特許第5969323号(P5969323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969323
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ゲート上昇・降下機構
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20160804BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20160804BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   E02B7/20 111
   F15B11/00 Z
   F16K31/44 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-189081(P2012-189081)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-47471(P2014-47471A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231338
【氏名又は名称】日本自動機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】特許業務法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100174056
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 暁
(72)【発明者】
【氏名】金森 豪
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−186326(JP,U)
【文献】 特開2002−226180(JP,A)
【文献】 特開2001−241028(JP,A)
【文献】 特開2008−189437(JP,A)
【文献】 特開2006−097822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20〜 7/54
F15B 11/00〜 21/14
F16K 31/44〜 31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートを吊り下げるためのワイヤと、
前記ワイヤが巻回されるワイヤドラムと、
前記ワイヤドラムが連結された出力軸並びに第一の入力軸及び第二の入力軸を有している差動減速機と、
前記差動減速機の第一の入力軸に連結されている電動モータと、
前記差動減速機の第二の入力軸に連結されている油圧ピストンモータと、
前記油圧ピストンモータを駆動させる油圧ユニットと、
前記第一の入力軸の回転動作に対する第一のブレーキと、
前記第二の入力軸の回転動作に対する第二のブレーキと、
を備え
前記油圧ユニットが、作動油が貯められる油タンクと、前記ゲートを自重により降下させる際の出口側が二股に分岐しているブースト圧用油圧モータと、入口側が前記油タンクに接続されていて前記ブースト圧用油圧モータにより駆動されるブースト圧用油圧ポンプと、前記ゲートを前記油圧ピストンモータにより上昇させる際に前記油圧ピストンモータを作動させるエンジン駆動式油圧ポンプと、を備えており、
前記油圧ピストンモータが、前記ゲートを自重により降下させる際に油圧ブレーキとして作用するとともに油圧ポンプとして機能し、
前記ゲートを自重により降下させる際には、前記油圧ピストンモータの出口側と前記ブースト圧用油圧モータの入口側とを接続して前記油圧ピストンモータの回転により発生する油圧により前記ブースト圧用油圧モータを回転させ、前記油圧ピストンモータの入口側と前記ブースト圧用油圧モータの二股に分岐した出口側の一方及び前記ブースト圧用油圧ポンプの出口側とを接続してブースト圧力を有する前記作動油を前記油圧ピストンモータに供給し、前記ブースト圧用油圧モータの二股に分岐した出口側の他方を前記油タンクに接続して前記作動油の一部を前記油タンクに戻すことを特徴とするゲート上昇・降下機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ピストンモータを駆動源として、ワイヤドラム式の水門のゲートを上昇及び降下させるゲート上昇・降下機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤドラム式の水門のゲート上昇・降下機構としては、電動モータやエンジンや油圧モータを駆動源としてゲートの上昇を行い、ゲートの自重を利用してゲートを降下させるものが知られている。また、このようなワイヤドラム式の水門のゲートにおいては、ゲートを降下させる際に、油圧ポンプや油圧モータを油圧ブレーキとして作用させつつ油量を調節することによって、降下スピードの調整を行うことも知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、図4に示すゲート上昇・降下機構は、ゲート1を吊り下げるためのワイヤ2が、ワイヤドラム3に巻回されており、そのワイヤドラム3の回転動作は、差動減速機4により制御されるようになっている。
【0004】
そして、差動減速機4の第一の入力軸4aには、第一のブレーキである油圧押上ブレーキ5を挟んで切替装置6が接続されている。さらに、切替装置6には、通常時用の動力源である電動モータ7と非常時用の動力源であるエンジン8が接続されている。
【0005】
一方、差動減速機4の第二の入力軸4bには、第二のブレーキである電磁ブレーキ9を挟んで油圧ポンプ10が接続されている。なお、電磁ブレーキ9は油圧押上げブレーキでも構わない。また、油圧ポンプ10は、油タンクを含む油圧ユニット11と接続されている。
【0006】
このような構成のゲート上昇・降下機構において、ゲート1の上昇は、切替装置6を用いて通常時には電動モータ、非常時(例えば、電源喪失時等)にはエンジン8が選択され、その選択された駆動源からの動力が伝達されて行われる。一方、ゲート1の降下は、ゲート1の自重により行われるが、その際、油圧ポンプが降下スピードを調整するための油圧ブレーキとして作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−97822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような構成のゲート上昇・降下機構が備えている切替装置は、大型であるため配置するために必要なスペースが大きくなってしまうという問題や、装置そのものが高価であるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電源喪失時等の非常時であってもゲートを上昇・降下させることができる小型で安価なゲート上昇・降下機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
目的を達成するために、本発明のゲート上昇・降下機構は、ゲートを吊り下げるためのワイヤと、前記ワイヤが巻回されるワイヤドラムと、前記ワイヤドラムが連結された出力軸並びに第一の入力軸及び第二の入力軸を有している差動減速機と、前記差動減速機の第一の入力軸に連結されている電動モータと、前記差動減速機の第二の入力軸に連結されている油圧ピストンモータと、前記油圧ピストンモータを駆動させる油圧ユニットと、前記第一の入力軸の回転動作に対する第一のブレーキと、前記第二の入力軸の回転動作に対する第二のブレーキと、を備え、前記油圧ユニットが、作動油が貯められる油タンクと、前記ゲートを自重により降下させる際の出口側が二股に分岐しているブースト圧用油圧モータと、入口側が前記油タンクに接続されていて前記ブースト圧用油圧モータにより駆動されるブースト圧用油圧ポンプと、前記ゲートを前記油圧ピストンモータにより上昇させる際に前記油圧ピストンモータを作動させるエンジン駆動式油圧ポンプと、を備えており、前記油圧ピストンモータが、前記ゲートを自重により降下させる際に油圧ブレーキとして作用するとともに油圧ポンプとして機能し、前記ゲートを自重により降下させる際には、前記油圧ピストンモータの出口側と前記ブースト圧用油圧モータの入口側とを接続して前記油圧ピストンモータの回転により発生する油圧により前記ブースト圧用油圧モータを回転させ、前記油圧ピストンモータの入口側と前記ブースト圧用油圧モータの二股に分岐した出口側の一方及び前記ブースト圧用油圧ポンプの出口側とを接続してブースト圧力を有する前記作動油を前記油圧ピストンモータに供給し、前記ブースト圧用油圧モータの二股に分岐した出口側の他方を前記油タンクに接続して前記作動油の一部を前記油タンクに戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
電源喪失時等の非常時であってもゲートを上昇・降下させることができる本発明によれば、小型で安価なゲート上昇・降下機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1に係るゲート上昇・降下機構を示す模式図である。
図2】実施例1に係るゲート上昇・降下機構の備える油圧ユニットの回路図である。
図3】実施例2に係るゲート上昇・降下機構を示す模式図である。
図4】従来のゲート上昇・降下機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
以下に、図1及び図2を用いて、実施例1に係るゲート上昇・降下機構について詳細に説明する。
【0015】
なお、図1は、実施例1に係るゲート上昇・降下機構を示す模式図である。また、図2は、実施例1に係るゲート上昇・降下機構の備える油圧ユニットの回路図である。
【0016】
まず、図1を用いて、このゲート上昇・降下機構の構成を説明する。
【0017】
このゲート上昇・降下機構は、ゲート1を吊り下げるためのワイヤ2が、ワイヤドラム3に巻回されており、そのワイヤドラム3の回転動作は、差動減速機4により制御されるようになっている。
【0018】
そして、差動減速機4の第一の入力軸4aには、第一のブレーキである油圧押上ブレーキ5を挟んで通常時用の動力源である電動モータ7が接続されている。一方、差動減速機4の第二の入力軸4bには、第二のブレーキである電磁ブレーキ9を挟んで油圧ピストンモータ13が接続されている。なお、電磁ブレーキ9は油圧押上げブレーキでも構わない。また、油圧ピストンモータ13は、油圧ユニット12に接続されている。
【0019】
なお、この油圧ピストンモータ13としては、例えば、0.2Mpa以上のブースト圧力を必要とするアキシャルピストンモータを使用しても良いし、他の形式の油圧ピストンモータを使用しても良い。
【0020】
このような構成を備えているため、このゲート上昇・降下機構は、通常時における動力と非常時における動力を、差動減速機4の二つの入力軸4a、4bを介して、切替装置を用いずに完全に切り分けて使用することができる。
【0021】
次に、図1及び図2を用いて、このゲート上昇・降下機構がゲート1を上昇させる際及び降下させる際の各機構の作動を説明する。
【0022】
通常時にゲート1を上昇させる際及び降下させる際には、まず、第二の入力軸4b側に接続されている電磁ブレーキ9をロックして油圧ピストンモータ13側へ動力が伝達されないようにし、その後、第一の入力軸4aに電動モータ7からの動力を伝達して、差動減速機4を介してワイヤドラム3の回転動作を制御してゲート1を上昇・降下させる。
【0023】
そして、非常時にゲート1を上昇させる際には、まず、第一の入力軸4a側に接続されている油圧押上ブレーキ5をロックして電動モータ7側へ動力が伝達されないようにし、その後、油圧ユニット12に内蔵されているバルブを操作して油圧ピストンモータ13を駆動させ、第二の入力軸4bに油圧ピストンモータ13からの動力を伝達して、差動減速機4を介してワイヤドラム3の回転動作を制御してゲート1を上昇させる。
【0024】
具体的には、まず、油圧押上ブレーキ5をロックして電動モータ7側へ動力が伝達されないようにする。次に、ボールバルブ12aを閉める。次に、電磁ブレーキ9を解除する。次に、ボールバルブ12bを開く。次に、エンジン12cを起動して、ポンプ12dを駆動する。
【0025】
その後、手動切換弁12eを切り替えると、油タンク12fに貯蔵されている作動油は、エンジン12cにより駆動されているポンプ12dにより、サクションフィルタ12g、手動切換弁12e、チェックバルブ12h、ボールバルブ12b、ストップバルブ12iを経て、油圧ピストンモータ13の第一のポート13aへと送られる。
【0026】
そして、第一のポート13aより油圧ピストンモータ13へ送られた作動油は、油圧ピストンモータ13を回転させた後、作動油は第二のポート13bより吐出され、ストップバルブ12j、リリーフバルブ12k、リターンフィルタ12lを経て、油タンク12fに戻される。
【0027】
このようにして駆動された油圧ピストンモータ13は、差動減速機4の第二の入力軸4aを介してゲート1を上昇させる方向にワイヤドラム3を回転させ、ワイヤドラム3にワイヤ2を巻き取る。
【0028】
また、非常時にゲート1を降下させる際には、まず、第一の入力軸4a側に接続されている油圧押上ブレーキ5をロックして電動モータ7側へ動力が伝達されないようにし、その後、電磁ブレーキ9を解除し、油圧ユニット12に内蔵されているバルブを操作して油圧ピストンモータ13が油圧ブレーキ及び油圧ポンプとして作用する状態にして、ゲート1を自重により降下を行う。
【0029】
具体的には、まず、油圧押上ブレーキ5をロックして電動モータ7側へ動力が伝達されないようにする。次に、ボールバルブ12bを閉める。次に、ボールバルブ12aを開く。そして、電磁ブレーキ9を解除し、ゲート1を自重により降下させる。
【0030】
なお、油圧ピストンモータ13は、ゲート1を吊り下げているワイヤ2、ワイヤ2が巻回されているワイヤドラム3、ワイヤドラム3と接続されている差動減速機4の第二の入力軸4bを介して、ゲート1を上昇させる際とは逆方向に回転させられる。
【0031】
このとき、作動油は、まず、油圧ピストンモータ13の第一のポート13aから吐出され、ストップバルブ12i、ボールバルブ12aを経てブースト圧用油圧モータ12mへ送られる。
【0032】
次に、ブースト圧用油圧モータ12mに送られた作動油は、ブースト圧用油圧モータ12mを駆動させた後、吐出され、チェックバルブ12nを経て、二股に分岐される。そして、二股に分岐された作動油の一方は、ストップバルブ12jを介して、油圧ピストンモータ13の第二のポート13bに送られる。一方、二股に分岐された作動油の他方は、リリーフバルブ12k、リターンフィルタ12lを経て油タンク12fに戻される。
【0033】
ところで、このブースト圧用油圧モータ12mは、その動力を伝達できるようにブースト圧用油圧ポンプ12oに接続されている。そして、このブースト圧用油圧ポンプ12oにより、油タンク12fに貯蔵されている作動油は、サクションフィルタ12p、チェックバルブ12qを経て、ブースト圧用油圧モータ12mから吐出され分岐された作動油の一方と合流させられ、ブースト圧力を加えられた状態にされて、油圧ピストンモータ13の第二のポート13bへと送られる。
【0034】
このような構成となっているため、油圧ピストンモータ13は、ゲート1を自重により降下させる際には、油圧ブレーキとして十分な働きをすることができる。
【0035】
なお、このとき、ブースト圧用油圧モータ12mから吐出された作動油は、全量が油タンク12fへ戻らず、ある程度の圧力(例えば0.2Mpa程度の圧力)を保持したまま、油圧ピストンモータ13の第二のポート13bへ戻されることになる。そのため、油タンク12fからブースト圧用油圧ポンプ12oを介して供給する作動油の量は油温の上昇を制御するために必要な量のみに抑えることができる。その結果として、油圧ユニット12を小型化することができ、ひいては、機構全体のさらなる小型化が可能になる。
【0036】
このゲート上昇・降下機構は、このように、高価な切替装置を必要とせずに、通常時に行われる主操作と非常に行われる予備操作を完全に切り分けて使用することができるため、低コスト化や省スペースによる小型化を図ることができる。
【実施例2】
【0037】
以下に、図3を用いて、実施例2に係るゲート上昇・降下機構について詳細に説明する。なお、本実施例に係るゲート上昇・降下機構は、第2の入力軸側の機構を除き、実施例1のゲート上昇・降下機構と実施例1のリードフレームとほぼ同様の構成であるため、同様の部材については同一の符号を付すとともに、それらについての詳細な説明は省略する。また、非常時のゲートの上昇・降下の際の油圧ユニットの内部における作動油の流れについての詳細な説明も省略する。
【0038】
図3に示すように、差動減速機4の第二の入力軸4bには、メカニカルブレーキを内蔵した油圧ピストンモータ14が接続されている。
【0039】
この油圧ピストンモータ14としては、例えば、0.2Mpa以上のブースト圧力を必要とするアキシャルピストンモータを使用しても良いし、他の形式の油圧ピストンモータを使用しても良い。
【0040】
また、油圧ピストンモータ14に内蔵されているメカニカルブレーキは、例えば、ブレーキ作動時は摩擦板を相手板にスプリングで押し付ける力によりブレーキトルクを発生させ、ブレーキ解除用ポートにスプリング力以上の合う力がかかるとブレーキプランジャがスプリングを押し付け、摩擦板が相手板から離れてブレーキが解放されるようになっている。
【0041】
このように構成されているゲート上昇・降下機構は、高価な切替装置を必要としないだけではなく、第二の入力軸4b側に配置される機構が少ないため、低コスト化や省スペースによる小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のゲート上昇・降下機構は、低コスト化や省スペースによる小型化を実現できるため、実用上極めて有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 ゲート
2 ワイヤ
3 ワイヤドラム
4 差動減速機
4a 第一の入力軸
4b 第二の入力軸
5 油圧押上ブレーキ
6 切替装置
7 電動機
8 エンジン
9 電磁ブレーキ
10 油圧ポンプ
12、11 油圧ユニット
12a、12b ボールバルブ
12c エンジン
12d ポンプ
12e 手動切換弁
12f 油タンク
12g、12p サクションフィルタ
12h、12n、12q チェックバルブ
12i、12j ストップバルブ
12k リリーフバルブ
12l リターンフィルタ
12m ブースト圧用油圧モータ
12o ブースト圧用油圧ポンプ
13、14 油圧ピストンモータ
13a 第一のポート
13b 第二のポート
図1
図2
図3
図4