特許第5969339号(P5969339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969339
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】周波数調整方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20160804BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20160804BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20160804BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20160804BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   G06K19/07 260
   G06K19/07 220
   G06K19/077 212
   H04B5/02
   H01Q1/38
   H01Q7/00
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-208397(P2012-208397)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-63367(P2014-63367A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】池田 俊之
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−321930(JP,A)
【文献】 特表2006−521632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00−19/18
H04B 5/02
H01Q 1/38
H01Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材上にアンテナが形成されるとともに、所定面に接続端子を具備するICチップが、前記接続端子が前記アンテナに接続されて前記ベース基材上に実装され、共振周波数にてデータを送受信するRF−IDメディアにおける前記共振周波数を調整する周波数調整方法であって、
前記ベース基材上に形成されたアンテナ単体の周波数を取得する工程と、
前記ICチップが、前記取得された周波数を有するアンテナに前記接続端子を接続して前記所定面と前記アンテナとの間隔を基準間隔として前記ベース基材上に実装された場合のRF−IDメディアの共振周波数を算出する工程と、
前記RF−IDメディアがデータを送受信するための共振周波数に対する前記算出された共振周波数の差分を埋めるために必要となるキャパシタンス量を算出する工程と、
前記基準間隔と、前記算出されたキャパシタンス量を生じさせる前記所定面と前記アンテナとの間隔とに基づいて、前記所定面と前記アンテナとの間隔を算出する工程と、
前記所定面と前記アンテナとの間隔が、前記算出された間隔となるような前記ICチップの前記ベース基材上への実装条件を算出する工程とを有する周波数調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め決められた共振周波数でデータを送受信するRF−IDメディアに関し、特に、共振周波数の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、情報化社会の進展に伴って、情報をカードに記録し、該カードを用いた情報管理や決済等が行われている。また、商品等に貼付されるラベルやタグに情報を記録し、このラベルやタグを用いての商品等の管理も行われている。このようなカードやラベル、あるいはタグを用いた情報管理においては、カードやラベル、あるいはタグに対して非接触状態にてデータを送受信する非接触型ICカードや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICタグがその優れた利便性から急速な普及が進みつつある。
【0003】
このような非接触型ICカードや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICタグといったRF−IDメディアは、ベース基材上に導電性のアンテナが形成されるとともにこのアンテナに接続されるようにICチップが実装されてなるインレットが表面シートやカード基材に挟み込まれて構成されており、予め決められた共振周波数でデータを送受信する。そのため、アンテナの形状が、RF−IDメディアが予め決められた共振周波数でデータを送受信できるような形状に設計されている。
【0004】
ところが、ベース基材上にアンテナを形成するためのエッチングや印刷工程において、アンテナの形状が、RF−IDメディアが予め決められた共振周波数でデータを送受信できるような形状とはならなくなってしまう場合がある。特に、電磁誘導方式でデータを送受信するRF−IDメディアにおいては、コイル状のアンテナをその一部にて交差させる必要があるが、その交差させる部分のジャンパー部を形成する際にばらつきが生じ、予め決められた共振周波数でデータを送受信できなくなる場合が多い。
【0005】
そこで、アンテナに接続した調整用パターンを設け、この調整用パターンをトリミングすることによってアンテナのインダクタンスやキャパシタンスを調整し、それにより、RF−IDメディアが予め決められた共振周波数でデータを送受信できるようにする技術が考えられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−238016号公報
【特許文献2】特開2004−153716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、アンテナに接続した調整用パターンを設け、この調整用パターンをトリミングすることによってアンテナのインダクタンスやキャパシタンスを調整する技術においては、ベース基材上にアンテナ及び調整用パターンを形成し、アンテナに接続されるようにICチップを実装した後に、RF−IDメディアがデータを送受信する共振周波数に合わせて調整用パターンをトリミングすることになるため、一般的なRF−IDメディアの製造工程とは別ラインの工程が新たに増え、製造工程が煩雑になってしまうとともに製造コストが増大してしまうという問題点がある。
【0008】
また、非接触レーザでトリミングを行う場合、RF−IDメディアが搭載された製造テーブルに加工用の穴を設ける必要があり、製造コストが増大してしまうという問題点がある。
【0009】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、一般的なRF−IDメディアの製造工程とは別ラインの工程を設けることなく、かつ製造工程を増大させることなくデータを送受信するための共振周波数を調整することができる周波数調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、
ベース基材上にアンテナが形成されるとともに、所定面に接続端子を具備するICチップが、前記接続端子が前記アンテナに接続されて前記ベース基材上に実装され、共振周波数にてデータを送受信するRF−IDメディアにおける前記共振周波数を調整する周波数調整方法であって、
前記ベース基材上に形成されたアンテナ単体の周波数を取得する工程と、
前記ICチップが、前記取得された周波数を有するアンテナに前記接続端子を接続して前記所定面と前記アンテナとの間隔を基準間隔として前記ベース基材上に実装された場合のRF−IDメディアの共振周波数を算出する工程と、
前記RF−IDメディアがデータを送受信するための共振周波数に対する前記算出された共振周波数の差分を埋めるために必要となるキャパシタンス量を算出する工程と、
前記基準間隔と、前記算出されたキャパシタンス量を生じさせる前記所定面と前記アンテナとの間隔とに基づいて、前記所定面と前記アンテナとの間隔を算出する工程と、
前記所定面と前記アンテナとの間隔が、前記算出された間隔となるような前記ICチップの前記ベース基材上への実装条件を算出する工程とを有する。
【0011】
上記のように構成された本発明においては、ベース基材上にアンテナが形成された後に、まず、ベース基材上に形成されたアンテナ単体の周波数が取得され、ICチップが、取得された周波数を有するアンテナにICチップの接続端子を接続して、ICチップの接続端子が設けられた所定面とアンテナとの間隔を基準間隔としてベース基材上に実装された場合のRF−IDメディアの共振周波数が算出される。次に、RF−IDメディアがデータを送受信するための共振周波数に対する、算出された共振周波数の差分を埋めるために必要となるキャパシタンス量が算出され、その後、ICチップの所定面とアンテナとの基準間隔と、算出されたキャパシタンス量を生じさせる所定面とアンテナとの間隔とに基づいて、ICチップの所定面とアンテナとの間隔が算出される。そして、ICチップの所定面とアンテナとの間隔が、算出された間隔となるようなICチップのベース基材上への実装条件が算出され、この実装条件に従ってICチップがベース基材上に実装されることになる。
【0012】
このように、ベース基材上にアンテナが形成された後に、このアンテナに接続されてベース基材に実装されるICチップの所定面とアンテナとの間隔が、RF−IDメディアの共振周波数がデータを送受信するためのものとなるように算出され、その間隔に応じた実装条件でICチップがベース基材上に実装されることになるので、アンテナが形成されてからICチップがベース基材上に実装されるまでの工程において、インラインにてICチップの所定面とアンテナとの間隔が算出され、RF−IDメディアの共振周波数が調整される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ベース基材上にアンテナが形成された後に、このアンテナに接続されてベース基材に実装されるICチップの所定面とアンテナとの間隔が、RF−IDメディアの共振周波数がデータを送受信するためのものとなるように算出され、その間隔に応じた実装条件でICチップがベース基材上に実装されることになるため、アンテナが形成されてからICチップがベース基材上に実装されるまでの工程において、インラインにてICチップの所定面とアンテナとの間隔が算出され、RF−IDメディアの共振周波数が調整されることになり、一般的なRF−IDメディアの製造工程とは別ラインの工程を設けることなく、かつ製造工程を増大させることなくデータを送受信するための共振周波数を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の周波数調整方法によって共振周波数が調整されるRF−IDメディアの実施の一形態を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(b)に示したA部拡大図である。
図2図1に示したインレットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図3図1に示したインレットの共振周波数を調整する周波数調整装置の実施の一形態を示す図である。
図4図3に示した周波数調整装置を用いたインレットの共振周波数を調整する周波数調整方法を説明するためのフローチャートである。
図5】ICチップの裏面とアンテナとの間隔について説明するための図である。
図6】ICチップをベース基材に圧着する際のICチップに対する圧着荷重とインレットの共振周波数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の周波数調整方法によって共振周波数が調整されるRF−IDメディアの実施の一形態を示す図であり、(a)は表面の構成を示す図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(b)に示したA部拡大図である。
【0017】
本形態のRF−IDメディアは図1に示すように、樹脂等の絶縁材料からなるベース基材2上に導電性のアンテナ4が形成されるとともに、ICチップ3が実装されてなるインレット1である。
【0018】
アンテナ4は、ベース基材2上にエッチングや印刷等によってコイル状に形成されており、その両端部をコイル内に配置するためにその一部が絶縁層を介してコイルの外側から内側に導かれたジャンパー部5を有している。
【0019】
ICチップ3は、例えば1mm□以上のサイズを有し、所定面となる裏面に設けられた接続端子であるバンプ6がコイル状のアンテナ4の両端部に接触することによりアンテナ4に接続されてベース基材2上に搭載され、熱圧着によってベース基材2に圧着されることによりベース基材2上に実装されている。
【0020】
上記のように構成されたインレット1においては、外部に設けられた情報書込/読出装置(不図示)に近接させることにより、情報書込/読出装置から出力された電磁波による電磁誘導によってアンテナ4に電流が流れ、この電流がICチップ3に供給され、それにより、非接触状態において情報書込/読出装置とICチップ3との間にてデータが送受信される。このようなインレットは、カード基材に挟み込まれて非接触ICカードとして利用されたり、ラベル基材に貼着されて非接触ICラベルとして利用されたりする。そのため、インレット1の共振周波数が、非接触ICカードや非接触ICラベルとして構成された場合に、情報書込/読出装置から出力される電磁波の周波数、例えば、13.56MHzとなるように設定されている。
【0021】
以下に、上述したインレット1の製造方法について説明する。
【0022】
図2は、図1に示したインレット1の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0023】
図1に示したインレット1を製造する場合は、まず、ベース基材2上にエッチングや印刷等によってアンテナ4を形成し、さらに、印刷によってジャンパー部5を形成する(ステップ1)。
【0024】
次に、ベース基材2上に形成された状態でのアンテナ4単体の周波数を測定する(ステップ2)。なお、ステップ1の工程とステップ2の工程とは、連続して行う必要はない。例えば、ステップ1にてベース基材2上に複数のアンテナ4及びジャンパー部5を面付けで形成したアンテナシートをロール状に巻き取っておき、その後、このアンテナシートを引き出してアンテナ4単体の周波数を測定してもよい。
【0025】
次に、ベース基材2のICチップ3が実装される領域に接着剤を塗布する(ステップ3)。この接着剤は、樹脂バインダーに導電性粒子が含有してなる導電性接着剤が一般的に用いられるが、導電性粒子が含有していない接着剤を用いてもよい。
【0026】
次に、ベース基材2の接着剤が塗布された領域にICチップ3を搭載し(ステップ4)、熱を与えながら圧力をかけることにより、バンプ6をアンテナ4に接触させるとともに、ICチップ3を接着剤によってベース基材2に圧着する(ステップ5)。これにより、バンプ6とアンテナ4とが確実に電気的に接続された状態で、ICチップ3がベース基材2上に実装されることになる。
【0027】
その後、インレット1の周波数を測定し、インレット1を完成させる(ステップ6)。
【0028】
完成したインレット1は、インレットシートとしてロール状に巻き取られて保管することが考えられる。
【0029】
以下に、上述したインレット1における共振周波数を調整する方法について説明する。
【0030】
図3は、図1に示したインレット1の共振周波数を調整する周波数調整装置の実施の一形態を示す図である。
【0031】
本形態の周波数調整装置は図3に示すように、アンテナ周波数取得部10と、インレット周波数算出部20と、キャパシタンス量算出部30と、間隔算出部40と、圧着条件決定部60とを有している。
【0032】
アンテナ周波数取得部10は、ベース基材2上に形成された状態のアンテナ4単体の周波数を取得する。
【0033】
インレット周波数算出部20は、周波数データテーブル51を参照し、ICチップ3が、アンテナ周波数取得部10にて取得された周波数を有するアンテナにバンプ6を接続してICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔を予め決められた基準間隔としてベース基材2上に実装された場合のインレット1の共振周波数を算出する。
【0034】
キャパシタンス算出部30は、インレット1がデータを送受信するための共振周波数に対する、インレット周波数算出部20にて算出された共振周波数の差分を埋めるために必要となるキャパシタンス量を算出する。
【0035】
間隔算出部40は、間隔データテーブル52を参照し、ICチップ3の裏面とアンテナ4との基準間隔と、キャパシタンス算出部30にて算出されたキャパシタンス量を生じさせるICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔とに基づいて、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔を算出する。
【0036】
圧着条件決定部60は、圧着条件データテーブル53を参照し、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が、間隔算出部40にて算出された間隔となる圧着条件を算出、決定する。本形態においては、この圧着条件が本願発明における実装条件となる。圧着条件は、圧着荷重や押込み量、ストロークの長さ、圧着速度、圧着時間等の間隔を変化させるパラメータ条件を含んでいる。なお、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔の変化が、圧着条件について少なくとも2つのパラメータにて同一である場合は、後の工程を鑑みて圧着条件に優先順位をつけてもよい。
【0037】
図4は、図3に示した周波数調整装置を用いたインレット1の共振周波数を調整する周波数調整方法を説明するためのフローチャートである。
【0038】
まず、アンテナ周波数取得部10において、上述したステップ2にて測定されたアンテナ4単体の周波数を取得する(ステップ11)。
【0039】
次に、インレット周波数算出部20において、周波数データテーブル51を参照し、ICチップ3が、アンテナ周波数取得部10にて取得された周波数を有するアンテナにバンプ6を接続してICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔を予め決められた基準間隔としてベース基材2上に実装された場合のインレット1の共振周波数を算出する(ステップ12)。周波数データテーブル51には、アンテナ単体の周波数と、そのアンテナに接続されたICチップ3が、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔を予め決められた基準間隔としてベース基材2上に実装された場合のインレット1の共振周波数とが対応づけられている。そのため、アンテナ周波数取得部10にてアンテナ4単体の周波数が取得された場合、ICチップ3が、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が基準間隔となるようにベース基材2に実装されてそのアンテナ4に接続された状態でのインレット1の共振周波数を算出することができる。なお、ICチップ3の裏面とアンテナ4との基準間隔は予め決められており、この基準間隔を基準として、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔を算出することになる。
【0040】
次に、キャパシタンス量算出部30において、インレット1がデータを送受信するための共振周波数に対する、インレット周波数算出部20にて算出された共振周波数の差分を埋めるために必要となるキャパシタンス量を算出する(ステップ13)。インレット1の共振周波数fは、インレット1のインダクタンス成分をL、キャパシタンス成分をCとすると、
f=1/[2π(LC)1/2
で表されるため、この式を用いて、インレット1がデータを送受信するための共振周波数に対する、インレット周波数算出部20にて算出された共振周波数の差分fを埋めるために必要となるキャパシタンス量Cを算出することができる。
【0041】
次に、間隔算出部40において、間隔データテーブル52を参照し、ICチップ3の裏面とアンテナ4との基準間隔と、キャパシタンス算出部30にて算出されたキャパシタンス量を生じさせるICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔とに基づいて、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔を算出する(ステップ14)。
【0042】
図5は、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔について説明するための図である。
【0043】
ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔は、図5(a)に示すようにバンプ6がアンテナ4に接触した程度の間隔D1の場合のみならず、バンプ6の一部がアンテナ4に食い込んだ間隔D2の場合もある。ここで、ICチップ3は、導電材料からなる回路が内蔵されているため、アンテナ4との間隔によってキャパシタンス量が変化する。すなわち、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が、図5(a)に示すように間隔D1の場合と、図5(b)に示すように間隔D2の場合とでは、キャパシタンス量が互いに異なり、間隔D1の場合の方が間隔D2の場合よりも小さくなる。そのため、間隔データテーブル52には、インレット1がデータを送受信するための共振周波数に対する、インレット周波数算出部20にて算出された共振周波数の差分を埋めるために必要となるキャパシタンス量と、そのキャパシタンス量を得るために必要となるICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔の基準間隔からの変位量とが対応づけられている。例えば、間隔データテーブル52には、インレット周波数算出部20にて算出された共振周波数が、インレット1がデータを送受信するための共振周波数に対して、上述した式によって、その差分を埋めるためにそのキャパシタンス量を減らす必要がある場合、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が、減らすべきキャパシタンス量に応じた分だけ広がるような基準間隔からの変位量がその増減の条件を含めたキャパシタンス量に対応づけられている。また、インレット周波数算出部20にて算出された共振周波数が、インレット1がデータを送受信するための共振周波数に対して、上述した式によって、その差分を埋めるためにそのキャパシタンス量を増やす必要がある場合、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が、増やすべきキャパシタンス量に応じた分だけ狭まるような基準間隔からの変位量がその増減の条件を含めたキャパシタンス量に対応づけられている。ただし、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が“0”となると、ICチップ3の裏面がアンテナ4と接触して電気的短絡が生じてしまうため、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が“0”となるような変位量は間隔データテーブル52には設定されていない。
【0044】
そこで、間隔算出部40においては、この間隔データテーブル52を参照することにより、インレット1の共振周波数が、データを送受信するための共振周波数となるようなICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔の基準間隔からの変位量を割り出し、この変位量と基準間隔とに基づいてICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔を算出する。
【0045】
その後、圧着条件決定部60において、圧着条件データテーブル53を参照し、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が、間隔算出部40にて算出された間隔となる圧着条件を算出、決定する(ステップ15)。圧着条件データテーブル53には、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔と、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔をその間隔にするために、ICチップ3をベース基材2に圧着する際に必要となる圧着条件とが対応づけられている。
【0046】
そこで、圧着条件決定部60においては、この圧着条件データテーブル53を参照することにより、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が、間隔算出部40にて算出された間隔となる圧着条件を算出、決定することができる。
【0047】
図6は、ICチップ3をベース基材2に圧着する際のICチップ3に対する圧着荷重とインレット1の共振周波数との関係を示す図である。
【0048】
上述したように、ICチップ3をベース基材2に圧着する際のICチップ3に対する圧着条件によって、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が制御され、また、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔によってキャパシタンス量が変化することにより、図6に示すように、ICチップ3をベース基材2に圧着する際のICチップ3に対する圧着条件によって、インレット1の共振周波数が変化することになる。すなわち、ICチップ3をベース基材2に圧着する際のICチップ3の圧着条件によって、インレット1の共振周波数を制御することができることとなる。
【0049】
上記のようにしてICチップ3に対する圧着条件が決定されると、ステップ5において、その圧着条件に従ってICチップ3がベース基材2に圧着されることになる。
【0050】
このように、ベース基材2にアンテナ4が形成された後に、このアンテナ4に接続されてベース基材2に搭載、圧着されるICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が、インレット1の共振周波数がデータを送受信するためのものとなるように算出され、その間隔に応じた圧着条件でICチップ3が圧着されることになるため、アンテナ4が形成されてからICチップ3がベース基材2に圧着されるまでの工程において、インラインにてICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が算出され、インレット1の共振周波数が調整されることになり、一般的なインレット1の製造工程とは別ラインの工程を設けることなく、かつ製造工程を増大させることなくデータを送受信するための共振周波数を調整することができる。
【0051】
なお、本形態においては、ICチップ3をベース基材2に熱圧着するものを例に挙げ、ICチップ3のベース基材2上への実装条件として、ICチップ3をベース基材2に熱圧着する際の圧着条件を用いるものについて説明したが、ICチップ3のベース基材2上への実装は熱圧着に限らず、例えば超音波を用いたものであってもよい。超音波を用いた場合は、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔は、ICチップ3に対する荷重ではなく、超音波の出力や振幅、周波数、時間によって制御することになり、これらの要素を変化させるパラメータが実装条件となる。そして、これらの実装条件が、圧着条件データテーブル53と同様のデータテーブルにおいて、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔と対応づけられており、このデータテーブルを参照することにより、ICチップ3の裏面とアンテナ4との間隔が、間隔算出部40にて算出された間隔となる実装条件を算出、決定することになる。
【0052】
また、本形態においては、コイル状のアンテナ4を有し、情報書込/読出装置から出力された電磁波による電磁誘導によってデータが送受信されるインレット1を例に挙げて説明したが、本発明にて共振周波数が調整されるRF−IDメディアとしては、ダイポールアンテナを有し、UHF帯の周波数の電波に共振してデータを送受信するものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 インレット
2 ベース基材
3 ICチップ
4 アンテナ
5 ジャンパー部
6 バンプ
10 アンテナ周波数取得部
20 インレット周波数算出部
30 キャパシタンス量算出部
40 間隔算出部
51 周波数データテーブル
52 間隔データテーブル
53 圧着条件データテーブル
60 圧着条件決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6