特許第5969307号(P5969307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969307
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】セラミック基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/00 20060101AFI20160804BHJP
   C04B 35/622 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   B28B3/00 Z
   C04B35/00 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-179051(P2012-179051)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-37321(P2014-37321A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】河浦 茂裕
(72)【発明者】
【氏名】小路 寛
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−324617(JP,A)
【文献】 特開2006−303056(JP,A)
【文献】 特開2000−124581(JP,A)
【文献】 特開2007−245649(JP,A)
【文献】 特開平07−186119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/622−35/657
B28B 1/00−1/54
B28B 3/00−3/26
B28B 11/00−19/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向される一対のプレス面の一方に形成される凸部と、前記一対のプレス面の他方において前記凸部と対向する部分を含む領域に形成される凹部とを、前記一対のプレス面間に配置されるグリーンシートにプレスするプレス工程と、
前記凹部のプレスによって前記グリーンシート面に転写された隆起部を除去する除去工程と、
前記隆起部が除去された前記グリーンシートを焼成する焼成工程と
を備え
前記凹部の開口面積は、前記凸部の先端面積よりも大きい面積とされることを特徴とするセラミック基板の製造方法。
【請求項2】
前記凹部は、1つの前記凸部と対向する部分を含む領域において分割される
ことを特徴とする請求項1に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項3】
前記凹部が形成されるプレス面に対する前記凹部側面の傾斜角度は、前記凸部が形成されるプレス面に対する前記凸部側面の傾斜角度よりも大きい傾斜角度とされる
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項4】
前記凹部の空間体積における前記凸部の体積に対する比は、0.2以上1以下の範囲内とされる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のセラミック基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミック基板の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の型板の間にグリーンシートを配置し、当該型板を押圧して、型板の一方の表面に形成される凹凸に対応する凹凸をグリーンシートの表面に形成した後に焼成する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−234209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、型板の押圧によって窪んだグリーンシートの下方では、当該グリーンシートのセラミック粒子が集中し易い傾向がある。
【0005】
このようなグリーンシートを焼成した場合、セラミック粒子の集中部位とそれ以外の部位との収縮量に差が生じ、型板の押圧によって窪んだ部分が歪む等の変形が生じるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、設計値との隔たりを低減し得るセラミック基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明におけるセラミック基板の製造方法は、互いに対向される一対のプレス面の一方に形成される凸部と、前記一対のプレス面の他方において前記凸部と対向する部分を含む領域に形成される凹部とを、前記一対のプレス面間に配置されるグリーンシートにプレスするプレス工程と、前記凹部のプレスによって前記グリーンシート面に転写された隆起部を除去する除去工程と、前記隆起部が除去された前記グリーンシートを焼成する焼成工程とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
このような製造方法では、凸部のプレスによって転写対象となるグリーンシート面とは逆側の面において、当該凸部に対向する凹部のプレスによって隆起部が形成された後に除去される。
このため、たとえ、凸部のプレスによってグリーンシート面に転写される窪み部の下方にセラミック粒子が集中したとしても、その集中部位は隆起部としておおむね除去され、当該窪み部の下方におけるセラミック粒子がおおむね均一となる。
したがって、グリーンシートの焼成に起因して、凸部のプレスによってグリーンシートに転写された窪み部が変形することを大幅に低減できる。
こうして、設計値との隔たりを低減し得るセラミック基板の製造方法を提供することができる。
【0009】
また、前記凹部は、1つの前記凸部と対向する部分を含む領域において分割されることがより好ましい。
【0010】
このように凹部が分割された場合、1つの凸部と対向する領域には複数の凹部が形成され、これら凹部によって転写される隆起部を除去することになる。このため、1つの凸部と対向する領域に1つの凹部が形成されておりその凹部によって転写される隆起部を除去する場合に比べて、隆起部を除去する際に生じる摩擦量を低減することができる。
この結果、隆起部を残して除去すること等に起因して窪み部が変形することを低減でき、より一段と設計値との隔たりを低減することが可能となる。
また、分割される凹部同士の間を所定距離だけ隔てた場合には、当該凹部同士の間が、隆起部の除去している際に生じる除去片を蓄積する場等となるため、隆起部を残して除去することを未然に抑止することができる。
【0011】
また、前記凹部の開口面積は、前記凸部の先端面積よりも大きい面積とされることがより好ましい。
【0012】
グリーンシートに凹部と凸部とがプレスされた場合、当該プレス部分の厚みと、そのプレス部分の周辺部分の厚みとが異なり、プレス部分とその周辺部分とにおけるセラミック粒子の密度差が大きくなり易い傾向がある。
この点、凹部の開口面積が凸部の先端面積よりも大きい面積とされた場合、凹部と凸部とをグリーンシートにプレスしたときに、当該凹部の開口面と凸部の先端面との間には隙間が生じる。このため、この隙間を介して、凹部と凸部とにプレスされたセラミック粒子が、当該プレス部分の周辺部分に移行し易くなる。
したがって、プレス部分の厚みと、そのプレス部分の周辺部分の厚みとに差があったとしても、当該部分におけるセラミック粒子の密度差を低減することができ、この結果、より一段と設計値との隔たりを低減し得るセラミック基板を製造することが可能となる。
【0013】
また、前記凹部が形成されるプレス面に対する前記凹部側面の傾斜角度は、前記凸部が形成されるプレス面に対する前記凸部側面の傾斜角度よりも大きい傾斜角度とされることがより好ましい。
【0014】
このような傾斜角度の関係とした場合にも、凹部と凸部とをグリーンシートにプレスしたときに、当該凹部側面と凸部側面との間には傾斜差が生じる。このため、この傾斜差により、凹部と凸部とにプレスされたセラミック粒子が、当該プレス部分の周辺部分や隆起部に移行し易くなる。
したがって、プレス部分の厚みと、そのプレス部分の周辺部分の厚みとに差があったとしても、当該部分におけるセラミック粒子の密度差を低減することができ、この結果、より一段と設計値との隔たりを低減し得るセラミック基板を製造することが可能となる。
【0015】
また、前記凹部の空間体積における前記凸部の体積に対する比は、0.2以上1以下の範囲内とされることがより好ましい。
【0016】
このような条件を充足する場合、セラミック粒子が、隆起部に移行し易くなるため、より一段と設計値との隔たりを低減し得るセラミック基板を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、設計値との隔たりを低減し得るセラミックス基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るセラミック基板の製造方法に用いられる加工装置を概略的に示す断面図である。
図2】第1金型及び第2金型における各種パラメータを示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るセラミック基板の製造方法を示すフローチャートである。
図4】配置工程の様子を図1と同様の視点で示す図である。
図5】プレス工程の様子を図1と同様の視点で示す図である。
図6】プレス工程後のグリーンシートの様子を示す図である。
図7】グリーンシートに転写された隆起部の除去の様子を示す図である。
図8】他の第1金型及び第2金型(1)を示す断面図である。
図9図8に示す金型のプレスによって転写されるグリーンシートの様子を示す図である。
図10】他の第1金型及び第2金型(2)を示す断面図である。
図11】他の第2金型(3)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に関して図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るセラミック基板の製造方法に用いられる加工装置を概略的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る加工装置1は、搬送部10、プレス部20及び除去部30を主な構成要素として備える。
【0021】
搬送部10は、グリーンシートを送り方向SDに所定量単位で搬送させる部である。グリーンシートは、原料であるセラミック粉体と、当該セラミック粉体の結合剤とを含むシートである。
【0022】
本実施形態における搬送部10は、例えば、グリーンシートの長手方向に両端を挟持した状態で、グリーンシートを送り方向SDに所定量単位で搬送するレール式のコンベアとされる。この搬送部10には、グリーンシートを所定位置に位置決めさせるための位置決め機構等が適宜設けられる。
【0023】
プレス部20は、昇降機21A及び21Bと、第1金型22及び第2金型23とを主な構成要素として有する。
【0024】
昇降機21A及び21Bは、搬送部10における搬送路に対して離れる方向D1及び近づく方向D2の双方向へ移動可能な機器とされる。この搬送路を境界として一方側に昇降機21Aが配置され、当該搬送路を境界として他方側に昇降機21Bが配置される。
【0025】
第1金型22は、昇降機21Aに取り付けられる。また、第1金型22は、グリーンシートにプレスさせるべき面(以下、プレス面という)PS1を有し、当該プレス面PS1は搬送路に正対される。
【0026】
このプレス面PS1には、グリーンシートの面に窪み部を転写するための凸部22Xが形成される。この凸部22Xは、プレス面PS1の一部の領域がプレス面PS1から突出したものであり、その凸部の22Xの先端は平らな面とされる。本実施形態における凸部22Xの形状は錐台形状とされる。
【0027】
第2金型23は、昇降機21Bに取り付けられる。また、第2金型23は、プレス面PS2を有し、当該プレス面PS2は第1金型22のプレス面PS1に正対される。
【0028】
このプレス面PS2には、グリーンシートの面に隆起部を転写するための凹部23Xが形成される。この凹部23Xは、プレス面PS2の一部の領域がプレス面PS2から窪んだものである。本実施形態における凹部23Xは平らな底面を有し、また凹部23Xの空間形状は凸部22Xと相似形状とされる。
【0029】
図2は、第1金型22及び第2金型23における各種パラメータを示す図ある。具体的に図2の(A)は第1金型22における各種パラメータを示し、図2の(B)は第2金型23における各種パラメータを示している。
【0030】
図2に示すように、本実施形態における凹部23Xの開口面積ONAは、凸部22Xの先端面積TPAよりも大きい面積とされる。なお、凹部23Xの開口面積ONAは、プレス面PS2と同じ面となる凹部23Xの開口面の面積である。また、凸部22Xの先端面積TPAは、凸部22Xの先端における平らな面の面積である。
【0031】
また、凹部23Xが形成されるプレス面PS2に対する凹部側面の傾斜角度Δ2は、凸部22Xが形成されるプレス面PS1に対する凸部側面の傾斜角度Δ1よりも大きい傾斜角度とされる。
【0032】
さらに、凹部23Xの空間体積SPVにおける凸部23Xの体積に対する比は、0.2以上1以下の範囲内とされる。なお、凹部23Xの空間体積SPVは、凹部23Xの表面と、プレス面PS2と同じ面となる凹部23Xの開口面とで囲まれる空間の体積である。また、凸部23Xの体積は、プレス面PS1と同じ面を基準として凹部23X側にある凸部部分の体積である。
【0033】
除去部30(図1)は、プレス面PS2のプレスによってグリーンシートの面に転写された隆起部を研磨又は切断により除去する部である。
【0034】
本実施形態における除去部30は、例えば、搬送部10における搬送路と第2金型23とに挟まれる空間の所定位置を実行位置とし、当該空間以外の所定位置を待機位置として、当該実行位置及び待機位置との間を移動可能とされる。そして、プレス工程時には待機位置に除去部30が配置され、当該プレス工程後には実行位置に除去部30が配置される。
【0035】
このような加工装置1を用いてセラミック基板が製造される。
【0036】
図3は、本発明の実施形態に係るセラミック基板の製造方法を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態に係るセラミック基板の製造方法は、配置工程P1と、プレス工程P2と、除去工程P3と、焼成工程P4とを主工程として備える。
【0037】
<配置工程>
この配置工程P1は、第1金型22のプレス面PS1に形成される凸部22Xと、第2金型23のプレス面PS2に形成される凹部23Xとの間に、グリーンシートを配置する工程である。
【0038】
具体的には、図4に示すように、グリーンシートGSが送り方向SDに所定量だけ搬送され、プレス対象となるグリーンシート部位GSPが、凸部22Xと凹部23Xとの間に配置される。
【0039】
<プレス工程>
このプレス工程P2は、凸部22Xと凹部23Xとの間に配置されたグリーンシート部位GSPに対して、当該凸部22X及び凹部23Xをプレスする工程である。
【0040】
具体的には、まず、図5に示すように、昇降機21A及び21Bがプレス前位置からプレス位置にまで移動され、グリーンシート部位GSPに対して第1金型22及び第2金型23が所定の押圧量で押圧される。
【0041】
これによりグリーンシート部位GSPの一方の面にはプレス面PS1に形成される凸部22Xがプレスされ、当該グリーンシート部位GSPの他方の面にはプレス面PS2に形成される凹部23Xがプレスされる。
【0042】
なお、プレス前位置は、図4に示したように、凸部22X又は凹部23Xと、この凸部22X又は凹部23Xに対向するグリーンシート部位GSPの一面とが非接触状態にある位置とされる。
【0043】
次に、昇降機21A及び21Bがプレス位置に移動した時点から所定期間が経過したとき、当該昇降機21A及び21Bがプレス位置からプレス前位置に戻される。
【0044】
こうして、図6に示すように、グリーンシート部位GSPの一方の面には凸部22Xによって窪み部DPが転写され、当該グリーンシート部位GSPの他方の面には凹部23Xによって隆起部UPが転写される。
【0045】
<除去工程>
この除去工程P3は、プレス面PS2における凹部23Xのプレスによってグリーンシート部位GSPに転写された隆起部UPを除去する工程である。
【0046】
具体的には、まず、除去部30が待機位置から実行位置にまで移動され、当該実行位置に移動した除去部30によって隆起部UPに対する研磨又は切断が開始され、図7に示すように、グリーンシート部位GSPから隆起部UPが除去される。
【0047】
グリーンシート部位GSPから隆起部UPが除去された場合、除去部30における研磨又は切断が終了され、当該除去部30が実行位置から待機位置にまで移動される。
【0048】
<焼成工程>
この焼成工程P4は、隆起部UPが除去されたグリーンシート部位GSPを焼成する工程である。
【0049】
具体的には、例えば、所定の切断機構によってグリーンシート部位GSPがグリーンシートGSから切り離された後に焼成炉に搬送され、当該焼成炉において所定温度で所定期間だけ加熱される。この結果、グリーンシート部位GSPが、セラミック基板として得られる。
【0050】
以上、本実施形態における製造方法では、図5に示したように、第1金型22の凸部22Xのプレスによって転写対象となるグリーンシート面とは逆側の面が、当該凸部22Xに対向する第2金型23の凹部23Xによってプレスされる。そして、この凹部23Xのプレスによって形成される隆起部UPは、図7に示したように、当該プレス後に除去される。
【0051】
このため、たとえ、凸部22Xのプレスによってグリーンシート面に転写される窪み部DPの下方にセラミック粒子が集中したとしても、その集中部位は隆起部UPとしておおむね除去され、当該窪み部DPの下方におけるセラミック粒子がおおむね均一となる。したがって、グリーンシート部位GSPの焼成に起因して、凸部22Xのプレスによってグリーンシート部位GSPに転写された窪み部DPが変形することを大幅に低減できる。
【0052】
こうして、設計値との隔たりを低減し得るセラミック基板の製造方法を提供することができる。
【0053】
ところで、グリーンシート部位GSPに凸部22Xと凹部23Xとがプレスされた場合、当該プレス部分の厚みT1(図6)と、そのプレス部分の周辺部分の厚みT2(図6)とが異なり、プレス部分とその周辺部分とにおけるセラミック粒子の平均密度差が大きくなり易い傾向がある。
【0054】
この点、本実施形態の場合、図2に示したように、凹部23Xの開口面積ONAは、凸部22Xの先端面積TPAよりも大きい面積とされる。この場合、凹部23Xと凸部22Xとをグリーンシート部位GSPにプレスしたときに、当該凹部23Xの開口面と凸部22Xの先端面には隙間が生じる。このため、この隙間を介して、凹部23Xと凸部22Xとにプレスされたセラミック粒子が、当該プレス部分の周辺部分に移行し易くなる。
【0055】
したがって、プレス部分の厚みT1とそのプレス部分の周辺部分の厚みT2とに差があったとしても、当該部分におけるセラミック粒子の平均密度差を低減することができ、この結果、より一段と設計値との隔たりを低減し得るセラミック基板を製造することが可能となる。
【0056】
また本実施形態の場合、図2に示したように、凹部23Xが形成されるプレス面PS2に対する凹部側面の傾斜角度Δ2は、凸部22Xが形成されるプレス面PS1に対する凸部側面の傾斜角度Δ1よりも大きい傾斜角度とされる。
【0057】
この場合であっても、凹部23Xと凸部22Xとをグリーンシート部位GSPにプレスしたときに、当該凹部側面と凸部側面とには傾斜差が生じる。このため、この傾斜差により、凹部23Xと凸部22Xとにプレスされたセラミック粒子が、当該プレス部分の周辺部分や隆起部に移行し易くなる。
【0058】
したがって、プレス部分の厚みT1とそのプレス部分の周辺部分の厚みT2とに差があったとしても、当該部分におけるセラミック粒子の平均密度差を低減することができ、この結果、より一段と設計値との隔たりを低減し得るセラミック基板を製造することが可能となる。
【0059】
なお、プレス部分の厚みT1(図6)が、そのプレス部分の周辺部分の厚みT2よりも大きくなるようにプレスした場合には、プレス部分の隆起部UPが除去されたとしても、当該部分におけるセラミック粒子の平均密度差が大きくなることを抑制することができる。
【0060】
さらに本実施形態の場合、図2に示したように、凹部23Xの空間体積SPVにおける凸部23Xの体積に対する比は、0.2以上1以下の範囲内とされる。
【0061】
このため、セラミック粒子が、隆起部に移行し易くなるため、より一段と設計値との隔たりを低減し得るセラミック基板を製造することが可能となる。
【0062】
以上、実施形態が一例として説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0063】
例えば上記実施形態では、プレス面PS2のうち、1つの凸部22Xと対向する領域において1つの凹部23Xが形成された。しかしながら、図8に示すように、凹部23Xは、1つの凸部22Xと対向する領域において分割されていても良い。なお、分割数は、図8では、2つとされているが、2以上であっても良い。
【0064】
このように凹部23Xを複数の凹部23X1〜23X2に分割した場合、図9に示すように、これら凹部23X1〜23X2によって転写される複数の隆起部UP1〜UP2が除去されることになる。このため、図7に示したように、1つの凹部23Xによって転写される隆起部UPを除去する上記実施形態の場合に比べて、隆起部UP1〜UP2を除去する際に生じる摩擦量を低減することができる。この結果、隆起部UP1〜UP2を残して除去すること等に起因して窪み部DPが変形することを抑制でき、より一段と設計値との隔たりを低減することが可能となる。
【0065】
また、図10に示すように、分割される凹部23X1〜23X2同士の間BTを所定距離だけ隔てた場合には、当該凹部同士の間BTが、隆起部UP1〜UP2を除去している際に生じる除去片を蓄積する場等となるため、当該隆起部UP1〜UP2を残して除去することをより一段と抑制することができる。
【0066】
また上記実施形態では、凹部23Xの空間形状が凸部22Xと相似形状とされたが、例えば図11に示すように、相似形状とされていなくても良い。なお、図11の(A)では凹部23Xの底面が開口面側へ隆起する球冠形状とされ、図11の(B)では、凹部23Xの底面が開口面側とは逆側へ沈下する球冠形状とされる。このような図11に示す凹部23Xの空間形状であっても、当該図11に示す空間形状以外の形状であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
また上記実施形態では、第1金型22の凸部22Xと第2金型23の凹部23Xとの間にグリーンシート部位GSPを配置させるために、グリーンシートGTが移動対象とされた。しかしながら、第1金型22又は第2金型23が移動対象とされても良く、第1金型22又は第2金型23とグリーンシートGTとが移動対象とされても良い。要するに、凸部22Xと凹部23Xとの間にグリーンシート部位GSPが配置されれば良い。
【0068】
また上記実施形態では、第1金型22及び第2金型23が双方とも移動させて、当該第1金型22における凸部22Xと第2金型23における凹部23Xとがプレスされた。しかしながら、第1金型22及び第2金型23の一方を固定とし、当該第1金型22及び第2金型23の他方を移動させて、凸部22Xと凹部23Xとがプレスされても良い。このようにした場合、昇降機21A及び21Bの一方を省略することができる。
【0069】
また上記実施形態では、グリーンシート面に窪み部DP及び隆起部UPを転写させるためのプレス面PS1及びPS2を有する第1金型22及び第2金型23が搬送部10の一方側と他方側に設けられた。しかしながら、例えば、グリーンシートにスルーホールや外枠切出用の貫通溝を得るためのプレス面を有する一対の金型が、第1金型22及び第2金型23の後方(グリーンシートの送り方向SDの後方)における搬送部10の一方側と他方側に設けられていても良い。なお、このような金型は、第1金型22又は第2金型23と一体に連結されていても良く、別体であっても良い。
【0070】
また上記実施形態では、1枚のグリーンシートGTから複数のグリーンシート部位GSPが切断された。しかしながら、1枚のグリーンシートGTを分割し、当該分割された各グリーンシートからそれぞれ1つのグリーンシート部位GSPが切断されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係るセラミック基板の製造方法は、セラミック基板を取り扱う様々な産業において利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0072】
1・・・加工装置
10・・・搬送部
20・・・プレス部
21A,21B・・・昇降機
22・・・第1金型
22X・・・凸部
23・・・第2金型
23X,23X1,23X2・・・凹部
30・・・除去部
PS1,PS2・・・プレス面
DP・・・窪み部
UP,UP1,UP2・・・隆起部
GT・・・グリーンシート
GSP・・・グリーンシート部位
P1・・・配置工程
P2・・・プレス工程
P3・・・除去工程
P4・・・焼成工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11