(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969250
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ICカード用リーダライタ
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20160804BHJP
G06K 7/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
G06K7/10 264
G06K7/00 008
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-84006(P2012-84006)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-214202(P2013-214202A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010386
【氏名又は名称】NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】阿部 英高
(72)【発明者】
【氏名】大月 勇治
【審査官】
甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−339449(JP,A)
【文献】
特開平11−259716(JP,A)
【文献】
特開平08−153170(JP,A)
【文献】
特開平11−353429(JP,A)
【文献】
特開平11−328319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00− 7/14
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダライタ回路を備えたケーシングと、該ケーシングの一面に設けられたリーダライタ面と、該リーダライタ面の両側方のケーシング部分に夫々両側端部を固定されると共に、該リーダライタ面に対向して離間配置されてリーダライタ面との間にICカード差し込み用の空間を形成し、且つ下端部を前記リーダライタ面の下端縁中央部に相当する前記ケーシング部分に固定されたホルダと、を備え、
前記ホルダは、ICカードを一端から前記空間内に差し込む上部開口と、前記ホルダの下端部の両側方に夫々位置し前記空間を外部と連通させる2つの下部開口と、を備えると共に、前記ホルダの下端部は、中央部に位置する中央高所部と、該中央高所部から前記各下部開口へ向けて下向きに傾斜した傾斜面と、を有していることを特徴とするICカード用リーダライタ。
【請求項2】
前記ホルダの正面中央部には前記空間を外部と連通させる内部視認用穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のICカード用リーダライタ。
【請求項3】
前記ホルダの平面形状は略アーチ状であり、前記上部開口を構成する前記ホルダの前端縁の正面形状はU字状であることを特徴とする請求項1、又は2に記載のICカード用リーダライタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触式ICカードに対する情報の読み書きを行うリーダライタの改良に関し、特に読み書き面に対して利用者が手で把持したICカードを近接させた際に発生し易い読み書きエラーを防止するためのICカードホルダを備えたリーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式の記録媒体、即ちRFID(Radio Frequency Identification)としてのICカードは、乗車カード、電子マネー用カード、認証用カード等々、種々な用途に使用されている。
ICカードはID情報の他に、用途に応じて種々の情報を記憶しており、電磁界や電波等を用いた無線通信によってリーダライタとの間で情報のやりとりを行うことにより、情報の読取り、書込み、書換えを行うことができる。
リーダライタは、カード読取り面にICカードの一面を近接させることにより、リーダライタ回路がICカードに対する記録情報の読み書きを非接触式で行う。
ところで、非特許文献1には、一面にICカードの読取り面を備えた機器本体と、この読取り面側にICカードを上から差し込んで保持するための空間を形成するために取り付けたホルダと、を備えたメモリーカード用データ入出力機の構成が開示されている。
ホルダがないタイプにあっては、ICカードと読取面との距離や位置関係、或いは近接している時間が利用者によってばらつくため、読取エラーが頻発する。
【0003】
これに対して非特許文献1のように読取り面側にホルダを設けた場合には、ICカードを一旦ホルダ内の空間に差し込んでから取り出す操作を行う必要があるため、ICカードと読取り面との距離や位置関係を所定値以内に納めることができ、しかも上記操作に要する時間が読取りに必要十分な時間の確保を可能にする。
ICカードが乗車カードや電子マネー用カードとして利用される場合には財布に収納して携帯されることが多い。このような利用者が非特許文献1に示したホルダ内の空間にICカードを挿入するためには、ICカードを財布から取り出す必要があるが、その際に誤って財布内の硬貨やレシート片等をICカードと共に取出し、前記空間内に投入してしまうことが少なくない。このため、ホルダ内空間に硬貨やレシート等の異物が溜まることになる。ホルダ内空間の奥部に一定以上の嵩の異物が溜まると、ICカードを正しい読取り位置まで挿入することが困難になり、ICカードと読取り面との間の位置関係が最適位置関係からずれを起こして読取りエラーが発生し易くなる。
また、ホルダ内空間の奥部に落下した硬貨は容易に取り出すことができず、このリーダライタを備えた機器の利用が停止されることにより稼働率が低下し、他の利用者に不便をかける、という問題も起きる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】意匠登録第1171259号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非接触式ICカードに対する情報の読み書きを行うリーダライタにおいて、ICカードを読取り面に対して正しく位置決めして保持するためのホルダを配置した場合には、ICカードと共に差し込まれた硬貨や紙片等の異物がホルダ内に落下して溜まり易くなり、溜まった異物の嵩が大きくなると新たにホルダ内に差し込んだICカードを正しい読取り状態にセットすることが困難となり、読取りエラーが発生し易くなる、という問題があった。
本発明は、読み書き面に対して利用者が手で把持したICカードを近接させた際に発生し易い読み書きエラーを防止するためのICカードホルダを備えたリーダライタにおいて、ICカードをホルダ内の空間に挿入する際に硬貨、紙片等の異物が空間内に落下して堆積し、読取り不良等の不具合をもたらすことを防止することができるICカード用リーダライタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、リーダライタ回路を備えたケーシングと、該ケーシングの一面に設けられたリーダライタ面と、該リーダライタ面の両側方のケーシング部分に夫々両側端部を固定されると共に、該リーダライタ面に対向して離間配置されてリーダライタ面との間にICカード差し込み用の空間を形成し、且つ下端部を前記リーダライタ面の下端縁中央部に相当する前記ケーシング部分に固定されたホルダと、を備え、前記ホルダは
、ICカードを一端から
前記空
間内に差し込む上部開口と、前記ホルダの下端部の両側方に夫々位置し前記空間を外部と連通させる2つの下部開口と、を備え
ると共に、前記ホルダの下端部は、中央部に位置する中央高所部と、該中央高所部から前記各下部開口へ向けて下向きに傾斜した傾斜面と、を有していることを特徴とする。
請求項
2の発明は、前記ホルダの正面中央部には前記空間を外部と連通させる内部視認用穴が形成されていることを特徴とする。
請求項
3の発明は、前記ホルダの平面形状は略アーチ状であり、前記上部開口を構成する前記ホルダの前端縁の正面形状はU字状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のICカード用リーダライタによれば、読み書き面に対して利用者が手で把持したICカードを近接させた際に発生し易い読み書きエラーを防止するためのICカードホルダを備えたリーダライタにおいて、ICカードをホルダ内の空間に挿入する際に硬貨、紙片等の異物が空間内に落下して堆積し、読取り不良等の不具合をもたらすことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るICカード用リーダライタの構成を示す上方からの前部斜視図、及び下方からの前部斜視図である。
【
図2】(a)(b)及び(c)は同ICカード用リーダライタの正面図、側面図、及び背面図である。
【
図3】(a)及び(b)は同ICカード用リーダライタの平面図、及び底面図である。
【
図5】(a)及び(b)はICカードを空間内にセットした状態を示す側面図、及び正面側斜視図である。
【
図6】他の実施形態に係るホルダの要部構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るICカード用リーダライタの構成を示す上方からの前部斜視図、及び下方からの前部斜視図であり、
図2(a)(b)及び(c)は同ICカード用リーダライタの正面図、側面図、及び背面図であり、
図3(a)及び(b)は同ICカード用リーダライタの平面図、及び底面図であり、
図4は
図2(a)のA−A断面図であり、
図5(a)及び(b)はICカードを空間内にセットした状態を示す側面図、及び正面側斜視図である。
ICカード用リーダライタ1は、略箱形の本体2と、本体の前面下部から前方にアーチ状に張り出されたホルダ20と、から概略構成されている。
本体2の背面を、自動販売機、両替機、金銭入出金装置等々の金銭取扱い装置100の前面に対してネジ止め等により固定される構成を有する。
本体2は、ケーシング3と、ケーシング3内部に配置されてICカードCに対する記録情報の読み書きを非接触式で行うリーダライタ回路4と、本体の前面に設けられたリーダライタ面10と、を有する。リーダライタ面10とホルダ20との間に形成される空間S内にICカードを差し込んでリーダライタ面10に近接させることによりリーダライタ回路4がICカードに対する記録情報の読み書き動作を行うことができる。
【0010】
ICカードCは、非接触式の記録媒体(RFID)であり、乗車カード、電子マネー用カード、認証用カード等々、種々な用途に使用される。
ICカードCはID情報の他に、用途に応じて種々の情報を記憶しており、電磁界や電波等を用いた無線通信によってICカード用リーダライタ1との間で情報のやりとりを行うことにより、情報の読取り、書込み、書換えを受けることができる。
ケーシング3の内部には、基板11と、基板11に搭載されリーダライタ回路を含んで電磁波の送受信、及びポーリング制御を行なうIC12と、電磁波の送受信を仲介するループアンテナ13が収容されている。基板に実装されたループアンテナ13からは常時、電磁波を送信しており、リーダライタ面10の外側に近接配置されたICカードのアンテナがその電磁波を受信することにより、電磁波のエネルギーを電源として駆動し、リーダライタとICカードとの間で情報の授受を行なう。
ホルダ20は、リーダライタ面10の左右両側方のケーシング部分に夫々固定される両側端部21、22、及びリーダライタ面の下端縁中央部に相当するケーシング部分に固定される下端部25を有し、且つ、リーダライタ面に対向して離間配置されてリーダライタ面との間にICカード差し込み用の空間Sを形成するホルダ本体30を有している。
【0011】
また、ホルダ本体30は、ICカードの一面をリーダライタ面10と対向させた状態でICカードを一端から空間S内に差し込む上部開口31と、ホルダ下端部25の両側方に夫々位置し空間Sを外部と連通させる2つの下部開口35、36と、をケーシング3(リーダライタ面)との間に形成する。このため、ホルダ本体30の正面形状は、略T字状、或いは略Y字状をなしている。
下部開口35、36は、ICカードCを空間S内に差し込んだ際に、ICカードと共に入り込みやすい硬貨や紙片等の異物を排出させるための手段である。従って、日本の硬貨でいえば、最大サイズの五百円硬貨を自重により落下、排出させ得るように各下部開口の形状、サイズ、位置を選定する。
ホルダ本体の正面中央部には空間Sを外部と連通させる内部視認用穴40が形成されている。内部視認用穴40は、ホルダ本体の内側の空間Sの内部に残った紙片等の有無を正面から目視により確認するためのものである。この例では、内部視認用穴40は縦長のスリット状であるが、内部を確認できる穴であればどのような形状、サイズであってもよい。
ホルダ20の平面形状は略アーチ状であり、上部開口31を構成するホルダの前端縁45の正面形状はU字状であり、上部開口31の前端縁45が円弧状に前方に突出しているため、ICカードを差込んだり、取出し易くなっている。
【0012】
また、差し込んだ後のICカードは図示のように上端部が前方へ傾斜し易いため、ICカード上部とリーダライタ面10との間に指を差し込むのに十分なスペースが形成されるので、差込み、取出しに際しての操作が容易となる。即ち、ホルダ前端縁45の湾曲した部分の左右方向最大幅W1をICカードCの横幅W2よりも大きく設定することにより、下端縁中央部をホルダの下端部25に当接させた状態で空間S内にセットされたICカードの左右端縁は、
図5(b)に示したようにホルダ前端縁45の湾曲した内周縁45aと接触するため、前傾姿勢になり易くなる。
【0013】
以上の構成を有したホルダによって形成される空間S内にICカードを差込んで読み書きを受ける手順は以下の通りである。
ICカードCは、利用者がICカードの一端縁を下向きにして他端縁側を指先で保持し、
図5(a)(b)に示したように上部開口31から空間S内部に差し込み、ICカード下端縁をホルダの下端部25の上面に着座させることにより、カードの一面をリーダライタ面10と対向させた状態でホルダによって安定して保持することができる。この時に指をICカードから離脱させても安定した姿勢に保持しつつ、読取り、書込みが行われる。
この状態でICカードをホルダによって所定の時間保持させることにより、読取り、書込みが完了する。読取りが完了した時点でICカードを指で保持して上部開口31から上向きに引き抜けば全ての操作が終了する。
硬貨、紙片等の異物が空間S内に落下した場合には、左右の下部開口35、36から外部に直ちに排出される。このため、異物がホルダ内部に堆積してICカードを正規の深さまで差し込んでセットすることができなくなり、読取りエラーが発生し易くなる、という従来の不具合が解消される。
【0014】
また、ホルダ下端部25上に異物があるか否かを、内部視認用穴40から内部を見ることにより容易に確認することができる。異物があることが確認された場合には、下部開口35、36から細長い物を差し込んで押し出すことにより容易に除去することが可能となる。
なお、
図6に示すようにホルダの下端部25を、中央部に位置する中央高所部25aと、中央高所部から各下部開口へ向けて下向きに湾曲傾斜した傾斜面25bとから構成した湾曲面とすることにより、硬貨などの異物が空間S内に進入しても必ず傾斜面25bに沿って左右の下部開口35、36から排出することができる。
本例では、下端部25の形状を全体として湾曲形状としたが、中央高所部25aと、左右の傾斜面25bを有する構成であれば、湾曲形状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0015】
1…ICカード用リーダライタ、2…本体、3…ケーシング、4…リーダライタ回路、10…リーダライタ面、11…基板、12…IC、13…ループアンテナ、20…ホルダ、21…両側端部、25…ホルダ下端部、25a…中央高所部、25b…傾斜面、30…ホルダ本体、31…上部開口、35、36…下部開口、40…内部視認用穴、45…ホルダ前端縁、45…前端縁、45a…内周縁。