特許第5969330号(P5969330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969330
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ロータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   H02K1/22 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-195256(P2012-195256)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-54011(P2014-54011A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】原田 優
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−243145(JP,A)
【文献】 特開昭62−126851(JP,A)
【文献】 特開平11−069749(JP,A)
【文献】 実開平02−033563(JP,U)
【文献】 特開2006−223082(JP,A)
【文献】 特開平07−023537(JP,A)
【文献】 特開平11−299179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティース部の基端部同士を環状に連結してなる環状部を有したロータコアを軸方向に複数のコアブロックに仮想分割し、その仮想分割したコアブロックにて少なくとも前記環状部の形状を異ならせる構成としたロータであって、
前記ロータコアは、径方向幅の異なる環状部を有する前記仮想分割した複数のコアブロックが軸方向に混在して配置されており、
前記複数のコアブロックは、
径方向幅狭の環状部を有し少なくとも該環状部がコアブロック単体において飽和磁束密度となるコアブロックと、
径方向幅広の環状部を有し少なくとも該環状部がコアブロック単体において非飽和磁束密度となるコアブロックとを含み、
前記径方向幅狭の環状部を有するコアブロックは、回転軸を回転可能に支持する軸受の少なくとも一部を環状部の内側に収容する最も径方向幅狭の環状部を有するコアブロックを含んでおり、
前記径方向幅広の環状部を有するコアブロックは、前記回転軸に固定される最も径方向幅広の環状部を有するコアブロックを含んでおり、
前記ロータコアは、前記コアブロック単体において飽和磁束密度となる前記径方向幅狭の環状部に流しきれない磁束を前記径方向幅広の環状部にて流すことで、ロータコアの環状部全体で磁気飽和しないように構成されたことを特徴とするロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータにおいて、
飽和磁束密度となる径方向幅狭の環状部を有する前記コアブロックと、非飽和磁束密度となる径方向幅広の環状部を有する前記コアブロックとが隣接するように、前記ロータコアが構成されたことを特徴とするロータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロータにおいて、
前記ロータコアは、全部のコアブロックで環状部の外径を同じとし、環状部内側の開口径の大小でコアブロックの環状部の幅が異なるように構成されたことを特徴とするロータ。
【請求項4】
請求項に記載のロータにおいて、
前記ロータコアは、軸方向端部に位置するコアブロックほど、環状部内側の開口径が大きく環状部が幅狭となるように構成されたことを特徴とするロータ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のロータにおいて、
前記ロータコアは、磁性金属板材よりなるコアシートを軸方向に複数枚積層しその積層前後のコアシートを互いに固定する固定部がそのコアシートに設けられるものであり、
前記固定部は、前記ティース部が設けられる位置の前記環状部に設けられたことを特徴とするロータ。
【請求項6】
請求項に記載のロータにおいて、
前記ロータコアの環状部に設ける前記固定部は、前記環状部の幅方向における前記ティース部とは反対側寄りに設けられたことを特徴とするロータ。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のロータを備えたことを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティース部にコイルが巻回される構成のロータ、及びそのロータを備えたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示のモータのように、ロータコアの回転軸周りに収容部を形成し、その収容部内にモータ構成部品の一つである軸受(軸受保持部)等を収容することで、モータの小型化を図るようにしたものがある。
【0003】
ところで、ロータコアは、外周側において周方向に複数配置されるティース部の基端部同士を環状に連結し、ティース部とその環状部とでロータコア側の磁気回路を構成している。そのため、特許文献1に開示のモータのように、ロータコアの回転軸周りに収容部を形成するには、ロータコアを軸方向に複数のブロックに仮想分割し、その中に環状部の内側に大きな開口を有するコアブロックを設定する。
【0004】
その際、環状部の内側の開口にて環状部の幅(径方向幅)を狭く制限するが、環状部は磁気回路の一部であることから、一般には、環状部の幅を最大磁束を許容する幅寸法に設定することが行われる。つまり、内側の開口が大きい幅狭の環状部を有するコアブロックであっても、環状部にて磁気飽和が生じない設定とするのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−223082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、モータの一層の小型化、特に径方向への小型化を図るためには、磁気回路を構成する部位も含めてロータコアの形状の更なる無駄の排除を行う必要がある。反面、磁気回路を構成する部位の形状変更は、磁気的な影響が大きくモータの出力を大きく低下させる虞もあるため、モータの出力に係る磁気的影響に対して十分に配慮しながら、モータの小型化を検討することが望まれている。
【0007】
また、ロータコアの環状部内側の開口は、上記の収容部の形成のための開口のみならず、ロータコアの軽量化やモータ内の冷却性能向上等の観点から開口を設けることもあり、これらの開口がロータコアに設けられるロータついても同様な問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、モータ出力に係る磁気的影響を小さくしつつ、小型化を図ることができるロータ、及びそのロータを備えたモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ティース部の基端部同士を環状に連結してなる環状部を有したロータコアを軸方向に複数のコアブロックに仮想分割し、その仮想分割したコアブロックにて少なくとも前記環状部の形状を異ならせる構成としたロータであって、前記ロータコアは、径方向幅の異なる環状部を有する前記仮想分割した複数のコアブロックが軸方向に混在して配置されており、前記複数のコアブロックは、径方向幅狭の環状部を有し少なくとも該環状部がコアブロック単体において飽和磁束密度となるコアブロックと、径方向幅広の環状部を有し少なくとも該環状部がコアブロック単体において非飽和磁束密度となるコアブロックとを含み、前記径方向幅狭の環状部を有するコアブロックは、回転軸を回転可能に支持する軸受の少なくとも一部を環状部の内側に収容する最も径方向幅狭の環状部を有するコアブロックを含んでおり、前記径方向幅広の環状部を有するコアブロックは、前記回転軸に固定される最も径方向幅広の環状部を有するコアブロックを含んでおり、前記ロータコアは、前記コアブロック単体において飽和磁束密度となる前記径方向幅狭の環状部に流しきれない磁束を前記径方向幅広の環状部にて流すことで、ロータコアの環状部全体で磁気飽和しないように構成される。
【0010】
この発明では、径方向幅狭の環状部に流しきれない磁束を径方向幅広の環状部にて流すことが可能となり、環状部全体で見て非飽和とできることから、モータの出力を損なうこともなく、環状部全体の幅を小さく形成できる。これにより、環状部の外径の小さいロータコアを作製でき、ロータひいてはモータの径方向の小型化に貢献する。また、環状部を径方向幅狭にできることで、環状部の内側の開口を大きくすることも可能である。
また、この発明では、径方向幅狭の環状部を有するコアブロックは、回転軸を回転可能に支持する軸受の少なくとも一部を環状部の内側に収容する最も径方向幅狭の環状部を有するコアブロックを含んでいる。これにより、径方向の小型化に加え、モータの軸方向の小型化に貢献する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、飽和磁束密度となる径方向幅狭の環状部を有する前記コアブロックと、非飽和磁束密度となる径方向幅広の環状部を有する前記コアブロックとが隣接するように、前記ロータコアが構成される。
【0012】
この発明では、飽和磁束密度となる径方向幅狭の環状部と、非飽和磁束密度となる径方向幅広の環状部とが隣接するロータコアの構成としたことで、径方向幅狭の環状部に流しきれない磁束を径方向幅広の環状部にて流すことがより好適に行われる。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のロータにおいて、前記ロータコアは、全部のコアブロックで環状部の外径を同じとし、環状部内側の開口径の大小でコアブロックの環状部の幅が異なるように構成される。
【0018】
この発明では、ロータコアは、全部のコアブロックで環状部の外径を同じとし、環状部内側の開口径の大小でコアブロックの環状部の幅が異なる構成とされる。これにより、ロータコアの形状を複雑化することが防止される。
【0019】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のロータにおいて、前記ロータコアは、軸方向端部に位置するコアブロックほど、環状部内側の開口径が大きく環状部が幅狭となるように構成される。
【0020】
この発明では、ロータコアは、軸方向端部側のコアブロックほど、環状部内側の開口径が大きく環状部が幅狭に構成される。逆に言えば、軸方向中央部側のコアブロックほど環状部が幅広に構成されるため、磁束が一様に軸方向中央部側の環状部にシフトし、磁気抵抗の増大抑制が期待できる。
【0021】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか1項に記載のロータにおいて、前記ロータコアは、磁性金属板材よりなるコアシートを軸方向に複数枚積層しその積層前後のコアシートを互いに固定する固定部がそのコアシートに設けられるものであり、前記固定部は、前記ティース部が設けられる位置の前記環状部に設けられる。
【0022】
この発明では、積層型のロータコアにおいて、コアシートの積層前後を互いに固定する固定部が、ティース部が設けられる位置の環状部に設けられる。これにより、幅狭な環状部が形成されるコアシートにおいても、ティース部が設けられる位置の環状部に固定部を設定することで、固定部の剛性向上に貢献する。
【0023】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のロータにおいて、前記ロータコアの環状部に設ける前記固定部は、前記環状部の幅方向における前記ティース部とは反対側寄りに設けられる。
【0024】
この発明では、ロータコアの環状部に設ける固定部は、環状部の幅方向においてティース部より遠い部位に設けられるため、ティース部付近に設けるよりも磁束の流れに与える影響を小さくでき、磁気抵抗の増大抑制が期待できる。
【0025】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか1項に記載のロータを備えたモータである。
この発明では、上記請求項に記載のロータが備えられることから、モータ出力に係る磁気的影響を小さくしつつ、モータの小型化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のロータ及びモータによれば、モータ出力に係る磁気的影響を小さくしつつ、小型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態におけるモータの軸方向断面図である。
図2】ロータコアの構成を説明するための説明図である。
図3】別例におけるモータ(ロータコア)の構成を説明するための説明図である。
図4】別例におけるモータの構成を説明するための説明図である。
図5】別例におけるモータの構成を説明するための説明図である。
図6】別例におけるモータの構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のモータ10のケース部材として、有底円筒状のヨークハウジング11と、ヨークハウジング11の開口部を閉塞するエンドフレーム12とを有している。ヨークハウジング11の筒部内周面には、界磁用のマグネット13が固着されている。マグネット13の磁極数は6極である。ヨークハウジング11の底部中央部には、内側に向けて円筒状に突出形成された軸受保持部11aが設けられ、軸受保持部11aの内周面にはボール軸受14が圧入されている。マグネット13の内側にはロータ20が回転可能に収容され、ロータ20の回転軸21の基端部が軸受14にて支持されている。
【0029】
ロータ20は、回転軸21と、回転軸21に一体回転可能に組み付けられるロータコア22と、ロータコア22に巻装されるコイル23と、回転軸21に固定されコイル23と電気的に接続される整流子24とを備えている。
【0030】
図1及び図2に示すように、ロータコア22は、軸方向に4つの部位で構成されている。この場合、モータ10の基端部側(軸受14側)から順に、第1コアブロックA、第2コアブロックB、第3コアブロックC、第4コアブロックDとする。第1〜第4コアブロックA〜Dは、外周側に周方向等間隔にコイル23の巻装のための18個のティース部22xを備えている。つまり、マグネット13の磁極数「6」に対し、ロータ20側の突極数は「18」に設定されている。各ティース部22xは、第1〜第4コアブロックA〜Dで同形状に構成されている。
【0031】
ロータコア22の内周側においては、各ティース部22xの基端部同士は互いに円環状に連結されるが、第1及び第4コアブロックA,D、第2コアブロックB、第3コアブロックCで環状部22a〜22dの形状を異ならせている。この場合、環状部22a〜22dの外径を同じとし、内径を異ならせる。
【0032】
第3コアブロックCの環状部22cは、内周側の孔が回転軸21の圧入のための軸孔22c1となっており、第3コアブロックCは、その軸孔22c1への回転軸21の圧入にて回転軸21に固定される。因みに、第1コアブロックAは第2コアブロックBに固定され、その第2コアブロックBは第3コアブロックCの一側面側に固定されるとともに、第4コアブロックDは第3コアブロックCの他側面側に固定される。つまり、第1,第2,第4コアブロックA,B,Dは、回転軸21に直接固定されず、第3コアブロックCを通じて回転軸21に対して間接的に固定されている。第3コアブロックCは、磁性金属板材よりなるコアシート22cxを軸方向に複数枚積層して構成されている。
【0033】
第2コアブロックBの環状部22bは、内周側の孔が第3コアブロックCの軸孔22c1よりも内径が若干大きい収容孔22b1となっており、この第2コアブロックBの収容孔22b1は、回転軸21に外嵌支持されるコイルスプリング15の収容に用いられる。第2コアブロックBは、磁性金属板材よりなるコアシート22bxを軸方向に複数枚積層して構成されている。
【0034】
第1及び第4コアブロックA,Dは、ティース部22xと環状部22a,22dを含めて同形状をなしている。第1及び第4コアブロックA,Dの環状部22a,22dは、内周側の孔が第2コアブロックBの収容孔22b1よりも内径が大きい収容孔22a1,22d1となっており、第1コアブロックAの収容孔22a1はコイルスプリング15及び軸受保持部11a(軸受14)の一部の収容に用いられ、第4コアブロックDの収容孔22d1は整流子24の一部の収容に用いられる。第1及び第4コアブロックA,Dは、磁性金属板材よりなるコアシート22ax,22dxをそれぞれ軸方向に複数枚積層して構成されている。
【0035】
第1〜第4コアブロックA〜Dの各コアシート22ax〜22dxは、環状部22a〜22dに設けた6箇所のかしめ固定部22yにて軸方向の積層前後で互いに連結され、1つのロータコア22として構成される。かしめ固定部22yは、第1及び第4コアブロックA,Dの環状部22a,22dの幅方向中央位置で、3個毎(60°毎)のティース部22xの周方向中心線上に設けられ、第2及び第3コアブロックB,Cについても同位置に設けられる。
【0036】
第1〜第4コアブロックA〜Dの環状部22a〜22dの幅(径方向幅)Wa〜Wdについて、内側の軸孔22c1、収容孔22b1、収容孔22a1,22d1の径の大きさが次第に大きくなるのに比して、環状部22cの幅Wc、環状部22bの幅Wb、環状部22a,22dの幅Wa,Wdは次第に小さいものとなっている。環状部22a〜22dは、隣接のティース部22x間を連結し、ロータコア22側の磁気回路を構成するため、環状部22a〜22dの幅Wa〜Wdの違いは、その部分での磁束密度の違いとなり、許容する(飽和磁束密度における最大流すことが可能な)磁束量の違いとなる。
【0037】
即ち、第1及び第4コアブロックA,Dの環状部22a,22dは、最も幅狭に設定されることで磁束密度が最も高くなり、界磁用のマグネット13の内径側に収容された状態においてこの第1及び第4コアブロックA,D(コアシート22ax,22dx)のそれぞれで、環状部22a,22dにて磁気飽和となる幅寸法となっている。第2コアブロックBの環状部22bは、次ぎに幅広に設定されることで磁束密度が中間値となり、この第2コアブロックB(コアシート22bx)で、環状部22bにて磁気飽和が生じない幅寸法となっている。第3コアブロックCの環状部22cは、最も幅広に設定されることで磁束密度が低くなり、この第3コアブロックC(コアシート22cx)で、環状部22cにて磁気飽和が生じない幅寸法となっている。そして、このような各コアブロックA〜Dを組み合わせたロータコア22では、環状部22a,22dから環状部22b,22cへと磁束を流し込むことが可能となり、環状部22a〜22d全体の平均磁束密度の設定が磁気飽和しないように構成されている。
【0038】
つまり、モータ10の出力低下を招くような磁気的な影響を生じさせずに各環状部22a〜22dの幅Wa〜Wdが極力小さくなるように、即ちロータ20、ひいてはモータ10の径方向への小型化が図られている。また、軸方向に並ぶ軸受保持部11a(軸受14)、コイルスプリング15、整流子24の一部又は全部が環状部22a,22b,22dの内側の収容孔22a1,22b1,22d1に軸方向から収容されることで、モータ10の軸方向への小型化も図られている。
【0039】
このような第1〜第4コアブロックA〜Dよりなるロータコア22は、第3コアブロックCの軸孔22c1に回転軸21が圧入されることで、回転軸21に対して第3コアブロックCが直接的に固定、第1,第2,第4コアブロックA,B,Dが間接的に固定される。回転軸21の基端部はボール軸受14にて回転可能に支持され、軸受14の外輪14aがヨークハウジング11の軸受保持部11aに圧入されるのに対し、内輪14bには回転軸21が遊嵌されている。つまり、回転軸21(ロータ20)は、軸方向に移動可能に支持されている。そして、この軸受14及び軸受保持部11aの先端部の一部は、第1コアブロックAの収容孔22a1に挿入され収容される。
【0040】
また、ボール軸受14の内輪14bと第3コアブロックCの環状部22cとの軸方向対向面間には、コイルスプリング15が張設されている。コイルスプリング15は、回転軸21に外嵌支持され、第1及び第2コアブロックA,Bの収容孔22a1,22d1内に収容されている。ここで、コイルスプリング15は、軸方向両端に軸方向に直交する直交座面部が形成されており、各端部の直交座面部が、軸方向に直交する面であるボール軸受14の内輪14bの軸方向端面と、軸方向に直交する面であるロータコア22(第3コアブロックCの環状部22c)の軸方向対向面とのそれぞれに面接触している。コイルスプリング15は、ボール軸受14の内輪14bを支点とし、自身の付勢力を第3コアブロックCの環状部22cに作用させて、ロータ20を先端側に押圧するものである。
【0041】
回転軸21の先端側には、整流子24が固定されている。整流子24の外周面には複数個のセグメント24aが固定されており、ロータコア22のティース部22xに巻装されたコイル23の端末線が対応のセグメント24aに対して接続されている。整流子24から突出する回転軸21の先端部は、負荷と連結し駆動力を伝達する出力部21aとして構成されている。尚、回転軸21は、出力部21aを除き、段差のないストレート形状としている。
【0042】
内部にロータ20等を収容したヨークハウジング11の開口部には、エンドフレーム12が装着される。エンドフレーム12の中心部に設けた挿通孔12aからは、回転軸21の先端部に設けた出力部21aを外部に突出させている。
【0043】
エンドフレーム12の内側面には、ブラシ装置25が備えられている。ブラシ装置25は、矩形筒状のホルダ部26を有し、直方体状のブラシ27が径方向に進退可能に収容されている。ブラシ27は、その後端面がスプリング28の付勢力を受け、整流子24の外周面のセグメント24aに圧接する。そして、ブラシ27及び整流子24を通じてロータ20のコイル23に給電が行われ、ロータ20に回転のための磁界を生じさせる。
【0044】
因みに、モータ10の単体では、ボール軸受14の内輪14bに対する回転軸21の基端部の遊嵌に加え、回転軸21の先端側の軸受を省略する本実施形態では回転軸21の傾斜が懸念されるが、整流子24の端面がエンドフレーム12にコイルスプリング15の付勢力にて圧接するようになっており、これにより回転軸21の傾斜が抑制されている。回転軸21の傾斜が抑制されていることで、負荷装置との組み付けの際の組付性向上に貢献する。また、コイルスプリング15の付勢にて回転軸21のがたつきも抑制されることから、モータ10単体での搬送時等にそのがたつきによる不具合発生を未然に防止するといった効果も期待できる。一方、モータ10を負荷装置に組み付けると、回転軸21がコイルスプリング15の付勢力に抗して若干押し込まれてエンドフレーム12と整流子24との接触状態が解消され、ロータ20に回転ロスが生じないようになっている。またこの場合、軸受を省略した回転軸21の先端部は負荷装置側で支持される。
【0045】
次に、本実施形態のモータ10の作用を説明する。
本実施形態のロータ20に用いるロータコア22は、第1,第4コアブロックA,D(コアシート22ax,22dx)のように、界磁用のマグネット13の内径側に収容された状態において飽和磁束密度となる幅寸法とした環状部22a,22dを有するもの、第2,第3コアブロックB,C(コアシート22bx,22cx)のように、界磁用のマグネット13の内径側に収容された状態において非飽和磁束密度となる幅寸法とした環状部22b,22cを有するものを混在させ、幅狭の環状部22a,22dに流しきれない磁束を幅広の環状部22b,22cにて流すようにして、環状部22a〜22d全体の平均磁束密度の設定が磁気飽和しないように構成されている。これにより、環状部22a〜22dの幅Wa〜Wdを極力小さく、環状部22a〜22dの外径を極力小さく構成でき、ロータコア22(ロータ20)、ひいてはモータ10の径方向の小型化に貢献する。
【0046】
またこの場合、ロータ20側の磁気回路の一部を構成する環状部22a〜22dにおいて磁気飽和することが防止されていることから、モータ10の出力低下への影響は小さい。
【0047】
また、モータ10の構成において、軸方向に並ぶ軸受保持部11a(軸受14)、コイルスプリング15、整流子24の一部又は全部がロータコア22の環状部22a,22b,22dの内側に形成した収容孔22a1,22b1,22d1に収容されている。更に加えて、回転軸21の先端側の軸受を省略していることからも、モータ10の軸方向への小型化も図られている。
【0048】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態で用いるロータコア22は、飽和磁束密度となる幅狭の環状部22a,22dを有するコアブロックA,Dと、非飽和磁束密度となる幅広の環状部22b,22cを有するコアブロックB,Cとの混在構成とし、環状部22a〜22d全体の平均磁束密度の設定が磁気飽和しないように構成されている。つまり、コアブロックA〜D毎に見て飽和する幅狭の環状部22a,22dを有するものを用いても、幅広の環状部22b,22cを有するものと混在させることで、幅狭の環状部22a,22dに流しきれない磁束を幅広の環状部22b,22cにて流すことが可能となり、環状部22a〜22d全体で見て非飽和とできることから、モータ10の出力を損なうこともなく、環状部22a〜22dの幅Wa〜Wdを小さく形成することができる。これにより、環状部22a〜22dの外径の小さいロータコア22を作製でき、ロータ20ひいてはモータ10の径方向の小型化を図ることができる。また、環状部22a〜22dを幅狭にできることで、環状部22a〜22dの内側の開口を大きくすることも可能である。
【0049】
(2)飽和磁束密度となる幅狭の環状部22a,22dと、非飽和磁束密度となる幅広の環状部22b,22cとが隣接する構成としたことで、幅狭の環状部22a,22dに流しきれない磁束を幅広の環状部22b,22cにて流すことをより好適に行うことができる。
【0050】
(3)ロータコア22の環状部22a,22b,22d内側に設けられる開口には、収容孔22a1,22b1,22d1としてモータ構成部品である軸受保持部11a(軸受14)、コイルスプリング15、整流子24の一部又は全部が軸方向から収容される。これにより、径方向の小型化に加え、モータ10の軸方向の小型化を図ることができる。
【0051】
(4)コアブロックA〜Dの内、コアブロックCは、回転軸21に固定するためのコアブロックに設定され、他のコアブロックA,B,Dは、そのコアブロックCに固定され、自身にその回転軸21周りに開口(収容孔22a1,22b1,22d1)を有して構成されている。これにより、回転軸21に直接固定しないコアブロックA,B,Dにおいて、回転軸21周りに大きな開口(収容孔22a1,22b1,22d1)を形成でき、収容部として利用する本実施形態では、比較的大きなモータ構成部品を収容することができる。
【0052】
(5)ロータコア22は、全部のコアブロックA〜Dで環状部22a〜22dの外径を同じとし、環状部22a〜22d内側の開口径(孔22a1〜22d1の内径)の大小でコアブロックA〜Dの環状部22a〜22dの幅Wa〜Wdが異なる構成とされている。これにより、ロータコア22の形状を複雑化することを防止している。
【0053】
(6)ロータコア22は、軸方向端部側のコアブロックA,Dほど、環状部22a,22d内側の開口径が大きく環状部22a,22dが幅狭に構成されている。逆に言えば、軸方向中央部側のコアブロックB,Cほど環状部22b,22cが幅広に構成されるため、磁束が一様に軸方向中央部側の環状部22b,22cにシフトし、磁気抵抗の増大抑制が期待できる。
【0054】
(7)ロータコア22において、コアシート22ax〜22dxの積層前後を互いに固定するかしめ固定部22yが、ティース部22xが設けられる位置の環状部22a〜22dに設けられている。これにより、幅狭な環状部22a,22dが形成されるコアシート22ax,22dxにおいても、ティース部22xが設けられる位置の環状部22a,22dにかしめ固定部22yを設定することで、かしめ固定部22yの剛性向上に貢献する。
【0055】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・ボール軸受14の外輪14aを軸受保持部11aに圧入(固定)し、内輪14bと回転軸21と遊嵌としたが、内輪14bと回転軸21とを圧入(固定)し、外輪14aと軸受保持部11aとを遊嵌させてもよい。この場合、コイルスプリング15の支点を外輪14a又はハウジング11側に変更する。また、外輪14a及び内輪14bの両者をそれぞれ圧入する態様としてもよい。ボール軸受14の構造上、外輪14aと内輪14bとは相対的に軸方向に移動可能なため、外輪14a及び内輪14bの両者をそれぞれ固定しても、回転軸21の軸方向への移動が可能で、整流子24とエンドフレーム12との接離を上記実施形態と同様に行わせることは可能である。この場合も、コイルスプリング15の支点を外輪14a又はハウジング11側に変更する。
【0056】
・ロータコア22の構成(形状)を適宜変更してもよい。
例えば図3に示すように、第3コアブロックCの環状部22cにおいて適宜貫通孔22c2を設けてもよい。貫通孔22c2の形成によるロータコア22の軽量化等が期待できる。因みに図3では、貫通孔22c2は、扇形で周方向等間隔に6箇所設けられ、隣接の貫通孔22c2間の連結部22c3が、かしめ固定部22yが位置するティース部22xと径方向に並ぶ態様をなしている。また、環状部22cの幅寸法として、貫通孔22c2の径方向外側の円弧部分に磁束が生じることから、その円弧部分の幅Wc1を上記実施形態のように適切に設定する必要がある。
【0057】
また、第3コアブロックCの貫通孔22c2に対応して第2コアブロックBの環状部22bに貫通孔を設けてもよい。
また、図2図3において、かしめ固定部22yを環状部22a,22dの径方向内側寄り(幅方向におけるティース部22xとは反対側寄り)に設けるようにすれば、ティース部22x付近に設けるよりも磁束の流れに与える影響を小さくでき、磁気抵抗の増大抑制が期待できる。
【0058】
また例えば図4に示すように、第4コアブロックDの収容孔22d1に、セグメント24aの基端部分まで整流子24を収容するというように、その収容度合いを増加させてもよい。この態様では、ロータ20(モータ10)の軸方向の一層の小型化に貢献する。
【0059】
また例えば図5に示すように、第1コアブロックA(第4コアブロックD)と第3コアブロックCとの2種類でロータコア22を構成してもよい。この態様では第2コアブロックBに関する部品を省略でき、モータ10の構成部品の種類を少なくすることができる。
【0060】
また回転軸21と固定する第3コアブロックCから軸方向端部に向かって第2コアブロックB、第1コアブロックAと二段階で環状部22b,22a内側の開口径(収容孔22b1,22a1)を大きくし、環状部22b,22aを二段階で幅狭としたが、3段階以上の多段階としてもよい。例えば図6に示す態様は三段階であり、第2コアブロックBと第1コアブロックAとの間に、環状部22eの幅及びその内側の開口径(収容孔22e1)が両コアブロックB,Aの中間寸法に設定された中間コアブロックEが設けられる。つまり、ロータコア22の内側に形成する空間形状を自由に設定してもよい。
【0061】
・ロータコア22の開口がモータ構成部品の収容部の形成のためのものであったが、軽量化や冷却性能向上等の目的で設けた開口を有するロータコアに対して適用してもよい。
・モータ10の構成を適宜変更してもよい。例えばコイルスプリング15を用いないモータに適用してもよい。整流子24(ブラシ装置25)を用いないモータに適用してもよい。ボール軸受14以外の軸受を用いるモータに適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
20…ロータ、21…回転軸、22…ロータコア、22a,22b,22c,22d,22e…環状部、22a1,22b1,22d1,22e1…収容孔(収容部)、22x…ティース部、22y…かしめ固定部(固定部)、22ax,22bx,22cx,22dx…コアシート、24…整流子(モータ構成部品)、11a…軸受保持部(モータ構成部品)、14…ボール軸受(モータ構成部品)、15…コイルスプリング(モータ構成部品)、A,B,C,D,E…コアブロック、Wa,Wb,Wc,Wc1,Wd…幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6