(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969386
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 39/20 20060101AFI20160804BHJP
B01D 46/00 20060101ALI20160804BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20160804BHJP
B01J 23/656 20060101ALI20160804BHJP
B01J 23/96 20060101ALI20160804BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20160804BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20160804BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D46/00 302
C04B38/00 303Z
B01J23/656 A
B01J23/96 A
B01D53/86 100
F01N3/022 C
F01N3/023 A
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-509529(P2012-509529)
(86)(22)【出願日】2011年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2011058077
(87)【国際公開番号】WO2011125767
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2013年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-81897(P2010-81897)
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】水谷 貴志
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−226376(JP,A)
【文献】
特開2009−226375(JP,A)
【文献】
特開2009−220029(JP,A)
【文献】
特開2007−296512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20
B01D 46/00
B01D 53/86
B01J 23/656
B01J 23/96
C04B 38/00
F01N 3/022
F01N 3/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕集する層である捕集層と、を備え、
クラックの有無を検査する所定のクラック検査を行いクラックがないと判断されたのち、粒径が0.3μm以上10μm以下の微粒子を供給する供給部を内部空間に内包しハニカムフィルタをシールして固定する設置台と、設置台の内部空間を加圧する加圧ポンプとを用い、ゲージ圧で1Pa以上10Pa以下の条件で前記微粒子を前記加圧ポンプで前記内部空間側であるハニカムフィルタの一方の端面側から加圧供給すると共に、他方の端面側にレーザー光を照射して該他方の端面から流れ出る微粒子を可視化する可視化試験を行い、該可視化試験において該他方の端面から流れ出る微粒子にレーザー光を照射し該レーザー光を照射した他方の端面側を撮影装置で撮影した画像を用いて各セルの輝度を求め、該求めた各セルの輝度のうち最も低い輝度との輝度差が150cd/m2以上を示す過堆積セルが前記セルに存在しており、全セル数に対する該過堆積セル数の割合R(%)が0(%)<R≦20(%)である、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記全セル数に対する前記過堆積セル数の割合Rが7(%)以下である、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記過堆積セルは、捕集層が不完全に形成されているセル及び前記捕集層が形成されていないセルのうち少なくとも一方である、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記捕集層は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記ハニカムフィルタは、前記隔壁部及び前記捕集層を有する2以上のハニカムセグメントが接合層によって接合されて形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記隔壁部及び前記捕集層のうち少なくとも一方には、触媒が担持されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカムフィルタとしては、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセルと、一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口するセルとが交互に配設されるよう形成された多孔質の隔壁部と、この隔壁部上に形成された排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集・除去する層が形成されているものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。このハニカムフィルタでは、捕集層によりPMを捕集することにより、圧力損失を低減させつつPMの捕集を行うことができる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−216226号公報
【特許文献2】特開平6−33734号公報
【特許文献3】特開平1−304022号公報
【発明の開示】
【0004】
ところで、このようなハニカムフィルタでは、捕集したPMを燃焼させることによりフィルタの機能を回復させる「再生処理」を行うことがある。特許文献1〜3では、隔壁部上に捕集層を設けることにより圧力損失を低減させることができるが、捕集層を設けるだけではこの再生処理の効率に大きな違いはなかった。再生処理では、例えばエンジンの燃料を増加させて温度を高めるなどの処理を行うことから、燃費の観点などにより、捕集した固体成分をより効率的に除去することが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、捕集した固体成分をより効率的に除去することができるハニカムフィルタを提供することを主目的とする。
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
即ち、本発明のハニカムフィルタは、
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕
集する層である捕集層と、を備え、
クラックの有無を検査する所定のクラック検査を行いクラックがないと判断されたのち、
粒径が0.3μm以上10μm以下の微粒子を
供給する供給部を内部空間に内包しハニカムフィルタをシールして固定する設置台と、設置台の内部空間を加圧する加圧ポンプとを用い、ゲージ圧で1Pa以上10Pa以下の条件で前記微粒子を前記加圧ポンプで前記内部空間側であるハニカムフィルタの一方の端面側から加圧供給すると共に、他方の端面側に
レーザー光を照射して該他方の端面から流れ出る微粒子を可視化する可視化試験を行い、該可視化試験において
該他方の端面から流れ出る微粒子にレーザー光を照射し該レーザー光を照射した他方の端面側を撮影装置で撮影した画像を用いて各セルの輝度を求め、該求めた各セルの輝度のうち最も低い輝度との輝度差が150cd/m
2以上を示す過堆積セルが前記セルに存在しており、全セル数に対する該過堆積セル数の割合R(%)が0(%)<R≦20(%)であるものである。
【0008】
あるいは、本発明のハニカムフィルタは、
一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止され流体の流路となる複数のセルを形成する複数の多孔質の隔壁部と、
前記隔壁部上に形成され前記流体に含まれる固体成分を捕
集する層である捕集層と、を備え、
前記固体成分を捕集させたあとには前記固体成分がより多く捕集される過堆積領域を含む過堆積セルが前記セルに存在しており、全セル数に対する該過堆積セル数の割合R(%)が0(%)<R≦20(%)であるものとしてもよい。
【0009】
このハニカムフィルタでは、セルを形成する隔壁部上に捕集層が形成されているが、このセルには、可視化試験において所定の輝度差を示す過堆積セルが存在している。この過堆積セルは、全セル数に対する過堆積セルの割合R(%)が0(%)<R≦20(%)で形成されている。一般に、捕集した固体成分を燃焼させることによりフィルタの機能を回復させる再生処理において、その再生速度(効率)は、捕集した固体成分の量に応じて大きくなる傾向にある。そして、過堆積セルには固体成分が多く堆積しており、再生処理において過堆積セルでの固体成分の燃焼により、着火点の役割を果たし、捕集した固体成分をより効率的に除去することができる。このハニカムフィルタにおいて、過堆積セルは、最低1セル存在し、全セル数に対する過堆積セル数の割合Rが20(%)以下である。この割合Rが20(%)以下では、効果的に圧力損失の低減を図ると共に、捕集した固体成分をより効率的に除去することができ
る。この「過堆積セル」は、固体成分を捕集させたあとには、他の一般的なセルに比して固体成分がより多く捕集されるセルとしてもよいし、隣接するセルのうちいずれか1以上に対して10重量%以上多くの固体成分を堆積するセルとしてもよい。また、「クラック」とは、少なくとも流体の流入する入口側が開口しているセル(入口側セルとも称する)と、少なくとも流体の流出する出口側が開口しているセル(出口側セルとも称する)との間にある隔壁部にて、入口側セルと出口側セルとを貫通する担体軸方向、またはその垂直断面方向に存在し、PMの捕集性能に影響を及ぼす大きさの裂け目をいうものとする。このとき、前記捕集層は、入口側セルに形成されており、前記過堆積セルは、該流体の入口側セルに存在するものとしてもよい。なお、この過堆積セルは、固体成分を捕集させたあとには他のセルに比して固体成分がより多く捕集されるセルとしてもよい。
【0010】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記全セル数に対する前記過堆積セルの割合Rが7(%)以下であることが好ましい。こうすれば、より圧力損失を低減しつつ、捕集した固体成分をより効率的に除去することができる。
【0011】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記過堆積セルは、捕集層が不完全に形成されているセル及び前記捕集層が形成されていないセルのうち少なくとも一方であるものとしてもよい。こうすれば、捕集層が完全に形成されているセルに比して過堆積セルの流路抵抗が低いことから、他のセルに比してより多くの流体が流通し、その結果、より多くの固体成分を捕集することができる。即ち、捕集層を不完全に作成することによって、比較的容易に過堆積セルを作製することができる。ここで、「捕集層が不完全に形成されているセル」とは、例えば、その他の部分の捕集層の厚さより相対的に薄い捕集層が形成されたセルであるものとしてもよい。このとき、相対的に薄い捕集層は、ハニカムフィルタ全域での捕集層の平均厚さに対して30%以下、より好ましくは50%以下の厚さとしてもよい。あるいは、「捕集層が不完全に形成されているセル」とは、その他の部分と同じような厚さの捕集層が形成されているがセル内の少なくとも一部に捕集層の形成されていない局所未形成部位を有するものとしてもよい。この局所未形成部位は、流体の流通方向に対してどの場所にあってもよく、この局所未形成部位の最大長さが300μm以下、より好ましくは200μm以下であるものとしてもよい。また、この過堆積セルでは、1つのセルの内壁全体の面積に対して75%以下の面積で捕集層が形成されているものとしてもよいし、50%以下の面積で捕集層が形成されているものとしてもよいし、25%以下の面積で捕集層が形成されているものとしてもよい。このとき、前記過堆積セルは、前記捕集層が形成されていないものが好ましい。こうすれば、より流路抵抗を低減可能であり、より多くの固体成分を捕集しやすい。
【0012】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記捕集層は、気体を搬送媒体とし該捕集層の原料である無機材料を前記セルへ供給することにより形成されているものとしてもよい。こうすれば、気体による搬送を利用して、捕集層の厚さなど、捕集層の形成状態を比較的容易に制御することができる。
【0013】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記過堆積セルは、ハニカムフィルタの一方の端面側より微粒子を加圧供給すると共に、他方の端面側に光を照射して該端面から流れ出る微粒子を可視化することにより検出可能であるものとしてもよい。こうすれば、端面から流出した微粒子を発光させるという比較的容易な方法で過堆積セルを検出することができる。この検出方法は、例えば、粒度分布や濃度が明らかな微粒子を暗室内でハニカムフィルタの一方の端面から導入し、他方の端面にレーザー光をスリット状に照射し、他方の端面から漏れ出る微粒子により生じる輝度差を検出するものとしてもよい。ここで、端面から供給する「微粒子」としては、線香などの香類の燃焼による微粒子、水などの溶媒の噴霧・蒸気化による微粒子及び炭酸カルシウムなどの微粒子の発塵による微粒子などが挙げられる。なお、この微粒子は、隔壁部の平均細孔径に基づいて定められた平均粒径を有する微粒子、即ち、隔壁部に対する透過性に応じて選択される微粒子であり、例えば、平均粒径が0.3μm以上10μm以下の粒子としてもよい。また、加圧供給の条件は、1Pa以上10Pa以下のゲージ圧で供給するものとする。また、過堆積セルは、各セルのうち最も低い輝度との輝度差が150cd/m
2以上を示すセルとする。
【0014】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。また、前記捕集層は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、前記捕集層は、前記隔壁部と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。
【0015】
本発明のハニカムフィルタは、前記隔壁部及び前記捕集層を有する2以上のハニカムセグメントが接合層によって接合されて形成されているものとしてもよい。こうすれば、接合層で接合することによりハニカムフィルタの機械的強度をより高めることができる。
【0016】
本発明のハニカムフィルタにおいて、前記隔壁部及び前記捕集層のうち少なくとも一方には、触媒が担持されているものとしてもよい。こうすれば、捕集した固体成分の燃焼除去など、流体に含まれる成分の浄化をより効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。
【
図2】SEM観察による捕集層の厚さの算出方法の説明図である。
【
図3】外周部、中央部、分散して形成された過堆積セル25の説明図である。
【
図4】レーザースモーク検出器60の説明図である。
【
図6】過堆積セル25による再生処理時の温度変化の説明図である。
【
図7】ハニカムフィルタ40の構成の概略の一例を示す説明図である。
【
図9】過堆積セルの割合に対する再生効率及び圧損上昇率の関係を表す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のハニカムフィルタの一実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるハニカムフィルタ20の構成の概略の一例を示す説明図である。
図2は、SEM観察による捕集層の厚さの算出方法の説明図であり、
図3は、外周部、中央部、分散して形成された過堆積セル25の説明図である。また、
図4は、レーザースモーク検出器60の説明図であり、
図5は、過堆積セル25のPM捕集の概念図であり、
図6は、過堆積セル25による再生処理時の温度変化の説明図である。本実施形態のハニカムフィルタ20は、
図1に示すように、隔壁部22を有する2以上のハニカムセグメント21が接合層27によって接合された形状を有し、その外周に外周保護部28が形成されている。このハニカムフィルタ20は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止部26により目封止され、流体としての排ガスの流路となる複数のセル23を形成する多孔質の隔壁部22と、隔壁部22上に形成され流体に含まれる固体成分(以下PMとも称する)を捕
集する層である捕集層24と、を備えている。なお、
図1には、ハニカムフィルタ20の外形が円柱状に形成され、ハニカムセグメント21の外形が矩形柱状に形成され、セル23が矩形状に形成されているものを一例として示す。このハニカムフィルタ20では、隔壁部22は、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止されたセル23と一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口したセル23とが交互に配置されるよう形成されている。また、ハニカムフィルタ20では、入口側が開口しているセル23(入口側セルとも称する)へ入った排ガスが捕集層24及び隔壁部22を介して出口側が開口しているセル23(出口側セルとも称する)を通過して排出され、このとき、排ガスに含まれるPMが捕集層24上に捕集される。
【0019】
このハニカムフィルタ20の外形は、特に限定されないが、円柱状、四角柱状、楕円柱状、六角柱状などの形状とすることができる。ハニカムセグメント21の外形は、特に限定されないが、接合しやすい平面を有していることが好ましく、断面が多角形の角柱状(四角柱状、六角柱状など)の形状とすることができる。セルは、その断面の形状として3角形、4角形、6角形、8角形などの多角形の形状や円形、楕円形などの流線形状、及びそれらの組み合わせとすることができる。例えば、セル23は排ガスの流通方向に垂直な断面が4角形に形成されているものとしてもよい。
【0020】
ハニカムフィルタ20において、セルピッチは、1.0mm以上2.5mm以下とするのが好ましい。PM堆積時の圧力損失は、濾過面積が大きいほど小さい値を示す。一方、初期の圧力損失は、セル直径が小さいほど大きい値を示す。したがって、初期圧力損失、PM堆積時の圧力損失、PMの捕集効率のトレードオフを考慮して、セルピッチ、セル密度や隔壁部22の厚さを設定するものとすればよい。
【0021】
隔壁部22は、多孔質であり、例えば、コージェライト、Si結合SiC、再結晶SiC、チタン酸アルミニウム、ムライト、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このうち、コージェライトやSi結合SiC、再結晶SiCなどが好ましい。隔壁部22は、その気孔率が30体積%以上85体積%以下であることが好ましく、35体積%以上65体積%以下であることがより好ましい。この気孔率は、水銀圧入法により測定した結果をいう。この隔壁部22は、その平均細孔径が10μm以上60μm以下の範囲であることが好ましい。この平均細孔径は、水銀圧入法により測定した結果をいう。また、隔壁部22は、その厚さが150μm以上600μm以下であることが好ましく、200μm以上400μm以下であることがより好ましい。厚さが150μm以上であれば、機械的強度を高めることができ、600μm以下であれば、圧力損失をより低減することができる。このような気孔率、平均細孔径、厚さで隔壁部22を形成すると、排ガスが通過しやすく、PMを捕集・除去しやすい。
【0022】
捕集層24は、排ガスに含まれるPMを捕
集する層であり、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径で構成された粒子群により隔壁部22上に形成されているものとしてもよい。捕集層24は、平均細孔径が、0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、気孔率が40体積%以上95体積%以下であることが好ましい。平均細孔径が0.2μm以上であればPMが堆積していない初期の圧力損失が過大になるのを抑制することができ、10μm以下であれば捕集効率が良好なものとなり、捕集層24を通り抜け隔壁部22の細孔内部にPMが到達するのを抑制可能であり、PM堆積時の圧力損失低減効果の低下を抑制することができる。また、気孔率が40体積%以上であると、PMが堆積していない初期の圧力損失が過大となるのを抑制することができ、95体積%以下では耐久性のある捕集層24としての表層を作製することができる。また、捕集層を構成する粒子の平均粒径が0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。捕集層を構成する粒子の平均粒径が0.5μm以上であれば捕集層を構成する粒子の粒子間の空間のサイズを十分に確保可能であるため捕集層の透過性を維持でき急激な圧力損失の上昇を抑制することができ、15μm以下であれば粒子同士の接触点が十分に存在するから粒子間の結合強度を十分に確保可能であり捕集層の剥離強度を確保することができる。このように、良好なPM捕集効率の維持、PM捕集開始直後の急激な圧力損失上昇防止、PM堆積時の圧力損失低減、捕集層の耐久性を実現することができる。この捕集層24の平均厚さは、10μm以上80μm以下であることが好ましい。捕集層の厚さが10μm以上ではPMを捕集しやすく、80μm以下では流体が隔壁を通過する抵抗をより低減可能であり、圧力損失をより低減することができる。この捕集層の平均厚さは、20μm以上60μm以下であることがより好ましく、30μm以上50μm以下であることが更に好ましい。この捕集層24は、排ガスの入口側セル及び出口側セルの隔壁部22に形成されているものとしてもよいが、
図1に示すように、入口側セルの隔壁部22上に形成されており、出口側セルには形成されていないものとするのが好ましい。こうすれば、より圧力損失を低減して流体に含まれているPMをより効率よく除去することができる。また、ハニカムフィルタ20の作製が容易となる。この捕集層24は、コージェライト、SiC、ムライト、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1以上の無機材料を含んで形成されているものとしてもよい。このとき、捕集層24は、隔壁部22と同種の材料により形成されているものとすることが好ましい。また、捕集層24は、セラミック又は金属の無機繊維を70重量%以上含有しているものとするのがより好ましい。こうすれば、繊維質によりPMを捕集しやすい。また、捕集層24は、無機繊維がアルミノシリケート、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア及びムライトから選択される1以上の材料を含んで形成されているものとすることができる。なお、捕集層24の粒子群の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で捕集層24を観察し、撮影した画像に含まれる捕集層24の各粒子を計測して求めた平均値をいうものとする。また、原料粒子における平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として原料粒子を測定したメディアン径(D50)をいうものとする。
【0023】
ここで、捕集層24の厚さなどの測定方法について説明する。まず、捕集層24の厚さの測定方法について
図2を用いて説明する。捕集層24の厚さ、換言すると捕集層を構成する粒子群の厚さは、以下のようにして求めるものとする。ここでは、ハニカムフィルタ20の隔壁基材を樹脂埋めした後に研磨した観察用試料を用意し、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い得られた画像を解析することによって捕集層の厚さを求める。まず、流体の流通方向に垂直な断面を観察面とするように切断・研磨した観察用試料を用意する。次に、SEMの倍率を100倍〜500倍に設定し、後述する測定位置において、視野をおよそ500μm×500μmの範囲として用意した観察用試料の観察面を撮影する。次に、撮影した画像において、隔壁の最外輪郭線を仮想的に描画する。この隔壁の最外輪郭線とは、隔壁の輪郭を示す線であって、隔壁表面(照射面、
図2上段参照)に対して垂直の方向からこの隔壁表面に仮想平行光を照射したものとしたときに得られる投影線をいうものとする(
図2中段参照)。即ち、隔壁の最外輪郭線は、光が当たっているものとする高さの異なる複数の隔壁上面の線分と、隣り合う高さの異なる隔壁上面の線分の各々をつなぐ垂線とにより形成される。この隔壁上面の線分は、例えば、100μmの長さの線分に対して5μmの長さ以下の凹凸については無視する「5%解像度」により描画するものとし、水平方向の線分が細かくなりすぎないようにするものとする。また、隔壁の最外輪郭線を描画する際には、捕集層の存在については無視するものとする。続いて、隔壁の最外輪郭線と同様に、捕集層を形成する粒子群の最外輪郭線を仮想的に描画する。この粒子群の最外輪郭線とは、捕集層の輪郭を示す線であって、捕集層表面(照射面、
図2上段参照)に対して垂直の方向からこの捕集層表面に仮想平行光を照射したものとしたときに得られる投影線をいうものとする(
図2中段参照)。即ち、粒子群の最外輪郭線は、光が当たっているものとする高さの異なる複数の粒子群上面の線分と、隣り合う高さの異なる粒子群上面の線分の各々をつなぐ垂線とにより形成される。この粒子群上面の線分は、例えば、上記隔壁と同じ「解像度」により描画するものとする。多孔性の高い捕集層では、樹脂埋めして研磨して観察用試料を作製すると、空中に浮いているように観察される粒子群もあることから、このように仮想光の照射による投影線を用いて最外輪郭線を描画するのである。続いて、描画した隔壁の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて隔壁の最外輪郭線の平均線である隔壁の標準基準線を求める(
図2下段参照)。また、隔壁の標準基準線と同様に、描画した粒子群の最外輪郭線の上面線分の各々の高さ及び長さに基づいて粒子群の最外輪郭線の平均線である粒子群の平均高さを求める(
図2下段参照)。そして、得られた粒子群の平均高さと隔壁の標準基準線との差をとり、この差(長さ)を、この撮影画像における捕集層の厚さ(粒子群の厚さ)とする。このようにして、捕集層の厚さを求めることができる。なお、複数の測定点で測定した捕集層の厚さを平均し、捕集層の平均厚さとしてもよい。
【0024】
また、捕集層24の平均細孔径及び気孔率は、SEM観察による画像解析によって求めるものとする。上述した捕集層の厚さと同様に、
図2に示すように、ハニカムフィルタ20の断面をSEM撮影して画像を得る。次に、隔壁の最外輪郭線と粒子群の最外輪郭線との間に形成される領域を捕集層の占める領域(捕集層領域)とし、この捕集層領域のうち、粒子群の存在する領域を「粒子群領域」とすると共に、粒子群の存在しない領域を「捕集層の気孔領域」とする。そして、この捕集層領域の面積(捕集層面積)と、粒子群領域の面積(粒子群面積)とを求める。そして、粒子群面積を捕集層面積で除算し100を乗算することにより、得られた値を捕集層の気孔率とする。また、「捕集層の気孔領域」において、粒子群及び隔壁の最外輪郭線と粒子群の外周とに内接する内接円を直径が最大になるように描く処理を行う。このとき、例えばアスペクト比の大きい長方形の気孔領域など、1つの「捕集層の気孔領域」に複数の内接円を描くことができるときには、気孔領域が十分に埋められるように、できるだけ大きい内接円を複数描くものとする。そして、観察した画像範囲において、描いた内接円の直径の平均値を捕集層の平均細孔径とするものとする。このようにして、捕集層24の平均細孔径及び気孔率を求めることができる。
【0025】
本発明のハニカムフィルタ20には、
図1に示すように、固体成分を捕集させたあとには捕集層が完全に形成されている領域よりもPMが多く捕集される過堆積領域を含む過堆積セル25が存在している。この過堆積セル25とは、PMがより多く堆積されるセルであるものとすれば特に限定されないが、例えば、捕集層24が不完全に形成されているセル及び捕集層24が形成されていないセルのうち少なくとも一方であるものとしてもよい。捕集層24が不完全であると、完全なものに比して流路抵抗が低くなるため、より多くの排ガスが流通しやすくなり、ひいてはPMの捕集量をより高めることができる。ここで、捕集層24が不完全に形成されている過堆積セル25としては、例えば、その他の部分の平均厚さより相対的に薄い捕集層が形成されたセルであるものとしてもよい。このとき、薄い捕集層は、ハニカムフィルタ全域での捕集層の平均厚さに対して30%以下、より好ましくは50%以下の平均厚さとしてもよい。あるいは、その他の部分と同じような厚さの捕集層が形成されているがセル内の少なくとも一部に捕集層の形成されていない局所未形成部位を有するものとしてもよい。この局所未形成部位は、排ガスの流通方向に対してどの場所にあってもよく、この局所未形成部位の最大長さが300μm以下、より好ましくは200μm以下であるものとしてもよい。また、例えば、1つのセル23の内壁全体の面積に対して75%以下の面積で捕集層24が形成されているものとしてもよいし、50%以下の面積で捕集層24が形成されているものとしてもよいし、25%以下の面積で捕集層24が形成されているものとしてもよい。あるいは、隔壁部に捕集層が形成されていない過堆積セルが更に好ましい。このように、捕集層24が形成されていない部分があると、その部分は流路抵抗が少なく、捕集層24が存在する部分よりも固体成分の堆積がより多く起こるため好ましい。また、捕集層24は、少なくとも入口側セルに形成されており、過堆積セル25は、入口側セルに存在するものとしてもよい。ハニカムフィルタ20において、全セル数に対する過堆積セル25の数の割合R(%)は、0(%)<R≦20(%)である。この割合Rは、7(%)以下であることが好ましい。この割合Rが0%を超え20%以下の範囲では、再生効率をより高めると共に圧力損失の上昇をより抑えることができる。この過堆積セル25は、
図3に示すように、ハニカムセグメント21の外周部に存在していてもよいし、中央部に存在していてもよいし、分散して存在していてもよい。また、過堆積セル25は、ハニカムフィルタ20の外周部に存在していてもよいし、中央部に存在していてもよいし、分散して存在していてもよい。このうち、過堆積セル25は、ハニカムセグメント21の外周部に存在することが好ましい。ここで、「外周部のセル」や「中央部のセル」は、セグメント又はハニカムフィルタの流路に直交する断面において、外側領域と中央側領域とに両領域の面積が同一になるように断面形状で分けたときに、外周側領域に存在するものを外周部のセル、中央側領域に存在するものを中央部のセルとしてもよい。
【0026】
ここで、過堆積セル25による効果について、
図5及び
図6を用いて説明する。この過堆積セル25は、例えば、
図5に示すように、ハニカムフィルタ20において、捕集層24がセル内全域に形成されている完全製膜セル23aの流路抵抗をR1とし、捕集層24がセル内の一部に形成されている過堆積セル25aの流路抵抗をR2とし、捕集層24がセル23内に形成されていない過堆積セル25bの流路抵抗をR3とすると、その序列は、R1>R2>R3となる。ここで、排ガスは流路抵抗の低い方へ流れると考えられるから、完全製膜セル23a及び過堆積セル25a,25bを流通する排ガスの流量をそれぞれQ1,Q2,Q3とすると、この排ガス流量の序列は、Q1<Q2<Q3となる。即ち、捕集層24が形成されていないほど隔壁部22を透過する排ガスの流量が増加する。単位体積あたりに含まれるPM量は略一定であり、排ガス流量が多いところがよりPM堆積量が大きいと考えられるから、完全製膜セル23a及び過堆積セル25a,25bの隔壁部22でのPM堆積量をそれぞれM1,M2,M3とすると、このPM堆積量の序列は、M1<M2<M3となる。即ち、捕集層24が形成されていないほどPM堆積量が多くなると推察される(
図6中段参照)。このような状態で、堆積したPMを燃焼除去する再生処理を実行すると、過堆積セル25でのPM燃焼により、再生処理直後では、過堆積セル25での温度上昇がより大きくなる。そして、過堆積セル25で上昇した温度が、近接するセル23にも伝播するため、ハニカムフィルタ20全体での温度上昇がより進み(
図6下段参照)、ひいてはPMの再生処理をより円滑に行うことができるのである。
【0027】
次に、過堆積セル25の検出方法について説明する。この過堆積セル25は、
図4に示す、レーザースモーク試験での相対輝度により検出することができる。レーザースモーク試験とは、ハニカムフィルタの一方の端面より香類の燃焼などにより発生した微粒子(煙)を加圧供給すると共に、他方の端面上に光を照射して端面から流れ出る微粒子を可視化する試験である。例えば、捕集層24が不完全であるセルでは、隔壁部22の透過抵抗が他のセルに比して低いことから、より多くの微粒子が端面から流出する。この端面上に光を照射すると、微粒子の数に応じて光の輝度が変化することから、光の輝度を検出して微粒子の数を推測し、この微粒子の流出が多い領域では捕集層24が不完全である、即ち過堆積セル25であるものと検出することができる。
図4に示すように、レーザースモーク検出器60は、線香61を固定した線香台62を内部空間に内包しハニカムフィルタ20を固定する設置台63と、設置台63の内部空間を加圧する加圧機構64と、ハニカムフィルタ20の上面から排出された煙に平面状の光を照射する光照射装置65と、ハニカムフィルタ20の状面上で発光する煙を撮影する撮影装置66と、光照射装置65及び撮影装置66が配設されたフード67と、を備えている。設置台63の上面には、煙をハニカムフィルタ20へ供給する供給口63aが形成されている。この装置において、微粒子源としては、例えば、粒径が0.3〜10μm程度の微粒子を発生可能なものが好ましく、具体的には、線香などの香類の燃焼や水などの溶媒の噴霧・蒸気化、炭酸カルシウムなどの微粒子の発塵を行うものなどが挙げられ、このうち線香がより好ましい。加圧機構64としては、加圧ポンプとしてもよい。光照射装置65は、微粒子により乱反射しやすい波長の指向性の高い光を照射可能なものが好ましく、例えば、半導体レーザーや色素レーザー、自由電子レーザーなどレーザー光を発光するものが好ましい。撮影装置66は、光が照射された煙の微粒子を撮影可能であれば特に限定されないが、例えば、光学カメラ、CCDやCMOSを備えたデジタルカメラやデジタルビデオなどとすることができる。なお、より細かな装置構成や試験条件などについては、特許第3904933号公報や特開2009−258090号公報などに詳しい。このレーザースモーク試験の実行手順について説明する。まず、本試験以外の方法にて、被検査対象であるハニカムフィルタ20の隔壁部22にクラックがないことを確認する。例えば、CTスキャンなどによりクラックの有無を確認することができる。この「クラック」とは、入口側セルと出口側セルとの間にある隔壁部にて、入口側セルと出口側セルとを貫通する担体軸方向、またはその垂直断面方向に存在し、PMの捕集性能に影響を及ぼす大きさの裂け目をいうものとする。続いて、設置台63内部の線香台62に、着火した線香61を固定すると共に、供給口63aの上にハニカムフィルタ20の各セル23が位置するようにハニカムフィルタ20の一方の端面を供給口63a上に固定する。このとき、ハニカムフィルタ20と設置台63との間から煙が漏れ出ないよう、図示しないシールを介してハニカムフィルタ20を配設する。次に、光照射装置65から照射された光がハニカムフィルタ20の一方の端面近傍(例えば3〜5mm上方)となるように、フード67を試験位置に固定する。なお、この試験位置において、フード67はハニカムフィルタ20に覆い被さる状態となり、ハニカムフィルタ20の端面から排出された煙の微粒子が攪拌されてしまうのを抑制する。続いて、線香61で発生した煙を加圧機構64によりハニカムフィルタ20のセル23へ供給し、他方の端面から流出した煙の微粒子に光照射装置65から光を照射して発光させ、この発光状態を撮影装置66で撮影する。他の領域よりも明るい領域が視認されると、その領域を過堆積セル25の領域であると検出することができる。なお、このレーザースモーク試験(可視化試験)において、微粒子は、隔壁部の平均細孔径に基づいて定められた平均粒径を有する微粒子、即ち、隔壁部に対する透過性に応じて選択される微粒子とする。また、加圧供給の条件は、ゲージ圧で1Pa以上10Pa以下となるように加圧して微粒子を供給する。また、相対輝度差が150cd/m
2以上を示すセルを過堆積セルとして検出するものとする。
【0028】
捕集層24の形成方法は、気体(空気)を捕集層の原料の搬送媒体とし、捕集層の原料を含む気体を入口側セルへ供給するものとしてもよい。こうすれば、捕集層を構成する粒子群がより粗に形成されるため、極めて高い気孔率の捕集層を作製することができ、好ましい。捕集層の原料は、例えば、無機繊維や無機粒子を用いてもよい。あるいは、無機繊維は上述したものを用いることができ、例えば平均粒径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であるものが好ましい。無機粒子としては、上述した無機材料の粒子を用いることができる。例えば、平均粒径が0.5μm以上15μm以下のSiC粒子やコージェライト粒子を用いることができる。この捕集層の原料は、隔壁部22の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有することが好ましい。このとき、隔壁部22と捕集層24との無機材料を同じ材質とすることが好ましい。また、無機粒子を含む気体を流入させる際に、気体の出口側を吸引することが好ましい。また、捕集層24の形成において、無機繊維や無機粒子と共に結合材も供給してもよい。結合材としてはゾル材料、コロイド材料から選択でき特にコロイダルシリカを用いることが好ましい。無機粒子はシリカにより被覆されており且つ無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とがシリカにより結合されていることが好ましい。例えば、コージェライトやチタン酸アルミニウムなどの酸化物材料の場合には、無機粒子同士、及び無機粒子と隔壁部の材料とが焼結により結合されているのが好ましい。ここで、過堆積セル25は、例えばハニカムセグメントを製膜する際のチャッキング治具を利用して捕集層の製膜時の入口面におけるセグメント外周付近の任意のセルを塞ぐことにより形成してもよい。あるいは、過堆積セル25は、予め任意のセルの入口をシール材(シールテープなど)により封じることにより形成してもよい。このように、予め任意のセルの入口から捕集層の原料を流入しにくいようにすれば、過堆積セル25の作製が容易であり好ましい。捕集層24は、隔壁部22上に原料の層を形成したあと、熱処理を行い結合することが好ましい。熱処理での温度としては、例えば650℃以上1350℃以下の温度とするのが好ましい。熱処理温度が650℃以上では十分な結合力を確保することができ、1350℃以下であると過度な粒子の酸化による細孔の閉塞を抑制することができる。なお、捕集層24の形成方法は、例えば、捕集層24の原料になる無機粒子を含むスラリーを用いてセル23の表面に形成するものとしてもよい。
【0029】
接合層27は、ハニカムセグメント21を接合する層であり、無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。無機粒子は、上述した無機材料の粒子とすることができ、その平均粒径は0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。無機繊維は、上述したものとしてもよく、例えば平均粒径が0.5μm以上8μm以下、平均長さが100μm以上500μm以下であることが好ましい。結合材としてはコロイダルシリカや粘土などとすることができる。接合層27は、0.5mm以上2mm以下の範囲で形成されていることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)をいうものとする。外周保護部28は、ハニカムフィルタ20の外周を保護する層であり、上述した無機粒子、無機繊維及び結合材などを含むものとしてもよい。
【0030】
ハニカムフィルタ20において、40℃〜800℃におけるセル23の通過孔方向の熱膨張係数は、6.0×10
-6/℃以下であることが好ましく、1.0×10
-6/℃以下であることがより好ましく、0.8×10
-6/℃以下であることが更に好ましい。この熱膨張係数が6.0×10
-6/℃以下であると、高温の排気に晒された際に発生する熱応力を許容範囲内に抑えることができる。
【0031】
ハニカムフィルタ20において、隔壁部22や捕集層24は、触媒を含むものとしてもよい。この触媒は、捕集されたPMの燃焼を促進する触媒、排ガスに含まれる未燃焼ガス(HCやCOなど)を酸化する触媒及びNO
Xを吸蔵/吸着/分解する触媒のうち少なくとも1種以上としてもよい。こうすれば、PMを効率よく除去することや未燃焼ガスを効率よく酸化することやNO
Xを効率よく分解することなどができる。この触媒としては、例えば、貴金属元素、遷移金属元素を1種以上含むものとするのがより好ましい。また、ハニカムフィルタ20では、他の触媒や浄化材が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)などを含むNO
x吸蔵触媒、少なくとも1種の希土類金属、遷移金属、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が挙げられる。具体的には、貴金属としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)や、金(Au)及び銀(Ag)などが挙げられる。触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sc,Ti,V,Cr等が挙げられる。また、希土類金属としては、例えば、Sm,Gd,Nd,Y,La,Pr等が挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg,Ca,Sr,Ba等が挙げられる。このうち、白金及びパラジウムがより好ましい。また、貴金属及び遷移金属、助触媒などは、比表面積の大きな担体に担持してもよい。担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライトなどを用いることができる。PMの燃焼を促進する触媒を有するものとすれば、捕集層24上に捕集されたPMをより容易に除去することができるし、未燃焼ガスを酸化する触媒やNO
Xを分解する触媒を有するものとすれば、排ガスをより浄化することができる。
【0032】
以上説明した実施形態のハニカムフィルタによれば、セルの一部に、流路抵抗が小さく、固体成分がより多く堆積する過堆積セル25が存在しており、この過堆積セル25での固体成分の燃焼が他のセルに対する着火点の役割を果たすため、捕集した固体成分をより効率的に除去することができる。ここで、例えば、車両に搭載したエンジンに配設されたハニカムフィルタ20では、車両の走行状態によって再生処理時の排ガス温度が上下しやすい。このような場合において、本発明のハニカムフィルタ20では、排ガスの温度が下がった場合などでも過堆積セル25の存在によって温度が上がりやすいため、特に排ガスの温度が上下するとその効果が積算して現れるから、過堆積セル25を有さないハニカムフィルタに比して、極めて効率的に固形成分を除去することができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0034】
例えば、上述した実施形態では、ハニカムセグメント21を接合層27により接合したハニカムフィルタ20としたが、
図7に示すように、一体成形されたハニカムフィルタ40としてもよい。ハニカムフィルタ40において、隔壁部42、セル43、捕集層44、過堆積セル45及び目封止部46などは、ハニカムフィルタ20の隔壁部22、セル23、捕集層24、過堆積セル25及び目封止部26と同様の構成とすることができる。こうしても、PMをより多く捕集している過堆積セル45によって、捕集したPMをより効率的に除去することができる。
【0035】
上述した実施形態では、ハニカムフィルタ20には触媒が含まれるものとしたが、流通する流体に含まれる除去対象物質を浄化処理可能なものであれば特にこれに限定されない。あるいは、ハニカムフィルタ20は、触媒を含まないものとしてもよい。また、排ガスに含まれるPMを捕集するハニカムフィルタ20として説明したが、流体に含まれる固体成分を捕集・除去するものであれば特にこれに限定されず、建設機器の動力エンジン用のハニカムフィルタとしてもよいし、工場や発電所用のハニカムフィルタとしてもよい。
【実施例】
【0036】
以下には、ハニカムフィルタを具体的に製造した例を実施例として説明する。ここでは、複数のハニカムセグメントを接合した構造のハニカムフィルタを作製した。
【0037】
[ハニカムフィルタの作製]
SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形した。ここでは、隔壁部の厚さが305μm、セルピッチが1.47mm、断面が35mm×35mm、長さが152mmの形状に成形した。次に、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波により乾燥させ、更に熱風にて乾燥させた後、目封止をして、酸化雰囲気において550℃、3時間で仮焼きした後に、不活性雰囲気下にて1400℃、2時間の条件で本焼成を行った。目封止部の形成は、セグメント成形体の一方の端面のセル開口部に交互にマスクを施し、マスクした端面をSiC原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、開口部と目封止部とが交互に配設されるように行った。また、他方の端面にも同様にマスクを施し、一方が開口し他方が目封止されたセルと一方が目封止され他方が開口したセルとが交互に配設されるように目封止部を形成した。得られたハニカムセグメント焼成体の排ガス流入側の開口端部より、隔壁の平均細孔径よりも小さい平均粒径を有するSiC粒子を含む空気を流入させ、且つハニカムセグメントの流出側より吸引しながら、排ガス流入側の隔壁の表層に堆積させた。この際に、所定位置及び所定数のセルの入口をシーリングし、過堆積セルを意図的に形成させた。次に、大気雰囲気下にて1300℃、2時間の条件の熱処理により、隔壁の表層に堆積させたSiC粒子同士、及び堆積させたSiC粒子と隔壁を構成するSiC及びSi粒子と結合させた。このように、隔壁部上に捕集層を形成したハニカムセグメントを作製した。なお、この熱処理によってセル入口のシーリングが燃焼除去された。このようにして得られたハニカムセグメントの側面に、アルミナシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、炭化珪素、および水を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角形状のハニカムセグメント接合体を得た。さらに、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周囲を、接合用スラリーと同等の材料からなる外周コート用スラリーで被覆し、乾燥により硬化させることにより所望の形状、セグメント形状、セル構造を有する円柱形状のハニカムフィルタを得た。ここでは、ハニカムフィルタは、断面の直径が143.8mm、長さが152.4mm、容積が2.5Lの形状とした。また、後述する実施例1〜30及び比較例1〜10の隔壁部の気孔率は40体積%であり、平均細孔径は15μmであり、捕集層を形成する粒子の平均粒径は2.0μmであった。なお、隔壁部の気孔率及び平均細孔径は水銀ポロシメータ(Micromeritics社製Auto PoreIII型式9405)を用いて測定した。また、捕集層の原料粒子の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−910)を用い、水を分散媒として測定したメディアン径(D50)である。
【0038】
[触媒担持]
まず、重量比でアルミナ:白金:セリア系材料=7:0.5:2.5とし、セリア系材料を重量比でCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5とした原料を混合し、溶媒を水とした触媒のスラリーを調製した。次に、ハニカムセグメントの出口端面(排ガスが流出する側)を所定の高さまで浸漬させ、入口端面(排ガスが流入する側)より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定時間にわたって吸引し、隔壁に触媒を担持し、120℃2時間で乾燥させた後、550℃1時間で焼付けを行った。ハニカムフィルタの単位体積当たりの触媒量は、30g/Lとなるようにした。
【0039】
(比較例1)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を46.5セル/cm
2とし、セルの入口をシーリングせず、すべてのセルに捕集層を形成したもの(完全製膜したもの)を比較例1とした。
【0040】
(実施例1〜6)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を46.5セル/cm
2とし、ハニカムフィルタの外周部の1つのセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものを実施例1とした。この実施例1では、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rは、0.7%であった。また、上述したハニカムフィルタの作製工程において、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rがそれぞれ3.5%、6.9%、10.4%、13.9%及び20.0%となるようにハニカムフィルタの外周部のセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものをそれぞれ実施例2〜6とした。
【0041】
(比較例2)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を46.5セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rが27.8%となるようにハニカムフィルタの外周部のセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものを比較例2とした。
【0042】
(実施例7〜12)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を46.5セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rがそれぞれ0.7%、3.5%、6.9%、10.4%、13.9%及び20.0%となるようにハニカムフィルタの中央部のセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものをそれぞれ実施例7〜12とした。
【0043】
(比較例3)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を46.5セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rが27.8%となるようにハニカムフィルタの中央部のセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものを比較例3とした。
【0044】
(実施例13〜18)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を46.5セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rがそれぞれ0.7%、3.5%、6.9%、10.4%、13.9%及び20.0%となるようにハニカムフィルタにおいてランダムに分散したセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものをそれぞれ実施例13〜18とした。
【0045】
(比較例4)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を46.5セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rが27.8%となるようにハニカムフィルタにおいてランダムに分散したセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものを比較例4とした。
【0046】
(比較例5)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を23.3セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rが0%となるように全体のセルに捕集層を形成したもの(完全製膜したもの)を比較例5とした。
【0047】
(実施例19〜24)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を23.3セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rがそれぞれ3.7%、9.9%及び19.8%となるようにハニカムフィルタの外周部のセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものをそれぞれ実施例19〜21とした。また、上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を23.3セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rがそれぞれ3.7%、10.4%及び20.0%となるようにハニカムフィルタにおいてランダムに分散したセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものをそれぞれ実施例22〜24とした。
【0048】
(比較例6,7)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を23.3セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rが28.4%となるようにハニカムフィルタの外周部のセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものを比較例6とした。また、上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を23.3セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rが28.4%となるようにハニカムフィルタにおいてランダムに分散したセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものを比較例7とした。
【0049】
(比較例8)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を54.3セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rが0%となるように全体のセルに捕集層を形成したもの(完全製膜したもの)を比較例8とした。
【0050】
(実施例25〜30)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を54.3セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rがそれぞれ3.6%、10.5%及び19.9%となるようにハニカムフィルタの外周部のセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものをそれぞれ実施例25〜27とした。また、上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を54.3セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rがそれぞれ3.5%、10.4%及び20.0%となるようにハニカムフィルタにおいてランダムに分散したセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものをそれぞれ実施例28〜30とした。
【0051】
(比較例9,10)
上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を54.3セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rが27.7%となるようにハニカムフィルタの外周部のセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものを比較例9とした。また、上述したハニカムフィルタの作製工程において、セル密度を54.3セル/cm
2とし、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合Rが27.7%となるようにハニカムフィルタにおいてランダムに分散したセルの入口をシーリングし、他のセルに捕集層を形成したものを比較例10とした。
【0052】
[不完全捕集層形成セルの作製]
上述した実施例では、捕集層を形成しない過堆積セルについて検討したが、セルの領域のうち流路方向に対して一部領域に捕集層が形成されていない未製膜領域を有する不完全捕集層形成セルを過堆積セルとして検討した。流路方向に対して、下流側に未製膜領域を形成する場合、そのセルの未製膜領域以降の部分に、例えば脱脂綿にて栓をした状態で捕集層の製膜を実施する。また、上流に未製膜領域を形成する場合には、あとで製膜をする部分を脱脂綿にて栓をしておき、他の全セルに対してマスキングを施しておき、脱脂綿にて栓をしたセルにのみ樹脂を流し込み、マスキングを外して乾燥固化させたあと、捕集層の製膜を行い、製膜粒子の熱処理による粒子結合の際に樹脂の焼き飛ばしを行った。結果、樹脂をコーティングされた部位はその透過抵抗により、製膜時に捕集層が形成されないため、未製膜領域となった。中流のみに未製膜部を形成する際は上記の両方の作業を行うことで未製膜領域を形成することができる。次に、上流、中流、下流のそれぞれにおいて、未製膜領域の大きさを変化させ、未製膜領域の大きさと相対輝度差との関係を調べたところ、未製膜領域が同じであれば相対輝度差も同じである事を確認した。このため、不完全捕集層形成セルの配置を評価では、下流部に未製膜領域を形成したハニカムフィルタについて検討した。
【0053】
(実施例31,32)
実施例6と同じ配置に不完全セルを形成し、過堆積セルの割合が20.0%、セルの全体の長さに対して20%(長さ30mm)となるよう上流に未製膜領域を形成した以外は、実施例6と同様の工程を経て得られたものを実施例31とした。また、実施例12と同じ配置に不完全セルを形成し、過堆積セルの割合が20.0%、セルの全体の長さに対して40%(長さ60mm)となるよう上流に未製膜領域を形成した以外は、実施例12と同様の工程を経て得られたものを実施例32とした。
【0054】
(圧力損失試験)
上記作製したハニカムフィルタをエンジンベンチにて2.0Lディーゼルエンジンの排気系に取り付け、回転数2000rpm、トルク60Nmの定常状態にて、ハニカムフィルタの外形体積に対するPM堆積量が6.0(g/L)の時の圧力損失値を測定した。測定結果は、比較例1を100としたときの圧力上昇割合として算出した。
【0055】
(再生効率試験)
上記作製したハニカムフィルタをエンジンベンチにて2.0Lディーゼルエンジンの排気系に取り付けて運転し、ハニカムフィルタのPM堆積量を6.0(g/L)とした。このあと、図
8に示す熱サイクルをかけてハニカムフィルタの再生を行い、ハニカムフィルタの再生前後の重量変化からPMの燃焼効率(再生効率)を評価した。再生効率は、再生処理前のPM堆積量と再生処理後のPM残存量とを計測することで、再生によるPM燃焼量を計算し、再生処理前のPM堆積量に対して再生処理で燃焼したPM量の割合として算出した。図
8は、再生処理時の熱サイクルの説明図である。ここでは、550℃から650℃へ昇温させたあと550℃へ降温するのを200秒で行うサイクルを5サイクル行った。再生効率試験は、測温位置をハニカムフィルタの入口端面から20mm手前としたときの排ガス温度が600℃となる条件で行った。
【0056】
(レーザースモーク試験)
上記作製したハニカムフィルタを用いてレーザースモーク試験を行った。まず、上記作成したハニカムフィルタに対して、CTスキャン装置(東芝製Aquilion TXS−101A)を用いて排ガス流通方向に直交する断面のCTスキャン画像を連続的に撮影し、クラックの有無を検査した。各サンプルでクラックがないことを確認したあと、レーザースモーク試験を行った。この試験では、線香の煙を微粒子(平均粒径1〜10μm)としてポンプで加圧して(1〜30Pa)ハニカムフィルタへ供給すると共に、端面の上方3mmに半導体レーザーによるスリット光を照射し、CCDカメラにより画像を撮影し得られた画像を解析した。その結果、作製したセル状態、例えば完全に製膜したものについては輝度の違う領域は検出されず、外周側に過堆積セル25を設けたものについては、その領域で輝度の高い領域が確認されるという、作製した状態と同じ検出結果がすべてのサンプルで得られた。即ち、捕集層が形成されていないセル及び捕集層が不完全に形成されているセル(過堆積セル)では、完全に捕集層が形成されているセルのうち最も低い輝度との差である相対輝度差が150cd/m
2以上であった。なお、加圧条件は、ゲージ圧(差圧)で10Paに固定して行った。また、微粒子は、隔壁部の平均細孔径が15μmであり、捕集層が形成されていれば透過しにくいと推察される粒径1〜10μmの上記線香の煙を選択した。
【0057】
(実験結果)
実施例1〜18及び比較例1〜4のセル状態、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合R(%)、再生効率(%)、比較例1に対する圧力上昇割合(%)をまとめて表1に示す。また、実施例19〜24及び比較例5〜7のセル状態、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合R(%)、再生効率(%)、比較例5に対する圧力上昇割合(%)をまとめて表2に示す。また、実施例25〜30及び比較例8〜10のセル状態、全体のセル数に対する過堆積セル数の割合R(%)、再生効率(%)、比較例8に対する圧力上昇割合(%)をまとめて表3に示す。また、図
9は、実施例1〜30及び比較例1〜10の、過堆積セルの割合Rに対する再生効率及び圧力損失の関係を表す図である。表1〜3及び図
9から明らかなように、過堆積セル数が増えるにしたがって、再生効率が向上することがわかった。これは、過堆積セルに多く堆積したPMが再生処理時の着火点となり、再生効率が高まったものと推察された。一方、過堆積セルの増加に伴い、圧力損失の増加が認められた。過堆積セルがハニカムセグメントの全体のセル数に対して20%以下の範囲であれば、圧力損失の上昇割合が5%未満であり、捕集層を設けることによる圧力損失の上昇を抑える効果が得られているものと推察された。しかしながら、過堆積セルの割合Rが20%を超えると、再生効率は変化しないが、圧力損失の上昇が顕著になることがわかった。以上の結果より、ハニカムセグメント内に過堆積セルが1個以上存在し、割合Rが20%以下の範囲では、捕集層による圧力損失の抑制効果を損なうことなく、ハニカムフィルタの再生効率を向上させることができることがわかった。また、実施例19〜30に示すように、セル密度が変わっても、同様の傾向が得られることがわかった。
【0058】
また、不完全捕集層形成セルを形成した実施例31,32については、測定結果を表1に示した。実施例32は、再生効率87%、圧力上昇割合が3.1%であった。また、実施例32は、再生効率が84%、圧損上昇が3.7%であった。不完全捕集層形成セルが形成されたハニカムフィルタにおいても、捕集層がないセルと同様の結果が得られた。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
本出願は、2010年3月31日に出願された日本国特許出願第2010−81897号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、自動車用、建設機械用及び産業用の定置エンジン並びに燃焼機器等から排出される排ガスを浄化するためのフィルターとして好適に使用することができる。