(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、流体機械としての膨張機が組み込まれる車両用の廃熱利用装置1Aを示す。
廃熱利用装置1Aは、エンジン10と共に車両に搭載され、エンジン10の廃熱を回収して利用する装置である。
【0010】
廃熱利用装置1Aは、ランキンサイクル装置2Aと、ランキンサイクル装置2Aの出力をエンジン10に伝達する伝達機構3と、制御ユニット4と、を備えている。
エンジン10は、水冷式の冷却装置を備えた内燃機関であり、前記冷却装置は、冷却水を循環させる冷却水循環路11を備える。
冷却水循環路11には、ランキンサイクル装置2Aの蒸発器22を配置してあり、エンジン10から熱を吸収した冷却水を、蒸発器22を通過させてから再度エンジン10に戻す。
【0011】
ランキンサイクル装置2Aは、エンジン10の冷却水からエンジン10の廃熱を回収し、回収した熱を駆動力に変換して出力する。
ランキンサイクル装置2Aは、作動流体を循環させる循環路21を備え、この循環路21に、作動流体の流れ方向に沿って、蒸発器22、膨張機23、凝縮器24及びポンプ25Aをこの順に配置してある。
前記作動流体(冷媒)としては、例えばフルオロカーボンからなる骨格を基本とするものが用いられ、また、潤滑油が作動流体と共に循環し、膨張機23やポンプ25Aの摺動部における潤滑、密封、冷却等の役割を担う。
【0012】
蒸発器22は、エンジン10から熱を吸収した高温の冷却水と、ランキンサイクル装置2Aの作動流体との間で熱交換を行わせることによって、作動流体を加熱して蒸発(気化)させる。
膨張機23(流体機械)は、蒸発器22で気化し高温,高圧となった作動流体を膨張させることで、駆動力を発生する装置であり、一例としてスクロール型膨張機を用いる。
【0013】
凝縮器24は、膨張機23を通過し低圧となった作動流体と外気との間で熱交換を行わせることによって、作動流体を冷却して凝縮(液化)させる。
ポンプ25Aは機械式ポンプであり、凝縮器24で液化した作動流体を蒸発器22へと圧送する。
このように、作動流体は、気化、膨張、凝縮を繰り返しながら循環路21を循環する。
【0014】
ここで、膨張機23とポンプ25Aとを、回転軸28で連結して一体化することで、ポンプ一体型膨張機29A(流体機械)として設けてある。即ち、ポンプ一体型膨張機29Aの回転軸28は、膨張機23の出力軸としての機能及びポンプ25Aの駆動軸として機能を有する。
そして、ランキンサイクル装置2Aは、まずエンジン10の出力によってポンプ25Aを駆動することによって起動し、その後、膨張機23が十分な駆動力を発生するようになると、膨張機23の駆動力がポンプ25Aを駆動するようになる。
【0015】
伝達機構3は、ランキンサイクル装置2Aの出力であるポンプ一体型膨張機29Aのトルク(軸トルク)をエンジン10に伝達すると共に、ランキンサイクル装置2Aの起動時には、エンジン10の出力トルクを、ポンプ一体型膨張機29A(ポンプユニット)に伝達する。
伝達機構3は、ポンプ一体型膨張機29Aの回転軸28に取り付けたプーリ31と、エンジン10のクランクシャフト10aに取り付けたクランクプーリ32と、プーリ31及びクランクプーリ32に巻回したベルト33と、ポンプ一体型膨張機29Aの回転軸28とプーリ31との間に設けた電磁クラッチ34と、を備える。
【0016】
そして、電磁クラッチ34をオン(締結)/オフ(解放)することで、エンジン10(クランクシャフト10a)とポンプ一体型膨張機29Aの回転軸28との間における動力の伝達、遮断が切り替えられる。
マイクロコンピュータを備える制御ユニット4は、電磁クラッチ34を制御する機能を有し、電磁クラッチ34をオン/オフ制御することで、ランキンサイクル装置2Aの作動/停止を制御する。
【0017】
即ち、制御ユニット4は、ランキンサイクル装置2Aの作動条件の成立を判断すると、電磁クラッチ34を締結(オン)して、エンジン10によってポンプ25Aを作動させることで、作動流体(冷媒)の循環を開始させ、ランキンサイクル装置2Aを起動する。
そして、膨張機23が作動して駆動力を発生するようになると、膨張機23で発生した駆動力の一部がポンプ25Aを駆動し、その余の駆動力を、伝達機構3を介してエンジン10に伝達し、エンジン10の出力(駆動力)をアシストする。
【0018】
また、制御ユニット4は、ランキンサイクル装置2Aの作動条件が不成立となった場合には、電磁クラッチ34を解放(オフ)して、作動流体の循環を停止させることで、ランキンサイクル装置2Aを停止させる。
尚、蒸発器22を、ランキンサイクル装置2Aの作動流体と、エンジン10の排気との間で熱交換を行う装置とすることができ、また、エンジン10の冷却水との間で熱交換を行うと共に、エンジン10の排気との間で熱交換を行う装置とすることができる。
【0019】
また、後述するように、膨張機23は、駆動部としてのスクロールを迂回させて作動流体を循環させるためのバイパス路、及び、前記バイパス路を開閉する弁機構を一体的に備えている。
そして、制御ユニット4は、電磁クラッチ34を締結させたランキンサイクル装置2Aの起動直後において、弁機構を開に制御してバイパス路を開き、膨張機23のスクロールを迂回させて作動流体を循環させるようにする。
【0020】
その後、例えば、膨張機23の入口の冷媒温度が閾値を上回るようになると、換言すれば、膨張機23が駆動力を発生し得るようになると、制御ユニット4は、弁機構を閉に制御してバイパス路を閉じ、作動流体がスクロールを通過して循環する状態に切り替える。
このように、ランキンサイクル装置2Aの起動直後に、膨張機23のスクロールを迂回して作動流体を循環させるようにすれば、蒸発器22内の圧力が低下して作動流体の蒸発温度が低くなるため、ランキンサイクル装置2Aの起動性を向上させることができる。また、ランキンサイクル装置2Aの停止時、電磁クラッチ34を解放(オフ)した時に、残圧力によって高回転になってしまうのを防ぐために、バイパス路を開にする。
【0021】
次に、ポンプ一体型膨張機29Aの構造を、
図2に基づき詳細に説明する。
ポンプ一体型膨張機29Aは、前述のように、ランキンサイクル装置2Aの作動流体を循環させるポンプ25Aと、蒸発器22で加熱されて気化した作動流体の膨張によって回転駆動力を発生する膨張機23とが共通の回転軸28によって駆動される流体機械であり、伝達機構3を構成するプーリ31及び電磁クラッチ34を備えている。
【0022】
ポンプ一体型膨張機29Aの膨張機23は、ポンプ一体型膨張機29Aの軸方向の一端部に配置される固定スクロール51と、該固定スクロール51に対して偏心して噛み合うように組み合わされる旋回スクロール(回転体)52と、吐出ポート53を備えたハウジング部54と、吸入ポート55を備えたケーシング部56とを備える。
固定スクロール51は、円盤状の本体部51aと、本体部51aの一端面にリブ状に立設したスクロール部(渦巻き体)51bと、本体部51aの中央を貫通するように形成した作動流体の導入口51cとを有する。
【0023】
ハウジング部54は、両端開放の筒状に形成され、その内側にケーシング部56が嵌合し、固定スクロール51及び旋回スクロール52が収容される第1中空部54aと、旋回スクロール52と回転軸28との間の従動クランク機構を構成する大径部64を支持する第2中空部54bと、回転軸28を支持する第3中空部54cとを有する。
そして、第1中空部54aのポンプ25A側に、第1中空部54aの内空間(スクロールの吐出側空間)と外部空間とを連通させる吐出ポート53が、回転軸28の径方向に沿って形成されている。
【0024】
ケーシング部56は、内側に固定スクロール51を一体的に備えると共に外側が第1中空部54aの内側に嵌合される円筒状部56aと、固定スクロール51の導入口51cに連通する作動流体導入室56bとを備え、作動流体導入室56bとケーシング部56の外部空間とを連通させる吸入ポート55が、回転軸28の径方向に沿って形成されている。
ここで、吐出ポート53及び吸入ポート55は、相互に略平行に、かつ、回転軸28の軸心から同一の角度方向に向けて延設され、回転軸28の軸方向に並んで設けられる。
【0025】
吸入ポート55には、一端が蒸発器22の出口に接続される配管の他端が接続され、蒸発器22で加熱された作動流体が、吸入ポート55を介して膨張機23内に導入される。
吸入ポート55に導入された作動流体は、作動流体導入室56bに流入した後、導入口51cを介して固定スクロール51の中心部に導入される。
固定スクロール51の中心部に導入された作動流体は、旋回スクロール52の壁面を押して膨張室を形成し、作動流体が連続して供給されることで膨張室を外周側に移動させ、旋回スクロール52の旋回運動を生じさせる。
【0026】
吐出ポート53には、一端が凝縮器24の入口に接続される配管の他端が接続され、膨張機23を経由した作動流体が凝縮器24に送られて凝縮(液化)される。
旋回スクロール52は、円盤状の本体部52aと、本体部52aの一端面にリブ状に立設したスクロール部(渦巻き体)52bとを有する。
【0027】
ここで、本体部52aのスクロール部52bを形成した端面の反対面と、前記ハウジング部54の第1中空部54aから第2中空部54bに至る段差部54dとの間に自転阻止機構60を設けてあり、旋回スクロール52は、自転阻止機構60によって、自転が防止されながら作動流体の膨張に伴って旋回運動を行う。
尚、自転阻止機構60としては、オルダムカップリング、ピン&リングカップリング、ボールカップリングなどがあるが、ここでは、ボールを転動部材としたボールカップリングを用いており、特に、EMカップリングと呼ばれるボールカップリングを用いている(NTN TECHNICAL REVIEW No.68(2000)「スクロールコンプレッサ用EMカップリングについて」参照)。EMカップリングは、レースとリングを一体プレス成形した2枚のプレートと鋼球(ボール)とから構成される。
【0028】
旋回スクロール52の本体部52aの自転阻止機構60側の端面には、筒状部52cを突出形成してあり、この筒状部52cの内側には、ドライブベアリング61を設けてある。ドライブベアリング61には、偏心ブッシュ62が嵌合され、この偏心ブッシュ62にはクランクピン孔62aが形成されている。
一方、ハウジング部54の第2中空部54bには、ベアリング63を介して大径部64が回転可能に支持され、この大径部64には、回転軸28と平行にかつ回転軸28に対して軸心をずらしてクランクピン64aを立設してあり、クランクピン64aは、前記偏心ブッシュ62のクランクピン孔62aに挿通される。
【0029】
大径部64には回転軸28が連結され、偏心ブッシュ62、クランクピン64a、大径部64からなる従動クランク機構によって、旋回スクロール52の回転軸28回りの旋回運動を、回転軸28の回転駆動力として伝達する。
また、膨張機23の振動発生を抑制するためのカウンタウェイト(バランスウェイト)74を、偏心ブッシュ62に対して取り付けてある。
【0030】
更に、旋回スクロール52の旋回半径を規制するために、大径部64に規制用孔64bを設けると共に、規制用孔64bに嵌合する規制用突起62bを偏心ブッシュ62に設けてあり、規制用孔64bと規制用突起62bとの係合によって、クランクピン64a回りの偏心ブッシュ62の揺動を規制している。
回転軸28は、ハウジング部54の第3中空部54cに設けたベアリング65に支持されると共に、ハウジング部54に連結されるポンプハウジング66の端部に設けたベアリング67に支持されて回転する。
【0031】
ポンプハウジング66には、ポンプ25Aを設けてある。ポンプ25Aは、一例としてギヤポンプであり、ギヤポンプは、回転軸28に軸支した駆動歯車(回転体)と、回転軸28と平行に回転可能に支持した従動軸と、従動軸に軸支され駆動歯車に噛み合う従動歯車とから構成される。
ポンプハウジング66には、ポンプ25Aの吸入口に連通するポンプ吸入ポート66a、及び、ポンプ25Aの吐出口に連通するポンプ吐出ポート66bが形成される。
【0032】
ポンプ吸入ポート66aには、一端が凝縮器24の出口に接続される配管の他端が接続され、凝縮器24で凝縮(液化)された作動流体がポンプ25Aに吸入される。また、ポンプ吐出ポート66bには、一端が蒸発器22の入口に接続される配管の他端が接続され、凝縮器24で凝縮(液化)された作動流体を蒸発器22に圧送し、作動流体を蒸発(気化)させる。
尚、ポンプ25Aとして、公知のポンプを適宜採用でき、ギヤポンプの他、ベーンポンプなどを用いることができる。
ポンプハウジング66を貫通して外部に延設した回転軸28の端部には、伝達機構3を構成するプーリ31と電磁クラッチ34とを配置してある。
【0033】
ポンプハウジング66の膨張機23側とは反対側の端面には、回転軸28を内包する筒状部66cを一体的に形成してある。この筒状部66cの内側の先端側に、回転軸28を支持するベアリング67を配置し、筒状部66cの底部側(膨張機23側)には、軸シール68を配置してある。
そして、筒状部66cから突き出た回転軸28の先端にクラッチ板71を取り付け、また、筒状部66cの外周に、ベアリング72を介してプーリ31を回転可能に取り付けてある。
【0034】
更に、プーリ31の膨張機23側の端面に形成した、回転軸28を中心とする環状の溝31aにクラッチコイル73を収容してあり、電磁クラッチ34は、上記のクラッチ板71、クラッチコイル73で構成される。
そして、クラッチコイル73に通電すると、磁気吸引力が発生することでクラッチ板71がプーリ31に接触し、プーリ31とクラッチ板71(回転軸28)とが連動するようになり、結果、ポンプ一体型膨張機29Aの回転軸28とエンジン10(クランクシャフト10a)との間で動力の伝達が行われるようになる。
【0035】
上記のポンプ一体型膨張機29Aの膨張機23は、更に、吸入ポート55から吸入される作動流体を、固定スクロール51及び旋回スクロール52からなる駆動部を迂回して吐出ポート53に導くためのバイパス部80を備えている。
バイパス部80は、バイパス路81が形成されるホルダ82と、該ホルダ82に支持されてバイパス路81を開閉する弁機構(電磁弁)83と、を有し、吸入ポート55を備えたケーシング部56と、吐出ポート53を備えたハウジング部54との間に挟持される。
【0036】
以下では、バイパス部80の詳細を、
図3を参照しつつ説明する。
ホルダ82は、バイパス路81が形成される先端部82aと、弁機構83のコイルなどを保持する基端部82bとからなり、先端部82aが、回転軸28の軸方向においてケーシング部56とハウジング部54との間に挟持される。
ケーシング部56の吸入ポート55が形成される部分と、ハウジング部54の吐出ポート53が形成される部分との間に、ホルダ82の先端部82aを挟持するための収容空間91を設けてある。前記収容空間91は、ケーシング部56及びハウジング部54で囲まれる、有底で、かつ、回転軸28の径方向の外方に向けて開放される空間である。
【0037】
収容空間91においてホルダ82の先端部82aを軸方向に挟むケーシング部56側の面には、吸入ポート55に連通する吸入側連通路92が開口し、また、収容空間91において先端部82aを軸方向に挟むハウジング部54側の面には、吐出ポート53に連通する吐出側連通路93が開口する。
そして、ホルダ82の先端部82aには、回転軸28の軸方向に延びるバイパス路81が形成され、先端部82aが、回転軸28の軸方向においてケーシング部56とハウジング部54との間に挟持された状態で、バイパス路81の一端が吸入側連通路92に接続され、バイパス路81の他端が吐出側連通路93に接続されることで、作動流体のバイパス管路が形成される。
このように、バイパス部80(ホルダ82)は、吸入ポート55と吐出ポート53との間に配設され、ホルダ82に形成したバイパス路81で吸入ポート55と吐出ポート53とを直接的に連通させる。
【0038】
バイパス路81のケーシング部56側の端部が開口するホルダ82の部分は、回転軸28の軸に平行な方向に沿って円筒状に突出形成された円筒状突起部82cをなし、この円筒状突起部82cの軸心部分にバイパス路81が延設されている。
一方、吸入側連通路92は、ホルダ82側(ハウジング部54側)に、前記円筒状突起部82cが嵌挿される径の嵌合孔部(拡径部)92aを有する。即ち、吸入側連通路92は、吸入ポート55側からバイパス路81と略同等の径で形成され、途中で、円筒状突起部82cの外周が嵌挿される径に拡径される。
【0039】
また、円筒状突起部82cの外周には、環状に溝82fが形成されており、ゴムなどの弾性材料で環状に形成したシール部材(Oリング)94を環状溝82fに嵌め込み、円筒状突起部82cを嵌合孔部92aに嵌挿させると、円筒状突起部82cの外周と、吸入側連通路92の嵌合孔部92aの内周との隙間が、シール部材94によってシールされる。
即ち、円筒状突起部82cを吸入側連通路92の嵌合孔部92aに嵌合させることで、バイパス路81が吸入ポート55に連通すると共に、回転軸28の径方向におけるホルダ82の位置が吸入側連通路92を基準に位置決めされ、ホルダ82の円筒状突起部82cとケーシング部56の嵌合孔部92aとの間、換言すれば、バイパス路81の吸入ポート55側は、円筒シールによってシールされる。
【0040】
ホルダ82とケーシング部56との回転軸28の軸方向における突き当りは、円筒状突起部82cの根本部分の平面部82eと、ケーシング部56の吸入側連通路92が開口する平面部56cとの間で行われる。そして、係るホルダ82とケーシング部56との間、及び、ハウジング部54とケーシング部56との間には、例えば金属製の挟み板であるシム96を挟着してあり、このシムによって回転軸28の軸方向における固定スクロール51と旋回スクロール52との隙間が調整される。
また、バイパス路81のハウジング部54側の端部が開口するホルダ82の部分には、回転軸28の横断面に平行な突き当り面を形成する台座部82gを突出形成してある一方、ハウジング部54には、前記台座部82gが遊嵌されると共に、前記台座部82gの端面(平面部)と平行でかつ吐出側連通路93が開口する底面(平面部)を備えた凹陥部54eを形成してある。
【0041】
そして、ホルダ82をハウジング部54とケーシング部56との間に挟持するときに、台座部82gが凹陥部54eに遊嵌されると、ホルダ82側のバイパス路81とハウジング部54側の吐出側連通路93とが連続し、バイパス路81が吐出側連通路93を介して吐出ポート53に接続される。
即ち、バイパス路81は、円筒状突起部82cの先端から台座部82g(平面部)にかけて形成されており、ホルダ82をハウジング部54とケーシング部56との間に挟持することで、吸入ポート55と吐出ポート53とが、バイパス路81によって連通する。
凹陥部54eの底面には、吐出側連通路93の開口を囲むように、環状に溝54fを形成してあり、この溝54fに、ゴムなどの弾性材料で形成したシール部材95を嵌め込み、このシール部材95によって、ホルダ82とハウジング部54との突き当り面を囲むようにしてシールする。即ち、ホルダ82側のバイパス路81とハウジング部54側の吐出側連通路93との接続部は、その周囲が平面シールでシールされる。換言すれば、バイパス路81と吐出ポート53は、平面シールでシールされる。
【0042】
シール部材95は、ホルダ82で押し潰されることで、ホルダ82を、ケーシング部56側に向けて与勢する力を発生し、これによって、ホルダ82がケーシング部56側に突き当り、ホルダ82の回転軸28の軸方向における位置が、ケーシング部56を基準に位置決めされる。
また、バイパス部80のホルダ82は、バイパス路81を開閉する弁機構(パイロット式電磁弁)83を一体的に備えている。
【0043】
バイパス路81は、ケーシング部56側から回転軸28の軸方向と平行に延びる管路81aと、ハウジング部54側から回転軸28の軸方向と平行に延びる管路81bとを備え、管路81aが管路81bに比べて回転軸28からより遠い位置に形成されており、これら管路81a,81bは、回転軸28の径方向に延びる管路81cによって連通している。
管路81cには、回転軸28の径方向の外側から内側に向けて弁体83aが移動して着座し、係る着座状態で管路81c(バイパス路81)を閉塞するためのシート部81dが形成されており、また、シート部81dよりも前記径方向の外側において前記径方向に沿って変位可能に、プランジャ83bを支持してある。
【0044】
前記プランジャ83bは、コイルバネ(弾性体)83cによってシート部81dに向けて(回転軸28に近づく方向に)与勢されると共に、コイル(ソレノイド)83dの磁気力によりコイルバネ83cの与勢力に抗してシート部81d(回転軸28)から離れる方向に変位する。
ここで、コイル83dを収容するホルダ82の基端部82bは、ケーシング部56及びハウジング部54の外部に露出し、この外部に露出する部分に、コイル83dへの通電を行うための端子(図示省略)が設けられる。
【0045】
前記プランジャ83bとシート部81dとの間には、弁体83aが、プランジャ83bの進退方向と同じ方向(回転軸28の径方向)に変位可能に支持されている。
弁体83aには、弁体83aの変位方向に貫通するパイロット路83eが形成されており、プランジャ83bの先端には、前記パイロット路83eのプランジャ83b側の開口を閉塞するパイロット弁83fが形成されている。
【0046】
そして、コイル83dへの非通電状態では、プランジャ83bがコイルバネ83cの与勢力によってシート部81dに向けて変位することで、プランジャ83bに押されて弁体83aがシート部81dに着座し、かつ、パイロット路83eのプランジャ83b側の開口がパイロット弁83fで閉塞されることで、バイバス路81を介した作動流体の流れが阻止される閉弁状態となる。
係る閉塞状態からコイル83dに通電すると、コイル83dの磁気力によってプランジャ83bが、シート部81dに着座している弁体83aから離れることで、パイロット弁83fがパイロット路83eのプランジャ83b側の開口から離れ、パイロット路83eが開放される。
【0047】
パイロット路83eが開放されると、弁体83aとプランジャ83bとで挟まれる空間(主弁室)内の圧力が、吐出ポート53側の圧力にまで低下する一方、弁体83aの外方下側には、吸入ポート55側の高圧が作用し、係る圧力差によって弁体83aがリフトしてシート部81dから離れ、バイバス路81を介して作動流体が流れる開弁状態となり、コイル83dへの通電が継続されている間、開弁状態を保持する。
係る開弁状態(通電状態)から、コイル83dへの通電を遮断すると、プランジャ83bがコイルバネ83cの与勢力によってシート部81dに近づく方向に変位してパイロット路83eが閉塞され、更に、プランジャ83bに押されて弁体83aがシート部81dに近づく方向に変位し、弁体83aがシート部81dに着座して閉弁状態に戻り、コイル83dへの非通電が継続されている間、閉弁状態を保持する。
【0048】
このように、バイパス路81を開閉する弁機構83は、弁体83a、プランジャ83b、コイルバネ83c、コイル83dなどで構成される、所謂パイロット式の電磁弁である。
尚、弁機構83は、流体の圧力差を用いて弁体を駆動させるパイロット式の電磁弁に限定されず、可動コアの駆動によって機械的に弁体を開閉動作させる直動式の電磁弁とすることができる。
【0049】
制御ユニット4は、電磁クラッチ34を締結させたランキンサイクル装置2Aの起動直後において、前記コイル83dに通電させることで弁機構83を開弁状態とし、吸入ポート55と吐出ポート53とをバイパス路81で連通させることで、エンジン10によって駆動されるポンプ25Aで循環される作動流体が、駆動部としてのスクロール51,52を迂回して流れるようにする。
上記のように、膨張機23は、バイパス路81と当該バイパス路81を開閉する弁機構83とを一体的に備えるから、作動流体を循環させるための配管に、弁機構を備えたバイパス路を接続する場合に比べて、ランキンサイクル装置2Aにおける作動流体の循環回路を簡略化できる。
【0050】
また、バイパス路81が形成されると共に弁機構83を一体的に備えるホルダ82(バイパス部80)を、吸入ポート55が形成されるケーシング部56と、吐出ポート53が形成されるハウジング部54との間に挟持するから、膨張機23(流体機械)に対して簡易な構造でバイパス路81及び弁機構83を設けることができ、膨張機23の加工を簡略化し、かつ、膨張機23の軸方向長さが拡大することを抑制できる。
また、弁機構83は、プランジャ83b及び弁体83aの移動方向が、回転軸28の径方向に設定されるから、プランジャ83b及び弁体83aの移動空間は回転軸28の径方向に長く、移動方向を回転軸28と平行な方向とする場合に比べて、膨張機23の軸方向長さを抑制できる。
【0051】
更に、弁機構83のコイル(ソレノイド)83dが、ケーシング部56及びハウジング部54の外部に露出するホルダ82の基端部82bに収容されるから、コイル83dからの放熱を効率良く行わせることができる。
また、弁機構83を構成する部品の中でサイズが大きな部品であるコイル(ソレノイド)83dを、ケーシング部56とハウジング部54とで挟まれる部分の外側に配置するから、コイル(ソレノイド)83dの収容空間を、ケーシング部56とハウジング部54とで挟まれる部分に確保する必要がなく、これによっても、膨張機23の軸方向長さを抑制できる。
【0052】
また、ケーシング部56とハウジング部54との間にホルダ82(バイパス部80)を挟持する構造において、バイパス路81の一方の接続部を円筒シールとし、他方の接続部を平面シールとするから、作動流体の漏れ経路を遮断しつつ、ホルダ82(バイパス部80)の位置決めを容易に行える。
更に、バイパス路81は、吸入ポート55と吐出ポート53とを直接的に接続するから、バイパス経路に、旋回スクロール52の自転阻止機構60などの摺動部がなく、バイパス路81を開放しているときに気液混合状態又は液相状態の作動流体が流れても、係る作動流体によって摺動部の潤滑油の粘性が低下して、摺動部の潤滑性が低下することを抑制できる。
【0053】
ところで、
図2に示した膨張機23では、吸入ポート55と吐出ポート53とを、バイパス路81によって直接的に接続させたが、固定スクロール51及び旋回スクロール52からなる駆動部における作動流体の入口側と出口側とをバイパス路で接続すればよく、例えば、旋回スクロール52を囲む環状空間(吐出側)と吸入ポート55とを、バイパス路で接続することができる。
図4は、旋回スクロール52を囲む環状空間(吐出側)と吸入ポート55とを、バイパス路で接続するようにした膨張機23を含む、ポンプ一体型膨張機29Aを示す。
【0054】
図4に示す膨張機23は、ハウジング部54に形成される吐出ポート53が、回転軸28の径方向において吸入ポート55と異なる方向(一例として略逆の方向)に向けて開口している。
また、
図4に示す膨張機23では、
図2に示した膨張機23と同様に、ケーシング部56の吸入側連通路92が形成される部分に対向するハウジング部54には、凹陥部54e及び吐出側連通路93を形成してある。
【0055】
ここで、吐出側連通路93は、旋回スクロール52を囲む環状空間(吐出側空間)101に連通するバイパス空間102に接続される一方、吐出ポート53は、ハウジング部54の外部と環状空間101とを連通させる。
即ち、吸入側連通路92、バイパス路81、吐出側連通路93、バイパス空間102を介して、吸入ポート55と環状空間(吐出側空間)101とが連通し、作動流体を、駆動部としてのスクロールを迂回して循環させることができ、吸入ポート55からスクロール51,52を迂回して環状空間(吐出側空間)101に流入した作動流体は、環状空間101から吐出ポート53を経て外部に吐出されることになる。
【0056】
このように、
図4の膨張機23は、吐出ポート53の配置が
図2に示した膨張機23とは異なることで、吐出側連通路93を介してバイパス路81と接続させる対象が、吐出ポート53から環状空間(吐出側空間)101に変更されているが、スクロール51,52、ポンプ25A、伝達機構3、バイパス部80などの構造は、
図2の膨張機23と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図4の膨張機23においても、ケーシング部56とハウジング部54との間にホルダ82(バイパス部80)を挟持することで、
図2に示した膨張機23と同様な作用、効果を得ることができる。
【0057】
また、吐出ポート53と吸入ポート55とを回転軸28の異なる径方向に向けてそれぞれ開口させることができるので、
図2の膨張機23に比べて、吐出ポート53、吸入ポート55の向きの設定における制約が小さく、汎用性が高い。
尚、
図4の膨張機23では、作動流体が、吸入ポート55からスクロール51,52を迂回して環状空間(吐出側空間)101に流入し、旋回スクロール52の自転阻止機構60などの摺動部が存在する環状空間(吐出側空間)101を通過してから吐出ポート53にまで流れるため、バイパス経路の途中に摺動部を有することになる。
このため、バイパス経路に摺動部が存在しない
図2に示した膨張機23に比べて、
図4の膨張機23は、摺動部の潤滑性を確保する点では不利になる。しかし、自転阻止機構60としてEMカップリングなどのボールカップリング式の自転阻止機構を用いる場合、潤滑不足の状態においても焼付き等の不具合が発生せず、高い耐久性を有することが実験によって確認されているから、スクロール51,52を迂回して循環させる作動流体が気液混合又は液相であっても、十分な耐久性を維持できる。
【0058】
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
例えば、
図2又は
図4に示した膨張機23は、ポンプ25Aを一体的に備えるが、ポンプ25Aに代えて又はポンプ25A共に発電機を膨張機23と一体的に備えることができ、また、ポンプ25Aや発電機を備えない膨張機にも、上記のホルダ82(バイパス部80)によるバイパス構造を適用できる。
【0059】
また、膨張機23は、スクロール式の他、駆動部としてロータリーピストンを備えたロータリー式の膨張機とすることができる。
また、ホルダ82の円筒状突起部82cを、ハウジング部54に対向する面に設けて、当該円筒状突起部82cを吐出側連通路93に嵌合させ、ホルダ82の台座部82gを、ケーシング部56に対向する面に設け、当該台座部82gを吸入側連通路92が開口するケーシング部56の面に突き当てるようにすることができる。換言すれば、バイパス路81のハウジング部54側の接続部を、円筒シールでシールし、バイパス路81のケーシング部56側の接続部を、平面シールでシールすることができる。
【0060】
また、流体機械は、膨張機23に限定されず、圧縮機とすることができる。
更に、膨張機23などの流体機械は、廃熱利用装置(ランキンサイクル装置)に組み込まれるものに限定されるものではない。