特許第5969305号(P5969305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969305ラムダクトユニット、及びそれを備える自動二輪車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969305
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ラムダクトユニット、及びそれを備える自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62J 99/00 20090101AFI20160804BHJP
【FI】
   B62J99/00 L
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-176324(P2012-176324)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-34285(P2014-34285A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴洋
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−095245(JP,A)
【文献】 特開2010−095244(JP,A)
【文献】 特開2007−196984(JP,A)
【文献】 特開2011−230649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアを取り込むための吸気口部と、前記吸気口部から取り込んだエアをエンジンに導く吸気通路を形成しているラムダクトと、
前記ラムダクトの前記吸気通路を規定する内面部に沿わせて貼り付けられている吸音部材と、
前記吸音部材の上流側端部を前記ラムダクトの内面部に押し付けている押付部材とを備え、
前記押付部材は、前記吸気口部から取り込んだエアが流れる流れ方向の寸法が短く且つ前記エアの流れ方向に垂直な平面上で延在する線状部材で形成されている、ラムダクトユニット。
【請求項2】
前記押付部材は、前記ラムダクトの内面部の形状に合わせて環状に形成され、且つ前記吸音部材における上流側端部の内面部を周方向全域にわたって前記ラムダクトの内面部に押し付けている、請求項1に記載のラムダクトユニット。
【請求項3】
前記ラムダクトの内面部には、その周方向に互いに間隔をあけて複数の係止部が形成されており、
前記押付部材は、前記係止部に嵌められて位置決めされている、請求項1又は2に記載のラムダクトユニット。
【請求項4】
前記係止部は、前記ラムダクトの内面部に少なくとも3つ以上形成されている、請求項3に記載のラムダクトユニット。
【請求項5】
前記ラムダクトの内面部は、前記流れ方向に垂直な垂直方向に延在する直線状内面部分を有し、
前記直線状内面部分には、前記複数の係止部のうちの1つである嵌り溝部が形成され、
前記嵌り溝部は、前記垂直方向に沿って延在して長尺に形成されている、請求項3又は4に記載のラムダクトユニット。
【請求項6】
前記複数の係止部は、前記ラムダクトの内面部に形成され、前記ラムダクトの内面部から前記ラムダクトの内側に突出する突出部を含み、
前記吸音部材には、前記突出部が挿通されている貫通孔が形成されている、請求項3乃至5のいずれか1つに記載のラムダクトユニット。
【請求項7】
記ラムダクトの内面部には、前記吸音部材を配置するための凹所部分が形成され、
前記凹所部分は、前記吸音部材の内面が前記吸気口部の内面と面一又は前記吸気口部の内面より前記ラムダクトの内面部側に位置するように形成されている、請求項1乃至6のいずれか1つに記載のラムダクトユニット。
【請求項8】
前記ラムダクトは、前記吸気通路に連通する共鳴室が形成され、前記吸気通路と共鳴室とを隔離する隔離壁を有しており、
前記隔離壁は、前記ラムダクトの内面部の一部分を構成しており、
前記吸音部材は、前記ラムダクトの内面部のうち前記隔離壁を除く領域に貼り付けられている、請求項1乃至7のいずれか1つに記載のラムダクトユニット。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載のラムダクトユニットを備える、自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気をエンジンに導入するためのラムダクトユニット、及びそれを備える自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車には、その車体の前側部分にラムダクトが設けられている。ラムダクトは、エアクリーナを介してエンジンの燃焼室に繋がっており、エンジンの燃焼用空気として取り入れた外気をエアクリーナを介してエンジンに供給するようになっている。ラムダクトは、外気を取り入れる際に吸気騒音を生じさせるので、ラムダクトの内面部には、吸音部材が貼り付けられている。しかし、この吸音部材は、自動二輪車が高速で走行して強い走行風を受けるとラムダクト内面部から吸音部材が剥がれることがある。このような吸音部材の剥がれを防ぐことができるラムダクトユニットとして、例えば特許文献1に記載のラムダクトユニットが知られている。
【0003】
特許文献1のラムダクトユニットは、ラムダクトの内面部の形状に合わせて形成されている網状のホルダを有しており、ホルダによって吸音部材全面をラムダクトの内面部に押さえつけるように構成されている。これにより、吸音部材の剥がれを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−95245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラムダクトの形状は、凹凸や曲線等を3次元的に組み合わせて形成されており、その形状が複雑である。特許文献1に記載のラムダクトユニットでは、このような複雑な形状に合わせたホルダを網状に成形しなければならない。それ故、ホルダの成形時に高い寸法精度が要求され、ラムダクトユニットの歩留まりが低下する。他方、歩留まりを向上させるべく寸法精度を低下させると、ホルダによって吸音部材をラムダクト内面部に均一に押さえ付けることができず、ラムダクト内面部から吸音部材が剥離することがある。
【0006】
そこで本発明は、吸音部材の剥離を抑え、且つ歩留まりを向上させることができるラムダクトユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のラムダクトユニットは、エンジンにエアを導く吸気通路を形成しているラムダクトと、前記ラムダクトの前記吸気通路を規定する内面部に沿わせて貼り付けられている吸音部材と、前記吸音部材の少なくとも上流側端部を前記ラムダクトの内面部に押し付けている押付部材とを備え、前記押付部材は、前記流れ方向の寸法が短くなるように、前記エアの流れ方向に垂直な平面上で延在する線状部材で形成されているものである。
【0008】
本発明に従えば、吸音部材の上流側端部を押付部材によってラムダクトの内面部に押し付けているので、押付部材が線状部材あってもラムダクトに導入されるエアに起因する吸音部材の剥離を防ぐことができる。また、押付部材が線状部材であるので、ラムダクトが凹凸や曲線等を3次元的に組み合わせた3次元形状で形成されても押付部材の形状を単純化することができる。それ故、吸音部材の剥離を抑え、且つ歩留まりを向上させることができる。
【0009】
上記発明において、前記押付部材は、前記ラムダクトの内面部の形状に合わせて環状に形成され、且つ前記吸音部材における上流側端部の内面部を周方向全域にわたって前記ラムダクトの内面部に押し付けてもよい。
【0010】
上記構成に従えば、押付部材が環状に形成されているので、押付部材が作りやすく、また押付部材の変形を抑えることができる。
【0011】
上記発明において、前記ラムダクトの内面部には、その周方向に互いに間隔をあけて複数の係止部が形成されており、前記押付部材は、前記係止部に嵌められて位置決めされてもよい。
【0012】
上記構成に従えば、係止部によって押付部材が位置決めされているので、導入されるエアによって押付部材の位置がずれることを防ぐことができる。これにより、押付部材の位置ずれに伴う吸音部材の剥離を防ぐことができる。
【0013】
上記発明において、前記係止部は、前記ラムダクトの内面部に少なくとも3つ以上形成されてもよい。
【0014】
上記構成に従えば、係止部が3つ以上形成されているので、押付部材が回動することを防ぐことができる。これにより、押付部材の傾倒を防ぐことができ、押付部材の傾倒に伴う吸音部材の剥離を防ぐことができる。
【0015】
上記発明において、前記ラムダクトの内面部は、前記流れ方向に垂直な垂直方向に延在する直線状内面部分を有し、前記直線状内面部分には、前記複数の係止部のうちの1つである嵌り溝部が形成され、前記嵌り溝部は、前記垂直方向に沿って延在して長尺に形成されてもよい。
【0016】
上記構成に従えば、押付部材を係止させる嵌り溝部が長尺に形成されているので、押付部材が回動することを防ぐことができる。これにより、押付部材の傾倒を防ぐことができ、押付部材の傾倒に伴う吸音部材の剥離を防ぐことができる。
【0017】
上記発明において、前記複数の係止部は、前記ラムダクトの内面部に形成され、前記ラムダクトの内面部から前記ラムダクトの内側に突出する突出部を含み、前記吸音部材には、前記突出部が挿通される貫通孔が形成されてもよい。
【0018】
上記構成に従えば、押付部材とラムダクトとの間に吸音部材が配置されている部分でも、位置決めを行うことができる。
【0019】
上記発明において、前記ラムダクトの上流側には、エアを取り入れる吸気口部が形成され、前記ラムダクトの内面部には、前記吸音部材を配置するための凹所部分が形成され、前記凹所部分は、前記吸音部材の内面が前記吸気口部の内面と面一又は前記吸気口部の内面よりラムダクトの内面部側に位置するように形成されてもよい。
【0020】
上記構成に従えば、前記吸音部材の内面が前記吸気口部の内面と面一又は前記吸気口部の内面よりラムダクトの内面部側に位置するので、吸音部材が吸気口部の内面より吸気通路側に突き出ることを防ぐことができる。これにより、吸気通路の吸気抵抗を低減することができ、且つ吸音部材の上流側端面にエアが当たって吸音部材を剥がすことを防ぐことができる。
【0021】
上記発明において、前記ラムダクトは、前記吸気通路に連通する共鳴室が形成され、前記吸気通路と共鳴室とを隔離する隔離壁を有しており、前記隔離壁は、前記ラムダクトの内面部の一部分を構成しており、前記吸音部材は、前記ラムダクトの内面部のうち前記隔離壁を除く領域に貼り付けられてもよい。
【0022】
上記構成に従えば、吸気通路の隔離壁を介して反対側に共鳴室が形成されているので、吸気通路から隔離壁に伝わる吸気騒音を共鳴室にて減衰することができる。これにより、隔離壁に吸音部材を貼り付けなくとも共鳴室により吸気騒音の伝達を抑えることができる。即ち、隔離壁に吸音部材を貼り付けずともラムダクトユニットにおける騒音を小さくすることができる。
【0023】
また、吸音部材を貼り付ける領域から隔離壁を除くことによって、そこに貼り付けた場合に比べて吸音部材の厚み分だけ隔離壁の位置を吸気通路側に移動させることができる。これにより、共鳴室の容積を大きくすることができ、減衰させる吸気騒音の周波数帯域の選択の自由度を広げることができる。
【0024】
本発明の自動二輪車は、前述する何れかのラムダクトユニットを備えるものである。
【0025】
本発明に従えば、上述するような作用効果を奏するような自動二輪車を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、吸音部材の剥離を抑え、且つ歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本件発明の一実施形態であるラムダクトユニットを備える自動二輪車を示す右側面図である。
図2図1の自動二輪車に備わるラムダクトユニットの正面図である。
図3図2のラムダクトユニットを切断線III−IIIで切断して示す断面図である。
図4図3の切断線IV−IVで切断して示す断面図である。
図5図3の切断線V−Vで切断して示す断面図である。
図6図3のラムダクトユニットの係止部周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図7図1のラムダクトユニットを分解して示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態のラムダクトユニット1を備える自動二輪車2について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、自動二輪車2に騎乗した運転者から見た方向を基準とする。また、以下に説明するラムダクトユニット1及び自動二輪車2は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0029】
[自動二輪車]
図1は、本発明に係る第1実施形態のラムダクトユニット1を備える自動二輪車2の右側面図である。図1に示すように、自動二輪車2は、車体3、前輪4及び後輪5を備えている。前輪4は、略上下方向に延びるフロントフォーク6の下端部にて回転自在に支持されている。フロントフォーク6は、その上端部に設けられたアッパーブラケット(図示せず)とアッパーブラケットの下方に設けられたアンダーブラケット(図示せず)とを介してステアリングシャフト(図示せず)に支持されている。ステアリングシャフトは、ヘッドパイプ7によって回転自在に支持されている。また、アッパーブラケットにはハンドル8が取り付けられている。
【0030】
ハンドル8は、アッパーブラケットから車幅方向(すなわち左右方向)に延在しており、ハンドル8の両端部付近を運転者が両手で夫々を把持できるようになっている。ハンドル8の右端部付近には、運転者の右手で把持される部分にスロットルグリップ8aが設けられており、スロットルグリップ8aは、ハンドル8の軸線を中心に回転可能に構成されており、後述するスロットル装置14がスロットルグリップ8aの回転に連動して動くようになっている。また、ハンドル8は、アッパーブラケット及びアンダーブラケットを介してステアリングシャフトに連結されており、ハンドル8を回動操作させることでステアリングシャフトをヘッドパイプ7内で回転させることができるようになっている。自動二輪車2では、ハンドル8を回動操作してステアリングシャフトを回転させることにより前輪4を所望の方向へ転向させることができるようになっている。
【0031】
また、車体3の一部分を構成するヘッドパイプ7には、左右一対のメインフレーム9が一体的に設けられている。左右一対のメインフレーム9は、ヘッドパイプ7から若干下方に傾斜しながら後方へ延びており、メインフレーム9の後端部には、左右一対のピボットフレーム10が接続されている。このピボットフレーム10には略前後方向に延びるスイングアーム11の前端部が枢支されており、このスイングアーム11の後端部に後輪5が回転自在に軸支されている。また、ヘッドパイプ7の後方には、燃料タンク12が一対のメインフレーム9に載せられており、この燃料タンク12の後方には、運転者騎乗用のシート13が設けられている。
【0032】
また、図1に示すように、燃料タンク12の下方であって前輪4と後輪5の間には、並列四気筒のエンジンEがメインフレーム9及びピボットフレーム10に支持された状態で搭載されている。エンジンEには、変速装置(図示せず)が接続されており、この変速装置から出力される駆動力がチェーン(図示せず)を介して後輪5に伝達される。エンジンEの吸気ポート(図示せず)には、メインフレーム9の内側に配置されたスロットル装置14が接続されている。スロットル装置14の上流側には、燃料タンク12の下方に配置されたエアクリーナ15及びヘッドブロック16を介してラムダクトユニット1が接続されており、前方Fからの走行風圧を利用してエンジンEに外気(エア)を取り込む構成となっている。
【0033】
ラムダクトユニット1は、車体3の前側部分に設けられており、車体3の前側部分は、フロントカウル17によって覆われている。フロントカウル17は、平面視で大略U字状に形成されており、その先端部で車体3の前端部を前方Fから覆っている。このフロントカウル17は、車体3の先端部に一対のヘッドランプ18が形成されている。一対のヘッドランプ18は、車体3の中心線に対して左右対称に配置されており、それらの中央位置には取込口19が形成されている。取込口19は、正面視で大略三角形状に形成されており、ラムダクトユニット1に繋がっている。ラムダクトユニット1は、この取込口19を介して外気を取り込むようになっており、取り込んだ外気は、ヘッドブロック16及びエアクリーナ15を通ってスロットル装置14に導かれるようになっている。このように外気を取り込むラムダクトユニット1は、外気を取り入れる際の吸気騒音を抑えるように構成されている。以下では、ラムダクトユニット1の構成について、図2乃至7も参照しながら具体的に説明する。
【0034】
[ラムダクトユニット]
ラムダクトユニット1は、図2に示すようにラムダクト21を有している。ラムダクト21は、取込口19から取り込んだ外気(エア)を後方にあるヘッドブロック16に送るためのダクトであり、取り込んだ外気がラムダクト21内を後方に流れるようになっている。ラムダクト21は、側面視で大略T字状に形成されており、本体21aとレゾネータボックス21bとを有している。本体21aは、図2に示すように大略筒状に形成されており、後方側に進むにつれて幅が狭まる漏斗形状になっている。本体21aの断面、即ち(具体的には、本体21aの中を流れるエアの流れ方向(即ち、略前後方向)に垂直な断面)は、下方に向かって先細りの大略台形状になっている。このような形状を有する本体21aの中には、その内面部によって規定される吸気通路25が形成されている。吸気通路25は、図3に示すように略前後方向に延在しており、この吸気通路25の断面、(具体的には流れ方向に垂直な断面)が下方に向かって先細りの大略台形状になっている(後述する図5も参照)。
【0035】
本体21aの後側の開口端部は、図1に示すようにヘッドブロック16に固定されており、吸気通路25がヘッドブロック16内と繋がっている。他方、本体21aの前側の開口端部21dは、取付口19を囲むようフロントカウル17に固定されており、固定されることで吸気通路25が取込口19に繋がっている。また、図2及び3に示すように本体21aの前側の開口端部21dには、スクリーン22が嵌まり込んでいる。スクリーン22は、いわゆる金網であり、取込口19から外気と共に取り込まれる異物が吸気通路25に入ることを防ぐようになっている。このように各所に固定されている本体21aでは、取込口19を介して前側の開口端部21dからエアが取り込まれ、そのエアが吸気通路25を通ってヘッドブロック16に送られる。取り込まれたエアに含まれる異物は、吸気通路25を通る際にスクリーン22によって取り除かれるようになっている。
【0036】
また、本体21aは、通気通路25を規定する内面部の一部分である下面部の前後方向中間部分に隔離壁26を有している。隔離壁26は、大略平坦な板状に形成されており、本体21aの内面部において直線状の内面部分を構成している。この隔離壁26の下面には、レゾネータボックス21bが一体的に設けられている。レゾネータボックス21bは、大略有底四角筒状に形成されており、その前後の壁部が前側及び後側に夫々広がるように形成されている。このような形状を有するレゾネータボックス21bは、その開口部を塞ぐようにして隔離壁26に固定されており、開口部が塞がれたレゾネータボックス21bの中にはレゾネータ室27が形成されている。レゾネータ室27は、隔離壁26によって吸気通路25と隔離されており、この隔離壁26には、連結パイプ28が設けられている。
【0037】
連結パイプ28は、大略円筒状に形成されている。連結パイプ28は、隔離壁26を垂直に貫通しており、レゾネータ室27と吸気通路25とを繋いでいる。これにより、吸気通路25で発生する吸気騒音に含まれる様々な周波数の騒音のうち特定周波数の騒音を共鳴させて打ち消すことができ、吸気騒音がラムダクト21外に漏れ出ることを防ぐことができる。なお、連結パイプ28は、その口径及び長さを変えることで共鳴させる騒音の周波数を調整できるようになっており、連結パイプ28の口径及び長さは自由に設定できる。
【0038】
また、図4及び5に示すように、吸気通路25を規定する本体21aの内面部において、前後方向中間領域21cの左側部分、上側部分及び右側部分は前記中間領域21cより前側の開口端部21d及び後側の開口端部の内面部より外側に凹んでいる。これにより本体21aの内面部には、大略U字状の取付溝部29が形成されており、凹所部分である取付溝部29には吸気騒音を抑制するための吸音スポンジ23が配置されている。なお、図2、3、4及び5において吸音スポンジ23を明示するために、吸音スポンジ23をドット柄で示している。
【0039】
吸音部材である吸音スポンジ23は、吸音材から成るスポンジであり、レゾネータ室27のように特定周波数だけでなく幅広い範囲の周波数の騒音を低減できるようになっている。吸音スポンジ23は、取付溝部29の形状に略合わせて略U字状に形成されており、接着剤や粘着テープ等によって本体21aの内面部の左側部分、上側部分及び右側部分に沿わせて貼り付けられている。つまり、吸音スポンジ23は、本体21aの内面部の前後方向中間部分において、隔離壁26の部分を除いた領域に貼り付けられている。
【0040】
このように貼り付けられている吸音スポンジ23の厚みは、吸音スポンジ23の前端部(上流側端部)の内面が本体21aの前側の開口端部21d(吸気口部)の内面と面一になるように調整されており、これにより吸気通路25を流れるエアが吸音スポンジ23の前端部に当たってそれを捲り上げること及び吸気通路25の吸気抵抗が増加することを防ぐことができる。なお、必ずしも吸音スポンジ23の前端部の内面が前記前側の開口端部21dの内面と面一になる必要はなく、吸音スポンジ23の前端部の内面が前記前側の開口端部21dの内面より外側、即ち本体21aの前後方向中間領域21cの内面部側に位置していてもよい。これによって、面一にした場合と同様に、吸音スポンジ23の捲れ上がり及び吸気通路25の吸気抵抗の増加を防ぐことができる。また、吸音スポンジ23の前端部が捲り上がることを防ぐために、本体21aには、リング24が設けられている。
【0041】
押付部材であるリング24は、本体部31と、複数の突起片32と、ピン部33とを有している。本体部31は、PEP樹脂等の合成樹脂から成る断面円形状の線状部材を一平面上に延在させて環状に形造ることによって形成されている。このように形成されている本体部31は、線状部材が吸気通路25を通るエアの流れ方向に垂直な平面上で延在するように流れ方向に垂直に立設されており、その厚み(流れ方向の寸法)が薄くなっている。また、本体部31の外形形状は、本体21aの内面部の形状に合わせて形成されており、正面視で大略台形状になっている。即ち、本体部31は、上側部分31a、左側部分31b、下側部分31c及び右側部分31dの4つの直線部分が連結されて大略台形状に形成されている。
【0042】
このような形状を有する本体部31には、それら4つの直線部分のうち左側部分31b及び右側部分31dに複数の突起片32が間隔をあけて夫々形成されており、本実施形態では、左側部分31bと右側部分31dに4つの突起片32が夫々形成されている。突起片32は、左側部分31b及び右側部分31dから外側(即ち、左側及び右側)に夫々突起しており、その先端が尖鋭状に形成されて吸音スポンジ23に引っ掛かるようになっている。これにより、リング24に対する吸音スポンジ23の位置ずれを防いでいる。また、左側部分31b及び右側部分31dには、一対のピン部33が夫々形成されている。ピン部33は、大略円柱状に形成されており、本体部31の左側部分31b及び右側部分31dから外側(即ち、左側及び右側)に夫々突出している。他方、図6に示すように、ラムダクト21の本体21aの内面部には、一対のピン部33に夫々対応する位置に突出部41が夫々形成されている。
【0043】
突出部41は、大略円筒状に形成されており、内面部の左右両側部分から本体21aの内方に向かって突出している。また、吸音スポンジ23には、一対の貫通孔23cが形成されており、一対の貫通孔23cは、一対の突出部41の各々に対応させて夫々形成されている。突出部41は、吸音スポンジ23の貫通孔23cに挿通されており、突出部41の内孔41aを内側に露出させている。突出部41の内孔41aは、ピン部33を挿通可能に形成されており、突出部41の内孔41aにピン部33を挿通することでリング24を係止させて位置決めできるようになっている。このように吸音スポンジ23の貫通孔23cに突出部41を挿通してこの突出部41にピン部33を挿通することで、本体部31の内周部とリング24との間に吸音スポンジ23が介在している部分でもリング24を位置決することができる。
【0044】
このような位置決め機能を有する突出部41の高さは、吸音スポンジ23の厚みより低くなっており、正面視で突出部41の先端面が正面視で吸音スポンジ23で隠れるくらい吸音スポンジ23の内面より低く(即ち、本体21aの内面部側に)位置している。また、リング24の外寸は、吸音スポンジ23の内寸よりも大きくなるように形成されている。それ故、リング24を吸音スポンジ23に沈めることができ、リング24によって吸音スポンジ23の前端部の周方向全域を本体21aの内面部に押し付けることができる。これにより、吸音スポンジ23の前端部が捲れ上がらないようにすることができる。
【0045】
更に、リング24の内寸は、吸音スポンジ23の内寸と同じ又はそれより大きくなっており、突出部41の高さと吸音スポンジ23の厚みの差がリング24の線状部材の太さと同じ又はそれより大きくなっている。これにより、リング24の本体部31の上側部分31a、左側部分31b及び右側部分31dの全体を吸音スポンジ23に沈めることができ、それらが正面視で吸音スポンジ23に隠れるようになっている。これにより、吸音スポンジ23からの出っ張りをなくすことができるので、吸気通路25の抵抗を低減することができる。
【0046】
また、リング24を係止する突出部41の先端面には、図6に示すように上下方向に延在する係合溝部41bが形成されている。係合溝部41bの断面は、円弧状に形成されており、リング24の本体部31の左側部分31b及び右側部分31dの一部分を係合溝部41bに嵌めて係合するようになっている。このように係合溝部41bにリング24を係合させることで、リング24がピン部33を中心に傾倒することを防ぐことができる。また、リング24の傾倒を防ぐために、ラムダクト21の隔離壁26には、嵌り溝部42も形成されている。
【0047】
隔離壁26は、先端部分を含めて平坦に形成されており、前述の通りラムダクト21の本体21aの直線状の内面部分を構成している。係止部である嵌り溝部42は、隔離壁26の先端部分に形成されており、嵌り溝部42は、リング24の下側部分31cの形状に合わせて成形されている。即ち、嵌り溝部42は、リング24の下側部分31cと同様に左右方向に延在するように直線状に成形されている。リング24の下側部分31cがこの嵌り溝部42に嵌められて係止されることで、リング24が位置決めされ且つリング24の傾倒を防ぐことができる。
【0048】
また、嵌り溝部42は、隔離壁26においてレゾネータボックス21bより前側に形成されている。これにより、嵌り溝部42の部分がレゾネータ室27へと突き出ることを防ぐべく隔離壁26を厚くする必要がなくなり、レゾネータ室27の容積が減少することを防ぐことができる。更に、嵌り溝部42の深さは、リング24の下側部分31cの太さより深くなっている。それ故、本体部31の下側部分31cもまた嵌り溝部42内に正面視で隠れるようになっている。これにより、隔離壁26からの出っ張りをなくすことができるので、吸気通路25の抵抗を低減することができる。
【0049】
このようにラムダクト21の本体21aの内面部には、係止部である一対の突出部41及び嵌り溝部42が左側面、右側面及び底面に夫々形成されている。つまり、ラムダクト21の本体21aの内面部には、3つの係止部41,42が間隔をあけて形成されている。このように3つの係止部41,42が間隔をあけて配置されているので、この3つの係止部41,42によって傾倒しないようにリング24を位置決めすることができる。これにより、ラムダクト21に取り込まれたエアによるリング24の位置ずれ及び傾倒を防ぐことができ、リング24の位置ずれ及び傾倒に伴う吸音スポンジ23の剥離を防ぐことができる。
【0050】
また、ラムダクト21は、図7に示すようにラムダクト21の中心面(図2の切断線III−IIIを含む面に相当)に沿って左右に分割可能に構成されており、その左側部分51と右側部分52とを組み合わせることによってラムダクト21が組立てられるようになっている。同様に、吸音スポンジ23も中心面に沿って左右に分割可能に構成されており、分割された吸音スポンジ23の各部分23a,23bは、ラムダクト21の各部分51及び52に組立前に貼り付けられている。
【0051】
ラムダクト21の各部分51,52は、そこに吸音スポンジ23の各部分23a,23bが貼り付けられた後、それらの間にリング24を介在させるように組み合わせられる。この際、リング24の下側部分31cを左右に延在する嵌り溝部42に入れ、下側部分31cを嵌り溝部42に沿って右方向又は左方向にスライドさせるようにしてラムダクト21の各部分51,52を近接させてラムダクト21にリング24を嵌め込む。このように嵌めることでラムダクトユニット1を組み立てることができる。更に吸音スポンジ23の前端部をリング24によって本体21aの内周部に押し付けることができ、吸音スポンジ23の前端部が捲れ上がることを防ぐことができる。また、一対の突出部41の内孔41aが嵌り溝部42と同様に左右方向に延在しているので、リング24を各部分51,52に嵌め込むことでピン部33が前記内孔41aに挿入される。
【0052】
このように、ラムダクト21が左右分割構造を有しているので、各部分51,52の間にリング24を介在させて組み合わせることで、リング24を各部分51,52に嵌め込む作業とピン部33を対応する突出部41に挿入する作業とを同時に行うことができる。それ故、ラムダクトユニット1の組立が容易である。また、ラムダクト21を左右分割構造にすることで、下方に先細りの台形形状に形成されているリング24をラムダクト21内に組み付けることが容易にできる。
【0053】
このように構成されているラムダクトユニット1では、リング24によって吸音スポンジ23の前端部をラムダクト21の内面部に押し付けているので、リング24が線状部材によって構成されていてもラムダクト21に導入されるエアによって吸音部材が捲られて剥離することを抑えることができる。また、ラムダクト21は凹凸や曲線等を3次元的に組み合わせた3次元形状で形成されているが、リング24が線状部材によって構成さているので、リング24の形状を単純化することができる。それ故、吸音スポンジ23の剥離を抑えつつラムダクト21の歩留まりを向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態のラムダクトユニット1では、リング24が環状に形成されているので、リング24の製造が容易であり、リング24をU字状に形成した場合に比べてリング24の変形を抑えることができる。
【0055】
更に本実施形態のラムダクトユニット1では、吸気通路25の隔離壁26を介して反対側、すなわち隔離壁26の下側にレゾネータ室27が形成されているので、吸気通路25から隔離壁26に伝わる吸気騒音をレゾネータ室27にて減衰することができる。これにより、隔離壁26に吸音スポンジ23を貼り付けなくともレゾネータ室27により吸気騒音の伝達を抑えることができる。即ち、隔離壁26に吸音スポンジ23を貼り付けずともラムダクトユニット1における騒音を小さくすることができる。
【0056】
また、吸音スポンジ23を貼り付ける領域から隔離壁26の部分を除くことによって、隔離壁26に吸音スポンジ23を貼り付けた場合に比べて、吸音スポンジ23を配置するための凹所を形成する必要がない分、隔離壁26を吸気通路25側に移動させることができる。つまり、隔離壁26がレゾネータ室27側に下がることを防ぐことができ、レゾネータ室27の容積を大きくすることができる。これにより、減衰させる吸気騒音の周波数帯域の選択の自由度を広げることができる。
【0057】
また、線状部材で成形されているリング24によって吸音スポンジ23を押さえ付けているので、従来技術のホルダのように吸音スポンジ23の表面に凹凸ができることを防ぐことができる。これにより、ラムダクト21の吸気抵抗及び吸気騒音を低減することができる。
【0058】
[その他の実施形態について]
前述の実施形態のラムダクトユニット1では、ラムダクト21が左右に分割されるように構成さているが、ラムダクト21が上下に分割されるような構成であってもよい。また、前述の実施形態のラムダクトユニット1では、レゾネータ室27が形成されているが、必ずしも必要ではなくレゾネータ室27がなくてもよい。また、ラムダクト21の本体21aの断面は大略台形形状であるが、その形状に限定されず四角形や三角形であってもよく、5角形以上の多角形状であてもよい。また、ラムダクト21の本体21aの断面は、曲線を組み合わせて形状であってもよい。
【0059】
また、前述の実施形態のラムダクトユニット1では、本体21aの内面部の前後方向中間部分において、前記隔離壁26の部分を除いた領域に吸音スポンジ23が貼り付けられているが、吸音スポンジ23が隔離壁26の部分まで伸びていてもよい。即ち、本体21aの前後方向中間部分において、その内面部の全周にわたって吸音スポンジ23が設けられていてもよい。
【0060】
前述の実施形態のラムダクトユニット1では、リング24が合成樹脂によって構成されているが、金属材料であってもよい。また、リング24の形状は、環状に限定されず、吸音スポンジ23の形状に合わせてU字状であってもよく、線状部材によって形成され且つ実質的に一平面上で延在する略2次元形状であればよい。また、突起片32は、リング24の左側部分31bと右側部分31dだけでなく上側部分31aにも設けられていてもよく、隔離壁26にも吸音スポンジ23を延在させる場合には、下側部分31cにも突起片32を設けてもよい。更に、ラムダクトユニット1では、吸音スポンジ23の前端部だけにリング24が配置されているが、吸音スポンジ23前端部に加えて吸音スポンジ23の後端部や中間部に配置してもよく、配置されるリング24の数は問わない。
【符号の説明】
【0061】
1 ラムダクトユニット
2 自動二輪車
21 ラムダクト
21d 開口端部
23 吸音スポンジ
23c 貫通孔
24 リング
25 吸気通路
26 隔離壁
27 レゾネータ室
29 取付溝部
33 ピン部
41 突出部
42 嵌り溝部
E エンジン
図1
図2
図6
図3
図4
図5
図7