特許 5969383 頭髪処理剤塗布具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】5969383

(24)【登録日】2016年7月15日

(45)【発行日】2016年8月17日

(54)【発明の名称】頭髪処理剤塗布具

(51)【国際特許分類】

   A46B 3/04 20060101AFI20160804BHJP

   A46B 11/00 20060101ALI20160804BHJP

   A45D 24/22 20060101ALI20160804BHJP

【ＦＩ】

   A46B3/04

   A46B11/00

   A45D24/22 A

   A45D24/22 B

   A45D24/22 D

【請求項の数】4

【全頁数】12

(21)【出願番号】特願2012-283739(P2012-283739)

(22)【出願日】2012年12月26日

(65)【公開番号】特開2014-124367(P2014-124367A)

(43)【公開日】2014年7月7日

【審査請求日】2015年9月14日

(73)【特許権者】

【識別番号】000000918

【氏名又は名称】花王株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002170

【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所

(74)【代理人】

【識別番号】100076532

【弁理士】

【氏名又は名称】羽鳥 修

(74)【代理人】

【識別番号】100101292

【弁理士】

【氏名又は名称】松嶋 善之

(74)【代理人】

【識別番号】100112818

【弁理士】

【氏名又は名称】岩本 昭久

(72)【発明者】

【氏名】高城 栄政

【審査官】 村山 睦

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１２−０１６５８８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１２−２３６０１６（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特表２００３−５０４１３９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ａ４６Ｂ ３／０４

Ａ４５Ｄ ２４／２２

Ａ４６Ｂ １１／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

環状に配置された複数の櫛歯からなる筒状の櫛部を有する頭髪処理剤塗布具であって、
基台部、該基台部の周囲に放射状に連結された複数の櫛歯、及び該基台部と複数の該櫛歯との間を連結する可撓性の連結部を備えた櫛歯形成部材と、該連結部を変形させて前記複数の櫛歯が同一方向を向くように前記複数の櫛歯の向きを揃えることで筒状の櫛部が形成された状態の櫛歯形成部材の外周部に嵌合して、櫛歯間の間隔を一定に維持する間隔保持部材とを備えている頭髪処理剤塗布具。

【請求項2】

前記間隔保持部材は、筒状の櫛部が形成された状態の櫛歯形成部材の外周部に嵌合する周壁部を備え、該周壁部はその内周面に、櫛歯の間隔を保持するための複数の突起を備えている、請求項１記載の頭髪処理剤塗布具。

【請求項3】

前記間隔保持部材は、筒状の櫛部が形成された状態の櫛歯形成部材の外周部に嵌合する周壁部を備え、該周壁部の内周面に、個々の櫛歯に対応する複数の移動規制面を有している、請求項１記載の頭髪処理剤塗布具。

【請求項4】

請求項１〜３の何れか１項に記載の頭髪処理剤塗布具の製造方法であって、
前記櫛歯形成部材を、合成樹脂を用いて射出成形により製造する工程と、得られた櫛歯形成部材における前記複数の櫛歯が筒を構成するように前記連結部を変形させ、櫛歯が筒状に変形した状態の櫛歯形成部材に前記間隔保持部材を嵌合させる工程を具備する頭髪処理剤塗布具の製造方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、頭髪処理剤塗布具に関する。

【背景技術】

【0002】

多数の櫛歯からなる櫛部を有する塗布具を用いて頭髪に染毛剤等の頭髪処理剤を塗布する技術が知られている。
例えば、本出願人は、櫛歯が直列した複数の櫛歯列によって両側を挟まれた中央部分から塗布液を吐出させ、該塗布液を、櫛歯列で頭髪を梳きながら頭髪に塗布できるようにした櫛歯付き塗布用具を提案している（特許文献１参照）。この櫛歯付き塗布用具によれば、櫛歯列間に塗布液を吐出させた後、櫛歯列間に塗布液を一旦保持した状態で、塗布用具を頭髪に当てることができる。

【0003】

また、本出願人は、環状に配置された複数の櫛歯からなる櫛部を有する剤塗布部を備えた頭髪処理剤塗布具であって、前記櫛歯は、先端近傍部から基端側に向かって櫛歯幅が減少する逆テーパー部を有している頭髪処理剤塗布具を提案している（特許文献２参照）。この頭髪処理剤塗布具によれば、櫛歯間に挿入された頭髪が、櫛歯間から抜け落ちないように保持しつつ塗布できるので、例えば、頭髪処理剤を、頭頂部付近から首や肩上に亘る長い範囲の髪に連続して塗布することができる。

【0004】

しかし、櫛歯にテーパー部を設けたり、櫛歯間の間隔を狭いものを射出成形により製造しようとした場合、射出成形用の金型から取り出す際に櫛歯が損傷したり、櫛歯間が等間隔になりにくい等の不都合があった。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開２００９−１６０２４０号公報

【特許文献2】特開２０１２−１６５８８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

本発明は、櫛歯を形成する部材を射出成形により製造しても、櫛歯に損傷や成形不良が生じにくく、また、櫛歯間の間隔を設計通りの間隔に高精度に維持することのできる頭髪処理剤塗布具及びその製造方法に関する。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明は、環状に配置された複数の櫛歯からなる筒状の櫛部を有する頭髪処理剤塗布具であって、基台部、該基台部の周囲に放射状に連結された複数の櫛歯、及び該基台部と複数の該櫛歯との間を連結する可撓性の連結部を備えた櫛歯形成部材と、該連結部を変形させて前記複数の櫛歯が同一方向を向くように前記複数の櫛歯の向きを揃えることで筒状の櫛部が形成された状態の櫛歯形成部材の外周部に嵌合して、櫛歯間の間隔を一定に維持する間隔保持部材とを備えている頭髪処理剤塗布具を提供するものである。

【0008】

また、本発明は、前記の頭髪処理剤塗布具の製造方法であって、前記櫛歯形成部材を、合成樹脂を用いて射出成形により製造する工程と、得られた櫛歯形成部材における前記複数の櫛歯が筒を構成するように前記連結部を変形させ、櫛歯が筒状に変形した状態の櫛歯形成部材に前記間隔保持部材を嵌合させる工程を具備する頭髪処理剤塗布具の製造方法を提供するものである。

【発明の効果】

【0009】

本発明の頭髪処理剤塗布具及びその製造方法によれば、櫛歯を形成する部材を射出成形により製造しても、櫛歯に損傷や成形不良が生じにくく、また、櫛歯間の間隔を設計通りの間隔に高精度に維持することができる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】図１は、本発明の頭髪処理剤塗布具の第１実施形態を示す一部破断側面図である。

【図2】図２は、図１に示す頭髪処理剤塗布具の剤塗布部の、（ａ）斜視図、及び（ｂ）筒状の櫛部の軸方向から視た平面図である。

【図3】図３は、図１に示す頭髪処理剤塗布具における剤塗布部の一部を形成する櫛歯形成部材の、（ａ）斜視図、（ｂ）斜め上方から視た拡大斜視図、（ｃ）斜め下方から視た拡大斜視図である。

【図4】図４は、図１に示す頭髪処理剤塗布具における剤塗布部の他の一部を形成する間隔保持部材の、（ａ）斜視図、（ｂ）上面図、（ｃ）斜め下方から視た斜視図である。

【図5】図５は、図１に示す頭髪処理剤塗布具の製造方法の説明図である。

【図6】図６は、図１に示す頭髪処理剤塗布具における櫛歯の位置決め状態を示す図であり、（ａ）剤塗布部の斜視図、（ｂ）剤塗布部の上面図、（ｃ）剤塗布部の側面図、（ｄ）剤塗布部のＡ−Ａ線断面図である。

【図7】図７は、図１に示す頭髪処理剤塗布具の延長部に対する固定態様の一例を説明する説明図である。

【図8】図８は、本発明の頭髪処理剤塗布具の第２実施形態を説明する図であり、（ａ）間隔保持部材の斜視図、（ｂ）剤塗布部の斜視図、（ｃ）剤塗布部の側面図、（ｄ）剤塗布部のＢ−Ｂ線断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下に、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の第１実施形態である頭髪処理剤塗布具１（以下、頭髪処理剤塗布具１ともいう）は、図２に示すように、環状に配置された複数の櫛歯２２からなる筒状の櫛部２１を有する。また、頭髪処理剤塗布具１は、図３に示すように、基台部２３、該基台部２３の周囲に放射状に連結された複数の櫛歯２２，２２・・、及び該基台部２３と個々の櫛歯２２とを連結する可撓性の連結部２４を備えた櫛歯形成部材２０と、複数の櫛歯２２が筒状に変形した状態の櫛歯形成部材２０の外周部に嵌合して、櫛歯間の間隔Ｐを一定に維持する間隔保持部材３０とを備えている。

【0012】

第１実施形態の頭髪処理剤塗布具１について、より詳細に説明する。
頭髪処理剤塗布具１は、図１に示すように、複数の櫛歯２２からなる櫛部２１を有する剤塗布部２と、頭髪処理剤の塗布作業を行う際に手に持つ部分である把持部４とを有している。また、頭髪処理剤塗布具１は、把持部４と剤塗布部２との間に延長部５を有している。延長部５は、把持部４と剤塗布部２との間に間隔を設けて、後頭部等への頭髪処理剤６の塗布作業を容易とするものである。

【0013】

剤塗布部２は、頭髪に接触させる部分であり、頭髪を櫛部２１で梳きながら該頭髪に頭髪処理剤６を塗布可能である。櫛部２１を構成する櫛歯２２は、図２に示すように、相隣接する櫛歯どうし間に一定の間隔Ｐを設けて、平面視略円形の環状に配置されている。
本実施形態における剤塗布部２は、図２〜図４に示すように、櫛歯２２が放射状に形成された櫛歯形成部材２０と、複数の櫛歯２２が筒状に変形した状態の櫛歯形成部材２０に嵌合する間隔保持部材３０とからなる。

【0014】

櫛歯形成部材２０は、合成樹脂の射出成型品である。本実施形態では、櫛歯形成部材２０に関し、図３（ａ）に示すように、複数の櫛歯２２が平面状に拡がっている形態を平面状態、図２に示すように、複数の櫛歯２２が筒状に変形して筒状の櫛部２１を形成している状態を筒状変形状態ともいう。筒状の櫛部２１は、複数の櫛歯２２が同一方向Ｅを向くように複数の櫛歯２２の向きを揃えることによって形成される。筒状の櫛部２１における複数の櫛歯２２は、相互に完全に平行である必要はなく、筒状の櫛部２１が形成される程度に向きが揃っていれば良い。

【0015】

図３に示すように、櫛歯形成部材２０は、中央に貫通孔２３ａを有する筒状の基台部２３と、筒状の基台部２３の外周部の下端から外方に向かって延出する櫛歯連結部２４を有している。図３（ｂ）に示すように、基台部２３は、その外周面に、周方向に並べられた同じ幅の複数の平面２３ｃからなる断面正多角形状の部分を有している。櫛歯形成部材２０は、その複数の平面２３ｃの数と同数の櫛歯２２を有している。

【0016】

櫛歯連結部２４は、筒状の基台部２３と櫛歯２２とを連結しており、筒状の基台部２３側に、薄肉に形成された可撓部２４ａを有し、櫛歯２２の根元近傍に、後述する間隔保持部材３０によって、筒状の櫛部２１の周方向の移動を規制される位置決め部２４ｂを有している。図３（ｂ）に示すように、位置決め部２４ｂは、薄肉に形成された可撓部２４ａに対して、突出部２４ｃを有する分だけ厚みが厚く形成されている。位置決め部２４ｂは、櫛歯形成部材２０を筒状変形状態として間隔保持部材３０の嵌合凹部３１内に嵌合させる際に、平坦な背面側が、該間隔保持部材３０の突起間空間３５内に挿入される。
図３（ａ）に示すように、筒状の基台部２３の周囲には、直線状に連なった櫛歯連結部２４及び櫛歯２２が、複数組、放射状に延びた状態に形成されているが、図３（ｂ）及び図３（ｃ）においては、見やすさの点から、一組の櫛歯連結部２４及び櫛歯２２のみを示してある。

【0017】

間隔保持部材３０は、図４に示すように、筒状をなし、筒状変形状態の櫛歯形成部材２０の下端部に外嵌合する嵌合凹部３１を有している。嵌合凹部３１は周壁部３１Ａと底部３１Ｂとを備え、周壁部３１Ａの内周面には、櫛歯２２の本数と同数の突起３４が、周方向に等間隔に形成されている。突起３４は、間隔保持部材３０の高さ方向（軸方向）に延びている。前述した櫛歯形成部材の位置決め部２４ｂは、櫛歯形成部材２０の下端部に嵌合凹部３１が嵌合させる際に、平坦な背面側が、該間隔保持部材３０の、隣り合う突起３４，３４間に形成される突起間空間３５内に挿入され、それによって、櫛歯２２の周方向の位置が設計通りの位置に高精度に位置決めされ、また、形成される筒状の櫛部２１における櫛歯２２間の間隔Ｐを設計通りの間隔と高精度に一致させることができる。図６（ｄ）に示すように、隣接する突起３４，３４間の幅は、その間に配される位置決め部２４ｂの平坦な背面側の幅と略一致している。
図４（ｂ）に示すように、嵌合凹部３１の底部３１Ｂは、間隔保持部材３０の高さ方向（軸方向）の中間に形成されており、底部３１Ｂの中央部には、貫通孔３２が形成されている。間隔保持部材３０の高さ方向（軸方向）における、嵌合凹部３１を有する側とは反対側には、図４（ｃ）に示すように、外筒３３ａ及び内筒３３ｂを備えた接続部３３が形成されており、外筒３３ａの内面には、他の部材等に接続するための接続用の螺条３３ｃが形成されている。

【0018】

本実施形態の頭髪処理剤塗布具１における剤塗布部２の好ましい製造方法について説明する。
先ず、合成樹脂の射出成形により、図３（ａ）に示す平面形態の櫛歯形成部材２０を製造する。即ち、合成樹脂を、射出成形用の金型内で、図３（ａ）に示す形状に成形し、金型から図３（ａ）に示す平面状態の櫛歯形成部材２０を取り出す。櫛歯形成部材２０の射出成形は、金型の開閉方向と、櫛歯形成部材２０の筒状の基台部２３の軸方向とを一致させることが複雑な金型構造とならない観点から好ましい。
櫛歯形成部材２０の射出成形に用いる合成樹脂としては、射出成形可能なものを特に制限なく用いることができるが、熱可塑性汎用樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、アクリルニトリル／スチレン樹脂、アクリルニトリル/ブタジエン／スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル等、および熱可塑性エンジニアリングプラスチックであるポリカーボネイト、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂等、又は熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂等から形成されていることが望ましく、特に機械的強度、耐薬品性、価格の面を考慮してポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂から形成されていることが好ましい。櫛歯形成部材２０を射出成形により製造するメリットとしては、一般的にブロー成形、真空／圧空成形に比較して高い製品寸法精度を得られる他、櫛歯が筒状変形状態になった際、内側面にアンダーカット部分がある場合でも製品に無理抜き等を行わずに成形できる、櫛歯本数を型構造により制限されることが無い、等が挙げられる。

【0019】

また、櫛歯形成部材２０とは別に、図４に示す間隔保持部材３０を製造する。間隔保持部材３０も、合成樹脂の射出成形により製造することが、櫛歯形成部材２０を射出成形により製造する場合と同様の理由により好ましい。間隔保持部材３０の射出成形は、金型の開閉方向と、間隔保持部材３０の軸方向とを一致させることが複雑な金型構造とならない観点から好ましい。間隔保持部材３０の射出成形に用いる合成樹脂としては、射出成形可能なものを特に制限なく用いることができるが、櫛歯形成部材２０の射出成形に用いる合成樹脂として例示したものと同様のものを用いることができる。
間隔保持部材３０は、射出成形以外の方法により製造しても良く、例えばダイレクトブロー成形、真空／圧空成形、機械加工、インジェクションブロー成形、型取り成形等、必要とされる寸法精度が保持できればいずれの熱可塑性樹脂成形法、ならびに汎用の成形品製造を用いても良い。また、間隔保持部材３０は、合成樹脂製に代えて、金属製、木製、ガラス製等であっても良い。

【0020】

次いで、櫛歯形成部材２０を、図５（ａ）に示すように、筒状変形状態に変形させる。筒状変形状態に変形させる方法には、特に制限はないが、例えば、一端から他端に向かって直径が漸減する形状の筒体内に、櫛歯形成部材２０を、その中央部（基台部２３）を棒状体等で押圧することによって押し込み、他端側から筒状変形状態の櫛歯形成部材２０を取り出す方法がある。また、間隔保持部材３０の上部開口部分に櫛歯形成部材２０の基台部２３を配置し、棒状体等で基台部２３を押圧して嵌合凹部３１に押し込む方法などもある。このような工程により、連結部２４が変形して複数の櫛歯２２が基台部２３から同一の側に揃って立ち上がり、筒状の櫛部２１が形成される。

【0021】

そして、図５（ｂ）に示すように、筒状変形状態の櫛歯形成部材２０の下端部を、適宜の手段により、間隔保持部材３０の嵌合凹部３１に押し込み嵌合させる。その際に、櫛歯形成部材２０の位置決め部２４ｂの平坦な背面側が、間隔保持部材３０の突起間空間３５内に挿入されるように適宜位置決めを行う。図５（ｂ）に示す押し込み具７は、公知の進退機構又は手動により進退し、押し込み方向の先端面で、櫛歯形成部材２０の筒状の基台部２３の上端面を押圧して、櫛歯形成部材２０を嵌合凹部３１に嵌合させる。
この押し込み工程中、櫛歯形成部材２０の筒状変形状態を維持する方法としては、前述の一端から他端に向かって直径が漸減する形状の筒体内に保持する方法や筒状フィルムにより仮止めする方法などがある。

【0022】

なお、櫛歯形成部材２０を嵌合凹部３１に嵌合させる際には、櫛歯形成部材２０及び嵌合凹部３１の相対向する面の一方又は双方に接着剤等を塗布しておき、該接着剤を介して、櫛歯形成部材２０の嵌合凹部３１に対する固定を一層強固としても良い。また、筒状変形状態の櫛歯形成部材２０の外周部の直径を、嵌合凹部３１の内径よりも適度に大きくする方法によって、櫛歯形成部材２０を嵌合凹部３１に押し込むのみで、櫛歯形成部材２０が嵌合凹部３１内に強固に固定されるようにしてもよい。また、櫛歯形成部材２０及び間隔保持部材３０の一方又は双方に互いの結合状態が容易には外れないようにするための係合手段を設けて、櫛歯形成部材２０が嵌合凹部３１から外れないようにしても良い。

【0023】

このようにして、櫛歯形成部材２０を、間隔保持部材３０の嵌合凹部３１に嵌入させて固定することによって、図２に示す、筒状の櫛部２１を備えた剤塗布部２が完成する。また、このようにして得られた剤塗布部２においては、複数の櫛歯２２が筒状に変形した状態が、櫛歯形成部材２０の外側に間隔保持部材３０が嵌合していることによって安定的に維持される。
なお、嵌合凹部３１に挿入される櫛歯形成部材２０は、複数の櫛歯２２を備えたものであるが、図６及び後述する図８においては、見やすさの点から、一本の櫛歯２２及びその櫛歯２２に対応する位置決め部２４ｂのみを示してある。

【0024】

本実施形態の頭髪処理剤塗布具１における剤塗布部２以外の部分は、各種公知の任意の方法により製造することができる。また、剤塗布部２を、延長部５の先端部に固定する方法も任意の方法が採用できる。
例えば、図７に示すように、延長部５の先端部に、前述した間隔保持部材３０の外筒３３ａの内面に形成した螺条３３ｃと螺合する螺条３３ｄを形成し、それらの螺条を介して、延長部５の先端部に剤塗布部２を螺合させることができる。外筒３３ａの内面に螺条３３ｃを設けることなく、延長部５の先端部に設けた筒状部を、外筒３３ａと内筒３３ｂとの隙間に嵌合させると共に、両者間の固定強度を接着剤や別の係合手段等により高めても良い。

【0025】

本実施形態の頭髪処理剤塗布具１によれば、平面状態の櫛歯形成部材２０を、櫛歯連結部２４を撓ませて筒状変形状態とし、それによって、筒状の櫛部２１を形成してあるため、射出成形後に櫛歯形成部材２０を金型から取り出す際に櫛歯２２が損傷することがなく、櫛歯間の間隔Ｐが狭い櫛部２１を形成する場合や逆テーパー部を有する櫛歯を有する櫛部２１を形成する場合においても、櫛歯２２の成形不良や寸法不良、櫛歯２２間の間隔が設計通りの間隔Ｐとならないといったことが起こりにくい。
櫛歯間の間隔Ｐが狭い場合としては、例えば、櫛歯２２の上半部（高さ方向の上半分）における最接近部の間隔Ｐが２ｍｍ以下の場合、特に１ｍｍ以下の場合が挙げられる。逆テーパー部とは、櫛歯２２の幅Ｗ〔図２（ｂ）参照〕が、櫛歯２２の基端側から先端側に向かって漸増する部分である。櫛歯２２が逆テーパー部を有する場合の例としては、櫛歯２２の高さ方向の全体が逆テーパー部となっている場合や、櫛歯２２の高さ方向の中央部より先端側が逆テーパー部となっている場合等が挙げられる。

【0026】

しかも、本実施形態の頭髪処理剤塗布具１においては、平面状態の櫛歯形成部材２０を筒状変形状態として、間隔保持部材３０の嵌合凹部３１内に挿入する際に、櫛歯２２の根元付近にある位置決め部２４ｂが、間隔保持部材３０の突起間空間３５内に挿入されて、個々の櫛歯２２が、間隔保持部材３０の周方向における設計通りの位置に確実に位置するため、形成される筒状の櫛部２１における櫛歯２２間の間隔も設計通りの間隔と高精度に一致する。また、頭髪処理剤塗布具１の保管や使用中等においても、個々の櫛歯２２の位置が、筒状の櫛部２１の周方向にずれることも防止される。

【0027】

更に、本実施形態の頭髪処理剤塗布具１においては、位置決め部２４ｂの厚みｔが、図６（ｄ）に示すように、嵌合凹部３１内に挿入した状態の櫛歯形成部材２０における基台部２３の外面２３ｃと、突起３４，３４間に位置する嵌合凹部３１の内面３６との間の距離Ｄ（嵌合凹部３１の直径方向の距離）と同じかそれ以上であり、個々の櫛歯２２の位置が、筒状の櫛部２１の直径方向にずれることも防止される。

【0028】

本実施形態の頭髪処理剤塗布具１における容器部４０は、図１に示すように、スクイズ可能な有底筒状の外容器４２と、外容器４２内に配置され、口部が外容器４２の円筒状の口部内面に気密に接合された内袋４３とを有する容器本体４１と、容器本体４１の口部に取り付けられる逆止弁４４付きの接続キャップ４５とからなる２重構造の容器からなり、外容器４２を片手で把持してその片手でスクイズすることにより、外容器４２自体又は外容器４２と内袋４３との間の空気が、内部の内袋４３を押圧し、それにより内袋４３内の頭髪処理剤６が押し出されて液導出路５１を介して剤塗布部２に供給される。剤塗布部２に供給された頭髪処理剤６は、剤塗布部２内の流路を通って剤吐出口２３ａから吐出される。

【0029】

図１に示す頭髪処理剤塗布具１においては、外容器４２の円筒状の口部に、外容器４２と内袋４３との間の空間と、外容器４２の外部とを連通する吸入孔４２ａが形成されている。そして、押圧されて変形した外容器４２が、弾性復元力により元の状態に戻るときに、容器部４０の外部の空気が、接続キャップ４５の下端と外容器４２との間に設けた隙間４２ｂ及び前記の吸入孔４２ａを通って、外容器４２と内袋４３との間に流入する。容器部４０は、このような構成を有することで、外周面を押圧して変形させる操作を繰り返すことにより、内容物である頭髪処理剤を徐徐に剤吐出口から吐出させることができる。

【0030】

容器部４０に、このような２重構造の容器を用いることにより、内部の頭髪処理剤６の残量が減っても、容器部４０がしぼんで把持しにくくなることを防止できる。また、接続キャップ４５や、容器部４０内の空間と剤吐出口２３ａとを連通する液導出路５１等に逆止弁４４を設けて、剤の吐出後に空気が液導出路５１や容器部４０に逆流することを防止することにより、次回の吐出の際に、剤が出にくくなったり剤が飛び散ったりすることを防止することができる。

【0031】

第１実施形態の頭髪処理剤塗布具１を用いた頭髪処理剤の塗布方法の好ましい一例について説明する。
先ず、容器部４０の容器本体４１から接続キャップ４５を取り外して、容器部４０内に頭髪処理剤６を充填した後、再び接続キャップ４５を取り付ける。頭髪処理剤６は、外部で配合したものを充填しても良いし、容器部４０内で攪拌混合して作成しても良い。
そして、把持部４を片手で把持して繰り返しスクイズすることにより、容器部４００内の頭髪処理剤６を剤塗布部２に送り、剤吐出口２３ａから頭髪処理剤６を吐出させる。そして、筒状の櫛部２１の内側に所望の量の頭髪処理剤６を溜め、その状態を維持したまま、剤塗布部２を頭部に移動させる。そして、剤塗布部２における、櫛部２１の先端側を、頭髪上から頭皮に軽く押し当てる。この押し当てにより、櫛歯２２，２２間の隙間に頭髪が入り込む。そして、その状態で、剤塗布部２を、櫛部２１で頭髪を梳くようにして、頭髪の毛先方向に向けて移動させれば、櫛歯２２間に保持された頭髪に対して頭髪処理剤６を安定して塗布することができる。

【0032】

櫛部２１及び頭髪処理剤６は、図２（ａ）に示すように、櫛部２１を上方に向けて、頭髪処理剤６を吐出させたとき、あるいは櫛部２１を上方に向けて、櫛部２１の内側の空間内に頭髪処理剤６を注入したときに、筒状の櫛部２１の内側の空間内に、頭髪処理剤６を所定量貯留可能であることが好ましい。
頭髪処理剤６としては、ヘアカラー等の染毛剤、ブリーチ剤、整髪剤、育毛剤、ヘアケア剤等の各種公知の頭髪処理剤を用いることができ、そのそれぞれの組成も特に制限されない。しかし、頭部から離れた位置において、筒状の櫛部２１内に、頭髪処理剤６を吐出させたり、頭髪処理剤６を別の容器等から注入したりした後に、その剤を筒状の櫛部２１内からこぼれないようにしながら頭部まで運べるようにする観点からは、頭髪処理剤６は、ある程度の粘度を有する液状（クリーム状のものや固形分や気体分を含む液状のものを含む）のもの又は泡状のものであることが好ましい。剤吐出口２３ａから泡状に吐出する頭髪処理剤は、容器部４０に充填する時点で泡状のもの、容器部４０内で泡状に変化したもの、容器部４０と剤吐出口２３ａとの間等で泡状に変化したもの等の何れであってもよい。

【0033】

次に、本発明の第２実施形態について説明する。第２実施形態においては、主として、上述した第１実施形態の頭髪処理剤塗布具１との相違点について説明し、同様の点については説明を省略する。特に説明しない点については、第１実施形態と同様とすることができる。図８には、第１実施形態の頭髪処理剤塗布具におけるのと同様の部材には同一の符号を付してある。

【0034】

第２実施形態における間隔保持部材３０Ａは、嵌合凹部３１の内周面が、周方向に並べられた同じ幅の複数の平面３１ｂ（移動規制面）からなり、断面正多角形状の形状を有している。また、嵌合凹部３１の内周面を形成する平面３１ｂの数は、嵌合凹部３１に嵌合される櫛歯形成部材２０の櫛歯２２の個数と一致しており、それらの数は、嵌合凹部３１に嵌合させる櫛歯形成部材２０の基台部２３の外周面の平面２３ｃ〔図３（ｂ）参照〕の数とも同じである。

【0035】

第２実施形態の頭髪処理剤塗布具においては、第１実施形態と同様に、平面状態の櫛歯形成部材２０を筒状変形状態として、間隔保持部材３０Ａの嵌合凹部３１内に嵌合させる際に、個々の櫛歯２２の根元付近にある位置決め部２４ｂの平坦な外面が、嵌合凹部３１内の個々の平面３１ｂによって押圧される。これにより、個々の櫛歯２２が、間隔保持部材３０Ａの周方向における設計通りの位置に確実に位置し、また、形成される筒状の櫛部２１における櫛歯２２間の間隔も設計通りの間隔と高精度に一致する。

【0036】

以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。

【0037】

例えば、間隔保持部材は、嵌合凹部の内周面に、個々の櫛歯の位置決め部の背面等に設けた溝に対応する突起を設けてもよい。また、個々の櫛歯の位置決め部の背面等に突起を設ける一方、間隔保持部材の嵌合凹部の内周面等に、該突起が挿入される溝を設けてもよい。また、間隔保持部材３０は、延長部５と一体成形されていても良い。

【0038】

また、櫛歯は、円形ライン上に配列しているのに代えて、楕円形状のライン上に配列していても良いし、六角形等の多角形状のライン上に配列していても良い。
櫛歯の本数は、３本以上が好ましく、より好ましくは１２本以上であり、更に好ましくは１５本以上であり、より具体的には、３〜２０本が好ましく、更に好ましくは１２〜１８本である。

【0039】

また、上述した実施形態の頭髪処理剤塗布具１は、頭髪処理剤６を収容する容器部４０を有すると共に剤塗布部２に頭髪処理剤６を吐出させる剤吐出口２３ａを有するものであるが、本発明の頭髪処理剤塗布具は、容器部４０や剤吐出口２３ａを有しないものでも良い。また、本発明の頭髪処理剤塗布具は、延長部５や把持部４が、中実な合成樹脂、木材、金属等から形成されているものであっても良い。例えば、剤塗布部２に剤吐出口２３ａを有しない場合であっても、櫛歯２２で囲まれた空間２５内に、頭髪処理剤を別の容器等から直接注入等することにより、上述した実施形態の頭髪処理剤塗布具と同様にして頭髪処理剤の塗布を行うことができる。また、容器部は、２重構造を有しないものであっても良いし、また、押し潰したり、巻き上げたりして内容物を押し出し可能なチューブ容器であっても良い。また、接続キャップは逆止弁を有しないものであっても良い。また、容器部として、エアゾール容器を用いても良い。

【符号の説明】

【0040】

１ 頭髪処理剤塗布具
２ 剤塗布部
４ 把持部
５ 延長部
６ 頭髪処理剤
７ 押し込み具
２０ 櫛歯形成部材
２１ 櫛部
２２ 櫛歯
２３ 基台部
２３ａ 貫通孔
２４ 連結部
２４ａ 可撓部
２４ｂ 位置決め部
２５ 空間
３０，３０Ａ 間隔保持部材
３１ 嵌合凹部
３１ｂ 平面（移動規制面）
３１Ａ 周壁部
３１Ｂ 底部
３２ 貫通孔
３３ａ 外筒
３３ｂ 内筒
４０ 容器部
４１ 容器本体
４２ 外容器
４２ａ 吸入孔
４２ｂ 隙間
４３ 内袋
４４ 逆止弁
４５ 接続キャップ
５１ 導出路

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】