(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969301
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】薬液が付与されたティシュペーパー及び薬液が付与されたティシュペーパーの製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20160804BHJP
A47K 7/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
D21H27/00 F
A47K7/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-170392(P2012-170392)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2013-227707(P2013-227707A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-79109(P2012-79109)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】平田 記瑞
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−156596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00〜D21J7/00
A47K 7/00
10/16
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸水性樹脂0.1〜0.7重量%と塩化ナトリウム0.1〜2.1重量%とポリオール17.9〜33.3重量%とを含有することを特徴とする薬液が付与されたティシュペーパー。
【請求項2】
2プライであって、その積層内面に高吸水性樹脂が担持されている請求項1記載の薬液が付与されたティシュペーパー。
【請求項3】
水10〜20重量%とポリオール70〜90重量%含む水系の保湿薬液に対して、塩化ナトリウムをその濃度が1.0〜15.0重量%となるように添加し、その後に高吸水性樹脂の粉末を0.5〜5.0重量%となるように添加して、高吸水性樹脂を含む保湿薬液を製造し、
この高吸水性樹脂を含む薬液をティシュペーパーに対して19.4〜34.9重量%付与する、ことを特徴とする薬液が付与されたティシュペーパーの製造方法。
【請求項4】
ティシュペーパーを構成するシートに保湿薬液を塗布した後、その塗布面が積層内面となるように積層する請求項3記載の薬液が付与されたティシュペーパーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパーに関し、特に薬液が付与されたティシュペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーには、保湿性、柔軟性を付与する薬液が付与された薬液付与タイプのものがあり、しっとり感、柔らかさにおいて汎用品のものよりも優れる。
【0003】
ティシュペーパーに保湿性、柔軟性を付与する薬液は種々存在するが、水及びポリオールを主体とする水系薬液(「水系ローション剤」、「ローション薬液」とも呼ばれる)がよく用いられる。水系薬液は、シートに塗布等した場合にシートを構成するパルプ繊維との親和性に優れ、シートの厚み方向(Z方向とも称される)に含浸し、主成分であるポリオールの吸湿性によってシートにしっとり感と柔らかさを与える。
【0004】
しかし、従来の水系薬液を用いたティシュペーパーは、低湿度環境下においてポリオールの吸湿機能が十分ではなかったり、取り込まれた水分を放出してしまったりして、しっとり感と柔らかさが感じられ難くなるという問題があった。水系薬液中におけるポリオール量を増量することにより吸湿作用を高めることはできるが、このようにするとポリオールによってティシュペーパーがべたつくようになるとともに、高湿度環境下では過度の吸湿となり、ティシュペーパーが収納される紙製収納箱に影響を与えるまでに吸湿してしまうという問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−322034
【特許文献2】特表2008−525103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、上記の問題を解決することにあり、低湿度環境下でも高水分率を維持できるようにし、かつべたつき感のない、薬液が付与されたティシュペーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
高吸水性樹脂0.1〜0.7重量%と塩化ナトリウム0.1〜2.1重量%とポリオール17.9〜33.3重量%とを含有することを特徴とする薬液が付与されたティシュペーパー。
【0008】
〔請求項2記載の発明〕
2プライであって、その積層内面に高吸水性樹脂が担持されている請求項1記載の薬液が付与されたティシュペーパー。
【0009】
〔請求項3記載の発明〕
水10〜20重量%とポリオール70〜90重量%含む水系の保湿薬液に対して、塩化ナトリウムをその濃度が1.0〜15.0重量%となるように添加し、その後に高吸水性樹脂の粉末を0.5〜5.0重量%となるように添加して、高吸水性樹脂を含む保湿薬液を製造し、
この高吸水性樹脂を含む薬液をティシュペーパーに対して19.4〜34.9重量%付与する、ことを特徴とする薬液が付与されたティシュペーパーの製造方法。
【0010】
〔請求項4記載の発明〕
ティシュペーパーを構成するシートに保湿薬液を塗布した後、その塗布面が積層内面となるように積層する請求項3記載の薬液が付与されたティシュペーパーの製造方法。
【0011】
(作用効果)
本発明に係る薬液が付与されたティシュペーパーは、ポリオールと、SAP或いは高吸水性ポリマーとも称される高吸水性樹脂と、塩化ナトリウムとを含有する。
本発明に係るティシュペーパーは、ポリオールを含有するため、その吸湿性及び保水性によってティシュペーパーの繊維層内に水分が取り込まれ、しっとり感と柔軟性のあるものとなる。
【0012】
また、本発明に係るティシュペーパーは、そのポリオールとともに高吸水性樹脂を含有するため、ポリオールの吸湿性により繊維層に取り込まれた水分の一部が高吸水性樹脂に取り込まれて、高吸水性樹脂がゲル化して水分を保持する。高吸水性樹脂の水分保持は比較的強固であり、ティシュペーパーが通常使用される環境下では、その水分が簡易に離散することはない。よって、本発明に係るティシュペーパーは、極めてしっとり感、柔らかさ及び厚み感に優れたものとなるとともに、低湿度環境下でもその水分が失われない。
【0013】
さらに、本発明に係るティシュペーパーは、ポリオール、高吸水性樹脂とともに塩化ナトリウムを含有する。塩化ナトリウムも弱いが吸湿性を有するため繊維層にしっとり感を与える。また、塩化ナトリウムの存在によってポリオール等の作用により取り込まれた水分が塩化ナトリウム水溶液となるため、高吸水性樹脂のゲル化が、塩化ナトリウム水溶液との浸透圧により調整され、膨潤が不十分となったり過度に膨潤したりすることがない。
【0014】
特に、本発明に係るティシュペーパーでは、特にポリオールを17.9〜33.3重量%、塩化ナトリウムを0.1〜2.1重量%、高吸水性樹脂を0.1〜0.7重量%とすることで、ティシュペーパーが通常使用される環境下において、高吸水性樹脂のゲル化が可逆性と相まって、高吸水性樹脂と塩化ナトリウム水溶液との浸透圧によって繊維層と高吸水性樹脂の水分平衡が好適なものとなりティシュペーパーの水分率が14.1〜22.3%で保持されるようになる。これは、従来の保湿系ティシュペーパーの10.5〜12.4%を超える。また、上記水分率の範囲で従来保湿系ティシュペーパーのように低湿度環境下において水分率が低下するようなこともない。
【0015】
他方、本発明に係るティシュペーパーを製造するにあたっては、まず、水10〜20重量%とポリオール70〜90重量%含む水系の保湿薬液に対して、塩化ナトリウム1.0〜15.0重量%添加し、その後に高吸水性樹脂の粉末0.5〜5.0重量%添加する。
【0016】
塩化ナトリウム添加後に高吸水性樹脂を添加するので高吸水性樹脂が製造時に意図せず膨潤することが防止される。また、塩化ナトリウムの添加量を上記範囲外とすることで、であると、高吸水性樹脂の適当なゲル化が得られ、また、製造時の膨潤が効果的に抑制される。他方、保湿薬液をティシュペーパーに対して2.5〜4.0g/m
2塗布することで、特に高吸水性樹脂を膨潤させることなく好適にかつ効果的な量をティシュペーパーに含有させることが可能となる。なお、ここでの塗布量はティシュペーパー全体での塗布量である。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、本発明によれば、低湿度環境下でも高水分率を維持できる、薬液塗布タイプのティシュペーパーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る2プライのティシュペーパーの断面図である。
【
図2】本発明に係るティシュペーパーの水分取り込み時の態様を説明するため断面図である。
【
図3】本発明に係るティシュペーパーの水分を取り込んだ後の態様を説明するため断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る薬液が付与されたティシュペーパー(以下、単にティシュペーパーともいう)及びその製造方法の実施形態を、図面を参照しながら以下に詳述する。
本発明に係るティシュペーパーは、ポリオールを含む保湿系薬液が塗布されたティシュペーパーであり、さらに高吸水性樹脂と塩化ナトリウムを含有する。
【0020】
本発明に係るティシュペーパーは、2プライ又は3プライのプライ構造であるのが望ましい。また、本発明に係るティシュペーパーの坪量、紙厚は特に限定されないが、JIS P 8124による坪量が1プライ当たり11〜14g/m
2、紙厚(ダイヤルシックネスゲージ:尾崎製作所製ピーコックにより測定)は100〜200μmであるのが望ましい。坪量及び紙厚が上記範囲外であると、ティシュペーパーとしての強度及び柔らかさの点で好ましくない。
【0021】
本発明に係るティシュペーパーのプライを構成する原紙は、パルプスラリーに対して乾燥紙力剤や湿潤紙力剤等の既知の薬剤を添加した抄紙原料を、ヤンキドライヤーを有する抄紙設備にて抄造したクレープ紙を用いることができる。
【0022】
本発明に係るティシュペーパーにおけるパルプ原料は、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)であるのが望ましい。適宜古紙パルプが配合されたものでもよいが、得られるティシュペーパーの風合いが優れることから、バージンパルプのNBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その場合の配合割合(JIS P 8120)としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0023】
他方、本発明に係るティシュペーパーに含有されるポリオールは、保湿系薬液の主たる成分でもあり、具体的には、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類が例示される。なかでも、グリセリンが効果的である。
【0024】
本発明に係るティシュペーパーにおけるポリオールの含有量は、絶乾で2.5〜4.0g/m
2であり、含有率は17.9〜33.3重量%であるのが望ましい。この範囲であるとポリオールによる吸湿作用が十分効果的に発揮され、しっとり感と柔らかさ感が得られる。
【0025】
他方、本発明に係るティシュペーパーは、ポリオールとともに高吸水性樹脂が含有されている。高吸水性樹脂は、SAP、高吸水性ポリマーとも称されるものであり、水溶性高分子が架橋された三次元網目構造を有し、数百倍〜千倍の水を吸収して保持するものである。この高吸水性樹脂は、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系等の合成ポリマー系化合物、ポリアスパラギン塩酸系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、澱粉系、セルロース系の天然物由来系の化合物、あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。市販品を使用することもできる。吸水性とコスト面で優れるポリアクリル酸塩架橋体が望ましい。
【0026】
本発明に係るティシュペーパーにおける高吸水性樹脂の含有量は、絶乾で0.01〜0.098g/m
2であり、含有率は0.1〜0.7重量%であるのが望ましい。この範囲であると高吸水性樹脂による水分保持機能が十分に発揮される。なお、高吸水性樹脂の含有量が多すぎると過度のゲル化によりティシュペーパーとして機能しなくなる。
【0027】
他方、本発明に係るティシュペーパーは、上記ポリオール、高吸水性樹脂とともに塩化ナトリウムを含有する。本発明に係るティシュペーパーにおける塩化ナトリウムの含有量は、絶乾で0.01〜0.294g/m
2であり、含有率は0.1〜2.1重量%であるのが望ましい。この範囲であると高吸水性樹脂によるゲル化が好適な範囲に調整される。
【0028】
具体的には、通常のティシュペーパーの使用環境下、概ね湿度20〜70%、温度0〜30℃において、ティシュペーパーの水分率が15〜25重量%に維持されるようになる。
【0029】
他方、本発明に係るティシュペーパーは、ポリオール、高吸水性樹脂、塩化ナトリウム以外に、適宜の機能性薬剤が含有されていてもよい。この機能性薬剤としては、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。界面活性剤はティシュペーパーにいっそうの柔軟性を与えたり、表面を滑らかにしたりする効果がある。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を用いることができる。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
【0030】
他方、本発明に係るティシュペーパーにおいて、高吸水性樹脂を担持させる位置は特に限定されないが、
図1に2プライのティシュペーパーの例100を示すように、ティシュペーパーの好ましい形態である2プライ或いは3プライの態様を採る場合には、積層内面であるのが望ましい(図中各プライは符号Pで示す)。積層内面(各プライP,P同士が対面している面)は、吸湿による水分が溜まりやすく蒸散し難いため高吸水性樹脂10に水分が取り込まれやすくなる。また、積層内面であると、ティシュペーパーで鼻をかむ際などの使用時に高吸水性樹脂10が直接的に肌に触れない。すなわち、過度の鼻水に触れて高吸水性樹脂10がゲル化した膨潤状態となってもそのゲル化した高吸水性樹脂が肌に付着してべたつくようなことがない。
【0031】
本発明に係るティシュペーパー100は、
図1に示すように、繊維層1全体に浸透したポリオール20が大気中の水分30,30…を吸湿することによって水分が繊維層1に取り込まれ、
図2に示すように、その水分が高吸水性樹脂10に取り込まれて保持され高吸水性樹脂が膨潤した状態となる。そして、
図3に示すように、高吸水性樹脂10に取り込まれた水分が塩化ナトリウムの存在によって浸透圧により調整されるとともに、大気中の水分30を吸収し、また大気中へ水分30を放散するようになり、ティシュペーパー全体として、15重量%以上の水分率を維持する(
図1、
図3中の水分移動を模式的に点線で示す)。
【0032】
次いで、本発明に係るティシュペーパーの製造方法についても説明する。
本発明に係るティシュペーパーの製造方法は、特徴的にポリオール、塩化ナトリウム、高吸水性樹脂を含む保湿薬液を調整してティシュペーパーに塗布して製造する。すなわち、保湿薬液と高吸水性樹脂とを別途にティシュペーパーに塗布する必要がない。
【0033】
その製法は、まず、水10〜20重量%、ポリオール70〜90重量%含む水系保湿薬液を調整する。適宜の機能性薬剤が含有されていてもよい。次いで、この保湿薬液中に塩化ナトリウムを1.0〜15.0重量%となるように添加する。
【0034】
塩化ナトリウムを添加し所定の濃度としたならば、次いで、高吸水性樹脂の粉末を0.5〜5.0重量%添加して高吸水性樹脂を含む保湿薬液を調整する。塩化ナトリウムに先立って、高吸水性樹脂を添加したり、塩化ナトリウムの濃度が1.0重量%未満であると水系薬液中の水分を高吸水性樹脂が吸収して膨潤し塗布が困難となる。また、塩化ナトリウムの濃度が15.0重量%を超えると、高吸水性樹脂により水分保持が効果的に機能しなくなるおそれが高まる。
【0035】
次いで、この高吸水性樹脂を含む保湿薬液をティシュペーパーに対して19.4〜34.9重量%付与する。なお、この付与量は、ティシュペーパー全体としての付与量である。プライ構造とする場合には、そのプライ数に応じて適宜の量を塗布するようにすることができる。例えば、2プライのティシュペーパーであれば、各プライに対して5〜15重量%付与するようにしてもよいし、一方のプライに保湿薬液を付与せず、他方のプライに19.4〜34.9重量%付与することができる。
【0036】
薬液の付与方法は、公知の塗布手段を適宜選択して使用することができる。塗布面全体にムラなく薬液塗布を行うグラビア塗布、フレキソ塗布等の印刷方式の使用が好ましい。この場合、薬液塗布時の温度は20℃〜60℃、好ましくは30℃〜50℃とすることが好ましい。また、粘度を700mPa・s以下(より好ましくは400mPa・s以下)とするのが望ましい。
【0037】
各プライに対して塗布するのであれば、複数の原反ロールから繰出した連続シートを積層して巻き取るプライマシン(積層マシン)に対して印刷機を設置して、原反ロールから繰出した積層前のプライを構成する各連続シートに薬液を塗布するのが望ましい。その場合、積層内面となる面に薬液を塗布すれば、薬液中の液体部分は紙のZ方向に浸透するが高吸水性樹脂は紙面状に留まるため、
図1に示す積層内面に高吸水性樹脂が担持されたものとすることができる。
【0038】
他方、本発明に係るティシュペーパーは、例えば、複数枚のティシュペーパーからなる束が、直六面体の収納箱内に収納され、その収納箱(カートン箱或いはティシュカートンとも称される)の上面に設けられた取出口からティシュペーパーを順次一枚ずつ引き出して使用するティシュペーパー製品(シートを取り出すとそれに連続して次のシートが取出口から引き出される形式をポップアップ式という)とすることができる。
【0039】
かかるティシュペーパー製品は、この種の製品の既知の製造装置により製造できる。例えば、束の製造については、ロータリ式インターフォルダやマルチスタンド式インターフォルダが利用できる。
【実施例】
【0040】
本発明に係る実施例及び比較例を作成し、乾燥引張強度、湿潤引張強度、ソフトネス、水分率を測定した。各例の物性・組成と測定値を下記表1に示す。
なお、各例はすべて2プライであり、表中の米坪は、薬液塗布後の1プライでの坪量である。保湿薬液等の割合(重量%)は、米坪に対する割合である。
保湿薬液を含む実施例は、請求項3記載の方法に基づいて製造し、比較例3,4は塩化ナトリウムの配合割合のみ異なるようにして製造した。
乾燥引張強度、湿潤引張強度は、JIS P 8113、JIS P 8135に準じて、試料の大きさを25×150mmとして、ロードセルの掴み間隔を100mmとして測定した値である。
ソフトネスは、JIS L 1096E法に準じて、試料の大きさを100×100mmとして測定し、縦・横の平均値を算出した値である。
水分率は、23℃50%の恒温恒湿室で2時間以上保管した試料と、その試料を105℃±3℃の条件で4時間乾燥させた試料との質量を測定して、その質量差から算術により水分率を求めた。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から理解されるように、本発明の実施例1〜6は、高吸水性樹脂と塩化ナトリウムを含有しない保湿薬液のみを付与した比較例1、比較例2と比べて、水分率が高いことが認められる。また、高級吸水性樹脂を含有させたものの塩化ナトリウム配合量が本願発明よりも少ない比較例3、4は、薬液が固形化し、高吸水性樹脂(表中SAPと記載)が、離脱してしまい、ティシュペーパーとしての使用に問題があるものとなった。
以上の結果より、本発明における、高吸水性樹脂、塩化ナトリウムの配合割合とすることで、水分率を高めることができ、しかも保湿薬液との併用により、従来の保湿薬液のみ付与した従来保湿タイプのティシュペーパーよりも一層の水分率を達成することができる。
また、水分率向上効果が高吸水性樹脂によるものと確認できるため、高吸水性樹脂による水分保持性も十分に発揮されるといえる。
【符号の説明】
【0043】
100…ティシュペーパー、P…プライ、A…ティシュペーパーの表裏面(プライの積層内面)、1…繊維層、10…高吸水性樹脂、20…ポリオール、30…水分。