(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明に係る引戸転倒防止装置が設けられた建物を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は住宅等の建物に設けられた引戸および引戸転倒防止装置の配置図、
図2は
図1のA1−A1線に沿う断面図、
図3は
図1の引戸の上端部と引戸枠の上レール部との関係を示す拡大断面図、
図4は
図1の引戸の下端部と引戸枠の下レール部との関係を示す拡大断面図、
図5は
図4の一方の引戸の下端部が側方に移動するのを規制している状態を示す説明図である。
【0010】
図1,
図2において1,2は建物の居室である。また、
図2において、3は居室1,2間を仕切る内壁(間仕切り壁)、3aは内壁3に設けられた開口部、4は開口部3aに嵌め込まれた引戸枠である。
【0011】
この引戸枠4内には、居室1,2の一方から他方に移動するための移動用開口5が設けられている。また、引戸枠4の上枠部(上端部)4aには枠部の長手方向両端まで延びる上レール部6が設けられ、引戸枠4の下枠部(下端部)4bには枠部の長手方向両端まで延びる下レール部7が設けられている。上レール部6は、
図3に示したように、上枠部4aの長手方向に延びていると共に、互いに平行に且つ幅方向に並設された第1,第2上ガイド溝(第1,第2上レール部)6a,6bを有する。また、下レール部7は、
図4に示したように互いに平行に且つ幅方向に並設された第1,第2下レール部7a,7bを有する。
【0012】
第1下レール部7aは、
図4に示したように引戸枠4の下端部(下枠部)に形成され且つ枠部の長手方向両端まで延びるガイド取付溝8と、ガイド取付溝8内に全体に沿うように嵌め込まれた第1下ガイドレール部材9を備えている。この第1下ガイドレール部材9は、上面に長手方向に延びる第1下ガイド溝部9aを有する。
【0013】
第2下レール部7bは、
図4に示したように引戸枠4の下端部(下枠部)に形成され且つ枠部の長手方向両端まで延びるガイド取付溝10と、ガイド取付溝10内に全体に沿うように嵌め込まれた第2下ガイドレール部材11を備えている。この第2下ガイドレール部材11は、上面に長手方向に延びる第2下ガイド溝部11aを有する。
【0014】
引戸枠4内には、
図1,
図2に示したように第1,第2引戸12,13が配設されている。この第1,第2引戸12,13は、
図3に示したように上端部に設けられ且つ第1,第2上ガイド溝6a,6b内に長手方向に移動可能に挿入された小幅の凸部12a,13aと、
図4に示したように下端部に設けられ且つ第1,第2下ガイド溝部9a,11aに長手方向に移動可能に係合させられた戸車12b,13bを有する。
【0015】
そして、第1,第2引戸12,13は、
図2に示したように召し合わせ部Bで召し合わせたときに、引戸枠4内の移動用開口5が閉成されて、間仕切りとなる。
【0016】
居室1,2の床部材1a,2a上には、引戸転倒防止部品20,21が引戸枠4の下枠部4bの両側に位置させて転倒規制部材として設けられている。この引戸転倒防止部品20,21は、引戸枠4の召し合わせ部Bに対応させて、下レール部7の両側に近接して設けられている。
【0017】
この引戸転倒防止部品20,21の構造は同じであるので、引戸転倒防止部品20の構造について説明し、引戸転倒防止部品21の引戸転倒防止部品20と同じ部分又は類似する部分については引戸転倒防止部品20に付した符号を付して説明は省略する。
【0018】
引戸転倒防止部品20は、
図4に示したように下枠部4bに近接して配設されたL字状のストッパ本体22と、ストッパ本体22をカバーするキャップ23を有する。
【0019】
ストッパ本体22は、
図4,
図5に示したようにビス22a2で居室1の床部材1aに固定された取付板部22aと、取付板部22aと垂直に側縁に折曲により一体に形成され且つ板面が下レール部7に沿って延びる起立板部(ストッパ部)22bを有する。この取付板部22aの角部には
図8に示したように大きなR状の湾曲部22a1,22a1が形成され、起立板部22bの上縁部の角部には大きなR状の湾曲部22b1,22b1が形成されている。
【0020】
また、この起立板部22bの下端部の両側には、L字状の切欠スリット22b2,22b2を形成することにより、撓み片22b3,22b3が形成されている。しかも、撓み片22b3,22b3の下端部には
図7.
図8に示したように互いに反対側に突出する円弧状突部22b4,22b4が形成されている。この円弧状突部22b4,22b4の互いに反対側端間の間隔は、取付板部22aの幅よりも僅かに大きく形成されている。
【0021】
キャップ23は、ゴム又は軟質の合成樹脂等の弾性部材から形成されていて、
図4,
図14〜
図16に示したように下端が開放している。しかも、このキャップ23は、
図4に示したように下レール部7に沿って配設された起立壁23aと、起立壁23aから反対方向に延びる上壁23bと、上壁23bから下方に向かうに従って起立壁23aから離反する方向に傾斜する傾斜壁23c等から側面形状が略台形状に形成されている。
【0022】
尚、
図9〜
図16に示したように、起立壁23aと傾斜壁23cの角部およびキャップ23の上縁部の幅方向の角部、キャップ23の側壁23dと傾斜壁23cとの角部には、大きなR状の湾曲部23Rが形成されている。
【0023】
また、キャップ23内には、
図13に示したように起立壁23aに沿って延び且つ
図14に示したように下方に開放する偏平な嵌着空間24が形成されていると共に、
図13に示したように起立壁23aと平行な仕切壁25及び仕切壁25と垂直な仕切壁26を介して区画され且つ下方に開放する一対の中空部27,27が形成されている。
【0024】
そして、
図4に示したようにキャップ23の下端部内にはストッパ本体22の取付板部22aが嵌着され、キャップ23の嵌着空間24にはストッパ本体22の起立板部22bが嵌着されている。
【0025】
更に、キャップ23の起立壁23aの両側部の下部には
図10,
図13,
図15に示したように孔28,28が形成され、キャップ23の嵌着空間24の両内側面には
図10,
図13に示したように孔28,28から延びる円弧状の係合凹部28a,28aが形成されている。そして、係合凹部28a,28aには起立板部22bの円弧状突部22b4,22b4が係合させることにより、この円弧状突部22b4,22b4と係合凹部28a,28aはキャップ23が起立板部22bから上方に抜け外れるのを防止している。尚、この係合状態の図示は省略している。
[作用]
このような構成においては、大きな地震等で建物に作用する振動等により第1,第2引戸12,13の下端部に側方への外力が作用することが考えられる。このような外力により第1,第2引戸12,13の下端部に設けた戸車12b,13bが図
5に示したように第1,第2下ガイド溝部9a,11aから側方に外れることもある。
【0026】
これにより第1,第2引戸12,13の下端部が下レール部と直交する方向へ移動し、引戸12,13が側方に傾斜しようとした場合、第1,第2引戸12,13の上端部に設けられた凸部12a,13aが第1,第2上ガイド溝6a,6bから外れて転倒する前に、
図6に示したように第1,第2引戸12,13の下端部が引戸転倒防止部品20,21に当たって止まる。この結果、第1,第2引戸12,13が側方に転倒するのを未然に防止できる。
【0027】
この引戸転倒防止部品20,21は、第1,第2引戸12,13の召し合わせ部Bに対応して設けられているので、第1,第2引戸12,13のスライド開閉位置がいずれにあっても第1,第2引戸12,13の転倒を防止できる。
【0028】
また、引戸転倒防止部品20,21のキャップ23は弾性部材から形成されていると共に、キャップ23の角部は大きなR状に形成されているので、利用者の足等が引戸転倒防止部品20,21に当たっても怪我をするのが未然に防止される。
【0029】
尚、転倒規制部材である引戸転倒防止部品20,21は、下枠部41bに設けても良い。
【0030】
また、第1下レール部7aはガイド取付溝8と第1下ガイドレール部材9を備え、第2下レール部7bはガイド取付溝10と第2下ガイドレール部材11を備えている構成としたが、第1下ガイドレール部材9,第2下ガイドレール部材11は必ずしもこれに限定されるものではない。即ち、特別な形状の第1下ガイドレール部材9,第2下ガイドレール部材11を設けずに、ガイド取付溝8を第1レール(第1下レール部)とすると共にガイド取付溝10を第2レール(第2下レール部)としても良い。
【0031】
更に、第1,第2下レール部は溝ではなく下枠部4bから上方に突出且つ下枠部4bの長手方向に延びるレール凸部とし、第1,第2引戸12,13の下端部に下面に開放し且つレール凸部に係合する下向きガイド凹部として、第1,第2引戸12,13をレール凸部と下向きガイド凹部によりスライド移動させるようにしても良い。
(その他1)
以上説明した実施例では、第1,第2引戸12,13が設けられた召し合わせ引戸構造および引戸転倒防止装置を居室1,2間を仕切る内壁(間仕切り壁)3に設けた開口部3aに適用した例を示したが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0032】
例えば、叙述した第1,第2引戸1,2が設けられた召し合わせ引戸構造および引戸転倒防止装置を玄関や外壁に設けられる出入口に適用することもできる。
(変形例1)
以上説明した実施例では、第1,第2引戸12,13を有する召し合わせ引戸構造に一対の引戸転倒防止部品20,21を適用した例を示したが、必ずしもこの構成に限定されるものではな
い。例えば、
図17に示したような一つの引戸のみからなる引戸構造に発明に係る引戸転倒防止装置を適用しても良い。
【0033】
この
図17では、居室1,2間を仕切る内壁(間仕切り壁)3に開口部3aが設けられている。
【0034】
そして、引戸構造の引戸枠41は、引戸14を有する。引戸41には、
図17に示したように利用者が移動するための移動用開口5が設けられている。また、
図18に示したように、引戸枠41の上枠部41a,下枠部41bにはそれぞれレール用枠部31bの上端部および下端部には上ガイド溝(上レール部)61と下レール部71がそれぞれ設けられている。
【0035】
この下レール部71は、引戸枠41の下端部(下枠部)に形成され且つ枠部の長手方向両端まで延びるガイド取付溝81と、ガイド取付溝81内に全体に沿うように嵌め込まれた下ガイドレール部材9を備えている。この下ガイドレール部材9は、上面に長手方向に延びる下ガイド溝部9aを有する。
【0036】
そして、引戸41の上端部には上ガイド溝61内に長手方向に移動可能に挿入された小幅の凸部14aが設けられ、引戸14の下端部には下ガイド溝部9aに長手方向に移動可能に係合させられた戸車14bが設けられている。
【0037】
この引戸14を内壁3に沿う方向に上ガイド溝61と下レール部71にガイドさせてスライド移動させることにより、移動用開口5は引戸14により開閉されるようになっている。
【0038】
尚、引戸枠41は、引戸14の移動方向(スライド方向)の半分が内壁3により閉成され、内壁3で閉成されていない部分に開口用枠部41aが設けられている。
【0039】
また、居室2の床部材2a上には、引戸転倒防止部品20′が引戸枠41の下端部(下枠部)の側方に位置させて転倒規制部として取り付けられている。この引戸転倒防止部品20′は、移動用開口5を引戸14で閉成したときの引戸14と内壁3との合わせ部B1に対応する位置で且つ下レール部71の内壁3とは反対側の側方に近接して設けられている。
【0040】
このような構成においては、大きな地震等で建物に作用する振動等により引戸14の下端部に側方への外力が作用することが考えられる。このような外力により引戸14の下端部に設けた戸車14bが下ガイド溝部9aから側方に外れることもある。
【0041】
これにより引戸14の下端部が下レール部と直交する方向へ移動し、引戸14が側方に傾斜しようとした場合、引戸14の上端部に設けられた凸部14aが上ガイド溝61から外れて転倒する前に、引戸14の下端部が引戸転倒防止部品20′に当たって止まる。この結果、引戸14が側方に転倒するのを未然に防止できる。
【0042】
この引戸転倒防止部品20′は、移動用開口5を引戸14で閉成したときの引戸14と内壁3との合わせ部B1に対応する位置で且つ下レール部71の内壁3とは反対側の側方に近接して設けられているので、引戸14のスライド開閉位置がいずれにあっても引戸14の転倒を防止できる。
【0043】
また、引戸転倒防止部品20′のキャップ23は弾性部材から形成されていると共に、キャップ23の角部はおおきなR状に形成されているので、利用者の足等が引戸転倒防止部品20′に当たっても怪我をするのが未然に防止される。
【0044】
尚、転倒規制部材である引戸転倒防止部品20′は、引戸枠41の下枠部(符号省略)に設けても良い。
【0045】
また、下レール部71はガイド取付溝81と下ガイドレール部材9を備えている構成としたが、下ガイドレール部材9は必ずしもこれに限定されるものではない。即ち、特別な形状の下ガイドレール部材9を設けずに、ガイド取付溝81をレール(下レール部)としても良い。
【0046】
更に、下レール部は溝ではなく引戸枠41の下枠部(符号省略)から上方に突出且つ下枠部(符号省略)の長手方向に延びるレール凸部とし、引戸14の下端部に下面に開放し且つレール凸部に係合する下向きガイド凹部として、引戸14をレール凸部と下向きガイド凹部によりスライド移動させるようにしても良い。
(補足説明1)
この発明の実施の形態の引戸転倒防止装置は、引戸枠(4,41)の上枠部(4a)および下枠部(4b)に上レール部(6、上ガイド溝61)および下レール部(7、35)がそれぞれ設けられ、引戸(第1引戸12,第2引戸13,引戸41)の上端部および下端部が前記上レール部(6、上ガイド溝61)および前記下レール部(7、71)に移動可能に支持されていると共に、前記引戸(第1引戸12,第2引戸13,引戸14)の下端部が前記下レール部(7、71)と直交する方向に移動するのを規制させる転倒規制部材(引戸転倒防止部品20,20′,21)が前記下レール部(7、71)の側方に設けられている。
【0047】
この構成によれば、引戸(第1引戸12,第2引戸13,引戸14)の下端部が下レール部(7、71)と直交する方向に移動するのを防止して、引戸(第1引戸12,第2引戸13,引戸14)が転倒するのを未然に防止できる。
(補足説明2)
この発明の実施の形態の引戸転倒防止装置は、前記引戸(引戸14)の移動方向において前記引戸枠(41)の半分側方が壁(内壁3)により閉成され、且つ、残りの半分の開口(移動用開口5)が前記引戸(引戸14)により開閉可能に設けられていると共に、前記開口(移動用開口5)を前記引戸(引戸14)で閉成したときの前記引戸(引戸14)と前記壁(内壁3)との合わせ部に対応する位置で且つ前記下レール部(71)の前記壁(内壁3)とは反対側の側方に前記転倒規制部材(引戸転倒防止部品20′)が設けられている。
【0048】
この構成によれば、引戸14の下端部が下レール部71と直交する方向に移動するのを防止して、引戸14が転倒するのを未然に防止できる。
(補足説明3)
この発明の実施の形態の引戸転倒防止装置は、召し合わせにより前記引戸枠(4)を閉成する複数の前記引戸(第1引戸12,第2引戸13)を備え、前記転倒規制部材(引戸転倒防止部品20,21)は前記複数の引戸(第1引戸12,第2引戸13)の召し合わせ部に対応して前記下レール部(7)の両側にそれぞれ設けられている。
【0049】
この構成によれば、引戸(第1引戸12,第2引戸13)の下端部が下レール部(7)と直交する方向に移動するのを防止して、引戸(第1引戸12,第2引戸13)が転倒するのを未然に防止できる。
【0050】
尚、上述した実施例では、召し合わせ部を有する引戸構造は2枚の第1引戸12,第2引戸13を設けた構成で説明したが、召し合わせ部を有する引戸構造としては3枚以上の複数の引戸を有する構成であってもよい。この場合にも、各引戸に対応して引戸転倒防止部品20,21と同様な引戸転倒防止部品を設けることで、3枚以上の各引戸が地震等の振動により転倒するのを未然に防止できる。
(補足説明4)
この発明の実施の形態の引戸転倒防止装置は、前記複数の引戸(第1引戸12,第2引戸13)は召し合わせにより前記引戸枠(4)を閉成する第1引戸12と第2引戸13であり、前記転倒規制部材(引戸転倒防止部品20,21)は前記第1引戸12と第2引戸13の召し合わせ部に対応して前記下レール部(7)の両側にそれぞれ設けられている。
【0051】
この構成によれば、引戸(第1引戸12,第2引戸13)の下端部が下レール部(7)と直交する方向に移動するのを防止して、引戸(第1引戸12,第2引戸13)が転倒するのを未然に防止できる。
(補足説明5)
この発明の実施の形態の引戸転倒防止装置は、前記転倒規制部材(引戸転倒防止部品20,20′,21)は、前記下レール部(7、71)の側方に位置させて床又は引戸枠に固定されたストッパ本体22と、前記ストッパ本体22を覆う弾性部材製のキャップ23を備えている。
【0052】
この構成によれば、転倒規制部材(引戸転倒防止部品20,20′,21)のキャップ23は弾性部材から形成されているので、利用者の足等が転倒規制部材(引戸転倒防止部品20,20′,21)に当たっても怪我をするのが未然に防止される。
(補足説明6)
この発明の実施の形態の引戸転倒防止装置は、前記キャップ23には前記下レール部(7、35)とは反対側の部分内に位置させて空間(中空部27)が形成されている。
【0053】
この構成によれば、利用者の足等が転倒規制部材(引戸転倒防止部品20,20′,21)に当たったときに、キャップ23が空間(中空部27)側に撓むので、当たったときの衝撃を吸収できる。
(補足説明7)
この発明の実施の形態の引戸転倒防止装置は、前記キャップ23はゴム又は合成樹脂から形成されている。
【0054】
この構成によれば、転倒規制部材(引戸転倒防止部品20,20′,21)のキャップ23はゴム又は合成樹脂から形成されているので、利用者の足等が転倒規制部材(引戸転倒防止部品20,20′,21)に当たっても怪我をするのが未然に防止される。