(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プルロッド部材は、前記対象物体に形成された第2ロッド挿通孔を挿通するように装着され、前記ベース部材及び対象物体に着脱可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の物体位置決め固定装置。
前記ボールロック機構を介して結合されたプルロッド部材と出力部材とを結合解除するように出力部材を駆動する第2駆動手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の物体位置決め固定装置。
前記ボールロック機構を介して結合されたプルロッド部材と出力部材とを結合解除するように出力部材を駆動する際に、プルロッド部材を上方へ押出す押出し機構を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の物体位置決め固定装置。
前記第1駆動手段は、シリンダ部材と出力部材とでシリンダ部材内に形成され且つ圧縮ガスが充填されたガス作動室を有するガススプリングからなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の物体位置決め固定装置。
前記対象物体に装備される流体圧機器に流体圧を供給するためにプルロッド部材に形成された第1流体通路部を有する流体通路を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の物体位置決め固定装置。
前記第1流体通路部が、前記ベース部材と対象物体に夫々形成された第3,第4流体通路部に連通するように構成されたことを特徴とする請求項8に記載の物体位置決め固定装置。
前記ボールロック機構は、対象物体をベース部材に引き付ける際に出力部材の駆動力を増力してプルロッド部材に伝達する増力機構を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の物体位置決め固定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のような物体位置決め装置においては、ベース部材の基準座面に対する基準部材の係合凸部の鉛直方向位置が製作誤差によりバラつく場合には、所期の水平方向位置決め機能が得られない。しかし、基準部材のフランジ部材を取り付ける取り付け穴を形成する際の、取り付け穴の深さに関する加工公差を約5μm程度以内に抑えることは到底困難であるため、ベース部材の基準座面に対する基準部材の係合凸部の高さ位置、つまりテーパ係合面の高さ位置を高精度に設定することができない。そのため、ワークパレットをベース部材の基準座面に対して水平方向に位置決めする位置決め精度を確保することが困難であるという問題がある。
【0010】
また、基準部材にフランジ部を形成し、複数のボルトによりフランジ部を取り付け穴に固定する構造であるため、1対の基準部材をベース部材に取り付ける取り付け位置が制約されること、基準部材が複雑な構造の大型部材になり、その製作費(材料費と加工費と組付け費)が高価になること等の問題もある。
【0011】
しかも、ワークパレットをベース部材に固定する場合、及び固定解除する場合には、少なくとも1対のボルト挿通孔に挿通され1対のボルトを、工具を用いて締めたり弛めたりする手作業が必要になり、つまりベース部材に対してワークパレットを交換する作業が非常に煩雑で時間を要するものになる。また、ワークパレットをベース部材に固定する安定したクランプ力を得ることができず、このことが、ワークパレットをベース部材に確実に位置決め固定することができない原因になる虞がある。
【0012】
ここで、この位置決め固定装置において、ワークパレットをベース部材に固定する固定機構として、ボルトやボルト挿通孔等を省略し、特許文献2のようなクランプピンやボールロック機構を有する機構を採用することが考えられる。しかし、この固定機構を位置決め機構と独立に設けることになると、これら位置決め機構とクランプ機構の両機構を全体的にコンパクトに配置して構成することができない。
【0013】
本発明の目的は、水平方向位置決め精度を高めること、基準部材の構造を簡単化・小型化して製作費を低減すること、ベース部材に対する対象物体の交換を簡単化、迅速化すること、等を実現可能な物体位置決め固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明(物体位置決め固定装置)は、ベース部材の上に対象物体を水平方向と鉛直方向に位置決めして固定する物体位置決め固定装置において、前記ベース部材は鉛直方向に位置決めの為の基準座面を備えると共に、前記対象物体は前記基準座面に当接可能な当接面を備え、前記対象物体を水平方向に位置決め可能に相互に離隔した位置に配設された複数の位置決め機構と、前記複数の位置決め機構に夫々付設され、前記対象物体をベース部材に押圧して固定可能な複数の固定機構とを備え、前記各位置決め機構は、前記ベース部材と対象物体の一方に装着された基準部材であって、先端側ほど小径化するテーパ係合面が形成された係合凸部と、この係合凸部の基端側に係合凸部よりも小径に形成され前記ベース部材と対象物体の一方に形成された嵌合孔に嵌合される嵌合筒部と、前記係合凸部の基端に形成され前記基準座面と当接面の一方に当接する基端当接面とを有する基準部材と、前記ベース部材と対象物体の他方に形成された装着穴に装着され、前記テーパ係合面に密着状に係合可能なテーパ当接面を有する環状係合部材とを備え、前記各固定機構は、前記対象物体からベース部材側へ突出し且つ対象物体に駆動力伝達可能に係合して前記基準部材及びベース部材に形成された第1ロッド挿通孔を挿通するように装着されるプルロッド部材と、前記ベース部材に取付けられたシリンダ部材と、前記シリンダ部材に進退可能に装着され前記プルロッド部材が挿入される出力部材と、前記プルロッド部材とシリンダ部材と出力部材とに設けられ、出力部材の進退によりプルロッド部材と出力部材とを解除可能に結合するボールロック機構と、前記ボールロック機構を介してプルロッド部材と出力部材とを結合し且つ前記対象物体をベース部材に引き付けるように出力部材を駆動する第1駆動手段とを備えたことを特徴としている。
【0015】
対象物体をベース部材に位置決めして固定する際、対象物体をベース部材上にセットし、対象物体の複数の環状係合部材を、ベース部材側の複数の基準部材の係合凸部に夫々係合させる。そして、複数の固定機構により、対象物体がベース部材に押圧され、すると、複数の位置決め機構により、各環状係合部材のテーパ当接面が対応する基準部材の係合凸部のテーパ係合面に密着状に係合して、対象物体が水平方向に位置決めされるとともに、対象物体の当接面がベース部材の基準座面に当接して、対象物体が鉛直方向に位置決めされる。各固定機構においては、プルロッド部材が対象物体からベース部材側へ突出し、対象物体に駆動力伝達可能に係合されて基準部材及びベース部材の第1ロッド挿通孔を挿通するように装着された状態で、第1駆動手段により出力部材が駆動されると、ボールロック機構を介してプルロッド部材と出力部材とが結合され、このプルロッド部材と出力部材とを介して対象物体がベース部材に引き付けられ固定される。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記プルロッド部材は、前記対象物体に形成された第2ロッド挿通孔を挿通するように装着され、前記ベース部材及び対象物体に着脱可能に構成されたことを特徴としている。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記プルロッド部材の上端部に前記第2ロッド挿通孔よりも大径の頭部が設けられ、前記第2ロッド挿通孔の上部に前記頭部を収容する頭部収容穴が形成されたことを特徴としている。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記ボールロック機構を介して結合されたプルロッド部材と出力部材とを結合解除するように出力部材を駆動する第2駆動手段を備えたことを特徴としている。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記ボールロック機構を介して結合されたプルロッド部材と出力部材とを結合解除するように出力部材を駆動する際に、プルロッド部材を上方へ押出す押出し機構を備えたことを特徴としている。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記第1駆動手段が、前記シリンダ部材に収容された圧縮スプリングからなることを特徴としている。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記第1駆動手段は、シリンダ部材と出力部材とでシリンダ部材内に形成され且つ圧縮ガスが充填されたガス作動室を有するガススプリングからなることを特徴としている。
【0022】
請求項8の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記対象物体に装備される流体圧機器に流体圧を供給するためにプルロッド部材に形成された第1流体通路部を有する流体通路を備えたことを特徴としている。
【0023】
請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記流体通路は、前記第1流体通路部に連通するように前記出力部材に形成された第2流体通路部を有することを特徴としている。
【0024】
請求項10の発明は、請求項8の発明において、前記第1流体通路部が、前記ベース部材と対象物体に夫々形成された第3,第4流体通路部に連通するように構成されたことを特徴としている。
【0025】
請求項11の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記ボールロック機構は、対象物体をベース部材に引き付ける際に出力部材の駆動力を増力してプルロッド部材に伝達する増力機構を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、前記各位置決め機構が、前記ベース部材と対象物体の一方に装着された基準部材であって、先端側ほど小径化するテーパ係合面が形成された係合凸部と、この係合凸部の基端側に係合凸部よりも小径に形成され前記ベース部材と対象物体の一方に形成された嵌合孔に嵌合される嵌合筒部と、前記係合凸部の基端に形成され前記基準座面と当接面の一方に当接する基端当接面とを有する基準部材と、前記ベース部材と対象物体の他方に形成された装着穴に装着され、前記テーパ係合面に密着状に係合可能なテーパ当接面を有する環状係合部材とを備えているため、次の効果が得られる。
【0027】
前記係合凸部の基端当接面を前記基準座面又は前記当接面に当接させるため、前記基準座面又は前記当接面に対する係合凸部の高さ方向位置の精度を高めることができるから、対象物体をベース部材に対して水平方向に位置決めする位置決め精度を高めることができる。基準部材の嵌合筒部を嵌合孔に嵌合固定する構成とし、嵌合筒部は係合凸部よりも小さな外径を有するものであるため、基準部材の構造を簡単化・小型化して製作費(材料費、加工費、組付け費)を大幅に低減することができる。
【0028】
しかも、前記各固定機構が、前記対象物体からベース部材側へ突出し且つ対象物体に駆動力伝達可能に係合して前記基準部材及びベース部材に形成された第1ロッド挿通孔を挿通するように装着されるプルロッド部材、前記ベース部材に取付けられたシリンダ部材、前記シリンダ部材に進退可能に装着され前記プルロッド部材が挿入される出力部材、前記プルロッド部材とシリンダ部材と出力部材とに設けられ、出力部材の進退によりプルロッド部材と出力部材とを解除可能に結合するボールロック機構、前記ボールロック機構を介してプルロッド部材と出力部材とを結合し且つ前記対象物体をベース部材に引き付けるように出力部材を駆動する第1駆動手段を備えているため、次の効果が得られる。
【0029】
対象物体をベース部材に固定する際に、工具が不要になり、つまり従来のように複数のボルトを工具を用いて締める手作業が不必要になり、この対象物体の固定作業を自動化できるため、更に、対象物体をベース部材に固定する安定したクランプ力を得ることができ、対象物体を安定して確実に位置決め固定できるため、ベース部材に対する対象物体の交換を簡単化、迅速化することができる。更に、前記位置決め機構とそれに対応する固定機構とを同軸上に設けることができるため、これら両機構を全体的にコンパクトに配置して構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
なお、以下の実施例において、水平方向に位置決めするとは、水平方向の位置を決めることを意味し、鉛直方向に位置決めするとは、鉛直方向の位置を決めることを意味する。
【実施例1】
【0032】
図1〜
図4に示すように、パレット位置決め固定装置1(これが、「物体位置決め固定装置」に相当する。以下、位置決め固定装置という)は、ベース部材2の上に機械加工に供するワークを保持する為のワークパレット3(これが、「対象物体」に相当する。以下、パレットという)を水平方向と鉛直方向に位置決めして固定するものである。
【0033】
この位置決め固定装置1は、ベース部材2の上面に形成された鉛直方向に位置決めの為の基準座面4と、パレット3の下面に形成され基準座面4に当接可能な当接面5と、パレット3を水平方向に位置決め可能な1対の位置決め機構6と、パレット3をベース部材2に押圧して固定可能な1対の固定機構7及び1対の第2の固定機構8とを備えている。
【0034】
ベース部材2とパレット3は、夫々、正方形又は長方形の厚手の鋼製の平板部材で構成され、ベース部材2の上面のほぼ全域が平滑な基準座面4に形成され、パレット3の下面のほぼ全域が平滑な当接面5に形成されている。ベース部材2は、例えば工作機械のテーブル等の上に固定した状態にセットされる。パレット3には、図示外のクランプ装置やボルトにより1又は複数のワーク(図示略)が固定され、そのパレット3がベース部材2上に搬送され、水平方向と鉛直方向に位置決め固定されてから、パレット3上の1又は複数のワークに対して機械加工が施される。
【0035】
ベース部材2には、その対角関係にある1対の隅部の近傍部位に、基準座面4に開口する1対の嵌合孔10と、この1対の嵌合孔10の下端に連なる鉛直方向向きの1対の第1の第1ロッド挿通孔11とが形成され、その他の対角関係にある(上記1対の隅部とは異なる)1対の隅部の近傍部位に、1対の第2の第1ロッド挿通孔12が形成されている。1対の嵌合孔10に1対の位置決め機構6の基準部材20が装着されている。
【0036】
パレット3には、その対角関係にある1対の隅部の近傍部位に、当接面5に開口する1対の装着穴15と、この1対の装着穴15の上端に連なる鉛直方向向きの1対の第1の第2ロッド挿通孔16とが形成され、その他の対角関係にある(上記1対の隅部とは異なる)1対の隅部の近傍部位に、1対の第2の第2ロッド挿通孔17が形成され、各第2ロッド挿通孔16,17の上部に、頭部収容穴16a,17aが形成されている。1対の装着穴15に1対の位置決め機構6の環状係合部材25が装着されている。
【0037】
嵌合孔10は、第1ロッド挿通孔11よりも大径に且つ第1ロッド挿通孔11と同心状に形成され、装着穴15は、第2ロッド挿通孔16及び嵌合孔10よりも大径に且つ第2ロッド挿通孔16と同心状に形成されている。第1ロッド挿通孔11,12と第2ロッド挿通孔16,17は略同径に形成され、頭部収容穴16a,17aは、第2ロッド挿通孔16,17よりも大径に形成されている。
【0038】
位置決め機構6について説明する。
図1に示すように、1対の位置決め機構6は、水平方向へ相互に離隔した位置に配設され、
図2、
図3、
図5に示すように、各位置決め機構6は、ベース部材2に装着された基準部材20と、この基準部材20に係合可能にパレット3に装着された環状係合部材25とを備えている。
【0039】
基準部材20は、環状(筒状)に形成されて、上側(先端側)ほど小径化するテーパ係合面22が形成された係合凸部21と、この係合凸部21の下側(基端側)に係合凸部21よりも小径に形成されベース部材2の嵌合孔10に嵌合される嵌合筒部23と、係合凸部21の下端(基端)に形成され基準座面4に当接する基端当接面24とを有する。係合凸部21と嵌合筒部23は一体形成されている。
【0040】
係合凸部21の上端の外周部は断面円弧状に形成されている。テーパ係合面22は、周方向全域に亙って環状に形成されている。但し、周方向に間欠的に形成した複数のテーパ係合面としてもよい。嵌合筒部23は、基端当接面24を基準座面4に当接させた状態で嵌合孔10に圧入固定されている。但し、嵌合筒部23を嵌合孔10に圧入以外の固定手段で固定してもよい。尚、基端当接面24が基準座面4に当接した状態で、嵌合筒部23の下端と嵌合孔10の底面との間に小さな隙間が形成される。
【0041】
環状係合部材25は、パレット3の装着穴15に装着され、基準部材20のテーパ係合面22に密着状に係合可能なテーパ当接面26を有する。環状係合部材25は、その上端を装着穴15の上端壁面に当接させた状態で装着穴15に圧入固定されている。但し、環状係合部材25を装着穴15に圧入以外の固定手段で固定してもよい。尚、環状係合部材25の上端が装着穴15の上端壁面に当接した状態で、環状係合部材25の下端面は、パレット3の当接面5の高さ位置よりも少し上方に位置する。
【0042】
固定機構7(8)によりパレット3がベース部材2に押圧固定される際、環状係合部材25は径拡大方向に弾性変形可能に構成されている。そのために、環状係合部材25の下半部の外径は上半部の外径よりも少し小径に形成され、環状係合部材25の下半部の外周面と装着穴15の内周面との間に、環状係合部材25の径拡大方向への弾性変形を許容(促進)する為の環状隙間27が形成されている。
【0043】
固定機構7,8について説明する。
図1に示すように、1対の固定機構7は、1対の位置決め機構6に夫々付設され、1対の固定機構7、及び1対の固定機構8は、水平方向へ相互に離隔した位置に配設されている。
【0044】
図2、
図3、
図6に示すように、各固定機構7は、パレット3から下側(ベース部材2側)へ突出し且つパレット3に駆動力伝達可能に係合してベース部材2の基準部材20及び第1ロッド挿通孔11とパレット3の第2挿通孔16を挿通するように装着されるプルロッド部材30と、ベース部材2に取付けられたシリンダ部材31と、シリンダ部材31に上下方向へ進退可能に装着されプルロッド部材30が挿入される出力部材32と、プルロッド部材30とシリンダ部材31と出力部材32とに設けられ、出力部材32の進退によりプルロッド部材30と出力部材32とを解除可能に結合するボールロック機構33と、ボールロック機構33を介してプルロッド部材30と出力部材32とを結合し且つパレット3をベース部材2に引き付けるように出力部材32を下方へ駆動する第1駆動機構34と、ボールロック機構33を介して結合されたプルロッド部材30と出力部材32とを結合解除するように出力部材32を上方へ駆動する第2駆動機構35とを備えている。
【0045】
プルロッド部材30はベース部材2及びパレット3に着脱可能に構成されている。プルロッド部材30は、ベース部材2の上下方向厚さとパレット3の上下方向厚さの合計厚さよりも多少長く、且つその大部分が第1,第2ロッド挿通孔11,16よりも少し小径に形成され、プルロッド部材30の上端部に第2ロッド挿通孔16(即ち、プルロッド部材30の前記大部分)よりも大径の頭部30aが設けられている。その頭部30aが、パレット3の頭部収容穴16aに収容され、その頭部収容穴16aの底面部16bに係合して、プルロッド部材30がパレット3に駆動力伝達可能になり、この状態で、プルロッド部材30の下部がベース部材2の下方へ突出する。
【0046】
シリンダ部材31は、シリンダ本体40と、シリンダ本体40の下端部に内嵌状に螺合された下端壁部材41とを有する。シリンダ本体40は、シリンダ筒部40aと、シリンダ筒部40aの上端側に位置する上端壁部40bと、上端壁部40bの中央部分から上方へ突出する凸ネジ部40cとを有し、上端壁部40bと凸ネジ部40cには、プルロッド部材30よりも大径の鉛直方向向きのロッド差込孔40dが形成されている。
【0047】
ここで、ベース部材2には、1対の第1ロッド挿通孔11の下端に連なる1対のネジ穴13と、他の1対の第1ロッド挿通孔12の下端に連なる1対のネジ穴14が、夫々ベース部材2の下面に開口するように形成されている。そして、シリンダ本体40が、凸ネジ部40cをネジ穴13に螺合し、上端壁部40bをベース部材2の下面に当接させた状態で、ベース部材2に固定されている。
【0048】
出力部材32は、ピストン部32aと、ピストン部32aから上方へ延びる出力ロッド部32bと、出力ロッド部32bの上端部から上方へ延び且つ出力ロッド部32bよりも小径の出力筒部32cとを有し、この出力筒部32cに、プルロッド部材30の下端部が挿入されるロッド挿入穴32dが形成されている。ピストン部32aがシリンダ筒部40aに摺動自在に内嵌され、出力筒部32cが上端壁部40bのロッド差込孔40dに摺動自在に内嵌され、出力ロッド部32bの上端部が上端壁部40bの下端面に当接すると、出力部材32が上限位置になる。
【0049】
ボールロック機構33は、複数(例えば、2又は3個)のボール45(鋼球)と、出力筒部32cに形成され複数のボール45を夫々半径方向へ移動自在に保持する複数のボール保持孔46と、上端壁部40bの内周部に形成され複数のボール45を半径方向外側へ逃す為の環状逃し溝47と、プルロッド部材30の下端部に形成され半径方向内側へ移動する複数のボール45が係合する環状凹溝48とを有する。
【0050】
第1駆動機構34は、シリンダ部材31に収容された圧縮スプリング50(例えば、コイルバネや皿バネ)からなる。この圧縮スプリング50は、出力ロッド部32bに外装され、ピストン部32aと上端壁部40bとの間に装着されて、出力部材32を比較的強力な付勢力で下方へ付勢している。
【0051】
第2駆動機構35は、出力部材32を上方へ駆動可能な流体圧シリンダ55からなる。この流体圧シリンダ55は、ピストン部32aと、このピストン部32aとシリンダ部材31とで囲まれた流体圧作動室56とを有し、この流体圧作動室56に所定圧以上の流体圧が供給されると、圧縮スプリング50の付勢力に抗して出力部材32が上方へ駆動される。尚、下端壁部材41に流体圧ポート57が形成され、ピストン部32aとシリンダ筒部40aとの間、下端壁部材41とシリンダ筒部40aとの間は、夫々環状シール58a,58bによりシールされている。
【0052】
尚、
図4に示すように、各固定機構8については、前記の固定機構7と比べると、プルロッド部材30が挿通する第1,第2挿通孔12,17が異なる以外は、固定機構7と同一の構成であるため、固定機構7と基本的に同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
次に、位置決め固定装置1の作用、効果について説明する。
ベース部材2は工作機械のテーブル等の上に予めセットして固定されている。ワーク準備ステージにおいてパレット3に1又は複数のワークを取り付けた状態において、パレット3をベース部材2の上方へ搬送して、ベース部材2の上面の基準座面4に近接状に載置する。このとき、パレット3側の1対の環状係合部材25が、ベース部材2側の1対の基準部材20の係合凸部21に軽く係合している。
【0054】
その後、4つの固定機構7,8によりパレット3をベース部材2に押圧し固定する。すると、パレット3の当接面5がベース部材2の基準座面4に密着状に当接して、パレット3がベース部材2に対して鉛直方向に位置決めされると共に、その際、1対の環状係合部材25が径拡大側へ弾性変形して、それらのテーパ当接面26が1対の基準部材20のテーパ係合面22に密着状に係合して固定され、依って、パレット3がベース部材2に対して水平方向に位置決めされる。
【0055】
固定機構7(8)においては、プルロッド部材30がベース部材2、パレット3から取外された状態で、パレット3を搬送してベース部材2の基準座面4に載置する。その後、
図2に示すように、第2駆動機構35(流体圧シリンダ55)により出力部材32を上方へ駆動して上限位置に移動させる。すると、ボールロック機構33において、複数のボール45と環状逃し溝47の高さ位置が一致した状態になる。この状態で、プルロッド部材30をパレット3の上側から第1,第2挿通孔11,16に挿通させるように装着する。
【0056】
すると、プルロッド部材30が出力部材32の出力筒部32cに挿入され、そこで、複数のボール45が環状逃し溝47に退避して、プルロッド部材30の出力筒部32cへの挿入が完了し、プルロッド部材30の頭部30aが頭部収容穴16aに収容され底面部16bに係合して、プルロッド部材30の環状凹溝48の上部の高さ位置が、複数のボール45の高さ位置になる。次に、第2駆動機構35による出力部材32の駆動を解除する。
【0057】
すると、
図3に示すように、第1駆動機構34(圧縮スプリング50)により、出力部材32が下方へ駆動される。出力部材32と共に複数のボール45が下方へ駆動され、そこで、複数のボール45が環状逃し溝47よりも下方へ移動し、シリンダ本体40のロッド差込孔40dの内周壁により径方向内側へ押動されて、プルロッド部材30の環状凹溝48に係合する。最終的に、複数のボール45が環状凹溝48の下端部に係合し、出力部材32の駆動力が複数のボール45を介してプルロッド部材30に伝達され、このプルロッド部材30によりパレット3がベース部材2に強力に引き付けられ固定される。
【0058】
パレット3をベース部材2から固定解除する場合には、再度、第2駆動機構35(流体圧シリンダ55)により出力部材32を上方へ駆動して上限位置に移動させる。すると、複数のボール45と環状逃し溝47の高さ位置が一致するため、プルロッド部材30を装着する場合と同様に、複数のボール45が環状逃し溝47に退避して、プルロッド部材30をパレット3の上側へ引き抜くことができる。
【0059】
以上説明した位置決め固定装置1によれば、先ず、位置決め機構6において、各基準部材20の嵌合筒部23をベース部材2の嵌合孔10に嵌合固定することで、基準部材20をベース部材2に固定する構造にし、嵌合筒部23は係合凸部21よりも小さな外径を有するため、基準部材20をベース部材2に固定する為のフランジ部とそのフランジ部を固定する為の複数のボルトを設ける必要もないから、基準部材20を簡単化・小型化して製作費(材料費、加工費、組付け費)を大幅に低減することができる。しかも、フランジ部がないので、基準部材20をベース部材2に配置する際の自由度も大きくなる。
【0060】
基準部材20において、係合凸部21の下端に基端当接面24を形成し、この基端当接面24を基準座面4に当接させた構造にしたため、基準座面4に対する係合凸部21の高さ方向の位置を精度よく設定することができる。そのため、パレット3を水平方向へ位置決めする位置決め精度を高めることができる。また、環状係合部材25と装着穴15の内周面の間に形成した簡単な構成の環状隙間27を介して環状係合部材25の弾性変形を促進することができるため、そのテーパ当接面26を係合凸部21のテーパ係合面22に確実に密着状に係合させて固定することができる。
【0061】
次に、固定機構7においては、そのプルロッド部材30が、基準部材20及びベース部材2に形成された第1ロッド挿通孔11、及びパレット3に形成された第2ロッド挿通孔16を挿通するように装着され、第1駆動機構34により、ボールロック機構33を介してプルロッド部材30と出力部材32とを結合し且つパレット3をベース部材2に引き付けるように出力部材32を駆動して、パレット3をベース部材2に固定する構成としたので、先ず、位置決め機構6と固定機構7とを同軸上に配設すること、即ち、これら両機構6,7を全体的にコンパクトに配置して構成することができる。
【0062】
しかも、パレット3をベース部材2に固定する場合、及び固定解除する場合には、従来のようにボルトを工具を用いて締めたり弛めたりする手作業が不必要になり、このパレット3の固定作業と固定解除作業を自動化できる。更に、位置決め機構6と固定機構7とを同軸上に配設することで、位置決め機構6がより適正に機能するように、パレット3にそれをベース部材2に引き付ける力を付与することができる。また、パレット3の固定作業の自動化により、パレット3をベース部材2に固定する安定したクランプ力を得ることができ、パレット3を安定して確実に位置決め固定できる。従って、ベース部材2に対するパレット3の交換を簡単化、迅速化することができる。
【0063】
次に、実施例1を部分的に変更した別実施例について説明する。但し、別実施例の構成について、前記実施例の構成に対してサイズや形状が多少異なる場合でも、前記実施例と基本的に同じ構成には同一符号を付して、また、前記実施例と類似の構成には類似符号を付して、適宜詳細な説明を省略する。
【実施例2】
【0064】
図7、
図8に示すように、実施例2の位置決め固定装置1Aにおいて、固定機構7Aは、第2駆動機構35によりボールロック機構33を介して結合されたプルロッド部材30と出力部材32Aとを結合解除するように出力部材32Aを上方へ駆動する際に、プルロッド部材30を上方へ押出す押出し機構60を備えている。
【0065】
出力部材32Aは、ピストン部32Aa、出力ロッド部32Ab、出力筒部32Acを有し、ピストン部32Aaと出力ロッド部32Abに、出力筒部32Acのロッド挿入穴32Adに連通する鉛直方向向きの挿通孔32Aeが形成され、ピストン部32Aaに、挿通孔32Aeの下端に連なるネジ穴32Afとが形成されている。
【0066】
押出し機構60は押出しロッド61を有し、その押出しロッド61が挿通孔32Aeに下側から挿通され、押出しロッド61の下端側に形成された大径ネジ部61aが、ピストン部32Aaのネジ穴32Afに螺合され固定されている。この押出しロッド61の上端部が、出力筒部32Acのロッド挿入穴32Ad内へ突出して、プルロッド部材30の下端部と当接可能になっている。
【0067】
図7に示すように、パレット3を搬送してベース部材2の基準座面4に載置し、第2駆動機構35により出力部材32Aを上方へ駆動して上限位置に移動させた状態で、プルロッド部材30をパレット3の上側から第1,第2挿通孔11,16に挿通させるように装着する。すると、プルロッド部材30の下端部が押出しロッド61の上端部に当接して、プルロッド部材30はパレット3よりも少し突出した状態にセットされ、その後、第2駆動機構35による出力部材32Aの駆動を解除する。
【0068】
すると、
図8に示すように、第1駆動機構34により、出力部材32Aが下方へ駆動され、先ずは、出力部材32A(押出しロッド61)と共にプルロッド部材30が下降し、ここで、複数のボール45が、シリンダ本体40のロッド差込孔40dの内周壁により径方向内側へ押動されて、プルロッド部材30の環状凹溝48に係合する。その後、プルロッド部材30の頭部30aが頭部収容穴16aに収容され底面部16bに係合して、プルロッド部材30は下降停止するが、出力部材32Aは更に下降する。こうして、最終的に、複数のボール45が環状凹溝48の下端部に係合し、プルロッド部材30によりパレット3がベース部材2に強力に引き付けられ固定される。
【0069】
パレット3をベース部材2から固定解除する場合には、再度、第2駆動機構35(流体圧シリンダ55)により出力部材32Aを上方へ駆動して上限位置に移動させる。その際、前記とは逆に、出力部材32A(押出しロッド61)が上昇し、プルロッド部材30の下端部が押出しロッド61の上端部に当接して、プルロッド部材30も上昇し、最終的に、プルロッド部材30はパレット3よりも少し突出した状態になる(
図7参照)。従って、プルロッド部材30を容易に取外すことが可能になる。
【0070】
尚、押出しロッド61を省略し、この押出しロッド61の上端部に相当する部分を、例えば、実施例1の出力部材32において、ロッド挿入穴32dの深さを調節して、そのロッド挿入穴32dの底面部により構成してもよい。即ち、押出し機構の構成を簡単化できる。また、プルロッド部材30の押出し量を大きくしたい場合、出力部材32Aに対して押出しロッド61を摺動自在に装着し、その押出しロッド61が流体圧シリンダ55の流体圧を受けて更に上方へ突出し得るように構成してもよい。
【実施例3】
【0071】
図9に示すように、実施例3の位置決め固定装置1Bにおいて、固定機構7Bの第1駆動機構34Bは、前記実施例のような圧縮スプリング50ではなく、シリンダ部材31Bと出力部材32Bとでシリンダ部材31B内に形成され且つ圧縮ガス(例えば、圧縮窒素ガス)が充填されたガス作動室66を有するガススプリング65からなる。
【0072】
シリンダ部材31Bは、シリンダ本体40B、下端壁部材41Bを有し、シリンダ本体40Bは、実施例1のシリンダ本体40よりも短い長さに形成され、下端壁部材41Bの中心部には鉛直方向向きの貫通孔41Baが形成されている。出力部材32Bは、ピストン部32Ba、出力ロッド部32Bb、ロッド挿入穴32Bdを形成する出力筒部32Bcを有し、更に、ピストン部32Baから下方へ延びて下端壁部材41Bの貫通孔41Baに摺動自在に内嵌された基端軸状部32Beを有する。ガススプリング65のガス作動室66はピストン部32Baの上側に形成され、出力筒部32Bcとシリンダ本体40Bの上端壁部40Bbとの間、基端軸状部32Beと下端壁部材41Bとの間は、夫々環状シール68a,68bによりシールされている。
【0073】
このガス作動室66に外部ガス圧供給源(図示略)から圧縮ガスを充填(補充)する為のガス通路67が、出力部材32Bのピストン部32Ba及び基端軸状部32Beに形成され、基端軸状部32Beの下端部におけるガス通路67には、ガス作動室66内の圧縮ガスを封止し且つ外部から圧縮ガスを供給可能な封止弁部材67aが装着されている。尚、下端壁部材41Bには、貫通孔41Baの形成に悪影響を与えない部位に流体圧ポート57Bが形成されている。ガススプリング65により、強力な固定力を維持して、第1駆動機構34と共に固定機構7Bの前後長を小型化できる。
【実施例4】
【0074】
図10に示すように、実施例4の位置決め固定装置1Cにおいて、固定機構7Cは、実施例1の第2駆動機構35を省略し、ボールロック機構33を介して結合されたプルロッド部材30と出力部材32とを、手作業により結合解除するように出力部材32を上方移動させ得るようにしている。
【0075】
シリンダ部材31Cは、シリンダ本体40、下端壁部材41Cを有し、下端壁部材41Cには、実施例1の流体圧ポート57を省略し、その代わりに、鉛直方向向きのネジ孔70が貫通状に形成されている。また、実施例1の環状シール58a,58bも省略されている。このネジ孔70に押しボルト71が螺合され、この押しボルト71の上端部が出力部材32の下端部に当接している。押しボルト71の下部には工具が係合する角穴71a(例えば、6角穴)が形成されている。
【0076】
つまり、この固定機構7Cによれば、工具を用いて押しボルト71を回動させて、出力部位32を上下方向へ移動させ、固定作業、並びに固定解除作業を行うことができる。こうした作業が手作業になるものの、第1駆動機構34により、パレット3をベース部材2に固定する安定したクランプ力を得ることができる。また、第2駆動機構35を省略することで、固定機構7Cを簡単化できる。
【実施例5】
【0077】
図11に示すように、実施例5の位置決め固定装置1Dにおいて、固定機構7Dは、実施例1の第2駆動機構35を省略し、ボールロック機構33を介して結合されたプルロッド部材30と出力部材32とを、外部の駆動手段(例えば、流体圧シリンダ)により結合解除するように出力部材32を上方へ駆動し得るようにしている。
【0078】
シリンダ部材31Dは、シリンダ本体40、下端壁部材41Dを有し、下端壁部材41Dには、実施例1の流体圧ポート57を省略し、その代わりに、鉛直方向向きの挿通孔75が貫通状に形成されている。また、実施例1の環状シール58a,58bも省略されている。出力部材32Dは、ピストン部32a、出力ロッド部32b、ロッド挿入穴32dを形成する出力筒部32cを有し、更に、ピストン部32aから下方へ延びる被操作ロッド部32Deを有し、この被操作ロッド部32Deが、下端壁部材41Dの挿通孔75を挿通し、下端壁部材41Dの下方へ突出している。
【0079】
この固定機構7Dによれば、外部の駆動手段により、出力部材32Dを上方へ駆動し、ボールロック機構33を介して結合されたプルロッド部材30と出力部材32Dとを結合解除することができ、また、外部の駆動手段による駆動を解除して、第1駆動機構34により出力部材32Dを下方へ駆動して、ボールロック機構33を介してプルロッド部材30と出力部材32Dとを結合し且つパレット3をベース部材2に引き付けることができる。外部の駆動手段を利用して、パレット3の固定作業/固定解除作業の自動化を図り、第2駆動機構35を省略することで、固定機構7Dを簡単化できる。
【実施例6】
【0080】
図12に示すように、実施例6の位置決め固定装置1Eにおいて、固定機構7Eは、パレット3に装備される流体圧機器(例えば、ワークをクランプするクランプ装置)に流体圧を供給するために流体通路80を備え、その流体通路80は、プルロッド部材30Eに形成された第1流体通路部81と、この第1流体通路部81に連通するように出力部材32Eに形成された第2流体通路部82とを有する。尚、プルロッド部材30Eの下端部に、プルロッド部材30Eとシリンダ本体40との間をシールする環状シール83が装着されている。
【0081】
尚、この固定機構7Eは、実施例5の固定機構7D(
図11参照)を元に構成されている。つまり、実施例5の固定機構7Dと同様の効果を奏すると共に、固定機構7Eを利用して、流体通路80を形成し、その流体通路80を介して外部の流体圧供給源からパレット3に装備される流体圧機器に流体圧を整然と供給することができる。尚、符号84はクランプ装置から延びる流体圧ホース等が接続されるカプラーであり、このカプラー84が頭部収容穴16Eaに内嵌状に螺合されている。そのために、頭部収容穴16Eaは実施例1の頭部収容穴16aよりも大径に形成されている。
【実施例7】
【0082】
図13に示すように、実施例7の位置決め固定装置1Fにおいて、固定機構7Fは、パレット3に装備される流体圧機器(例えば、クランプ装置)に流体圧を供給するために流体通路85を備え、その流体通路85は、プルロッド部材30Fに形成された第1流体通路部86を有し、この第1流体通路部86が、ベース部材2とパレット3に夫々形成された第3,第4流体通路部87,88に連通するように構成されている。
【0083】
尚、第1,第3流体通路部86,87の接続部の上下近傍において、ベース部材2には、ベース部材2とプルロッド部材30Fとの間をシールする環状シール89a,89bが装着され、第1,第4流体通路部86,88の接続部の上下近傍において、パレット3には、パレット3とプルロッド部材30Fとの間をシールする環状シール89c,89dが装着されている。
【0084】
固定機構7Fを利用して、流体通路85(第1流体通路部86)を形成し、その流体通路85と、ベース部材2とパレット3に形成された第3,第4流体通路部87,88を介して、外部の流体圧供給源からパレット3に装備される流体圧機器に流体圧を整然と供給することができる。
【0085】
また、この固定機構7Fにおいては、第1,第2駆動機構34F,35Fが、出力部材32Fを上下両方向へ駆動可能な復動型の流体圧シリンダ90により構成されている。この流体圧シリンダ90を構成するために、出力部材32Fのピストン部32Faとシリンダ本体40Fとの間、出力部材32Fの出力ロッド部32Fbとシリンダ本体40Fとの間、シリンダ本体40Fと下端壁部41Fとの間を夫々シールする環状シール91a,91b,91cが装着されている。
【実施例8】
【0086】
図14〜
図16に示すように、実施例8の位置決め固定装置1Gにおいて、固定機構7Gのボールロック機構33Gは、パレット3をベース部材2に引き付ける際に出力部材32Gの駆動力を増力してプルロッド部材30に伝達する増力機構92(
図16参照)を有する。この増力機構92を構成するために、固定装置7Gのシリンダ部材31Gと出力部材32Gが実施例1と多少異なる構造になっている。
【0087】
シリンダ部材31Gは、シリンダ本体40G、下端壁部材41を有し、シリンダ本体40Gは、シリンダ筒部40Ga、上端壁部40Gb、凸ネジ部40Gcを有し、上端壁部40Gbと凸ネジ部40Gcにロッド差込孔40Gdが形成され、このロッド差込孔40Gdは、プルロッド部材30よりも少し大径に形成されている。このシリンダ部材31G(シリンダ筒部40Ga)は、実施例1のシリンダ部材31よりも小径に構成されている。
【0088】
シリンダ本体40Gは、更に、上端壁部40Gbから下方へ突出する筒部40Geを有し、その内部がロッド差込孔40Gdに連通し、この筒部40Geにプルロッド部材30の下端部が摺動自在に内嵌される。第1駆動機構34Gは、実施例1の圧縮スプリング50よりも小型の圧縮スプリング50Gからなり、故に、前記のように、シリンダ部材31Gを小径にできて、増力機構92と協働して所要のクランプ力を得ることができる。
【0089】
出力部材32Gは、ピストン部32a、出力ロッド部32Gbを有し、出力ロッド部32Gbの上部に出力筒部32Gcが形成され、この出力筒部32Gcがシリンダ本体40Gの筒部40Geに摺動自在に外嵌され、出力筒部32Gcがシリンダ本体40Gの上端壁部40Gbに当接すると、出力部材32Gが上限位置になる。
【0090】
ボールロック機構33Gは、複数(例えば、2又は3個)のボール45G(鋼球)、シリンダ本体40Gの筒部40Geに形成され複数のボール45Gを夫々半径方向へ移動自在に保持する複数のボール保持孔46G、出力部材32Gの出力筒部32Gcの内周部に形成され複数のボール45Gを半径方向外側へ逃す為の環状逃し溝47G、及びプルロッド部材30の環状凹溝48を有する。
【0091】
この固定機構7Gにおいては、
図14に示すように、第2駆動機構35(流体圧シリンダ55)により出力部材32Gを上方へ駆動して上限位置に移動させ、複数のボール45Gと環状逃し溝47Gの高さ位置を一致させた状態で、プルロッド部材30をパレット3の上側から第1,第2挿通孔11,16に挿通させるように装着し、その後、第2駆動機構35による出力部材32Gの駆動を解除する。
【0092】
すると、
図15、
図16に示すように、第1駆動機構34G(圧縮スプリング50G)により、出力部材32Gが下方へ駆動され、即ち、環状逃し溝47Gも下方移動する。すると、出力筒部32Gcの環状逃し溝47Gの上端側に形成された上方程小径化するテーパー押動部47Gaにより、複数のボール45Gが径方向内側へ押動されて、プルロッド部材30の環状凹溝48に係合する。最終的に、複数のボール45がテーパー押動部47Gaと、プルロッド部材32の環状凹溝48の下端部に形成された下方程大径化するテーパー受部48aとに係合し、出力部材32Gの駆動力が複数のボール45Gを介してプルロッド部材30に伝達される。
【0093】
ここで、増力機構92は、前記テーパー押動部47Gaとテーパー受部48aとに構成されている。即ち、テーパー押動部47Gaとテーパー受部48aとが協働して、所謂楔機能により、パレット3をベース部材2に引き付ける際に出力部材32Gの駆動力が増力されプルロッド部材30に伝達される。
【実施例9】
【0094】
図17に示すように、実施例9の位置決め固定装置1Hにおいては、固定機構7Hのシリンダ部材31Hの構造、及びベース部材2への取付け構造を変更したものである。このシリンダ部材31Hは、シリンダ本体40H、下端壁部材41を有し、シリンダ本体40Hは、シリンダ筒部40Ha、上端壁部40Hbを有し、実施例1の凸ネジ部40cは省略され、上端壁部40Hbにロッド差込孔40Hdが形成されている。
【0095】
シリンダ本体40Hは、更に、上端壁部40Hbに設けられたフランジ部40Hcを有し、このフランジ部40Hcがベース部材2の下面に当接した状態で複数のボルト95により固定されている。ベース部材2には、実施例1のネジ穴13は省略され、第1ロッド挿通孔11Hは、ベース部材2の下面に開口するように形成されている。
【実施例10】
【0096】
図18に示すように、実施例10の位置決め固定装置1Iにおいては、実施例9同様、固定機構7Iのシリンダ部材31Iの構造、及びベース部材2への取付け構造を変更したものである。このシリンダ部材31Iは、シリンダ本体40I、下端壁部材41を有し、シリンダ本体40Iは、シリンダ筒部40Ia、上端壁部40Ibを有し、実施例1の凸ネジ部40は省略され、上端壁部40Ibにロッド差込孔40Idが形成されている。
【0097】
ベース部材2には、実施例1のネジ穴13は省略され、その代わりに、シリンダ取付穴13Iがベース部材2の下面に開口するように形成され、第1ロッド挿通穴11Iは、シリンダ取付穴13Iの上端に連なるように形成され、短くなっている。シリンダ部材31I(シリンダ本体40I)がシリンダ取付穴13Iに下側から挿入され、シリンダ本体40Iの上端壁部40Ibが、シリンダ取付穴13Iの上端壁面に当接した状態で、ベース部材2の上側から挿入された複数のボルト96により固定されている。
【0098】
こうして、シリンダ部材31Iがベース部材2の下方へ突出する量を抑えるように、シリンダ部材31Iをベース部材2にコンパクトに取付けることができ、しかも、固定機構7Iのプルロッド部材30Iの長さを短くすることができる。尚、複数のボルト96の頭部は、ベース部材2に形成された複数のボルト頭部収容穴96aに収容され、ベース部材2の上面よりも上方へ突出しないようにしている。
【0099】
尚、実施例2〜10では、実施例1の固定機構7を変更した構成を示しているが、実施例1の第2の固定機構8を同様に変更してもよい。
【0100】
尚、前記実施例1〜10を次のように変更してもよい。
(1)
図19に示すように、ベース部材2に、基準座面4に開口する装着穴15Jと、この装着穴15Jの下端に連なる第1ロッド挿通孔11Jが形成され、パレット3に、当接面5に開口する嵌合孔10Jと、この嵌合孔10Jの上端に連なる第2ロッド挿通孔16Jが形成され、位置決め機構6Jは、嵌合孔10Jに装着された基準部材20Jと、装着穴15Jに装着された環状係合部材25Jを有する。
【0101】
つまり、基準部材20Jは、下側ほど小径化するテーパ係合面22が形成された係合凸部21、係合凸部21の上側に係合凸部21よりも小径に形成されパレット3に形成された嵌合孔10Jに嵌合される嵌合筒部23、係合凸部21の上端に形成され当接面5に当接する基端当接面24を有し、環状係合部材25Jは、ベース部材2に形成された装着穴15Jに装着され、テーパ係合面22に密着状に係合可能なテーパ当接面26を有する。
【0102】
(2)図示省略するが、位置決め機構6において、1対の基準部材20の一方が、1対の基準部材20の軸心同士を結ぶ中心線の方向へのみ僅かに移動自在にベース部材2(又はパレット3)に装着され、或いは、1対の環状係合材25の一方が、1対の環状係合材25の軸心同士を結ぶ中心線の方向へのみ僅かに移動自在にパレット3(又はベース部材2)に装着されている。
【0103】
1対の基準部材20の軸心間距離と1対の環状係合部材25の軸心間距離に誤差がある場合でも、1対の環状係合部材25が1対の基準部材20に係合する際に、一方の基準部材20或いは環状係合部材25が前記中心線と平行な方向に自動的に移動してから固定されるので、基準部材20に対する環状係合部材25の位置ズレ(ピッチ間公差)を吸収することができる。故に、1対の基準部材20或いは1対の環状係合部材25の軸心間距離を高精度に設定せずとも、パレット3の水平方向への位置決め精度が高く維持される。