(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969359
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】真空断熱パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/06 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
F16L59/06
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-247251(P2012-247251)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-95426(P2014-95426A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】神野 武男
(72)【発明者】
【氏名】高槻 豊彦
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−082534(JP,A)
【文献】
特開2010−127463(JP,A)
【文献】
特開平07−019391(JP,A)
【文献】
特開平07−019392(JP,A)
【文献】
特許第4829172(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/00−22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2パネル部材を対向配置して、これらの間に複数の空間部を形成し、前記各空間部を、前記第1および第2パネル部材のうち少なくとも前記第2パネル部材の前記空間部側の全面に設けた複数の凹凸部により連通させるとともに、前記凹凸部を塑性変形させて前記第1および第2パネル部材の外周部を密封する封止部を設け、
前記凹凸部により連通した前記各空間部を真空排気した後、隣接した前記空間部の間の前記凹凸部を塑性変形させて更に封止部を設け、前記各空間部を密封状態に区画することを特徴とする真空断熱パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱パネ
ルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の真空断熱パネルは、対向する第1および第2パネル部材の間を密封し、内部に形成した空間部を真空排気している。目的に応じた所定形状に形成され、組み合わせて対象物の断熱を図っている。しかし、小さな真空断熱パネルを個別に製造すると、生産性が悪いという問題がある。
【0003】
これに対して特許文献1,2には、複数の空間部を形成した真空断熱パネルが記載されている。この真空断熱パネルは、第1金属パネルに空間部を形成するための膨出部を設け、膨出部の開口側に、平板状または対応する膨出部を形成した第2金属パネルを接合している。複数の空間部のうち所定の第1の空間部に排気部が形成され、この排気部から全ての空間部内を真空排気している。
【0004】
特許文献1の真空断熱パネルは、隣接した空間部間に位置する第1および第2パネル部材が重畳配置されているため、1箇所の排気部から全ての空間部を真空排気する際の効率が悪い。一方、特許文献2の真空断熱パネルは、第1および第2パネル部材の一方に突部を設け、真空排気用の通路を確保しているため、排気効率が低下することはない。
【0005】
また、各真空断熱パネルは容器用であり、隣接する空間部間が封止されていないため、各空間部を切断して個別の真空断熱パネルとして使用することはできない。但し、特許文献1の真空断熱パネルは、外周部と同様に隣接する空間部間も封止すれば分割して使用することが可能である。しかし、特許文献2の真空断熱パネルは、排気通路を確保するための突部を有するため、各空間部を分離して使用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−19392号公報
【特許文献2】特許第4829172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、複数の空間部を効率的に排気可能とし、かつ、各空間部を分離して個別に使用可能な真空断熱パネ
ルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の真空断熱パネルは、対向配置された第1および第2パネル部材と、前記第1および第2パネル部材の間に形成され真空排気された複数の空間部と、前記各空間部の外周を密封した封止部とを備え、前記第1および第2パネル部材のうち少なくとも前記第2パネル部材の前記空間部側の全面に複数の凹凸部を設け、前記凹凸部を塑性変形させて前記封止部を形成した構成としている。なお、真空断熱パネルは、複数の前記空間部のうち第1の空間部に排気部を有する。
【0009】
この真空断熱パネルの製造方法は、第1および第2パネル部材を対向配置して、これらの間に複数の空間部を形成し、前記各空間部を、前記第1および第2パネル部材のうち少なくとも前記第2パネル部材の前記空間部側の全面に設けた複数の凹凸部により連通させるとともに、前記凹凸部を塑性変形させて前記第1および第2パネル部材の外周部を密封する封止部を設け、前記凹凸部により連通した前記各空間部を真空排気した後、隣接した前記空間部の間の前記凹凸部を塑性変形させて更に封止部を設け、前記各空間部を区画する。
【0010】
真空断熱パネルは、第2パネル部材の凹凸部により、隣接する空間部が連通されているため、効率的な真空排気が可能である。また、真空排気後には、隣接した空間部間を封止する際に凹凸部を塑性変形させるため、各空間部を確実に密封することができる。そのため、各空間部を切断して個別の真空断熱パネルとして使用することができる。よって、小さな真空断熱パネルを個別に製造する必要がないため、生産性を向上できる。しかも、凹凸部は第2パネル部材の全面に設ける構成であるため、加工性も良好である。
【0011】
この真空断熱パネルでは、前記凹凸部は、前記空間部側に位置する内面から外面にかけて設けられることが好ましい。なお、前記第1パネル部材は、前記第2パネル部材より肉厚が厚い平板状をなす。また、前記凹凸部は、真空排気時の排気圧では変形せず、封止時の加圧により変形可能である。このようにすれば、プレス加工またはロールフォーミング加工により容易に製造できる。また、凹凸部により剛性を向上できるため、第2パネル部材を薄くすることが可能になる。そして、この真空断熱パネルは、第2パネル部材を対象物側に配置し、第1パネル部材を大気側に配置することにより、断熱性能を大幅に向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の真空断熱パネルおよび製造方法では、第2パネル部材に形成した凹凸部により隣接した空間部内を効率的に真空排気できる。また、真空排気後には、隣接した空間部間を封止する際に凹凸部を塑性変形させるため、各空間部を確実に密封できる。よって、各空間部を切断して個別の真空断熱パネルとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の真空断熱パネルを示す平面図。
【
図2】(A)は
図1の要部断面図、(B)は
図1の要部底面図。
【
図4A】真空断熱パネルの製造方法の第1工程を示す断面図。
【
図4B】真空断熱パネルの製造方法の第2工程を示す断面図。
【
図4C】真空断熱パネルの製造方法の第3工程を示す断面図。
【
図6A】第2実施形態の真空断熱パネルを示す断面図。
【
図6B】第3実施形態の真空断熱パネルを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1および
図2(A),(B)は、本発明の第1実施形態に係る真空断熱パネル10を示す。この真空断熱パネル10は、一対の外装パネル11,16の間に複数の空間部20を形成し、各空間部20内にコア材21A,21Bを配設して真空排気している。各空間部20は封止部19A,19Bにより区画され、
図5に示すように分離して個別の真空断熱パネル10Aとして使用可能である。
【0016】
図2(A),(B)および
図3に示すように、第1外装パネル11は、厚さ0.2〜1.0mm程度のステンレス(SUS304)等からなる平面視矩形状の薄平板が使用される。第1外装パネル11には、所定幅の平坦な外周部12を残し、内部に2行3列の配列で正方形状をなす複数の膨出部13が形成されている。膨出部13の外周壁は傾斜部14により構成される。隣接する膨出部13の間は平坦な連続部15によって連続している。
【0017】
封止前の第2外装パネル16は、第1外装パネル11より肉厚が薄い(例えば0.1〜0.5mm程度)ステンレス(SUS304)等からなる平面視矩形状の薄板が使用される。空間部20の側に位置する内面から外面にかけて屈曲した凹部17と凸部18とが形成されている。凹凸部17,18は、プレス加工またはロールフォーミング加工により全面に形成されている。
図2(B)に示すように、個々の凹部17と凸部18とがそれぞれ平面視正六角形状をなし、内面側または外面側に屈曲されている点でのみ相違する。また、個々の凹凸部17,18の幅は、第1外装パネル11の膨出部13,13間の幅の2倍の寸法より小さく形成されている。凹凸部17,18の形成によるビード(稜部)で第2外装パネル16の剛性が高められる。そのため、凹凸部17,18は、真空排気時の排気圧(例えば1kg/cm2)では変形しない。
【0018】
膨出部13の開口側に位置するように、第1外装パネル11に対して第2外装パネル16が対向配置され、膨出部13の外周(外周部12と連続部15)を封止することにより一体化されている。封止は、シーム溶接等の圧着接合またはTIG溶接等の突き合わせ溶接、MIGブレージング等によって行われる。この接合時の加圧で第2外装パネル16の凹凸部17,18が、第1外装パネル11の外周部12および連続部15に重畳可能な平坦な状態に塑性変形される。また、
図1にハッチングを付して示すように、接合により膨出部13の外周に封止部19A,19Bが形成され、内部に密封された空間部20が形成される。
【0019】
なお、外装パネル11,16はステンレスに限られず、鉄やチタン等の金属板であってもよく、必要とされる耐熱温度に応じて変更が可能である。しかも、第1外装パネル11と第2外装パネル16とで異なる金属材料のものを使用してもよい。勿論、使用目的に応じた耐熱温度が得られるならば、樹脂により構成してもよい。
【0020】
空間部20の内部には、一対のコア材21A,21Bと、輻射伝熱を防止するための金属箔(銅箔)22と、完成後に発生したガスを吸引して真空度を維持するためのゲッター(図示せず)とが配設される。コア材21A,21Bは、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の織布又は不織布、あるいは、マイカ板、セラミックウール、セラミックボード等が使用される。コア材21A,21Bは、間に金属箔22を挟み込んだ状態で膨出部13内に配設される。
【0021】
複数の膨出部13(空間部20)のうち、第1の膨出部13A(空間部20A)には排気部23が形成されている。排気部23は、膨出部13に形成した排気孔24と、排気孔24に接合したチップ管25とを備える。チップ管25は、真空排気後に封止される。
【0022】
次に、真空断熱パネル10の製造方法について説明する。
【0023】
まず、膨出部13の開口が上方に位置するように第1外装パネル11を配置し、膨出部13内にコア材21A,21Bと金属箔22とゲッターとを配置する。その後、第1外装パネル11上に第2外装パネル16を配置し、
図4Aに示すように、上下向きに配置を変更する。これにより、対向配置された第1および第2外装パネル11,16間に複数の空間部20が形成される。
【0024】
ついで、
図4Bに示すように、第1および第2外装パネル11,16の外周部を接合し、第1の封止部19Aを形成する。これにより、第2外装パネル16の外周部の凹凸部17,18が平坦な状態に塑性変形されて、対向する第1および第2外装パネル11,16間が密閉される。但し、この状態では隣接する膨出部13,13間の連続部15は接合していない。そのため、第1外装パネル11の連続部15には第2外装パネル16の凸部18が当接し、凹凸部17,18の全高分の隙間(排気通路)が形成される。その結果、隣接する空間部20内が凹凸部17,18により連通状態が確保される。
【0025】
その後、チップ管25に排気装置を接続し、予め規定した真空度になるように真空排気する。真空排気により規定の真空度に達すると、その真空度を維持した状態でリークテスト装置によりリーク部分が存在するか否かをテストする。リークが無いことが確認されると、
図4Cに示すように、チップ管25を封止して不要部分を切断する。
【0026】
最後に、
図2に示すように、膨出部13,13間の連続部15を接合し、第2の封止部19Bを形成する。これにより、連続部15の対応位置に形成された第2外装パネル16の凹凸部17,18が平坦な状態に塑性変形されて、各空間部20が密封状態に区画される。
【0027】
このように製造した真空断熱パネル10は、第2外装パネル16の凹凸部17,18により、隣接する空間部20,20が連通されているため、効率的な真空排気が可能である。また、真空排気後には、隣接した空間部20,20間を封止する際に凹凸部17,18を塑性変形させるため、各空間部20,20を確実に密封することができる。
【0028】
そのため、
図5に示すように、連続部15で切断して分離した一部だけを小さな真空断熱パネル10Aとして使用可能である。よって、小さな真空断熱パネルを個別に製造する必要がないため、生産性を向上できる。なお、チップ管25を配設した第1の膨出部13Aは、使用可能な箇所が制限された真空断熱パネルとなる。
【0029】
また、凹凸部17,18は第2外装パネル16の全面に設ける構成であるため、プレス加工またはロールフォーミング加工により容易に製造できる。さらに、凹凸部17,18により剛性を向上できるため、第2外装パネル16を薄くすることが可能である。よって、真空断熱パネル10は、第2外装パネル16を断熱対象物側に配置し、第1外装パネル11を大気側に配置することにより、第2外装パネル16と断熱対象物との間に更に断熱空間を形成できるため、断熱性能を向上できる。
【0030】
(第2実施形態)
図6Aは第2実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第2実施形態では、第2外装パネル16における空間部20側の面だけに凹凸部17,18を設けた点で、第1実施形態と相違する。第2外装パネル16は、第1外装パネル11と同様の肉厚の金属板からなる。そして、板状をなす第2外装パネル16の一面にシボ加工を施すことにより、凹凸部17,18を形成している。
【0031】
(第3実施形態)
図6Bは第3実施形態の真空断熱パネル10を示す。この第3実施形態では、第1外装パネル11を、第1実施形態の第2外装パネル16と同様に、内外面にかけて凹凸部17,18を形成した金属板により構成している。
【0032】
このように構成した第2および第3実施形態の真空断熱パネル10は、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、第3実施形態では、第1および第2外装パネル11,16に凹凸部17,18を設けているため、全体の剛性を確保したうえで、軽量化を図ることができるとともに、断熱性能を向上することができる。
【0033】
なお、本発明の真空断熱パネル10およびその製造方法は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0034】
例えば、各実施形態では2行3列の配列で空間部20を形成したが、その配列および形状は希望に応じて変更が可能である。また、前記実施形態では、凹凸部17,18を平面視正六角形状に形成したが、平面視円形状に形成してもよく、形状および配列は希望に応じて変更が可能である。さらに、膨出部13の天面に排気部23を形成したが、膨出部13の傾斜部14に排気部23を形成してもよい。勿論、小さな排気専用膨出部を設けた構成としてもよい。
【0035】
また、各実施形態では、第2外装パネル16には空間部20を形成するための膨出部は設けていないフラット形状としたが、膨出部13に対応する膨出部を設けた形状としてもよい。さらに、第3実施形態では、内面から外面にかけて凹凸部17,18を形成した第1および第2外装パネル11,16を用いたが、シボ加工による凹凸部17,18を形成した第1および第2外装パネル11,16を用いてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…真空断熱パネル
10A…分割した真空断熱パネル
11…第1外装パネル(第1パネル部材)
12…外周部
13,13A…膨出部
14…傾斜部
15…連続部
16…第2外装パネル(第2パネル部材)
17…凹部
18…凸部
19A,19B…封止部
20,20A…空間部
21A,21B…コア材
22…金属箔
23…排気部
24…排気孔
25…チップ管