(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記置換フェニレン芳香族ジエステルが3−メチル−5−tert−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾアート及び4−tert−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾアートからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、プロ触媒組成物の選択性を改善するためのプロセスを提供する。本プロセスは、置換フェニレン芳香族ジエステルの存在下でのプロ触媒前駆体のハロゲン化の間に反応温度を低下させることを含む。低下した反応温度により、プロ触媒組成物の選択性が増大する。反応温度が、115℃以上の温度から115℃未満に下げられる。
【0014】
1つの実施形態において、プロセスが提供され、このプロセスは、プロ触媒前駆体を置換フェニレン芳香族ジエステルの存在下でハロゲン化することを含む。ハロゲン化が、115℃未満の温度、又は、約90℃から100℃以下までの温度で行われる。プロセスはさらに、選択性指数が3.0未満又は2.5未満であるプロ触媒組成物を形成することを含む。1つの実施形態において、プロセスは、選択性指数が0.1〜2.5未満であるプロ触媒組成物を形成することを含む。
【0015】
プロ触媒前駆体は、マグネシウム成分化合物(MagMo)、混合マグネシウム・チタン化合物(MagTi)、又は、ベンゾアート含有塩化マグネシウム化合物(BenMag)であり得る。1つの実施形態において、プロ触媒前駆体はマグネシウム成分(「MagMo」)前駆体である。「MagMo前駆体」はマグネシウムを唯一の金属成分として含有する。MagMo前駆体はマグネシウム成分を含む。好適なマグネシウム成分の限定されない例には、無水塩化マグネシウム及び/若しくはそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシド若しくはマグネシウムアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハリド、並びに/又は、カルボナート化されたマグネシウムジアルコキシド若しくはマグネシウムアリールオキシドが含まれる。1つの実施形態において、MagMo前駆体はマグネシウムジ(C
1〜4)アルコキシドである。さらなる実施形態において、MagMo前駆体はジエトキシマグネシウムである。
【0016】
1つの実施形態において、プロ触媒前駆体は混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆体」はMg
dTi(OR
e)
fX
gの式を有し、但し、R
eは、1個〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基、又は、COR’(式中、R’は、1個〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である)である;それぞれのOR
e基は同じであるか、又は異なる;Xは独立して、塩素、臭素又はヨウ素であり、好ましくは塩素である;dは0.5〜56であるか、又は、2〜4である;fは2〜116であるか、又は、5〜15である;かつ、gは0.5〜116であるか、又は、1〜3である。前駆体が、アルコールをその調製で使用される反応混合物から除くことによる制御された沈殿形成によって調製される。1つの実施形態において、反応媒体が、芳香族液体とりわけ、塩素化芳香族化合物、最も具体的にはクロロベンゼンと、アルカノールとりわけ、エタノールとの混合物を含む。好適なハロゲン化剤には、四臭化チタン、四塩化チタン又は三塩化チタンが含まれ、とりわけ、四塩化チタンが含まれる。ハロゲン化で使用される溶液からのアルカノールの除去は、とりわけ望ましい形態及び表面積を有する固体前駆体の沈殿を生じさせる。その上、生じた前駆体は粒子サイズにおいて特に均一である。
【0017】
1つの実施形態において、プロ触媒前駆体はベンゾアート含有塩化マグネシウム物質である。本明細書中で使用される「ベンゾアート含有塩化マグネシウム」(「BenMag」)は、ベンゾアート系の内部電子供与体を含有するプロ触媒(すなわち、ハロゲン化されたプロ触媒前駆体)であり得る。BenMag物質はまた、チタン成分例えば、ハロゲン化チタンなどを含み得る。ベンゾアート系の内部供与体は不安定であり、プロ触媒の合成及び/又は触媒の合成の間に他の電子供与体によって置換され得る。好適なベンゾアート基の限定されない例には、エチルベンゾアート、メチルベンゾアート、エチルp−メトキシベンゾアート、メチルp−エトキシベンゾアート、エチルp−エトキシベンゾアート、エチルp−クロロベンゾアートが含まれる。1つの実施形態において、ベンゾアート基がエチルベンゾアートである。好適なBenMagプロ触媒前駆体の限定されない例には、The Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から入手可能なSHAC(商標)103及びSHAC(商標)310の商品名の触媒が含まれる。1つの実施形態において、BenMagプロ触媒前駆体は、ベンゾアート化合物の存在下におけるいずれかのプロ触媒前駆体(すなわち、MagMo前駆体又はMagTi前駆体)のハロゲン化の生成物であり得る。
【0018】
1つの実施形態において、プロ触媒前駆体は、D50が約5μm〜約25μmであるか、又は、約10μm〜約25μmであるプロ触媒前駆体粒子を調製するように合成される。前駆体調製はまた、粒子が、(角があり、でこぼこ又は平坦でない表面形態とは対照的に)角がなく、滑らかで、球状又は実質的に球状の表面形態にされる手順を含むことができる。続く前駆体のハロゲン化及びプロ触媒組成物への形成は粒子についてのD50のサイズ範囲を実質的に変化させない。従って、プロ触媒組成物についてのD50もまた約5μm〜約25μmであるか、又は、約10μm〜約25μmである。
【0019】
プロ触媒前駆体のハロゲン化が内部電子供与体の存在下で行われる。本明細書中で使用される「内部電子供与体」(又は「IED」)は、生じたプロ触媒組成物に存在する1つ又はそれ以上の金属に少なくとも1対の電子を供与する、プロ触媒組成物の形成中に加えられる化合物、又は、そうでない場合にはプロ触媒組成物の形成中に形成される化合物である。内部電子供与体は置換フェニレン芳香族ジエステルである。1つの実施形態において、置換フェニレン芳香族ジエステルはフェニレン芳香族ジエステルであり、下記の構造(I)を有する:
【化1】
【0020】
上記式において、R
1〜R
14は同じであるか、又は異なる。R
1〜R
14のそれぞれが、水素、ハロゲン、1個〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、及び、1個〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基、並びに、それらの組合せから選択される。ヒドロカルビル基は置換又は非置換であり得る。
【0021】
本明細書中で使用される用語「ヒドロカルビル」又は用語「炭化水素」は、水素原子及び炭素原子のみを含有する置換基であり、これには、分枝又は非分枝の化学種、飽和又は不飽和の化学種、環式、多環式、縮合型又は非環式の化学種、及び、それらの組合せが含まれる。ヒドロカルビル基の限定されない例には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アルキルアリール基及びアルキニル基が含まれる。
【0022】
本明細書中で使用される用語「置換(された)ヒドロカルビル」又は用語「置換(された)炭化水素」は、1つ又はそれ以上のヒドロカルビル置換基以外の基により置換されるヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル置換基以外の基の限定されない一例がヘテロ原子である。本明細書中で使用される「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の原子である。ヘテロ原子は、周期表のIV族、V族、VI族及びVII族に由来する炭素以外の原子が可能である。ヘテロ原子の限定されない例には、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、S及びSiが含まれる。置換されたヒドロカルビル基にはまた、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基が含まれる。本明細書中で使用される用語「ハロヒドロカルビル」基は、1つ又はそれ以上のハロゲン原子により置換されるヒドロカルビル基である。
【0023】
1つの実施形態において、フェニレン芳香族ジエステルは、構造(I)のR
1〜R
14の少なくとも1つが水素ではない「置換(された)フェニレン芳香族ジエステル」である。好適な置換されたフェニレンジエステルの限定されない例が(実施例の節において)表1に見出される。
【0024】
1つの実施形態において、置換フェニレン芳香族ジエステルが、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾアート及び4−tert−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾアートから選択される。
【0025】
「ハロゲン化剤」は、本明細書中で使用される場合、プロ触媒前駆体をハロゲン化物形態に転化させる化合物である。「チタナート化剤」は、本明細書中で使用される場合、触媒活性なチタン化学種をもたらす化合物である。ハロゲン化及びチタナート化により、プロ触媒前駆体に存在するマグネシウム成分が、チタン成分(例えば、ハロゲン化チタンなど)が堆積するハロゲン化マグネシウム担体に転化される。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、ハロゲン化及びチタナート化の期間中、内部電子供与体は、(1)活性部位の形成を規制し、それにより、触媒の立体選択性を高め、(2)マグネシウム系担体上のチタンの位置を規制し、(3)マグネシウム成分及びチタン成分の、それぞれのハロゲン化物への転化を容易にし、かつ、(4)転化中におけるハロゲン化マグネシウム担体の晶子サイズを規制すると考えられている。従って、内部電子供与体の提供により、高まった立体選択性を有するプロ触媒組成物が得られる。
【0026】
1つの実施形態において、ハロゲン化剤は、Ti(OR
e)
fX
hの式を有するハロゲン化チタンであり、式中、R
e及びXは上記のように定義され、fは0〜3の整数である;hは1〜4の整数である;かつ、f+hは4である。この方法では、ハロゲン化チタンはハロゲン化剤であり同時にチタナート化剤である。さらなる実施形態において、ハロゲン化チタンはTiCl
4であり、ハロゲン化が、TiCl
4によるプロ触媒前駆体の塩素化によって生じる。塩素化(及びチタナート化)が塩素化芳香族液体又は非塩素化芳香族液体(例えば、ジクロロベンゼン、o−クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン又はキシレン)の存在下で行われる。さらに別の実施形態において、ハロゲン化及びチタナート化が、40〜60体積パーセントのハロゲン化剤例えば、TiCl
4などを含む、ハロゲン化剤及び塩素化芳香族液体の混合物の使用によって行われる。
【0027】
プロ触媒組成物は内部電子供与体(すなわち、置換フェニレン芳香族ジエステル)の存在下で塩素化されて、塩素化芳香族化合物もまた含有する反応混合物を形成する。反応混合物は、塩素化の期間中、115℃未満の温度、又は、約90℃から100℃以下までの温度に加熱される。出願人らは、驚くべきことに、115℃未満の温度範囲における、具体的には90℃から100℃以下までの温度範囲におけるプロ触媒前駆体及び置換フェニレン芳香族ジエステルのハロゲン化(すなわち、塩素化)により、驚くべきことに、改善された選択性を有するプロ触媒組成物がもたらされることを発見している。従来型のプロ触媒組成物の調製の期間中におけるハロゲン化温度を下げることはプロ触媒選択性を低下させるか、又は、そうでない場合には損なうので、この結果は予想外である。具体的には、ハロゲン化温度を、フタラート系の内部電子供与体(例えば、ジイソブチルフタラートなど)の調製/ハロゲン化の期間中に115℃未満に下げることは、フタラート系プロ触媒組成物についての選択性を低下させるか、又は、そうでない場合には悪化させることが公知である。
【0028】
予想外ではあったが、115℃未満のハロゲン化温度により、置換フェニレンジベンゾアートが内部電子供与体であるとき、プロ触媒選択性が改善される。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、115℃未満の温度範囲におけるハロゲン化、また、90℃から100℃以下までの温度範囲におけるハロゲン化は、(i)チタン成分により占められるマグネシウム成分担体の形成を促進させつつ、同時に、(ii)置換フェニレン芳香族ジエステルの構造を保つことが考えられる。
【0029】
前述のプロセスはプロ触媒組成物の選択性を改善する。用語「選択性」(又は「プロ触媒選択性」)は、本明細書中で使用される場合、プロ触媒組成物から形成されるポリマーのサンプルに存在するアイソタクチックプロピレンホモポリマー/コポリマーの量によって示される。「アイソタクチック」ポリマーは、同じ立体配置を有するキラル中心を含有する。対照的に、「アタクチック」ポリマーは、同じ立体配置を有するキラル中心のランダムな分布を有する。
【0030】
プロ触媒選択性に関する計量は、プロ触媒組成物から形成されるポリマーサンプルのキシレン可溶分の重量パーセントである。用語「キシレン可溶分」(又は「XS」)は、本明細書中で使用される場合、25℃でキシレンに可溶性であるポリマーの画分である。この可溶性画分は、プロピレンホモポリマー/コポリマーにおける非晶質画分(すなわち、アタクチック画分)に相関し得る。アイソタクチックプロピレンホモポリマー/コポリマーはキシレンに不溶性である。従って、キシレン可溶分の重量パーセントが低いほど、ポリマーサンプルに存在するアイソタクチックポリマーの量が多くなり、かつ、プロ触媒選択性が高くなる。
【0031】
1つの実施形態において、プロ触媒組成物は所定の選択性指数を有する。「選択性指数」又は「プロ触媒選択性指数」は、プロ触媒組成物によって製造されるプロピレン系ポリマーの重量% XSである。プロ触媒選択性指数は、フォルマントポリマーの重量パーセント・キシレン可溶分を、ポリマーを製造するために使用されるプロ触媒組成物と関係づけるか、又は、そうでない場合には直接、フォルマントポリマーの重量パーセント・キシレン可溶分を、ポリマーを製造するために使用されるプロ触媒組成物と関連づける。プロ触媒選択性指数と、ポリマーについてのXSとは同じ値である。例えば、1.0のプロ触媒選択性指数は直接、フォルマントポリマーが1.0wt%のXSを有することにつながり、逆もまた成り立つ。従って、低い選択性指数を有するプロ触媒組成物(すなわち、重量% XSが低いフォルマントポリマー)は、高い選択性を有する。
【0032】
2つ以上のプロ触媒組成物についてのプロ触媒選択性が標準的条件のもとで評価される。用語「標準的条件」は、本明細書中で使用される場合、2つ以上の重合反応にわたって同じ(又は実質的に同じ)である試薬量及び重合条件である。本明細書中で使用される「重合条件」は、触媒組成物(プロ触媒及び助触媒)と、所望されるポリマーを形成するためのオレフィン(エチレンはオレフィンと見なされる)との間で重合を促進させるために好適な重合リアクタ内の温度、圧力及びリアクタパラメーターである。重合プロセスは、1つ又は2つ以上の重合リアクタで稼動する気相重合プロセス、スラリー重合プロセス又は塊状重合プロセスであり得る。それに応じて、重合リアクタは、気相重合リアクタ、液相重合リアクタ又はそれらの組合せであり得る。重合リアクタにおける水素の提供は重合条件の構成要素の1つであることが理解される。重合期間中、水素は連鎖移動剤であり、生成ポリマーの分子量(及び、それに対応してメルトフローレート)に影響を与える。
【0033】
標準的条件のもとで行われる重合の限定されない一例は、同じ量のプロ触媒組成物、助触媒、外部電子供与体及びオレフィンモノマー(プロピレン)を、同じであるか、又は実質的に同じである重合条件(温度、圧力、リアクタタイプ及び水素濃度)のもとで2つの同一の重合リアクタ(又は、異なる時間で同じ重合リアクタ)に導入することを含む。それぞれのリアクタにおける重合が、同じ時間にわたって行われる。XSが、それぞれのリアクタで形成されるポリマーについて測定される。このようにして、標準的条件のもとでの重合により、プロ触媒選択性に対するプロ触媒組成物及び/又はプロ触媒調製の影響を評価することが可能になる。標準的条件を使用して、類似した様式でフォルマントポリマーに対する他のプロ触媒/触媒調製技術及び/又は他のプロ触媒成分の影響を評価することができること(すなわち、これにより、異なる内部電子供与体及び/又は異なるプロ触媒組成を有するプロ触媒組成物を比較することができること)が理解される。
【0034】
前述のプロセスは好都合なことに、プロ触媒生成物に存在する分解生成物の量を低下させる。「分解生成物」は、本明細書中で使用される場合、ハロゲン化の期間中における内部電子供与体の分解から形成される化合物である。分解生成物には、エチルベンゾアートが含まれる。具体的には、115℃未満のハロゲン化温度範囲、又は、90℃から100℃以下までのハロゲン化温度範囲は好都合なことに、プロ触媒形成期間中における置換フェニレン芳香族ジエステルの組成的一体性を維持する。従って、本プロセスの実施形態の1つは、約0wt%〜約2.3wt%のエチルベンゾアート含有量、又は、0wt%超から約2.3wt%までのエチルベンゾアート含有量を有するプロ触媒組成物を形成することを含む。重量パーセントはプロ触媒組成物の総重量に基づく。このことが、下記で説明されるように、改善されたプロ触媒選択性の一因である。
【0035】
プロ触媒組成物におけるエトキシド含有量は、前駆体の金属エトキシドの、金属ハロゲン化物への転化の完全性を示している。115℃未満のハロゲン化温度範囲、又は、90℃から100℃以下までのハロゲン化温度範囲は、ハロゲン化期間中、エトキシドのハロゲン化物への転化を阻害しない。1つの実施形態において、本プロセスは、約0.01wt%〜約1.0wt%のエトキシド、又は、約0.05wt%〜約0.7wt%のエトキシドを有するプロ触媒組成物を形成することを含む。重量パーセントはプロ触媒組成物の総重量に基づく。
【0036】
1つの実施形態において、本プロセスは、プロ触媒組成物(B)の選択性よりも大きい選択性を有するプロ触媒組成物(A)を形成することを含む。別の言い方をすれば、プロ触媒(A)は、プロ触媒(B)の選択性指数よりも小さい選択性指数を有する。プロ触媒(B)は、プロ触媒(A)と同じプロ触媒前駆体及び同じ置換フェニレン芳香族ジエステルから構成される。プロ触媒(A)及びプロ触媒(B)のハロゲン化は、プロ触媒(B)のハロゲン化が115℃以上の温度で行われることを除いて同じである。このプロセスにより、プロ触媒組成物(B)の選択性指数よりも小さい選択性指数を有するプロ触媒組成物(A)が形成される。「プロ触媒(A)」は、115℃未満のハロゲン化温度、又は、90℃から100℃以下までのハロゲン化温度を含む前述のプロセスのいずれかによって製造されるプロ触媒組成物である。「プロ触媒組成物(B)」は、プロ触媒組成物(A)と同じプロ触媒前駆体及び同じ置換フェニレン芳香族ジエステルを含有するプロ触媒組成物である。しかしながら、プロ触媒組成物(B)は115℃以上の温度でハロゲン化される。115℃未満の温度、又は、約90℃から100℃以下までの温度における塩素化を含む本プロセスは好都合なことに、形成されたプロ触媒組成物の選択性を改善する。
【0037】
1つの実施形態において、本プロセスは、フォルマントポリマーにおいて、プロ触媒組成物(B)よりも20%〜60%少ないキシレン可溶分をもたらすプロ触媒組成物(A)を形成する。さらなる実施形態において、このプロセスは、プロ触媒(B)よりも少ない分解生成物を有するプロ触媒組成物(A)を形成することを含む。
【0038】
本開示は別のプロセスを提供する。1つの実施形態において、プロセスが提供され、このプロセスは、最初にプロ触媒前駆体を、置換フェニレン芳香族ジエステルの存在下、第1の温度(すなわち、第1のハロゲン化温度)でハロゲン化することを含む。これにより、プロ触媒中間体が形成される。このプロセスは、次いでプロ触媒中間体を第2の温度(第2のハロゲン化温度)でハロゲン化することを含む。第2のハロゲン化温度は第1のハロゲン化温度よりも高い。このプロセスは、嵩密度(BD)指数が約0.28〜約0.5であるプロ触媒組成物を形成することを含む。
【0039】
用語「嵩密度」(又は「BD」)は、本明細書中で使用される場合、製造されたポリマーの密度である。嵩密度が、ASTM D1895B又は同等法に従って、ポリマー樹脂を標準的な粉末ロートに通してステンレス製の標準的な円筒に注ぎ、満たされた円筒の所与体積についての樹脂の重量を求めることによって決定される。「プロ触媒嵩密度指数」又は「嵩密度指数」又は「BD指数」は、プロ触媒組成物によって製造されたポリマーの嵩密度値である。BD指数は、フォルマントポリマーの嵩密度を、ポリマーを製造するために使用されるプロ触媒組成物と関係づけるか、又は、そうでない場合には直接関連づける。従って、ポリマーについてのBDと、プロ触媒組成物についてのBD指数とは、同じ値である。例えば、BD指数が0.29であるプロ触媒組成物は、0.29g/ccのBDを有するポリマーをもたらす。
【0040】
1つの実施形態において、第1のハロゲン化のための置換フェニレン芳香族ジエステルが、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレン(phynylene)ジベンゾアート及び/又は4−tert−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾアートから選択される。
【0041】
1つの実施形態において、第1のハロゲン化が、115℃未満の温度で、又は、90℃〜100℃の温度で行われ、第2のハロゲン化が、115℃以上の温度で、又は、130℃で行われる。
【0042】
1つの実施形態において、プロ触媒中間体の第2のハロゲン化が置換フェニレン芳香族ジエステルの存在下で行われる。置換フェニレン芳香族ジエステルは、第1のハロゲン化における置換フェニレン芳香族ジエステルと同じであり得るか、又は異なり得る。さらなる実施形態において、第2のハロゲン化の期間中に存在する置換フェニレン芳香族ジエステルは5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾアート及び/又は4−tert−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾアートである。
【0043】
1つの実施形態において、このプロセスは、プロ触媒中間体に第3のハロゲン化を行うことを含む。第3のハロゲン化は、第1の温度よりも高い温度で、又は、115℃超から130℃までの温度で、又は、130℃で行われる。第3のハロゲン化は置換フェニレン芳香族ジエステルの存在下で行われても行われなくてもよい。
【0044】
1つの実施形態において、このプロセスは、0wt%〜2.3wt%未満の分解生成物、又は、0wt%超から2.3wt%未満までの分解生成物を含むプロ触媒組成物を形成することを含む。
【0045】
1つの実施形態において、2つ以上のポリマーの嵩密度(BD)(又は、2つ以上のプロ触媒組成物のBD指数)が標準的条件のもとで評価される。標準的条件のもとで行われるBD測定の限定されない一例は、同じ量のプロ触媒組成物、助触媒、外部電子供与体及びオレフィンモノマー(例えば、プロピレンなど)を、同じであるか、又は実質的に同じである重合条件(温度、圧力、リアクタタイプ及び水素濃度)のもとで2つの同一の重合リアクタ(又は、異なる時間で同じリアクタにおける逐次重合)に導入することを含む。それぞれのリアクタにおける重合が、同じ時間にわたって行われる。フォルマントポリマー粒子がそれぞれのリアクタ運転から回収され、嵩密度が測定される。嵩密度測定から、BD指数がそれぞれのプロ触媒組成物について求められるか、又は、他の方法で特定される。このようにして、標準的条件により、フォルマントポリマーの嵩密度に対するプロ触媒調製の影響及び/又はプロ触媒/触媒の成分における変化の影響を評価することが可能となる。
【0046】
1つの実施形態において、このプロセスは、嵩密度(BD)指数がプロ触媒組成物(D)のBD指数よりも大きいプロ触媒組成物(C)を形成することを含む。「プロ触媒(C)」は、第2のハロゲン化温度が、上記で開示されるような第1のハロゲン化温度よりも高い少なくとも2回のハロゲン化手順によって製造されるプロ触媒組成物である。「プロ触媒組成物(D)」は、プロ触媒組成物(C)と同じプロ触媒前駆体及び同じ置換フェニレン芳香族ジエステルを含有するプロ触媒組成物である。しかしながら、プロ触媒組成物(D)は、少なくとも2回のハロゲン化手順によってハロゲン化され、但し、この場合、それぞれのハロゲン化のための温度が同じであるか、又は、実質的に同じである。第1のハロゲン化温度よりも高い第2のハロゲン化温度を含む本発明のプロセスは好都合なことに、フォルマントポリマーの嵩密度を増大させる(すなわち、プロ触媒(D)から得られるフォルマントポリマーのBDと比較して、プロ触媒組成物(C)についてのより大きいBD指数)。
【0047】
1つの実施形態において、プロ触媒組成物(C)は、標準的条件において、プロ触媒組成物(D)の選択性指数よりも小さい選択性指数を有する。別の言い方をすれば、標準的条件のもとで、プロ触媒組成物(C)は、プロ触媒(D)によって製造されるプロピレン系ポリマーよりも少ないキシレン可溶分を有するプロピレン系ポリマーをもたらす。さらなる実施形態において、このプロセスは、重合条件下、プロ触媒組成物(C)、助触媒及び外部電子供与体を、重合リアクタにおいて、プロピレン及び必要な場合には1つ又はそれ以上のオレフィンと接触させること、ならびに(i)4wt%未満のキシレン可溶分、若しくは、3wt%未満のキシレン可溶分、若しくは、0.5wt%〜2.5wt%未満のキシレン可溶分、及び/又は、(ii)0.28g/cc超〜約0.5g/ccまでの嵩密度を有するプロピレン系ポリマーの粒子を有するプロピレン系ポリマーを形成することを含む。
【0048】
前述のプロセスのいずれにおいても、プロ触媒組成物は、ハロゲン化工程の後又はハロゲン化工程の工程間において、未反応のTiCl
4を除くために液体希釈剤によりすすぎ洗浄又は洗浄することができ、また、残留する液体を除くために乾燥することができる。典型的には、生じた固体のプロ触媒組成物は「洗浄液」により1回又はそれ以上洗浄される。この場合、洗浄液は液体の炭化水素であり、例えば、脂肪族炭化水素(例えば、イソペンタン、イソオクタン、イソヘキサン、ヘキサン、ペンタン又はオクタンなど)などである。何らかの特定の理論によってとらわれることを望まないが、(1)さらなるハロゲン化及び/又は(2)さらなる洗浄は、おそらく前述の希釈剤に可溶性である特定の不活性金属化合物を除くことによって、プロ触媒組成物の望ましい改変をもたらすことが考えられる。
【0049】
前述のプロセスのいずれかに由来する生じたプロ触媒組成物は、チタン含有量が総固形物重量に基づいて約1.0重量パーセント〜約6.0重量パーセントであり、又は、約1.5重量パーセント〜約5.5重量パーセントであり、又は、約2.0重量パーセント〜約5.0重量パーセントである。固体のプロ触媒組成物におけるチタン対マグネシウムの重量比が好適には約1:3〜約1:160の間であり、又は、約1:4〜約1:50の間であり、又は、約1:6〜約1:30の間である。内部電子供与体が約0.1wt%〜約30.0wt%の量で存在し、又は、約1.0wt%〜約30wt%の量で存在する。内部電子供与体を、約0.005:1〜約1:1、又は約0.01:1〜約0.4:1の内部電子供与体対マグネシウムのモル比でプロ触媒組成物に存在させることができる。重量パーセントはプロ触媒組成物の総重量に基づく。
【0050】
出願人らは、驚くべきことに、第1のハロゲン化の期間中における温度を、単独で下げるか、又は、その後のハロゲン化の期間中における温度を上げることと組合せて下げることにより、予想外ではあったが、(1)プロ触媒選択性指数が改善され(すなわち、形成されたポリマーにおけるより低いキシレン可溶分)、(2)分解生成物の量が少ないか、又は、分解生成物が存在しないか、又は、分解生成物が実質的に存在しないプロ触媒組成物がもたらされ、かつ、(3)プロ触媒嵩密度指数が増大する(すなわち、フォルマントポリマーのBDが増大する)ことを発見している。
【0051】
特定の理論によって何らとらわれないが、温度に対する異なる応答が、その後のハロゲン化と比較して、第1のハロゲン化反応におけるチタンアルコキシド副産物のより高い濃度に起因することが考えられる。チタンアルコキシド副産物が置換フェニレン芳香族ジエステルと反応する。第1のハロゲン化温度を下げることは、この反応を遅くし、かつ、置換フェニレン芳香族ジエステルを保護する。第1のハロゲン化の後、チタンアルコキシド副産物の濃度が第1のハロゲン化の期間中よりも小さくなる。ハロゲン化温度を第1のハロゲン化の後で上げることにより、チタンアルコキシド副産物との内部電子供与体の副反応が引き起こされない。従って、ハロゲン化温度を第1のハロゲン化の後で上げることにより、ハロゲン化が促進され、かつ、プロ触媒組成物についての嵩密度指数が改善される(すなわち、増大する)。
【0052】
前述のプロセスのいずれもが2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0053】
本開示はプロ触媒組成物を提供する。1つの実施形態において、プロ触媒組成物の粒子が提供される。プロ触媒組成物粒子は、マグネシウム成分、チタン成分及び内部電子供与体を含む。内部電子供与体は、本明細書中に開示されるような置換フェニレン芳香族ジエステルのいずれかである。プロ触媒組成物粒子は、D50が約1μm〜約50μmであるか、又は、約5μm〜約25μmであるか、又は、約10μm〜約25μmである。本明細書中で使用される「D50」は、サンプル重量の50%が、述べられた粒子直径を超えているような粒子直径である。
【0054】
出願人らは、驚くべきことに、プロ触媒組成物の粒子サイズを小さくすることにより、予想外ではあったが、プロ触媒嵩密度指数が増大し(すなわち、フォルマントポリマーについての嵩密度が増大し)、かつ直径が250μm未満であるポリマー粒子のレベルを増大させることなく、プロ触媒嵩密度指数が増大する(すなわち、フォルマントポリマーについての嵩密度が増大する)ことを発見している。1つの実施形態において、D50粒子サイズが5μm〜約25μmであるプロ触媒組成物は、0.26を超えるプロ触媒嵩密度指数、又は、0.28超から約0.50までであるプロ触媒嵩密度指数を有する。
【0055】
内部電子供与体は置換フェニレン芳香族ジエステルである。1つの実施形態において、置換フェニレン芳香族ジエステルは、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾアート(IED1)及び/又は4−tert−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾアート(IED2)などの置換フェニレン芳香族ジエステルである。プロ触媒組成物は、2.3wt%未満のエチルベンゾアート、又は、0wt%〜2.3wt%未満のエチルベンゾアート、又は、0wt%超から2.3wt%未満までのエチルベンゾアートを含有する。
【0056】
1つの実施形態において、置換フェニレン芳香族ジエステルはフェニレンジベンゾアート系化合物であり、プロ触媒組成物は約0.1wt%〜約30wt%のフェニレンジベンゾアート系化合物を含有する。
【0057】
1つの実施形態において、マグネシウム成分はマグネシウム塩化物である。チタン成分はチタン塩化物である。
【0058】
プロ触媒組成物は、本明細書中に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0059】
前述のプロ触媒組成物はいずれも重合プロセスにおいて使用することができる。1つの実施形態において、重合プロセスが提供され、この重合プロセスは、重合条件下、置換フェニレン芳香族ジエステルから構成されるプロ触媒組成物(例えば、プロ触媒(A)及び/又はプロ触媒(C)など)、助触媒、必要な場合には外部電子供与体を、プロピレン及び必要な場合には1つ又はそれ以上のオレフィンと接触させることを含む。この重合により、4wt%未満、又は、3wt%未満、又は、2.5wt%未満、又は、1wt%未満、又は、0.1wt%〜4wt%未満、又は、0.1wt%〜2.5wt%未満のキシレン可溶分を有するプロピレン系ポリマーが形成される。重量パーセントXSはポリマー総重量に基づく。
【0060】
本明細書中で使用される「助触媒」は、プロ触媒を活性な重合触媒に転化させることができる物質である。助触媒には、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウム及びそれらの組合せの水素化物、アルキル又はアリールが含まれ得る。1つの実施形態において、助触媒は、R
nAlX
3−nの式によって表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物であり、式中、n=1、2又は3であり、Rはアルキルであり、かつ、Xはハリド又はアルコキシドである。1つの実施形態において、助触媒が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム及びトリ−n−ヘキシルアルミニウムから選択される。
【0061】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物の限定されない例が下記の通りである:メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、テトラエチルジアルミノキサン、テトライソブチルジアルミノキサン、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ−n−ヘキシルアルミニウムヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、n−ヘキシルアルミニウムジヒドリド、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム、トリ−n−ドデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド及びジ−n−ヘキシルアルミニウムヒドリド。
【0062】
1つの実施形態において、助触媒はトリエチルアルミニウムである。アルミニウム対チタンのモル比が約5:1〜約500:1であるか、又は、約10:1〜約200:1であるか、又は、約15:1〜約150:1であるか、又は、約20:1〜約100:1である。別の実施形態において、アルミニウム対チタンのモル比が約45:1である。
【0063】
本明細書中で使用される「外部電子供与体」(又は「EED」)は、プロ触媒の形成とは無関係に添加される化合物であり、1対の電子を金属原子に供与することができる少なくとも1つの官能基を含む。特定の理論によって何らとらわれないが、触媒組成物における1つ又はそれ以上の外部電子供与体の提供はフォルマントポリマーの下記の特性に影響を及ぼすことが考えられる:立体規則性(すなわち、キシレン可溶物)のレベル、分子量(すなわち、メルトフロー)、分子量分布(MWD)、融点及び/又はオリゴマーレベル。
【0064】
1つの実施形態において、EEDは、下記の一般式(II)を有するケイ素化合物である:
【化2】
【0065】
上記式において、Rは独立してそれぞれの存在が、水素、又は、1つ又はそれ以上の、14族、15族、16族又は17族のヘテロ原子を含有する1つ又はそれ以上の置換基により場合により置換されるヒドロカルビル基若しくはアミノ基である。Rは、水素及びハロゲンを除いて20個までの原子を含有する。R’はC
1〜20アルキル基であり、かつ、mは、0、1、2又は3である。1つの実施形態において、Rは、C
6〜12のアリール基、アルキル基又はアルキルアリール基、C
3〜12シクロアルキル基、C
3〜12分岐アルキル基、或いは、C
3〜12環状アミノ基であり、R’はC
1〜4アルキルであり、かつ、mは1又は2である。
【0066】
1つの実施形態において、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(MChDMS)又はn−プロピルトリメトキシシラン(NPTMS)、及び、それらの任意の組合せである。
【0067】
重合反応により、プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーが形成される。場合により、1つ又はそれ以上のオレフィンモノマーを、プロ触媒、助触媒及びEEDと反応させるために、また、ポリマー、又は、ポリマー粒子の流動床を形成するために、プロピレンと一緒に重合リアクタに導入することができる。好適なオレフィンモノマーの限定されない例には、エチレン、C
4〜20α−オレフィン例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン及び1−ドデセンなどが含まれる。
【0068】
1つの実施形態において、重合プロセスは予備重合工程及び/又は予備活性化工程を含むことができる。
【0069】
1つの実施形態において、本プロセスは、外部電子供与体をプロ触媒組成物と混合することを含む。外部電子供与体を触媒組成物及びオレフィンの間での接触の前に助触媒と錯化させ、プロ触媒組成物と混合(予備混合)することができる。別の実施形態において、外部電子供与体を重合リアクタに独立して加えることができる。
【0070】
1つの実施形態において、本プロセスは、置換フェニレン芳香族ジエステルを含有する(すなわち、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾアート及び/又は4−tert−ブチル−1,2−フェニレンジベンゾアートを含有する)プロピレン系ポリマー(プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマー)を形成することを含む。プロピレン系ポリマーは下記の特性の1つ又はそれ以上を有する:
・約0.01g/10分〜約800g/10分、又は、約0.1g/10分〜約200g/10分、又は、約0.5g/10分〜約150g/10分のメルトフローレート(MFR);
・約0.1%〜約10%、又は、約0.1%〜約8%、又は、約0.1%〜約4%、又は、約0.1%〜約2.5%未満のキシレン可溶分含有量;
・約3.8〜約15.0、又は、約4.0〜約10、又は、約4.0〜約8.0の多分散性指数(PDI);及び/又は
・0.28g/cc超から約0.50g/ccまでの嵩密度を有するその粒子。
【0071】
プロピレン系ポリマーは、本明細書中に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0072】
1つの実施形態において、プロ触媒組成物、及び/又は、プロ触媒組成物から製造されるポリマーはフタラート非含有であり、或いは、そうでない場合には、フタラート及びその誘導体が存在しないか、又は、フタラート及びその誘導体を有していない。
【0074】
本明細書中における元素周期表に対するすべての参照は、CRC Press,Inc.が2003年に発行し、版権を有する元素周期表を参照しなければならない。同様にまた、族(1つ又はそれ以上)に対する参照はどれも、族に番号を与えるためのIUPACシステムを使用してこの元素周期表に反映される当該族(1つ又はそれ以上)に対するものでなければならない。反することが述べられる場合、文脈から暗黙的である場合、又は、当分野において慣例的である場合を除き、すべての部及びパーセントが重量に基づく。米国特許実務の目的のために、本明細書中で参照される特許、特許出願又は公開物はどれもその内容が、とりわけ当分野における合成技術の開示、定義(本明細書中に提供されるどの定義とも矛盾しない程度に)及び一般的知識に関して、本明細書によりそれらの全体において参照によって組み込まれる(或いは、それらの相当する米国対応版が参照によってそのように組み込まれる)。
【0075】
本明細書中に列挙される数値範囲はどれも、どのような下方値であれ下方値と、どのような上方値であれ上方値との間に少なくとも2単位の隔たりが存在するならば、1単位の刻みで下方値から上方値までのすべての値を含む。一例として、ある成分の量、又は、ある組成特性若しくは物理的特性(例えば、ブレンド成分の量、軟化温度、メルトインデックスなど)の値が1〜100の間であると述べられるならば、すべての個々の値、例えば1、2、3など、及びすべての部分範囲例えば、1〜20、55〜70、197〜100など、が本明細書において明示的に列挙されることが意図される。1よりも小さい値については、1単位が、適宜、0.0001、0.001、0.01又は0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図されることの単なる例に過ぎず、列挙される最低値及び最大値の間における数値のすべての可能な組合せが、本出願において明示的に述べられると見なされなければならない。別の言い方をすれば、本明細書中に列挙される数値範囲はどれも、述べられた範囲に含まれる任意の値又は部分範囲を含む。様々な数値範囲が、メルトインデックス、メルトフローレート及び他の性質に関して、本明細書中で議論されるように列挙されている。
【0076】
用語「アルキル」は、本明細書中で使用される場合、分岐又は非分岐の、飽和又は不飽和の非環式炭化水素基を示す。好適なアルキル基の限定されない例には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、2−プロペニル(又はアリル)、ビニル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(又は2−メチルプロピル)などが含まれる。アルキルは1個〜20個の炭素原子を有する。
【0077】
用語「アルキルアリール」又は用語「アルキルアリール基」は、本明細書中で使用される場合、少なくとも1つのアリール基によって置換されるアルキル基である。
【0078】
用語「アリール」又は用語「アリール基」は、本明細書中で使用される場合、芳香族炭化水素化合物に由来する置換基である。アリール基は、合計で6個〜20個の環原子を有し、また、分離しているか、又は、縮合する1つ又はそれ以上の環を有しており、アルキル基及び/又はハロ基により置換され得る。芳香族環には、とりわけ、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びビフェニルが含まれ得る。
【0079】
用語「ブレンド混合物」又は用語「ポリマーブレンド混合物」は、本明細書中で使用される場合、2つ以上のポリマーのブレンド混合物である。そのようなブレンド混合物は、(分子レベルで相分離しない)混和性であってもよく、又は、混和性でなくてもよい。そのようなブレンド混合物は相分離してもよく、又は、相分離しなくてもよい。そのようなブレンド混合物は、当分野で公知である透過型電子顕微鏡観察、光散乱、x線散乱及び当該分野で公知の他の方法から測定される1つ又はそれ以上のドメイン形態を含有してもよく、或いは、ドメイン形態を含有しなくてもよい。
【0080】
用語「組成物」は、本明細書中で使用される場合、組成物を含む物質の混合物、同様にまた、組成物の物質から形成される反応生成物及び分解生成物を含む。
【0081】
用語「含む(こと)(comprising)」及びその派生形は、本明細書中に開示されるか否かにかかわらず、任意のさらなる成分、工程又は手順の存在を除外することが意図されない。あらゆる疑念を避けるために、用語「含む(こと)」の使用により本明細書中で特許請求されるすべての組成物は、反することが述べられる場合を除き、ポリマーであろうとそうでなかろうと、任意のさらなる添加物、補助物又は化合物を含み得る。対照的に、用語「〜から本質的になる(consisting essentially of)」では、稼働に必須でないものを除いて、任意の他の成分、工程又は手順が、その後に続く列挙の範囲から除外される。用語「〜からなる(consisting of)」では、具体的に記述又は列挙されない任意の成分、工程又は手順が除外される。用語「又は/若しくは(or)」は、別途述べられない限り、列挙されている要素を個々に指し、同様にまた、任意の組合せを指す。
【0082】
用語「オレフィン系ポリマー」は、ポリマーの総重量に基づいて過半重量パーセントのオレフィン、例えばエチレン又はプロピレンなどを重合形態で含有するポリマーである。オレフィン系ポリマーの限定されない例には、エチレン系ポリマー及びプロピレン系ポリマーが含まれる。
【0083】
用語「ポリマー」は、同じタイプ又は異なるタイプのモノマーを重合することによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」には、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー及びインターポリマーなどが含まれる。用語「インターポリマー」は、少なくとも2つのタイプのモノマー又はコモノマーの重合によって調製されるポリマーである。インターポリマーには、コポリマー(これは通常、2つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを示す)、ターポリマー(これは通常、3つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを示す)、及び、テトラポリマー(これは通常、4つの異なるタイプのモノマー又はコモノマーから調製されるポリマーを示す)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
用語「プロピレン系ポリマー」は、本明細書中で使用される場合、(重合可能なモノマーの総量に基づいて)過半重量パーセントの重合したプロピレンモノマーを含み、かつ、場合により、少なくとも1つの重合したコモノマーを含むことができるポリマーである。
【0085】
用語「置換(された)アルキル」は、本明細書中で使用される場合、前記で定義、記載されるように、アルキルのいずれかの炭素に結合する1つ又はそれ以上の水素原子が別の基、例えば、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、チオ、ニトロ及びそれらの任意の組合せなど、によって置換されるアルキルである。好適な置換されたアルキルには、例えば、ベンジル及びトリフルオロメチルなどが含まれる。
【0087】
メルトフローレート(MFR)が、プロピレン系ポリマーのための、230℃で2.16kgの重りを用いるASTM D1238−01の試験方法に従って測定される。
【0088】
キシレン可溶分(XS)は、樹脂が熱キシレンに溶解され、溶液が25℃に冷却させられた後で溶液に留まる(樹脂の総重量に基づく)樹脂の重量パーセントである。XSが、米国特許第5,539,309号に記載されるような
1H−NMR法を使用して測定される(その全内容が参照によって本明細書中に組み込まれる)。XSはまた、Viscotek ViscoGEL H−100−3078カラムを、1.0ml/分で流れるTHF移動相とともに使用するフロー・インジェクション・ポリマー分析によって分析することができる。カラムを、Viscotek Model302 Triple Detector Arrayにつなぎ、光散乱、粘度計及び屈折計の各検出器を45℃で作動させる。計器の較正を、Viscotek PolyCAL(商標)ポリスチレン標準物を用いて維持する。
【0089】
多分散性指数(PDI)が、Zeichner GR、Patel PD(1981)、「ポリプロピレンの溶融レオロジーの包括的研究」、Proc. of the 2
nd World Congress of Chemical Eng.(Montreal、カナダ)による方法を使用して、TA Instrumentsによって製造される応力制御動的分光計であるAR−G2レオメーターによって測定される。ETC炉が、温度を180℃±0.1℃で制御するために使用される。窒素が、炉の内側をパージして、サンプルを酸素及び水分による分解から保護するために使用される。1対の直径25mmのコーン及びプレートサンプルホルダーが使用される。サンプルが、50mm×100mm×2mmの試料板に圧縮成形される。その後、それぞれのサンプルが19mm四方に切断され、底部プレートの中心に載せられる。上部コーンの幾何形状が、(1)コーン角度:5:42:20(度:分:秒)、(2)直径:25mm、(3)截頭隙間:149ミクロンである。底部プレートの幾何形状が25mmの円形である。
【0090】
試験手順:
(1)コーン&プレートサンプルホルダーをETC炉において180℃で10分間加熱する。その後、隙間を窒素ガスの雰囲気下でゼロに合わせる。
(2)コーンを2.5mmに上げ、サンプルを底部プレートの上部に載せる。
(3)タイマーを2分間設定する。
(4)上部コーンを直ちに下げて、法線力を観測することによってサンプルの上部にかすかに置く。
(5)2分後、サンプルを、上部コーンを下げることによって165ミクロンの隙間にまで押しつける。
(6)法線力を観測する。法線力が0.05ニュートン未満になったとき、過剰なサンプルを、スパチュラを使用してコーン及びプレートサンプルホルダーの縁から除く。
(7)上部コーンを、149ミクロンである截頭隙間に再び下げる。
(8)振動周波数掃引試験を以下の条件のもとで行う:
(i) 試験を180℃で5分間延ばす。
(ii) 振動数:628.3r/sから0.1r/sに。
(iii)データ取得速度:5ポイント/ディケード。
(iv) ひずみ:10%
(9)試験が完了したとき、交差弾性率(crossover modulus)(Gc)が、TA Instrumentsによって提供されるRheology Advantage Data Analysisプログラムによって検出される。
(10)PDI=100,000÷Gc(Pa単位)。
【0091】
最終融点(T
MF)は、サンプル中の最も完全な結晶を融解させるための温度であり、アイソタクチシティー及び固有的なポリマー結晶性に対する尺度である。この試験を、TA Q100示差走査熱量計を使用して行う。サンプルを80℃/分の速度で0℃から240℃に加熱し、同じ速度で0℃に冷却し、その後、同じ速度で150℃にまで再び加熱し、150℃で5分間保ち、1.25℃/分で150℃から180℃に加熱する。T
MFが、加熱曲線の終点におけるベースラインの開始を計算することによってこの最後のサイクルから求められる。
【0092】
試験手順:
(1)計器を、高純度インジウムを標準物として用いて較正する。
(2)計器のヘッド/セルを50ml/分の一定流速の窒素によりパージする。
(3)サンプル調製:
1.5gの粉末サンプルを、30−G302H−18−CX Wabash Compression Molder(30トン)を使用して圧縮成形する:(a)混合物を接触状態にて230℃で2分間加熱する;(b)サンプルを、20トンの圧力により1分間、同じ温度で圧縮する;(c)サンプルを45°Fに冷却し、20トンの圧力とともに2分間保つ;(d)サンプルを均質にするために、試料板をほぼ同じサイズの4つの試料板に切断し、それらを積み重ねて一緒にし、その後、工程(a)〜工程(c)を繰り返す。
(4)サンプル試料板からの1つのサンプルを重量測定し(好ましくは5mg〜8mgの間)、そのサンプルを標準的なアルミニウム製サンプル皿において密封する。サンプルを収容している密封皿を計器のヘッド/セルのサンプル側に置き、空の密封皿を参照側に置く。自動サンプラーを使用するならば、数個の異なるサンプル試料を事前に重量測定し、計器を連続測定のために設定する。
(5)測定:
(i) データ保存:オフ
(ii) 温度勾配、240.00℃まで80.00℃/分
(iii) 1.00分間の等温
(iv) 温度勾配、0.00℃まで80.00℃/分
(v) 1.00分間の等温
(vi) 温度勾配、150.00℃まで80.00℃/分
(vii) 5.00分間の等温
(viii)データ保存:オン
(ix) 温度勾配、180.00℃まで1.25℃/分
(x)方法の終了
(6)計算:T
MFを2つの線の交差によって求める。1つの線をエンタルピー曲線の高温領域のベースラインから引く。別の線を、エンタルピー曲線の高温側の変曲点を通って引く。T
MFが、これら2つの線が交差する温度である。
【0093】
限定としてではなく、例として、本開示の実施例が次に提供される。
【実施例】
【0094】
1.内部電子供与体
【0095】
内部電子供与体のために好適な置換フェニレン芳香族ジエステルの限定されない例が、下記の表1に提供される置換フェニレン芳香族ジベンゾアートである。
【0096】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0097】
2.プロ触媒の調製
【0098】
頭上攪拌機が取り付けられ、窒素パージされる75mLのガラス容器において、3グラムのMagTiを60mLの50/50(vol/vol)TiCl
4/クロロベンゼンに懸濁する。その後、クロロベンゼンに溶解された内部電子供与体(IED1又はIED2のどちらか)をシリンジにより加える。懸濁物を、表に示される温度に15分間加熱し、撹拌(250rpm)しながらこの温度で60分間維持する。固体をろ過によって単離し、その後、50/50のTiCl
4/クロロベンゼンに再懸濁する。内部電子供与体を、必要な場合には懸濁物に加える。懸濁物を115℃に15分間加熱し、その後、撹拌(250rpm)しながらこの温度で30分間維持する。この塩素化工程を、内部電子供与体を加えることなく、もう一度繰り返す。生じたプロ触媒をろ過によって単離し、室温のイソオクタンで3回すすぎ洗浄し、窒素流のもとで2時間乾燥する。得られたプロ触媒組成物の特性が下記の表2に提供される。
【表2】
【0099】
3.重合
【0100】
重合が、2Lの滴下ポットが取り付けられた1ガロンのステンレススチール製オートクレーブで行われる。リアクタが、リアクタを140℃に加熱し、窒素をパージし、リアクタを40℃に冷却し、その後、水素パージすることによって重合のために準備される。その後、リアクタを300gの液状プロピレンで満たし、50℃に加熱し、25℃に冷却し、その後、空にする。プロピレン(1375g)及び6000sccの水素をリアクタに供給する。撹拌モーターを1000rpmに設定し、温度を62℃に上げる。その後、触媒成分を、(20分間、一緒に予備混合される)外部電子供与体、トリエチルアルミニウム及び触媒スラリーの予備混合された溶液として注入する。リアクタを67℃に制御し、1時間の重合の残りについてこの温度で維持する。具体的な操作条件(例えば、触媒負荷量、供与体負荷量及び水素レベルなど)がデータ表にまとめられる。
【0101】
表3は、上記で記載されるように調製されるプロ触媒組成物についての性能データをまとめる。
【表3】
【0102】
下記の表4は、低い第1のハロゲン化温度及び高い第2のハロゲン化温度により調製されるプロ触媒組成物についての性能データを示す。
【表4】
【0103】
下記の表5は、ポリマーの嵩密度が、プロ触媒前駆体のサイズが低下するにつれて増大
することを示す。驚くべきことに、ポリマー微粒子の量は変化していない。より小さい前
駆体が使用されるとき、ポリマー微粒子の量は典型的には増大する。
(なお、Ex8は参考例である。)
【表5】
【0104】
下記の表6は、より小さいプロ触媒が、低い第1のハロゲン化温度、並びに、高い第2及び第3のハロゲン化温度により調製されるとき、ポリマー嵩密度の増大が加法的であることを示す。
【表6】
【0105】
本発明は、本明細書中に含まれる様々な実施形態及び例示に限定されず、下記の特許請求の範囲に含まれるような、そのような実施形態の一部及び異なる実施形態の要素の組合せを含むそれらの実施形態の改変された形態を包含することが特に意図される。