特許第5969381号(P5969381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969381
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ワイパブレード
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/38 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   B60S1/38 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-281581(P2012-281581)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-125021(P2014-125021A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】中野 博之
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−054383(JP,A)
【文献】 実公昭52−008179(JP,Y1)
【文献】 特開昭57−095235(JP,A)
【文献】 特開昭57−015045(JP,A)
【文献】 特開2009−184397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00−1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
払拭面を払拭する長尺状のブレードラバーと、
前記ブレードラバーに前記払拭面への押圧力を付与する板ばね状のバッキングと、
前記バッキングを収容するとともに前記ブレードラバーを保持するケースと、
前記バッキングの長手方向中間部に設けられ、ワイパアームの先端部が連結される連結部材と、
前記バッキングの長手方向端部を収容するように取着されるキャップと、
前記キャップに設けられた錘と
を備えており、
前記錘は、先端側及び基端側の前記キャップにそれぞれ設けられるとともに、先端側の前記キャップに設けられる側が基端側の前記キャップに設けられる側よりも重くされたことを特徴とするワイパブレード。
【請求項2】
請求項に記載のワイパブレードにおいて、
前記錘は、長手方向全体の重心が先端寄りになるように設けられたことを特徴とするワイパブレード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイパブレードにおいて、
前記錘は、前記キャップに取着されたことを特徴とするワイパブレード。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のワイパブレードにおいて、
前記錘は、前記キャップに埋設されたことを特徴とするワイパブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用ワイパ装置のワイパブレードは軽量化の傾向があり、その軽量化によってびびり振動の発生が増加傾向にある。
そして、例えば、特許文献1に記載のワイパブレードでは、その先端に長手方向に摺動可能な錘を設け、びびり振動を低減しようとしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−15045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ワイパブレードでは、外部に露出して摺動可能な錘が設けられるため、見栄えが悪いという問題があった。
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、見栄えを良好としながら、びびり振動を低減することができるワイパブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するワイパブレードは、払拭面を払拭する長尺状のブレードラバーと、前記ブレードラバーに前記払拭面への押圧力を付与する板ばね状のバッキングと、前記バッキングを収容するとともに前記ブレードラバーを保持するケースと、前記バッキングの長手方向中間部に設けられ、ワイパアームの先端部が連結される連結部材と、前記バッキングの長手方向端部を収容するように取着されるキャップと、前記キャップに設けられた錘とを備えており、前記錘は、先端側及び基端側の前記キャップにそれぞれ設けられるとともに、先端側の前記キャップに設けられる側が基端側の前記キャップに設けられる側よりも重くされたことを特徴とする。
【0006】
同構成によれば、錘がバッキングの長手方向端部を収容するように取着されるキャップに設けられるため、長手方向端部の見栄えを良好としながら、小さな重量で大きな慣性力を得ることができ良好にびびり振動を低減することができる。
【0007】
また、錘は、先端側及び基端側のキャップにそれぞれ設けられるため、ワイパアームの先端部が連結される連結部材を支持中心としたワイパブレードのそれぞれ(先端側と基端側)の回動部分が大きな慣性力を得ることができ、ワイパブレードの先端側と基端側のそれぞれのびびり振動を良好に低減することができる。しかも、先端側のキャップに設けられる側が基端側のキャップに設けられる側よりも重くされるため、ワイパアームを含めた(ピボット軸を支持中心とした)回動部材が大きな慣性力を得ることができ、ワイパアームのびびり振動をも良好に低減することができる。
【0008】
上記ワイパブレードにおいて、前記錘は、長手方向全体の重心が先端寄りになるように設けられることが好ましい。
同構成によれば、錘は、長手方向全体の重心(質量中心)が先端寄りになるように設けられるため、ワイパアームを含めた(ピボット軸を支持中心とした)回動部材が大きな慣性力を得ることができ、ワイパアームのびびり振動をも良好に低減することができる。
【0011】
上記ワイパブレードにおいて、前記錘は、前記キャップに取着されることが好ましい。
同構成によれば、前記錘は、前記キャップに取着されるため、例えば、キャップを共通部品としながら錘の重さを変更することができる。即ち、キャップを共通部品としながら、錘を長さ等の仕様の異なるワイパブレードに最適な重さとして、良好にびびり振動を低減することができる。
【0012】
上記ワイパブレードにおいて、前記錘は、前記キャップに埋設されることが好ましい。
同構成によれば、前記錘は、前記キャップに埋設されるため、例えば、取着されたものに比べて、錘のがたつきが防止され、がたつきによる振動や騒音が防止される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイパブレードによれば、見栄えを良好としながら、びびり振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の車両用ワイパの斜視図。
図2図1のA−A線に沿った断面図。
図3】別例のワイパブレードの断面図。
図4】別例のワイパブレードの断面図。
図5】別例のワイパブレードの断面図。
図6】(a),(b)は、別例のワイパブレードの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態を図1及び図2に従って説明する。
図1に示すように、車両用ワイパ1は、自動車の払拭面としてのフロントガラスに付着した雨滴等を払拭するためのものであって、ワイパアーム2と、該ワイパアーム2に連結されるワイパブレード3とから構成されている。ワイパアーム2は、その基端部がワイパモータ(図示略)の駆動力にて所定角度で往復回動されるピボット軸(図示略)に固定され、該ピボット軸の往復回動に伴って往復揺動運動を行う。尚、このワイパアーム2は、図示しない付勢機構により、その先端部である先端連結部4がフロントガラス(払拭面)側に付勢される。そして、ワイパアーム2の先端連結部4には、ワイパブレード3が連結される。
【0016】
図2に示すように、ワイパブレード3は、払拭面(フロントガラス)を払拭するための払拭部11aを有した長尺状のブレードラバー11と、ブレードラバー11の長手方向に沿って設けられ該ブレードラバー11に剛性と弾性(払拭面への押圧力)を付与するための板ばね状のバッキング12とを備える。本実施の形態のブレードラバー11は、長手方向直交方向断面が略長方形の基部11bと、該基部11bの幅方向中央から下方に延びる括れ部11cと、該括れ部11cから更に下方に延びる前記払拭部11aとを有する。又、本実施の形態のバッキング12は、ワイパブレード3に1本のみ設けられるものである。
【0017】
又、ワイパブレード3は、ブレードラバー11及びバッキング12の長手方向中間部におけるブレードラバー11の基部11b及びバッキング12の周囲を包囲して保持する連結部材としての連結レバー13を備える。又、連結レバー13には、前記ワイパアーム2の先端連結部4に連結されるクリップ(図示略)がワイパブレード3の幅方向に沿った軸中心で回動可能に組み付けられている。尚、本実施形態の連結レバー13には、後述するケース15のフィン部16に滑らかに繋がる形状の湾曲部13aが形成されている。
【0018】
又、ワイパブレード3は、軟質の(可撓性を有する)樹脂材よりなり、連結レバー13の長手方向両側におけるバッキング12を収容するとともにブレードラバー11の基部11bを保持する一対のケース15を備えている。
【0019】
ケース15の上面には、ゴム材又はエラストマー材よりなり、走行風を払拭面側への押圧力に変換するためのフィン部16が二色成形により設けられている。具体的には、フィン部16は、ワイパブレード3の停止位置において車両後方側に向かうほど(払拭面から)高くなる湾曲面を有した形状に形成されている。そして、連結レバー13の前記湾曲部13aは、略直方体形状からフィン部16側に向かって徐々にフィン部16の前記湾曲面と対応した(繋がる)形状となるように形成されている。
【0020】
又、ワイパブレード3は、前記ケース15の長手方向端部から外部に突出したバッキング12の長手方向端部を収容するように取着されるキャップ18,19を備えている。又、このキャップ18,19は、前記ケース15の長手方向端部から外部に突出したブレードラバー11の基部11bを保持する。又、このキャップ18,19は、ケース15の長手方向端部も覆うように形成されている。
【0021】
そして、本実施形態では、先端側(ワイパアーム2の基端側から遠い側)のキャップ18には、錘としての金属部材20が設けられている。尚、錘(金属部材20)は、キャップ18を構成する樹脂材よりも比重が大きいものであって、鉄等の金属材よりなる。
【0022】
詳しくは、図2に示すように、本実施形態のキャップ18は、下部の幅方向両側から下方に延びてさらに幅方向内側に延びた腕状の保持部18aを有する。保持部18aは、ブレードラバー11の基部11bにおける上端面にバッキング12を当接させた状態で、該基部11b及びバッキング12の周囲を包囲して保持する構成とされている。また、キャップ18の上面には、走行風を払拭面側への押圧力に変換するための湾曲面18bが形成されている。
【0023】
そして、本実施形態では、金属部材20は、キャップ18における前記バッキング12が配置される位置の上方であって湾曲面18bの下方に埋設(インサート)されている。
そして、本実施形態では、先端側のキャップ18に金属部材20が設けられ、後端側(ワイパアーム2の基端側)のキャップ19に金属部材20が設けられていないことで、金属部材20を備えていない通常のワイパブレードよりも、ワイパブレード3の長手方向全体の重心が先端寄りとされている。
【0024】
次に、上記のように構成された車両用ワイパ1の作用について説明する。
上記車両用ワイパ1では、ワイパモータが駆動されピボット軸が往復回動されると、車両用ワイパ1が往復揺動運動を行い、ブレードラバー11の払拭部11aがフロントガラス(払拭面)上を摺動し、払拭動作が行われる。この際、先端側のキャップ18に金属部材20が設けられるため、連結レバー13からワイパブレード3の先端までの重心(質量中心)が先端寄りとなり、連結レバー13を支持中心としたワイパブレード3の先端側の回動部分が大きな慣性力を得ることができ、ワイパブレード3の先端側のびびり振動が低減される。又、ワイパブレード3の長手方向全体の重心が先端寄りとされるため、ワイパアーム2を含めた(ピボット軸を支持中心とした)回動部材が大きな慣性力を得ることができ、ワイパアーム2のびびり振動も低減される。
【0025】
次に、上記実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)金属部材20がバッキング12の長手方向端部を収容するように取着されるキャップ18に設けられるため、長手方向端部の見栄えを良好としながら、小さな重量で大きな慣性力を得ることができ良好にびびり振動を低減することができる。
【0026】
(2)金属部材20は、払拭動作時に基端側よりも大きく振られてびびり振動の発生し易い先端側のキャップ18に設けられるため、びびり振動を低減する効果が大きい。
(3)金属部材20は、ワイパブレード3の長手方向全体の重心(質量中心)が先端寄りになるように(本実施形態では先端側のキャップ18のみに)設けられるため、ワイパアーム2を含めた(ピボット軸を支持中心とした)回動部材が大きな慣性力を得ることができ、ワイパアーム2のびびり振動をも良好に低減することができる。
【0027】
(4)金属部材20は、キャップ18に埋設されるため、例えば、取着されたものに比べて、金属部材20のがたつきが防止され、がたつきによる振動や騒音が防止される。
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0028】
・上記実施形態では、金属部材20は、キャップ18におけるバッキング12が配置される位置の上方であって湾曲面18bの下方に埋設(インサート)されるとしたが、これに限定されず、他の構成及び方法で錘を設けてもよい。
【0029】
例えば、図3に示すように、キャップ30におけるバッキング12が配置される位置の上方に予め嵌着凹部30aを形成しておき、該嵌着凹部30aに金属部材31を嵌着させて取着してもよい。尚、この例(図3参照)では、嵌着凹部30a及び金属部材31を一対ずつ設けている。
【0030】
又、例えば、図4に示すように、キャップ32におけるバッキング12が配置される位置の上方に予め収容凹部32aを形成しておき、該収容凹部32aに金属部材33を接着して取着してもよい。
【0031】
これらのように錘(金属部材31,33)をキャップ30,32に取着する構成とすると、例えば、キャップ30,32を共通部品としながら錘(金属部材31,33)の重さを変更することができる。即ち、キャップ30,32を共通部品としながら、錘を長さ等の仕様の異なるワイパブレードに最適な重さとして、良好にびびり振動を低減することができる。
【0032】
又、例えば、図5に示すように、キャップ34の主成分を構成する樹脂材に錘を構成する金属粉35を混ぜて成形し、金属粉35が埋設されたものとしてもよい。尚、図5は金属粉35を模式的に図示したものであって、金属粉35は図示したより大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0033】
又、参考例として、図6(a)に示すように、基端側を通常の(錘が設けられていない樹脂材よりなる)キャップ36とし、図6(b)に示すように、先端側のキャップ37を、ワイパブレードの長手方向全体の重心が先端寄りになるように基端側のキャップ36よりも体積の大きい(樹脂材よりなる)ものとしてもよい。このようにしても、キャップ37の体積が大きくなるものの上記実施形態と略同様の効果を得ることができる。又、このようにすると、錘(金属部材20,31,33)が不要となる。又、この場合、キャップ37の形状をキャップ36の近似形状とする必要はなく、例えば、球形状や、星形形状や、果物形状やキャラクター形状等に変更してもよい。
【0034】
・上記実施形態では、後端側のキャップ19には金属部材20が設けられていないとしたが、これに限定されず、後端側のキャップに錘を設けてもよい。このようにすると、連結レバー13からワイパブレード3の基端までの重心(質量中心)が基端寄りとなり、連結レバー13を支持中心としたワイパブレード3の基端側の回動部分が大きな慣性力を得ることができ、ワイパブレード3の基端側のびびり振動が低減される。
【0035】
又、この場合、先端側のキャップ18に設けられる金属部材が基端側のキャップ19に設けられる金属部材よりも重くされることで、ワイパブレード3の長手方向全体の重心を先端寄りとしてもよい。このようにしても、ワイパアーム2を含めた(ピボット軸を支持中心とした)回動部材が大きな慣性力を得ることができ、ワイパアーム2のびびり振動をも良好に低減することができる。
【0036】
・上記実施形態では、キャップ18の上面には走行風を払拭面側への押圧力に変換するための湾曲面18bが形成されるとしたが、この湾曲面18bが形成されていないキャップに変更してもよい。
【0037】
上記した実施形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(イ)払拭面を払拭する長尺状のブレードラバーと、前記ブレードラバーに前記払拭面への押圧力を付与する板ばね状のバッキングと、前記バッキングを収容するとともに前記ブレードラバーを保持するケースと、前記バッキングの長手方向中間部に設けられ、ワイパアームの先端部が連結される連結部材と、前記バッキングの長手方向端部を収容するように取着されるキャップとを備え、先端側の前記キャップは、長手方向全体の重心が先端寄りになるように基端側の前記キャップよりも体積が大きくされたことを特徴とするワイパブレード。
【0038】
同構成によれば、先端側のキャップは、長手方向全体の重心(質量中心)が先端寄りになるように基端側のキャップよりも体積が大きくされるため、ワイパアームの先端部が連結される連結部材を支持中心としたワイパブレードの先端側が大きな慣性力を得ることができ、ワイパブレードの先端側のびびり振動を良好に低減することができる。また、ワイパアームを含めた(ピボット軸を支持中心とした)回動部材が大きな慣性力を得ることができ、ワイパアームのびびり振動をも良好に低減することができる。
【符号の説明】
【0039】
2…ワイパアーム、11…ブレードラバー、12…バッキング、13…連結レバー(連結部材)、15…ケース、18,19,30,32,34,36,37…キャップ、20,31,33…金属部材(錘)、35…金属粉(錘)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6