(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969267
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】外輪回転用軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20160804BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
F16C33/78 E
F16C33/78 K
F16C19/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-118199(P2012-118199)
(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公開番号】特開2013-245715(P2013-245715A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】香田 毅
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−002252(JP,A)
【文献】
特開2001−065582(JP,A)
【文献】
特開2005−299712(JP,A)
【文献】
特開2009−281547(JP,A)
【文献】
特開2011−226576(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1589242(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/78
F16C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と外輪との間に配される複数の転動体と、前記内輪と外輪との間の環状空間の軸方向両側を塞ぐ一対のシールとを備え、前記各シールは弾性部材で形成された環状の取付部を有し、その取付部が前記外輪の内周面に設けられた環状溝に嵌め込まれており、前記環状空間に潤滑剤が封入され、前記内輪が固定されて外輪が回転する外輪回転用軸受において、
前記外輪の環状溝の軸方向内側の溝縁部は断面円弧状に形成されており、
前記各シールは、前記取付部と一体に形成される芯金を有し、
前記取付部は、軸方向内側に向かって突出する弾性リップが設けられ、前記弾性リップが前記溝縁部に密着して全体を覆っており、
前記芯金は、前記溝縁部よりも径方向外側に向かって延びており、かつ、前記芯金の外周部は、前記溝縁部から前記外輪の環状溝の溝底までの深さの少なくとも半分以上、径方向外側に位置していることを特徴とする外輪回転用軸受。
【請求項2】
前記シールの芯金が取付部内で断面クランク状に折り曲げられたものであることを特徴とする請求項1に記載の外輪回転用軸受。
【請求項3】
前記外輪の環状溝の内壁にローレット加工を施したことを特徴とする請求項1または2に記載の外輪回転用軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に使用され、高速で外輪回転する外輪回転用軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
外輪回転用軸受は、通常、内輪と外輪との間の環状空間の軸方向両側が外輪内周面の両端部に取り付けられた一対のシールで塞がれており、その内輪と外輪との間に複数の転動体が配されるとともに、シールで密封された環状空間にグリース等の潤滑剤が封入され、内輪が固定されて外輪が回転する。そして、従来は、外輪の内径を大きくして環状空間の容積を増やし、潤滑剤の封入量を増やすことによって寿命延長を図ってきた。
【0003】
ところが、このような外輪回転用軸受では、外輪の内径を大きくして潤滑剤の封入量を増やすと、かえって短寿命となることがある。これを玉軸受の例で説明すると、
図6(a)に示すように、通常、外輪51の両端部に取り付けられるシール52は、ゴムで形成された環状の取付部53を有し、その取付部53が外輪51内周面に設けられた環状溝54に嵌め込まれている。このため、外輪51の内径が大きいと、遠心力を受けたグリースGがシール52を軸方向外側へ押圧する力が大きくなり、
図6(b)に示すように、シール52全体がその取付部53の弾性変形によってわずかに軸方向外側へ変位し、シール取付部53と環状溝54との間からグリースGが漏れてしまうことがある。
【0004】
また、グリースGの封入量を増やすと、グリースGの撹拌抵抗も大きくなって軸受温度が高くなり、シール取付部53を形成するゴムの劣化が早まるので、この点でもグリース漏れが生じやすくなる。
【0005】
上記のようなグリース漏れに対しては、一般に、シール取付部を熱劣化しにくいゴムで形成したり、発熱の少ないグリースを選定したりする対策がとられている。また、軸受の温度上昇を抑える方法も種々提案されており、例えば、特許文献1では、外輪に嵌め込まれる樹脂製のプーリ本体が外輪の両端面および外周面の両端部を覆わないようにすることにより、軸受の放熱性を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−174588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特に、自動車のエンジン用プーリ軸受等、軸受の限界回転数に近い高速条件で使用される外輪回転用軸受では、グリースに作用する遠心力が大きく、また、軸受温度が高くなりやすいために、上述したような従来の対策では十分に対応できず、グリース漏れによって短寿命となりやすい。
【0008】
そこで、本発明は、高速で外輪回転する外輪回転用軸受のグリース漏れを防止して軸受寿命を延長することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、内輪と外輪との間に配される複数の転動体と、前記内輪と外輪との間の環状空間の軸方向両側を塞ぐ一対のシールとを備え、前記各シールは弾性部材で形成された環状の取付部を有し、その取付部が前記外輪の内周面に設けられた環状溝に嵌め込まれており、前記環状空間に潤滑剤が封入され、前記内輪が固定されて外輪が回転する外輪回転用軸受において、前記各シールに軸受内部に向かって突出する弾性リップを設け、この弾性リップを前記外輪の内周側から前記環状溝の溝縁部に密着させた構成を採用した。
【0010】
すなわち、外輪の環状溝に弾性部材で形成された取付部を嵌め込まれて、内輪と外輪との間の環状空間の軸方向両側を塞ぐ一対のシールに、軸受内部に向かって突出し、外輪の内周側から環状溝の溝縁部に密着する弾性リップを設けることにより、シールが遠心力を受けたグリースに押圧されて軸方向外側へ変位しても、シールの弾性リップがシール取付部と環状溝との間に生じる隙間を塞ぐ蓋の役割を果たし、その隙間からのグリース漏れを防止できるようにしたのである。
【0011】
ここで、前記外輪の環状溝の軸受内部側の溝縁部が断面円弧状に形成されている場合は、その断面円弧状の溝縁部の全体を前記シールの弾性リップで覆うことが望ましい。
【0012】
また、前記シールは、前記取付部と一体に形成される芯金を有し、その芯金が取付部内で断面クランク状に折り曲げられたものとすることにより、シール取付部の外輪環状溝への嵌合力を高めて、グリース漏れを一層生じにくくすることができる。
【0013】
また、前記外輪の環状溝の内壁にローレット加工を施して、外輪とシールとが相対回転しないようにすれば、シールの摩耗によるグリース漏れも防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上述したように、外輪回転用軸受のシールに、軸受内部に向かって突出し、シールが取り付けられる外輪の環状溝の溝縁部に内周側から密着する弾性リップを設け、その弾性リップがシール取付部と環状溝との間の隙間を塞ぐ蓋の役割を果たすようにしたので、シール取付部と環状溝との間からのグリース漏れを防止して、軸受寿命の延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の外輪回転用軸受の要部の正面断面図
【
図3】a、bは、それぞれ
図1の軸受のシールの作用を説明する拡大断面図
【
図4】
図1のシールの芯金形状の変形例を示す拡大断面図
【
図5】
図1の外輪の環状溝にローレット加工を施した例を示す要部の斜視図
【
図6】a、bは、それぞれ従来の外輪回転用軸受のシール取付部の構造を説明する拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1乃至
図5に基づき、本発明の実施形態を説明する。この外輪回転用軸受は、
図1に示すように、内輪1と外輪2との間に配される複数の転動体としてのボール3と、ボール3を転動自在に保持する保持器4と、内輪1と外輪2との間の環状空間5の軸方向両側を塞ぐ一対のシール6とを備え、両シール6で密封された環状空間5に潤滑剤としてのグリース(図示省略)が封入され、内輪1が固定されて外輪2が回転する玉軸受であり、自動車のエンジン用プーリ軸受として用いられるものである。そのシール6は、外輪2内周面の両端部に設けられた環状溝7に取り付けられ、内輪1外周面の両端部に設けられたシール摺接面8に摺接している。なお、内輪1は、図示省略した固定軸と一体に形成してもよい。
【0017】
前記シール6は、外周側に外輪2の環状溝7に嵌め込まれる環状の取付部9を有し、内周側に内輪1のシール摺接面8に摺接するシールリップ10を有するゴム製部材11が、加硫成形により芯金12と一体形成されている。その芯金12は、外周部が径方向に対して軸受内部側へ傾斜するように折り曲げられ、内周部が径方向に対して直角に軸受内部側へ折り曲げられている。また、ゴム製部材11の取付部9には、その内周部から軸受内部に向かって突出する断面略三角形状のグリース漏れ防止リップ(弾性リップ)13が設けられている。なお、ゴム製部材11の材質としては、熱劣化しにくいニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム等が用いられる。
【0018】
そして、
図2に示すように、外輪環状溝7の軸受内部側の溝縁部14が断面円弧状に形成されており、シール6のグリース漏れ防止リップ13がこの断面円弧状の溝縁部14の全体を覆って、その溝縁部14に外輪2の内周側から密着している。
【0019】
ここで、シール6のグリース漏れ防止リップ13は、その径方向の厚み寸法Tが取付部9からの突出高さHに対して薄すぎると製作しにくくなるし、厚すぎると遠心力による溝縁部14への密着力が小さくなるので、厚み寸法Tを突出高さHの1〜1/2倍としている。
【0020】
この外輪回転用軸受は、上記の構成であり、
図3(a)に示すように、環状空間5に封入されたグリースGが遠心力を受けてシール6を軸方向外側へ押圧することにより、
図3(b)に示すように、シール取付部9が弾性変形してシール6全体がわずかに軸方向外側へ変位しても、シール6のグリース漏れ防止リップ13がシール取付部9と外輪2の環状溝7との間の隙間を塞ぐ蓋の役割を果たすので、シール取付部9と外輪環状溝7との間からグリースGが漏れにくく、軸受寿命の延長を図ることができる。
【0021】
また、シール6のゴム製部材11の材質として熱劣化しにくいゴムを用いているので、軸受温度が高くなる条件で使用されてもゴムの劣化によるグリース漏れが生じにくく、長期にわたって良好なシール性を維持することができる。
【0022】
ここで、上述した実施形態では、シール6のゴム製部材11が芯金12の外側面全体を覆うように加硫成形されているが、ゴム製部材を外周側と内周側に分割し、芯金の外側面の一部を覆わないように加硫成形すれば、軸受の放熱性が向上してゴム製部材のゴムがさらに劣化しにくくなるので、良好なシール性をより長く維持できるようになる。
【0023】
図4はシール6の芯金形状の変形例を示す。この変形例では、シール6の芯金12の外周部をシール取付部9内で軸受内部側へ断面クランク状に折り曲げている。これにより、シール取付部9の外輪環状溝7への嵌合力が高まり、シール6全体の軸方向外側へ変位が小さくなるので、
図1乃至
図3に示した例よりもグリース漏れを生じにくくすることができる。
【0024】
また、
図5は外輪2の環状溝7の内壁にローレット加工を施した例を示す。この変形例では、外輪2の環状溝7のローレット加工部15とシール6の取付部9との摩擦力が高まり、外輪2とシール6とが相対回転しないようになるので、シール取付部9の摩耗によるグリース漏れも防止することができる。
【0025】
なお、本発明は、実施形態のような自動車のエンジン用プーリ軸受に限らず、外輪が高速回転する外輪回転用軸受に対して有効に適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 内輪
2 外輪
3 ボール(転動体)
5 環状空間
6 シール
7 環状溝
9 取付部
11 ゴム製部材
12 芯金
13 グリース漏れ防止リップ(弾性リップ)
14 溝縁部
15 ローレット加工部
G グリース(潤滑剤)