(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のガスタービンエンジン(20)であって、前記環状ベアリング支持ダンパ(60、160)は、前記ローターベアリング(56)に外接する3パラメータ装置(144)である、ガスタービンエンジン。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0015]以下の詳細な説明は、本来的に単なる例示であり、本発明を制限、あるは本発明の用途や使用を制限することを意図するものではない。さらに、上述の背景または以下の詳細な説明で示されるいかなる理論にも結び付けられる意図はない。
【0011】
[0016]以下は、環状支持ダンパの例示的な実施形態を説明し、これは、多軸3パラメータ装置として機能し、複数の自由度、より具体的には、支持ダンパ内に入れ子にされるベアリングに対して全ての半径方向において、実質的に線形の減衰および剛性プロファイルを提供する。有利には、環状ベアリング支持ダンパは受動的液圧装置であり、これは、能動的な潤滑供給および配管を必要としない。さらに、環状ベアリング支持ダンパは、非常に小型で軽量である。これらの理由のため、環状ベアリング支持ダンパの実施形態は、特にガスタービンエンジン内での配備に好適であり、以下に説明される。この好ましい用途にも関わらず、本明細書で説明される環状ベアリング支持ダンパの実施形態は、いかなる意味でも特定の用途での使用に限定されず、ローターのダイナミクスおよびローターアセンブリの中心線制御を最適化するために、制御され、ベアリング支持位置において線形のベアリング剛性および減衰特性が望まれるような任意の回転機械内で使用できる。具体例として、環状ベアリング支持ダンパの実施形態は、ターボ過給機のような他のタイプのタービン機械内での使用に好適である。
【0012】
[0017]
図1は、例示的な実施形態によるガスタービンエンジン(GTE)20の機能的な概略図である。例として、GTE20は、エンジンケース22、吸気セクション24、コンプレッサセクション26、燃焼セクション28、タービンセクション30、および排気セクション32を含む3スプールターボファンエンジンとして
図1に示されている。吸気セクション24は、ファンケース36内に取り付けられるファン34を含む。コンプレッサセクション26は、1つ以上のコンプレッサ(たとえば、中間圧力(IP)コンプレッサ38および高圧力(HP)コンプレッサ40)を含み、タービンセクション30は、軸方向流れに直列に配置される1つ以上のタービン(たとえあば、HPタービン42、およびIPタービン44、および低圧力(LP)タービン46)を含む。HPコンプレッサ40およびHPタービン42は、HPシャフトまたはスプール48の対向する端部上に取り付けられる。IPコンプレッサ38およびIPタービン44は、IPスプール50の対向する端部に取り付けられる。ファン34およびLPタービン46は、LPスプール52の対向する端部に取り付けられる。LPスプール52、IPスプール、およびHPスプール48は同軸である。すなわち、LPスプール52は、IPスプールを通って提供される長手方向チャネルを通って延びるようにすることができ、IPスプール50はHPスプール48を通して提供される長手方向チャネルを通って延びるようにすることができる。複数のローターベアリング56は、LPスプール52、IPスプール50、およびHPスプール48の周りに様々な位置で配置され、エンジンの動作中に、スプール48、50、52の高速回転を促進する。特定の構成に限定されないが、ローターベアリング56は、それぞれ、典型的には、ボールベアリングまたはローラーベアリングのような回転要素ベアリングの形態をとり、これは、外側スリーブまたはカートリッジ内に配置されてもされなくてもよい。ベアリング56は、様々な内側壁または非回転構造要素あるいはGTE20内に提供される構造に取り付けられ、これらは、部分的にまた一般的に
図1で符号57により示される。エンジンケース22とともにそのような非回転構造要素は、ここでは集合的に「エンジンハウジング」と称される。スプール48、50、52、およびそこに取り付けられる、駆動される要素は、ここでは集合的に「ローターアセンブリ」と称される。
【0013】
[0018]
図1に示され、本稿で説明されるように、GTE20は例として提供される。本発明の実施形態は、様々なタイプのガスタービンエンジンに等しく適用できることを理解できるであろう。これには、限定するわけではないが、他のタイプのターボファン、ターボプロップ、ターボシャフト、ターボジェットエンジンなどが含まれる。さらに、GTE20の具体的な構造は、異なる実施形態により様々な構造となる。たとえば、いくつかの実施形態において、開放ローター構成を採用でき、この場合、ファン34は外側ファンケース内に取り付けられない。他の実施形態において、GTE20は、軸方向コンプレッサの代わりに半径方向に配置される(遠心性の)コンプレッサを採用することができる。ローターベアリング56の数、配置、およびタイプは、当然にGTE20の異なる実施形態において変化し、たとえばGTE20内に含まれるスプールの数などの様々な設計パラ−メタに応じて変化する。以下に主として航空機に搭載されるものとして説明されるが、GTE20は、特定のプラットフォームに搭載されるように限定されず、他のタイプの車両(たとえば、船舶、地上車両、戦車など)上に搭載することもでき、補助的なパワーユニット内、または工業用発電機内に含まれるようにすることもできる。
【0014】
[0019]GTE20の動作中、空気は吸気セクション24内に引き寄せられ、吸気ファン34により加速される。加速された空気の一部は、前方スラストを生成するために、ファンケース36とエンジンカウルとの間に配置されるバイパスセクションを通って導かれる。ファン34から排気された空気の残りの部分は、コンプレッサセクション26内に導かれ、IPコンプレッサ38およびHPコンプレッサ40により圧縮される。圧縮された空気は、その後、燃焼領域28内に流れ、ここで空気は燃料と混合され、複数の燃焼器(
図1には1つだけ示されている)により燃焼される。燃焼した空気は急激に膨張し、タービンセクション30を通って流れて、それによりタービン42、44、46を回転させる。タービン42、44、46の回転(および、それゆえスプール48、50、52の回転)は、それぞれHPコンプレッサ40、IPコンプレッサ38、およびファン34の回転を駆動する。最後に、タービンセクション30を通過した後、空気は、排気セクション32に取り付けられる排気ノズル58を通って排気され、追加の前方スラストを提供する。
【0015】
[0020]ローターの不均衡、ベアリングの不完全性等により、スプール48、50、52の回転中に振動が生成されて、ローターベアリング、エンジンハウジングを通って伝達され、最終的に航空機の胴体に伝達される。上述したように、回転要素の振動は、振動を客室に伝達されることがあり、乗客の快適さを損ない、エンジンの性能を低下させ、ローターベアリングおよび他のエンジン要素の動作寿命を制限する。それゆえ、ローターベアリング56からエンジンハウジングへの振動とともに、ローター要素の振動を最小化するために、GTE20は、さらに、少なくとも1つのローターベアリング56の周りに配置される少なくとも1つの環状ダンパベアリング支持を備える。従来のバネ中心決めスクイーズフィルムダンパと異なり、環状ダンパベアリング支持は、GTE20の動作範囲にわたって実質的に線形の減衰および剛性プロファイルを提供する、受動的な液圧装置を提供する。環状ベアリング支持ダンパの第1の例は、
図2−7とともに以下で説明され、環状ベアリング支持ダンパの第2の例は、
図8、9とともに以下で説明される。
【0016】
[0021]
図2は、本発明の例示的な実施形態による環状ベアリング支持ダンパ60を示す斜視図である。環状ベアリング支持ダンパ60は、環状ハウジングアセンブリ62および中心決めバネ64を含む。
図2に示されるように、中心決めバネ64は、浮遊端部66および対向する固定端部68を備える管状バネケージ(一般に「リスかご」と称される)の形態をとる。軸方向に延びる多数の可撓性ビーム70は、浮遊端部66を固定端部68に接続する。GET20(
図1)内に取り付けられる場合、固定端部68は、エンジンハウジング内に含まれる取り付け構造に固定または他の方法で取り付けられる。たとえば、固定端部68は、複数の開口72を含むように機械加工することができ、開口72が複数のボルトまたは他の固定具(図示せず)を受け入れ、固定端部68をガスタービンエンジン内の内側壁に取り付ける。可撓性ビーム70は、中心決めバネ64に高い程度の軸方向剛性を与え、一方で、バネ64が半径方向に偏向するのを許容し、エンジンの動作中に固定端部68と浮遊端部66との間の相対運動を可能にする。図示の例において、可撓性ビーム70は、概ね3時および9時の位置にグループ化され、それぞれが矩形の断面形状を備え、中心決めバネ64に、水平方向よりも垂直方向により大きな剛性を与える。中心決めバネ64は、従来のバネ中心決めされるスクイーズフィルムダンパ内で使用される中心決めバネに類似するものとすることができ、また、いくつかの実施形態においては、中心決めバネ64は、以下でより詳細に説明されるように、第2機械加工により容易に入手できるスクイーズフィルムダンパの中心決めバネから形成することができる。
【0017】
[0022]固定端部68と対照的に、中心決めバネ64の浮遊端部66は、静的なエンジン構造に直接的には取り付けられず、支持ダンパ60(
図2ではハウジングアセンブリ62により隠れており、
図3、5、6とともに以下で説明する)を含む円周方向に隔てられたダンパピストンのアレイに固定的に連結される。中心決めバネ64の浮遊端部66は、
図1に全体的に示されるベアリング56の1つのようなローターベアリングを係合的に受け入れるようにサイズおよび形状が決められる。組み立て中、ローターベアリングの最外要素(たとえば外側リング)の外側周縁表面が浮遊端部66の内側周縁表面に接触するように、ローターベアリングは、浮遊端部66により画定される円筒形開口部内に係合的に挿入される。ローターベアリングは、任意の捕獲方法または手段を用いて、浮遊端部66内に保持されるようにすることができ、たとえば以下で説明されるタイプの熱嵌合技術を用いることができる。明確さのために
図2には示されていないが、少なくとも1つのローターシャフトまたはスプール(たとえば、
図1に示されるスプール48、58、52)は、中心決めバネ64の長手方向チャネルを通って延び、ベアリング支持ダンパ60を通って延び、また、浮遊端部66内に入れ子にされるローターベアリングを通って延びる。ローターベアリングは、ベアリング支持ダンパ60を通って延びるスプール(または同軸スプール)を支持する。中心決めバネ64の半径方向のコンプライアンスのため、ローターベアリングは、エンジンハウジング内でローターベアリングおよびローターアセンブリとともに半径方向に移動することができる。中心決めバネ64は、浮遊端部66を弾性的にバイアスし、それゆえ、ローターベアリングおよびローターアセンブリは、半径方向の変位の後にエンジンの中心位置に戻り、エンジンの動作中にローターアセンブリの最適な位置決めを維持するのを助ける。
【0018】
[0023]支持ダンパ60がガスタービンエンジン内に搭載される場合、環状ハウジングアセンブリ62は、エンジンハウジング内に含まれる内部静的構造に取り付けられる。図示の例において、複数の開口76がハウジングアセンブリ62の半径面に提供され、ハウジングアセンブリ62が、ガスタービンエンジン内に設けられる対応する取り付け構造(たとえば係合内壁)にボルト固定されるようにすることができる。注目すべきことに、限られた数の開口76は、ガスタービンエンジンにこのような方法で取り付けることができ、一方、他の開口76は、単に重量軽減の目的のために、環状ハウジングアセンブリ62に設けることができる。環状ハウジングアセンブリ62の内側周壁と中心決めバネ64の浮遊端部66の外側環状表面との間に、比較的に小さな環状クリアランスまたは半径方向ギャップ78が設けられる。半径ギャップ78は、浮遊端部66の半径方向運動を可能にし、それゆえ、浮遊端部66により保持される図示しないベアリングの、環状ハウジングアセンブリ62および静的エンジン構造またはハウジングに対する半径方向の運動を可能にする。ギャップ78の幅は、比較的に狭いものとすることができるが、環状ベアリング支持ダンパ60により提供される比較的に高い剛性および線形の減衰特性の観点から、浮遊端部66と環状ハウジングアセンブリ62との間に、限られた量の半径方向変位が必要とされる。
【0019】
[0024]
図3は、環状ベアリング支持ダンパ60および内側環状部材80の分解図であり、これは、中心決めバネ64の浮遊端部66内に位置決めすることができる。内側環状部材80は、好ましくは、ベアリング支持ダンパ60内に入れ子にされるローターベアリングの外側リングとして機能するが、代わりに、内側環状部材は、浮遊端部66と浮遊端部66内に保持されるローターベアリングとの間に位置決めされる介在構造要素(たとえばアダプタスリーブ)として機能するようにすることができる。環状ハウジングアセンブリ62は、2つの係合部材から組み立てられ、すなわち、環状ハウジング中心部品82および環状カバー部品から組み立てられる。環状ハウジング中心部品82は、内側リング部86および2つの対向する側壁88を含む。対向する側壁88は、内側リング部86から半径方向外側に延び、環状チャネルを側方に拘束し、これは、ハウジング中心部品82の内側リング部86に外接する。組み立て中、カバー部品84は、環状ハウジング中心部品82の周りに位置決めされこれを囲み、環状ハウジングアセンブリ62内に減衰流体環部94を画定する。環部94を囲う密封シールまたは少なくとも液密シールを形成するために、カバー部品84は、組み立て中に、側壁88の外側周縁に溶接することができる。ハウジング中心部品82およびカバー部品84は同心に固定的に結合されるので、減衰流体環部94の形状は、従来のスクイーズフィルムダンパの可変形状の環部とは対照的に、ベアリングダンパ60の動作を通して一定のままである。減衰流体環94は、支持ダンパ60を通る長手方向面に沿って切り出した場合に、矩形断面の形状を備えることができ、減衰流体環部94の軸方向の幅は、環94の半径方向の高さの数倍大きい。
【0020】
[0025]環部94がシリコンベースオイルのような減衰流体で満たされるようにするために、支持ダンパ60はさらに充填ポート装置を備える。
図4は、ハウジング中心部品82の断面図であり、ハウジング中心部品82に形成される充填チャネル120を含む充填ポート装置の例を示している。充填チャネル120は、入口120、出口124、および拡大スロート126を含み、これは、円錐座部128を形成するようい半径方向内側にテーパーが付けられている。入口122は、ハウジング中心部品の側壁88を通って形成され、ハウジングアセンブリ62の外部からの手動アクセスを可能にし、出口124は、内側リング部86の外側周縁表面に形成され、減衰流体を減衰流体環部94内へ導く。減衰流体環部94の充填の後、充填チャネル120は、たとえば圧縮要素130(たとえば銅球)の円錐座部128に対する変形によりシールされる。
図4に示されるように、圧縮要素130は、セットスクリュー132を回転させることで円錐座部128に対してシール式に変形することができ、これは、拡大スロート126内に係合可能に位置決めされる。明確さのために
図2−4には示されていないが、環状ベアリング支持ダンパ60は、熱補償システム(たとえば、バネ付勢プランジャまたは内部ベローズ)を含むことができ、ガスタービンエンジンの動作中の流体の温度変化による減衰流体の体積変化に対処する。
【0021】
[0026]
図2、3を参照すると、ダンパピストン90のアレイは、支持ダンパ60の円周の周りで所定の角度間隔で間隔が隔てられる。ダンパピストン90は、ハウジング中心部品82の内側リング部分86を通って設けられる複数の半径方向開口部92内に受け入れられる。半径方向開口部92は、各ピストン90の最内端部が中心決めバネ64の浮遊端部66に直接的に固定できるように、また、各ピストンの反対側の端部(すなわち、ヘッド)がハウジング中心部品82の内側リング部材86を通して位置決めされて環部94内の減衰流体に露出されるように、ダンパピストン90を位置決めすることを可能にする。以下で
図5、6とともに説明するように、ダンパピストン90は、浮遊端部66に固定的に取り付けられ、これとともに、環状ハウジングアセンブリ62および静的エンジン構造に対して移動する。所与の半径方向への浮遊端部66の運動は、それぞれの開口部92内でのピストン90の並進および側方の両方の運動を生じさせることになる。複数のベローズ104は、ダンパピストン90とハウジング中心部品82との間でシール式に結合され、減衰流体が環部94から漏れるのを防止し、一方で、ピストン90の並進および側方の運動を許容し、これらは
図5、6とともに以下でさらに説明される。
【0022】
[0027]
図5、6は、それぞれ環状支持ダンパ60の一部(図示されないカバー部品84)の切断図および断面図であり、1つのダンパピストン90および対応するベローズ104を拡大して示している。図から見てとれるように、ダンパピストン90は、ピストンシャフト100およびピストンキャップ102を含み、これはシャフト100の半径方向外側端部に固定されている。ピストンキャップ102の反対側のピストンシャフト100の端部は、中心決めバネ64の浮遊端部66に固定される。ピストンシャフト100が浮遊端部66に取り付けられる具体的な方法は、異なる実施形態により様々であろう。たとえば、複数の固定具開口部74は、浮遊端部66を通して設けることができ、これは、環状ハウジングアセンブリ62が浮遊端部66に関して適切に位置決めされロックされたときにシャフト100に整合する。複数の固定具108は、その後、ピストンシャフト100に設けられた開口部74およびボア106内に配置され、ダンパピストン90を中心決めバネ64の浮遊端部66に固定する。そのような、取り付けインターフェースは、浮遊端部66が半径方向に移動するときに、ダンパピストン90が中心決めバネ64の浮遊端部66により押され、また、引っ張られるようにする。
【0023】
[0028]ピストンキャップ102は動作表面118を備え、これは環部94内に収容される減衰流体に露出されて流体連通する。例示的な実施形態において、ピストンキャップ102は、円形の平面形状を備えるディスク形状本体の形態をとり、これは、ハウジング中心部品82の内側リングピストン86に設けられる概ね半径開口部92の形状に一致する。相対的に狭い環状ギャップまたは円周クリアランス116がピストンキャップ102の周りに設けられ、開口部92内でのピストン90の側方運動を可能にする。図示の例において、動作表面118は、内側リング部86の周縁表面と実質的同一面となり、環状支持ダンパ60が通常位置または設計位置にあるときに、減衰流体環94の内側周縁を結合する。動作表面118は、好ましくは、緩やかな傾斜の凸形状の外側形状(
図6に最もよく示されている)を備え、減衰流体が内側リング部86の外側周縁表面および動作表面118を流れるときに、実質的に中断されない遷移を提供する。
【0024】
[0029]ベローズ104は、ピストンキャップ102をハウジング中心部品82にシール式に連結し、具体的には、ピストンキャップ102の下側を、ダンパピストン90が収容される開口部92を画定する中心部品82の内側周縁表面にシール式に結合する。符号110で示されるように、ベローズ104の半径方向の内側エッジは、開口部92に設けられる内側周辺棚部112に第1周縁溶接結合によりシール式に結合することができる。同様に、ベローズの半径方向外側のエッジは、第2周縁溶接結合によりピストンキャップ102の下側にシール式に結合することができる。図示の例において、ベローズ104は、外部的に圧力を加えられ、すなわち、ベローズ104の外側表面は環94内の減衰流体に露出され、一方、ベローズ104の内側表面は周囲の空気に露出される。ピストンキャップ102の場合のように、周縁クリアランス116がベローズ104の周りに設けられ、側方の偏向を可能にする。ベローズを形成する材料の選択、壁の厚さの偏向、および、ベローズ内に含まれるひだの数の変更により、ベローズ104の側方および軸方向の剛性は所望により調整することができる。ベローズ10は、必須ではないが好ましくは、相対的に高温度に耐性がある相対的に軽量の金属または合金から形成される。
【0025】
[0030]
図2−5に示され、
図2、3において最もよく示される例示的な実施形態において、環状ベアリング支持ダンパ60は、4個のダンパピストン90および4個の対応するベローズ104を含み、これらはダンパ60の中心線について対称に配置され、約90度の間隔で隔てられる。この構造的な配置の結果として、2つのダンパピストン90は、第1直径に沿って直径方向の反対側またはベアリング支持ダンパ60の対向関係に配置され、また、2つのダンパピストン90は、実質的に第1直径に垂直なベアリング支持ダンパ60の第2の直径に沿って直径方向の反対または対向関係に配置される。換言すれば、ベアリング支持ダンパ60は、直交する第1および第2の軸に沿って対向するピストン90のペアを2つ含み、これらの軸は、ダンパ60の中心線に実質的に直交し、より一般的には、GTE20(
図1に示される)の中心線に直交する。上述したように、各ダンパピストン90と対応する開口部92の内側との間に周縁クリアランスが提供され、ピストン90の限られた側方運動を可能にする。このようにして、直径方向に対向するピストン90の所与のペアは、側方に偏向することができ、中心決めバネ64の浮遊端部66が任意の半径方向に移動するときに、直径方向に対向するピストン90の他のペアの軸方向運動(拡張および収縮)に対処する。さらなる実施形態において、環状ベアリング支持ダンパ60は、より多くのまたは少ない数のピストンおよびベローズを含むことができ、ダンパ60の周縁に規則的な間隔で隔てるようにしてもしなくてもよい。
【0026】
[0031]中心決めバネ64の浮遊端部66の運動、および、より一般的には浮遊端部66内に保持されたベアリングおよびスプールの任意の所与の変形方向における運動は、少なくとも1つのダンパピストン90の、ベアリング支持ダンパ60の中心線から離れるような軸方向の運動を生じさせ、また、同時に、対向するダンパピストン90の、ベアリング支持ダンパ60の中心線に向かう軸方向の運動を生じさせる。同時に、対向するダンパピストンは、ダンパ60の中心線から軸方向に離れるように運動し、半径方向開口部92内に引っ込み、変位した減衰流体に収容または対応する。ダンパピストン90の運動は、減衰流体環94の周りで減衰流体を流れさせ、ローターベアリングから周囲のエンジン構造へ伝達される振動を減衰させる。環94の形状が一定なので、また、ピストン90の運動範囲が相対的に限られているので、環状支持ダンパ60は、GTE20(
図1)の動作周波数および振幅範囲にわたって実質的に均一な、または線形の減衰を提供することができる。ハウジング中心部品82および中心決めバネ64の浮遊端部66は、接触するように構成することができ、浮遊端部66およびダンパピストン90の任意の所与の半径方向の変位を、予め決定された最大閾値に制限するハードストップを提供する。
【0027】
[0032]環状ベアリング支持ダンパ60は、複数の自由度で減衰を提供する3パラメータ装置と称することもでき、すなわち、全ての半径方向に3パラメータ減衰を提供する減衰装置である。さらに、この点を強調すると、
図7は、静的(非回転)エンジンハウジング部材140とスプール40の周りに位置決めされる回転ベアリング56との間のベアリング支持ダンパ60を機能的に概略図示している。ベアリング支持ダンパ60は、複数の3パラメータダンパ144として機能し、これは、ローターベアリング56の周りに円周方向に位置決めされ、ベアリング56およびスプール48の長手方向軸に実質的に直交する、実質的に垂直な軸に沿って減衰を提供する。各3パラメータ装置144は、以下の機械的要素を含む。すなわち、(i)エンジンハウジング140とローターベアリング56との間に、それゆえローターアセンブリに連結される主バネ部材K
A、(ii)ハウジング140とベアリング56との間に、第1バネ部材K
Aに並列に連結される調整バネ部材K
B、(iii)第1バネ部材K
Aに並列に、また、第2バネ部材K
Bに直列に、エンジンハウジング140とベアリング56との間に連結されるダンパC
Aを含む。図示の例示的な実施形態において、K
Aは中心決めバネ64(
図2、3、5)により支配的にまたは全体的に決定され、K
Bは、ベローズ104を含む、環状ハウジングアセンブリ62とエンジンハウジングとの間の、意図的な調整バネに直列な、体積剛性アセンブリの組み合わせにより支配的にまたは全体的に決定され、C
Aは、減衰流体環94、円周方向に離間されるダンパピストン90のアレイ、および支持ダンパ60の他の要素により形成されるダンパにより支配的にまたは全体的に決定される。減衰されない装置および2パラメータ装置と比べると、3パラメータ装置は、より高い周波数において振動力の有意に低い伝達性を提供する。伝達性は以下の式で表現することができる。
【0029】
式1
ここで、ローターアセンブリが振動源であり、エンジンハウジングが分離される本体である場合、T(ω)は伝達性であり、X
output(ω)は出力運動(
図7において矢印148で表される)、X
input(ω)は入力運動(
図7において矢印146で表される)である。逆に、振動がエンジンハウジングからローターアセンブリへ伝達される場合(すなわち、ローターアセンブリが分離される本体である場合)、入力運動は、支持ダンパ60へ付与されるエンジンハウジングの運動であり、出力運動はローターアセンブリに生じる励起である。
【0030】
[0033]環状ベアリング支持ダンパ60のアセンブリは、以下のように機能してもよい。開始のため、中心決めバネ64(
図2、3)を生成することができる。中心決めバネ64は、二次機械加工により、従来のバネ中心決めされるスクイーズフィルムダンパに用いられるタイプの現存する中心決めバネから有利に製造される。特に、浮遊端部66の内側直径および外側直径は、たとえばフライス削りにより微細調整することができ、および/または、固定具開口部74(
図3)は、ドリル加工することができ、または浮遊端部66を通して、他の方法で形成することができ、ダンパピストン90(
図3、5、6)の取り付けを容易にする。中心決めバネ64(
図2、3)の製造後、ハウジング中心部品82を、たとえば環またはリング形状ブランクの機械加工から製造することができる。ダンパピストン90は、その後、連続的に、ハウジング中心部品82内に予め形成された半径開口部92内に取り付けられ、ベローズ104をハウジング中心部品82に溶接することができる。ベローズ104は、この接合部においてダンパピストン90のキャップ102に溶接することができ、または、代替的に、予め溶接された状態で販売者から購入することができる。環状カバー部品84(
図2、3)は、その後、ハウジング中心部品82の周りに位置決めされて溶接され、環部94を密封して閉じる。熱補償システムを、予め存在するポート内に取り付けることができ、ハウジングアセンブリ62に適切に溶接することができる。
【0031】
[0034]例示的な組み立てプロセスを続けると、減衰流体環部94は、次に、充填ポート装置96(
図4)を通して環部94に導入される減衰流体で満たされ、これは前述した方法で密封することができる(すなわち、セットスクリュー132を回転させて銅ボールを円錐座部128に対して変形させ、
図4に示されるような金属−金属のシールを形成する)。完全に組み立てられ減衰ピストンを含むハウジングアセンブリ62は、中心決めバネ64の浮遊端部66の周りに位置決めすることができる。ハウジングアセンブリ62は、浮遊端部66に対して適切な角度方向または時計位置に回転させることができ、減衰ピストン90(
図5、6)のシャフト100内に設けられるボア106に開口部74を整合させる。環状ベアリング支持ダンパ60の組み立てを完成させるため、固定具(たとえば、ソケットハードキャップスクリュー)を用い、中心決めバネ64の浮遊端部66を、ダンパピストン90のシャフト100に固定することができる。支持ダンパ60の組み立て後、内側環状部材または内側ベアリングリング80は、浮遊端部66内に設けられる円筒形開口部内に取り付けることができ、たとえば、熱嵌合技術を用いることができ、ここで、内側ベアリングリン部80は組み立て前に実質的に冷却され、その後、動作温度において膨張させられてインターフェース嵌合を形成し、内側ベアリング80と中心決めバネ64との間に堅固な接続を提供する。ローターベアリングの残りの部分は、その後、中心決めバネ64内におよびベアリング支持ダンパ60を通って延びるスプール(または同軸の複数のスプール)の周りに組み立てることができる。最後に、アセンブリの全体は、部分的に構築されたガスタービンエンジン内に位置決めされ、環状ハウジングアセンブリ62および中心決めバネ64の固定端部68はエンジンハウジングに固定される。上述の例は例示であり、環状ベアリング支持ダンパ60が組み立てられ、および、ガスタービンエンジン内に取り付けられる具体的な方法は、異なる実施形態において様々となり得る。
【0032】
[0035]上記のように環状ベアリング支持ダンパの例示的な実施形態が提供され、これは、ガスタービンエンジン内に含まれ、従来のバネ中心決めスクイーズフィルムダンパと同様の空間を占め、優れた減衰および剛性の特性を備える。また、上記は、そのような環状ベアリング支持ダンパの例示的な製造方法を提供した。上述の実施形態において、環状ベアリング支持ダンパは、ローターベアリングから独立して製造されたが、これは必ずしも必要なことではない。代替的に、さらなる実施形態において、環状ベアリング支持ダンパは、中心決めバネの浮遊端部の内側周縁表面がローターベアリングの外側リングとして機能するように設計することができる。そのような環状ベアリング支持ダンパの例が、
図8、9とともに以下で説明される。
【0033】
[0036]
図8、9は、本発明のさらなる例示的な実施形態による、それぞれ、長手方向面および半径平面に沿って切り出された環状ベアリング支持ダンパ160(部分的に図示)の断面図である。多くの点において、環状ベアリング支持ダンパ160は、
図1−7とともに説明した環状ベアリング支持ダンパ60と類似している。たとえば、環状ベアリング支持ダンパ160は、固定端部163、浮遊端部164、および端部163、164の間を延びる複数の可撓性ビーム166を備える中心決めバネ162を含み、また、浮遊端部164の周りに位置決めされ、半径ギャップ170によりそこから離間されるダンパハウジングアセンブリ168を含み、また、支持ダンパ160の長手方向軸の周りに円周方向に隔てられるダンパピストン172のアレイ(
図8、9には1つだけ示され、以下で説明される)を含む。前述の場合と同様に、ダンパピストン172は、拡大ピストンヘッドまたはキャップ174およびピストンシャフト176を含む。ダンパピストン172は、ダンパハウジングアセンブリ168内に設けられる区画180内に収容される。ベローズ178は、ダンパヒストン172をダンパハウジングアセンブリ168に密封連結させる。特に、ベローズ178の第1端部は、区画180の内側表面に密封接合され(たとえば円周方向に溶接され)、ベローズ178の反対の端部は、ピストンキャップ174の下側に密封接合される(たとえば円周方向に溶接される)。ピストンキャップ174は、ダンパハウジングアセンブリ168内に設けられる減衰流体環部182の外側周縁部に流体連通して結合する。
【0034】
[0037]支持ダンパ60に含まれるダンパピストン90のように、ダンパピストン172は、中心決めバネ162の浮遊端部164に固定的に連結される。しかし、
図3、5、6とともに上述したダンパピストン90と比べると、ダンパピストン172は、端部164の内側リング部材を通して浮遊端部164に接続されない。代わりに、ピストンシャフト176が、ピストンキャップ174から半径方向外側に延び、ダンパハウジングアセンブリ168内に設けられた半径開口部184を通る。浮遊端部164から延びるコネクタアーム186(たとえば実質的にL形状延長部)は、ピストンシャフト176の突出端部に取り付けられる。このようにして、浮遊端部164の内側周縁表面を通る開口部の形成が避けられ、これは、浮遊端部164の内側周縁表面が、中心決めバネ162の浮遊端部164内に取り付けられる回転要素ベアリング(図示せず)の外側レースとして機能することを可能とする。
【0035】
[0038]上記のように、環状ベアリング支持ダンパの実施形態が提供された。上述のベアリング支持ダンパは、能動的な潤滑供給を必要とせず、また、従来のスクイーズフィルムダンパの場合と比較して、ガスタービンエンジンの全体のコスト、部品数、複雑さ低減する。さらなる利点として、上述の環状ベアリング支持ダンパは、ガスタービンエンジンの動作周波数範囲にわたり実質的に線形の減衰および剛性プロファイルを提供するように調整できる。また、環状ベアリング支持ダンパは、剛性および減衰プロファイルの独立した調整を可能にする。環状ベアリング支持ダンパは、臨界モードにおいてまたはそれを通って動作するときでも、ガスタービンエンジンの全動作範囲にわたって、ローターが発生させる振動のエンジンハウジングへの伝達を有意に低減することができ、また、それゆえ、航空機の胴体への振動の伝達を低減できる。さらなる利点として、上述のベアリング支持ダンパは、高い、予測可能な、また線形の剛性を提供し、ローターアセンブリの変位を最小化し、改良された中心線制御を提供する。これは、ガスタービンエンジンを、よりよい反作用静的負荷条件(たとえば重力サグまたは動作負荷)に設計できるようにし、また、チップクリアランスを減少させることでエンジン性能を向上させることを可能にする。ガスタービンエンジンとともに説明したが、環状支持ダンパの実施形態は、ターボチャージャおよびタービン機械一般を含む他のタイプの回転機械内での使用にも適合的であることを強調しておく。
【0036】
[0039]上述の詳細な説明において少なくとも1つの例示的な実施形態が説明されたが、多数の変形例が存在し得ることを理解されたい。また、1つまたは複数の例示的な実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲、用途、構成をいかなる意味でも限定することを意図するものではないことを理解されたい。むしろ、上述の詳細な説明は、当業者に本発明の例示的な実施形態を実行する便宜的なロードマップを提供するものである。添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態で説明された要素の機能および構成を様々に変更できることを理解されたい。