【実施例】
【0026】
先ず、実施例の構成について説明する。
【0027】
図1は、実施例の軸部材抜止構造を備えた戸としての折戸1の概略構成を示している。
【0028】
この
図1は、非居室側(収納側)から折戸1の吊元、即ち、軸部材6が上レール3に沿って移動しない部分を見たものである。
【0029】
まず、不図示の壁又は天井に固定された上側の戸枠21の下端面には、この下端面の長手方向に沿って長尺で溝形の上レール3が溝部を下向きとして、左右側の戸枠22の端面近傍まで設けられている。
【0030】
ここで、上レール3の溝部内には、所謂ピボット受材である軸受材4がその端部で固定部31にボルト40により固定されている。
【0031】
この軸受材4には、その略中央部に下方に向いた軸受穴41が形成されているとともに、その右端部から軸受穴41に向かって下る傾斜面42が形成されている。
【0032】
一方、戸(戸板)5の軸受穴41の下方の対応する位置には、所謂ピボットである軸部材6の下部が埋め込まれて設けられている。
【0033】
この軸部材6は、
図2に示したように、上側が開口した筒状のケーシング部61と、このケーシング部61の内部に下部が収納された軸本体部62とから主に構成されている。
【0034】
ここで、ケーシング部61の内部では、このケーシング部61の底部と軸本体部62の下部とが付勢力付与手段としてのバネ部材63により連結されている。
【0035】
また、ケーシング部61の上側には、拡径部61aが形成されている。
【0036】
さらに、軸本体部62の先端部(上端部)よりもやや下側には、拡径部62aが形成されている。
【0037】
そして、戸5の上面部では、
図3に示したように、右側を向いた切欠部7aに軸部材6の軸本体部62を嵌め込んだ状態で切欠7aの幅より径の大きな拡径部61aの上面を押え付ける下側抜止部材7がネジ70により固定して設けられている。
【0038】
この下側抜止部材7は、
図4に示したように、切欠部7aが形成された端部とは反対側の端部近傍にネジ孔7bが形成されており、また、切欠部7aの入口側の側部には、ケーシング部61の上側の拡径部61aの側面を押えるリップ部7c,7cが形成されており、さらには、縁部近傍に断面二次モーメントを大きくして部材強度を高めるための湾曲突出部7d,7dが形成されている。
【0039】
このような状態で、戸枠21,22内で戸5を左側にスライドさせると、
図1に示したように、軸部材6の先端部である軸本体部62の先端部が軸受材4の傾斜面42に案内され、その後、バネ部材63の付勢力により軸受穴41に嵌り込む。
【0040】
そして、
図5に示したように、上側抜止部材8の抜止板部81の左側を向いた方の切欠部8aに切欠8aの幅より径の大きな拡径部62aが上方となるように軸部材6の軸本体部62を嵌め込み、さらに、上側抜止部材8の固定板部82をネジ80,80により上側の戸枠21に固定すると、
図1に示したこの実施例の軸部材抜止構造が仕上がる。
【0041】
なお、この上側抜止部材8は、
図6に示したように、固定板部82に形成されたネジ孔8b,8bは、ネジ80,80による固定時に微調整を可能とするため、水平方向に長い長孔とされているとともに、固定板部82の左右縁部には、部材強度を高めるためのリップ部83,83が形成されている。
【0042】
次に、実施例の作用効果について説明する。
【0043】
このような実施例の軸部材抜止構造は、戸としての折戸1の支持用の軸部材6が抜けて戸5が転倒してしまうのを防止する、戸の軸部材抜止構造である。
【0044】
そして、戸5の上面部に上方に向けて突出するように設けられた軸部材6の突出部分である軸本体部62に拡径部62aが形成されており、軸部材6の先端部が上側の戸枠21に設けられた上レール3内の軸受穴41に嵌め込まれているとともに、上側の戸枠21に固定された上側抜止部材8の切欠部8aに拡径部62aが上方となるように軸部材6の軸本体部62が嵌め込まれて、拡径部62aの切欠部8aより下方への移動が規制された構成とされている。
【0045】
こうした構成なので、特に、大地震による振動のような過大な力と変位が戸5の下方に向かって加わった際も、上側抜止部材8により、拡径部62aの切欠部8aより下方への移動が規制されるため、折戸1の支持用の軸部材6が下方へ抜けて戸5が転倒してしまうのを防止することができる。
【0046】
ここで、上側抜止部材8は、切欠部8a,8aが逆向きとなるように左右対称の形状とされているとともに、非居室側(収納側)に設けられている。
【0047】
このため、この上側抜止部材8は、左側だけでなく、右側にも用いることができるうえに、居室側から見ると、上側抜止部材8は戸5で隠れるので、意匠的外観が良い。
【0048】
また、軸部材6のケーシング部61が戸5内に埋め込まれているとともに、戸5の上面部にケーシング部61の上面を押え付け、ケーシング部61の上方への移動を規制する下側抜止部材7が戸5に固定されている。
【0049】
このため、大地震による振動のような過大な力と変位が戸5の上方に向かって加わった際や下方に向かって加わった際に反力としてケーシング部61に大きな引抜力が加わったときも、下側抜止部材7により、戸5からのケーシング部61の上方への移動が規制されるため、折戸1の支持用の軸部材6が上方へ抜けて戸5が転倒してしまうのを防止することができる。
【0050】
さらに、軸部材6のケーシング部61の上側に拡径部61aが設けられているともに、下側抜止部材7に切欠部7aが形成され、切欠部7aに軸本体部62が嵌め込まれている。
【0051】
このため、ケーシング部61の上面と下側抜止部材7の下面との接触面積が大きくなるので、軸部材6の戸5からの抜止効果をより高めることができる。
【0052】
このような実施例の戸としての折戸1は、上記した実施例の戸の軸部材抜止構造を備えた構成とされている。
【0053】
こうした構成なので、上記した実施例の戸の軸部材抜止構造の作用効果を奏する折戸1とすることができる。
【0054】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0055】
例えば、上記した実施例では、上側抜止部材8と下側抜止部材7との両方を用いて実施したが、これに限定されず、いずれか一方のみを用いて実施してもよい。
【0056】
また、上記した実施例では、軸部材抜止構造を、折戸1に適用して実施したが、これに限定されず、例えば、開戸等に適用して実施してもよい。
【0057】
また、上記した実施例では、戸枠21,22を壁又は天井に固定して実施したが、これに限定されず、戸枠として、壁又は天井そのものを利用して実施してもよい。即ち、壁又は天井そのものに上レール3を直接設けて実施してもよい。
【0058】
さらに、上記した実施例では、上側抜止部材8を左右共通に使用できるように左右対称の形状にして実施したが、これに限定されず、左右の片側のみに切欠部8aを設けるなどして左右非対称の形状にして実施してもよい。