(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ねじ切り加工におけるびびり振動を抑制する方法として、下記特許文献1記載の方法および下記特許文献2記載の方法が知られている。これらは、ねじ切り加工時に主軸の回転速度を変化させることでびびり振動を抑制するものである。
【0003】
特許文献1記載の技術は、ねじ切り加工時の主軸位置と送り軸位置との相対位相誤差を主軸位置で算出し、該相対位相誤差を主軸位置に対し誤差補償した擬似主軸位置に基づいて送り軸の移動量を算出している。
【0004】
特許文献2記載の技術は、主軸と送り軸の時定数と加減速タイプ、位置ループゲインを同一とすることで主軸回転速度変化に対する主軸と送り軸の位相誤差を無くしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1および特許文献2記載の方法は、いずれも主軸の回転速度を変化させる技術である。この場合、ねじピッチを一定とするため主軸の回転速度に合わせて送り軸速度も変化させることが必要となる。
【0007】
しかし、特許文献1記載の方法では、送り軸の加減速時間は変更しないため、送り軸の加減速遅れ量が送り軸速度に応じて変化してしまう。
【0008】
特許文献2記載の方法については、主軸の回転速度に応じて多段の加減速を適用することが可能であるが、速い速度域ほど加減速時間を長くしている。したがって、特許文献1記載の方法と同様に送り軸の加減速遅れ量が送り軸速度に応じて変化してしまうが、この場合は、特許文献1記載の方法よりも変化量が大きくなる。
【0009】
上記のように、送り軸の加減速遅れ量が送り軸速度に応じて変化してしまうと、ねじ切りつなぎ部等、ねじ切り方向が変化する部位において切り込み量が増加する可能性がある。これにより切削負荷が予期せず大きくなり、工具にダメージを与える危険がある。
【0010】
そこで、本発明では主軸回転速度を変化させても切り込み量を一定に保てるねじ切り加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のねじ切り加工装置は、主軸回転と送り軸移動によりネジ切り加工を行うねじ切り加工装置であって、主軸回転速度指令に基づいて主軸の回転速度を、
実際に切り込み動作を行うねじ切りパスごとに演算出力する主軸速度演算手段と、
各ねじ切りパスにおける前記送り軸の加減速時間と前記主軸回転速度との積が全てのねじ切りパスで等しくなるように、前記送り軸の加減速時間をねじ切りパスごとに演算出力する加減速時間演算手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、主軸回転速度を変化させても、加減速遅れ量dを、全てのねじ切りパスで等しくできるため、切り込み量も一定に保てる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、従来技術の説明をする。
図7は従来のねじ切り加工装置の構成を示すブロック図である。このねじ切り加工装置において、加工プログラム解析部1は、図示しない加工プログラムを解析する。加工プログラム中に、ねじ切り指令があるとねじ切り加工制御部2は、現在有効な主軸回転数指令Sを主軸速度演算部11に出力する。主軸速度演算部11は入力された主軸回転数指令Sを基にねじ切りパスごとに主軸の回転速度を算出して主軸速度制御部12に出力する。主軸速度制御部12は、入力された主軸の回転速度となるように主軸13を制御する。主軸速度演算部11は、例えば、下記式1および式2に基づいて高速回転速度SHと低速回転速度SLとを演算し、主軸の回転速度をねじ切りパスごとに高速回転速度または低速回転速度のいずれかに変更することにより、びびり振動を抑制している。
SH=S+0.5×S ・・・式1
SL=S−0.5×S ・・・式2
【0015】
図2は、ねじ切りパスと各パスの主軸回転速度の一例を示す説明図である。ねじ切りは、ワークを回転させつつ、工具を、
図2の上段に示すように、ワークに対して相対移動させることで行われる。ねじ切りは、a→b→c→dの動作を1サイクルとして動作し、実線で図示されたb部がねじ切り指令による動作となり、ねじ切りパスとなる。
図2は6回の切り込みでねじ切りを行う例である。主軸速度演算部11は、
図2の下段に示すように、ねじ切りパスの奇数回目の主軸回転速度を低速回転速度SLとし、偶数回目の主軸回転速度を高速回転速度SHとしている。
【0016】
続いてねじ切り加工制御部2は、ねじ切り指令に含まれるねじ形状、ねじピッチ等の指令、および、主軸速度検出部14からの現在主軸回転速度から送り軸速度を算出する。Z軸位置制御部3は、このねじ形状やねじピッチ、送り軸速度などに基づいて、主軸回転に同期して所定のねじピッチに加工するZ軸の位置指令を作り出して制御する。また、X軸位置制御部8は、ねじ切り指令等に基づいて、ねじ切りの切り込み軸であるX軸の位置指令を作り出す。このように位置制御されたX軸およびZ軸の位置指令は、X軸加減速制御部9およびZ軸加減速制御部4により加減速制御され、X軸10およびZ軸5が制御される。なお、加減速時間記憶部6に設定・記憶されている加減速時間は、予めX軸加減速制御部9およびZ軸加減速制御部4に転送してある。
【0017】
以上により、ねじ切り加工時にびびり振動を抑制するため主軸の回転速度を変化させて加工をすることが可能であった。
【0018】
次に、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態であるねじ切り加工装置の構成を示すブロック図である。このねじ切り加工装置は、加減速時間演算部7を具備することを特徴としている。
【0019】
このねじ切り加工装置において、主軸の回転制御は、従来技術とほぼ同じである。すなわち、加工プログラム解析部1は、図示しない加工プログラムを解析する。ねじ切り指令があるとねじ切り加工制御部2は、現在有効な主軸回転数指令Sを主軸速度演算部11に出力する。主軸速度演算部11は入力した主軸回転数指令Sを基にねじ切りパスごとに主軸の回転速度を算出して主軸速度制御部12に出力する。主軸速度制御部12は、入力された主軸の回転速度となるように主軸13を制御する。主軸速度演算部11は、例えば、上記式1と式2に基づいて高速回転速度SHと低速回転速度SLとを演算し、主軸の回転速度をねじ切りパスごとに高速回転速度または低速回転速度のいずれかに変更することにより、びびり振動を抑制することが可能となっている。
【0020】
ここで、本実施形態では、主軸速度演算部11で演算された主軸の回転速度は加減速時間演算部7へも送られる。加減速時間演算部7は入力された主軸の回転速度と予め加減速時間記憶部6に設定・記憶されている加減速時間T0とから、各ねじ切りパスにおける送り軸の加減速遅れ量が一定となる加減速時間Tを演算し、X軸加減速制御部9とZ軸加減速制御部4に送る。
【0021】
続く動作は従来技術と同じである。すなわち、ねじ切り加工制御部2は、ねじ切り指令に含まれるねじ形状、ねじピッチ等の指令および、主軸速度検出部14からの現在主軸回転速度とから送り軸速度を算出する。このねじ形状やねじピッチ、送り軸速度などに基づいて、Z軸位置制御部3は、主軸回転に同期して所定のねじピッチに加工するZ軸の位置指令を作り出し、X軸位置制御部8は、ねじ切り指令等に基づいて、ねじ切りの切り込み軸であるX軸の位置指令を作り出す。このように位置制御されたX軸およびZ軸の位置指令は、X軸加減速制御部9およびZ軸加減速制御部4により加減速制御され、X軸10およびZ軸5が制御される。
【0022】
ここで、加減速時間演算部7における演算処理について説明するために、まず、ねじ切りつなぎ部等ねじ切り方向が変化する部位における送り軸の経路について説明する。
【0023】
図3はストレートねじとテーパねじのつなぎ部における経路の説明図である。
図3はつなぎ部を拡大したものであり、Z軸プラス方向からストレートねじ切りを行い、A点からテーパねじ切りとなる場合の指令経路と実際の経路を示している。
図3において実線は、指令経路であり、破線は実際の経路を示している。
【0024】
図3に示すように、指令経路が実線のとおりであっても、実際の経路は破線のようになる。これは指令が行われてから実際の送り軸が動作するまでには加減速が伴うことで加減速遅れが生じるためである。
【0025】
図の例では加減速遅れ量をdとしているが、この場合はA点からdだけ手前からX軸の動作が始まり、実際の経路が破線のようになることを示している。このように方向転換部などで丸みを帯びた形状となることが、一般的に知られている。
【0026】
次に加減速遅れ量について説明する。
図4は加減速遅れ量の説明図である。ある時間から送り軸速度Vを指令したとき、実際の送り軸は加減速時間T後に送り軸速度Vに到達する。この場合、加減速遅れ量dは図の斜線部の面積であるから、下記式3で表すことができる。
d=V×T/2 ・・・式3
【0027】
次に加減速遅れ量の違いによる、方向転換部の経路の違いについて説明する。
図5は加減速遅れ量が同じ場合の経路の説明図である。すべてのねじ切りパスにおいて、加減速遅れ量がdで同一であるならば、
図5に示すように方向転換部の切り込み量も同一となる。
【0028】
図6は加減速遅れ量が異なる場合の経路の説明図である。
図6は、奇数回目の加減速遅れ量がdL、偶数回目の加減速遅れ量がdHであり、dL<dHの場合の例である。この場合、
図6に示すように方向転換部の切り込み量が同一とはならない。
【0029】
したがって、方向転換部の切り込み量を同一とするためには、すべてのねじ切りパスで加減速遅れ量を同じにする必要がある。
【0030】
加減速遅れ量は上記式3であるから、各ねじ切りパスにおける送り軸の加減速遅れ量を同じにするためには、第n回目のねじ切りパスにおける送り軸速度と加減速時間をそれぞれV
n、T
nとすると、下記式4を満たせば良い。
V1×T1=V2×T2= … =V
n−1×T
n−1=V
n×T
n ・・・式4
【0031】
これをねじ切りに当てはめると、第n回目の主軸回転速度をS
nとしたとき、ねじ切りではねじピッチを一定にする必要があるため、SとVは比例関係にある。これは下記式5で表せる。なお、cはねじピッチで決まる定数である。
V
n=c×S
n ・・・式5
上記式5を上記式4に当てはめると、下記式6が導かれる。
S1×T1=S2×T2= … =S
n−1×T
n−1=S
n×T
n ・・・式6
【0032】
つまり、加減速時間演算部7において、上記式6を満たす加減速時間を演算することで、加減速遅れ量を一定に保つことが可能となる。換言すれば、主軸回転速度と加減速時間との積が、全てのねじ切りパスで等しくなるように、加減速時間を制御すれば、加減速遅れ量を一定に保つことできる。
【0033】
本実施例では、高速回転速度SHと低速回転速度SLとを交互に選択してねじ切りを行うのであるから、下記式7を満たせばよいことになる。
SH×TH=SL×TL ・・・式7
【0034】
例えば加減速時間T0を高速回転速度SHでのねじ切りパスに適用し、低速回転速度SLでのねじ切りパスをこれに合わせ演算するとした場合は、加減速時間THと加減速時間TLはそれぞれ式8と式9により演算できる。
TH=T0 ・・・式8
TL=(SH/SL)×T0 ・・・式9
【0035】
以上の通り、ねじ切り加工時にびびり振動を抑制するため主軸の回転速度を変化させて加工をする場合に、送り軸の加減速時間を上記式6に基いて演算し変更することで送り軸の加減速遅れ量を一定に保ち、ねじ切りつなぎ部等ねじ切り方向が変化する部位において切り込み量を一定に保つことが可能となり、切削負荷が予期せず大きくなることが解決できる。
【0036】
なお、本実施例では主軸の回転速度を高速回転速度SHと低速回転速度SLとを交互に選択するものとしたが、高速/指令速度/低速のパターンとしたものや、ねじ切り前にオーバーライドによって変更された主軸回転速度等、ねじ切りパス中に主軸の回転速度が変化しなければ、あらゆるパターンに適用可能である。