(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、互いに直交する3方向を各々X軸、Y軸、Z軸とし、主軸の軸線に沿う方向(軸線方向L)をZ軸とする。また、以下の説明では、X軸の一方側には−Xを付し、他方側には+Xを付し、Y軸の一方側には−Yを付し、他方側には+Yを付し、Z軸の一方側(下方向)には−Zを付し、他方側(上方向)には+Zを付して説明する。
【0016】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した工作機械の要部を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す工作機械の正面図である。
【0017】
図1に示す工作機械1は、タップやドリル等の工具99を保持する工具ホルダ9を下端部に保持する主軸10と、主軸10を回転可能に支持する主軸ヘッド12と、主軸ヘッド12をZ軸方向(主軸10の軸線方向L)に移動可能に支持する主軸台11(支持台)とを有しており、主軸台11は、主軸ヘッド12を介して主軸10を回転可能かつ軸線方向Lに移動可能に支持している。また、主軸台11には、後述する伝達機構を支持する支持板20および固定板21が連結されており、支持板20および固定板21は、後述する工具マガジン3のマガジン支持台28と主軸台11とを連結している。また、主軸ヘッド12の上端側は主軸ボックス14の内側で支持され、かかる主軸ボックス14は、主軸台11によって、Z軸方向(主軸10の軸線方向L)に移動可能に支持されている。このため、主軸台11は、主軸ボックス14および主軸ヘッド12を介して主軸10をZ軸方向に移動可能に支持している。
【0018】
工作機械1は、タップやドリル等の複数の工具99を保持する工具ホルダ9を複数、保持する工具マガジン3を主軸10に対してX軸方向の他方側+Xに有しているとともに、主軸10と工具マガジン3との間で、工具99を保持する工具ホルダ9の受け渡しを行う自動工具交換装置5が設けられている。主軸10の下方位置には、基台(図示せず)の上部にワークテーブル(図示せず)が設けられており、かかるワークテーブル上に取り付けられた被加工物(図示せず)は、主軸10が下降した状態で回転した際、ワークテーブルのX軸方向(水平横方向)およびY軸方向(水平前後方向)の移動によって、主軸10に保持された工具99により加工される。
【0019】
本形態の自動工具交換装置5では、支持板20の側(支持台11の側)に一対の工具ハンド41、42が支持されており、工具ハンド41、42は、主軸10の軸線方向の直動に連動して、工具マガジン3に設けられたホルダ保持部30との間で工具ホルダ9の受け渡しを行うとともに、主軸10との間で工具ホルダ9の受け渡しを行う。このため、本形態では、支持板20の側に固定板21を設ける一方、かかる固定板21に対してZ軸方向に移動可能にハンド支持板22を設け、かかるハンド支持板22によって工具ハンド41、42をX軸方向およびY軸方向で変位可能に支持した構造が採用されている。
【0020】
また、主軸ヘッド12のX軸方向の他方側+Xの側面には、上下方向に延在するカム面120が形成されており、主軸10、主軸ヘッド12および主軸ボックス14が軸線方向L(Z軸方向)に直動した際、カム面120がZ軸方向に直動する。そこで、工具マガジン3を回転可能に支持するマガジン支持台28の下方位置には、カム面120のZ軸方向の移動を工具マガジン3のホルダ保持部30に伝達してホルダ保持部30に開閉を行わせる伝達機構54が構成されている。
【0021】
(工具ハンド等の構成)
図3は、本発明を適用した工作機械1に設けた一対の工具ハンド41、42のうちの一方の工具ハンド41や工具ハンド41に対して構成したカム面の構成を示す説明図である。
【0022】
図1、
図2および
図3に示すように、工具ハンド41は、略L字形状に折れ曲がったアーム形状を有しており、上端部にはカムフォロアー411が設けられ、下端部には、工具ホルダ9の下端部を一方側の側面から掴む円弧状の爪部410が設けられている。工具ハンド41は、上下方向の途中位置から上方に向けて溝412によって2つに分岐しており、かかる分岐した2つの部分の各々に、X軸方向に延在するガイド軸511が通る軸穴が形成されている。
【0023】
このように構成した自動工具交換装置5において、固定板21に対してハンド支持板22とは反対側では、主軸ヘッド12から下方に向けて2枚のカム板(第1カム板16および第2カム板17)が延在しており、2枚のカム板(第1カム板16および第2カム板17)は、主軸10および主軸ヘッド12と一体にZ軸方向に直動する。
【0024】
本形態では、2枚のカム板のうち、第1カム板16の側面に形成したカム面161(第1カム面)を利用して、主軸10の軸線方向Lの直動を工具ハンド41に伝達して、工具ハンド41を主軸10との工具ホルダ9の第1受け渡し位置W1と工具マガジン3との工具ホルダ9の第2受け渡し位置W2との間で工具ホルダ9を移動させる第1伝達機構51が構成されている。
【0025】
また、第2カム板17において固定板21の側に向く面に形成したカム面172(第2カム面)を利用して、主軸10の軸線方向Lの直動を工具ハンド41に伝達して、工具ハンド41に開閉動作を行わせる第2伝達機構52が構成されている。
【0026】
さらに、第1カム板16において固定板21の側に向く面に形成した段差状のカム面163(第3カム面)を利用して、主軸10の軸線方向Lの直動を工具ハンド41に伝達して、工具ハンド41を主軸10に対してZ軸方向に相対移動させる第3伝達機構53が設けられている。
【0027】
(第1伝達機構51の構成)
第1伝達機構51は、一方端186(上端)を中心に他方端187(下端)が回転可能な第1回動部材18と、一方端196が第1回動部材18の他方端187に軸181によって連結された第2回動部材19とを有しており、第2回動部材19の他方端197は、工具ハンド41に機構的に接続されている。また、第1伝達機構51は、第1受け渡し位置W1と第2受け渡し位置W2との間で延在するガイド軸511を有しており、ガイド軸511は、工具ハンド41で分岐した2つの部分の各々の上端部を貫通している。
【0028】
ここで、第1回動部材18および第2回動部材19は、一体に連結されてレバーを構成しており、第1回動部材18の他方端187および第2回動部材19は、一方端186(上端)と固定板21とを接続する軸211を中心にY軸周りに回転可能である。また、第1回動部材18の他方端187(下端)と第2回動部材19の一方端196(上端)との接続部分には軸181と同軸状にカムフォロアー514(第1カムフォロアー)が設けられており、かかるカムフォロアー514は、第1カム板16のX軸方向の他方側+Xの側面に形成されたカム面161(第1カム面)にバネ等(図示せず)の付勢力によって常時当接している。カム面161には、下端寄りの位置にX軸方向の他方側+X(カムフォロアー514が位置する側)に向けて突出した凸状部161aが形成されている。また、第2回動部材19の他方端197(下端)は、工具ハンド41で分岐した2つの部分の間(溝412内)に位置し、かつ、第2回動部材19の他方端197(下端)には、軸191によってカムフォロアー515が取り付けられている。
【0029】
このため、主軸10の軸線方向Lの直動に伴って第1カム板16がZ軸方向に移動すると、カム面161に形成された凸状部161aに沿ってカムフォロアー514がX軸方向に移動する。従って、工具ハンド41はカムフォロアー515に押圧されてガイド軸511に沿ってX軸方向に移動する。それ故、工具ハンド41は、第1受け渡し位置W1と第2受け渡し位置W2との間で直動することになる。
【0030】
(第2伝達機構52の構成)
第2伝達機構52は、第2カム板17において固定板21の側に向く面に形成したカム面172(第2カム面)と、工具ハンド41の上端部に設けられたカムフォロアー411(第2カムフォロアー)とによって構成されており、カムフォロアー411は、バネ等(図示せず)の付勢力によってカム面172に常時当接している。ここで、工具ハンド41は、ガイド軸511を中心に揺動可能であり、カム面172には、Z軸方向の途中位置にY軸方向の一方側−Y(カムフォロアー411が位置する側)に向けて突出した凸状部172aが形成されている。このため、主軸10の軸線方向Lの直動に伴って第2カム板17がZ軸方向に移動すると、カム面172に形成された凸状部172aに沿ってカムフォロアー411がY軸方向に移動する。従って、工具ハンド41はカムフォロアー411に押圧されてガイド軸511の軸線周りに揺動し、下端側の爪部410がY軸方向で変位する。かかる動作は、2つの工具ハンド41、42の双方で実行されるので、2つの工具ハンド41、42は、互いの爪部410、420が接近する閉方向、および互いの爪部410、420が離間する開方向に変位することになる。
【0031】
(第3伝達機構53の構成)
第3伝達機構53は、第1カム板16において固定板21の側に向く面に形成した段差状のカム面163(第3カム面)と、固定板21に軸214によって回転可能に支持された回動部材15(第3回動部材)とを利用して構成されており、カム面163のZ軸方向の中央部よりやや下方には、X軸方向の他方側+Xに向けて突出した凸状部163aが形成されている。回動部材15は、軸214による支持位置を中心に屈曲したアーム状部材であり、回動部材15の一方端151側には、バネ等(図示せず)の付勢力によってカム面163に常時当接するカムフォロアー531(第3カムフォロアー)が取り付けられている。また、回動部材15の他方端152側には、
図1に示すように、固定板21の開口を貫通してハンド支持板22に形成された矩形の溝状開口部221の内側に位置するカムフォロアー532(第4カムフォロアー)が取り付けられている。
【0032】
ここで、溝状開口部221は、X軸方向に延在する矩形形状であり、Z軸方向の幅寸法は、カムフォロアー532よりわずかに大である。このため、主軸10の軸線方向Lの直動に伴って第1カム板16がZ軸方向に移動すると、カム面163に形成された凸状部163aに沿ってカムフォロアー531がX軸方向に移動し、その結果、カムフォロアー532が溝状開口部221の内側でX軸方向に移動しながらZ軸方向に移動する。従って、ハンド支持板22がZ軸方向に移動する結果、工具ハンド41、42は、Z軸方向に直動することになる。
【0033】
(ホルダ保持部の構成)
図4は、本発明を適用した工作機械1の工具マガジン3に設けたホルダ保持部30の説明図であり、
図4(a)、(b)、(c)は、ホルダ保持部30の斜視図、側面図、および平面図である。
図5は、
図4に示すホルダ保持部30の分解斜視図であり、
図5(a)、(b)は、ホルダ保持部30を分解した様子を示す分解斜視図、および一対のホルダ保持部材を分離した様子を示す分解斜視図である。
図6は、
図4に示すホルダ保持部30をさらに細かく分解した様子を示す分解斜視図である。
図7は、
図4に示すホルダ保持部30の開閉動作を示す説明図である。
なお、図7(a)、(b)、(c)は各々、本発明を適用したホルダ保持部30に設けた付勢部材Sの第1構成例を示す説明図、本発明を適用したホルダ保持部30に設けた付勢部材Sの第2構成例を示す説明図、および本発明の参考例に係るホルダ保持部30に設けた付勢部材Sの構成例を示す説明図である。
【0034】
図2に示すように、工具マガジン3は、マガジン支持台28に対して円盤状のマガジンベース39が回転可能に取り付けられ、かかるマガジンベース39の外周部には、複数のホルダ保持部30が等角度間隔に設けられている。工具マガジン3は、マガジン支持台28の下面にY軸に平行な軸線周りに揺動可能なレバー38を有しており、かかるレバー38の一方の端部に設けられたカムフォロアー381は、バネ等(図示せず)の付勢力によって主軸ヘッド12のカム面120に常時当接している。また、レバー38の他方の端部は、X軸方向に2つに分岐しており、これらの分岐部分においてX軸方向で離間する各端部にもカムフォロアー382、383が設けられている。従って、主軸10および主軸ヘッド12が軸線方向Lに直動すると、レバー38は、Y軸周りに揺動する結果、2つのカムフォロアー382、383はX軸方向に変位する。
【0035】
本形態において、ホルダ保持部30は、
図4、
図5、
図6および
図7(a)に示すように、工具ホルダ9の側面を一方側から支持する第1ホルダ保持部材31と、工具ホルダ9の側面を他方側から支持する第2ホルダ保持部材32と、これらのホルダ保持部材(第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32)を支持する支持部材33とを有しており、以下に説明するように、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32は、
図1および
図2を参照して説明したレバー38の2つのカムフォロアー382、383がX軸方向に変位する動作に連動して開閉動作を行う。支持部材33は、マガジンベース39に固定される傾斜板部331と、Z軸方向で対向するように傾斜板部331から突出した2枚の支持板部332、333とを有しており、2枚の支持板部332、333の先端部では穴334、335が貫通している。また、2枚の支持板部332、333のうち、Z軸方向の他方側+Zに位置する支持板部333では、穴335の付近からX軸方向に直線的に延在するガイド溝336(ガイド部)が形成されている。
【0036】
まず、ホルダ保持部30において、第1ホルダ保持部材31は、延在方向の途中位置で屈曲しており、かかる屈曲部分に位置する板状部分316、317には、第1ホルダ保持部材31を開方向および閉方向に揺動可能に支持する軸からなる支点部34が設けられている。また、第1ホルダ保持部材31の支点部34に対して工具ホルダ9を保持する先端部(挟持部分)とは反対側の基端部には、Z軸方向に延在する軸360によって第1可動部材36の一方端がZ軸方向に延在する軸線回りに回転可能に連結されている。
【0037】
より具体的には、第1可動部材36は、Z軸方向で対向する一対の板状部分361、362と、一対の板状部分361、362の端部を連結する側板部363と、側板部363から板状部分361、362とは反対側に突出した凸板部364とを備えている。また、第1ホルダ保持部材31は、Z軸方向に延在する板状部315と、板状部315の先端部においてZ軸方向で対向する一対の板状部分316、317と、一対の板状部分316、317のうち、Z軸方向の他方側+Zの板状部分317から突出した凸板部318とを備えている。従って、第1ホルダ保持部材31と第1可動部材36とは、第1可動部材36の板状部分361、362の間に第1ホルダ保持部材31の凸板部318を挟んだ状態で板状部分361、362および凸板部318を貫通する穴に軸360が止められることによって回転可能に連結されている。
【0038】
また、ホルダ保持部30において、第2ホルダ保持部材32は、第1ホルダ保持部材31と同様、延在方向の途中位置で屈曲しているが、第2ホルダ保持部材32の屈曲方向は、第1ホルダ保持部材31の屈曲方向と逆である。第2ホルダ保持部材32の屈曲部分に位置する板状部分326、327には、第2ホルダ保持部材32を開方向および閉方向に揺動可能に支持する支点部34が設けられている。また、第2ホルダ保持部材32の支点部34に対して工具ホルダ9を保持する先端部(挟持部分)とは反対側の基端部には、Z軸方向に延在する軸370によって第2可動部材37の一方端がZ軸方向に延在する軸線回りに回転可能に連結されている。
【0039】
より具体的には、第2可動部材37は、Z軸方向で対向する一対の板状部分371、372と、一対の板状部分371、372の端部を連結する側板部373と、側板部373から板状部分371、372とは反対側に突出した凸板部374とを備えている。また、第2ホルダ保持部材32は、Z軸方向に延在する板状部325と、板状部325の先端部においてZ軸方向で対向する一対の板状部分326、327と、一対の板状部分326、327の各々から突出した凸板部328、329とを備えている。従って、第2ホルダ保持部材32と第2可動部材37とは、第2ホルダ保持部材32の凸板部328、329の間に第2可動部材37の凸板部374を挟んだ状態で凸板部328、329、374を貫通する穴に軸370が止められることによって回転可能に連結されている。
【0040】
また、第2ホルダ保持部材32の板状部分326、327の間には、第1ホルダ保持部材31の板状部分316、317のうち、Z軸方向の他方側+Zに位置する板状部分317が挿入されている。その結果、第1ホルダ保持部材31の板状部分316、317の間には、第2ホルダ保持部材32の板状部分326、327のうち、Z軸方向の一方側−Zに位置する板状部分326が挿入された状態にある。この状態で、第1ホルダ保持部材31と第2ホルダ保持部材32とは、板状部分316、317、326、327を貫通する穴に軸340が止められることによって連結され、かかる軸340が支持部材33の支持板部332、333の穴334、335に嵌ることによって、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32は、支持部材33の支持板部332、333によって揺動可能に支持される。このようにして、第1ホルダ保持部材31と第2ホルダ保持部材32との重なり部分には、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32に対して共通の支点部34が構成される。
【0041】
また、第1可動部材36の凸板部364は、第2可動部材37の板状部分371、372の間に挿入され、この状態で、第1可動部材36と第2可動部材37とは、凸板部364および板状部分371、372を貫通する穴に従動軸35(従動部材)が止められることによって連結される。その結果、第1可動部材36と第2可動部材37との重なり部分を利用して第1可動部材36および第2可動部材37に対して共通の従動軸35が設けられる。この状態で、従動軸35の上半部は、支持部材33の支持板部333のガイド溝336からZ軸方向の他方側+Zに突出し、
図2を参照して説明したレバー38のカムフォロアー382、383の間に配置される。従って、レバー38のカムフォロアー382、383がX軸方向に移動すると、ガイド溝336の内部において、従動軸35は、ガイド溝336に沿って、支点部34に接近する方向または支点部34から離間する方向に移動する。その結果、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32は、支点部34を中心に逆方向に揺動し、開閉動作を行うことになる。
【0042】
ここで、従動軸35は、Z軸方向からみると、閉状態では、第1ホルダ保持部材31と第1可動部材36との連結部分(軸360の位置)と、第2ホルダ保持部材32と第2可動部材37との連結部分(軸370の位置)とを結ぶ仮想の直線に対して平面視で重なる位置にある。
【0043】
図4(b)に示すように、工具ホルダ9では、円錐状胴部91の小径側端部にプルスタッド92が形成されており、ホルダ保持部30は、工具ホルダ9のうち、プルスタッド92が形成されている小径側端部とは反対側に位置する大径側端部93を露出させる一方、円錐状胴部91およびプルスタッド92を覆うように工具ホルダ9を保持する。
【0044】
本形態では、ホルダ保持部30は、工具ホルダ9の側面を一方側から支持する第1ホルダ保持部材31と、工具ホルダ9の側面を他方側から支持する第2ホルダ保持部材32とを備えていることから、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32は、工具ホルダ9を保持した閉状態で、工具ホルダ9の円錐状胴部91およびプルスタッド92を全周にわたって覆うカップ形状を構成するようになっている。
【0045】
(工具マガジン3から主軸10への工具ホルダ9の受け渡し動作)
図8は、本発明を適用した自動工具交換装置5における動作を示すタイムチャートであり、
図8(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、主軸10のZ軸方向の位置を示す説明図、工具ハンド41、42のX軸方向の位置を示す説明図、工具ハンド41、42のZ軸方向の位置を示す説明図、工具ハンド41、42の開閉動作を示す説明図、およびホルダ保持部30の開閉動作を示す説明図である。
図9は、本発明を適用した自動工具交換装置5における動作を示す説明図であり、
図9(a)、(b)、(c)は、時間t10における様子を示す説明図、時間t12における様子を示す説明図、および時間t15における様子を示す説明図である。
図10は、本発明を適用した自動工具交換装置5において、
図9に示す時間以降の動作を示す説明図であり、
図10(a)、(b)、(c)は、時間t16における様子を示す説明図、時間t17における様子を示す説明図、および時間t18における様子を示す説明図である。
【0046】
本形態の自動工具交換装置5において、工具マガジン3から主軸10への工具ホルダ9の受け渡しを行う様子を、
図8、
図9および
図10を参照して説明する。まず、時間t10では、主軸10はZ軸方向の他方側+Zにあり、工具ハンド41、42は、第1受け渡し位置W1において開状態にある(
図9(a)参照)。
【0047】
次に、主軸10に工具ホルダ9を渡すには、時間t10から時間t18まで主軸10がZ軸方向の一方側−Zに降下していく。その間、時間t10から時間t11までの間に工具ハンド41、42は、X軸方向の他方側+X(第2受け渡し位置W2)に直線的に移動し、時間t11から時間t13まで第2受け渡し位置W2に停止する(
図9(b)参照)。また、時間t11から時間t12までに工具ハンド41、42が開状態から閉状態に切り換わる一方、時間t12から時間t13までにホルダ保持部30が閉状態から開状態に切り換わる。その結果、工具ホルダ9は、工具マガジン3から工具ハンド41、42に渡される。
【0048】
次に、時間t13から時間t15までの間に工具ハンド41、42は、X軸方向の一方側−X(第1受け渡し位置W1)に直線的に移動した後、X軸方向の移動が停止する(
図9(c)参照)。また、工具ハンド41、42は、まず、時間t14から時間t16の間、主軸10とは反対にZ軸方向の他方側+Zに直線的に移動し(
図10(a)参照)、その後の時間t16から時間t17の間、主軸10とは同一のZ軸方向の一方側−Zに直線的に移動する。そして、時間t17でZ軸方向の移動が停止した後(
図10(b)参照)、時間t18までの間に、工具ハンド41、42は、閉状態から開状態に切り換わる(
図10(c)参照)。このようにして、工具マガジン3から主軸10への工具ホルダ9の受け渡しが完了する。
【0049】
(主軸10から工具マガジン3への工具ホルダ9の受け渡し動作)
次に、主軸10から工具マガジン3へ工具ホルダ9の受け渡しを行う様子を、
図8、
図9および
図10を参照して説明する。なお、本動作は、工具マガジン3から主軸10への工具ホルダ9の受け渡し動作と逆の動作となる。
【0050】
まず、時間t20では、主軸10はZ軸方向の一方側−Zにあり、工具ハンド41、42は、第1受け渡し位置W1において開状態にある(
図10(c)参照)。
【0051】
次に、主軸10から工具ホルダ9を受け取るには、時間t20から時間t28まで主軸10がZ軸方向の他方側+Zに上昇していく。そして、時間t20から時間t21までの間に工具ハンド41、42は、開状態から閉状態に切り換わるとともに(
図10(b)参照)、時間t21から時間t22までの間、主軸10とは同一のZ軸方向の他方側+Zに直線的に移動する(
図10(a)参照)。そして、工具ハンド41、42は、時間t22から時間t24までの間、主軸10とは反対のZ軸方向の一方側−Zに直線的に移動し、工具ホルダ9を受け取る(
図9(c)参照)。
【0052】
そして、工具ハンド41、42は、時間t23から時間t25までの間にX軸方向の他方側+X(第2受け渡し位置W2)に直線的に移動し、時間t25から時間t27まで第2受け渡し位置W2に停止する(
図9(b)参照)。また、時間t25から時間t26までにホルダ保持部30が開状態から閉状態に切り換わる一方、時間t26から時間t27までに工具ハンド41、42は閉状態から開状態に切り換わる。その結果、工具ホルダ9は、工具ハンド41、42から工具マガジン3に渡される。
【0053】
次に、時間t27から時間t28までの間に工具ハンド41、42は、X軸方向の一方側−X(第1受け渡し位置W1)に直線的に移動した後、停止する(
図9(a)参照)。
【0054】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の自動工具交換装置5では、工具ハンド41、42は支持板20に支持されており、主軸10が軸線方向Lに直動した際、かかる直動は、第1伝達機構51および第2伝達機構52を介して工具ハンド41、42に伝達される。その結果、工具ハンド41、42は、主軸10との工具ホルダ9の第1受け渡し位置W1と工具マガジン3との工具ホルダ9の第2受け渡し位置W2との間で移動するとともに、開閉動作を行う。このため、工具マガジン3の側には、主軸10との間で工具ホルダ9を直接、受け渡す複雑な動作を行う工具ハンドを設ける必要がない。それ故、工具マガジン3の構成を簡素化することができる。
【0055】
また、工具ハンド41、42は、第3伝達機構53によって、主軸10が軸線方向Lに直動している間、主軸10の移動方向と同一方向の移動および主軸10の移動方向と反対方向の移動を行う。このため、主軸10に工具ホルダ9を渡す際、主軸10と工具ハンド41、42とは所定の時間、同一方向に移動する。また、主軸10から工具ホルダ9を受け取る際も、主軸10と工具ハンド41、42とは所定の時間、同一方向に移動する。従って、工具ハンド41、42と主軸10との間で工具ホルダ9を受け渡しする際、十分な時間がある。それ故、主軸10と工具ハンド41、42との間で工具ホルダ9の受け渡しを確実に行うことができる。
【0056】
しかも、工具ハンド41、42が主軸10に工具ホルダ9を渡す際、主軸10は、Z軸方向の一方側−Z(下方)に直動する一方、第3伝達機構53は、工具ホルダ9を保持する工具ハンド41、42をZ軸方向の他方側+Z(上方)に直動させた後、工具ハンド41、42をZ軸方向の一方側−Zに直動させ、第2伝達機構52は、工具ハンド41、42がZ軸方向の一方側−Zに直動を開始した以降、工具ハンド41、42に工具ホルダ9の解放を行わせる。また、工具ハンド41、42が主軸10から工具ホルダ9を受け取る際、工具ホルダ9を保持する主軸10は、Z軸方向の他方側+Zに直動する一方、第3伝達機構53は、工具ハンド41、42をZ軸方向の他方側+Zに直動させた後、工具ハンド41、42をZ軸方向の一方側−Zに直動させ、第2伝達機構52は、工具ハンド41、42がZ軸方向の他方側+Zへの直動を終了する以前に工具ハンド41、42に工具ホルダ9の保持を行わせる。このため、工具ハンド41、42が旋回する場合と違って、主軸10と工具ハンド41、42との間で工具ホルダ9の受け渡しを確実に行うことができる。
【0057】
また、工具マガジン3のホルダ保持部30との間、および主軸10との間で工具ホルダ9の受け渡しを行う工具ハンド41、42を有しているため、工具マガジン3のホルダ保持部30は、工具ホルダ9の円錐状胴部91に対してプルスタッド92とは反対側の大径側端部93を露出させておけば、かかる大径側端部93を工具ハンド41、42が保持するので、円錐状胴部91およびプルスタッド92を主軸10に保持させることができる。ここで、ホルダ保持部30は、円錐状胴部91およびプルスタッド92を覆うように工具ホルダ9を保持するため、円錐状胴部91およびプルスタッド92に切り屑等の異物が付着しにくい。それ故、主軸10は、工具ホルダ9の円錐状胴部91およびプルスタッド92を確実に保持することができる。
【0058】
また、ホルダ保持部30では、主軸10が軸線方向Lに直動すると、伝達機構54が第1可動部材36および第2可動部材37の他方端(従動軸35)を支点部34から離間する方向および支点部34に接近する方向に移動させる。その結果、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32は支点部34を中心に揺動して開状態と閉状態との間で切り換わる。また、第1可動部材36および第2可動部材37の他方端を支点部34から離間する方向および支点部34に接近する方向に移動させる方式であるため、主軸10の直動がカムを介して直接、ホルダ保持部材を駆動する場合と違って、カムの設計や製作に多大な手間がかからない。また、主軸10の近傍で第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32を駆動する場合に限らず、主軸10から離間した位置で第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32を駆動する場合でも、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32を容易に駆動することができる。
【0059】
ここで、従動軸35(従動部材)は、Z軸方向からみると、閉状態では、第1ホルダ保持部材31と第1可動部材36との連結部分(軸360の位置)と、第2ホルダ保持部材32と第2可動部材37との連結部分(軸370の位置)とを結ぶ仮想の直線に対して、平面視で重なる位置にある。このため、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32に閉状態から開状態に移行しようとする外力が加わっても、従動軸35にはガイド溝336の内壁に向けて押し付けられる力が加わるだけで、従動軸35はガイド溝336に沿って移動しにくい。それ故、簡素な構成であるにもかかわらず、ホルダ保持部30の閉状態を確実に保持することができる。
【0060】
[バネ部材の構成]
本形態の工作機械1および自動工具交換装置5に用いた工具マガジン3のホルダ保持部30において、
図7(a)に示すように、従動軸35に捩じりコイルバネからなる付勢部材Sを取り付け、捩じりコイルバネの端部を軸360、370のX軸方向の一方側−Xに引っ掛けて
ある。かかる構成によれば、従動軸35は常に支点部34に接近する方向に付勢される結果、付勢部材Sは、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32を閉状態に維持しようと付勢する。このため、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32の閉状態は確実に維持される。なお、
図7(a)に示す構成において、捩じりコイルバネの端部を軸360、370のX軸方向の他方側
+Xに引っ掛ければ、従動軸35は常に支点部34から離間する方向に付勢される。その結果、付勢部材Sは、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32を開状態に維持しようと付勢する。
【0061】
また、
図7(b)に示すように、従動軸35と支点部34の軸340との間に引っ張りコイルバネからなる付勢部材Sを取り付けてもよい。かかる構成によれば、従動軸35は常に支点部34に接近する方向に付勢される結果、付勢部材Sは、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32を閉状態に維持しようと付勢する。このため、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32の閉状態は確実に維持される。なお、
図7(b)に示す構成において、付勢部材Sとして圧縮コイルバネを用いてもよく、この場合、付勢部材Sは、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32を開状態に維持しようと付勢する。
【0062】
また、
図7(c)に示すように、軸360と軸370との間に圧縮コイルバネからなる付勢部材Sを取り付けてもよい。かかる構成によれば、付勢部材Sは、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32を閉状態に維持しようと付勢する。このため、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32の閉状態は確実に維持される。なお、
図7(c)に示す構成において、付勢部材Sとして引っ張りコイルバネを用いてもよく、この場合、付勢部材Sは、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32を開状態に維持しようと付勢する。
【0063】
[ホルダ保持部材の他の構成例]
本形態の工作機械1および自動工具交換装置5に用いた工具マガジン3のホルダ保持部30において、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32を直線的に延在した構成とし、第1ホルダ保持部材31と第2ホルダ保持部材32とを交差するように配置して上記の構成を適用すると、従動軸35(従動部材)は、Z軸方向からみると、開状態で、第1ホルダ保持部材31と第1可動部材36との連結部分(軸360の位置)と、第2ホルダ保持部材32と第2可動部材37との連結部分(軸370の位置)とを結ぶ仮想の直線に対して、平面視で重なる位置にある。このような構成の場合、第1ホルダ保持部材31および第2ホルダ保持部材32に開状態から閉状態に移行しようとする外力が加わっても、従動軸35にはガイド溝336の内壁に向けて押し付けられる力が加わるだけで、従動軸35はガイド溝336に沿って移動しにくい。それ故、簡素な構成であるにもかかわらず、ホルダ保持部30の開状態を確実に保持することができる。