なお、左側水平載置台210の撓みが解消されると、それぞれの左側ロードセル212は自ずと元の直立姿勢に復帰する。
【0023】
また、それぞれの右側ロードセル222に改めて注目すると、当該それぞれの右側ロードセル222も同様に、起歪体を直立させた姿勢にあり、つまり荷重という鉛直方向の力を検出するのに理想的な姿勢にある。そして、右側水平載置台220の下面における当該それぞれの右側ロードセル222との接合部分は、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されており、つまり荷重の印加方向である鉛直方向に垂直な平面を成している。従って、当該接合部分を力点としてそれぞれの右側ロードセル222に印加される荷重は、当該それぞれの右側ロードセル222に対して真っ直ぐに印加される。さらに、それぞれの右側ロードセル222に印加された荷重は、ピット52の底面によって受け止められる。言い換えれば、ピット52の底面からの当該荷重の反力が、それぞれの右側ロードセル222に印加される。そして、ピット52の底面におけるそれぞれの右側ロードセル222との接合部分もまた、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されており、つまり鉛直方向に垂直な平面を成している。従って、当該接合部分を力点としてそれぞれの右側ロードセル222に印加される荷重反力は、鉛直方向に沿って、つまりそれぞれの右側ロードセル222に対して真っ直ぐに、印加される。ゆえに、それぞれの右側ロードセル222もまた、自身に印加された荷重を精確に検出する。即ち、曲げ歪の影響を受けることはない。
【0024】
そして、それぞれの右側ロードセル222もまた、ダブルコンベックス型としての上述の利点を有する。
【0025】
一方、傾斜計量
台30は、
図3に示すように、車両100に属する全ての左側車輪110,110,…が同時に載置可能な左側傾斜載置台310と、当該車両100に属する全ての右側車輪120,120,…が同時に載置可能な右側傾斜載置台310と、を有している。これら左側傾斜載置台310および右側傾斜載置台320は、互いに同一形状かつ同一寸法の金属製傾斜台であり、詳しくは、それぞれの上面は、傾斜面とされており、それぞれの下面(厳密には後述する各ロードセル312,312,…および322,322,…の上方側端部との接触部分ならびにその周辺部分)は、水平面とされている。特に上面は、これを上方から見ると概略矩形であり、後方から見ると水平方向に対して反時計回りに上述の所定角度θだけ傾斜している。そして、これら左側傾斜載置台310および右側傾斜載置台320は、上方から見ると、車両100の進行方向に沿う直線、例えば通行路50の中央線50a、に関して線対称の位置関係にあり、かつ、それぞれの一方長辺が当該中央線50aを挟んで平行を成すように、設けられている。なお、左側傾斜載置台310および右側傾斜載置台320それぞれの長さ寸法L3は、水平計量部20を構成する左側水平載置台210および右側水平載置台220それぞれの長さ寸法L1と基本的に同じ(L3=L1)である。そして、当該左側傾斜載置台310および右側傾斜載置台320の総合の上面幅寸法L4は、水平計量部20を構成する左側水平載置台210および右側水平載置台220の総合幅寸法L2と基本的に同じ(L4=L2)である。さらに、当該左側傾斜載置台310および右側傾斜載置台320のそれぞれは、図示しないリブ等の適当な補強部材によって補強されている。また、
図3においては、その見易さを考慮して、
図2(a)に示したような横方から見た図は省略してある。
【0026】
傾斜計量台30もまた、通行路50の一部、特に傾斜した通行路50の一部、を形成するが、厳密には、左側傾斜載置台310および右側傾斜載置台320それぞれの上面によって、当該傾斜した通行路50の一部が形成される。このため、通行路50には、概略矩形穴状のピット56が設けられており、このピット56内に、左側傾斜載置台310および右側傾斜載置台320が、それぞれの上面を傾斜した通行路50の表面(厳密には傾斜した通行路50の表面のうち左側傾斜載置台310および右側傾斜載置台320それぞれの表面を除く部分)に揃えた状態で、言い換えれば当該傾斜した通行路50の表面と共に一連の傾斜面58を形成するように、収容されている。さらに、左側傾斜載置台310および右側傾斜載置台320は、ピット56内において複数のロードセル312,312,…および322,322,…によって支持されている。
【0027】
例えば、左側傾斜載置台310は、6台のロードセル312,312,…によって支持されている。これらの言わば傾斜側ロードセル312,312,…は、水平計量部20を構成する左側ロードセル212,212,…および右側ロードセル220,220,…と同一仕様のものであり、左側傾斜載置台310の下面の周縁近傍、詳しくは四隅近傍および各長辺の中央近傍、の6箇所において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該左側傾斜載置台310の下面と基礎部としてのピット56の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。なお、左側傾斜載置台310の下面と各傾斜側ロードセル312,312,…の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、言わば可動的に接合されている。併せて、この左側傾斜載置台310の下面における各傾斜側ロードセル312,312,…の上方側端部との接合部分は、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されている。また、ピット56の底面と各傾斜側ロードセル312,312,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、言わば可動的に接合されている。併せて、このピット55の底面における各傾斜側ロードセル312,312,…の下方側端部との接合部分もまた、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されている。
【0028】
右側傾斜載置台320も同様に、6台のロードセル322,322,…によって支持されている。ただし、これらのロードセル322,322,…は、上述の各ロードセル212,212,…および222,222,…ならびに312,312,…と同一仕様の起歪体を有するものの、歪ゲージを含む荷重検出回路を有しない、つまり荷重検出機能を有しない、いわゆるダミーである。そして、これらのダミーロードセル322,322,…は、右側傾斜載置台320の下面の周縁近傍において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該右側傾斜載置台320の下面とピット56の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。また、上述の如く一連の傾斜面58が形成されるように、ピット56の底面には段差56aが設けられており、即ち、当該ピット56の底面のうち各ダミーロードセル322,322,…が配置されている部分と各傾斜側ロードセル312,312,…が配置されている部分とでは互いの高さが異なる。そして、右側傾斜載置台320の下面と各ダミーロードセル322,322,…の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、当該右側傾斜載置台320の下面における各ダミーロードセル322,322,…との接合部分は、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されている。また、ピット56の底面と各ダミーロードセル322,322,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、当該ピット56の底面における各ダミーロードセル322,322,…の下方側端部との接合部分は、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されている。
【0029】
このように構成された傾斜計量台30によれば、車両100が通行路50を通行する途中で、特に当該車両100が水平計量部20を経た後に、当該車両100に属する全ての左側車輪110,110,…が左側傾斜載置台310に載置されると共に、全ての右側車輪120,120,…が右側傾斜載置台320に載置される状態が形成され、つまり車両100が傾斜計量台30に完全に載置される状態が形成される。この状態にあるとき、車両100は、特に
図3(b)に示すように、これを後方から見ると、水平方向に対して反時計回りに上述の所定角度θだけ傾斜した言わば傾斜姿勢となる。なお、車両100の前後方向においては、当該車両100は水平姿勢となる。そして、左側傾斜載置台310を支持する各傾斜側ロードセル312,312,…のそれぞれは、当該左側傾斜載置台310を介して自身に印加された荷重に応じた大きさを持つアナログ荷重検出信号を出力する。この言わば傾斜側アナログ荷重検出信号もまた、プロセッサ40に入力される。
【0030】
ここで、改めてそれぞれの傾斜側ロードセル312に注目すると、上述したように、当該それぞれの傾斜側ロードセル312は、起歪体を直立させた姿勢にあり、つまり荷重という鉛直方向の力を検出するのに理想的な姿勢にある。そして、左側傾斜載置台310の下面における当該それぞれの傾斜側ロードセル312との接合部分は、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されており、つまり荷重の印加方向である鉛直方向に垂直な平面を成している。従って、当該接合部分を力点としてそれぞれの傾斜側ロードセル312に印加される荷重は、当該それぞれの傾斜側ロードセル312に対して真っ直ぐに印加される。さらに、それぞれの傾斜側ロードセル312に印加された荷重は、ピット56の底面によって受け止められる。言い換えれば、ピット56の底面からの当該荷重の反力が、それぞれの傾斜側ロードセル312に印加される。そして、ピット56の底面におけるそれぞれの傾斜側ロードセル312との接合部分もまた、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されており、つまり鉛直方向に垂直な平面を成している。従って、当該接合部分を力点としてそれぞれの傾斜側ロードセル312に印加される荷重反力は、鉛直方向に沿って、つまりそれぞれの傾斜側ロードセル312に対して真っ直ぐに、印加される。ゆえに、それぞれの傾斜側ロードセル312は、自身に印加された荷重を精確に検出する。即ち、車両が傾斜姿勢にあるときに曲げ歪の影響を受ける上述の従来技術とは異なり、それぞれの傾斜側ロードセル312に曲げモーメントは作用せず、よって当然に、曲げ歪も発生しない。また、それぞれの傾斜側ロードセル322は、ダブルコンベックス型としての上述の利点を有する。
【0031】
加えて、左側傾斜載置台310の下面と各傾斜側ロードセル312,312,…の上方側端部との接合部分を大局的に見ると、これらの接合部分は、同一平面上にあり、つまり同じ高さ位置にある。従って、これらの接合部分が上述の如く単に接触した状態にあるにも拘らず、各傾斜側ロードセル312,312,…によって支持された左側傾斜載置台310が当該各傾斜側ロードセル312,312,…によって支持された状態から滑り落ちることはない。言い換えれば、上述した従来技術におけるような規制手段が設けられる必要はない。よって当然に、当該規制手段が設けられることによる計量誤差は生じない。また、従来技術(特許文献1)の第3図に示される構成とは異なり、左側傾斜載置台310の下面における各傾斜側ロードセル312,312,…の上方側端部との接合部分に対して、当該左側傾斜載置台310の自重(および車両100の左側車輪110,110,…が載置されている場合にはその重量)による横方向の力が作用することもない。さらに、基礎部としてのピット56の底面と各傾斜側ロードセル312,312,…の下方側端部との接合部分を大局的に見ると、これらの接合部分もまた、同一平面上にあり、つまり同じ高さ位置にある。従って、当該ピット56の底面における各傾斜側ロードセル312,312,…の下方側端部との接合部分に対しても、左側傾斜載置台310の自重(および車両100の左側車輪110,110,…が載置されている場合にはその重量)による横方向の力が作用することはない。このこともまた、各傾斜側ロードセル312,312,…に対する曲げモーメントの作用、ひいては曲げ歪の発生、の抑制に大きく貢献する。
【0032】
これと同様に、それぞれのダミーロードセル322に改めて注目すると、当該それぞれのダミーロードセル322もまた、起歪体を直立させた姿勢にあり、つまり傾斜側ロードセル312と同じ姿勢にある。そして、右側傾斜載置台320の下面における当該それぞれのダミー右側ロードセル222との接合部分は、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されており、つまり左側傾斜載置台310の下面におけるそれぞれの傾斜側ロードセル312との接合部分と同じ構造(条件)とされている。さらに、それぞれのダミーロードセル322に印加された荷重は、ピット56の底面によって受け止められ、言い換えれば、当該ピット56の底面からの荷重反力が、それぞれのダミーロードセル322に印加される。そして、ピット56の底面におけるそれぞれのダミーロードセル322との接合部分もまた、その周辺部分を含め水平な平面状に形成されており、つまり当該ピット56の底面におけるそれぞれの傾斜側ロードセル312との接合部分と同じ構造とされている。また、それぞれのダミーロードセル322は、ダブルコンベックス型としての上述の利点(特に直立姿勢への自動復帰機能)を有する。このようなダミーロードセル322が採用されることによって、右側傾斜載置台320の各ダミーロードセル322,322,…による支持構造が、左側傾斜載置台310の各傾斜側ロードセル312,312,…による支持構造と、統一化される。
【0033】
さらに、右側傾斜載置台320の下面と各ダミーロードセル322,322,…の上方側端部との接合部分を大局的に見ると、これらの接合部分もまた、左側傾斜載置台310の下面と各傾斜側ロードセル312,312,…の上方側端部との接合部分と同様に、同一平面上にあり、つまり同じ高さ位置にある。そして、基礎部としてのピット56の底面と各ダミーロードセル322,322,…の下方側端部との接合部分を大局的に見ると、これらの接合部分もまた、ピット36の底面と各傾斜側ロードセル312,312,…との接合部分と同様に、同一平面上にあり、つまり同じ高さ位置にある。このように大局的な観点からも、左側傾斜載置台310の各傾斜側ロードセル312,312,…による支持構造と、右側傾斜載置台320の各ダミーロードセル322,322,…による支持構造と、の統一化が図られている。
【0034】
プロセッサ40は、車両100が水平計量台20に完全に載置されている状態にあるときに、当該水平計量部20の各左側ロードセル212,212,…から得られる左側アナログ荷重検出信号と、各右側ロードセル222,222,…から得られる右側アナログ荷重検出信号と、に基づいて、車両100の総重量値W0と、当該車両100の左右方向における重心Gの位置と、を求める。
【0035】
具体的には、プロセッサは、各左側ロードセル212,212,…から得られる左側アナログ荷重検出信号に基づいて、当該各左側ロードセル212,212,…のそれぞれに印加される荷重値を求めると共に、各右側ロードセル222,222,…から得られる右側アナログ荷重検出信号に基づいて、当該各右側ロードセル222,222,…のそれぞれに印加される荷重値を求める。そして、プロセッサは、各左側ロードセル212,212,…それぞれへの印加荷重値を合算することで、水平姿勢にある車両100の全ての左側車輪110,110,…に印加される荷重の総合値W1を求めると共に、各右側ロードセル222,222,…それぞれへの印加荷重値を合算することで、当該水平姿勢にある車両100の全ての右側車輪120,120,…に印加される荷重の総合値W2を求める。さらに、プロセッサは、これら左側印加荷重総合値W1と右側印加荷重総合値W2とを合算することで、つまり次の式1に基づいて、車両100の総重量値W1を求める。
【0037】
次いで、プロセッサは、車両100の左右方向における重心Gの位置を求めるのであるが、これに当たって、
図4を参照されたい。この
図4は、車両100が水平計量台20に完全に載置されている状態を、当該車両100の左右方向における力学的要素にのみ注目して示したものである。なお、この
図4において、P1という符号が付されている点は、全ての左側ロードセル212,212,…の集合体である言わば左側ロードセル群LC1による支持位置を表し、点P2は、全ての右側ロードセル222,222,…の集合体である右側ロードセル群LC2による支持位置を表す。そして、点P0は、左右の各ロードセル群LC1およびLC2による支持位置P1およびP2間の中心を表し、言い換えれば車両100の左右方向における中心を表す。さらに、点Pgは、左右の各ロードセル群LC1およびLC2による支持位置P1およびP2を通る仮想水平面54a上における車両100の重心Gの位置を表す。
【0038】
この
図4において、例えば左側ロードセル群LC1による支持位置P1を軸とするモーメントに注目すると、次の式2が成立する。なお、この式2におけるLxは、左側ロードセル群LC1による支持位置P1と仮想重心位置Pgとの相互間距離である。また、Ldは、車両100の左右の両車輪110および120間の距離であり、既知である。
【0040】
この式2を距離Lxについての数式に変形すると、次の式3のようになる。
【0041】
《式3》
Lx=Ld・(W2/W0)
【0042】
そして、この式3に基づく距離Lxを車両100の左右方向における中心P0からの距離Lzに変換すると、次の式4のようになる。
【0043】
《式4》
Lz=Lx−(Ld/2)=Ld・(W2/W0)−(Ld/2)
【0044】
この式4に基づく距離Lzは、車両100の左右方向における中心P0を起点とする当該車両100の左右方向における重心Gの位置を表し、言わば偏心量を表す。例えば、この左右偏心量LzがLz=0のときは、車両100の重心Gは中心P0に位置する。そして、左右偏心量LzがLz<0(負数)のときは、車両100の重心Gは中心P0よりも左側に位置し、言わば左側偏心(偏荷重)状態にある。これとは反対に、左右偏心量LzがLz>0(正数)のときは、車両100の重心Gは中心P0よりも右側に位置し、言わば右側偏心状態にある。
【0045】
プロセッサ40は、この式4に基づいて、車両100の左右偏心量Lzを求め、つまり重心Gの位置を求める。そして、プロセッサ40は、この式4に基づく車両100の左右偏心量Lzを、上述の式1に基づく当該車両100の総重量値W0と共に、自身が備える図示しない表示手段としてのディスプレイに表示する。
【0046】
さらに、プロセッサ40は、車両100が傾斜計量台30に完全に載置されている状態にあるとき、当該傾斜計量
台30の各傾斜側ロードセル312,312,…から得られる傾斜側アナログ荷重検出信号と、上述の式1に基づく車両100の総重量値W0と、式4に基づく左右偏心量Lz(厳密には後述する式7に基づく距離Lx)と、に基づいて、車両100の重心Gの高さHを求める。
【0047】
具体的には、プロセッサは、各傾斜側ロードセル312,312,…から得られる傾斜側アナログ荷重検出信号に基づいて、当該各傾斜側ロードセル312,312,…のそれぞれに印加される荷重値を求め、さらに、当該各傾斜側ロードセル312,312,…それぞれへの印加荷重値を合算することで、傾斜姿勢にある車両100の全ての左側車輪110,110,…に印加される荷重の総合値W3を求める。その上で、プロセッサは、車両100の重心高さHを求めるが、これに当たって、
図5を参照されたい。
【0048】
この
図5は、車両100が傾斜計量台30に完全に載置されている状態を、上述の
図4と同様、当該車両100の左右方向における力学的要素にのみ注目して示したものである。なお、この
図5において、P3という符号が付されている点は、全ての傾斜側ロードセル312,312,…の集合体である傾斜側ロードセル群LC3による支持位置を表し、点P4は、全てのダミーロードセル322,322,…の集合体であるダミーロードセル群LC4による支持位置を表す。そして、点P3’は、左側車輪110の接地位置を表し、この左側車輪接地位置P3’は、傾斜側ロードセル群LC3による支持位置点P3の真上にある。また、点P4’は、右側車輪120の接地位置を表し、この右側車輪接地位置P4’は、ダミーロードセル群LC4による支持位置P4の真上にある。さらに、点P0’は、左側車輪接地位置P3’と右側車輪接地位置P4’との間の中心を表し、つまり車両100の左右方向における中心を表す。加えて、点Pg’は、左側車輪接地位置P3’と右側車輪接地位置P4’とを通る仮想傾斜面58a上における車両100の重心Gの位置を表し、点Pg”は、傾斜側ロードセル群LC3による支持位置P3とダミーロードセル群LC4による支持位置P4とを通る仮想水平面58b上における当該重心Gの位置を表す。また、右側車輪接地位置P4’を基点とするW4という符号が付された上方向きの太線矢印は、全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重を表すが、当該全ての右側車輪120,120,…はダミーロードセル群LC4(ダミーロードセル322,322,…)によって支持されているので、その値は検出されない。
【0049】
この
図5において、例えばダミーロードセル群LC4による支持位置P4を軸とするモーメントに注目すると、次の式5が成立する。
【0050】
《式5》
Ld・cosθ・W3={(Ld−Lx)+H・tanθ}・cosθ・W0
【0051】
そして、この式5を高さHについての数式に変形すると、次の式6のようになる。
【0052】
《式6》
H={Ld・W3−(Ld−Lx)・W0}/(W0・tanθ)
【0053】
なお、この式6における距離Lxは、上述の式4の変形式である次の式7によって求められる。
【0055】
プロセッサ40は、この式7を含む式6に基づいて、車両100の重心Gの高さHを求める。そして、プロセッサ40は、この式6に基づく車両100の重心高さHについても、上述のディスプレイに表示する。
【0056】
このように、本実施形態によれば、車両100が通行路50を通行するだけで、当該車両100の総重量値W0,重心Gの位置を表す左右偏心量Lzおよび重心高さHが求められる。これに対して、上述の従来技術では、車両の重心高さを求めるのに、当該車両の姿勢を傾動台ごと上下動機構によって変化させる必要がある。従って、本実施形態によれば、従来技術に比べて、極めて効率的に車両の重心高さHを含む重心情報を求めることができる。しかも、従来技術とは異なり、曲げ歪の影響を受けず、特に傾斜計量台30による計量においても当該曲げ歪の影響を受けない。また、従来技術におけるような規制手段が設けられる必要がないので、当該規制手段が設けられることによる計量精度の低下という不都合が生じることもない。ゆえに、従来よりも高精度な計量を実現することができ、特に車両100の重心高さHを含む重心情報を精確に求めることができる。
【0057】
なお、本実施形態で説明した内容は、本発明を実現するための一具体例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0058】
例えば、傾斜計量台30を構成する右側傾斜載置台320については、ダミーロードセル322,322,…によって支持されることとしたが、これに限らない。即ち、
図5を参照しながら説明したように、本実施形態では、重心高さHを含む重心情報の演算に際して、右側傾斜載置台320を支持するダミーロードセル322,322,…への印加荷重の総合値W4は必要とされないので、例えば
図6に示すように、当該右側傾斜載置台320およびダミーロードセル322,322,…は非設置とされてもよい。ただし、この場合、車両100の各左側車輪110,110,…を支持する構造と、各右側車輪120,120,…を支持する構造とが、相違するため、多少なりとも計量精度が低下する。つまり、車両100の各左側車輪110,110,…が左側傾斜載置台310という多少の弾性を有する要素と傾斜側ロードセル312,312,…という傾転可能な要素との組合せ構造に支持された状態にあるとき、各右側車輪120,120,…は通路50という非弾性の地盤そのものの上に載置された状態にある。このような状態においては、各左側車輪110,110,…を支持する左側傾斜載置台310の弾性および傾斜側ロードセル312,312,…の傾転動作が、各右側車輪120,120,…によって拘束されるため、当該傾斜側ロードセル312,312,…による計量精度が低下し、ひいては車両100の重心高さHの演算に誤差を生じさせる恐れがある。従って、高精度計量の実現には、右側傾斜載置台320およびダミーロードセル422,422,…が設置されること、要するに車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…の支持構造が統一化されることが、望ましい。
【0059】
また、右側傾斜載置台320がダミーロードセル322,322,…によって支持される構成に代えて、例えば左側傾斜載置台310がダミーロードセルによって支持され、若しくは、当該左側傾斜載置台310およびこれを支持するダミーロードセルが非設置とされてもよい。さらに、水平計量台20を構成する左側水平載置台210がダミーロードセルによって支持され、若しくは、当該左側水平載置台210およびこれを支持するダミーロードセルが非設置とされてもよい。或いは、右側水平載置台220がダミーロードセルによって支持され、若しくは、当該右側水平載置台220およびこれを支持するダミーロードセルが非設置とされてもよい。即ち、上述した各印加荷重総合値W1,W2,W3およびW4のうちのいずれかが検出されなくても、車両100の重心高さHを含む重心情報を求めることは可能である。
【0060】
さらに、図示は省略するが、ダミーロードセル322,322,…を含む各ロードセル212,212,…,222,222,…,312,312,…および322,322,…として、ダブルコンベックス型のものではなく、シングルコンベックス型のもの、つまり概略柱状の起歪体の一方端のみが概略半球状に突出したするように形成されたものが、採用されてもよい。ただし、シングルコンベックス型のものが採用された場合は、当然ながら、ダブルコンベックス型のものが採用されることによる利点を享受することはできない。
【0061】
加えて、本実施形態においては、水平計量台20と傾斜計量台30とが設けられたが、これに限らない。図示は省略するが、例えば後方から見て水平方向に対して時計回りにθ’という角度だけ傾斜した第1の傾斜計量台と、反時計回りにθ”という角度だけ傾斜した第2の傾斜計量台と、が設けられてもよい。なお、各傾斜角度θ’およびθ”は、互いに等価(θ’=θ”)であってもよいし、不等価(θ’≠θ”)であってもよい。
【0062】
そして、水平計量台20については、車両100の各左側車輪110,110,…が左側水平載置台210,210,…に載置され、各右側車輪120,120,…が当該左側水平載置台210,210,…とは異なる右側水平載置台220,220,…に載置される構成とされたが、これに限らない。即ち、車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…が互いに共通の1つの水平載置台に載置される構成とされてもよい。この場合、当該水平載置台の左右両側縁のそれぞれが複数のロードセルによって支持されることになる。これと同様に、傾斜計量台30についても、車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…が互いに共通の1つの傾斜載置台に載置される構成とされてもよい。
【0063】
また、水平計量台20および傾斜計量台30のそれぞれについて、車両100に属する全ての車輪110,110,…および120,120,…のうちの1軸分のみが左右別々または一緒に載置可能とされてもよい。つまり、1軸分の左側車輪110および右側車輪120のそれぞれに印加される荷重を計量するいわゆる輪重計や、当該1軸分の左右両車輪110および120に総合的に印加される荷重を計量するいわゆる軸重計にも、本発明を適用してもよい。勿論、任意軸数分の輪重値または軸重値を計量する装置にも、本発明を適用することができる。
【0064】
さらに、車両100の重心Gの位置として、当該車両100の左右方向における重心位置(左右偏心量Lz)が求められたが、当該車両100の前後方向における重心位置が求められてもよい。この場合、水平計量台20について、これに車両100が載置されたときに、当該車両100が水平姿勢を成すと共に、この水平姿勢を成す車両100の前輪に印加される荷重と後輪に印加される荷重とが計量されるように構成される。そして、この水平姿勢時の前輪印加荷重値と後輪印加荷重値とに基づいて、車両100の前後方向における重心位置が求められる。このとき併せて、車両100の総重量W0も求められる。
【0065】
また、このように車両100の前後方向における重心位置が求められる場合には、傾斜計量台30について、これに車両100が載置されたときに、当該車両100がその前後方向において(つまり当該車両100を横方から見たときに)水平方向に対して所定角度(鋭角)を成して傾斜すると共に、この傾斜姿勢にある車両100の前輪に印加される荷重と後輪に印加される荷重との少なくとも一方が計量されるように構成される。そして、この傾斜姿勢時の前輪または後輪の印加荷重値と、先に求められた車両100の総重量値W0および前後方向における重心位置と、に基づいて、車両100の重心高さHが求められてもよい。