(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、トイレットペーパーが2プライ以上であり、したがってこれを巻き取ってトイレットロールとした場合においても硬くなるおそれがないにもかかわらず、当該トイレットペーパーを長く巻き取ることができるトイレットロールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するための本発明は、次の通りである。
〔請求項1記載の発明〕
2プライ以上のトイレットペーパーが巻き取られてなるトイレットロールの製造方法であって、
JIS P 8121に準拠して測定したフリーネスが400〜500cc、JIS P 8226に準拠して測定した平均繊維長が0.7〜0.9mmとなるようにパルプ原料を叩解し、
この叩解したパルプ原料からウェブを形成し、
剥離剤及び
架橋型のコーティング剤を
固形分質量基準で7:3〜9:1の配合割合にて含む薬液でヤンキードライヤの表面に被膜を形成しつつ、当該ヤンキードライヤの表面において前記ウェブを乾燥し、このウェブをヤンキードライヤの表面からクレーピングドクターで引き剥がして、JIS P 8124に準拠して測定した坪量が9〜14g/m
2、かつJIS P 8118に準拠して測定した紙厚が75〜150μmとなるウェブを得、
このウェブをプライ加工して前記2プライ以上のトイレットペーパーを得る、
ことを特徴とするトイレットロールの製造方法。
【0007】
(主な作用効果)
2プライ以上のトイレットペーパーが巻き取られてなるトイレットロールにおいて、トイレットペーパーを構成する各ウェブ(プライ)のJIS P 8124に準拠して測定した坪量が14g/m
2以下であると、つまり、各ウェブが低坪量であると、2プライ以上とする場合においても、トイレットペーパーを長く巻き取ることができる。もっとも、各ウェブが低坪量であると、紙力が弱くなり、製品としての紙力が不十分になるおそれがある。また、ウェブが低坪量であると、例えば、ヤンキードライヤの表面からクレーピングドクターを使用してウェブを引き剥がす際に、ウェブが裂けたり、破れたりするおそれがある。しかしながら、JIS P 8121に準拠して測定したフリーネスが400〜500cc、平均繊維長が0.7〜0.9mmとなるようにパルプ原料を叩解することで、ウェブの紙力が弱くなるのを防止することができ、上記問題の発生が防止される。
【0008】
一方、ウェブが低坪量であると、ヤンキードライヤの表面からクレーピングドクターを使用してウェブを引き剥がす際に、ウェブの柔らかさが低下するおそれもある。しかるに、剥離剤及びコーティング剤を含む薬液でヤンキードライヤの表面に被膜を形成することで、ウェブの柔らかさが低下するのを防止することができる。この点、原産地等のパルプ原料の由来によって、当該パルプ繊維の柔らかさが変化する場合があるが、薬液が剥離剤及びコーティング剤を含むものとしておけば、剥離性に寄与する剥離剤の配合量と付着性に寄与するコーティング剤の配合量とを適宜変化させることで、ウェブを引き剥がす際に当該ウェブにかかる抵抗を調節することができ、パルプ原料の由来による影響を受けることなく、ウェブの柔らかさが低下するのを一律に防止することができる。
【0009】
【0010】
コーティング剤として熱硬化型のコーティング剤を使用すると、ヤンキードライヤの表面に対するウェブの付着性が当該ヤンキードライヤの温度変化によって大きな影響を受け、ウェブが低坪量である本発明においては、安定的に柔らかさの低下を抑えるのが難しくなるおそれがある。しかるに、コーティング剤として架橋型のコーティング剤を使用すると、ヤンキードライヤの温度変化によって大きな影響を受けることがないため、ウェブの柔らかさが低下するのを安定的に防止することができる。
【0011】
【0012】
本発明は各ウェブの坪量を14g/m
2以下の低坪量とするものであり、ウェブの柔らかさが従来のウェブよりも向上する。しかるに、ウェブの紙厚が75μmを下回るものとすると、ウェブの柔らかさが十分に向上しなくなるおそれがある。他方、本発明は各ウェブの坪量を9g/m
2以上とするものであり、パルプ原料を所定の範囲で叩解すること等と相まって、ウェブの紙力が十分に確保される。しかるに、ウェブの紙厚が150μmを上回るものとすると、繊維間結合が弱くなること等を原因として、ウェブの紙力が不十分になるおそれがある。
【0013】
〔請求項
2記載の発明〕
前記各ウェブのクレープ率を12〜20%とする、
請求項
1記載のトイレットロールの製造方法。
【0014】
(主な作用効果)
クレープ率が12%を下回ると、ウェブをプライ加工して2プライ以上のトイレットペーパーを得るとしても、トイレットロールの芯部側におけるトイレットペーパーが硬くなるおそれがある。また、トイレットペーパーが硬くなるのを防止するために巻き密度を下げると、トイレットペーパーを長く巻き取ることができなくなり、しかもトイレットロールが竹の子状に崩れてしまうおそれがある。他方、クレープ率が20%を上回ると、トイレットペーパーの嵩が高くなり過ぎて、トイレットペーパーを長く巻き取ることができなくなるおそれがある。
【0015】
〔請求項
3記載の発明〕
パルプ原料に湿潤紙力剤を内添し、
当該湿潤紙力剤の内添量を0.1質量%以下の範囲に留める、
請求項1
又は請求項2記載のトイレットロールの製造方法。
【0016】
(主な作用効果)
パルプ原料に湿潤紙力剤を内添すると、低坪量下においてウェブの紙力が弱くなるのをより確実に防止することができる。もっとも、ウェブの坪量が14g/m
2以下である本発明においては、湿潤紙力剤の内添量が0.1質量%を超えると、ウェブの柔らかさが低下するおそれがあり、湿潤紙力剤の内添量は0.1質量%以下の範囲に留めるのが好ましい。
【0017】
〔請求項
4記載の発明〕
前記各ウェブにエンボスを付与する、
請求項1〜
3のいずれか1項に記載のトイレットロールの製造方法。
【0018】
(主な作用効果)
各ウェブにエンボスを付与することでトイレットペーパーの柔らかさを向上することができる。しかも、エンボスの高さを調節することでトイレットロールの巻径を調節することができ、したがってトイレットペーパーが硬くなるのを防止しつつ、トイレットロールが崩れるのも防止することができる。
〔請求項5記載の発明〕
前記剥離剤及び前記コーティング剤の被膜量を1〜20mL/m2とし、かつ
前記ウェブの湿潤引張強さ(MD)を10〜100cNとする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のトイレットロールの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、トイレットペーパーが2プライ以上であり、したがってこれを巻き取ってトイレットロールとした場合においても硬くなるおそれがないにもかかわらず、当該トイレットペーパーを長く巻き取ることができるトイレットロールの製造方法となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明を実施するための形態について説明する。
本形態は、トイレットロールの製造方法に関するものであり、当該トイレットロールは2プライ又は3プライ以上のトイレットペーパーが巻き取られてなる。2プライ以上のトイレットペーパーは、例えば、プライマシンにおいて2枚以上の連続するウェブを積層する「プライ加工」をすることで形成する。
【0021】
各ウェブを製造するにあたっては、まず、パルプ原料を叩解する。このパルプ原料としては、例えば、LBKP、NBKP、LUKP、NUKP、LBSP、NBSP、TMP、CTMP、BCTMP、GP、RGP等の公知のパルプ原料の中から一種又は二種以上を適宜選択して使用することができる。
【0022】
ただし、パルプ原料としては、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)及びLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)を主原料として使用するのが好ましく、NBKP及びLBKPを15:85〜75:25の質量比で使用するのがより好ましい。NBKPは相対的に繊維長が長く、紙力強度を向上させるのに適する。他方、LBKPは相対的に繊維長が短く、嵩高性を向上させるのに適する。したがって、NBKP及びLBKPを適宜配合することで、ウェブの坪量や柔らかさと紙力とを、容易にバランスよく調節することができる。
【0023】
パルプ原料は、水に分散させて繊維懸濁液とし、例えば、ビーター、コニカルリファイナー、円筒型リファイナー、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)等の叩解機、好ましくはダブルディスクリファイナーを使用して叩解する。
【0024】
この叩解は、フリーネスが400〜500cc、平均繊維長が0.7〜0.9mmとなるように行うのが好ましく、フリーネスが420〜470cc、平均繊維長が0.7〜0.9mmとなるように行うのがより好ましく、フリーネスが430〜470cc、平均繊維長が0.7〜0.8mmとなるように行うのが特に好ましい。本形態においては、各ウェブの坪量を14g/m
2以下の低坪量とすることから、この叩解が不十分であると、ウェブの紙力が不十分になるおそれがある。他方、この叩解を更に進めると、ウェブの柔らかさが不十分になるおそれがある。
【0025】
複数のパルプ原料を使用する場合は、当該複数のパルプ原料を混合したうえで叩解しても、複数のパルプ原料を各別に叩解したうえで混合しても、最終的なパルプ原料のフリーネス及び平均繊維長が上記範囲内とされていればよい。ただし、製造効率の観点からは前者(先混合)によることが、調節容易性の観点からは後者(先叩解)によることが推奨される。
【0026】
なお、本発明において、フリーネスは、JIS P 8121に準拠して測定した値である。また、平均繊維長は、数平均繊維長を意味し、JIS P 8226に準拠して測定した値である。この平均繊維長は、カジャーニ繊維長測定器「Fiber Lab」(KAJAANI社製)を使用して測定する。
【0027】
本形態においては、パルプ原料(繊維懸濁液)に湿潤紙力剤を内添することができる。湿潤紙力剤を内添することで、ウェブの紙力が弱くなるのをより確実に防止することができる。ただし、当該湿潤紙力剤の内添量は、パルプ原料を基準とし、固形分換算で0.1質量%以下の範囲に留めるのが好ましく、0.01〜0.05質量%とするのがより好ましく、0.02〜0.04質量%とするのが特に好ましい。ウェブの坪量が14g/m
2以下である本形態においては、湿潤紙力剤の内添量が0.1質量%を上回ると、ウェブの柔らかさが不十分になるおそれがあり、後述するようにヤンキードライヤにおいて使用する薬液等に工夫を凝らしたとしても、トイレットペーパーが十分な柔らかさとならないおそれがある。
【0028】
湿潤紙力増強剤としては、例えば、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、酸コロイドメラミン樹脂等の中から一種又は二種以上を適宜選択して使用することができる。
【0029】
パルプ原料には、柔軟性や吸水性等の向上を目的として、柔軟剤を内添することもできる。柔軟剤の内添量は、パルプ原料を基準とし、固形分換算で0.05〜0.50質量%とするのが好ましく、0.08〜0.20質量%とするのがより好ましく、0.09〜0.15質量%とするのが特に好ましい。柔軟剤の内添量が0.05質量%を下回ると、柔軟性や吸水性等の向上効果が十分に得られないおそれがある。他方、柔軟剤の内添量が0.50質量%を上回ると、柔軟性や吸水性等の向上効果が飽和し、費用対効果が低下するおそれがある。
【0030】
柔軟剤としては、例えば、米国特許第3296065号明細書等に開示される脂肪酸エステル系軟化剤や、特開昭48−22701号公報等に開示される第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、特開平2−99690号公報、特開平2−99691号公報等に開示される非陽イオン系界面活性剤、特開昭60−139897号公報等に開示されるウレタンアルコール又はその塩若しくはカチオン化物、特開平2−36288号公報等に開示されるポリリン酸塩、特開平2−224626号公報、特開平3−900号公報等に開示されるポリシロキサン等の中から一種又は二種以上を適宜選択して使用することができる。ただし、これらの柔軟剤のなかでも、脂肪酸エステル系柔軟剤を使用するのが特に好ましい。
【0031】
パルプ原料には、以上の湿潤紙力剤や柔軟剤のほか、例えば、分散剤、苛性ソーダ等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、スライムコントロール剤、剥離剤、柔軟保湿剤、嵩高剤、乾燥紙力剤、歩留向上剤、染料、定着剤等の添加剤を、本発明による作用効果を阻害しない範囲で内添することができる。
【0032】
叩解や、必要により湿潤紙力剤等の添加を行ったパルプ原料(繊維懸濁液)は、抄紙機において抄紙する。この抄紙機は、パルプ原料からウェブ(湿紙)を形成するワイヤーパートと、当該ウェブを脱水するプレスパートと、脱水されたウェブを加熱されたヤンキードライヤによって乾燥するドライヤーパートとを有する。この抄紙機としては、例えば、ヤンキー型である限り、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、ハイブリッド抄紙機等の公知の抄紙機やこれを改良した抄紙機等を使用することができる。また、抄紙速度も公知の速度とすることができ、例えば、600〜2000m/分、好ましくは1300m/分とすることができる。
【0033】
ただし、ウェブをヤンキードライヤの表面に押し付ける等して乾燥するにあたっては、当該ヤンキードライヤの表面に剥離剤及びコーティング剤を含む薬液によって被膜を形成しておく。この薬液による被膜によってヤンキードライヤ及びクレーピングドクターの摩耗等が防止される。加えて、当該薬液が剥離剤及びコーティング剤を含むため、剥離性に寄与する剥離剤の配合量と付着性に寄与するコーティング剤の配合量とを適宜調節することによって、ヤンキードライヤの表面からウェブを引き剥がす際に当該ウェブにかかる抵抗を調節することができ、ウェブの柔らかさが低下するのを防止することができる。
【0034】
剥離剤及びコーティング剤の配合割合(固形分質量基準)は、パルプ原料の由来や製造するウェブの坪量等に基づいて、例えば、1:9〜9:1の範囲で適宜調節することができる。ただし、ウェブの坪量を14g/m
2以下の低坪量とする本形態においては、剥離性を重視するのが好ましく、好適には7:3〜9:1、より好適には8:2である。
【0035】
剥離剤としては、石油由来の鉱物油のほか、例えば、コーン油、ひまし油、なたね油等の植物油や界面活性剤等を使用することができる。また、コーティング剤としては、例えば、熱硬化型のコーティング剤を使用することもできるが、架橋型のコーティング剤を使用するのが好ましい。架橋型のコーティング剤を使用すると、ヤンキードライヤの温度変化によって付着性が大きく変化しないため、ウェブが低坪量であってもウェブの柔らかさが低下するのを安定的に防止することができる。
【0036】
薬液の被膜量は、1〜20mL/m
2とするのが好ましく、2〜10mL/m
2とするのがより好ましく、3〜8mL/m
2とするのが特に好ましい。薬液の被膜量が1mL/m
2を下回ると、上記柔らかさの低下防止効果が十分に発揮されなくなるおそれがある。他方、薬液の被膜量が20mL/m
2を上回ると、ウェブの乾燥に不具合が生じるおそれや、上記柔らかさの低下防止効果が飽和し、費用対効果が低下するおそれがある。なお、被膜の形成を、例えば、ヤンキードライヤの表面に薬液をスプレー塗布することで行う場合は、当該薬液のスプレー量は、ヤンキードライヤの周速等にも依存するが、好ましくは50〜350mL/分、より好ましくは80〜250mL/分、特に好ましくは130〜240mL/分である。
【0037】
以上のように、ヤンキードライヤの表面に薬液によって被膜を形成すると、ウェブはヤンキードライヤの平滑化された表面に張り付いた状態で乾燥されることになり、潜在的にクレープ形成力が蓄えられることになる。したがって、その後、クレーピングドクターによってヤンキードライヤの表面からウェブを引き剥がすと、当該ウェブには瞬時的に屈曲上のクレープが形成される。なお、このクレープは、ウェブの幅方向に沿う皺であり、ウェブの長手方向に複数が形成される。
【0038】
このクレープは、クレープ率が12〜20%となるように形成するのが好ましく、13〜18%となるように形成するのがより好ましく、14〜17%となるように形成するのが特に好ましい。クレープ率が12%を下回ると、ウェブをプライ加工して2プライ以上のトイレットペーパーとするとしても、トイレットロール芯部側においてトイレットペーパーが硬くなるおそれがある。また、トイレットペーパーが硬くなるのを防止するために巻き密度を下げると、トイレットペーパーを長く巻き取ることができなくなり、しかもトイレットロールが竹の子状に崩れてしまうおそれがある。他方、クレープ率が20%を上回ると、トイレットペーパーの嵩が高くなり過ぎて、トイレットペーパーを長く巻き取ることができなくなるおそれがある。このような要件を満たす限り、クレープ率は、トイレットペーパーの巻流れに応じて適宜変更することができる。
【0039】
なお、本発明において、クレープ率とは、「(「ヤンキードライヤの周速」−「トイレットペーパーを巻き取るリールの周速」)÷「ヤンキードライヤの周速」×100」を意味する。
【0040】
以上のようにしてウェブを得るに際しては、パルプ種や叩解度等の各種ファクターを適宜調節して、ウェブの坪量が9〜14g/m
2となるよう調節するのが好ましく、10〜13g/m
2となるように調節するのがより好ましく、11〜12g/m
2となるように調節するのが特に好ましい。ウェブの坪量が14g/m
2以下の低坪量となるように調節することで、ウェブの柔らかさが向上し、上記薬液の調節による効果がいかんなく発揮される。他方、ウェブの坪量が9g/m
2以上となるように調節することで、前述パルプ原料の叩解等と相まってウェブの紙力を確保することができる。
【0041】
ウェブの乾燥引張強さ(強度)は、縦方向(MD)を150〜400cN、横方向(CD)を60〜150cNとするのが好ましく、縦方向(MD)を170〜380cN、横方向(CD)を70〜140cNとするのがより好ましく、縦方向(MD)を190〜270cN、横方向(CD)を80〜120cNとするのが特に好ましい。また、ウェブの湿潤引張強さ(強度)は、縦方向(MD)を10〜100cN、横方向(CD)を3〜50cNとするのが好ましく、縦方向(MD)を20〜80cN、横方向(CD)を5〜40cNとするのがより好ましく、縦方向(MD)を20〜50cN、横方向(CD)を5〜20cNとするのが特に好ましい。本形態のウェブは、坪量14g/m
2以下の低坪量であるため、湿潤時の紙力低下が生じ易く、湿潤引張強さ(MD)を20cN以上とするのが好ましいとするものである。ただし、湿潤引張強さ(MD)が強過ぎると水解性が悪くなり、使用に際して詰まり等の問題が生じるおそれがあるため、湿潤引張強さ(MD)は、100cN以下の範囲に留めるのが好ましい。
【0042】
なお、本発明において、乾燥引張強さ(強度)は、JIS P 8113に準拠して測定した値である。また、湿潤引張強さ(強度)は、JIS P 8135に準拠して測定した値である。
【0043】
ウェブの紙厚は、75〜150μmとするのが好ましく、80〜130μmとするのがより好ましく、85〜110μmとするのが特に好ましい。本形態のウェブは坪量が14g/m
2以下の低坪量であり、ウェブの柔らかさが従来のウェブよりも向上する。しかるに、ウェブの紙厚が75μmを下回ると、ウェブの柔らかさが十分に向上しなくなるおそれがある。他方、ウェブの紙厚が150μmを上回ると、繊維間結合が弱くなること等を原因として、パルプ原料の叩解や湿潤紙力剤の添加等を行ってもウェブの紙力が不十分になるおそれがある。
【0044】
なお、本発明において、ウェブの「紙厚」は、JIS P 8118に準拠して測定した値である。
【0045】
以上にようにして得たウェブは、プライマシン等を使用してプライ加工して2プライ以上のトイレットペーパーを得る。このトイレットパーパーは、ロールワインダ等を使用して、エンボス加工、エッジエンボス加工、ミシン目加工、トリム加工、印刷加工、圧着加工等の加工をし、直ちに又はいったんリール等に巻き取る等した後、紙管等に巻き取ってトイレットロールを得る。特にエンボス加工は、トイレットペーパーの柔らかさや剛性を向上する機能を有するとともに、トイレットロールの巻径調節のためにも役立つ。
【0046】
トイレットロールの巻径は、例えば、内径が30〜50mmで、外径が100〜120m、好ましくは内径が35〜45mmで、外径が105〜115mmとすることができる。また、トイレットロールの巻長さは、40〜100m、好ましくは30〜150mとすることができる。さらに、トイレットロールの巻密度は、例えば、0.50〜0.90m/cm
2、好ましくは0.68〜0.74m/cm
2とすることができる。
【0047】
なお、本発明において、巻密度とは、トイレットロールの巻長さをトイレットロール側端面の面積(トイレットロールの中心軸と直交する面の面積)で除した値を意味する。この巻密度は、例えば、トイレットペーパーを巻き取る際に、当該トイレットペーパーに付与する巻取り張力を調節することによって調節することができる。
【実施例】
【0048】
次に、本発明の実施例を説明する。なお、坪量等を含む物性の評価方法は、前述した通りである。
【0049】
(実施例1)
NBKP及びLBKPが3:7の質量割合で配合されたパルプ原料をフリーネス450cc、平均繊維長0.8mmとなるように叩解するとともに、柔軟剤を対パルプ固形分基準で0.15質量%添加し、ヤンキードライヤが備わるベストフォーマー抄紙機を使用して、坪量10.4g/m
2、紙厚100μmのウェブを形成した。ウェブをヤンキードライヤで乾燥するにあたっては、当該ヤンキードライヤの表面に薬液をシャワー塗布して被膜を形成した。薬液としては、剥離剤(A)として鉱物油(理研グリーン社製のRHG1502N)を、コーティング剤(B)として架橋型のコーティング剤(理研グリーン社製のクレプトロール1085)を含むものを使用した。剥離剤(A)及びコーティング剤(B)の配合割合は、固形分質量基準で8:2であった。
このようにして得られたウェブをプライ加工等して2プライのトイレットペーパーを得るとともに、内径が30mm、外径が120mmとなるように巻き取ってトイレットロールを得、このトイレットロールの巻長さ及び柔らかさを評価した。評価結果を、ウェブやトイレットペーパーの他の物性とともに、表1に示した。なお、乾燥引張強さ及び湿潤引張強さは各ウェブについてのものであり、水解性は2プライのトイレットペーパーについてのものである。また、柔らかさは、次の基準に基づく3段階の官能評価によるものである。
〈柔らかさ〉
○:通常品トイレットロールより柔らかいと感じた場合。
△:通常品トイレットロールと同じ、若干堅いと感じた場合。
×:通常品トイレットロールより確実に堅い、ゴワゴワすると感じた場合。
【0050】
【表1】
【0051】
(実施例2)
実施例1について、パルプ原料に湿潤紙力剤を対パルプ固形分基準で0.1質量%内添して、実施例2とした。なお、湿潤紙力剤としては、星光PMC社WS4024を使用した。詳細は、表1に示した。
【0052】
(比較例1〜3)
実施例1について、コーティング剤を熱硬化型のコーティング剤(理研グリーン社製のレゾソール8289)に変える等、各種ファクターを変化させて比較例1〜3とした。詳細は、表1に示した。