特許第5969333号(P5969333)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969333
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】自動販売機
(51)【国際特許分類】
   G07F 9/10 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   G07F9/10 101C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-200339(P2012-200339)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-56384(P2014-56384A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】大野 優介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 英夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 博
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−299390(JP,A)
【文献】 特開2007−18132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 9/10
F25D 23/02−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に構成され、前面が開口した商品収納部と、該商品収納部の前面上部を開閉する上部側内扉と、該上部側内扉の下方において前記商品収納部の前面下部を開閉する下部側内扉とを備えた自動販売機において、
前記本体に取り付けられ、該本体の幅方向に渡る閉鎖部材を備え、
該閉鎖部材は、金属製の基材表面に樹脂コーティングを施して成り、且つ、当該樹脂コーティングと一体に成形された長手方向に渡る複数のヒレ部を有し、
前記上部側内扉及び下部側内扉が閉じられた状態で、前記各ヒレ部が各内扉にそれぞれ密接すると共に、前記閉鎖部材は各内扉間の隙間を閉鎖することを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
前記商品収納部内に前方に引き出し可能に設けられ、商品を収納する複数の商品収納コラムを備え、
前記閉鎖部材は、前記各商品収納コラム間に渡ってそれらの前端に当接することを特徴とする請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
前記閉鎖部材は、上部に位置して前記上部側内扉の背面に密接する上ヒレ部と、下部に位置して前記下部側内扉の背面に密接する下ヒレ部と、これら上下ヒレ部間に位置して前記下部側内扉の上面に密接する中ヒレ部とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動販売機。
【請求項4】
前記上ヒレ部は、前記閉鎖部材の上端部から斜め前下方に向かって突出しており、斜め前上方に向いて膨らむように湾曲していることを特徴とする請求項3に記載の自動販売機。
【請求項5】
前記閉鎖部材は、斜め前上方に突出する突出部を長手方向に渡って備え、前記中ヒレ部は前記突出部の下面から斜め後下方に向かって突出し、斜め前下方に向いて膨らむように湾曲していることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の自動販売機。
【請求項6】
前記閉鎖部材は、前記本体に設けられた取付板と当該本体間に形成された隙間に上方から差し込まれることにより、前記本体に取り付けられると共に、
前記下ヒレ部は、前記閉鎖部材の下端部から斜め前下方に向かって突出しており、斜め後下方に向いて膨らむように湾曲していることを特徴とする請求項3乃至請求項5のうちの何れかに記載の自動販売機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品が収納される商品収納部の前面を、上部側内扉と下部側内扉にて開閉自在に閉塞して成る自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種自動販売機では、断熱箱体から成る本体内に前面が開口した商品収納部が構成されており、この商品収納部の前面上部と下部を上部側内扉と下部側内扉にてそれぞれ開閉自在に閉塞している。この上部側内扉は、商品収納部内に設けられた商品収納コラムの商品投入口に対応しており、外扉と共に開閉されるよう構成されている。また、下部側内扉は上記商品投入口より下方において商品収納部を閉塞するように構成されている。
【0003】
また、本体には上部側内扉と下部側内扉の間に対応する位置に、合成樹脂製の閉鎖部材が取り付けられている。この閉鎖部材は、両内扉が閉じられた状態で各内扉に当接し、各内扉間を閉鎖すると共に、商品収納部内に引き出し可能に設けられる上記商品収納コラムが前方に移動することも阻止する。更に、当該閉鎖部材や下部側内扉に付着した結露水を本体内に案内して排出する役割も果たしていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−299390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、係る従来の合成樹脂製閉鎖部材は強度が不十分である。そこで、閉鎖部材を板金製とすると、この閉鎖部材を伝って商品収納部内に画成された冷温切換室や冷却専用室間の熱移動が発生し、冷却或いは加熱性能が低下するという問題があった。また、前記特許文献1のように各内扉にはパッキンが取り付けられ、閉鎖部材は各内扉のパッキンに当接して両内扉間をシールするものであるが、内扉側のパッキンのみではシール性が不足すると共に、通常軟質のスポンジ状シール材から成るパッキンは経年使用で潰れるため、気密性が劣化する問題もあった。
【0006】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、閉鎖部材による上部側内扉と下部側内扉間の気密性を改善し、且つ、商品収納部内における熱移動も低減させた自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の自動販売機は、本体内に構成され、前面が開口した商品収納部と、この商品収納部の前面上部を開閉する上部側内扉と、この上部側内扉の下方において商品収納部の前面下部を開閉する下部側内扉とを備えたものであって、本体に取り付けられ、この本体の幅方向に渡る閉鎖部材を備え、この閉鎖部材は、金属製の基材表面に樹脂コーティングを施して成り、且つ、当該樹脂コーティングと一体に成形された長手方向に渡る複数のヒレ部を有し、上部側内扉及び下部側内扉が閉じられた状態で、各ヒレ部が各内扉にそれぞれ密接すると共に、閉鎖部材は各内扉間の隙間を閉鎖することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明の自動販売機は、上記発明において商品収納部内に前方に引き出し可能に設けられ、商品を収納する複数の商品収納コラムを備え、閉鎖部材は、各商品収納コラム間に渡ってそれらの前端に当接することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明の自動販売機は、上記各発明において閉鎖部材は、上部に位置して上部側内扉の背面に密接する上ヒレ部と、下部に位置して下部側内扉の背面に密接する下ヒレ部と、これら上下ヒレ部間に位置して下部側内扉の上面に密接する中ヒレ部とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明の自動販売機は、上記発明において上ヒレ部は、閉鎖部材の上端部から斜め前下方に向かって突出しており、斜め前上方に向いて膨らむように湾曲していることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明の自動販売機は、請求項3又は請求項4の発明において閉鎖部材は、斜め前上方に突出する突出部を長手方向に渡って備え、中ヒレ部は突出部の下面から斜め後下方に向かって突出し、斜め前下方に向いて膨らむように湾曲していることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明の自動販売機は、請求項3乃至請求項5の発明において閉鎖部材は、本体に設けられた取付板と当該本体間に形成された隙間に上方から差し込まれることにより、本体に取り付けられると共に、下ヒレ部は、閉鎖部材の下端部から斜め前下方に向かって突出しており、斜め後下方に向いて膨らむように湾曲していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、本体内に構成され、前面が開口した商品収納部と、この商品収納部の前面上部を開閉する上部側内扉と、この上部側内扉の下方において商品収納部の前面下部を開閉する下部側内扉とを備えた自動販売機において、本体に取り付けられ、この本体の幅方向に渡る閉鎖部材を備え、この閉鎖部材には、金属製の基材表面に樹脂コーティングを施したので、閉鎖部材を伝わることで商品収納部内に画成された室間に生じる熱移動を抑制することが可能となり、冷却或いは加熱性能の悪化を解消若しくは抑制することができるようになる。
【0014】
特に、樹脂コーティングには長手方向に渡る複数のヒレ部を一体に成形し、上部側内扉及び下部側内扉が閉じられた状態で、各ヒレ部が各内扉にそれぞれ密接するようにしたので、各ヒレ部と内扉との密接により閉鎖部材と各内扉間の気密性を向上させ、閉鎖部材による各内扉間の隙間のシール性を大幅に改善することができるようになり、両内扉を閉じた状態での商品収納部からの冷気や暖気の漏洩を効果的に阻止することが可能となる。また、上部側内扉を開放し、下部側内扉を閉じた状態では商品収納部内下部からの冷気や暖気の流出も効果的に抑制されるものである。
【0015】
特に、請求項2の発明の如く商品収納部内に前方に引き出し可能に設けられて商品を収納する複数の商品収納コラム間に渡って閉鎖部材が設けられ、各商品収納コラムの前端に当接する場合には、閉鎖部材により商品収納コラムの前方への移動を阻止しながら、商品収納コラムから閉鎖部材を経由して他の商品収納コラムに直接伝わる熱移動も効果的に解消若しくは低減することが可能となる。
【0016】
また、請求項3の発明の如く閉鎖部材に、上部に位置して上部側内扉の背面に密接する上ヒレ部と、下部に位置して下部側内扉の背面に密接する下ヒレ部と、これら上下ヒレ部間に位置して下部側内扉の上面に密接する中ヒレ部とを形成すれば、上部側内扉では背面において、下部側内扉では上面と背面の両方で閉鎖部材との間がシールされるので、気密性は一段と向上する。
【0017】
このとき、上部側内扉では背面のみ上ヒレ部が密接し、上部側内扉の下部側内扉側の面にはヒレ部は密接しないので、万一上部側内扉が自重で下がってしまった場合にも、閉鎖部材のヒレ部が干渉して上部側内扉が閉め難くなる不都合を未然に回避することが可能となる。
【0018】
特に、請求項4の発明の如く上ヒレ部を、閉鎖部材の上端部から斜め前下方に向かって突出させ、斜め前上方に向いて膨らむように湾曲させれば、上部側内扉の閉鎖に伴い、上ヒレ部を円滑に変形させ、その表面を上部側内扉の背面に広い範囲で密接させることができるようになる。
【0019】
また、請求項5の発明の如く、閉鎖部材が斜め前上方に突出する突出部を長手方向に渡って備えている場合に、中ヒレ部を突出部の下面から斜め後下方に向かって突出させ、斜め前下方に向いて膨らむように湾曲させれば、下部側内扉の閉鎖に伴い、中ヒレ部を円滑に変形させ、その表面を下部側内扉の上面に広い範囲で密接させることができるようになる。
【0020】
更に、請求項6の発明の如く閉鎖部材を、本体に設けられた取付板と当該本体間に形成された隙間に上方から差し込んで本体に取り付ける場合に、下ヒレ部を閉鎖部材の下端部から斜め前下方に向かって突出させ、斜め後下方に向いて膨らむように湾曲させることにより、本体と取付板との隙間に下ヒレ部をその湾曲形状を利用して上から差し込んでいくことで、支障無く閉鎖部材を取り付けることができるようになる。尚、下部側内扉が閉じられた場合には、下ヒレ部は変形してその表面が下部側内扉の背面に密接するので、閉鎖部材と下部側内扉間は支障無くシールされることになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の自動販売機の一実施形態を示すものであり、外扉、上部側内扉及び下部側内扉を開いた状態の実施例の自動販売機の斜視図である。
図2図1の自動販売機の縦断側面図である。
図3図1の自動販売機の上部側内扉と下部側内扉を開いた状態の閉鎖部材と各内扉の要部拡大縦断側面図である。
図4図3の閉鎖部材の側面図である。
図5図1の自動販売機の閉鎖部材とそれを取り付ける取付板部分の斜視図である。
図6図3の自動販売機の上部側内扉と下部側内扉を閉じた状態の閉鎖部材と各内扉の要部拡大縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。図1乃至図3において、実施例の自動販売機1は、前面が開口した本体(自動販売機本体)10と、この本体10の前面開口を開閉自在に閉塞する外扉20とから構成されており、外扉20の左右方向(幅方向)における一側(実施例では向かって左側)が本体10の一側(向かって左側)に回動自在に枢支されている。
【0023】
本体10の内部には、上面、底面、背面及び左右側面が断熱壁11によって囲繞された商品収納部13が構成されており、この商品収納部13も前面が開口している。そして、この商品収納部13内は複数の断熱性仕切板12によって幅方向に仕切られており、これにより、商品収納部13内に冷却専用室13Aと冷温切換室(冷却と加熱を切換可能)13Bが画成されている。
【0024】
商品収納部13の各室13A、13B内には、商品を収納する商品収納コラム30が前後方向及び左右方向に並べられて設けられている。この場合、商品収納部13内の天井には、前後方向に延在する少なくとも幅方向一対のコラム支持レール14が設けられており、各商品収納コラム30はこのコラム支持レール14に前方に引き出し可能に吊り下げられている。
【0025】
商品収納部13の下部には、各商品収納コラム30の下端から落下搬出される商品を外扉20に設けられた商品取出口21に案内する商品案内板15が前方に向かって低く傾斜するように設けられている。また、冷却専用室13Aの商品案内板15の下方には商品収納部13を冷却するための冷却器16及び送風機17が設けられている。尚、冷温切換室13Bの場合には、商品案内板15の下方に同様の冷却器と送風機に加えて、放熱器や電熱ヒータが設けられる。
【0026】
商品収納コラム30は、サーペンタイン式の周知の構造を有するものであり、上部の商品投入口31から投入された商品を蛇行状の商品通路32に収納し、商品通路32の下端に設けた商品搬出機構33によって商品通路32内の商品を一個ずつ下方に落下搬出する構造とされている。この商品収納コラム30の上端側には前記コラム支持レール14と係合可能な係合フック34が前後方向に延びるように設けられ、商品収納部13内に商品収納コラム30が着脱自在に取り付けられる構造とされている。
【0027】
また、商品収納部13の前面には、前記各室13A、13B内の各商品収納コラム30の商品投入口31が位置する商品収納部13の前面上部を開閉自在に閉塞する上部側内扉18と、この上部側内扉18の下方に位置して商品投入口31の下側の商品収納コラム30が位置する商品収納部13の前面下部を開閉自在に閉塞する下部側内扉19が設けられている。この場合、各内扉18、19は一側(向かって左側)が本体10に回動自在に枢支されている。また、上部側内扉18及び下部側内扉19には、それぞれ商品収納部13側の面の周縁部に沿って軟質樹脂製スポンジ材等から成るパッキン18A、19Aが取り付けられている。パッキン18Aは図3に示すように上部側内扉18の背面から下面に渡って貼付され、パッキン19Aは下部側内扉19の背面から上面に渡って貼付されており、それぞれ上部側内扉18、下部側内扉19の一部となる。
【0028】
そして、上部側内扉18及び下部側内扉19を閉じて商品収納部13を閉鎖すると、上部側内扉18の上側及び左右両側のパッキン18Aと下部側内扉19の下側及び左右両側のパッキン19Aが商品収納部13の開口周縁の本体10に密接する。一方、上部側内扉18の下側と下部側内扉19の上側のパッキン18A、19Aは後述する閉鎖部材40と密接する。これらにより、商品収納部13の気密性を保持する構成とされている。また、下部側内扉19の上面は外扉20側から商品収納部13側に向かって低くなるように傾斜しており、そこが傾斜部19Bとされている。
【0029】
そして、本発明では商品収納部13の前面において、上部側内扉18の下端と下部側内扉19の上端との間の隙間を背面側から覆うように幅方向に渡る前記閉鎖部材40が、本体10に取り付けられる。この閉鎖部材40は、図5に示すように商品収納部13の幅方向両側の開口縁に取り付けられた取付板60から内方に突出したフランジ60Aと本体10間の隙間Gにその長手方向の端部を上方から差し込むことにより、本体10に着脱自在に取り付けられる。
【0030】
尚、実施例では閉鎖部材40の長手方向の両端を取付板60で本体に取り付けているが、それに限らず、何れか一方は異なる取付方式でも差し支えなく、少なくとも一方が取付板60にて取り付けられていればよい。
【0031】
また、閉鎖部材40は商品収納部13前面において本体10に取り付けられることにより、商品収納部13の各室13A、13B内の最前列に位置する商品収納コラム30間に渡っており、各商品収納コラム30の前端が当接する。これにより、商品収納コラム30が前方に移動してしまうことを阻止する位置決めの役割を果たす。
【0032】
次に、図3及び図4を参照しながら本発明を適用した一実施例の閉鎖部材30の構造について説明する。閉鎖部材40は、本体10の商品収納部13の前面開口に渡る長さを有する金属製(板金)の基材41から構成されている。この基材41には、ロールフォーミングにより前面の上下方向における略中央から斜め前上方に延在した延出部41Aが長手方向に渡って形成されており、この延出部41Aが閉鎖部材40の斜め前上方に突出する突出部40Aを構成する。
【0033】
そして、この延出部41Aを含む基材41の全表面には、エラストマー等のゴム系の軟質樹脂層42がコーディングされている。この樹脂層42の厚みはコンマ数ミリという極めて薄いものであるが、所要の断熱性能を奏するものである。また、樹脂層42のコーティングは基材41のロールフォーミングから連続して施されるものであるが、係る樹脂層42の形成と同時に薄肉(厚さ1mm程)軟質の上ヒレ部43、中ヒレ部44、及び、下ヒレ部45が当該樹脂層42と一体的に長手方向に渡って成形されている。尚、各ヒレ部43〜45の厚みは、実施例では基材41と樹脂層42を合わせた厚み以下に設定される。
【0034】
この場合、上ヒレ部43は図4に示す如く閉鎖部材40の上部に位置しており、実施例では閉鎖部材40の上端部から斜め前下方に向かって突出し、斜め前上方に向いて膨らむように所定曲率で湾曲している。また、下ヒレ部45は閉鎖部材40の下部に位置しており、実施例では閉鎖部材40の下端部から斜め前下方に向かって突出し、斜め後下方に向いて膨らむように所定曲率の湾曲している。
【0035】
これら上下ヒレ部43、45の間に中ヒレ部44が位置し、実施例では閉鎖部材40の突出部40Aの下面から斜め後下方に向かって突出し、斜め前下方に向いて膨らむように所定曲率で湾曲している。また、閉鎖部材40の後面には、突出部40Aより下側となる位置に軟質スポンジ状のパッキン46が長手方向に渡って貼付されている。
【0036】
以上の構成の閉鎖部材40を本体10に取り付ける際には、図5に白抜き矢印で示すように取付板60のフランジ60Aと本体10間の隙間Gに、長手方向の端部に位置する下ヒレ部45の下端(先端)を上方から差し込む。このとき、下ヒレ部45の厚みは閉鎖部材40と同等以下であるので支障無く挿入できると共に、図5の状態から上側を斜め手前に傾斜させ、下ヒレ部45先端を真下に向けた状態で長手方向の端部を隙間Gに挿入した後、下ヒレ部45の湾曲形状を利用し、図5に示すような垂直状態に戻すように回転させ、更に下げていくことにより、閉鎖部材40の端部を隙間G内に円滑に差し込むことができる。そして、突出部40A基部の下面が取付板60に当接したところで閉鎖部材40はそれ以上挿入できなくなり、取付板60と本体10間に保持される。このようにして閉鎖部材40は本体10に着脱可能に取り付けられる。
【0037】
このように取り付けられた状態で、閉鎖部材40後面のパッキン46は各仕切板12の前端に密接する。また、各室13A、13B内に吊り下げられた最前列の商品収納コラム30もパッキン46に密接するので、それらの位置決めが成される。また、閉鎖部材40は冷却専用室13Aから冷温切換室13Bに渡って設けられることになる。
【0038】
従って、特に冷温切換室13Bが加熱状態で使用されるときは、閉鎖部材40自体を伝わる冷却専用室13Aと冷温切換室13B間の熱移動が問題となる。即ち、冷却専用室13Aは冷温切換室13Bから加熱作用を受け、冷温切換室13Bは逆に冷却専用室13Aから冷却作用を受けることになり、自動販売機1の運転効率が著しく低下するからである。しかしながら、本発明では閉鎖部材40の全表面を断熱性の樹脂層42にてコーティングしているので、係る室13A、13B間の熱移動は効果的に阻止若しくは抑制される。
【0039】
また、本体10に取り付けられた状態で、閉鎖部材40は上部側内扉18の下端と下部側内扉19の上端を跨ぐ位置に来る。従って、図3中白抜き矢印で示すように上部側内扉18及び下部側内扉19を本体10側に回動させて閉じると、図6に示すように突出部40Aが上部側内扉18と下部側内扉19間に進入し、上部側内扉18の下側のパッキン18A及び下部側内扉19の上側のパッキン19Aがそれぞれ閉鎖部材40の前面に当接し、各内扉18、19間が閉鎖されて商品収納部13内が密閉される。
【0040】
このとき、閉鎖部材40の上ヒレ部43は上部側内扉18の背面に位置する下側のパッキン18Aに密接し、中ヒレ部44は下部側内扉19の上面に位置する上側のパッキン19Aに密接する。また、下ヒレ部45は下部側内扉19の背面に位置する上側のパッキン19Aに密接する(図6)。これにより、閉鎖部材40と上部側内扉18及び下部側内扉19間は高い気密性でシールされることになる。
【0041】
特に、実施例の上ヒレ部43は閉鎖部材40の上端部から斜め前下方に向かって突出し、斜め前上方に向いて膨らむように湾曲しているので、上部側内扉18の閉鎖に伴い、上ヒレ部43の先端は本体10側に円滑に変形していき、その表面が上部側内扉18の背面のパッキン18Aに広い範囲で密接するようになる。これにより、閉鎖部材40と上部側内扉18間は高い気密性でシールされる(図6)。
【0042】
また、実施例の中ヒレ部44は突出部40Aの下面から斜め後下方に向かって突出し、斜め前下方に向いて膨らむように湾曲しているので、下部側内扉19の閉鎖に伴い、中ヒレ部44の先端は本体10側に円滑に変形し、その表面が下部側内扉19の上面のパッキン19Aに広い範囲で密接するようになる。更に、下部側内扉19が閉じられた場合には、下ヒレ部45の先端も本体10側に変形してその表面が下部側内扉19の背面のパッキン19Aに密接するので、閉鎖部材40と下部側内扉19間も高い気密性でシールされることになる(図6)。
【0043】
ここで、樹脂層42でコーティングされた閉鎖部材40であっても、上部側内扉18及び下部側内扉19により商品収納部13が閉鎖されている状態で該商品収納部13が冷却されると、閉鎖部材40の前面側や各内扉18、19の背面等には結露が生じる場合がある。このとき、突出部40Aの下方に生じた結露水は、下部側内扉19の上面が傾斜部19Bとされていることから、下部側内扉19の前面側に流れること無く、下部側内扉19の上面の商品収納部13側を幅方向に流れて下部側内扉19の幅方向端部から本体10内に排出されるようになる。
【0044】
また、突出部40Aの上方に生じた結露水は、突出部40Aが斜め前上方に突出していることから、下部側内扉19側に流れること無く、突出部40Aの上面にて受容され、その幅方向に流れて突出部40Aの幅方向端部から本体10内に排出されることになる。これらにより、下部側内扉19の上面に結露水が溜まり、それが開放されたときに自動販売機1の前方に滴下する不都合を解消若しくは抑制することができる。
【0045】
以上詳述した如く本発明によれば、本体10に取り付けられて本体10の幅方向に渡る閉鎖部材40を構成する金属製の基材41表面に樹脂コーティングを施し、樹脂層42を形成したので、閉鎖部材40を伝わることで商品収納部13内に画成された室13A、13B間に生じる熱移動を抑制することが可能となり、冷却或いは加熱性能の悪化を解消若しくは抑制することができるようになる。
【0046】
特に、コーティングされた樹脂層42には長手方向に渡る上ヒレ部43、中ヒレ部44、及び、下ヒレ部45を一体に成形し、上部側内扉18及び下部側内扉19が閉じられた状態で、各ヒレ部43〜45が各内扉18、19にそれぞれ密接するようにしたので、各ヒレ部43〜45と内扉18、19との密接により閉鎖部材40と上部側内扉18及び下部側内扉19間の気密性を向上させ、閉鎖部材40による各内扉18、19間の隙間のシール性を大幅に改善することができるようになり、両内扉18、19を閉じた状態での商品収納部13からの冷気や暖気の漏洩を効果的に阻止することが可能となる。また、上部側内扉18を開放し、下部側内扉19を閉じた状態では商品収納部13内下部からの冷気や暖気の流出も効果的に抑制される。
【0047】
特に、商品収納部13の各室13A、13B内に前方に引き出し可能に設けられて商品を収納する複数の商品収納コラム30間に渡って閉鎖部材40が設けられ、各商品収納コラム30の前端に当接しているので、閉鎖部材40により商品収納コラム30の前方への移動を阻止しながら、商品収納コラム30から閉鎖部材40を経由して他の商品収納コラム30に直接伝わる熱移動も効果的に解消若しくは低減することが可能となる。
【0048】
また、閉鎖部材40には、実施例のようにその上部に位置して上部側内扉18の背面のパッキン18Aに密接する上ヒレ部43と、下部に位置して下部側内扉19の背面のパッキン19Aに密接する下ヒレ部45と、これら上下ヒレ部43、45間に位置して下部側内扉19の上面のパッキン19Aに密接する中ヒレ部44を形成しているので、上部側内扉18では背面において、下部側内扉19では上面と背面の両方で閉鎖部材40との間がシールされ、気密性は一段と向上する。
【0049】
尚、実施例では上部側内扉18では背面のみ上ヒレ部43が密接し、上部側内扉18の下部側内扉19側の面にはヒレ部は密接しない。即ち、突出部40Aの上面にはヒレ部を形成していないので、万一上部側内扉18が自重で下がってしまった場合にも、閉鎖部材40の係るヒレ部が干渉して上部側内扉18が閉め難くなる不都合も発生しない。
【0050】
また、上記実施例では閉鎖部材40の上端部と下端部、及び、それらの間に上ヒレ部43、下ヒレ部45、中ヒレ部44をそれぞれ形成し、図4に示すような湾曲形状としたが、請求項1や請求項2の発明ではヒレ部の数や位置、形状は実施例に限定されず、自動販売機1の寸法は形状に応じて適宜設定すると良い。
【符号の説明】
【0051】
1 自動販売機
10 本体
13 商品収納部
13A 冷却専用室
13B 冷温切換室
18 上部側内扉
19 下部側内扉
20 外扉
30 商品収納コラム
40 閉鎖部材
40A 突出部
41 基材
42 樹脂層
43 上ヒレ部
44 中ヒレ部
45 下ヒレ部
60 取付板
G 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6