特許第5969208号(P5969208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969208インクジェット用硬化性組成物及び電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969208
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】インクジェット用硬化性組成物及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20160804BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20160804BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20160804BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20160804BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160804BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C09D11/30
   B41M5/00 E
   C08G59/18
   C08G59/40
   H01L21/30 502R
   H01L21/30 564Z
   H05K3/28 D
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2011-539829(P2011-539829)
(86)(22)【出願日】2011年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2011071335
(87)【国際公開番号】WO2012039379
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年1月20日
【審判番号】不服2014-22996(P2014-22996/J1)
【審判請求日】2014年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-212265(P2010-212265)
(32)【優先日】2010年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 倫久
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴志
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀
(72)【発明者】
【氏名】鹿毛 崇至
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 駿夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 孝徳
【合議体】
【審判長】 國島 明弘
【審判官】 冨士 良宏
【審判官】 日比野 隆治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−506187(JP,A)
【文献】 特開2010−111716(JP,A)
【文献】 特開2005−68280(JP,A)
【文献】 特開2010−59299(JP,A)
【文献】 特開2001−220526(JP,A)
【文献】 特開2010−143982(JP,A)
【文献】 特開平5−78454(JP,A)
【文献】 特開昭63−205313(JP,A)
【文献】 特開平2−283718(JP,A)
【文献】 特開2000−239418(JP,A)
【文献】 特開昭59−126428(JP,A)
【文献】 特開2011−21079(JP,A)
【文献】 特開2011−26403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00-201/10, C08G59/00-59/72, B41M5/00-5/52, B41J2/00-2/525, H05K3/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式により塗工され、かつ光の照射と熱の付与とにより硬化するインクジェット用硬化性組成物であって、
(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有する化合物と
メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物以外の光反応性化合物と、
光重合開始剤と
メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物以外のエポキシ基を有する化合物と、
潜在性硬化剤とを含み、
前記(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有する化合物が、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有し、
前記(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有する化合物が、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、及びエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物からなる群から選択された少なくとも1種であり、かつ
JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が160mPa・s以上、1200mPa・s以下である、インクジェット用硬化性組成物。
【請求項2】
インクジェット用硬化性組成物100重量%中、前記(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有する化合物と前記エポキシ基を有する化合物との合計の含有量が15重量%以上、50重量%以下である、請求項1に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤が、α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤である、請求項1又は2に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項4】
前記光重合開始剤が、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤である、請求項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項5】
前記潜在性硬化剤が、ジシアンジアミドと、該ジシアンジアミドと反応しうる官能基を有する官能基含有化合物とを反応させた反応粘稠物である、請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項6】
前記光反応性化合物が、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項7】
前記光反応性化合物が、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項8】
前記光反応性化合物が、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物と、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物との双方を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画する工程と、
パターン状に描画された前記インクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備える、電子部品の製造方法。
【請求項10】
レジストパターンを有する電子部品であるプリント配線板の製造方法であって、
前記インクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画し、パターン状に描画された前記インクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、レジストパターンを形成する、請求項に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式により塗工されるインクジェット用硬化性組成物に関し、基板上にレジストパターンなどの硬化物層を形成するために好適に用いられるインクジェット用硬化性組成物、並びに該インクジェット用硬化性組成物により形成された硬化物層を有する電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線が上面に設けられた基板上に、パターン状のソルダーレジスト膜であるソルダーレジストパターンが形成されたプリント配線板が多く用いられている。電子機器の小型化及び高密度化に伴い、プリント配線板では、より一層微細なソルダーレジストパターンが求められている。
【0003】
微細なソルダーレジストパターンを形成する方法として、インクジェット方式によりソルダーレジスト用組成物を塗工する方法が提案されている。インクジェット方式では、スクリーン印刷方式によりソルダーレジストパターンを形成する場合よりも、工程数が少なくなる。このため、インクジェット方式では、ソルダーレジストパターンを容易にかつ効率的に形成することができる。
【0004】
インクジェット方式によりソルダーレジスト用組成物を塗工する場合、塗工時の粘度がある程度低いことが要求される。
【0005】
そこで、インクジェット方式により塗工可能なソルダーレジスト用組成物が、下記の特許文献1に開示されている。下記の特許文献1には、(メタ)アクリロイル基と熱硬化性官能基とを有するモノマーと、重量平均分子量が700以下である光反応性希釈剤と、光重合開始剤とを含むインクジェット用硬化性組成物が開示されている。このインクジェット用硬化性組成物の25℃での粘度は、150mPa・s以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2004/099272A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のインクジェット用硬化性組成物の粘度は比較的低い。このため、特許文献1に記載のインクジェット用硬化性組成物は、インクジェット方式にて基板上に塗工することが可能である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット用硬化性組成物では、硬化後の硬化物の耐熱性が低くなるという問題がある。このため、特許文献1に記載のインクジェット用硬化性組成物を用いて基板上にソルダーレジストパターンを形成し、プリント配線板を得た場合に、ソルダーレジストパターンの耐熱性が低いため、プリント配線板を長期間使用できなかったり、プリント配線板の信頼性が低かったりする。
【0009】
さらに、特許文献1に記載のインクジェット用硬化性組成物を用いたソルダーレジストパターンにおいて、光硬化した光硬化成分と熱硬化した熱硬化成分とが分離することがある。このため、ソルダーレジストパターンが不均一になるという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、インクジェット方式により塗工される硬化性組成物であって、硬化後の硬化物膜の均一性を高めることができ、かつ硬化物の耐熱性を高めることができるインクジェット用硬化性組成物、並びに該インクジェット用硬化性組成物を用いた電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、インクジェット方式により塗工され、かつ光の照射と熱の付与とにより硬化するインクジェット用硬化性組成物であって、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物と、該(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物以外の光反応性化合物と、光重合開始剤と、上記(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物以外の環状エーテル基を有する化合物と、潜在性硬化剤とを含み、上記(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物が、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有し、かつJIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が160mPa・s以上、1200mPa・s以下である、インクジェット用硬化性組成物が提供される。
【0012】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物のある特定の局面では、上記(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物は、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、及びエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物からなる群から選択された少なくとも1種である。
【0013】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物100重量%中、上記(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物と上記環状エーテル基を有する化合物との合計の含有量は15重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。
【0014】
上記光重合開始剤は、α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。上記光重合開始剤は、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤であることがより好ましい。
【0015】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物の他の特定の局面では、上記潜在性硬化剤は、ジシアンジアミドと、該ジシアンジアミドと反応しうる官能基を有する官能基含有化合物とを反応させた反応粘稠物である。
【0016】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物の別の特定の局面では、上記光反応性物は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物を含む。
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物のさらに別の特定の局面では、上記光反応性化合物は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物を含む。
【0017】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物のさらに他の特定の局面では、上記光反応性化合物は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物と、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物との双方を含む。
【0018】
また、本発明の広い局面によれば、本発明に従って構成されたインクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画する工程と、パターン状に描画された上記インクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備える、電子部品の製造方法が提供される。
【0019】
本発明に係る電子部品の製造方法のある特定の局面では、レジストパターンを有する電子部品であるプリント配線板の製造方法であり、上記インクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画し、パターン状に描画された上記インクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、レジストパターンを形成する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基及び環状エーテル基を有する化合物と、光反応性化合物と、光重合開始剤と、環状エーテル基を有する化合物と、潜在性硬化剤とを含むので、光の照射及び熱の付与により硬化する。さらに、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、上記組成を有し、かつ上記粘度が160mPa・s以上、1200mPa・s以下であるので、インクジェット方式により塗工可能である。さらに、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、上記組成を有し、更に上記(メタ)アクリロイル基及び環状エーテル基を有する化合物が(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有するので、硬化後の硬化物の耐熱性を高めることができる。さらに、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、硬化後の硬化物膜の均一性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0022】
(インクジェット用硬化性組成物)
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)と、光反応性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、環状エーテル基を有する化合物(D)と、潜在性硬化剤(E)とを含む。光反応性化合物(B)は、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)以外の光反応性化合物である。環状エーテル基を有する化合物(D)は、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)以外の環状エーテル基を有する化合物である。(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有する。上記「(メタ)アクリロイル基」の用語は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。
【0023】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)と光反応性化合物(B)と光重合開始剤(C)とを含むので、光の照射により硬化可能である。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物(D)と潜在性硬化剤(E)とを含むので、熱の付与によっても硬化可能である。従って、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、光の照射と熱の付与とにより硬化可能であり、インクジェット用光及び熱硬化性組成物である。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、光の照射により一次硬化物を得た後、一次硬化物に熱を付与することにより本硬化させ、硬化物であるレジストパターンを得ることができる。このように、光の照射により一次硬化を行うことで、基板等の塗工対象部材上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物の濡れ拡がりを抑制することができる。従って、微細なレジストパターンを高精度に形成することができる。
【0024】
さらに、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物のJIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度は、160mPa・s以上、1200mPa・s以下である。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、上記組成を有し、かつ上記粘度が上記範囲内であるので、インクジェット方式により塗工可能である。
【0025】
さらに、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)と、光反応性化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、環状エーテル基を有する化合物(D)と、潜在性硬化剤(E)とを含むので、更に化合物(A)が(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有するので、硬化物の耐熱性を高めることができる。従って、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物を用いたプリント配線板などの電子部品を長期間使用でき、かつ該電子部品の信頼性を高めることができる。
【0026】
さらに、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、硬化後の硬化物膜の均一性を高めることもできる。例えば、インクジェット方式によりインクジェット用硬化性組成物を、塗工対象部材上に塗工し、光の照射及び熱の付与により組成物を硬化させることによって、均一なレジストパターンなどの硬化物層を得ることができる。具体的には、光硬化した光硬化成分と熱硬化した熱硬化成分との分離を抑制でき、硬化物膜であるレジストパターンなどにおいて、むらを生じ難くすることができる。
【0027】
以下、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0028】
[(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)]
(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有する。化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基を3個以上有さない。このような化合物自体は、従来公知である。(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)は、環状エーテル基を2個以上有する化合物の一部の環状エーテル基を(メタ)アクリロイル基に変換した化合物であってもよい。このような化合物を用いても、硬化物の耐熱性及び硬化物膜の均一性を高めることができる。
【0030】
化合物(A)の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0031】
硬化物の耐熱性及び硬化物膜の均一性をより一層高める観点からは、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)は、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、及びエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物からなる群から選択された少なくとも1種であることが特に好ましい。エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られる。上記エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物は、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル以外の化合物であることが好ましい。上記「(メタ)アクリル」の用語は、アクリルとメタクリルとを示す。
【0032】
化合物(A)は、例えば、環状エーテル基を2個以上有する化合物(環状エーテル基含有化合物)と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することによっても得られる。このとき、2個以上の環状エーテル基のうちの一部が、(メタ)アクリロイル基に変換される。(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)は、環状エーテル基を2個以上有する化合物の一部の環状エーテル基を(メタ)アクリロイル基に変換した化合物であることも好ましい。この化合物は、部分(メタ)アクリレート化環状エーテル基含有化合物とも呼ばれる。この反応により得られる化合物は、環状エーテル基から(メタ)アクリロイル基への変換反応によって、一般にヒドロキシ基を有する。(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)は、ヒドロキシ基を有することが好ましい。該ヒドロキシ基は、環状エーテル基が(メタ)アクリロイル基に変換されることにより生じたヒドロキシ基であることが好ましい。
【0033】
環状エーテル基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換され(転化率)、部分(メタ)アクリル化されていることが好ましい。環状エーテル基の50%が(メタ)アクリロイル基に変換されていることがより好ましい。
【0034】
化合物(A)における環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。なかでも、硬化性を高め、かつ耐熱性により一層優れた硬化物を得る観点からは、上記環状エーテル基はエポキシ基であることが好ましい。
【0035】
化合物(A)の配合量は、光の照射及び熱の付与により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されない。化合物(A)の配合量の一例を示すと、インクジェット用硬化性組成物100重量%中、化合物(A)の含有量は、2重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、化合物(A)の含有量は、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、より好ましくは50重量%以下である。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、化合物(A)の含有量の上限は、成分(B)〜(E)及び他の成分の含有量などにより適宜調整される。
【0036】
[光反応性化合物(B)]
光反応性化合物(B)は、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)以外の光反応性化合物である。光反応性化合物(B)は、光の照射により硬化可能である。光反応性化合物(B)は、(メタ)アクリロイル基を有していてもよい。光反応性化合物(B)として、従来公知の光反応性化合物を用いることができる。光反応性化合物(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
光反応性化合物(B)は、環状エーテル基を有さないことが好ましい。環状エーテル基を有さない光反応性化合物は、化合物(A)及び化合物(D)と異なる。また、光反応性化合物(B)は、環状エーテル基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光反応性化合物であることが好ましい。
【0038】
光反応性化合物(B)としては、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物及び(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物等が挙げられる。
【0039】
上記多官能化合物としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸付加物、多価アルコールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリル酸付加物、ウレタン(メタ)アクリレート類、及びポリエステル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0040】
上記光反応性化合物のうち多官能化合物の具体例としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジメタノールジ(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニルジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
上記光反応性化合物のうち単官能化合物の具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びナフチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
光反応性化合物(B)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B1)を含むことが好ましい。該化合物(B1)の使用により、上記インクジェット用硬化性組成物の硬化物の耐湿熱性を高くすることができる。従って、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物を用いたプリント配線板を長期間使用でき、かつ該プリント配線板の信頼性を高めることができる。
【0043】
上記化合物(B1)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(B1−1)であることが好ましい。従って、光反応性化合物(B)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(B1−1)を含むことが好ましい。上記化合物(B1)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物(B1−2)であることも好ましい。従って、光反応性化合物(B)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物(B1−2)を含むことが好ましい。なかでも、硬化物の耐湿熱性をより一層高める観点からは、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(B1−1)が好ましい。
【0044】
さらに、光反応性化合物(B)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(B1−1)と、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物(B1−2)との双方を含むことがより好ましい。これらの場合には、上記インクジェット用硬化性組成物の硬化物の耐湿熱性がかなり高くなる。従って、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物を用いたプリント配線板などの電子部品をより一層長期間使用でき、かつ該電子部品の信頼性がより一層高くなる。また、単官能化合物(B1−2)の使用により、硬化物の耐湿熱性が高くなるだけでなく、硬化性組成物の吐出性も高くなる。なお、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物(B1−2)を用いた場合には、多環骨格を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能化合物を用いた場合と比べて、硬化物の耐湿熱性が高くなる。
【0045】
多官能化合物(B1−1)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有すれば特に限定されない。多官能化合物(B1−1)として、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する従来公知の多官能化合物を用いることができる。多官能化合物(B1−1)は、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するため、光の照射により重合が進行し、硬化する。多官能化合物(B1−1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
多官能化合物(B1−1)としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸付加物、多価アルコールのアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリル酸付加物、ウレタン(メタ)アクリレート類、及びポリエステル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0047】
多官能化合物(B1−1)の具体例としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジメタノールジ(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニルジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、硬化物の耐湿熱性をより一層高める観点からは、多官能化合物(B1−1)は、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。上記「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0048】
上記単官能化合物(B1−2)は、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有すれば特に限定されない。単官能化合物(B1−2)として、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個有する従来公知の単官能化合物を用いることができる。単官能化合物(B1−2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記単官能化合物(B1−2)の具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びナフチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、硬化物の耐湿熱性をより一層高める観点からは、単官能化合物(B1−2)は、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0050】
化合物(B1)における上記「多環骨格」とは、複数の環状骨格を連続して有する構造を示す。化合物(B1)における上記多環骨格としてはそれぞれ、多環脂環式骨格及び多環芳香族骨格等が挙げられる。
【0051】
上記多環脂環式骨格としては、ビシクロアルカン骨格、トリシクロアルカン骨格、テトラシクロアルカン骨格及びイソボルニル骨格等が挙げられる。
【0052】
上記多環芳香族骨格としては、ナフタレン環骨格、アントラセン環骨格、フェナントレン環骨格、テトラセン環骨格、クリセン環骨格、トリフェニレン環骨格、テトラフェン環骨格、ピレン環骨格、ペンタセン環骨格、ピセン環骨格及びペリレン環骨格等が挙げられる。
【0053】
光反応性化合物(B)の配合量は、光の照射により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されない。光反応性化合物(B)の配合量の一例を示すと、インクジェット用硬化性組成物100重量%中、光反応性化合物(B)の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、光反応性化合物(B)の含有量の上限は、成分(A)、成分(C)〜(E)及び他の成分の含有量などにより適宜調整される。
【0054】
インクジェット用硬化性組成物100重量%中、化合物(B1)の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下である。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、化合物(B1−1)及び化合物(B1−2)の各含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。化合物(B1)、化合物(B1−1)及び化合物(B1−2)の各含有量が上記下限以上であると、硬化物の耐湿熱性がより一層高くなる。化合物(B1)、化合物(B1−1)及び化合物(B1−2)の各含有量が上記上限以下であると、光の照射及び熱の付与により硬化性組成物を効果的に硬化させることができる。
【0055】
[光重合開始剤(C)]
光の照射により硬化性組成物を硬化させるために、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、光重合開始剤(C)を含む。光重合開始剤(C)としては、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤(C)は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
上記光ラジカル重合開始剤は特に限定されない。上記光ラジカル重合開始剤は、光の照射によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始するための化合物である。上記光ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アミノアセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、リボフラビンテトラブチレート、チオール化合物、2,4,6−トリス−s−トリアジン、有機ハロゲン化合物、ベンゾフェノン類、キサントン類及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。上記光ラジカル重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。上記アセトフェノン類としては、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン及び1,1−ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。上記アミノアセトフェノン類としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン及びN,N−ジメチルアミノアセトフェン等が挙げられる。上記アントラキノン類としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン及び1−クロロアントラキノン等が挙げられる。上記チオキサントン類としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。上記ケタール類としては、アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等が挙げられる。上記チオール化合物としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール及び2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。上記有機ハロゲン化合物としては、2,2,2−トリブロモエタノール及びトリブロモメチルフェニルスルホン等が挙げられる。上記ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン及び4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0058】
上記光ラジカル重合開始剤は、α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤であることがより好ましい。この特定の光ラジカル重合開始剤の使用により、露光量が少なくても、インクジェット用硬化性組成物を効率的に光硬化させることが可能になる。このため、光の照射によって、塗工されたインクジェット用硬化性組成物が濡れ拡がるのを効果的に抑制でき、微細なレジストパターンを高精度に形成することができる。さらに、上記光ラジカル重合開始剤がジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤である場合には、熱硬化速度を速くすることができ、組成物の光照射物の熱硬化性を良好にすることができる。
【0059】
本発明者らは、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤の使用により、光硬化性を良好にすることができるだけでなく、熱硬化性をも良好にすることができることを見出した。上記ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤は、熱硬化性の向上に大きく寄与する成分である。さらに、ジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤の使用により、硬化物の耐熱性及び絶縁信頼性を高めることができる。絶縁信頼性に優れていると、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物により形成されたレジストパターンを有するプリント配線板などの電子部品が高湿度の条件下で長期間使用されても、絶縁抵抗が充分に高く維持される。
【0060】
上記α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤の具体例としては、BASF社製のIRGACURE907、IRGACURE369、IRGACURE379及びIRGACURE379EG等が挙げられる。これら以外のα−アミノアルキルフェノン型光重合開始剤を用いてもよい。中でも、インクジェット用硬化性組成物の光硬化性と硬化物による絶縁信頼性とをより一層良好にする観点からは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE369)又は2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE379又はIRGACURE379EG)が好ましい。これらはジメチルアミノ基を有するα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤である。
【0061】
上記光ラジカル重合開始剤とともに、光重合開始助剤を用いてもよい。該光重合開始助剤としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン及びトリエタノールアミン等が挙げられる。これら以外の光重合開始助剤を用いてもよい。上記光重合開始助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
また、可視光領域に吸収があるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)のチタノセン化合物などを、光反応を促進するために用いてもよい。
上記光カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、メタロセン化合物及びベンゾイントシレート等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
化合物(A)と光反応性化合物(B)との合計100重量部に対して、光重合開始剤(C)の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは3重量部以上、好ましくは30重量部以下、より好ましくは15重量部以下、更に好ましくは10重量部以下である。光重合開始剤(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、光の照射により硬化性組成物がより一層効果的に硬化する。
【0064】
[環状エーテル基を有する化合物(D)]
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、熱の付与によって効率的に硬化するように、環状エーテル基を有する化合物(D)を含む。化合物(D)の使用により、光の照射によりインクジェット用硬化性組成物を一次硬化させて一次硬化物を得た後に、熱の付与により一次硬化物をより一層効率的に硬化させることができる。このため、化合物(D)の使用により、レジストパターンを効率的にかつ精度よく形成することができ、更に硬化物の耐熱性及び絶縁信頼性を高めることができる。環状エーテル基を有する化合物(D)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
環状エーテル基を有する化合物(D)は、化合物(A)及び光反応性化合物(B)の双方と異なる化合物であって、環状エーテル基を有すれば特に限定されない。化合物(D)における環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。なかでも、硬化性を高め、かつ耐熱性により一層優れた硬化物を得る観点からは、上記環状エーテル基はエポキシ基であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(D)は、環状エーテル基を2個以上有することが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(D)は、(メタ)アクリロイル基を有さないことが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有さず、かつ環状エーテル基を有する化合物(D)は、化合物(A)と異なる。
【0066】
エポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ジグリシジルフタレート化合物、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ化合物、ビキシレノール型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、テトラグリシジルキシレノイルエタン化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ化合物、キレート型エポキシ化合物、グリオキザール型エポキシ化合物、アミノ基含有エポキシ化合物、ゴム変性エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ化合物、シリコーン変性エポキシ化合物及びε−カプロラクトン変性エポキシ化合物等が挙げられる。
【0067】
上記環状エーテル基を有する化合物(D)は、芳香族骨格を有することが好ましい。芳香族骨格及び環状エーテル基を有する化合物の使用により、上記硬化性組成物の保管時及び吐出時の熱安定性がより一層良好になり、上記硬化性組成物の保管時にゲル化が生じ難くなる。また、芳香族骨格及び環状エーテル基を有する化合物は、芳香族骨格を有さずかつ環状エーテル基を有する化合物と比べて、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)、光反応性化合物(B)及び潜在性硬化剤(E)との相溶性に優れていので、絶縁信頼瀬性がより一層良好になる。
【0068】
オキセタニル基を有する化合物は、例えば、特許第3074086号公報に例示されている。
【0069】
環状エーテル基を有する化合物(D)は25℃で液状であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(D)の25℃での粘度は、300mPa・sを超えることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(D)の25℃での粘度は、80Pa・s以下であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(D)の粘度が上記下限以上であると、硬化物層を形成する際の解像度がより一層良好になる。環状エーテル基を有する化合物(D)の粘度が上記上限以下であると、上記硬化性組成物の吐出性がより一層良好になるとともに、環状エーテル基を有する化合物(D)と他の成分との相溶性がより一層高くなり、絶縁信頼性がより一層向上する。
【0070】
環状エーテル基を有する化合物(D)の配合量は、熱の付与により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されない。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、環状エーテル基を有する化合物(D)の含有量は2重量%以上、60重量%以下であることが好ましい。インクジェット用硬化性組成物100重量%中、環状エーテル基を有する化合物(D)の含有量は、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上、より好ましくは50重量%以下である。化合物(D)の含有量が上記下限以上であると、熱の付与により硬化性組成物をより一層効果的に硬化させることができる。化合物(D)の含有量が上記上限以下であると、硬化物の耐熱性がより一層高くなり、インクジェット方式により塗工されたインクジェット用硬化性組成物が濡れ拡がるのをより一層抑制できる。
【0071】
硬化物の耐熱性及び硬化物膜の均一性をより一層高める観点からは、インクジェット用硬化性組成物100重量%中、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)と環状エーテル基を有する化合物(D)との合計の含有量は、好ましくは8重量%以上、より好ましくは15重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは63重量%以下、更に好ましくは60重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。特に、インクジェット用硬化性組成物100重量%中、化合物(A)と化合物(D)との合計の含有量は、15重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。化合物(A)と化合物(D)との合計の含有量が15重量%以上であると、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。化合物(A)と化合物(D)との合計の含有量が50重量%以下であると、硬化物膜の均一性をより一層高めることができる。
【0072】
[潜在性硬化剤(E)]
潜在性硬化剤(E)は特に限定されない。潜在性硬化剤(E)として、従来公知の潜在性硬化剤を用いることができる。潜在性硬化剤(E)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
潜在性硬化剤(E)としては、ジシアンジアミド及びヒドラジド系化合物等が挙げられる。
【0074】
加温された際の硬化性組成物の粘度変化をより一層小さくし、ポットライフをより一層長くする観点からは、潜在性硬化剤(E)はジシアンジアミドであることが好ましい。
潜在性硬化剤(E)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート樹脂又はスチレン樹脂等により形成されたシェルにより、トリフェニルホスフィン(熱硬化剤)が被覆されている潜在性硬化剤(例えば、日本化薬社製「EPCAT−P」及び「EPCAT−PS」)、ポリウレア系重合体又はラジカル重合体により形成されたシェルにより、アミンなどの熱硬化剤が被覆されている潜在性硬化剤(特許第3031897号公報及び特許第3199818号公報に記載)、変性イミダゾールなどの熱硬化剤をエポキシ樹脂中に分散させて閉じ込め、粉砕することにより得られた潜在性硬化剤(旭化成イーマテリアルズ社製「ノバキュアHXA3792」及び「HXA3932HP」)、熱可塑性高分子内に硬化剤を分散させ、含有させた潜在性硬化剤(特許第3098061号公報に記載)、並びにテトラキスフェノール類化合物などにより被覆されたイミダゾール潜在性硬化剤(例えば、日本曹達製「TEP−2E4MZ」及び「HIPA−2E4MZ」)等が挙げられる。これら以外の潜在性硬化剤を用いてもよい。
【0075】
硬化剤(E)は、ジシアンジアミドと、該ジシアンジアミドと反応しうる官能基を有する官能基含有化合物とを反応させた反応粘稠物(E1)であることが好ましい。このような反応粘稠物(E1)の使用により、硬化物による絶縁信頼性を高くすることができる。さらに、上記硬化性組成物は50℃以上に加温されても粘度が変化し難くなり、ポットライフが長くなる。
【0076】
なお、上記反応粘稠物(E1)は、インクジェット用硬化性組成物に用いる前に反応粘稠物(E1)単独で粘稠な性状を有していればよく、インクジェット用硬化性組成物中では粘稠でなくてもよい。また、インクジェット用硬化性組成物から上記反応粘稠物(E1)を取り出したときに、該反応粘稠物が粘稠であってもよい。
【0077】
常温(23℃)で固体であるジシアンジアミド(ジシアンジアミド粒子)は、液状成分中に固体で存在するために、保管中に沈降したり、インクジェットヘッドのノズル詰まりを引き起こしたりする可能性がある。このような問題点を解消するために、ジシアンジアミドをあらかじめ、該ジシアンジアミドと反応しうる官能基を有する官能基含有化合物と反応させ、反応粘稠物(E1)を作製し、組成物中に添加することが好ましい。すなわち、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、ジシアンジアミドと、該ジシアンジアミドと反応しうる官能基を有する官能基含有化合物とを反応させた反応粘稠物(E1)を硬化剤(E)として用いることが好ましい。この反応粘稠物(E1)を用いれば、組成物のポットライフ及び硬化物による絶縁信頼性が良好になる。
【0078】
上記インクジェット用硬化性組成物中に配合される前の上記反応粘稠物(E1)には、有機溶剤に配合されていないか、又は有機溶剤に配合されておりかつ上記反応粘稠物(E1)100重量部に対して配合されている有機溶剤の量が100重量部以下であることが好ましい。上記反応粘稠物(E1)が有機溶剤に配合されている場合には、上記反応粘稠物(E1)100重量部に対して配合されている有機溶剤の量は50重量部以下であることが好ましく、20重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることが更に好ましく、1重量部以下であることが特に好ましい。
【0079】
上記反応粘稠物(E1)は、ジシアンジアミドの活性水素の一部に、上記官能基含有化合物を反応させた反応物であることが好ましい。上記官能基含有化合物のジシアンジアミドと反応しうる官能基は、一般にジシアンジアミドの活性水素の一部と反応する。
【0080】
上記官能基含有化合物と反応される上記ジシアンジアミドは粉末状であることが好ましい。粉末状のジシアンジアミドを上記官能基含有化合物と反応させることにより、粉末状ではなくなり、粘稠な上記反応粘稠物(E1)が得られる。
【0081】
上記反応粘稠物(E1)を容易に合成し、更にポットライフが長い硬化性組成物を得る観点からは、上記ジシアンジアミドと反応される上記官能基含有化合物は、水酸基、環状エーテル基、カルボキシル基及びイソシアネート基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。
【0082】
上記反応粘稠物(E1)を容易に合成し、更にポットライフが長い硬化性組成物を得る観点からは、上記ジシアンジアミドと反応される上記官能基含有化合物は、環状エーテル基を有する化合物であることが好ましい。ジシアンジアミドと反応される該環状エーテル基を有する化合物は、環状エーテル基を1個有する化合物であることが好ましい。
上記反応粘稠物(E1)を容易に合成し、更にポットライフが長い硬化性組成物を得る観点からは、上記ジシアンジアミドと反応される上記官能基含有化合物は、エポキシ基を有する化合物であることが好ましい。ジシアンジアミドと反応される該エポキシ基を有する化合物は、エポキシ基を1個有する化合物であることが好ましい。
【0083】
上記反応粘稠物(E1)を容易に合成し、更にポットライフが長いインクジェット用硬化性組成物を得る観点からは、更に硬化性組成物の硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、上記ジシアンジアミドと反応される官能基含有化合物は、芳香族骨格を有することが好ましく、芳香族骨格と環状エーテル基とを有する化合物であることがより好ましく、芳香族骨格とエポキシ基とを有する化合物であることが特に好ましい。
【0084】
上記官能基含有化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オルトクレジルグリシジルエーテル、メタクレジルグリシジルエーテル、パラクレジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラt−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類や、グリシジル(メタ)アクリレート、及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0085】
硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、上記官能基含有化合物は、芳香環を有するフェニルグリシジルエーテル、オルトクレジルグリシジルエーテル、メタクレジルグリシジルエーテル、パラクレジルグリシジルエーテル又はパラt−ブチルフェニルグリシジルエーテルであることが好ましい。
【0086】
上記ジシアンジアミドと上記官能基含有化合物との反応において、ジシアンジアミド1モルに対し、上記官能基含有化合物を好ましくは0.2モル以上、より好ましくは1モル以上、好ましくは4モル以下、より好ましくは3モル以下反応させることが望ましい。すなわち、上記反応粘稠物(E1)は、上記ジシアンジアミド1モルに対して、上記官能基含有化合物を好ましくは0.2モル以上、より好ましくは1モル以上、好ましくは4モル以下、より好ましくは3モル以下反応させた反応粘稠物であることが望ましい。ポットライフにより一層優れた硬化性組成物を得る観点からは、上記反応粘稠物(E1)は、上記ジシアンジアミド1モルに対して、上記官能基含有化合物を1モル以上、3モル以下反応させた反応粘稠物であることが特に望ましい。上記官能基含有化合物の使用量が上記下限未満であると、未反応のジシアンジアミドが析出するおそれがある。上記官能基含有化合物の使用量が上記上限を超えると、上記反応粘稠物の活性水素がすべて失活し、化合物(D)を硬化させることができなくなるおそれがある。なお、この反応では、必要に応じて溶媒又は反応促進剤の存在下、60℃から140℃で反応させることが好ましい。
【0087】
上記ジシアンジアミドと上記官能基含有化合物との反応時に、ジシアンジアミドを溶解させるために溶剤を用いてもよい。該溶剤は、ジシアンジアミドを溶解させることが可能な溶剤であればよい。使用可能な溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド及びメチルセロソルブ等が挙げられる。
【0088】
上記ジシアンジアミドと上記官能基含有化合物との反応を促進するため、反応促進剤を用いてもよい。反応促進剤として、フェノール類、アミン類、イミダゾール類及びトリフェニルフォスフィンなどの公知慣用の反応促進剤を使用できる。
【0089】
ポットライフの低下を抑制し、かつ硬化むらを抑制する観点からは、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物では、上記反応粘稠物(E1)は、環状エーテル基を有する化合物(D)と相溶していることが好ましく、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)と相溶していることが好ましく、光反応性化合物(B)と相溶していることが好ましく、更に硬化性組成物中に溶解していることが好ましい。
【0090】
上記反応粘稠物(E1)は、環状エーテル基を有する化合物(D)と相溶可能であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)と相溶可能であることが好ましく、光反応性化合物(B)と相溶可能であることが好ましい。
【0091】
上記反応粘稠物(E1)は、例えば、粉末状のジシアンジアミドと上記官能基含有化合物との反応により得られた非粉末状の反応粘稠物である。インクジェット吐出性をより一層高める観点からは、上記反応粘稠物(E1)は、固体ではないことが好ましく、結晶ではないことが好ましく、結晶性固体ではないことが好ましい。上記反応粘稠物(E1)は、液状又は半固形状であることが好ましい。
【0092】
上記反応粘稠物(E1)は、透明又は半透明であることが好ましい。上記反応粘稠物(E1)が透明又は半透明であるか否かは、厚み5mmの上記反応粘稠物(E1)を介して物体をみたときに、該物体が視認可能であるか否かで判断できる。
【0093】
環状エーテル基を有する化合物(D)と潜在性硬化剤(E)との配合比率は特に限定されない。環状エーテル基を有する化合物(D)100重量部に対して、潜在性硬化剤(E)の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは70重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。
【0094】
[他の成分]
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、潜在性硬化剤(E)とともに、潜在性硬化剤(E)以外の熱硬化剤を含んでいてもよい。さらに、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0095】
上記熱硬化剤の具体例としては、有機酸、アミン化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、フェノール化合物、ユリア化合物、ポリスルフィッド化合物及び酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤として、アミン−エポキシアダクトなどの変性ポリアミン化合物を用いてもよい。
【0096】
上記硬化促進剤としては、第三級アミン、イミダゾール、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、有機金属塩、リン化合物及び尿素系化合物等が挙げられる。
【0097】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、粘度を調整する目的などにより、必要に応じて、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤としては、硬化性組成物中の成分と反応しない溶剤であることが好ましい。硬化性組成物の硬化反応を行う前にオーブン又はホットプレートでの加熱、並びに減圧チャンバー内での減圧により乾燥除去することが可能であるため、揮発性の溶剤が好ましい。また、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、少量であれば有機溶剤を含んでいてもよい。
【0098】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で種々の添加剤を配合してもよい。該添加剤としては特に限定されず、着色剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤及び密着性付与剤等が挙げられる。
【0099】
上記着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック及びナフタレンブラック等が挙げられる。上記重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール及びフェノチアジン等が挙げられる。上記消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤及び高分子系消泡剤等が挙げられる。上記レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤及び高分子系レベリング剤等が挙げられる。上記密着性付与剤としては、イミダゾール系密着性付与剤、チアゾール系密着性付与剤、トリアゾール系密着性付与剤及びシランカップリング剤が挙げられる。
【0100】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物においては、JIS K2283に準拠して測定された25℃での粘度が160mPa・s以上、1200mPa・s以下である。インクジェット用硬化性組成物の粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、インクジェット用硬化性組成物をインクジェットヘッドから容易にかつ精度よく吐出できる。さらに、インクジェット用硬化性組成物が50℃以上に加温されても、該組成物をインクジェットヘッドから容易にかつ精度よく吐出できる。
【0101】
上記粘度は、好ましくは1000mPa・s以下、更に好ましくは500mPa・s未満である。上記粘度が好ましい上記上限を満足すると、上記硬化性組成物をヘッドから連続吐出したときに、吐出性がより一層良好になる。また、上記硬化性組成物の濡れ拡がりをより一層抑制し、硬化物層を形成する際の解像度をより一層高める観点からは、上記粘度は好ましくは500mPa・s以上である。
【0102】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、有機溶剤を含まないか、又は有機溶剤を含みかつ上記硬化性組成物100重量%中の上記有機溶剤の含有量は50重量%以下であることが好ましい。上記硬化性組成物100重量%中、上記有機溶剤の含有量はより好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。上記有機溶剤の含有量が少ないほど、硬化物層を形成する際の解像度がより一層良好になる。
【0103】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、有機溶剤を含まないか、又は有機溶剤を含みかつ上記反応粘稠物(E1)100重量部に対して上記有機溶剤の含有量は50重量部以下であることが好ましい。上記反応粘稠物(E1)100重量部に対して、上記有機溶剤の含有量はより好ましくは20重量部以下、更に好ましくは10重量部以下、特に好ましくは1重量部以下である。上記有機溶剤の含有量が少ないほど、硬化物層を形成する際の解像度がより一層良好になる。
【0104】
(電子部品の製造方法)
次に、本発明に係る電子部品の製造方法について説明する。
本発明に係る電子部品の製造方法は、上述のインクジェット用硬化性組成物を用いることを特徴とする。すなわち、本発明に係る電子部品の製造方法では、先ず、上記インクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターンを描画する。このとき、上記インクジェット用硬化性組成物を直接描画することが特に好ましい。「直接描画する」とは、マスクを用いずに描画することを意味する。上記電子部品としては、プリント配線板及びタッチパネル部品等が挙げられる。上記電子部品は、配線板であることが好ましく、プリント配線板であることがより好ましい。
【0105】
上記インクジェット用硬化性組成物の塗工には、インクジェットプリンタが用いられる。該インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドを有する。インクジェットヘッドはノズルを有する。インクジェット装置は、インクジェット装置内又はインクジェットヘッド内の温度を50℃以上に加温するための加温部を備えることが好ましい。上記インクジェット用硬化性組成物は、塗工対象部材上に塗工されることが好ましい。上記塗工対象部材としては、基板等が挙げられる。該基板としては、配線等が上面に設けられた基板等が挙げられる。上記インクジェット用硬化性組成物は、プリント基板上に塗工されることが好ましい。
【0106】
また、本発明に係る電子部品の製造方法により、基板をガラスを主体とする部材に変え、液晶表示装置等の表示装置用のガラス基板を作製することも可能である。具体的には、ガラスの上に、蒸着等の方法によりITO等の導電パターンを設け、この導電パターン上に本発明に係る電子部品の製造方法により、インクジェット方式で硬化物層を形成してもよい。この硬化物層上に、導電インク等でパターンを設ければ、硬化物層が絶縁膜となり、ガラス上の導電パターンの中で、所定のパターン間にて電気的接続が得られる。
【0107】
次に、パターン状に描画されたインクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、硬化物層を形成する。このようにして、硬化物層を有する電子部品を得ることができる。該硬化物層は、絶縁膜であってもよく、レジストパターンであってもよい。該絶縁膜は、パターン状の絶縁膜であってもよい。該硬化物層はレジストパターンであることが好ましい。上記レジストパターンはソルダーレジストパターンであることが好ましい。
【0108】
本発明に係る電子部品の製造方法は、レジストパターンを有するプリント配線板の製造方法であることが好ましい。上記インクジェット用硬化性組成物を、インクジェット方式にて塗工し、パターン状に描画し、パターン状に描画された上記インクジェット用硬化性組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させて、レジストパターンを形成することが好ましい。
【0109】
パターン状に描画された上記インクジェット用硬化性組成物に、光を照射することにより一次硬化させ、一次硬化物を得てもよい。これにより描画されたインクジェット用硬化性組成物の濡れ拡がりを抑制することができ、高精度なレジストパターンが形成可能となる。また、光の照射により一次硬化物を得た場合には、一次硬化物に熱を付与することにより本硬化させ、硬化物を得、レジストパターンを形成してもよい。本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、光の照射及び熱の付与により硬化可能である。光硬化と熱硬化とを併用した場合には、耐熱性により一層優れたレジストパターンを形成することができる。熱の付与により硬化させる際の加熱温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0110】
上記光の照射は、描画の後に行われてもよく、描画と同時に行われてもよい。例えば、硬化性組成物の吐出と同時又は吐出の直後に光を照射してもよい。このように、描画と同時に光を照射するために、インクジェットヘッドによる描画位置に光照射部分が位置するように光源を配置してもよい。
【0111】
光を照射するための光源は、照射する光に応じて適宜選択される。該光源としては、UV−LED、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプ等が挙げられる。照射される光は、一般に紫外線であり、電子線、α線、β線、γ線、X線及び中性子線等であってもよい。
【0112】
インクジェット用硬化性組成物の塗工時における温度は、インクジェット用硬化性組成物がインクジェットヘッドから吐出できる粘度となる温度であれば特に限定されない。インクジェット用硬化性組成物の塗工時における温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、好ましくは100℃以下である。塗工時におけるインクジェット用硬化性組成物の粘度は、インクジェットヘッドから吐出できる範囲であれば特に限定されない。
【0113】
また、印刷時に、基板を冷却するという方法もある。基板を冷却すると、着弾時に硬化性組成物の粘度が上がり、解像度が良くなる。この際には、結露しない程度に冷却をとどめるか、結露しないよう雰囲気の空気を除湿することが好ましい。また、冷却することで、基板が収縮するので、寸法精度を補正してもよい。
【0114】
本発明に係るインクジェット用硬化性組成物は、潜在性硬化剤(E)を含むため、例えば、インクジェットヘッドにおいてインクジェット用硬化性組成物を加熱する場合であっても、インクジェット用硬化性組成物のポットライフが十分に長く、安定した吐出が可能である。さらに、インクジェット用硬化性組成物をインクジェット方式による塗工に適した粘度となるまで加熱できるため、本発明に係るインクジェット用硬化性組成物の使用により、プリント配線板などの電子部品を好適に製造することができる。
【0115】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0116】
(合成例1)
攪拌器、温度計、滴下ロートを備えた3つ口フラスコに、メチルセロソルブ50g、ジシアンジアミド15g、及び2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン1gを加え、100℃に加熱してジシアンジアミドを溶解させた。溶解後、ブチルグリシジルエーテル130gを滴下ロートから20分かけて滴下し、1時間反応させた。その後60℃に温度を下げ、減圧にして溶媒を除去し、黄色及び半透明の反応粘稠物を得た。得られた反応粘稠物は溶媒を含んでいなかった。
【0117】
(合成例2)
攪拌器、温度計、滴下ロートを備えた3つ口フラスコに、メチルセロソルブ50g、ジシアンジアミド15g、及び2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン1gを加え、100℃に加熱してジシアンジアミドを溶解させた。溶解後、オルソクレジルグリシジルエーテル40gを滴下ロートから20分かけて滴下し、1時間反応させた。その後60℃に温度を下げ、減圧にして溶媒を除去し、黄色及び半透明の反応粘稠物を得た。得られた反応粘稠物は溶媒を含んでいなかった。
【0118】
(合成例3)
オルソクレジルグリシジルエーテルの滴下量を40gから95gに変更したこと以外は合成例2と同様にして、黄色及び半透明の反応粘稠物を得た。得られた反応粘稠物は溶媒を含んでいなかった。
また、実施例及び比較例では、下記の表1に示す材料を適宜用いた。
【0119】
【表1】
【0120】
(実施例1)
(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)に相当するグリシジルメタクリレート10重量部と、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物(A)に相当するビスフェノールA型エポキシ化合物のエポキシアクリレート(ダイセルサイテック社製「EBECRYL 3700」)20重量部と、光反応性化合物(B)に相当するトリエチレングリコールジアクリレート30重量部と、光反応性化合物(B)に相当するイソボルニルアクリレート20重量部と、光重合開始剤(C)に相当するIrgacure 907(α−アミノアセトフェノン型光ラジカル重合開始剤、BASFジャパン社製)4重量部と、環状エーテル基を有する化合物(D)に相当するビスフェノールA型エポキシ化合物(三菱化学社製「jER828」)15重量部と、潜在性硬化剤(E)に相当するジシアンジアミド(三菱化学社製「DICY7」)1重量部とを混合し、インクジェット用硬化性組成物を得た。
【0121】
(実施例2〜43及び比較例1,2)
配合成分の種類及び配合量を下記の表2〜4に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、インクジェット用硬化性組成物を得た。
【0122】
なお、実施例27〜43で得られたインクジェット用硬化性組成物では、上記反応粘稠物は、(メタ)アクリロイル基と環状エーテル基とを有する化合物と相溶しており、光反応性化合物と相溶しており、かつ環状エーテル基を有する化合物と相溶しており、更に硬化性組成物中に溶解していた。
【0123】
(評価)
(1)粘度
JIS K2283に準拠して、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、得られたインクジェット用硬化性組成物の25℃での粘度を測定した。
【0124】
(2)吐出性
基板上にインクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから吐出した。上記インクジェットプリンタによる上記描画の際に、硬化性組成物が吐出可能かどうかを目視により評価し、吐出性を下記の基準で判定した。なお、粘度が500mPa・s以下である硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超える硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0125】
[吐出性の判定基準]
○○:硬化性組成物をヘッドから10時間以上連続して吐出可能であった
○:硬化性組成物をヘッドから10時間以上連続して吐出可能であるが、10時間の連続吐出の間にわずかに吐出むらが生じる
△:硬化性組成物をヘッドから連続して吐出可能であるが、10時間以上連続して連続して吐出不可能であった
×硬化性組成物をヘッドから吐出の初期段階で吐出不可能であった
【0126】
(3)濡れ拡がり
銅配線が上面に設けられたガラスエポキシ基板(100mm×100mm)を用意した。この基板上にインクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから吐出して塗工し、パターン状に描画した。なお、粘度が500mPa・s以下であるインクジェット用硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超えるインクジェット用硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0127】
基板上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み20μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cmとなるように照射した。
【0128】
紫外線を照射して5分後に、パターンの濡れ拡がりを目視により観察し、濡れ拡がりを下記の基準で判定した。
【0129】
[濡れ拡がりの判定基準]
○○:濡れ拡がりの状態が、狙いのライン幅+40μm以下
○:濡れ拡がりの状態が、狙いのライン幅+40μmを超え、75μm以下
×:描画部分から組成物層が濡れ拡がっており、ライン間の間隔が無くなっているか、又は濡れ拡がりの状態が、狙いのライン幅+75μmを超える
【0130】
(4)硬化物膜のむら
銅配線が上面に設けられたガラスエポキシ基板(100mm×100mm)を用意した。この基板を80℃に加温して、基板上にインクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタ(ヘッド温度:80℃)のインクジェットヘッドから吐出して、全面に塗工した。
【0131】
基板上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み20μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが100mJ/cmとなるように照射し、次に180℃で1時間加熱し、本硬化させ、硬化物であるレジストパターン(硬化物膜)を形成した。
得られた硬化物膜の表面を目視で観察し、硬化物膜にむらがあるか否かを評価した。硬化物膜のむらを下記の判定基準で判定した。
【0132】
[硬化物膜のむらの判定基準]
○○:目視で硬化物膜の表面にむらがない
○:目視で硬化物膜の表面に部分的にむらがある
×:目視で硬化物膜の表面の全体にむらがある
【0133】
(5)耐熱性
銅配線が上面に設けられたガラスエポキシ基板(100mm×100mm)を用意した。この基板を80℃に加温して、基板上にインクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタ(ヘッド温度:80℃)のインクジェットヘッドから吐出して、全面に塗工した。
【0134】
基板上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み20μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cmとなるように照射し、次に180℃で1時間加熱し、本硬化させ、硬化物であるレジストパターンを形成し、試験体を得た。
得られた試験体を、270℃の条件下で5分間放置した。その後、硬化物の基板に対する密着性をクロスカットテープ試験(JIS 5400 6.15)で確認し、耐熱性を下記の判定基準で判定した。1mm間隔で碁盤目に、硬化物に切り込みを100マス分カッターで作成し、次に切り込み部分を有する硬化物にセロハンテープ(JIS Z1522)を十分に貼りつけて、テープの一端を45度の角度で強く引き剥がして剥離状態を確認した。
【0135】
[耐熱性の判定基準]
○○:硬化物の剥離なし
○:硬化物の一部が剥離する
×:硬化物の全部が剥離する
【0136】
(6)貯蔵安定性(ポットライフの長さ)
5μmのメンブレンフィルターを用いて、得られたインクジェット用硬化性組成物をろ過し、ろ過したインクジェット用硬化性組成物を80℃で12時間加熱した。
【0137】
銅箔が上面に貼り付けられている銅箔付きFR−4基板を用意した。基板上の銅箔上に、インクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、ラインの幅80μmでライン間の間隔が80μmとなるように吐出して塗工し、パターン状に描画しようと試みた。このときのインクジェットヘッドからの吐出性から、貯蔵安定性を下記の判定基準で判定した。なお、粘度が500mPa・s以下であるインクジェット用硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超えるインクジェット用硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0138】
[貯蔵安定性の判定基準]
○:インクジェットヘッドから組成物を吐出できた
△:吐出前に組成物の硬化が進行しているか、又は組成物の粘度が上昇しており、インクジェットヘッドから組成物を吐出できなかった
×:組成物がかなり硬化している
【0139】
(7)絶縁信頼性(耐マイグレーション性)
IPC−B−25のくし型テストパターンBを用意した。このくし型テストパターンBを80℃に加温して、くし型テストパターンBの表面の全体を覆うようにインクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、吐出して塗工した。なお、粘度が500mPa・s以下であるインクジェット用硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超えるインクジェット用硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0140】
塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み20μm)に、高圧水銀灯を用いて、波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cmとなるように照射した。次に、一次硬化物を150℃で60分間加熱し、本硬化させ、硬化物であるレジストパターンを形成し、テストピースを得た。
【0141】
得られたテストピースを、85℃及び相対湿度85%及び直流50Vを印加した条件で、500時間加湿試験を行った。加湿試験後の絶縁抵抗を測定し、絶縁信頼性を下記の基準で判定した。
【0142】
[絶縁信頼性の判定基準]
○:絶縁抵抗が3×1010Ω以上
△:絶縁抵抗が1×10以上、3×1010未満
×:絶縁抵抗が1×10未満
【0143】
結果を下記の表2〜4に示す。なお、下記の表2〜4において、「−」は評価していないことを示す。
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【0146】
【表4】
【0147】
なお、α−アミノアセトフェノン型光重合開始剤を用いた実施例1〜24,27〜43の硬化性組成物では、α−アミノアセトフェノン型光重合開始剤以外の光重合開始剤を用いた実施例25,26の硬化性組成物と比べて、光照射後かつ熱硬化前の一次硬化物の表面のべたつきが少なく、熱硬化時の熱硬化性にも優れており、更に絶縁信頼性の評価結果も良好であった。
【0148】
また、ジメチルアミノ基を有さないα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤を用いた実施例1〜5,7〜12と、α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤以外の光ラジカル重合開始剤を用いた実施例25,26とでは、絶縁信頼性の評価結果はいずれも「△」であったが、ジメチルアミノ基を有さないα−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤を用いた実施例1〜5,7〜12における絶縁抵抗の値は、α−アミノアルキルフェノン型光ラジカル重合開始剤以外の光ラジカル重合開始剤を用いた実施例25,26における絶縁抵抗の値よりも高かった。
【0149】
なお、実施例13,27,40では、絶縁信頼性(耐マイグレーション性)の評価結果は、いずれも「○」であったが、実施例40の絶縁抵抗の値は、実施例13の絶縁抵抗の値よりも高く、更に実施例27の絶縁抵抗の値よりも高かった。
【0150】
また、実施例において、下記の耐湿熱性(耐熱性及び耐湿性)の評価を実施した。
【0151】
(8)耐湿熱性(耐熱性及び耐湿性)
銅配線が上面に設けられたガラスエポキシ基板(100mm×100mm)を用意した。この基板上にインクジェット用硬化性組成物を、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから吐出して、全面に塗工した。なお、粘度が500mPa・s以下である硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を80℃とし、粘度が500mPa・sを超える硬化性組成物の吐出試験時には、ヘッド温度を95℃とした。
【0152】
基板上に塗工されたインクジェット用硬化性組成物(厚み20μm)に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが1000mJ/cmとなるように照射し、次に180℃で1時間加熱し、硬化物(厚み20μm)を得た。
【0153】
得られた基板と硬化物との積層体を130℃及び相対湿度85%RHの条件下で24時間放置した。その後、硬化物の基板に対する密着性をクロスカットテープ試験(JIS 5400 6.15)で確認し、耐湿熱性を下記の判定基準で判定した。1mm間隔で碁盤目に、硬化物に切り込みを100マス分カッターで作成し、次に切り込み部分を有する硬化物にセロハンテープ(JIS Z1522)を十分に貼りつけて、テープの一端を45度の角度で強く引き剥がして剥離状態を確認した。
【0154】
この結果、多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A1−1)を含む実施例43の硬化性組成物の場合には、テープの剥離時に硬化物が剥離しなかった。多環骨格を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能化合物(A1−1)を含まない実施例1〜42の硬化性組成物の場合には、テープの剥離時に硬化物の一部又は全部が剥離していた。但し、実施例1〜42の硬化性組成物の場合には、テープの剥離前に硬化物は剥離していなかった。