特許第5969264号(P5969264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969264
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】紙幣還流装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20160804BHJP
   B65H 29/70 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   G07D9/00 401G
   G07D9/00 408Z
   B65H29/70
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-108633(P2012-108633)
(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公開番号】特開2013-235502(P2013-235502A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010386
【氏名又は名称】NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】矢野 英之
(72)【発明者】
【氏名】石川 篤
(72)【発明者】
【氏名】永井 義隆
【審査官】 角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−271887(JP,A)
【文献】 特開2008−129964(JP,A)
【文献】 特開2005−321920(JP,A)
【文献】 特開平09−240859(JP,A)
【文献】 特開2010−189103(JP,A)
【文献】 特開平07−010345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
B65H 29/70
31/00−31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路を長手方向に沿って搬送されてきた紙幣を収納する一方で収納されている紙幣を該搬送経路へ出金する紙幣還流装置であって、
前記搬送経路を搬送されてきた前記紙幣を収納する紙幣収納部と、該紙幣収納部と前記搬送経路との間で紙幣を入金方向及び出金方向へ双方向移動させる給紙ローラ群と、を備え、
前記紙幣収納部は、前記搬送経路を搬送されてきた前記紙幣を上下方向へ積層すると共に、上向きに弾性付勢されたバックアッププレートと、該バックアッププレート上に昇降して該バックアッププレート上の堆積紙幣の幅方向両端部側の上面を夫々抑える一対の押し込み部材と、該一対の押し込み部材間の開口内を相対的に昇降する紙幣ガイド部材と、を備え、
前記給紙ローラ群には、前記紙幣収納部の出入り口に上下位置関係で配置され、且つ互いの外周面間でニップ部を形成する正逆回転自在なフリクションローラ、及び出金方向に回転しない重送防止ローラと、該重送防止ローラと一体の回転軸によって連れ周り可能な状態で相対回転可能に軸支されると共に、該重送防止ローラの軸方向外側に夫々配置された一対のシワ伸ばしローラと、を含み、
前記各シワ伸ばしローラの外周縁は、前記重送防止ローラの回転軸中心からの距離L1が前記重送防止ローラの半径よりも大きい大径縁部と、前記回転軸中心からの距離が前記距離L1よりも短い距離L2である小径縁部と、を有し、
入金時に前記重送防止ローラの回転軸が入金方向に回転する際に、前記大径縁部が前記ニップを越えた状態で停止するように前記各シワ伸ばしローラを停止させる入金時ストッパ機構と、出金時に前記回転軸が停止するか又は入金方向に低速で回転する際に、前記小径縁部が前記ニップ部側にあって紙幣の出金を妨げないように前記各シワ伸ばしローラを停止させる出金時ストッパ機構と、を備えたことを特徴とする紙幣還流装置。
【請求項2】
前記シワ伸ばしローラの小径縁部は、前記紙幣収納部から前記搬送経路に紙幣が出金される際に前記ニップ部と同等の高さ位置か、該ニップ部よりも下方か、或いは該ニップ部よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の紙幣還流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣を収納したり釣銭として払出す入出金機能を備えた紙幣還流装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受け入れる入金機能や、釣り銭や払出し金として紙幣を払い出す出金機能を備えた紙幣還流装置は、各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備されており、この紙幣還流装置としては、始業時に準備した紙幣、或いは稼働中に投入された紙幣を金種別に収納しておき、必要に応じて釣銭として払い出すように構成されたものが知られている。
図8(a)及び(b)は夫々従来の紙幣還流装置の入金時ポジション、及び出金時ポジションを示す正面説明図であり、図9はこの紙幣還流装置の入金時の構成を示す斜視図である。また、図10(a)及び(b)は入金時におけるシワ伸ばしローラの役割を説明するための側面図、及び出金時における問題点を説明する正面図である。
【0003】
この紙幣還流装置200は、図示しない紙幣入金部から投入された紙幣を収納方向と出金方向の双方向へ搬送可能な搬送経路と連通しており、該搬送経路を搬送されてきた紙幣を収納(入金)したり該搬送経路へ繰出す手段である。紙幣は、紙幣の長手方向を搬送方向と並行にして搬送される。
紙幣還流装置200は、紙幣収納部201と、紙幣収納部と搬送経路との間で紙幣を双方向へ移動させる正逆転可能な給紙ローラ群250と、給紙ローラ群250を構成する各ローラの回転軸の両端部を支持する2つの軸支持部材260(一方は図示を省略)と、給紙ローラ群を駆動するモータ、ギヤ群等の図示しない駆動機構と、図示しない制御手段と、を備える。
紙幣収納部201は、上面に収納紙幣Pを積載し、且つ上下動可能なバックアッププレート202と、バックアッププレート202上に収納紙幣Pを押し込むために上下動可能であり、且つ紙幣通過用の開口を有した押し込み部材210と、押し込み部材を昇降させる図示しないモータ、プーリ、ベルト等からなる昇降機構と、バックアッププレート202の上方に位置し押し込み部材210の上下動に際して紙幣通過用の開口内を相対的に進退すると共に紙幣の搬送をガイドする紙幣ガイド部材220と、バックアッププレートを上昇方向へ付勢する弾性部材225と、を備える。
給紙ローラ群250は、バックアッププレート202上の紙幣上面に接して出金方向へ回転することにより最上部の紙幣を出金する繰出しローラ251と、分離ローラ対(フリクションローラ252a、ストップローラ252b)252等を備える。
【0004】
また、ストップローラ252bの軸方向両側には所定の間隔を隔てて円盤状のシワ伸ばしローラ260が同軸状に配置されている。各シワ伸ばしローラ260はストップローラよりも大径であり、且つストップローラと一体の回転軸255に軸心を固定されている(特許文献1)。
図8(a)に示した入金時ポジションでは、押し込み部材210が下降してバックアッププレート202上の紙幣束Pの最上面に接してこれを押し下げることにより、押し込み部材上に投入紙幣P1の収容空間を形成する。この状態で繰出しローラ251とフリクションローラ252aを矢印で示した入金方向へ回転させることにより上記収容空間内に投入紙幣P1を収容する。続いて押し込み部材210だけを上昇させることにより、投入紙幣P1は押し込み部材に設けた紙幣通過用の開口内を相対的に通過してバックアッププレート上に堆積した紙幣束P上に移載される。
図8(a)に示した入金時ポジションから(b)に示した出金時ポジションに移行させる場合には、押し込み部材210を(b)中に示した上昇位置に移動させることによりバックアッププレート上の紙幣束Pの最上面を繰出しローラ251と接触させる。この状態で繰出しローラ251及びフリクションローラ252aを矢印で示した繰出し方向へ回転させることにより最上部の紙幣が紙幣収納部201から外部に繰り出される。この際、重送防止手段としてのストップローラ252bは回転を停止するか、或いは矢印で示した戻し方向へ回転することにより、重送されてきた二枚の紙幣のうちの下側を紙幣収納部201側に戻す。
図8(a)に示した入金時には、図10(a)に示したように紙幣Pの幅方向中央部の上下両面がフリクションローラ252aとストップローラ252bとによってニップされる一方で、紙幣の幅方向両端部近傍の下面は各シワ伸ばしローラ260によって上方に押し上げられる。このため、分離ローラ対252のニップ部を通過する際に紙幣Pには図示したように略W字状、或いはV字状に変形させられる。
【0005】
腰が弱い材質の紙幣、水に濡れたり、すり減ることにより腰が弱くなっている紙幣は、入金時に分離ローラ対によりバックアッププレート上の空間に向けて先端から放出されて行く過程で、分離ローラ対から離間する程、シワ伸ばしローラによる変形効果が低減して先端から垂れ下がり易くなる。このため、垂れ下がった紙幣先端が既堆積紙幣や押し込み部材210に衝突して入金不良となりやすい。
紙幣収納部内で収納不良が発生すると、釣銭として払出しする際に、出金できないエラーが発生する。
これに対して、腰の弱い紙幣であっても、ストップローラの両側に設けた一対のシワ伸ばしローラ260の直径を拡大することによって紙幣の幅方向両端部を大きく押し上げることにより、W字状等のクセを強く形成して折れにくい形状に姿勢矯正を受けながら紙幣収納部内に搬送されることとなり、収納不良を防止することができる。
【0006】
シワ伸ばしローラの直径を大きくすればする程、腰の弱い紙幣P3を正常に入金処理することが可能となるが、繰出しローラ251の繰出し回転によって紙幣P3を紙幣収納部から出金する場合には、当該紙幣の先端がシワ伸ばしローラの外周縁に当たってしまい、分離ローラ対に到達できず、出金不良となりやすい(図10(b))。
出金時には最上部の紙幣はバックアッププレート202と紙幣ガイド部材220との間挟圧されて平坦状に形状が保持されており、幅方向に湾曲変形していない状態でシワ伸ばしローラに押し付けられる。このため、紙幣はシワ伸ばしローラを通過することができずに長手方向に変形し易くなり、出金不良となり易い。
特に、バックアッププレート上の紙幣を出金する際には、入金時におけるフォーミングと同様の形状(例えば、W字状)に変形しない限り、紙幣先端が繰出しローラ251に到達することができなくなるが、変形し難い腰の強い紙幣(官封券等)を出金する場合にはシワ伸ばしローラによる変形が行われにくいため、出金不良となり易い。シワ伸ばしローラの直径が大きい場合にはこのような不具合が顕著となる。
逆に、腰の弱い紙幣を出金する場合にはシワ伸ばしローラによってフォーミングされ易いため、紙幣先端が繰出しローラに到達し易くなり、出金不良が発生しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭64−60564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように従来の紙幣還流装置にあっては、分離ローラ対を構成するストップローラと同軸状に大径、且つ円盤状のシワ伸ばしローラが固定されているため、入金時には腰の弱い紙幣を挫屈しにくい形状に変形させて入金不良(収納不良)の発生を防止できる一方で、紙幣収納部内の腰の強い紙幣を出金する際にはこのシワ伸ばしローラが障害となって出金不良をもたらし易かった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、紙幣収納部の出入り口に分離ローラ対を備え、且つ分離ローラ対を構成するストップローラの両側方にシワ伸ばしローラを備えた紙幣還流装置において、入金時には挫屈、折れの発生を効果的に防止しつつ、腰の強い紙幣を紙幣収納部から出金する際にはシワ伸ばしローラが出金の障害となることを防止する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、搬送経路を長手方向に沿って搬送されてきた紙幣を収納する一方で収納されている紙幣を該搬送経路へ出金する紙幣還流装置であって、前記搬送経路を搬送されてきた前記紙幣を収納する紙幣収納部と、該紙幣収納部と前記搬送経路との間で紙幣を入金方向及び出金方向へ双方向移動させる給紙ローラ群と、を備え、前記紙幣収納部は、前記搬送経路を搬送されてきた前記紙幣を上下方向へ積層すると共に、上向きに弾性付勢されたバックアッププレートと、該バックアッププレート上に昇降して該バックアッププレート上の堆積紙幣の幅方向両端部側の上面を夫々抑える一対の押し込み部材と、該一対の押し込み部材間の開口内を相対的に昇降する紙幣ガイド部材と、を備え、前記給紙ローラ群には、前記紙幣収納部の出入り口に上下位置関係で配置され、且つ互いの外周面間でニップ部を形成する正逆回転自在なフリクションローラ、及び出金方向に回転しない重送防止ローラと、該重送防止ローラと一体の回転軸によって連れ周り可能な状態で相対回転可能に軸支されると共に、該重送防止ローラの軸方向外側に夫々配置された一対のシワ伸ばしローラと、を含み、前記各シワ伸ばしローラの外周縁は、前記重送防止ローラの回転軸中心からの距離L1が前記重送防止ローラの半径よりも大きい大径縁部と、前記回転軸中心からの距離が前記距離L1よりも短い距離L2である小径縁部と、を有し、入金時に前記重送防止ローラの回転軸が入金方向に回転する際に、前記大径縁部が前記ニップを越えた状態で停止するように前記各シワ伸ばしローラを停止させる入金時ストッパ機構と、出金時に前記回転軸が停止するか又は入金方向に低速で回転する際に、前記小径縁部が前記ニップ部側にあって紙幣の出金を妨げないように前記各シワ伸ばしローラを停止させる出金時ストッパ機構と、を備えたことを特徴とする。




【0010】
請求項2の発明は、前記シワ伸ばしローラの小径縁部は、前記紙幣収納部から前記搬送経路に紙幣が出金される際に前記ニップ部と同等の高さ位置か、該ニップ部よりも下方か、或いは該ニップ部よりも上方に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙幣収納部の出入り口に分離ローラ対を備え、且つ分離ローラ対を構成する重送防止ローラの両側方にシワ伸ばしローラを備えた紙幣還流装置において、入金時には挫屈、折れの発生を効果的に防止しつつ、腰の強い紙幣を紙幣収納部から出金する際にはシワ伸ばしローラが出金の障害となることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係わる紙幣還流装置の要部の概略構成を示す斜視図であり、(b)は要部正面図である。
図2】(a)(b)及び(c)は同紙幣還流装置の入金手順を説明する図である。
図3】(a)及び(b)は同紙幣還流装置の入金手順を説明する図である。
図4】(a)及び(b)は同紙幣還流装置の入金手順を説明する図である。
図5】(a)及び(b)は同紙幣還流装置の入金手順を説明する図である。
図6】(a)及び(b)は同紙幣還流装置の入金手順を説明する図である。
図7】(a)(b)及び(c)は同紙幣還流装置の出金手順を説明する図である。
図8】(a)及び(b)は夫々従来の紙幣還流装置の入金時ポジション、及び出金時ポジションを示す正面説明図である。
図9】従来の紙幣還流装置の入金時の動作を示す斜視図である。
図10】(a)及び(b)は入金時におけるシワ伸ばしローラの役割を説明するための側面図、及び出金時における問題点を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示した実施の形態例に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係わる紙幣還流装置の要部の概略構成を示す斜視図(スイーパ、その他の部品を省略)、及び要部正面図であり、図2(a)(b)及び(c)、図3(a)及び(b)、図4(a)及び(b)、図5(a)及び(b)、図6(a)及び(b)は同紙幣還流装置の入金手順を説明する図であり、図7(a)(b)及び(c)は同紙幣還流装置の出金手順を説明する図である。
【0014】
紙幣還流装置1は、投入された紙幣を受け入れる入金機能や、釣り銭や払出し金として紙幣を払い出す出金機能を備えており、各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備される。
紙幣還流装置1は、紙幣取扱装置に設けた図示しない紙幣入金部から投入された紙幣を収納方向と出金方向の双方向へ搬送可能な搬送経路と連通し、該搬送経路を搬送されてきた紙幣を収納(入金)したり該搬送経路へ繰出す手段である。本装置において、紙幣は、長手方向一端縁を先頭として長手方向に沿って搬送される。
紙幣還流装置1は、搬送されてきた紙幣を上下方向へ積層した状態で収納する紙幣収納部2と、紙幣収納部と搬送経路との間で紙幣を出金方向、及び入金方向へ双方向移動させる給紙ローラ群30と、スイーパ35と、給紙ローラ群30、その他の可動部を駆動するモータ、ギヤ群等の図示しない駆動機構と、駆動機構を制御する制御手段と、を備える。
【0015】
紙幣収納部2は、上面に収納紙幣Pを積載し、且つ上下動可能なバックアッププレート3と、バックアッププレートを上方に付勢する図示しない弾性部材と、バックアッププレート3上に収納紙幣Pを押し込むために一体的に上下動可能であり、且つ紙幣通過用の開口10aを介して対向配置された一対の押し込み部材10と、各押し込み部材10を一体的に昇降させるモータ、プーリ、ベルト等からなる昇降機構と、バックアッププレート3の上方に位置し各押し込み部材10の上下動に際して紙幣通過用の開口10a内を相対的に進退すると共に下面にて紙幣の上面に接してその搬送をガイドする紙幣ガイド部材20と、紙幣収納部2の前端側に固定された紙幣ガイド(固定部)60と、これらの構成要素を間に挟む形で対向配置された2つの軸支持部材70(一方の軸支持部材は図示を省略)と、を有する。紙幣ガイド部材20は軸20aを中心として上下動する。
紙幣収納部2の出入り口には図示しない通紙センサが配置され、紙幣を送出する際に送出を完了したか否かを検知する。通紙センサからの検知信号に基づいて制御手段が所定のタイミングで給紙ローラ群30、バックアッププレート3、押し込み部材10、紙幣ガイド部材20等を駆動する。
本実施形態では、各押し込み部材10を細幅帯状の板材から構成し、これらを所定の間隔を隔てて並行に対向配置させている。各押し込み部材10の上下動に伴って開口10a内を紙幣ガイド部材20が相対的に上下方向へ通過移動できるようになっている。
【0016】
給紙ローラ群30は、バックアッププレート3上の紙幣P上面に接して出金方向へ回転することにより最上部の紙幣を出金する正逆転可能な繰出しローラ31と、分離ローラ対32と、を備える。分離ローラ対32は、正逆回転する上側のフリクションローラ33と、下側のストップローラ(重送防止ローラ)34、ストップローラ34の軸方向両外側において回転軸34aと一体化されたスイーパ35と、スイーパ35の軸方向両外側において回転軸34aによって夫々フリー回転可能に軸支されたシワ伸ばしローラ40と、を備える。ストップローラ34(重送防止ローラ)は、紙幣の入金時には高速回転するフリクションローラ33に連れ周りして入金方向に高速回転するが、紙幣の繰出しのためにフリクションローラ33が繰出し方向に回転する時にはストップローラは停止するか、或いは戻し方向(入金方向)に低速で回転している。つまり、ストップローラ34は、出金方向へは回転しない。
シワ伸ばしローラ40は、回転軸(回転中心)34aによりストップローラ34とは相対回転可能に軸支されると共に、ストップローラの回転に連れ周りするように構成されている。また、各シワ伸ばしローラ40は円盤状ではなく、各シワ伸ばしローラの外周縁は、入金時に分離ローラ対32のニップ部の高さ位置よりも上方に突出する大径縁部41と、出金時に大径縁部の突出時の高さよりも下方に退避する小径縁部43と、を有した不定形である。換言すれば、シワ伸ばしローラ40の小径縁部43の回転中心34aからの距離L2は、大径縁部41の回転中心34aからの距離L1よりも短く設定されている。
換言すれば、回転軸34aから大径縁部41までの距離L1は、ストップローラ34の半径(回転軸からニップ部までの距離)rよりも大きく、回転軸から小径縁部43までの距離L2は、前記距離L1よりも小さく設定されている(図1(b))。
【0017】
図2に示した入金時には、シワ伸ばしローラ40が入金方向に回転する回転軸34aに連れ周りするため、大径縁部41は分離ローラ対のニップ部よりも上方に突出して紙幣を幅方向に変形させる一方で、図7に示した出金時には、シワ伸ばしローラは出金する紙幣に押されて出金方向に回動し、小径縁部43は大径縁部41の突出時の高さよりも下方に退避して出金の障害とならない。
更に、入金時にストップローラの回転軸34aが入金方向に回転(高速回転)する際には大径縁部41をニップ部側に突出させた突出位置にて停止させるように各シワ伸ばしローラ40を保持する入金時ストッパ機構50と、出金時に回転軸34aが停止するか、又は入金方向に低速で回転する際には出金する紙幣に押圧されて小径縁部43をニップ部側に位置させることにより紙幣の出金を妨げない状態で停止させる出金時ストッパ機構55と、を備える。
【0018】
本発明の特徴的な構成は、しわ伸ばしローラ40を、ストップローラ34の軸方向両外側において回転軸34aによって相対回転自在に軸支すると共に、シワ伸ばしローラ40の回転中心34aと外周縁との距離を全周に渡って一定とならないようにした点にある。このように回転中心と外周縁との距離が部分的に異なるように構成することによって、入金時にはシワ伸ばしローラ40の大径縁部41によって紙幣を挫屈しにくい形状に変形させる一方で、出金時には小径縁部43によって紙幣に対する干渉度合い(通紙抵抗)を少なくすることができる。
【0019】
入金時にはシワ伸ばしローラ40はストップローラ34の回転軸34aに連れ周り(回転軸とシワ伸ばしローラ内径部との摩擦による連れ周り)し、入金時ストッパ機構50によって回転を阻止されるまで回転する。シワ伸ばしローラの回転が停止した際には大径縁部41がニップ部とオーバーラップする突出位置に達しており、この位置で保持される。この突出位置において大径縁部41は、フリクションローラ33との協働によって紙幣を幅方向に変形させる癖を形成することができる。
出金時にはシワ伸ばしローラ40は、繰出しローラ31によって繰り出されて来る紙幣に押圧されることにより入金方向とは逆方向に回転し、出金時ストッパ機構55によって回転を阻止されるまで逆回転する。しわ伸ばしローラが停止した際には、小径縁部43がニップ部と対応する位置に達しており、この位置で保持される。この位置では、小径縁部43は出金する紙幣の通過を妨げることがない。
【0020】
フリクションローラ33とストップローラ34は、対向する2つの軸支持部材70に設けた軸受部によって両端部を回転自在に軸支され、図示しないモータからの駆動力によって回転駆動される。
ストップローラ34の回転軸34a上には、スイーパ35が固定されている。スイーパ35は、回転軸34aに固定される中心部材と、中心部材から放射状に突設された薄板状の弾性羽根と、を備えている。
図示しない前記昇降機構によって押し込み部材10の高さ位置とバックアッププレート3の高さ位置を変化させ、その結果として繰出しローラ31と紙幣上面との接触圧力を調整することにより、繰出し時における繰出しローラ31と紙幣最上面との間の分離圧力を変化させることができる。
【0021】
制御手段は、昇降機構を駆動することにより押し込み部材10を、最下降位置に保持した入金時ポジション(図2)と、該入金時ポジションよりも上方の出金時ポジション(図7)と、出金時ポジションよりも上方の図示しない最上点ポジションとの間で昇降させ、且つ各ポジションにて停止させることにより、紙幣の入金(収納)、及び収納されていた紙幣の出金を夫々行う。各ポジションは、例えば押し込み部材、或いはバックアッププレートの高さ位置を図示しないフォトセンサ(ポジションセンサ)によって検出することにより知ることができる。
【0022】
図2図3に示した入金時ポジションでは、一対の押し込み部材10が下降してバックアッププレート3上の紙幣束Pの最上面に接してこれを押し下げることにより、押し込み部材上に投入紙幣P1の収容空間を形成する。この状態でフリクションローラ33とストップローラ34とを矢印で示した入金方向へ回転させることにより上記収容空間内に投入紙幣P1を収容する。
続いて図4図5に示したように、押し込み部材10を上昇させることにより、バックアッププレート3が図示しない弾性部材の付勢力によって上昇し、投入紙幣の中央部上面が紙幣ガイド部材20により抑えられた状態となり、投入紙幣P1は押し込み部材に設けた紙幣通過用の開口10a内を相対的に通過してバックアッププレート上に堆積した紙幣束P上に移載される。各押し込み部材10が投入紙幣P1の両端部を越えて上昇してから、再び下降することにより投入紙幣の両端部を既堆積紙幣P上に押さえ込む(図6)。
図7に示した出金時ポジションでは、押し込み部材10を繰出しローラ31の最下部(ニップ部)よりも上方に位置させることによりバックアッププレート上の紙幣束Pの最上面の紙幣が適切な圧力で繰出しローラ31と接するように弾性部材の付勢力が設定されている。更に、バックアッププレート3上の積載紙幣枚数が減少するのに応じて弾性部材によってバックアッププレートが押し上げられ分離圧力を調整する。この状態で繰出しローラ31及びフリクションローラ33を矢印で示した繰出し方向へ回転させることにより最上部の紙幣が紙幣収納部2から外部に繰り出される。この際、重送防止手段としてのストップローラ34は回転を停止するか、或いは矢印で示した戻し方向へ回転することにより、重送されてきた二枚の紙幣のうちの下側紙幣を紙幣収納部2側に戻す。
【0023】
入金時ストッパ機構50は、シワ伸ばしローラ40の一側面から突設した第1の突起51と、この突起51を係止可能な位置に配置された紙幣ガイド(固定部)60と、から構成されており、図2(a)に示すように第1の突起51が回転途中で紙幣ガイド60の一部と接することにより、それ以上シワ伸ばしローラ40が入金方向(反時計回り方向)へ回転しないように規制する。この状態では、大径縁部41が分離ローラ対のニップ部を越えて上方に突出しており、図2(c)に示したように紙幣P1の中央部を下向きに湾曲変形させて長手方向への挫屈、変形を防止することができる。
出金時ストッパ機構55は、シワ伸ばしローラ40の一側面の他の部位から突設した第2の突起56と、この突起56を係止可能な位置に配置された紙幣ガイド(固定部)60と、から構成されており、図2(a)に示すように第2の突起56が回転途中で紙幣ガイド60の他の部位と接することにより、それ以上シワ伸ばしローラ40が出金方向(時計回り方向)へ回転しないように規制する。この状態では、小径縁部43が分離ローラ対のニップ部と対応する位置にあり、図7(c)に示したようにシワ伸ばしローラの外周縁がニップ部から上側に大きく突出していないため、出金される紙幣に対する干渉が皆無、又は少なくなり、腰の強い紙幣であってもスムーズに搬送経路へ向けて出金させることができる。
【0024】
出金時における小径縁部43の高さ位置は、ニップ部と同等、或いはニップ部よりも下方に設定してもよいし、若干ニップ部よりも上方に位置させてもよい。
なお、図示したシワ伸ばしローラ40の形状は一例に過ぎず、大径縁部41と、小径縁部43と、入金時ストッパ機構50と、出金時ストッパ機構55と、を備えた構成であれば、何れも本発明中に含まれるものである。
【符号の説明】
【0025】
1…紙幣還流装置、2…紙幣収納部、3…バックアッププレート、10…押し込み部材、20…紙幣ガイド部材、30…給紙ローラ群、31…繰出しローラ、32…分離ローラ対、33…フリクションローラ、34…ストップローラ、34a…回転軸、40…シワ伸ばしローラ、41…大径縁部、43…小径縁部、50…入金時ストッパ機構、51…第1の突起、55…出金時ストッパ機構、56…第2の突起
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