(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の断熱金型では、成形時における溶融樹脂の充填により加わる圧力で樹脂層が圧縮され、その圧縮に起因して樹脂層の表面が凹凸となる傾向が高くなる。この樹脂層の表面が凹凸となった場合、その凹凸によって断熱金型の表面層が変形し、設計値との隔たりが大きい成形品が製造されるといった問題が生じる。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、より設計値に近い成形品を成形し得る断熱金型の製造方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明における断熱金型の製造方法は、金型基体の表面に断熱層が装着されその断熱層の表面に保護層が装着された金型体を生成する金型体生成工程と、成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力を、前記金型体の保護層におけるキャビティ領域に付加する圧力付加工程と、前記圧力付加工程を経た金型体の保護層におけるキャビティ領域の表面から凹凸を除去する凹凸除去工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
このように本製法によれば、金型体の保護層に対して成形時に加わる圧力よりも高い圧力を成形前に予め付加し、その圧力によって断熱層を圧縮させて保護層を積極的に変形させた後、当該保護層におけるキャビティ領域の表面から凹凸が除去される。
このため、成形時において通常の圧力がキャビティ領域に加えられても、その圧力によってさらに断熱層が圧縮することを未然に防止することができ、この結果、キャビティ領域の表面から凹凸を除去した状態が維持される。
こうして、より設計値に近い成形品を成形し得る断熱金型の製造方法が提供される。
【0009】
また、前記成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力は、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の溶融樹脂を、前記金型体を用いた型締により形成されるキャビティに射出して付加されることが好ましい。
【0010】
このように圧力を付加する場合、射出された溶融樹脂の先端部分が、成形時に成形用溶融樹脂を射出する場合に比べて高い圧力を保護層の表面に加えながらキャビティ末端へ流動することになる。
このため、射出機構における射出速度が成形時と同じであったとしても、成形時において成形用溶融樹脂を射出する場合に比べて高い圧力を保護層の表面に部分的に集中させながら流動方向に沿って移行させることができる。この結果、圧力付加工程において、射出機構に過度の負荷を与えることなく保護層を積極的に変形させておくことができる。
【0011】
また、前記成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力は、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂の粘度よりも低い粘度の溶融樹脂を、前記金型体を用いた型締により形成されるキャビティに射出した後に保圧により付加されることが好ましい。
【0012】
このように圧力を付加する場合、保圧力に対する溶融樹脂の圧力損失を、その溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の成形用溶融樹脂を用いる場合に比べて低減することができ、また、ゲート部における溶融樹脂が固化するまでの期間を、その溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の成形用溶融樹脂を用いる場合に比べて長くすることができる。
したがって、成形時において成形用溶融樹脂を保圧する場合に比べて高い圧力を、当該成形時における冷却期間よりも長く保護層の表面に加えることができる。この結果、圧力付加工程において、射出機構に過度の負荷を与えることなく保護層を積極的に変形させておくことができる。
【0013】
また、前記成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力は、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の溶融樹脂を、前記金型体を用いた型締により形成されるキャビティに射出した後に保圧により付加されるとともに、前記成形用溶融樹脂の粘度よりも低い粘度の溶融樹脂を、前記金型体を用いた型締により形成されるキャビティに射出した後に保圧により付加されることが好ましい。
【0014】
成形時に射出すべき成形用溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の溶融樹脂をキャビティに射出した後に保圧する場合、当該キャビティでは射出側が射出末端側に比べて高い圧力が加わる圧力分布になる傾向がある。
一方、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂の粘度よりも低い粘度の溶融樹脂をキャビティに射出した後に保圧する場合、当該キャビティでは射出末端側でも射出側に近い圧力が加わる圧力分布になる傾向がある。
したがって、キャビティにおける射出側と射出末端側との間の距離が長い場合であっても、成形時における通常の圧力よりも高い圧力を、おおむね均一に保護層に加えることができる。
【0015】
また、前記成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力は、成形時に金型に加えるべき温度よりも高い温度を前記金型体に加えながら、当該金型体を用いた型締により形成されるキャビティに溶融樹脂を射出した後に保圧により付加されることが好ましい。
【0016】
このように圧力を付加する場合、ゲート部における溶融樹脂が固化するまでの時間を、成形時において断熱金型を通常の温度で加熱する場合に比べて長くすることができる。この結果、圧力付加工程において、保護層を積極的に変形させておくことができる。
【0017】
また、前記金型体生成工程では、前記金型基体の一面と鋼材の一面との間に所定距離の隙間を隔てて前記金型基体及び前記鋼材を配置し、前記隙間に未硬化状態の熱硬化性樹脂を配置する配置工程と、前記未硬化状態の熱硬化性樹脂を硬化させる硬化工程と、前記鋼材を前記鋼材の一面とは逆側から削って、硬化状態の熱硬化性樹脂上の少なくとも一部にキャビティ領域を形成する形成工程とを有することが好ましい。
【0018】
このような生成工程とした場合、未硬化状態の熱硬化性樹脂が、鋼材と金型基体との間に介在した状態で硬化されるため、当該硬化した熱硬化性樹脂の表面が凹凸になることを抑制することができる。
また、キャビティ領域は、鋼材の一面と金型基体の一面との間に配置される未硬化状態の熱硬化性樹脂を硬化させた後に、その鋼材を削ることで形成される。
このため、予めキャビティ領域を形成し鋼材と金型基体との間に未硬化状態の熱硬化性樹脂を配置して硬化させる場合に比べて、鋼材と金型基体とを接合する際の圧力や、未硬化状態の熱硬化性樹脂が硬化する際の収縮に伴う応力等に起因して鋼材が歪むことを抑制することができる。
したがって、より一段と設計値に近い成形品を成形し得る断熱金型を得ることができる。
【0019】
なお、未硬化状態の熱硬化性樹脂は、鋼材と金型基体との間に介在した状態で硬化されるため、当該硬化後の熱硬化性樹脂を断熱層としてのみならず、鋼材と金型基体との接合部材として共用することができる。したがって、断熱層と鋼材又は金型基体とを接合する部材の厚みを考慮することなく、当該断熱層の厚みを規定することができる。
また、キャビティ領域は、鋼材を削ることで形成されているため、めっき法により薄膜を形成する場合に比べてキャビティ領域の強度を大きくすることができ、この結果、本製法によって製造される断熱金型の耐久性を向上させることもできる。
【0020】
また、前記配置工程では、前記金型基体の一面と前記鋼材の一面との間において、前記形成工程で形成すべき前記キャビティ領域の鉛直方向を避けた位置にスペーサを配置し、前記硬化工程では、前記金型基体及び前記鋼材の一方が他方に押し付けられた状態で、前記未硬化状態の熱硬化性樹脂を加熱することが好ましい。
【0021】
このようにした場合、金型基体の一面と鋼材の一面との間に配置されるスペーサによって、未硬化状態の熱硬化性樹脂をある一定以上の厚みとしても、その厚みのムラを押し付けによって大幅に抑制しておおむね一定の厚みとすることができる。
また、金型基体の一面と鋼材の一面との間に配置させるべきスペーサの高さによって、未硬化状態の熱硬化性樹脂の厚みを制御することができ、この結果、スペーサの高さを断熱層の厚みとして正確に断熱層を形成することができる。
【0022】
また、前記スペーサは、前記金型基体又は前記鋼材と一体に成形されることが好ましい。
【0023】
このようにした場合、金型基体の一面上に鋼材を配置しさえすれば、当該金型基体の一面と鋼材の一面との間にスペーサが配置されることになるため、当該配置位置の精度を保持しながらも配置工程を簡略化することができる。
【0024】
また、前記硬化状態の熱硬化性樹脂の熱伝導率をλ[W/(mK)]とし、前記スペーサの高さをt[mm]とした場合、λ/t=1000[W/(m
2K)]の関係にあることが好ましい。
【0025】
このようにした場合、キャビティ領域の温度推移はおおむね一定に収束することが本発明者の実験により確認されている。
このため、成形用溶融樹脂の射出期間にはその成形用溶融樹脂のガラス転移温度以上となり射出後には速やかにガラス転移温度を下回るという断熱効果を得るための断熱層の厚みを、スペーサの高さによって厳密に制御することができる。
したがって、成形用溶融樹脂の射出期間における良好な転写性を実現しながらも、当該射出期間後の冷却時間を短縮化し得る断熱層を形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、より設計値に近い成形品を成形し得る断熱金型の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る断熱金型の製造方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施形態における断熱金型の製造方法により製造される断熱金型を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態における断熱金型1は、保護層10と、金型基体20と、当該保護層10及び金型基体20間に介在される断熱層30とを主な構成要素として備える。
【0030】
保護層10は、薄板に対して焼き入れ処理等の加工処理を施した鋼材であり、例えば保護層10の中央領域に、平坦形状のキャビティ領域CARが形成される。なお、キャビティ領域CARは、成形すべき空間と接する面領域であり、当該キャビティ領域CARの上方はキャビティCAV(成形空間)となる。
【0031】
保護層10の厚みは、保護層として得るべき強度や射出成形すべき成形品の材料等によって変わるものであるが、おおむね0.2[mm]〜1.5[mm]の範囲内とされる。保護層10の材料は、金属、合金等を挙げることができ、具体的には例えば、合金工具鋼、ダイス鋼あるいは高速度工具鋼等の工具鋼や、マルテンサイト系ステンレス鋼等がある。
【0032】
本実施形態の場合、保護層10におけるキャビティ領域CARの厚みT1は、キャビティ領域CAR以外の領域NARの厚みT2よりも小さくされ、当該領域NARには、保護層10の一面S1から鉛直方向に延在する複数のねじ孔11が穿設される。この一面S1は、保護層10における成形空間側の面とは逆側の裏面とされ、当該一面S1の略中央領域には角錐台状の凹部が形成される。この形状は、保護層10の一面S1に対向される金型基体20の一面S2の形状に対応している。
【0033】
金型基体20は、鋼材に対して焼き入れ処理等の加工処理を施したものである。金型基体20の厚みは、特に制限されるものではないが、少なくとも保護層10及び断熱層30よりも大きくされる。金型基体20の材料は、金属、合金等を挙げることができ、具体的には例えば、合金工具鋼、ダイス鋼あるいは高速度工具鋼等の工具鋼や、マルテンサイト系ステンレス鋼等がある。
【0034】
本実施形態の場合、金型基体20の一面S2の略中央領域には角錐台状の凸部が形成される。この金型基体20の一面S2に形成される凸部と、保護層10の一面S1に形成される凹部とが正対する状態で、当該金型基体20の一面S2と保護層10の一面S1とが断熱層30を隔てて配置される。なお、保護層10の一面S1と金型基体20の一面S2とは互いに略平行であり、当該一面S1と一面S2との間の距離は、当該面内のどの位置でも同程度の関係にある。
【0035】
金型基体20の周縁部位には、当該周縁部位の面の鉛直方向に貫通する複数のねじ孔21が穿設され、これらねじ孔21の一面S2側の開口縁にはスペーサ22が形成される。なお、ねじ孔21の穿設位置は、保護層10のねじ孔11の穿設位置と相対的に同位置とされる。
【0036】
断熱層30は、保護層10と金型基体20との熱の出入りを遮る層であり、保護層10及び金型基体20との接着を兼ねている。この断熱層30の厚みT3は、射出成形すべき成形品の材料等によって変わるものであるが0.2[mm]〜1.5[mm]の範囲内とされる。
【0037】
また、断熱層30の材料は熱硬化性樹脂とされる。この熱硬化性樹脂として、具体的にはエポキシアクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、あるいは、熱硬化性ポリイミドなどが挙げられる。
【0038】
なお、熱硬化性樹脂には、フィラーと呼ばれる無機粒子が強化剤として含有されていても良い。この無機粒子の形状は球形であるほうが好ましく、その粒径は1〜100[μm] の範囲内にあると良い。また、無機粒子の含有率は60〜90重量%の範囲内にあると良い。このような無機粒子として、具体的にはガラスビーズなどが挙げられる。
【0039】
また、硬化状態にある熱硬化性樹脂の熱伝導率と、断熱層30の厚みT3を規定するスペーサ22との関係は、当該熱伝導率をλ[W/(mK)]とし、当該スペーサ22の高さをt[mm]とした場合、λ/t=1000[W/(m
2K)]の関係にある。
【0040】
このような断熱層30を挟んで上述の保護層10と金型基体20とが配置され、当該保護層10と金型基体20とが断熱層30に接着される。また、保護層10に形成されるねじ孔11と、金型基体20に形成されるねじ孔21とにボルトBTが通され、当該保護層10と金型基体20とが固定される。
【0041】
次に、この断熱金型1の製造方法について説明する。
【0042】
図2は、本実施形態における断熱金型1の製造方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、本実施形態における断熱金型1の製造方法は、金型体生成工程P1と、圧力付加工程P2と、凹凸除去工程P3とを主工程として備える。
【0043】
<金型体生成工程>
この金型体生成工程P1は、金型基体20の表面に断熱層30が装着されその断熱層30の表面に保護層10が装着された金型体を生成する工程である。本実施形態における金型体生成工程P1は、準備工程P1A、配置工程P1B、硬化工程P1C及び形成工程P1Dを有する。
【0044】
≪準備工程≫
この準備工程P1Aは、断熱金型1の保護層10とすべき鋼材と、断熱金型1の金型基体20と、断熱金型1の断熱層30とすべき未硬化状態の熱硬化性樹脂とを準備する工程である。
【0045】
断熱金型1の保護層10とすべき鋼材として、例えば
図3に示すように、略矩形状の板材に対して焼き入れ処理等の加工処理を施した鋼材40が準備される。
【0046】
この鋼材40の厚みTは、保護層10の厚みよりも大きいものとされる。また、この鋼材40には上述のねじ孔11が穿設され、当該鋼材40の一方の面には、金型基体20の一面S2に対向すべき一面S1として、当該金型基体20の一面S2の形状に対応する形状に形成される。
【0047】
一方、断熱金型1の金型基体20として、例えば
図4に示すように、鋼材40の水平面と同面積の略矩形状を有する鋼材に対して焼き入れ処理等の加工処理を施したものが準備される。
【0048】
上述したように、この金型基体20にはねじ孔21が穿設され、当該金型基体20の一面S2には角錐台状の凸部及びスペーサ22が形成される。
【0049】
他方、断熱金型1の断熱層30とすべき未硬化状態の熱硬化性樹脂として、例えば、基材と硬化剤とを混合し流動性を調整したものが準備される。なお、必要に応じて、無機フィラー等の強化剤やその他の添加剤が基材及び硬化剤とともに混合される。
【0050】
≪配置工程≫
この配置工程P1Bは、鋼材40の一面S1と金型基体20の一面S2との間に所定距離の隙間を隔てて鋼材40及び金型基体20を配置し、当該隙間に未硬化状態の熱硬化性樹脂を配置する工程である。
【0051】
具体的には、第1段階として、
図5に示すように、金型基体20の一面S2側に形成されるスペーサ22の高さ以上となるよう、未硬化状態の熱硬化性樹脂50が金型基体20の一面S2に塗布される。
【0052】
第2段階として、
図6に示すように、鋼材40の一面S1と金型基体20の一面S2とが正対する状態で、鋼材40の一面S1が金型基体20上に載置される。これにより鋼材40の一面S1と金型基体20の一面S2とが、スペーサ22を介して、当該面内のどの位置でも等距離となる。
【0053】
≪硬化工程≫
この硬化工程P1Cは、未硬化状態の熱硬化性樹脂50を硬化させる工程である。具体的には、第1段階として、
図7の(A)に示すように、金型基体20のねじ孔21と鋼材40のねじ孔11とにボルトBTが通され、金型基体20と鋼材40とが固定される。これにより金型基体20は押し付けられた状態となる。なお、この第1段階の作業は、配置工程P2で行われても良い。
【0054】
第2段階として、金型基体20が押し付けられた状態で、例えば加熱炉にて未硬化状態の熱硬化性樹脂50が加熱される。これにより未硬化状態の熱硬化性樹脂50の硬化が進行し、
図7の(B)に示すように、立体網目状に架橋された断熱層30が形成される。
【0055】
≪形成工程≫
この形成工程P1Dは、
図8に示すように、鋼材40をその鋼材40の一面とは逆側から削って、硬化状態の熱硬化性樹脂(断熱層30)上の少なくとも一部にキャビティ領域CARを形成する工程である。
【0056】
具体的には、キャビティ領域として形成すべき部分の厚みT1が、キャビティ領域として形成すべき部分以外の厚みT2に比べて小さくなるように、鋼材40が削られる。そして、金型基体20の一面S2における凸部に沿って、断熱層30からの厚みが均等となる平坦形状のキャビティ領域CARが、鋼材40の表面として削り出される。具体的な研削手法としては、例えば、フライス盤加工や放電加工等がある。
【0057】
このように上述の準備工程P1A、配置工程P1B、硬化工程P1C及び形成工程P1Dを順次経ることで、製品前段階の
図1に示すような金型体が得られる。
【0058】
<圧力付加工程>
この圧力付加工程P2は、成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力を、金型体の保護層10におけるキャビティ領域CARに付加する工程である。
【0059】
具体的には、第1段階として、金型体生成工程P1で得られた金型体が、射出成形機における一方又は双方の金型取付部位に取り付けられる。また、この金型体は所定の温度に加熱され、当該温度で維持するよう調整される。
【0060】
なお、金型体生成工程P1で得られた金型体が射出成形機における一方の金型取付部位だけに取り付けられる場合、当該射出成形機における他方の金型取付部位には、金型体生成工程P1とは別の工程によって得られた他の金型体が取り付けられる。この他の金型体における断熱層の有無は問わない。
【0061】
第2段階として、金型体生成工程P1で得られた金型体を用いた型締により形成されるキャビティに、射出成形機における射出機構から溶融樹脂が射出される。この射出時には、射出機構における射出用スクリューの移動速度(射出速度)が制御される。なお、溶融樹脂は、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂と同じ種類であっても異なる種類であっても良い。
【0062】
第3段階として、射出用スクリューが所定位置に達した場合あるいは射出圧力が所定値に達した場合、射出用スクリューの制御が速度制御から圧力制御に切り換えられ、キャビティ内がおおむね一定に保圧される。
【0063】
この保圧力は、成形時にキャビティの表面に付加すべき保圧力よりも高いものとされる。例えば、成形用溶融樹脂をポリカーボネートとし、当該ポリカーボネートの粘度を900Pas程度とし、金型体の加熱温度を100℃程度とした場合、成形時にキャビティの表面に付加すべき保圧力は80MPa程度となったが、本実施形態の場合には120MPa程度とされる。このような保圧力の変更は、射出機構における設定を切り換えることで実現可能である。なお、本実施形態における圧力付加工程P2では、保圧力以外の各種パラメータの値は成形時の値と同程度とされる。
【0064】
第4段階として、キャビティに充填された溶融樹脂が離型可能温度まで冷却され、型開後に離型される。
【0065】
第5段階として、金型体の温度を常温程度まで冷却し、射出成形機における金型取付部位から金型体が外される。なお、この冷却は、射出成形機における冷却機構を用いても良く自然冷却であっても良い。
【0066】
図9は、圧縮付加工程後の金型表面形状を示す実験結果である。この実験では、保護層10の厚みが異なる3つの金型体が用意され、当該金型体ごとに、50ショット連続成形を実施した後の保護層10におけるキャビティ領域CARの表面形状がそれぞれグラフとして示されている。これらグラフの左端はキャビティの射出側であり、当該グラフの右端はキャビティの末端側である。なお、この実験における保圧力は120MPaとされ、当該保圧力以外の各種パラメータは上記圧力付加工程P2の第3段階で示した各値とされる。
【0067】
図9に示すように、成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力でキャビティ内を保圧した場合には、金型体における保護層10を厚くしても、当該保護層10の表面がうねるように変形し、歪んだ状態になっていることが分かる。なお、このような状態は、断熱層30に含まれる気泡や、当該断熱層30と保護層10との界面に形成される間隙が圧縮されることを主要因として生じる。
【0068】
<凹凸除去工程>
この凹凸除去工程P3は、圧力付加工程P2を経た金型体の保護層10におけるキャビティ領域CARの表面から凹凸を除去する工程である。
【0069】
具体的には、圧力付加工程P2を経ることで歪んだ状態にある保護層10の表面全体が、例えばフライス盤加工や放電加工等によって削られ、当該保護層10におけるキャビティ領域CARの表面から凹凸が除去される。
【0070】
図10は、凹凸除去工程後の金型表面形状を示す実験結果である。この
図10に示す各グラフは、
図9において圧縮付加工程を実行した3つの金型体の保護層10それぞれのキャビティ領域CARの表面の凹凸を除去した結果を示している。
【0071】
図10に示すように、保護層10における表面から凹凸をおおむね正確に除去することができることが分かる。
【0072】
このように上述の金型体生成工程P1、圧力付加工程P2及び凹凸除去工程P3を順次経ることで、
図1に示すような断熱金型1が得られる。
【0073】
以上のとおり、本実施形態における断熱金型1の製造方法は、金型体生成工程P1で得られた金型体の保護層10におけるキャビティ領域CARに対して成形時に加わる圧力よりも高い圧力を成形前に予め付加し、その圧力によって断熱層30を圧縮させて保護層10を積極的に変形させる(
図9)。そして、この保護層10におけるキャビティ領域CARの表面から凹凸を除去する(
図10)。
【0074】
このため、成形時において通常の圧力がキャビティ領域CARに加えられても、その圧力によってさらに断熱層30が圧縮することを未然に防止することができ、この結果、キャビティ領域CARの表面から凹凸を除去した状態が維持される。
【0075】
図11は、本実施形態の製造方法により製造された断熱金型を用いて成形した後の金型表面形状を示す実験結果である。この実験では、
図9に示す実験において用意された3つの金型体に対して圧縮付加工程及び凹凸除去工程を順次実行することにより得られた断熱金型ごとに、50ショット連続成形を実施した後の保護層10におけるキャビティ領域CARの表面形状がそれぞれグラフとして示されている。これらグラフの左端はキャビティの射出側であり、当該グラフの右端はキャビティの末端側である。なお、この実験における保圧力は80MPaとされ、当該保圧力以外の各種パラメータは上記圧力付加工程P2の第3段階で示した各値とされる。
【0076】
この
図11と
図10との比較から、断熱金型1における保護層10が薄い場合であっても、キャビティ領域CARの表面から凹凸を除去した状態が維持されていることが分かる。
【0077】
このように本実施形態における断熱金型1の製造方法によれば、より設計値に近い成形品を成形し得る断熱金型1を製造することができる。
【0078】
また、本実施形態における金型体生成工程P1では、
図7に示したように、未硬化状態の熱硬化性樹脂50が、鋼材40と金型基体20との間に介在した状態で硬化される。このため、硬化状態にある断熱層30の表面が凹凸になることを抑制することができる。
【0079】
また、キャビティ領域CARは、鋼材40と金型基体20との間に配置される未硬化状態の熱硬化性樹脂50を硬化させた後、
図8に示したように、その鋼材40を削ることで形成される。
【0080】
このため、予めキャビティ領域を形成した鋼材と金型基体との間に未硬化状態の熱硬化性樹脂を配置して硬化させる場合に比べて、鋼材40と金型基体20とを接合する際の圧力や、未硬化状態の熱硬化性樹脂50が硬化する際の収縮に伴う応力等に起因して鋼材40が歪むことを抑制することができる。
【0081】
なお、未硬化状態の熱硬化性樹脂50は、鋼材40と金型基体20との間に介在した状態で硬化されるため、当該硬化後の熱硬化性樹脂を断熱層30としてのみならず、鋼材40と金型基体20との接合部材として共用することができる。したがって、断熱層30と鋼材40又は金型基体20とを接合する部材(接着剤等)の厚みを考慮することなく、当該断熱層30の厚みを正確に規定することができる。
【0082】
また、キャビティ領域CARは、鋼材40を削ることで形成されているため、めっき法により薄膜を形成する場合に比べてキャビティ領域CARの強度を大きくすることができ、この結果、本製法によって製造される断熱金型1の耐久性を向上させることもできる。
【0083】
ところで、本実施形態における金型体生成工程P1では、
図7に示したように、鋼材40の一面S1と金型基体20の一面S2との間において、キャビティ領域CARの鉛直方向を避けた位置にスペーサ22が配置され、当該金型基体20が押し付けられた状態で、未硬化状態の熱硬化性樹脂50が加熱される。
【0084】
このため、鋼材40と金型基体20との間に配置されるスペーサ22によって、未硬化状態の熱硬化性樹脂50をある一定以上の厚みとしても、その厚みのムラを金型基体20の押し付けによって大幅に抑制することができる。また、鋼材40と金型基体20との間に配置させるべきスペーサ22の高さによって、未硬化状態の熱硬化性樹脂50の厚みを制御することができ、この結果、スペーサ22の高さを断熱層30の厚みとして正確に断熱層30を形成することができる。
【0085】
また本実施形態の場合、
図4に示したように、スペーサ22は、金型基体20と一体に成形される。このため、金型基体20の一面S2上に鋼材40の一面S1を配置しさえすれば、当該金型基体20と鋼材40との間にスペーサ22が配置されることになる。したがって、スペーサ22の配置位置の精度を保持しながらも、そのスペーサ22の配置工程を簡略化することができる。
【0086】
また本実施形態の場合、硬化状態の熱硬化性樹脂の熱伝導率をλ[W/(mK)]とし、スペーサ22の高さHをt[mm]とした場合、λ/t=1000[W/(m
2K)]の関係とされる。
【0087】
ここで、100mmの厚みを有する金型層の表面に断熱層が被覆される断熱金型のキャビティに2mmの厚みを有する成形用溶融樹脂層を射出した解析モデルを用いて、断熱層における物性及び厚さの影響を解析した結果を下記表に示す。
【表1】
【0088】
上記表に示される各温度は、成形用溶融樹脂層の中心から断熱層までの厚さ1mm部分における温度(以下、境界温度という。)である。なお、この解析モデルにおける成形用溶融樹脂はポリカーボネートとし、当該成形用溶融樹脂層の初期温度は300℃とし、断熱層及び金型層の初期温度は100℃とし、金型層の末端部分(断熱層に対向する側とは逆側部分)の温度は100℃で一定とした。
【0089】
上記表の「1」から「6」までに示されているとおり、断熱層における熱伝導率λと厚みtとがλ/t=1000の関係にある場合、断熱層の材質や熱浸透率が異なっていても、境界温度の推移はおおむね一定に収束することが分かった。
【0090】
これに対し上記表の「7」に示されているとおり、λ/tの値が1000よりも大幅に小さい場合には、境界温度の降温時間が極めて遅いことが分かった。なお、上記表には示していないが、λ/tの値が1000より小さくなるほど、境界温度の単位時間当たりの下がり幅が小さくなることが分かっている。
【0091】
また、上記表の「8」に示されているとおり、λ/tの値が1000よりも大幅に大きい場合には、境界温度の降温時間が極めて早いことが分かった。なお、上記表には示していないが、λ/tの値が1000より大きくなるほど、境界温度の単位時間当たりの下がり幅が大きくなることが分かっている。
【0092】
つまり、λ/t=1000の関係を充足している限り、成形用溶融樹脂の射出期間には境界温度がガラス転移温度以上となり射出後には速やかにガラス転移温度を下回るという断熱効果を、断熱層30の厚みによって得ることが可能である。そして、このような効果を得るための断熱層30の厚みを、スペーサ22によって厳密に制御することができる。したがって、成形用溶融樹脂の射出期間における良好な転写性を実現しながらも、当該射出期間後の冷却時間を短縮化し得る断熱層30を形成することができる。
【0093】
なお、上記実施形態はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0094】
上記実施形態では、成形時にキャビティの表面に付加すべき保圧力よりも高い保圧力が、金型体生成工程P1で生成された金型体のキャビティ領域CARに付加された。しかしながら、成形時にキャビティの表面に付加すべき保圧力よりも高い保圧力をキャビティ領域CARに付加する手法以外の手法を用いて、成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力をキャビティ領域CARに付加するようにしても良い。
【0095】
例えば、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の溶融樹脂を、金型体の型締により形成されるキャビティに射出して、成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力を付与するようにしても良い。
【0096】
具体的には、圧力付加工程P2の第2段階として、金型体生成工程P1で得られた金型体を用いた型締により形成されるキャビティに、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の溶融樹脂が射出成形機における射出機構から射出される。
【0097】
なお、溶融樹脂は、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂と同じ種類であっても異なる種類であっても良く、当該溶融樹脂の粘度はキャピラリーレオメーター等により測定可能である。また、このような溶融樹脂を射出する場合、圧力付加工程P2の第3段階でキャビティ内を保圧する際の保圧力は、成形時にキャビティの表面に付加すべき保圧力と同じであっても良く、当該保圧力よりも高い保圧力であっても良い。
【0098】
このようにした場合、射出された溶融樹脂の先端部分が、成形時に成形用溶融樹脂を射出する場合に比べて高い圧力を保護層の表面に加えながらキャビティ末端へ流動することになる。このため、射出機構におけるスクリューの移動速度(射出速度)が成形時と同じであったとしても、成形時において成形用溶融樹脂を射出する場合に比べて高い圧力を金型体の保護層10の表面に部分的に集中させながら流動方向に沿って移行させることができる。この結果、圧力付加工程P2において、射出機構に過度の負荷を与えることなく保護層10を積極的に変形させておくことができる。
【0099】
また、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂の粘度よりも低い粘度の溶融樹脂を、金型体の型締により形成されるキャビティに射出した後、保圧によって成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力を付与するようにしても良い。
【0100】
具体的には、圧力付加工程P2の第2段階として、金型体生成工程P1で得られた金型体を用いた型締により形成されるキャビティに、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂の粘度よりも低い粘度の溶融樹脂が射出成形機における射出機構から射出される。
【0101】
なお、溶融樹脂は、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂と同じ種類であっても異なる種類であっても良い。また、このような溶融樹脂を射出する場合、圧力付加工程P2の第3段階でキャビティ内を保圧する際の保圧力は、成形時にキャビティの表面に付加すべき保圧力と同じであっても良く、当該保圧力よりも高い保圧力であっても良い。
【0102】
このようにした場合、保圧力に対する溶融樹脂の圧力損失を、その溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の成形用溶融樹脂を用いる場合に比べて低減することができ、また、ゲート部における溶融樹脂が固化するまでの期間を、その溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の成形用溶融樹脂を用いる場合に比べて長くすることができる。したがって、成形時において成形用溶融樹脂を保圧する場合に比べて高い圧力を、当該成形時における冷却期間よりも長く金型体の保護層10の表面に加えることができる。この結果、圧力付加工程P2において、射出機構に過度の負荷を与えることなく保護層を積極的に変形させておくことができる。
【0103】
また、成形時に射出すべき成形用溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の溶融樹脂をキャビティに射出した後に保圧すること、及び、成形用溶融樹脂の粘度よりも低い粘度の溶融樹脂をキャビティに射出した後に保圧することの双方を実行して、成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力を付与するようにしても良い。
【0104】
具体的には、成形用溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の溶融樹脂を用いて圧力付加工程P2の第2段階〜第4段階が実行され、その後、当該成形用溶融樹脂の粘度よりも低い粘度の溶融樹脂を用いて圧力付加工程P2の第2段階〜第4段階が実行される。
【0105】
なお、成形用溶融樹脂の粘度よりも低い粘度の溶融樹脂を用いて圧力付加工程P2の第2段階〜第4段階が実行された後、当該成形用溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の溶融樹脂を用いて圧力付加工程P2の第2段階〜第4段階が実行されても良い。
【0106】
成形用溶融樹脂の粘度よりも高い粘度の溶融樹脂をキャビティに射出した後に保圧する場合、当該キャビティでは射出側が射出末端側に比べて高い圧力が加わる圧力分布になる傾向がある。一方、成形用溶融樹脂の粘度よりも低い粘度の溶融樹脂をキャビティに射出した後に保圧する場合、当該キャビティでは射出末端側でも射出側に近い圧力が加わる圧力分布になる傾向がある。したがって、キャビティにおける射出側と射出末端側との間の距離が長い場合であっても、成形時における通常の圧力よりも高い圧力を、おおむね均一に保護層10に加えることができる。
【0107】
また、成形時に金型に加えるべき温度よりも高い温度を金型体に加えながら、当該金型体を用いた型締により形成されるキャビティに樹脂を射出した後、保圧によって成形時にキャビティの表面に付加すべき圧力よりも高い圧力を付与するようにしても良い。
【0108】
具体的には、圧力付加工程P2の第1段階として、金型体生成工程P1で得られ、射出成形機における金型取付部位に取り付けられた金型体が所定の温度に加熱され、当該温度で維持するよう調整される。
【0109】
なお、圧力付加工程P2の第3段階でキャビティ内を保圧する際の保圧力は、成形時にキャビティの表面に付加すべき保圧力と同じであっても良く、当該保圧力よりも高い保圧力であっても良い。
【0110】
このようにした場合、ゲート部における溶融樹脂が固化するまでの時間(保護層10に保圧力を与える期間)を、成形時において断熱金型1を通常の温度で加熱する場合に比べて長くすることができる。この結果、圧力付加工程P2において、保護層10を積極的に変形させておくことができる。
【0111】
また上記実施形態では、準備工程P1A、配置工程P1B、硬化工程P1C及び形成工程P1Dを経て金型体が生成された。しかしながら、金型体生成工程P1において、金型基体20の表面に断熱層30が装着されその断熱層30の表面に保護層10が装着された金型体が生成されるのであれば、必ずしも上述の配置工程P1B、硬化工程P1C及び形成工程P1Dが実行されなくても良い。
【0112】
また上記実施形態では、平坦形状のキャビティ領域CARが削り出されたが、例えば
図12に示すように凹形状のキャビティ領域CARが削り出されても良く、例えば
図13に示すように、凸形状のキャビティ領域CARが削り出されても良い。
【0113】
図12に示す断熱金型は、上記実施形態と異なる形状の保護層10(鋼材40)及び金型基体20を有している点で、上記実施形態の断熱金型1とは相違する。具体的に
図12に示す保護層10(鋼材40)の一面S1には、略中央領域が隆起しその辺縁が窪む凹凸部が形成される点で、角錐台状の凹部が形成された上記実施形態の保護層10(鋼材40)とは相違する。また、
図12に示す金型基体20の一面S2には、略中央領域が窪みその辺縁が隆起する凹凸部が形成される点で、角錐台状の凸部が形成された上記実施形態の金型基体20とは相違する。
【0114】
このような断熱金型は、上述の準備工程P1A、配置工程P1B、硬化工程P1Cを順に経た後、形成工程P1Dにおいて、鋼材40の一面S1とは逆側の面から、当該一面S1の凸部に沿った凹面を削り出した後、圧力付加工程P2及び凹凸除去工程P3を順次経ることで製造することができる。
【0115】
図13に示す断熱金型は、上記実施形態と異なる形状の保護層10(鋼材40)及び金型基体20を有している点で、上記実施形態の断熱金型1とは相違する。具体的に
図13に示す保護層10(鋼材40)の一面S1には、略中央領域が窪みその辺縁が隆起する凹凸部が形成される点で、上記実施形態の保護層10(鋼材40)とは相違する。また、
図13に示す金型基体20の一面S2には、略中央領域が隆起しその辺縁が窪む凹凸部が形成される点で、上記実施形態の金型基体20とは相違する。
【0116】
このような断熱金型は、上述の準備工程P1A、配置工程P1B、硬化工程P1Cを順に経た後、形成工程P1Dにおいて、鋼材40の一面S1とは逆側の面から、当該一面S1の凹部に沿った凸面を削り出した後、圧力付加工程P2及び凹凸除去工程P3を順次経ることで製造することができる。
【0117】
なお、上記実施形態、
図12及び
図13に示したように、キャビティ領域として形成すべき部分の厚みT1が、キャビティ領域として形成すべき部分以外の厚みT2に比べて小さくなるように鋼材40を削ることは必須の条件となるものではない。ただし、上述したように断熱層30と鋼材40あるいは断熱層30と金型基体20との剥離を低減する観点では、キャビティ領域として形成すべき部分の厚みT1が、キャビティ領域として形成すべき部分以外の厚みT2に比べて小さくなるように鋼材40を削るほうが好ましい。
【0118】
また、キャビティ領域CARの形状は、上記実施形態、
図12及び
図13に示された形状に限らず、種々の形状を幅広く適用することができる。さらに、鋼材40の一面S1と金型基体20の一面S2との形状は、少なくともキャビティ領域CARの鉛直方向上にある部分の面同士が所定の距離を隔てて配置される限り、上記実施形態、
図12及び
図13に示した以外の種々の形状を幅広く適用することができる。
【0119】
また上記実施形態では、鋼材40(保護層10)に形成されるキャビティ領域CARが1つとされたが、2以上とされても良い。なお、キャビティ領域CARを2以上とする場合、各キャビティ領域が独立した状態にあっても良く、各キャビティ領域同士が繋がった状態にあっても良く、独立した状態にあるキャビティ領域と、繋がった状態にあるキャビティ領域とが混在していても良い。
【0120】
また上記実施形態では、未硬化状態の熱硬化性樹脂50が金型基体20の一面S2に塗布され、当該金型基体20上に鋼材40の一面S1が載置された。しかしながら、未硬化状態の熱硬化性樹脂50が鋼材40の一面S1に塗布され、当該鋼材40上に金型基体20の一面S2が載置されても良い。また、金型基体20の一面S2上に鋼材40の一面S1が載置された後に、当該金型基体20と鋼材40との間に未硬化状態の熱硬化性樹脂50が充填されても良い。さらに、未硬化状態の熱硬化性樹脂50が入れられた容器内において金型基体20の一面S2上に鋼材40の一面S1が載置された後、その載置状態のまま金型基体20及び鋼材40を容器から取り出すようにしても良い。要するに、配置工程P2では、鋼材40の一面S1と金型基体20の一面S2との間に所定距離の隙間を隔てて鋼材40及び金型基体20が配置され、当該隙間に未硬化状態の熱硬化性樹脂が配置されれば良い。
【0121】
また上記実施形態では、金型基体20及び鋼材40の周縁部位をボルトBTによって終結することによって金型基体20が鋼材40に押し付けられた。しかしながら、鋼材40が金型基体20に押し付けられても良く、また、終結以外の手法により金型基体20及び鋼材40の一方が他方に押し付けられても良い。
【0122】
また上記実施形態では、スペーサ22が、金型基体20の一面S2と一体に形成されたが、鋼材40の一面S1と一体に形成されていても良い。また、スペーサ22は、金型基体20におけるねじ孔21の開口縁に形成されたが、鋼材40のねじ孔11の開口縁に形成されていても良く、鋼材40と金型基体20との間であれば、当該開口縁以外であっても良い。要するに、スペーサ22は、鋼材40の一面S1と金型基体20の一面S2との間において、キャビティ領域CARの鉛直方向を避けた位置である限り、どの位置に配置されていても良く、当該鋼材40又は金型基体20と一体であっても別体であっても良い。
【0123】
また上記実施形態では、鋼材40に形成されたキャビティ領域CARの表面に対して何ら加工が施されなかったが、例えばシボ加工等の表面加工が施されていても良い。