特許第5969370号(P5969370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969370
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】断熱パネルおよび断熱体
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20160804BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   E04B1/76 400B
   E04B1/76 400C
   E04B1/80 100B
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-264289(P2012-264289)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-109144(P2014-109144A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】神野 武男
(72)【発明者】
【氏名】東野 隆
(72)【発明者】
【氏名】高槻 豊彦
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−280707(JP,A)
【文献】 特開2001−287291(JP,A)
【文献】 特開2002−257288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/76−1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角形状の膨出部を有する第1パネル部材と、前記第1パネル部材に接合されて前記膨出部の開口側を閉塞する第2パネル部材とを備え、前記膨出部の開口側に外向きに突出する突出部が形成されるとともに、前記膨出部内の断熱空間部真空である断熱パネルにおいて、
前記膨出部の外周壁に重合部を設け、前記第1パネル部材側と前記第2パネル部材側とを交互に位置させることにより隣接配置した前記各断熱パネルの前記重合部が重なり合うようにしたことを特徴とする断熱パネル。
【請求項2】
多角形状の膨出部を有する第1パネル部材と、前記第1パネル部材に接合されて前記膨出部の開口側を閉塞する第2パネル部材とを備え、前記膨出部の開口側に外向きに突出する突出部が形成されるとともに、前記膨出部内の断熱空間部真空である2以上の断熱パネルからなり、前記各断熱パネルの前記膨出部の外周壁に重合部を設け、前記第1パネル部材側と前記第2パネル部材側とを交互に位置させることにより、前記各断熱パネルの前記突出部を前記膨出部の閉鎖面に重ねるとともに、前記各断熱パネルの前記各重合部を重ね合わせて配置したことを特徴とする断熱体。
【請求項3】
前記断熱パネルの前記膨出部の各角部に、隣接配置した前記各断熱パネルに重なり合う第2重合部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の断熱体。
【請求項4】
前記第2重合部は、前記第2パネル部材側から直交方向に延びる当接部と、前記当接部の上端から前記膨出部の上端角部にかけて面取りした面取部とを有し、前記各断熱パネルの前記当接部を隣接配置した前記断熱パネルの前記面取部に挿入配置可能としたことを特徴とする請求項3に記載の断熱体。
【請求項5】
前記断熱パネルの前記突出部の各角部に、前記第2重合部と同一面状をなすように角面取部を設け、前記各断熱パネルの前記各角面取部を当接させて位置決め可能としたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の断熱体。
【請求項6】
前記各断熱パネルを隣接配置した状態で前記膨出部の角部に形成され空隙部に断熱材充填して配置されることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の断熱体。
【請求項7】
前記断熱パネルの前記重合部は、前記膨出部の閉鎖面に向けて傾斜させた傾斜部からなることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の断熱体。
【請求項8】
前記断熱パネルの前記重合部は、前記膨出部の閉鎖面に向けて鉛直方向に延びる第1当接部と、前記閉鎖面に対して平行に延びる第2当接部とを有する段部からなることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の断熱体。
【請求項9】
前記断熱空間部内に、各パネル部材より熱伝導度が低く、弾性的な変形が不可能なコア材を配設したことを特徴とする請求項2乃至請求項8のいずれか1項に記載の断熱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定配列で配置可能な断熱パネルおよび配列した断熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の断熱パネルを容易に組付可能とする断熱パネルが記載されている。この断熱パネルは、凹部の開口縁にフランジ部を有する第1パネルと、フランジ部を介して接合される平板状の第2パネルとを備える。凹部内には、断熱性能を向上するためのコア材が配設されている。
【0003】
各断熱パネルを組み付けて1つの断熱体を形成する際には、第1パネル側と第2パネル側とが交互に配置される。断熱パネルの凹部の外周壁に他の断熱パネルの凹部の外周壁を当接させるとともに、凹部の閉鎖面に凹部から突出した周縁部をオーバーラップさせる。
【0004】
しかしながら、特許文献1の断熱パネルによる断熱体は、隣接配置した凹部間の隙間からの放熱を抑えることができない。そのため、断熱性能を向上するための改良が更に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−280707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容易に組付可能で、組付状態での断熱性能が高い断熱パネルおよび断熱体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の断熱パネルは、多角形状の膨出部を有する第1パネル部材と、前記第1パネル部材に接合されて前記膨出部の開口側を閉塞する第2パネル部材とを備え、前記膨出部の開口側に外向きに突出する突出部が形成されるとともに、前記膨出部内の断熱空間部を真空引きしてなる断熱パネルにおいて、前記膨出部の外周壁に重合部を設け、前記第1パネル部材側と前記第2パネル部材側とを交互に位置させることにより隣接配置した前記各断熱パネルの前記重合部が重なり合う構成としている。この断熱パネルを用いた断熱体は、前記第1パネル部材側と前記第2パネル部材側とを交互に位置させることにより、前記各断熱パネルの前記突出部を前記膨出部の閉鎖面に重ねるとともに、前記各断熱パネルの前記各重合部を重ね合わせて配置する。
【0008】
断熱パネルは、第1パネル部材側と第2パネル部材側とが交互に位置するように隣接配置するだけで、各断熱パネルの膨出部の外周壁に設けた重合部が重なり合った状態をなす。そのため、簡単に組み付けることができる。組付状態の断熱体は、隣接配置した断熱パネル間において、熱伝導の延面距離を確保できる。しかも、断熱対象物と大気との間には、全面にかけて断熱空間部が位置する。よって、断熱性能を大幅に向上できる。
【0009】
前記断熱パネルの前記膨出部の各角部に、隣接配置した前記各断熱パネルに重なり合う第2重合部を設けることが好ましい。具体的には、前記第2重合部は、前記第2パネル部材側から直交方向に延びる当接部と、前記当接部の上端から前記膨出部の上端角部にかけて面取りした面取部とを有し、前記各断熱パネルの前記当接部を隣接配置した前記断熱パネルの前記面取部に挿入配置可能としている。また、前記断熱パネルの前記突出部の各角部に、前記第2重合部と同一面状をなすように角面取部を設け、前記各断熱パネルの前記各角面取部を当接させて位置決め可能としてる。さらに、前記各断熱パネルを隣接配置した状態で前記膨出部の角部に形成され空隙部に断熱材を充填することが好ましい。このようにすれば、隣接された断熱パネルの角部に隙間が発生することがないため、断熱性能を更に向上できる。
【0010】
また、前記断熱パネルの前記重合部は、前記膨出部の閉鎖面に向けて傾斜させた傾斜部からなる。または、前記断熱パネルの前記重合部は、前記膨出部の閉鎖面に向けて鉛直方向に延びる第1当接部と、前記閉鎖面に対して平行に延びる第2当接部とを有する段部からなる。このようにすれば、膨出部の側部において、隣接配置される断熱パネルを確実に重ね合わせて配置することができる。
【0011】
前記断熱空間部内に、各パネル部材より熱伝導度が低く、弾性的な変形が不可能なコア材を配設することが好ましい。このようにすれば、熱による反りの発生を防止できる。よって、多数の断熱パネルを容易かつ確実に継ぎ合わせて組み付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の断熱パネルは、膨出部の外周壁に形成した重合部により、容易に継ぎ合わせて組み付けることができる。また、組付状態では、熱伝導の延面距離を確保できるとともに、断熱対象物の全面にかけて断熱空間部が位置するため、断熱性能を大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る第1実施形態の断熱パネルを示す斜視図。
図2】(A)は多数の断熱パネルを組み付けた断熱体を示す正面図、(B)は(A)の横断面図。
図3】組付前の状態を示す正面図。
図4】(A)は組付前の状態を示す側面図、(B)は組付後の状態を示す側面図。
図5】第2実施形態の断熱パネルを示す斜視図。
図6】第2実施形態の断熱体を示し、(A)は正面図、(B)は側面図。
図7】第3実施形態の断熱パネルを示す斜視図。
図8】第3実施形態の断熱体を示し、(A)は正面図、(B)は側面図。
図9】(A)は図8(A)の要部拡大図、(B)は図8(B)の要部拡大図。
図10】第4実施形態の断熱パネルを示す斜視図。
図11】第4実施形態の断熱体を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る断熱パネル10を示し、図2乃至図4は第1実施形態の断熱パネル10を用いた断熱体を示す。断熱パネル10は、膨出部14に他の断熱パネル10と互いに重なり合う第1および第2重合部16,17を設けることにより、市松模様状に隙間なく容易に組付可能とする。断熱体は、個々の断熱パネル10に対する熱伝導の延面距離を確保することにより、断熱性能を向上する。
【0016】
図1に示すように、断熱パネル10は、肉厚0.1〜1.0mmのステンレス(SUS304またはSUS310S)板を加工した第1および第2パネル部材11,20を備える。これらの間には断熱空間部21が形成され、この断熱空間部21にコア材22が配設されている。また、断熱空間部21は、排気部15から真空排気した後に密封されている。
【0017】
第1パネル部材11は平面視正方形状をなし、中心部に正方形状をなす膨出部14が形成されている。この膨出部14の形成により、膨出部14の開口縁には外向きに突出する突出部12が形成される。突出部12の各角部には角面取部13が設けられている。この角面取部13の形成により第1パネル部材11の外形は平面視八角形状をなす。膨出部14の閉鎖面14aには、排気孔にチップ管を配設してなる排気部15が設けられている。チップ管は、真空排気後に封止される。
【0018】
膨出部14には、隣接配置する他の断熱パネル10と重なり合うように密接配置するために、四方の外周壁に第1重合部16が形成され、各角部に階段状をなす第2重合部17が形成されている。第1重合部16は、膨出部14の開口(突出部12)側から閉鎖面14aに向けて内向きに傾斜させた傾斜部により構成される。本実施形態の第1重合部16の傾斜角度は45度に設定されている。第2重合部17は、第2パネル部材20側(膨出部14の開口側)から直交方向に延びる当接部18を備える。当接部18は、第1重合部16の傾斜によって三角形状に形成されている。当接部18の頂部までの全高は、膨出部14の全高の半分に寸法設定されている。本実施形態の当接部18は、角面取部13に対して同一平面状をなすように形成されている。また、第2重合部17は、当接部18の上端から膨出部14の上端角部にかけて面取りした面取部19を備える。面取部19は、当接部18の頂部から突出部12および閉鎖面14aに対して平行に延びる平面視三角形状の当接段部19aと、この当接段部19aの内端から膨出部14の角部にかけて傾斜して延びる三角形状の傾斜部19bとを有する。
【0019】
第2パネル部材20は、第1パネル部材11の膨出部14の開口側に接合されて膨出部14の開口側を閉塞する。本実施形態では、角面取部13を設けた第1パネル部材11(突出部12)の外形と同一の八角形状に形成されている。即ち、正方形状の平板の各角部に、第1パネル部材11と同様の角面取部を設けた八角形状に形成されている。
【0020】
第1および第2パネル部材11,20は、膨出部14の開口側に第2パネル部材20を配置し、突出部12および当接部18の開口側を封止することにより一体化される。封止は、シーム溶接等の圧着接合またはTIG溶接等の突き合わせ溶接、MIGブレージング等によって行われる。なお、パネル部材11,20はステンレスに限られず、鉄やチタン等の金属板であってもよく、必要とされる耐熱温度に応じて変更が可能である。しかも、第1パネル部材11と第2パネル部材20とで異なる金属材料のものを使用してもよい。勿論、使用目的に応じた耐熱温度が得られるならば、樹脂により構成してもよい。
【0021】
図2(B)に示すように、第1および第2パネル部材11,20の接合により、膨出部14内には断熱空間部21が形成される。この断熱空間部21内には、一対のコア材22,22と、輻射伝熱を防止するための金属箔(銅箔)23と、完成後に発生したガスを吸引して真空度を維持するためのゲッター(図示せず)とが配設される。
【0022】
コア材22は、熱伝導度が低く、弾性的な変形が不可能(硬質)な多孔質体である厚いセラミックボードからなり、断熱空間部21の全高を上下に2分した形状に成形されている。セラミック材料を繊維状とし、希望形状として硬化させたものや、粒状としたものを希望形状として焼成したものが使用可能であり、約1000℃の耐熱温度を備えている。なお、コア材22は、セラミックボードの代わりに板状とした多孔質体であるウレタンを適用してもよい。また、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の織布又は不織布を適用してもよく、その材料は必要とされる耐熱温度に従って変更する。
【0023】
この断熱パネル10は、例えば第1パネル部材11の開口側を上向きに配置し、コア材22、金属箔23およびゲッターを配置した後、上方に第1パネル部材11を配置する。そして、突出部12および当接部18を第2パネル部材20に接合して、膨出部14の周囲を封止する。その後、排気部15に図示しない排気装置を接続し、断熱空間部21内を予め規定した真空度に真空引きする。規定の真空度に達し、リークが無いことが確認されると、排気部15を封止することにより、断熱空間部21を密封宇する。
【0024】
この断熱パネル10の製造する際には、接合時および真空排気時の熱等によりパネル部材11,20に反りが生じることがある。しかし、本実施形態では、膨出部14の内部に硬質なコア材22を配設しているため、熱による反りの発生を防止できる。しかも、真空排気の前後でコア材22の厚みの変化は殆ど生じない。その結果、正確かつ確実に設計通りの断熱パネル10を製造することができる。また、生産性を高めることができる。
【0025】
次に、1種の断熱パネル10を多数用いた断熱体の形成について説明する。
【0026】
図2(A),(B)に示すように、第1パネル部材11側と第2パネル部材20側とが交互に位置するように、断熱パネル10,10を縦横に隣接配置して、1個の断熱体を形成する。以下、膨出部14を上側に配置したものを断熱パネル10Aとし、膨出部14を下側に配置したものを断熱パネル10Bとする。
【0027】
具体的には、断熱パネル10Aの第2パネル部材20が断熱対象物X(例えば加熱炉の壁面)に接触するように配置し、断熱パネル10Bの第1パネル部材11の側が断熱対象物Xの側に位置するように配置する。この際、各断熱パネル10A,10Bの突出部12,12が各膨出部14,14の閉鎖面14a,14aの外面に重なるように配置する。また、各断熱パネル10A,10Bの第1重合部16,16が接触して重なり合うように配置する。これにより、隣接配置する断熱パネル10A,10Bを容易かつ正確に位置決めして配置することができる。
【0028】
また、4枚の断熱パネル10A,10B,10A,10Bが突き合う角部では各第2重合部17が互いに重なり合う。具体的には、図3および図4(A),(B)に示すように、斜めに位置する断熱パネル10A,10Aおよび断熱パネル10B,10Bの各角面取部13,13および当接部18,18が当接(面接触)する。また、断熱パネル10Aの面取部19の当接段部19aと、横に位置する断熱パネル10Bの面取部19の当接段部19aとが当接(面接触)する。これにより、断熱パネル10Aの当接部18は、隣接配置した断熱パネル10B,10Bの面取部19,19内に挿入配置され、断熱パネル10Bの当接部18は、隣接配置した断熱パネル10A,10Aの面取部19,19内に挿入配置された状態をなす。なお、図3および図4(A)は、各断熱パネル10A,10Bの第2重合部17,17の関係を明確にするためのもので、実際の組付作業に即したものではない。
【0029】
このように、断熱パネル10A,10Bの突出部12を隣接配置した断熱パネル10B,10Aの膨出部14に重ね、斜めに位置する断熱パネル10A,10Aおよび断熱パネル10B,10Bの角面取部13,13を当接させる。これにより、横に隣接配置した断熱パネル10A,10Bの第1重合部16,16と、斜めに隣接配置した断熱パネル10A,10Aおよび断熱パネル10B,10Bの第2重合部17,17の当接部18,18を当接させた、正規組付位置に容易に位置決めして配置できる。しかも、本実施形態の断熱パネル10は、製造時に反りの発生を防止できるため、多数の断熱パネル10A,10Bを容易かつ確実に継ぎ合わせて組み付けることができる。また、1種の断熱パネル10だけで所定面積の断熱体を形成するため、作業性を大幅に向上できる。
【0030】
組付状態の断熱体は、膨出部宇の外周壁に設けた第1重合部16,16および第2重合部17,17の重なり合った状態をなすため、断熱パネル10A,10Bの間に隙間が発生することがない。また、断熱パネル10A,10Bの第1重合部16,16は斜めに延びた状態をなすため、熱伝導の延面距離を確保できる。しかも、断熱対象物Xと大気との間には、全面にかけて断熱空間部21(コア材22)が位置する。よって、膨出部14の四方および角部の全周囲からの放熱を抑制できるため、断熱性能を大幅に向上することができる。
【0031】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態の断熱パネル10を示し、図6(A),(B)は第2実施形態の断熱パネル10を用いた断熱体を示す。第2実施形態の断熱パネル10は、第1重合部16を階段状の段部により構成した点で、第1実施形態と相違する。
【0032】
図5に示すように、段部からなる第1重合部16は、第1当接部16aと、第1当接部16aに対して直交方向に延びる第2当接部16bと、第2当接部16bに対して直交方向に延びる第3当接部16cとを備える。第1当接部16aは、膨出部14の閉鎖面14aに向けて突出部12から鉛直方向に延び、膨出部14の全高の半分の全高に寸法設定されている。第2当接部16bは、第1当接部16aの先端から突出部12および閉鎖面14aに対して平行に延びる。第3当接部16cは、第2当接部16bの内端から閉鎖面14aにかけて鉛直方向に延び、膨出部14の全高の半分の全高に寸法設定されている。組付状態では、第1当接部16aは他の断熱パネル10の第3当接部16cに当接し、第2当接部16bは他の断熱パネル10の第2当接部16bに当接する。
【0033】
第2実施形態の第2重合部17は、第2パネル部材20側から直交方向に延びる当接部18を備える。当接部18は、第1重合部16の第1当接部16aの形成により矩形状に形成されている。面取部19は、第2当接部16bに対して平面状に位置する当接段部19aを備える。なお、第1実施形態に示す傾斜部19bは、鉛直方向に延びる第3当接部16cの形成により設けていない。
【0034】
第2実施形態の断熱パネル10は第1実施形態と同様に製造され、図6(A),(B)に示すように、第1実施形態と同様に組み付けて断熱体を形成できる。そして、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。しかも、第2実施形態では、第1および第2重合部16,17を階段状に形成しているため、断熱パネル10A,10Bの角部においても隙間が生じることを確実に防止できる。よって、更に断熱性能を向上することができる。
【0035】
なお、第1および第2実施形態では、第2重合部17の当接部18を角面取部13に対して同一平面状に形成したが、当接部18と角面取部13との封止性能を確保できない場合には、突出部12が形成されるように構成してもよい。このようにすれば、断熱空間部21を確実に密封することができる。
【0036】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態の断熱パネル10を示し、図8(A),(B)は第3実施形態の断熱パネル10を用いた断熱体を示す。図7に示すように、第3実施形態の断熱パネル10は、第2重合部17の代わりに膨出部14の角部に、他の断熱パネル10と重なり合うことのない傾斜した面取部19とした点で、第1実施形態と相違する。また、第3実施形態では、面取部19の外周部にも突出部12aを形成し、この突出部12a(角面取部13の縁)に固定用の半円形状のボルト挿通部24を形成している。
【0037】
第3実施形態の断熱パネル10は第1実施形態と同様に製造され、図8(A),(B)に示すように、第1実施形態と同様に組み付けて断熱体を形成できる。また、第3実施形態では、図9(A)に示すように、組付状態で当接する角面取部13,13に半円形状のボルト挿通部24,24を形成しているため、このボルト挿通部24にボルト25A,25Bを通して断熱パネル10A,10Bを断熱対象物Xに固定することができる。
【0038】
具体的には、図9(B)に示すように、断熱対象物Xにボルト25Aを取り付け、このボルト25Aと別体のボルト25Bとを連結具26によって連結する。連結具26は、熱伝導率が低い材料からなる中空状のケースであり、ボルト25A,25Bを非接触状態で連結することができる。連結具26は、4枚の断熱パネル10A,10B,10A,10Bが突き合う角部に形成される空隙部27に配置される。即ち、本実施形態の断熱パネル10は、第2重合部17を傾斜部により構成しているため、組付状態の角部に略菱形形状をなす空隙部27が形成される。空隙部27内には、連結具26の周囲に断熱材28が充填して配置される。断熱材28は、弾性的な変形が可能なセラミック繊維が適用可能である。なお、セラミック繊維の代わりにガラス繊維またはカーボン繊維を用いてもよい。
【0039】
このようにして断熱対象物Xに装着した断熱パネル10A,10Bは、断熱材28によって空隙部27からの放熱を防ぐことができる。しかも、別体のボルト25A,25Bを連結具26によって非接触状態で連結しているため、ボルト25A,25Bを媒体とした放熱も防ぐことができる。そのため、断熱性能が低下することを防止できる。
【0040】
(第4実施形態)
図10は第4実施形態の断熱パネル10を示し、図11は第4実施形態の断熱パネル10を用いた断熱体を示す。第4実施形態の断熱パネル10は、図10に示すように、第1および第2パネル部材11,20に、伝熱面積を低減するための凸部29,30を形成した点で、第1実施形態と相違する。
【0041】
第1パネル部材11には、膨出部14の閉鎖面14aにプレス加工用によって円環状に突出する凸部29が形成されている。また、閉鎖面14aの角部には略直角三角形状に突出する凸部29aとされている。第2パネル部材20には、突出部12内に位置する領域に円環状に突出する凸部30が形成されている。これにより、凸部29,30が形成されていない領域は、断熱対象物X等の他部材に接触不可能な凹部を構成する。
【0042】
第4実施形態の断熱パネル10は第1実施形態と同様に製造され、図11に示すように、第1実施形態と同様に組み付けて断熱体を形成できる。また、第4実施形態では、第1および第2パネル部材11,20に凸部29,30を設けているため、断熱対象物Xとの接触面積を低減して、伝熱による放熱を更に低減できる。よって、断熱性能を更に向上することができる。しかも、凸部29,30は断熱パネル10の変形を防止するための補強部の役割をなすため、断熱パネル10および断熱体の剛性を向上できる。
【0043】
なお、本発明の断熱パネル10は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、第3実施形態に示すボルト挿通部24を、第1、第2および第4実施形態の断熱パネル10に形成してもよい。この場合、当接部18に形成するボルト挿通部24は、半円柱形状に窪む凹溝により構成することが好ましい。また、第1実施形態の第2重合部17は、組付状態で僅かな空隙が形成されるため、その空隙に第3実施形態と同様に断熱材28を充填してもよい。さらに、第4実施形態に示す凸部29,30は、第1から第3実施形態の断熱パネル10に設けてもよい。しかも、凸部29,30は円環状に限られず、希望の形状および配列で形成可能である。そして、前記実施形態では、膨出部14を平面視正方形状に膨出させたが、三角形以上の多角形であれば、希望に応じて変更が可能である。また、重合部16,17は、傾斜部や階段状の段部に限られず、隣接配置した他の断熱パネル10の重合部16,17と互いに重なり合う形状であればよい。
【符号の説明】
【0045】
10,10A,10B…断熱パネル
11…第1パネル部材
12…突出部
12a…突出部
13…角面取部
14…膨出部
14a…閉鎖面
15…排気部
16…第1重合部
16a…第1当接部
16b…第2当接部
16c…第3当接部
17…第2重合部
18…当接部
19…面取部
19a…当接段部
19b…傾斜部
20…第2パネル部材
21…断熱空間部
22…コア材
23…金属箔
24…ボルト挿通部
25A,25B…ボルト
26…連結具
27…空隙部
28…断熱材
29,29a…凸部
30…凸部
X…断熱対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11