(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969231
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】液晶レンズ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20160804BHJP
G02B 1/08 20060101ALI20160804BHJP
G02B 3/10 20060101ALI20160804BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02B1/08
G02B3/10
G02B3/14
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-62197(P2012-62197)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-195675(P2013-195675A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年10月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513066915
【氏名又は名称】ニューマンパワーサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角見 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】和田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
(72)【発明者】
【氏名】秋元 隆
【審査官】
福田 知喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−157145(JP,A)
【文献】
特開2011−180373(JP,A)
【文献】
特開2003−029001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02B 1/08
G02B 3/10
G02B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層と、
円形の開口及び前記開口を外部に連通させる連通口が形成された第1の電極部と、前記開口内に配された円形の主電極部、及び前記主電極部に接続されており、前記連通口内に配された引き出し電極部を含む第2の電極部とを有する第1の電極と、
前記第1の電極と前記液晶層を介して対向している第2の電極と、
前記第1の電極の少なくとも前記第2の電極部と、前記液晶層との間に配された高抵抗層と、
を備え、
前記高抵抗層は、前記主電極部の中心軸に対して回転対称となる形状を有し、前記高抵抗層の外周の全てが、前記第1の電極部が設けられた領域にまで至り、且つ、前記高抵抗層の外側に前記高抵抗層が設けられていない前記第1の電極部の領域が存在するように配されている、液晶レンズ。
【請求項2】
前記高抵抗層は、円形である、請求項1に記載の液晶レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屈折率が可変な液晶レンズが提案されている。液晶レンズには、駆動電圧を低くしたいという要望がある。これに鑑み、例えば特許文献1では、電極と液晶層との間に透明絶縁層が配されており、さらに透明絶縁層の液晶層に面する側の表面の上に高抵抗層が配された液晶レンズが提案されている。特許文献1に記載のように、高抵抗層を設けることにより液晶レンズの駆動電圧を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−17742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、液晶レンズの波面収差を小さくしたいという要望が高まってきている。
【0005】
本発明は、波面収差の小さい液晶レンズを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液晶レンズは、液晶層と、第1の電極と、第2の電極と、高抵抗層とを備えている。第1の電極は、第1の電極部と、第2の電極部とを有する。第1の電極部には、円形の開口及び開口を外部に連通させる連通口が形成されている。第2の電極部は、開口内に配された円形の主電極部及び引き出し電極部を含む。引き出し電極部は、主電極部に接続されている。引き出し電極部は、連通口内に配されている。第2の電極は、第1の電極と液晶層を介して対向している。高抵抗層は、第1の電極の少なくとも第2の電極部と、液晶層との間に配されている。高抵抗層は、主電極部の中心軸に対して回転対象となる形状を有している。
【0007】
なお、本発明において、「高抵抗層」とは、電気抵抗値が、表面抵抗で1×10
4Ω/□〜1×10
14Ω/□の範囲内にある層のことをいう。
【0008】
高抵抗層は、円形であることが好ましい。
【0009】
高抵抗層は、第1の電極部が設けられた領域にまで至っていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、波面収差の小さい液晶レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液晶レンズの略図的断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における第1の電極の略図的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0013】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0014】
図1は、本実施形態に係る液晶レンズ1の略図的断面図である。液晶レンズ1は、液晶分子を含む液晶層11を備えている。液晶層11は、第1及び第2の電極21,22により挟持されている。第1及び第2の電極21,22により、液晶層11に電圧が印加され、これにより液晶レンズ1の光学的パワーが変化する。
【0015】
より具体的には、液晶レンズ1は、相互に間隔をおいて対向するように配された第1の基板31と第2の基板32とを有する。第1の基板31と第2の基板32との間には、隔壁部材34が配されている。この隔壁部材34と第1及び第2の基板31,32とにより区画形成された空間に液晶層11が設けられている。なお、液晶層11は、ガラス板などによって複数の液晶層に区画されていてもよい。
【0016】
第1の基板31、第2の基板32及び隔壁部材34は、それぞれ、例えば、ガラスなどにより構成することができる。第1の基板31及び第2の基板32の厚みは、例えば、0.1mm〜1.0mm程度とすることができる。隔壁部材34の厚みは、得ようとする光学的パワーにより決定される液晶層11の厚みや、液晶層11に要求される応答速度等に応じて適宜設定することができる。隔壁部材34の厚みは、例えば、10μm〜80μm程度とすることができる。
【0017】
第1の基板31の液晶層11側の表面31aの上には、第1の電極21が配されている。一方、第2の基板32の液晶層11側の表面32aの上には、第2の電極22が配されている。第2の電極22は、液晶層11を介して第1の電極21と対向している。
【0018】
第1及び第2の電極21,22は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)等の透明導電性酸化物により構成することができる。
【0019】
第1の電極21は、円形の開口21a1と、円形の開口21a1を外部に連通させる連通口21a2(
図2を参照)とを有する第1の電極部21aと、第1の電極部21aの開口21a1の内部に配された円形の主電極部21b1と、主電極部21b1に接続されており、前記連通口21a2内に配された引き出し電極部21b2とを含む第2の電極部21bとを有する。液晶レンズ1では、液晶層11の主電極部21b1が設けられた領域に位置する部分が、レンズとして機能する。第1の電極部21aと第2の電極部21bとは、互いに絶縁されている。第1の電極部21aと第2の電極部21bとの間の隙間は、中空となっていてもよいし、絶縁体または後述する高抵抗層41が配されて中実となっていてもよい。
【0020】
なお、第1の電極21は、液晶層11が設けられた領域の全体に配されていてもよいし、液晶層11が設けられた領域の一部に配されていてもよい。同様に、第2の電極22は、液晶層11が設けられた領域の全体に配されていてもよいし、液晶層11が設けられた領域の一部に配されていてもよい。
【0021】
液晶レンズ1では、第1の電極部21aと第2の電極22との間に電圧V1が印加され、第2の電極部21bと第2の電極22との間に電圧V2が印加される。電圧V1と電圧V2との大きさを変化させることによって、液晶レンズ1の光学的パワーを変化させるこ
とができる。通常、第2の電極22は、電位が0Vであるグラウンド電極とされている。このため、本実施形態では、第1及び第2の電極21,22のうち、印加される電圧の絶対値の最大値が大きい方の電極は、第1の電極21となる。
【0022】
第1の電極21の少なくとも第2の電極部21bと液晶層11との間には、電気抵抗値が、表面抵抗で1×10
4Ω/□〜1×10
14Ω/□であり、電極よりも高い高抵抗層41が配されている。高抵抗層41は、例えば、液晶層11が設けられた領域の全体に配されていてもよいし、液晶層11が設けられた領域の一部に配されていてもよい。高抵抗層41は、例えば、第1の電極21のうちの第2の電極部21bの少なくとも一部のみの上に配されていてもよいし、第2の電極部21bに加えて、第1の電極部21aの少なくとも一部の上にも配されていてもよい。
【0023】
高抵抗層41は、酸化亜鉛、アルミニウム亜鉛酸化物、インジウムスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物、ガリウム亜鉛酸化物、シリコン亜鉛酸化物、スズ亜鉛酸化物、ホウ素亜鉛酸化物、及びゲルマニウム亜鉛酸化物のうちの少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0024】
なお、高抵抗層41は、単一の高抵抗層により構成されていてもよいし、複数の高抵抗層の積層体により構成されていてもよい。高抵抗層41が、複数の高抵抗層の積層体により構成されている場合は、複数の高抵抗層は、相互に同じ材料からなるものであってもよいし、相互に異なる材料からなるものであってもよい。
【0025】
高抵抗層41の厚みは、例えば、10nm〜300nmであることが好ましい。
【0026】
なお、図示は省略するが、高抵抗層41と液晶層11との間には、無機誘電体層が配されていることが好ましい。また、無機誘電体層と、第2の電極22が設けられた部分を含め、第2の基板32の表面32aとの上には、それぞれ配向膜が配されている。これらの配向膜により液晶層11に含まれる液晶分子の配向が行われている。
【0027】
高抵抗層41は、第1の電極21のうちの第2の電極部21bの少なくとも一部の上に配されている。高抵抗層41は、第2の電極部21bの主電極部21b1の中心軸に対して回転対象となる形状を有している。このため、液晶レンズ1の波面収差を小さくできる。この理由としては、定かではないが、以下の理由が考えられる。即ち、第1の電極21のうちの第2の電極部21bの少なくとも一部の上に高抵抗層41を配することで、液晶層11の高抵抗層41が形成された領域内と、その領域の外側の領域とで電荷のかかり方に差が生じる。液晶層11の高抵抗層41が位置する領域の内側に電気力線が引き寄せられる。高抵抗層41の形状を、第2の電極部21bの主電極部21b1の中心軸に対して回転対象とすることで、液晶層11の高抵抗層41が位置する領域の内側に均等に電気力線を引き寄せることができるためと考えられる。
【0028】
なお、高抵抗層41の中心軸は、第2の電極部21bの主電極部21b1の中心軸と一致していることが好ましいが、液晶分子のプレチルト角の影響等により、光軸ずれが生じる場合は、高抵抗層41の中心軸と第2の電極部21b主電極部21b1の中心軸はずれていてもよい。
【0029】
また、高抵抗層41の形状としては、第2の電極部21bの主電極部21b1の中心軸に対して回転対象となる形状を有するものであれば良い。高抵抗層41は、例えば、多角形、円形等であってもよい。なかでも、液晶レンズ1の波面収差をより小さくする観点から、高抵抗層41は円形であることが好ましい。
【0030】
また、液晶レンズ1のジオプトリを高める観点からは、高抵抗層41は、第1電極部2
1aまで至っていることが好ましい。このようにすることで、第1の電極部21a及び第2の電極部21b間に電力勾配が生じやすくなり、液晶層11の高抵抗層41が位置する部分の中心に向かって電気力線がより集中しやすい。従って、液晶レンズ1のジオプトリを高めることができる。
【0031】
また、液晶層11は、例えばガラス板などにより、厚み方向に沿って複数に分割されていてもよい。
【0032】
本発明に係る液晶レンズは、液晶層並びに第1及び第2の電極の組を複数有していてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…液晶レンズ
11…液晶層
21…第1の電極
21a1…開口
21a2…連通口
21a…第1の電極部
21b1…主電極部
21b…第2の電極部
21b2…引き出し電極部
22…第2の電極
31…第1の基板
31a…表面
32…第2の基板
32a…表面
34…隔壁部材
41…高抵抗層