(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明部材が、ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、及びポリノルボルネン系樹脂から選ばれる透明部材である、請求項5に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明(第1発明)の接着剤組成物は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、
グリセロールモノ(メタ)アクリレート(B)と、非ラジカル重合性柔軟性成分(D)と、光ラジカル重合開始剤(E)と、を含有する
。
本発明(第2発明)の接着剤組成物は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と、
グリセロールモノ(メタ)アクリレート(B)と、(メタ)アクリレート(C)と、非ラジカル重合性柔軟性成分(D)と、光ラジカル重合開始剤(E)と、を含有する
。
【0019】
本発明(第1発明及び第2発明)では、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと水酸基を有する(メタ)アクリレートをラジカル重合反応させて得られる接着成分に、非ラジカル重合性柔軟性成分を配合することにより、伸び率が高く硬化収縮率の小さく柔軟性及び耐水性に優れる透明な硬化物を得ることが可能となる。後述するように、接着剤の伸び率や貯蔵弾性率は非ラジカル重合性柔軟性成分の種類や添加量で任意に調節可能なので、被接着部材の材質に合わせた設計が可能となる。
【0020】
本発明における(A)成分;1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、公知の各種オリゴマーを特に種類に制限なく用いることができる。ここで、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基又はメタクリロイル基を指す。
これらのオリゴマーは、ウレタンオリゴマーと反応性官能基を有する(メタ)アクリレートの反応により得ることができる。例えば、多価アルコールと多価イソシアネートを、多価イソシアネートを過剰に用いる条件下で反応させて得られる少なくとも両末端にイソシアネート基を有するウレタンオリゴマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレートと反応させる方法、或いは、多価アルコールと多価イソシアネートを、多価アルコールを過剰に用いる条件下で反応させて得られる少なくとも両末端に水酸基を有するウレタンオリゴマーを、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートと反応させる方法により得ることができる。
【0021】
多価アルコール化合物としては、具体的には、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等のアルカンジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール・ブロックコポリマー等のポリアルキレングリコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体等が挙げられる。
また、これら以外の多価アルコール化合物として、アジピン酸と多価アルコールとをエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトンの開環重合体であるポリカプロラクトンポリオール;ジメチルカーボネートと多価アルコールの重合体であるポリカーボネートジオールなどを用いることもできる。
これらの多価アルコール化合物は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0022】
多価イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート;これらの芳香族系ジイソシアネート及び脂肪族系ジイソシアネートの尿素変性体やビュレット変性体が挙げられる。
これらの多価イソシアネートは、1種又は2種以上を併用して使用することができる。なかでも脂肪族系ジイソシアネートが好ましい。
【0023】
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの水酸基にε−カプロラクトンを反応させたカプロラクトン変性モノ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの水酸基にγ−ブチロラクトンを反応させたブチロラクトン変性(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0024】
エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの化合物は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0025】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー1分子中の(メタ)アクリロイル基の数は、2個以上であれば特に限定はないが、接着強度、硬化収縮率の点からは2個が好ましい。2個未満では、接着剤の凝集力が低く充分な接着強度が得られない。3個以上になると、接着剤の凝集力が高くなるため、接着強度の低下、硬化収縮率の増加、貯蔵弾性率の増加等の欠点を生じやすい。
【0026】
本発明における(B)成分
;1分子中に水酸基を2個有する化合物が好ましく
、グリセロールモノ(メタ)アクリレートが
用いられる。市販品としては、ブレンマーGLM(日油(株)製)が代表的である。
1分子中に2個の水酸基を有する(メタ)アクリレートは、水酸基が適度に水分を吸収し、水分となじむ為に接着剤を透明に保ち、耐湿性、耐沸騰水性を向上させるのに有効と考えられる。1分子中に3個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートでは、効果は見られるものの接着剤と水分との界面で僅かな白化を生ずる傾向がある。一方、水酸基を全く含まない場合には、接着剤全体において白化を生じる傾向がある。
【0027】
本発明における(C)成分;(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=9〜23)(メタ)アクリレート等のエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル;N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。これらの化合物は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0028】
これら(C)成分の(メタ)アクリレートのうち、好ましく用いられるのは炭素数4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルであり、シクロヘキサン環を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルが、希釈効果が大きい。そのなかでもガラス転移点が低い柔軟な、アクリル酸シクロアルキルエステル(CHA)が好ましい。
【0029】
本発明の接着剤組成物においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、(A)〜(C)成分以外の他の重合性二重結合を有する化合物を添加することができる。これらの化合物としては、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和二塩基酸;ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート等の不飽和二塩基酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルスチレン等の芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪族ビニル化合物;ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミノ基含有ビニル化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物;(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0030】
本発明における(D)成分;非ラジカル重合性柔軟性成分としては、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。これら柔軟性成分は、硬化収縮を低減させ、貯蔵弾性率を低下させるのに有効である。これらの化合物は、それぞれ1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0031】
ポリエステルジオールとしては、例えば、二塩基酸とジオール類とのエステル化反応により得られる縮合系ポリエステルジオール類、或いはジオール類にラクトンを開環重合させることで得られるラクトン系ポリエステルジオール類等が挙げられる。
【0032】
縮合系ポリエステルジオール類に用いられる二塩基酸としては、芳香環を有しない脂肪族系や脂環族系の二塩基酸が好ましく、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの二塩基酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、縮合系ポリエステルジオール類に用いられるジオールとしては、脂肪族系や脂環族系の芳香環を有さないジオールが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらのジオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ラクトン系ポリエステルジオール類は、低分子ジオールに、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等を開環重合させることにより得ることができる。低分子ジオールとしては、前記の縮合系ポリエステルジオール類に用いられたのと同じジオールを挙げることができる。
【0034】
これらのポリエステルジオールのうち、二塩基酸とジオールから得られる縮合系ポリエステルジオール類が好ましく、具体的には、日本ポリウレタン工業(株)製)の「ニッポラン」シリーズ、川崎化成工業(株)製の「マキシモール」シリーズ、DIC(株)製の「ポリライト」シリーズ等の市販品が挙げられる。
【0035】
ポリエーテルジオールとしては、例えば、2個の活性水素を有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリエーテルジオールが挙げられる。ここで、2個の活性水素を有する化合物としては、水、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられ、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0036】
アルキレンオキサイドは単独で使用しても、2種以上を併用してもよく、ポリエーテルジオールの具体例としては、エチレンオキサイドを単独で使用したポリエチレングリコール、プロピレンオキサイドを単独で使用したポリプロピレングリコール、テトラヒドロフランを単独で使用したポリブチレングリコール、エチレンオキサイドとプレピレンオキサイドを併用したポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー等が挙げられる。
【0037】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、ジアルキルカーボネートとジオールとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0038】
ジアルキルカーボネートとしては、芳香環を有しない脂肪族系や脂環族系のジアルキルカーボネートが好ましく、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネト、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0039】
ジオールとしては、前記のポリエステルジオールに用いられるジオールと同様、芳香環を有しない脂肪族系や脂環族系のジオールが好ましい。具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0040】
本発明における(D)成分;非ラジカル重合性柔軟性成分として、二塩基酸と、ジオール類と、一価アルコール又は一価カルボン酸とのエステル化反応により得られる縮合系ポリエステル類を挙げることができる。縮合系ポリエステル類に用いられる二塩基酸及びジオール類は、縮合系ポリエステルジオール類に用いられるものと同じ化合物を使用することができる。一価アルコールとしては、例えば、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等の炭素9〜18の一価アルコールが挙げられる。一価カルボン酸としては、例えば、ノナン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸等の炭素数9〜18のカルボン酸が挙げられる。
【0041】
これらの(D)成分;非ラジカル重合性柔軟性成分のなかでも、ポリエステルジオールは耐加水分解性に劣り、ポリエーテルジオールは耐水性に劣るので、ポリカーボネートジオールがより好ましい。
【0042】
本発明における(E)成分;光重合開始剤としては、紫外線の照射によってラジカル重合を開始するものであれば、公知の光重合開始剤を使用でき、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、ベンジル系、アセトフェノン系、キノン系、チオキサントン系、フェニルグリオキシル酸系等の公知の化合物から選択することができる。
【0043】
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル等のベンジル系化合物;アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、カンファーキノン等のキノン系化合物;チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート等のフェニルグリオキシル酸系化合物等を挙げることができる。これらは1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明における接着剤組成物は、接着剤組成物を100質量部とした場合、
(A)成分;1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー 5〜70質量部
(B)成分;水酸基を有する(メタ)アクリレート 1〜40質量部
(C)成分;(メタ)アクリレート 0〜60質量部
(D)成分;非ラジカル重合性柔軟性成分 5〜50質量部
(E)光ラジカル重合開始剤 0.1〜10質量部
を含有することが好ましい。
【0045】
(A)成分が5質量部より少ない場合には塗膜の伸び率が不足し、70質量部より多い場合には、硬化収縮が大きくなり接着剤の変形に部材が追従できなくなり剥がれを生じやすくなる。より好ましくは10〜60質量部である。
【0046】
(B)成分が1質量部より少ない場合には、耐水性向上への効果が少なく、40質量部を超えると、逆に親水性が高くなりすぎて耐水性が低下するという欠点を生じやすくなる。より好ましくは5〜20質量部である。
【0047】
(C)成分は0質量部であっても何ら構わないが、20〜60質量部配合することが好ましく、これにより密着性と柔軟性のバランスを付与できるという利点がある。一方、60質量部を超えると、接着剤組成物の接着力が低下してしまう。
【0048】
(D)成分が5質量部より少ない場合には、柔軟性の付与効果が少なく弾性率が高くなり、逆に50質量部を超えた場合には柔らかくなりすぎて、接着剤の凝集力が不足し接着強度の低下を生じやすくなる。より好ましくは10〜30質量部、特に好ましくは15〜25質量部である。
【0049】
(E)成分が0.1質量部より少ない場合には硬化が不充分となり、10質量部を超えると、黄変を生じるという欠点がある。より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0050】
本発明の接着剤組成物は、硬化収縮率が5%以下であり、紫外線照射により硬化させて得られる硬化物の伸び率(25℃)が200%以
上であることが好ましい。
【0051】
本発明の接着剤組成物を、硬化収縮率が5%以下、より好ましくは3%以下となるように調製することにより、接着剤組成物が硬化する際に蓄積される内部応力を低減させることができ、硬化物層と被接着部材との界面に歪が生じることを防止でき、表示ムラや硬化物の剥離を抑制することができる。
【0052】
また、硬化物の伸び率(25℃)を200%以上に調製することにより、硬化物をガラス板の熱変形に追随させることができるが、ガラス板とポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等のプラスチック基材との貼り合わせを考慮すると、硬化物の伸び率(25℃)は200%〜400%の範囲が好ましい。
【0053】
また、硬化物の貯蔵弾性率(25℃)
を1×10
5〜1×
107Paに調製することにより、接着剤組成物が硬化する際に硬化物の収縮により生ずる内部応力を低減し、硬化物を被接着部材の反りに追随させることができる。
【0054】
本発明の粘着剤組成物は、有機溶剤や低分子量の未反応モノマー等の揮発性成分は、できるだけ含有しないことが好ましい。これらの揮発性成分が多くなると、揮発性成分に由来する気泡が生じやすくなるからである。
【0055】
本発明の接着剤組成物は、製造方法に特に制限はなく、上記の(A)、(B)、(C)及び(E)成分(必要により(D)成分を配合する)、並びに必要によりその他の添加剤の所定量を、均一になるまで混合、攪拌することによって得られる。
【0056】
添加剤としては、例えば、光透過率や色調を調整するための色素、シランカップリング剤、可塑剤、補強剤、光増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調整剤、粘着付与剤(タッキファイヤー)、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤等が用いられる。これらの添加剤は光学特性や硬化特性を阻害しない範囲で、単独或いは組み合わせて添加することができる。
【0057】
また、本発明の接着剤組成物は、熱硬化剤を含有することができる。例えば、遮光部を有する基材を貼り合わせる場合には、本発明の接着剤組成物を硬化させる際に紫外線を照射することが困難となる場合がある。このような場合であっても、接着剤組成物が熱硬化剤を含有すれば、熱を付与することによって、硬化させることが可能となる。熱硬化剤としては、公知の化合物を用いることができる。
【0058】
本発明の接着剤組成物は、透明なガラス板又はプラスチック基材からなる積層体の製造に好適に使用することができ、具体的には、ガラス板とガラス板の積層体、ガラス板とプラスチック基材の積層体、プラスチック基材とプラスチック基材の積層体の製造に使用することができる。積層体の用途は特に限定されないが、特に好適な用途は光学部材である。なかでも、機械的強度の高いガラス板を使用した積層体に使用することが好ましい。
【0059】
ガラス板としては、液晶セルの液晶を挟持するガラス板や液晶セルの保護板として使用されているものを好ましく使用することができる。
【0060】
プラスチック基材としては、透光性のポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、PET樹脂、TAC樹脂、COP樹脂、及びポリノルボルネン系樹脂等からなる板状、シート状又はフィルム状の保護板を好ましく使用することができる。保護板の表面又は裏面に積層する反射防止膜、アンチグレア膜、視野角制御膜、ITO膜等の透明又は非透明の光学フィルムの接着にも好ましく使用することができる。
【0061】
また、偏光板の製造において、偏光子と保護フィルムとの接着にも好適に使用することができる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールの部分ケン化物等の親水性ポリマーからなるプラスチック基材に、ヨウ素や二色性染料等を吸着させて一軸延伸したものや、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等が挙げられる。保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース、シクロオレフィン構造を有する樹脂、ノルボルネン樹脂等からなるプラスチックフィルムが挙げられる。
【0062】
本発明の接着剤組成物を用いて光学部材を製造する場合には、前記ガラス板又はプラスチック基材上に本発明の接着剤組成物を塗布し、必要により乾燥(揮発分除去)させた後、他のガラス板又はプラスチック基材を積層し、透光性部材の外側から紫外線を照射することにより接着剤組成物を硬化する。塗布は、例えば、ロールコート方式、スプレー方式、ディップ方式、刷毛塗り方式、インクジェット方式、静電塗装方式等の公知の方法を用いればよい。
【0063】
塗膜厚さは特に限定されないが、硬化後の膜厚が50〜200μm程度となるよう塗布することが好ましい。
【0064】
紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0065】
照射強度は目的とする接着剤組成物ごとに決定されるものであり、特に限定されない。接着剤組成物への光照射時間は、硬化する接着剤組成物ごとに制御されるものであり、特に限定されないが、照射強度と照射時間との積で表わされる積算光量が10〜5,000mJ/cm
2となるように設定されることが好ましい。積算光量が小さすぎると、光ラジカル重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、接着剤組成物の硬化が不十分となる可能性があり、一方で積算光量を大きくしようとすると、照射時間が長くなり生産性向上には不利なものとなる。
【0066】
本発明の接着剤組成物を用いて貼り合わせてなる光学部材は、ガラス又はプラスチック基材に対する硬化収縮時の応力の影響を最小限に抑えることができ、光学部材の歪みや変形が殆んど発生しない。したがって、例えば偏光板に本発明を用いれば、表示ムラのない画像表示装置を提供することができ、硬化物の白化や剥離が生じないので、耐久性に優れる画像表示装置を提供することができる。
【0067】
さらに、本発明の接着剤組成物は、その透明性、柔軟性及び耐水性を活かして、液晶表示装置の液晶パネルと保護部材の間に存在する空間に充填して貼り合わせる接着剤としても、好適に用いることができる。これに限らず、例えば、有機EL装置(有機EL素子の封止剤)、プラズマディスプレイ装置(透明プラスチックフィルムと導電性金属箔の接着)等、種々の画像表示装置にも適用することができる。
また、画像表示装置以外では、眼鏡レンズ、CDやDVDのピックアップ用レンズ、自動車ヘッドランプ用レンズ、プロジェクター用レンズ、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光ディスク基板等の光学部材にも好適に使用される。
その他、フレキソ印刷版、家具・建具・什器・自動車内装材等に用いられる化粧シート、半導体素子等の接着剤として使用することもできる。
【0068】
さらに、本発明の接着剤組成物は、透明性を必要としない用途に使用される場合は、充填剤として、コロイダルシリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー等の粉体や、ガラス繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維等の繊維が添加されていてもよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。また、文中の「部」、「%」は質量基準であるものとする。
【0070】
(実施例1)
アートレジンUN7700(根上工業(株)製、2官能ウレタンアクリレート)を50部、シクロヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)を23部、ブレンマーGLM(グリセロールモノメタクリレート、日油(株)製)を5部、ポリエチレングリコール600(ポリエーテルジオール、純正化学(株)製)を20部、イルガキュア184(BASF社製)2部の配合で接着剤組成物を調製した。
1mm厚ガラス板を2枚用意し、一方のガラス板に調製した接着剤組成物を滴下した後、もう一方のガラス板を貼り合わせ、UV照射をして硬化させることで、2枚のガラス板を貼り合わせた試験片を得た。
(紫外線照射条件:Fusion製Dバルブ、積算光量:3,000mJcm
2、最大照度:600mW/cm
2)
【0071】
(実施例2〜
3、参照例1〜3、比較例1〜7)
実施例1と同様の方法で試験片を得た。接着剤は表1に示した各成分と量を配合し、各実施例及び比較例について試験片を作製した。
【0072】
(接着剤成分の詳細)
1)UN7700:アートレジンUN7700(1分子中に2個のアクリロイル基を有するウレタンアクリレート、根上工業(株)製)
2)M6200:アロニックスM6200(2官能ポリエステルアクリレート、東亞合成(株)製)
3)GLM:ブレンマーGLM(グリセロールモノメタクリレート、日油(株)製)
4)4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成(株)製)
5)CHA:シクロヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
6)PEG600:ポリエチレングリコール600(純正化学(株)製)・・・ポリエーテルジオール
7)T5650J:デュラノールT5650J(旭化成(株)製)・・・ポリカーボネートジオール
8)5018:ニッポラン5018(エチレンアジペート/ジエチレンアジペート(分子量2000)、日本ポリウレタン工業(株)製)・・・ポリエステルジオール
9)#184:イルガキュア#184(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製)
【0073】
実施例
、参照例及び比較例で得た試験片の評価は、以下の方法に従った。
【0074】
(評価方法)
(1)透過率:
分光光度計(U−3000、日立ハイテクノロジーズ社製)で400〜800nmの範囲で、試験片の光線透過率を測定(ブランク:2mm厚ガラス板)。
(2)伸び率%:
300μm厚の接着剤組成物の硬化膜を作成し、引っ張り試験機(島津製作所EZ−S 500N)で5mm/minの速度で接着剤組成物を引っ張り、切断するまでの伸びを測定。
(3)弾性率:
500μm厚の接着剤組成物の硬化膜を作成し、引っ張りモード、周波数1Hzで粘弾性を測定(粘弾性測定装置:SIIナノテクノロジー製DMS6100)。
(4)硬化収縮率:
電子比重計(アルファーミラージュ(株)製SD−200Lを用いて液体比重、固体比重を測定し次式により算出。
硬化収縮率%=[(硬化後の比重―硬化前の比重)/硬化後の比重]×100
(5)接着強度:
試験片の2枚のガラスを上下に引っ張り試験機で引き剥がし接着強度を測定。
(6)耐湿性:
80℃90%RHの環境に試験片を500h放置し、取り出し後に外観を観察。
(7)耐沸騰水性:
沸騰水に試験片を3h浸漬し、取り出し後に外観を観察。以下の評価基準にて評価。
○:変化無し、合格
△:僅かに白化、合格
×:白化、不合格
××:剥離、不合格
【0075】
以上の評価結果を表1及び表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】