特許第5969245号(P5969245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969245
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】多孔性フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/26 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   C08J9/26 101
   C08J9/26CFD
   C08J9/26CFG
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-79284(P2012-79284)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209455(P2013-209455A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】391009187
【氏名又は名称】株式会社白石中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】居内 謙治
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−023019(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/088707(WO,A1)
【文献】 特開昭54−035897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合リン酸を酸の形態で用いて表面処理することによって得られる、pHが8.0以下であり、かつ平均粒子径が0.02〜3μmの範囲である炭酸カルシウムを準備する工程と、
前記炭酸カルシウムが、ポリエステル系樹脂またはポリイミド系樹脂に含有された樹脂複合体を作製する工程と、
炭酸カルシウムは溶解するが前記樹脂は溶解しない溶液に、前記樹脂複合体を浸漬し、前記樹脂複合体中の前記炭酸カルシウムを溶解除去して多孔性フィルムを製造する工程とを備える、多孔性フィルムの製造方法。
【請求項2】
pHが8.0以下であり、かつ平均粒子径が0.02〜3μmの範囲である炭酸カルシウムを準備する工程と、
前記炭酸カルシウムが樹脂に含有された樹脂複合体を作製する工程と、
炭酸カルシウムは溶解するが前記樹脂は溶解しない溶液に、前記樹脂複合体を浸漬し、前記樹脂複合体中の前記炭酸カルシウムを溶解除去して多孔性フィルムを製造する工程とを備え、
前記樹脂複合体を作製する工程が、前記炭酸カルシウムを樹脂前駆体に含有させた後、樹脂前駆体を反応させて樹脂を形成し、前記樹脂複合体を作製する工程を含む、多孔性フィルムの製造方法。
【請求項3】
空孔率が20%以上である、請求項1または2に記載の多孔性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂がポリエステル系樹脂である、請求項2または3に記載の多孔性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂がポリイミド系樹脂である、請求項2または3に記載の多孔性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔性フィルムは、選択的透過による物質分離機能、異なる相間の隔膜機能、空孔内への物質の吸着・担持機能、音や衝撃の吸収緩和機能等の機能を有し、それらの機能が活かされた用途に用いられている。
【0003】
これらの内、微小な制御された孔を有する多孔性フィルムは、主として物質の分離機能、隔膜機能が活かされた用途に用いられており、電気電子用途としては、二次電池などの電池用セパレータフィルムとして広く用いられている。
【0004】
このような多孔性フィルムの製造方法としては、相分離法、抽出法、延伸法、溶融急冷法、化学処理法等の多様な方法が知られている。これらの方法の内、フィルムに無機粒子を充填させ、その後延伸する延伸法や、フィルム中に充填した無機粒子を溶解除去させる抽出法が広く用いられている。
【0005】
特許文献1及び特許文献2等においては、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの無機粒子をフィルム中に充填した後、延伸することにより、孔を形成する延伸法が提案されている。特許文献3及び特許文献4においては、炭酸カルシウムなどの無機粒子をフィルム中に充填した後、酸性水溶液などで無機粒子を溶解除去する抽出法が提案されている。
【0006】
抽出法に用いられる無機粒子としては、取り扱いが容易で、かつ除去しやすい炭酸カルシウムが広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−16550号公報
【特許文献2】特開2007−297583号公報
【特許文献3】特開2003−105120号公報
【特許文献4】特開2006−273987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
炭酸カルシウムを樹脂中に充填させる方法としては、加熱溶融した樹脂に、炭酸カルシウムを混入し、混練する方法や、樹脂前駆体中に炭酸カルシウム粉体を混入させた後、加熱等の方法で樹脂前駆体を反応(重合)させる方法などが知られている。
【0009】
しかしながら、炭酸カルシウムを樹脂中に含有させる場合には、樹脂が加水分解等により、劣化するという問題があり、また樹脂前駆体中に炭酸カルシウム粉体を含有させる場合には、樹脂前駆体の反応(重合)が進行しないなどの問題があった。
【0010】
本発明の目的は、炭酸カルシウムを用いて容易に多孔性フィルムを製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の多孔性フィルムの製造方法は、pHが8.0以下であり、かつ平均粒子径が0.02〜3μmの範囲である炭酸カルシウムを準備する工程と、前記炭酸カルシウムが樹脂に含有された樹脂複合体を作製する工程と、炭酸カルシウムは溶解するが前記樹脂は溶解しない溶液に、前記樹脂複合体を浸漬し、前記樹脂複合体中の前記炭酸カルシウムを溶解除去して多孔性フィルムを製造する工程とを備えている。
【0012】
本発明の多孔性フィルムの空孔率は、20%以上であることが好ましい。
【0013】
本発明において、樹脂複合体を作製する工程は、前記炭酸カルシウムを前記樹脂前駆体に含有させた後、樹脂前駆体を反応させて樹脂を形成し、前記樹脂複合体を作製する工程を含んでいてもよい。
【0014】
本発明における樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂及びポリイミド系樹脂が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炭酸カルシウムを用いて容易に多孔性フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】
<炭酸カルシウム>
本発明において用いる炭酸カルシウムは、pHが8.0以下であり、かつ平均粒子径が0.02〜3μmの範囲である。炭酸カルシウムのpHは、JIS K 5101に規定された顔料試験方法における常温抽出法で測定することができる。具体的には、蒸留水に炭酸カルシウム粉体を5質量%となるように添加して分散させ、得られた炭酸カルシウムの水懸濁液のpH値を測定することにより求めることができる。
【0018】
本発明において炭酸カルシウムのpHは、4.0〜8.0の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは6.0〜8.0の範囲である。
【0019】
上記のpH値を有する炭酸カルシウムは、例えば、炭酸カルシウムの表面を改質することにより得ることができる。例えば、炭酸カルシウムの表面を、ピロリン酸やメタリン酸などの縮合リン酸で表面改質することにより得ることができる。具体的には、炭酸カルシウムの水懸濁液に、ピロリン酸やメタリン酸などの縮合リン酸を添加し、表面処理条件を制御することにより、上記pH値を示す炭酸カルシウムを製造することができる。
【0020】
また、縮合リン酸のナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩を、炭酸カルシウムの水懸濁液に添加し、炭酸カルシウムの表面を改質してもよい。炭酸カルシウムに含有させるナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属塩の含有量を低減する観点からは、塩の形態ではなく、酸の形態で用いることが好ましい。
【0021】
また、上記の方法では、縮合リン酸またはその塩を炭酸カルシウムの水懸濁液に添加する湿式法により表面処理しているが、炭酸カルシウム粉体に縮合リン酸を添加する乾式法で処理してもよい。炭酸カルシウムの表面に均一に処理する観点からは、乾式法よりも湿式法が好ましく用いられる。
【0022】
本発明で用いる炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.02〜3μmの範囲であり、さらに好ましくは0.05〜2μmの範囲であり、さらに好ましくは0.1〜2μmの範囲である。炭酸カルシウムの平均粒子径が小さすぎると、炭酸カルシウムが二次凝集した状態で、樹脂中に含有され、所望の空孔径が得られないという問題が生じる。また、炭酸カルシウムの平均粒子径が大きすぎると、多孔性フィルムの通気性または透過性が高くなりすぎ、多孔性フィルムの用途として用いることができない場合がある。
【0023】
本発明においては、樹脂複合体中の炭酸カルシウムを溶解除去することにより、樹脂中に孔を形成するので、炭酸カルシウムの樹脂複合体中における含有量、及び炭酸カルシウムの平均粒子径等を調整することにより、多孔性フィルムの空孔率や空孔径等を制御することができる。
【0024】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0025】
本発明において用いる炭酸カルシウムは、石灰石を機械的に粉砕・分級することにより製造される重質炭酸カルシウムであってもよいし、水酸化カルシウムスラリーに炭酸ガスを反応させることによって製造することができる合成炭酸カルシウムであってもよい。
【0026】
また、本発明で用いる炭酸カルシウムの結晶形態は特に限定されず、カルサイト、バテライト、アラゴナイトのいずれの形態でもよい。
【0027】
<樹脂>
本発明において用いる樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。また、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてもよい。これらの樹脂の内、多孔性フィルムの耐熱性、強度等の観点からは、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂等のポリエステル系樹脂、及びポリイミド系樹脂が好適に用いられる。
【0028】
また、ポリイミド系樹脂としては、樹脂前駆体であるポリアミド酸等を加熱等によりイミド化させて得られるポリイミド樹脂を用いてもよい。
【0029】
ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸(一般的にはジカルボン酸)と多価アルコール(一般的にはジオール)を重縮合させた樹脂である。
【0030】
ポリイミド系樹脂は、繰り返し単位にイミド結合を有する樹脂の総称であり、一般的には下記構造式(1)を有している。
【0031】
【化1】
【0032】
本発明に用いるポリイミド系樹脂としては、上記構造式(1)で表わされるポリイミドの内、R及びR′が芳香族である、いわゆる芳香族ポリイミド系樹脂が特に好ましく用いられる。
【0033】
<樹脂複合体>
本発明における樹脂複合体は、樹脂に上記炭酸カルシウムを含有させることにより作製することができる。樹脂に炭酸カルシウムを含有させる方法としては、樹脂を加熱溶融し、溶融状態の樹脂に炭酸カルシウムを混合する溶融混練法が挙げられる。この場合、一般に用いられている混練機を用いることができ、例えば、一軸または二軸などの多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー、加圧式ニーダー等を用いることができる。
【0034】
また、樹脂前駆体に炭酸カルシウムを含有させた後、樹脂前駆体を反応させて樹脂を形成し、樹脂複合体を作製する方法も挙げられる。
【0035】
樹脂複合体における炭酸カルシウムの含有量は、得られる多孔性フィルムの用途などにより適宜調整することができる。例えば、5〜90質量%の範囲が好ましく、さらには10〜80質量%の範囲が好ましい。
【0036】
<多孔性フィルムの作製>
上記のようにして作製した樹脂複合体を、炭酸カルシウムは溶解するが、樹脂は溶解しない溶液に浸漬し、樹脂複合体中の炭酸カルシウムを溶解除去して多孔性フィルムを作製する。
【0037】
上記溶液としては、一般には酸溶液を用いることが好ましい。酸としては、無機酸及び有機酸のいずれも用いることができる。無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、クロム酸、フッ酸等が挙げられる。有機酸としては、酢酸などの有機カルボン酸、有機スルホン酸などが挙げられる。
【0038】
酸溶液の濃度は、使用する炭酸カルシウムの樹脂複合体中の含有量や、使用する樹脂に応じて適宜調整することができる。
【0039】
樹脂複合体中の炭酸カルシウムを溶解除去した後、好ましくは蒸留水などで洗浄した後乾燥し、多孔性フィルムとすることが好ましい。
【0040】
得られる多孔性フィルムの空孔率は、20%以上であることが好ましく、さらに好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。空孔率が低すぎると、通気性、透過性等の多孔性フィルムとしての性能が十分に発揮されない場合がある。空孔率の上限は特に規定されないが、フィルムがシート形状を保つためには、上限値は90%程度であることが好ましい。
【0041】
本発明によれば、pHが8.0以下であり、かつ平均粒子径が0.02〜3μmの範囲である炭酸カルシウムを樹脂に含有させて樹脂複合体を作製し、この樹脂複合体中の炭酸カルシウムを溶解除去して多孔性フィルムを製造しているので、炭酸カルシウムを含有させることによる樹脂の劣化を生じることなく、容易に多孔性フィルムを製造することができる。特に、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂などを用いた場合、炭酸カルシウムを含有させることにより、樹脂の劣化が起こりやすく、従来は混練時に樹脂が分解され、多孔性フィルムを成形することができない場合があった。本発明に従い、上記炭酸カルシウムを用いることにより、樹脂としてポリエステル系樹脂やポリイミド系樹脂を用いた場合にも、多孔性フィルムを製造することができる。
【0042】
また、ポリアミド酸などの樹脂前駆体中に炭酸カルシウムを含有させた場合、その後の樹脂前駆体のイミド化反応が抑制され、ポリイミド樹脂を得ることができないという問題がある。本発明に従い、上記炭酸カルシウムを用いることにより、ポリアミド酸などの樹脂前駆体に炭酸カルシウムを含有させた後、樹脂前駆体を反応させ、樹脂を形成することができる。従って、本発明によれば、樹脂前駆体に炭酸カルシウムを含有させる場合にも、樹脂前駆体のその後の重合反応を進行させることができ、樹脂複合体を作製し、多孔性フィルムを製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
重質炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル社製、ホワイトンP−10:平均粒子径1.9μm)を10質量%含有するように水に添加し、温度20℃に調整しながら、10分間攪拌して、炭酸カルシウムスラリーを調製した。この炭酸カルシウムスラリーに対し、ピロリン酸を5質量%含有する水溶液を、ピロリン酸の量が炭酸カルシウム100質量部に対し5質量部となるように添加し、10分間攪拌した後、脱水、乾燥、解砕して炭酸カルシウム粉体(A)を得た。
【0045】
得られた炭酸カルシウム(A)について、pH及び平均粒子径を測定した。
【0046】
pHについては、上記のようにJIS K 5101に準拠して測定した。
【0047】
平均粒子径については、島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2000Jによって湿式法で測定し、D50の値を平均粒子径とした。平均粒子径算出の際に使用した屈折率は、1.60−0.00iとした。また、炭酸カルシウム粉体の分散方法は、試料0.5gを0.2質量%のリグニンスルホン酸ナトリウム水溶液50mlに加え、十分に分散させ、測定試料とした。また、測定前に超音波を1分間照射し、超音波停止1分後に測定を行った。
【0048】
pH、平均粒子径は表1に示す通りである。
【0049】
上記炭酸カルシウム(A)を、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して80質量部添加して260℃で溶融混練した後、回転する一対のロールで圧延し、約100μmの膜厚の原反フィルムを作製した。得られた原反フィルムをテンター延伸機により延伸温度140℃で約3倍に延伸、160℃で熱固定し無機フィラーを含むフィルムを得た。作製したフィルムは、5質量%希塩酸水溶液に10秒浸積させ、炭酸カルシウムを溶解し除去した。浸積後、イオン交換水で1時間洗浄し、熱風オーブンを使用して40℃で3時間乾燥させて多孔性フィルムを得た。
【0050】
多孔性フィルムの空孔率は、以下の式で測定した。
【0051】
空孔率=[1−(多孔質フィルムの比重)/(樹脂の比重)]×100(%)
【0052】
(実施例2)
重質炭酸カルシウム(A)に代えて、合成炭酸カルシウム(平均粒子径:0.6μm)を用い、炭酸カルシウム100質量部に対し、ピロリン酸を6質量部となるようにピロリン酸水溶液を添加する以外は、実施例1と同様にして炭酸カルシウム粉体(B)を得た。
【0053】
pH、平均粒子径は表1に示す通りである。
【0054】
得られた炭酸カルシウム(B)を、実施例1と同様の方法でポリブチレンテレフタレート樹脂と溶融混練し、多孔性フィルムを作製した。
【0055】
(実施例3)
炭酸カルシウム100質量部に対し、ピロリン酸を1.5質量部となるようにピロリン酸水溶液を添加する以外は、実施例2と同様にして炭酸カルシウム粉体(C)を得た。
【0056】
pH、平均粒子径は表1に示す通りである。
【0057】
得られた炭酸カルシウム粉体(C)を実施例1と同様の方法でポリブチレンテレフタラート樹脂と溶融混練し、多孔性フィルムを作製した。
【0058】
(実施例4)
炭酸カルシウム100質量部に対し、ピロリン酸を10質量部となるようにピロリン酸水溶液を添加する以外は、実施例2と同様にして炭酸カルシウム粉体(D)を得た。
【0059】
pH、平均粒子径は表1に示す通りである。
【0060】
得られた炭酸カルシウム粉体(D)を、実施例1と同様の方法でポリブチレンテレフタラート樹脂と溶融混練し、多孔性フィルムを作製した。
【0061】
(実施例5)
テトラカルボン酸2無水物とパラフェニレンジアミンをN,N−ジメチルアセトアミド中、窒素雰囲気下で等モルで混合し、10質量%濃度のポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液に対し、ポリアミド酸と等質量の、実施例1で用いた炭酸カルシウム(A)を混入し、十分撹拌し、炭酸カルシウムが分散したポリアミド酸溶液を得た。この溶液を、ステンレスベルトに乾燥前の膜厚が200μmになるように塗布し、100℃で60分間乾燥し、炭酸カルシウムが充填したポリアミド酸フィルムを得た。得られたフィルムを、窒素置換したオーブン内で250℃で保持した後、更に350℃まで加熱し、イミド化することにより炭酸カルシウムが充填されたポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを、5質量%希塩酸水溶液に10分浸積させ、炭酸カルシウムを溶解し除去した。浸積後、イオン交換水で1時間洗浄し、熱風オーブンを使用して40℃で3時間乾燥させて多孔性フィルムを得た。
【0062】
(比較例1)
炭酸カルシウムとして、無処理の重質炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル社製、ホワイトンP−10)を用いた他は、実施例1と同様の方法で多孔性フィルムを作製した。
【0063】
(比較例2)
炭酸カルシウムとして、無処理の重質炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル社製、ホワイトンP−10)を用いた他は、実施例5と同様の方法で多孔性フィルムを作製した。
【0064】
(比較例3)
炭酸カルシウムとして、重質炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル社製、ホワイトンP−10:平均粒子径5μm)を用いた他は、実施例1と同様の方法で多孔性フィルムを作製した。
【0065】
実施例1〜5及び比較例1〜3における炭酸カルシウムのpH値、平均粒子径、得られた多孔性フィルムの空孔率及び外観等の結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示す結果から明らかなように、本発明に従い、pHが8.0以下にある炭酸カルシウムを用いることにより、良好な多孔性フィルムが得られた。
【0068】
比較例1においては、炭酸カルシウムを樹脂に混練する際に樹脂が分解し、成形を行うことができなかった。また、比較例2においては、樹脂前駆体のイミド化が進行せず、ポリイミドフィルムを得ることができなかった。
【0069】
比較例3においては、多孔性フィルムを得ることができたが、外観や穴の形状が良くなかった。