(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のある実施の形態によれば、電気二重層キャパシタ用電極は微小孔性炭素を含み、この微小孔性炭素は、少なくとも0.3cm
3/gの総細孔容積を与える1nm以下のサイズを有する細孔、少なくとも0.05cm
3/gの総細孔容積を与える1nmから2nmのサイズを有する細孔、および0.15cm
3/g未満の総細孔容積を与える2nm超のサイズを有する任意の孔を含む。
【0012】
ここに定義したように、微小規模の細孔は2nm以下の細孔径を有する。中規模の細孔は2から50nmに及ぶ細孔径を有する。大規模な細孔は50nm超の細孔径を有する。ある実施の形態において、活性炭は、大多数の微小規模の細孔を含む。ここに用いたように、「微小孔性炭素」という用語およびその派生語は、大多数(すなわち、少なくとも50%)の微小規模の細孔を有する活性炭を意味する。微小孔性の活性炭材料は、50%超の微小孔率(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95%超の微小孔率)を有し得る。前記方法を使用して製造される炭素材料は、約300m
2/gより大きい、すなわち、300、350、400、500または1000m
2/gより大きい比表面積を有し得る。一例として、微小孔性炭素材料は、2500m
2/g未満、すなわち、2500、2000、1500、1200または1000m
2/g未満の比表面積を有し得る。
【0013】
炭素系電極を備えたEDLCの性能は、炭素の性能に緊密に関連し得る。特に、合計した利用可能な気孔率および細孔径分布が、EDLC性能に影響し得る。一般に、電解質イオンが炭素材料の内面に到達するには、相当な量のメソ細孔が必要であると考えられてきた。本開示において、メソ細孔がほとんどない主に微小孔性である活性炭が、相当な量のメソ細孔を有する市販の炭素よりも著しく高い、EDLCの容積比静電容量および優れた性能を示すことが実証される。この利点は、ここに開示された炭素材料の特有の細孔径分布によるものである。
【0014】
実施の形態によれば、EDLC用の炭素系電極は、0.4cm
3/g超(例えば、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65または0.7cm
3/g超)の全気孔率を有する活性炭材料からなる。全細孔容積の微小細孔(d≦2nm)から生じる部分は95%以上(例えば、少なくとも95、96、97、98または99%)であり得、全細孔容積の超微小細孔(d≦1nm)から生じる部分は、60%以上(例えば、少なくとも60、65、70、75、80、85、90または95%)であり得る。活性炭の細孔径分布は、超微小細孔、微小細孔、メソ細孔およびマクロ細孔を含んで差し支えなく、一峰性、二峰性または多峰性の細孔径分布を有するものとして特徴付けられるであろう。超微小細孔は、全細孔容積の0.3cm
3/g以上(例えば、0.4cm
3/g以上)を構成する。1<d≦2nmの範囲に細孔径(d)を有する細孔は、全細孔容積の0.05cm
3/g以上(例えば、少なくとも0.1、0.15、0.2または0.25cm
3/g)を構成する。メソ細孔および/またはマクロ細孔を含んでよい、2nm超の細孔径を有する細孔は、もし存在すれば、全細孔容積の0.15cm
3/g以下(例えば、0.1または0.04cm
3/g未満)を構成し得る。
【0015】
様々な実施の形態において、微小孔性活性炭は、リグノセルロースまたは非リグノセルロース炭素前駆体から形成できる。活性炭材料を製造するための例示の方法は、不活性または還元性雰囲気中で天然の非リグノセルロース炭素前駆体を加熱して、第1の炭素材料を形成し;この第1の炭素材料を無機化合物と混合して、水性混合物を形成し;不活性または還元性雰囲気中で水性混合物を加熱して、無機化合物を第1の炭素材料中に含ませ;第1の炭素材料から無機化合物を除去して、微小孔性炭素材料を製造する各工程を有してなる。
【0016】
先の例において、天然の非リグノセルロース炭素前駆体は、前駆体材料を炭化させるのに効果的な温度で加熱することができる。例示の炭化温度は、約450℃超(例えば、少なくとも450、500、550、600、650、700、750、800、850または900℃)である。炭素前駆体の炭化中に使用される不活性または還元性雰囲気は、水素、窒素、アンモニア、ヘリウムたまはアルゴンの内の1種類以上のガスまたはガス混合物を含み得る。
【0017】
炭素前駆体の炭化後に、その結果生じた第1の炭素材料を、無機化学活性化剤と混合することができる。第1の炭素材料を活性化させるのに使用される無機化合物としては、アルカリ水酸化物または塩化物(例えば、NaOH、KOH、NaCl、KCl)、リン酸、またはCaCl
2やZnCl
2などの他の適切な塩が挙げられる。
【0018】
第1の炭素材料および無機化合物は、どのような適切な比率で組み合わせても差し支えない。第1の炭素材料の無機化合物に対する比率(質量%/質量%)は、約10:1から1:10(例えば、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8または1:9)に及び得る。
【0019】
混合する工程が、第1の炭素材料を無機化合物の水性混合物と混合する工程を含み得ることが都合よい。混合中、無機化合物は、第1の炭素材料と、均質にまたは実質的に均質に混合され得る。ある手法において、無機化合物は最初に、水などの溶媒中に溶解させられる。次いで、無機化合物を含む溶液が第1の炭素材料と混ぜ合わされ、その結果得られる混合物を、無機化合物の第1の炭素材料との完全な混合を可能にするのに効果的な時間に亘り熟成させても差し支えない。一例として、混合物を、0.5、1、2、4、8時間以上(例えば、0.5から8時間)に亘り熟成させても差し支えない。
【0020】
無機化合物を第1の炭素材料と混合し、必要に応じて、熟成させた後、その混合物を、無機化合物を第1の炭素材料中に含ませるのに効果的な温度で加熱する。炭素を活性化させるために、混合物を所定の時間(例えば、0.5、1、2、4、8時間以上)に亘り不活性または還元性雰囲気中で約300℃から1000℃の温度で加熱して差し支えない。
【0021】
炭化/活性化後、活性炭生成物を洗浄して、無機化合物と、無機化合物を含む反応に由来する任意の化学種との両方を除去し、乾燥させ、必要に応じて、粉砕して、気孔率が実質的に均一に分布する材料を生成することができる。
【0022】
無機化合物を抽出するための好ましい溶媒は水である。必要に応じて、抽出溶媒は酸を含んでも差し支えない。無機化合物を除去するための1つのプロセスは、活性炭材料を水および酸で連続的に濯ぐ工程を含む。無機化合物を除去するための別のプロセスは、活性炭材料を水性酸混合物(例えば、酸と水の混合物)で濯ぐ工程を含む。抽出中に使用される酸としては、塩化水素酸が挙げられる。無機化合物を抽出するプロセスにより、微小孔性活性炭材料が形成され、その細孔は、無機化合物により以前に充填された容積により画成される。
【0023】
ウルトラ・キャパシタの性能(エネルギー密度および出力密度)は、主に、電極を構成する活性炭材料の性質に依存する。先の方法にしたがって形成される活性炭を使用して、経済的に実行可能な高出力かつ高エネルギー密度の装置用の炭素系電極を形成することができる。次には、活性炭材料の性質は、その材料の気孔率と細孔径分布、窒素含有量、酸素含有量、炭素原子の構造規則性(structural order)、および炭素系電極に含まれたときの活性炭材料の電気的性質を評価することによって、計ることができる。関連する電気的性質としては、面積比抵抗、および比静電容量が挙げられる。
【0024】
微小孔性活性炭材料は、0.1質量%超で、例えば、約5質量%ほど大きい(例えば、0.1、0.2、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5質量%超)窒素含有量を有し得る。例えば、非リグノセルロース前駆体由来の微小孔性活性炭材料は、樹脂由来活性炭の窒素含有量より多い窒素含有量を有し得る。理論により拘束することを意図するものではないが、活性炭に窒素を含ませると、抵抗が減少し、静電容量が増し、したがって、EDLCなどの電気化学電池における炭素系電極の形態で使用されるときのそのような活性炭の有効性が改善されると考えられる。ここに開示されたプロセスにおいて、窒素は、都合よくは追加の処理工程を必要とせずに、炭化/活性化の最中に微小孔性活性炭材料中に含ませることができる。
【0025】
必要に応じて、微小孔性活性炭中の酸素含有量は、不活性または還元性雰囲気中で微小孔性活性炭材料を加熱することによって、減少させて、低酸素含有量の微小孔性活性炭材料を形成することができる。この酸素含有量を減少させる熱処理工程は、不活性または還元性雰囲気中の微小孔性活性炭を、活性炭中の酸素含有量を減少させるのに効果的な温度に加熱する工程を含む。
【0026】
活性炭中の酸素含有量を減少させるために不活性または還元性ガスと共に使用できる炉の温度は、約200℃から1200℃に及ぶ(例えば、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150または1200℃)。適切な不活性ガスとしては、窒素(N
2)およびアルゴン(Ar)が挙げられる。実施の形態において、還元性ガスとしては、水素(H
2)、アンモニア(NH
3)または水素と窒素を含むガス混合物(すなわち、フォーミングガス)が挙げられる。ガス混合物中の水素含有量は6%以下(例えば、6、5、4、3、2、または1%未満のH
2)であり得る。実施の形態によれば、低酸素含有量の微小孔性活性炭材料は、5質量%未満(例えば、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1または0.5質量%未満)の酸素含有量を有する。
【0027】
選ばれたサンプルの窒素含有量(質量%)は、ThermoFlash分析器を使用して決定した。この技法は、熱伝導度検出(TCD)を使用する古典的なデュマ法(Dumas method)であり、ASTM D5373およびASTM D5291により説明されている。秤量したサンプルを950℃で酸素中において燃焼させる。燃焼生成物(N
2およびNO
xを含む)をヘリウム搬送ガスにより掃引して、燃焼触媒、スクラバーに通し、還元銅が充填された管に通す。銅は、過剰の酸素を除去し、NO
xをN
2に還元する。次いで、N
2をクロマトグラフィーカラムで他のガスから分離し、TCDにより測定する。酸素含有量(質量%)は、ASTM D5622(Huffman Laboratories, Inc.)にしたがって測定する。
【0028】
小角X線回折(XRD)を使用して、粉末サンプルから炭素構造規則性を決定できる。XRDのサンプルを調製するために、粉末活性炭材料を瑪瑙乳鉢内で乳棒により軽く粉砕する。粉砕したサンプルをBruker−AXS粉末サンプルホルダ中に圧入する。0.02度のステップ角および1秒間の滞留時間で0.5〜20度の2シータ角度範囲に亘り、Bruker−AXS D4 Endeavor X線回折計において、銅K
α線(1.5406Å)を使用して、X線回折結果を得る。
【0029】
炭素構造比は、60ÅでのX線反射の正規化強度として計算される。詳しくは、60Åの面間隔dでの回折ビームの強度(I
60)を、176Åの面間隔dでの強度(I
176)と、15Åの面間隔dでの強度(I
15)での強度との正の差で割る。それゆえ、炭素の構造的規則性比は、SOR=I
60/|(I
176−I
15)|としてここに定義される。
【0030】
ある実施の形態において、例えば、非リグノセルロース炭素前駆体を炭化させ、活性化させることによって、導かれた活性炭材料は、0.08以下の構造規則性比、0.1質量%超の窒素含有量、および3質量%未満の酸素含有量を有する。活性炭材料の追加の態様が、ここに内容を引用する、同一出願人による米国特許出願第12/335044号明細書に開示されている。
【0031】
微小孔性活性炭は、一度形成されたら、炭素系電極に組み込むことができる。典型的な電気二重層キャパシタ(EDLC)において、一対の炭素系電極が多孔質セパレータにより隔てられ、電極/セパレータ/電極の積層体に液体の有機または無機電解質を浸み込ませる。これらの電極には、他の添加剤(例えば、結合剤)と混合され、薄板に圧縮され、導電性金属集電装置基材にされた活性炭粉末が含まれる。
【0032】
炭素系電極を製造する方法の1つは、不活性または還元性雰囲気中で適切な炭素前駆体を加熱して、第1の炭素材料を形成し;この第1の炭素材料を無機化合物と混合して、水性混合物を形成し;不活性または還元性雰囲気中で水性混合物を加熱して、無機化合物を第1の炭素材料中に含ませ;第1の炭素材料から無機化合物を除去して、微小孔性炭素材料を製造し;必要に応じて、不活性または還元性雰囲気中で微小孔性炭素材料を加熱して、活性炭中の酸素含有量を減少させ;その活性炭から炭素系電極を形成する各工程を有してなる。
【0033】
一例として、約100〜300マイクロメートルの範囲の厚さを有するカーボン紙は、60〜90質量%の微小孔性活性炭、5〜20質量%のカーボンブラックおよび5〜20質量%のPTFEからなる粉末混合物を圧延し、加圧することによって調製できる。カーボンシートをカーボン紙から打刻するかまたは別のやり方で模様をつけ、導電性集電装置に積層して、炭素系電極を形成することができる。この炭素系電極は、エネルギー蓄積装置中に組み込むことができる。使用中、電気二重層は、対向する電極上に蓄積する電荷により形成し得る。電気二重層中に蓄積される電荷の量は、キャパシタの達成できるエネルギー密度および出力密度に影響を与える。
【0034】
ある実施の形態によれば、電気化学電池は、微小孔性活性炭材料からなる第1の電極、多孔質セパレータ、および一対の導電性基板を含み、多孔質セパレータは、第1の電極と第2の電極の間に配置され、この第1と第2の電極は各々、それぞれの導電性基板と電気的に接触している。必要に応じて、第2の電極は、微小孔性活性炭材料からなっていても差し支えない。
【0035】
微小孔性活性炭材料の電気的性質(例えば、体積当たりの静電容量および重量当たりの静電容量)は、炭素系電極の特徴を測定することによって評価できる。ここに評価される炭素系電極は、85質量%の活性炭材料、5質量%の導電性カーボン(例えば、マサチューセッツ州、ボストン所在のCabot Corporationにより市販されているBlack Pearls(登録商標))、および10質量%のテフロン(登録商標)(PTFE)を含む。ボタン電池は、電極材料のシートから0.625インチ(約1.59cm)の直径を有する炭素電極を打ち抜くことによって形成できる。セパレータが同一の炭素電極間に配置され、次に、これらの電極は、2つの導電性カーボン被覆アルミニウム集電装置の間に挟まれている。電子を密閉するために、炭素電極の外周に熱硬化性ポリマー製リングが形成され、この電池には、アセトニトリル中1.5Mのテトラエチルアンモニウム−テトラフルオロボラート(TEA−TFB)などの有機電解質が充填されている。
【0036】
電池の静電容量(C
cell)は、定電流放電から測定される。電池は、最初に、所望の電位(例えば、2.7V)まで定電流で充電され(i
charge)、その後、定電流放電が続く(i
discharge)。オームの法則にしたがって、キャパシタ電流(i)は:
【数1】
【0037】
(式中、Cは静電容量であり、Vは電池の電圧(ボルトで表される)であり、tは時間(秒で表される)である)
にしたがってキャパシタ電圧の時間微分に比例する。
【0038】
次いで、定電流放電曲線(電池の電圧対時間)から勾配を測定することによって、電池の静電容量(ファラッドで表される)を:
【数2】
【0040】
電池の静電容量は、各炭素電極(連続したキャパシタ)の電気化学二重層静電容量により表される2つの個別の静電容量の逆数の和である。この関係は:
【数3】
【0041】
(式中、C
1およびC
2は、電池中の個別の炭素電極の二重層静電容量である。)
として表すことができる。
【0042】
これらの静電容量の大きさは:
【数4】
【数5】
【0043】
(式中、C
sp,1およびC
sp,2は、個別の炭素電極の比静電容量(F/cm
3で表される)であり、V
1およびV
2は対応する電極体積である。)
として炭素電極の体積当たりの比静電容量に関連付けられる。試験される電池は、同じサイズと組成を有する電極を使用するので、C
1=C
2、C
sp,1=C
sp,2(=Csp)およびV
1=V
2(=V
total/2、式中、V
totalは、電池中の炭素電極の全容積(cm
3)である)。式(3)、(4)および(5)を組み合わせて、
【数6】
【0045】
として、容積静電容量C
spを得ることができる。
【0046】
エネルギー蓄積装置はウルトラ・キャパシタを含み得る。ウルトラ・キャパシタは、ゼリーロール型、角柱型、ハニカム型、または他の適切な構造を有し得る。炭素系電極は、炭素・炭素型ウルトラ・キャパシタまたはハイブリッド式ウルトラ・キャパシタに組み込むことができる。炭素・炭素型ウルトラ・キャパシタにおいて、電極は両方とも炭素系電極である。ハイブリッド式ウルトラ・キャパシタにおいて、一方の電極は炭素系であり、他方の電極は、酸化鉛、酸化ルテニウム、水酸化ニッケルなどの擬似容量性材料、または導電性ポリマー(例えば、パラフルオロフェニルチオフェン)などの別の材料であり得る。活性炭は、エネルギー蓄積装置への使用以外に、触媒担体として、または吸着/濾過のための媒体として使用しても差し支えない。
【0047】
非リグノセルロース前駆体を使用して製造される微小孔性活性炭は、主要な市販の炭素と比べて、EDLCにおいて著しく大きいエネルギー蓄積容量を提供する。例えば、本開示による微小孔性活性炭が、カーボンブラックおよびPTFEも含む炭素系電極中に組み込まれた場合、重量比静電容量が100F/g超(例えば、110、120、130、140、150、160、170または180F/g)であり、容積比静電容量が70F/cm
3超(例えば、70、75、80、85、90、92、94、96、98または100F/cm
3)である。
【0048】
ここに用いたように、別に明白に定義されていない限り、「天然の非リグノセルロース炭素前駆体」は、少なくとも1種類の天然の非リグノセルロース炭素前駆体を意味する。セルロースおよびリグニンの両方を含有する物質が、リグノセルロースであり、例えば、リグニンに緊密に関連するセルロースを有する植物の木質細胞壁の主要部分を構成するいくつかの非常に密接な物質のいずれも含み得る。非リグノセルロース炭素前駆体は、リグニンおよびセルロースの少なくとも一方を実質的に含まない。実質的に含まないとは、リグニンおよびセルロースの少なくとも一方が、例えば、炭素前駆体の組成の多くとも0.5、1または2質量%しか構成しないことを意味する。
【0049】
ある実施の形態において、天然の非リグノセルロース炭素前駆体は、セルロースを含有し、リグニンを実質的に含まない。さらに別の実施の形態において、天然の非リグノセルロース炭素前駆体は、リグニンを含有するが、セルロースを実質的に含まない。さらに別の実施の形態において、天然の非リグノセルロース炭素前駆体は、リグニンおよびセルロースの両方を実質的に含まない。天然の非リグノセルロース炭素前駆体は、合成樹脂などの合成材料ではない。
【0050】
木(wood)のラテン語であるリグニンは、植物に剛性を与える化合物である。リグニンは、非晶質構造および高分子量を有する三次元高分子である。植物繊維における3つの主要成分の内、リグニンは、水に対する親和性が最も小さい。それに加え、リグニンは熱可塑性である(すなわち、リグニンは、比較的低い温度で軟化し始め、温度の上昇と共に、容易に流動する)。
【0051】
セルロースは、植物繊維の基本構造成分である。セルロース分子は、例えば、長鎖において互いに結合したグルコース単位を含み、次に、これらのグルコース単位は、微小繊維と呼ばれる束に互いに結合される。ヘミセルロースも植物繊維中に見つかる。ヘミセルロースは、典型的に、比較的短い分岐鎖において互いに結合した多糖である。通常は親水性であるヘミセルロースは、一般に、マトリクス中にセルロースを埋め込むセルロース微小繊維と緊密に関連している。農業からの典型的なリグノセルロース繊維が、例えば、麦藁、麻、亜麻、サイザル麻、およびジュートに見つかる。
【0052】
天然の非リグノセルロース炭素前駆体は、小麦粉、クルミ粉末、トウモロコシ粉末、トウモロコシデンプン、米粉、およびジャガイモ粉末などの食用穀類から誘導することができる。他の天然の非リグノセルロース炭素前駆体としては、コーヒー粉、ジャガイモ、砂糖大根、キビ、大豆、アブラナ、大麦、および綿が挙げられる。その非リグノセルロース材料は、遺伝子操作されていても、いなくてもよい農作物や植物から誘導することができる。
【0053】
例示の非リグノセルロース炭素前駆体は小麦粉である。小麦粉は、小麦植物の種である小麦の穀粒を製粉することによって得られる。小麦の穀粒は、胚乳、胚芽、およびふすまの3つの主要部を有する。全粒小麦粉は穀粒の3つの主要部全てを含有するのに対し、小麦粉は、胚乳のみから製粉される。
【0054】
小麦粉は、組成的には、主にデンプンを含有するが、さらに別の成分も天然に存在する。小麦粉中の主成分は、デンプン(68〜76%)、タンパク質(6〜18%)、水分(11〜14%)、ガム(2〜3%)、脂質(1〜1.5%)、灰分(<0.5%)および糖(<0.5%)であり、括弧書きで近似の百分率が与えられている。
【0055】
デンプンが小麦粉の大半を構成する。デンプンが「少ない」と考えられているパン用の小麦粉でさえ、他の成分全ての合計よりも多くデンプンを含有する。デンプンは、一般に、小さな粒すなわち微粒として小麦粉中に存在する。大量のタンパク質がデンプン粒を互いに結合させ、胚乳内の適所にそれらを保持する。グルテン形成タンパク質である、グルテニンおよびグリアジンは、典型的に、胚乳中のタンパク質の約80パーセントを構成する。小麦粉中の他のタンパク質としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、およびリパーゼなどの酵素が挙げられる。デンプン以外の小麦粉中の他の炭水化物としては、ガム、特にペントサン・ガムが挙げられる。ペントサン・ガムは、水溶性食物繊維の供給源である。脂質としては、油および乳化剤が挙げられ、灰分としては、無機物質(鉱物塩)が挙げられ、それには、鉄、銅、カリウム、ナトリウム、および亜鉛が含まれる。
【実施例】
【0056】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。
【0057】
実施例1
小麦粉(3000g)をグラファイト製坩堝内に入れ、レトルト炉(CM Furnacesモデル1216FL)内で加熱する。炉の温度を150℃/時の加熱速度で室温から800℃まで上昇させ、2時間に亘り800℃に維持し、次いで、70℃以下まで自然に冷ます。先の加熱/冷却サイクル中、炉をN
2でパージする。
【0058】
N
2を流しながら加熱した結果として、小麦粉を炭化させ、第1の炭素材料に転化させる。第1の炭素材料は、ハンマーポンド、微粉化および振動製粉(vibramilling)を使用して、粉末に粉砕しても差し支えない。粉砕された炭素粉末は、10マイクロメートル以下(例えば、1、2、5または10マイクロメートル)の粒径(d
50)を有し得る。
【0059】
粉末化された第1の炭素材料(300グラム)を1500グラムのKOHの45%水溶液と混合する。その結果得られた混合物を撹拌し、液体が除去され、固体ケークが形成されるまで、ホットプレート上において約100℃で加熱する。このケークを、機械力により小片に破壊しても差し支えない。
【0060】
炭素/KOH混合物をSiC製坩堝(Hexoloy(登録商標)SAグレード)内に入れ、レトルト炉内で加熱する。炉の温度を150℃/時の加熱速度で室温から750℃まで上昇させ、2時間に亘り750℃に維持し、次いで、約100℃の温度まで自然に冷ます。先の加熱/冷却サイクル中、炉をN
2でパージする。炭素/KOH混合物を加熱することによって、KOHを第1の炭素材料中に含ませることができる。
【0061】
冷却中、炉の温度が一度100℃に到達したら、炉の温度をさらに3時間に亘り100℃に維持し、その最中に、炉を、水蒸気で飽和したN
2でパージする。水蒸気で飽和した窒素ガスは、95℃の脱イオン水にN
2ガスを通して泡立てることによって生成できる。次いで、炉を70℃以下まで自然に冷ます。
【0062】
次いで、その結果得られた活性炭を洗浄して、過剰のカリウム、ナトリウム化合物、および他の不純物を除去しても差し支えない。洗浄は、ある実施の形態によれば、活性炭を水で濯ぐこと、またはあるいは、活性炭を水および水と酸の混合物で濯ぐことを含み得る。ある例示の洗浄順序が以下に開示されている。
【0063】
第1の洗浄工程において、活性炭を3000mLの脱イオン水と組み合わせ、混合物を撹拌し、30分間に亘りホットプレート上において約90から100℃の温度で加熱する。固体材料(すなわち、炭素)を真空支援濾過によって液体から分離する。
【0064】
第2の洗浄工程において、先に得られた炭素材料を最初に、1980mLの脱イオン水と、次いで、990mLの37%HCl水溶液と組み合わせる。この混合物を撹拌し、60分間に亘りホットプレート上において約90から100℃の温度で加熱し、その後、固体材料を、真空支援濾過によって液体から分離する。
【0065】
第3の洗浄工程において、先に得られた炭素材料を3000mLのDI水て組み合わせる。この混合物を撹拌し、60分間に亘りホットプレート上において約90から100℃の温度で加熱する。次いで、炭素材料を真空支援濾過によって液体から分離する。
【0066】
次いで、流出液体のpHが、洗浄に使用した脱イオン水のpHと同じになるまで、この第3の洗浄工程を繰り返す。最後に、活性炭を18時間に亘り125℃で真空炉内で乾燥させて、第2の炭素材料を生成する。第2の炭素材料は、微小孔性活性炭粉末からなる。
【0067】
活性炭材料中の酸素含有量を減少させるために、活性炭材料を追加の熱処理工程で処理しても差し支えない。その処理には、不活性または還元性雰囲気中で活性炭材料を加熱することが含まれる。
【0068】
ある実施の形態において、微小孔性活性炭材料をSiC製坩堝に入れ、炉(CM Furnacesモデル1216FLまたは1212FL)内に装填する。炉の温度を150℃/時の加熱速度で800℃の温度まで上昇させ、2時間に亘りその温度に維持し、次いで、自然に冷ます。先の加熱/冷却サイクル中、炉をN
2またはH
2とN
2の混合物のいずれかで常にパージする。
【0069】
冷却の際に、炉の温度が一度100℃に到達したら、炉をさらに3時間に亘り100℃に維持し、その際中に、炉を、水蒸気で飽和したN
2でパージする。次いで、炉を70℃以下まで自然に冷ます。その結果得られた活性炭生成物は、18時間に亘り125℃で真空炉内において乾燥させても差し支えない。
【0070】
実施例2
非リグノセルロース活性炭と市販の活性炭との間の細孔径分布およびその結果生じた静電容量における差が、以下の実施例に実証されている。
【0071】
細孔径データは、両方の炭素サンプルについて、Micromeritics ASAP2420でのN
2吸着を使用して決定し、スリット細孔を想定して密度汎関数理論(DFT)を使用して計算する。
【0072】
実施例1にしたがって製造した微小孔性活性炭材料に関する細孔径分布データが、市販の炭素材料(クラレ YP−50F)からの比較データと共に、表1に示されている。実施例1のサンプル(サンプル1)は、酸素減少熱処理の前に得られた活性炭材料に相当する。
【0073】
表1において、TPVは全細孔容積を称し、一方で、「V(<1nm)」、「V(微小)」および「V(メソ)」は、1nm未満の細孔の容積、微小細孔の容積、およびメソ細孔の容積を称する。1nm未満、2nm未満、およびメソ多孔質の範囲内の細孔径を有する全細孔のパーセンテージは、「%V<1nm」、「%V<2nm」、および「%V(メソ)」により示される。
【表1】
【0074】
サンプル1は、比較例(0.589cm
3/g)より大きい全細孔容積(0.723cm
3/g)を示す。さらに、サンプル1において、全細孔容積の98%は、微小細孔(すなわち、20Åより小さい細孔)により与えられ、2%がメソ細孔(すなわち、20〜500Åの範囲にある細孔)により与えられた。その分布をさらに分析すると、10Åより狭い細孔が、全細孔容積の68%に寄与した。そのような微小細孔率のメソ細孔率に対する高い比は、市販の炭素と比較して、サンプル1に関しては、断然大きい比静電容量に寄与する。
【0075】
静電容量値は、活性炭をボタン電池の電極に組み込むことによって得られる。ボタン電池を形成するために、活性炭はカーボンブラック(Black Pearl 2000)およびPTFEと組み合わせられる。カーボンブラックは導電性添加剤として働きPTFEは結合剤として働く。活性炭、カーボンブラックおよびPTFEは、85:5:10の質量比で混ぜ合わされ、電極へと圧延される。アセトニトリル中1.5Mのテトラエチルアンモニウム−テトラフルオロボラート(TEA−TFB)の溶液が電解質として使用される。
【0076】
表2に示されるように、サンプル1の容積比静電容量は、比較例の容積比静電容量よりも著しく大きい。
【表2】
【0077】
実施例3
様々な実施の形態による微小孔性活性炭材料に関する細孔容積対細孔径のプロットが
図1に示されている。市販の活性炭材料(クラレ YP50FおよびSupercap BP10)に関する細孔容積対細孔径を示す比較のプロットが
図2に示されている。
図2において、クラレの材料はサンプルC1と示され、Supercapの材料はサンプルC2と示されている。両方の図面において、細孔容積は、規定範囲の細孔径を有する細孔からの寄与に基づく合計としてプロットされている。
【0078】
図1において、サンプル1〜5は小麦粉由来であり、サンプル6は挽き割りトウモロコシ由来である。
図1に開示された微小孔性活性炭材料を調製するためのプロセスの詳細が、実施例1に開示されており、サンプル1に関するように、酸素減少熱処理を含んでいない。サンプル1〜6に関する特定のプロセス条件が表3にまとめられており、この表は、炭素前駆体、炭化温度、KOHの炭化前駆体に対する比率、および活性化温度を示している。実施例1のプロセスパラメータに加え、サンプル4は、活性化後に、1%のH
2/N
2中で2時間に亘り700℃にさらに加熱した。
【0079】
実施例1のプロセスの代わりに、サンプル5は、小麦粉および45質量%のKOH溶液の水性混合物(1:2の質量比)を形成し、この混合物をホットプレート上において90〜100℃で乾燥させ、乾燥した材料をN
2雰囲気中において800℃で加熱して、第1の炭素材料を形成し、この第1の炭素材料を希釈HClおよび水で順次に洗浄して、第2の炭素材料を形成し、次いで、18時間に亘り真空炉内において125℃で第2の炭素材料を乾燥させることによって、調製した。
【表3】
【0080】
図1を参照すると分かるように、超微小細孔(d<1nm)の細孔容積への寄与が、サンプル1〜6については、0.3cm
3/g超であり、サンプル1〜4については、0.4cm
3/g超である。1nm<d<2nmの範囲のサイズを有する細孔の細孔容積への寄与は、少なくとも0.05cm
3/gであり、0.1または0.15cm
3/g超であり得る。2nm超のサイズを有する任意の孔は、合計で、細孔容積に0.15cm
3/g未満(例えば、0.15、0.10、0.05または0.025cm
3/g未満)しか寄与しない。
【0081】
実施例4
実施例1の合成を、小麦粉の代わりに、ココナツ粉末(リグノセルロース材料)を使用して繰り返した。小麦粉を、窒素中で炭化させ、粉砕し、KOH溶液と混合し、次いで、活性化させた。その結果得られた活性炭を洗浄し、窒素と水素の混合物で処理した。乾燥後、細孔径分布を測定した。細孔径分布が
図3に示されている。
【0082】
活性炭を、再起に記載したようにボタン電池に組み込んだ。この炭素電極の容積比静電容量は約95F/cm
3であり、これは、先の実施例の結果と共に考慮した場合、活性炭の細孔径分布が、出発材料の選択に関わらず、エネルギー密度に影響を与えるという結論を支持する。
【0083】
実施例5
微小孔性炭素材料は、ラマン分光法を使用して特徴付けることができる。ラマンデータは、入射するアルゴンイオンレーザ(488nm)またはろ波されたダイオードレーザ(785nm)を使用して、ライカモデルDM2000顕微鏡(50倍の対物レンズ)およびシリコン製CCD検出器を備えた、レニショーのinViaラマンマイクロスコープを使用して収集した。488nmの入射での検出器のスペクトル分解能は、1500cm
-1で1.5cm
-1であり、785nmの入射での分解能は、1500cm
-1で1.0cm
-1であった。
【0084】
炭素サンプルへの損傷を最小にするために、減光フィルタを使用して、レーザ出力を減少させ、入射出力は一般に5mW未満(例えば、488nmのレーザについては、1mW以下、785nmのレーザについては、2mW以下)であった。レーザスポットサイズは、10マイクロメートルの直径に制限した。信号対雑音比を改善するために、露光時間は30秒から120秒に及んだ。
【0085】
代表的なラマンスペクトルが
図4に示されている。
図4Aおよび4Bは、それぞれ、785nmおよび488nmの励起に関する本発明の微小孔性活性炭(表3のサンプル4に対応する)のデータを示しているのに対し、
図4Cおよび4Dは、比較のための市販のクラレYP50F活性炭に関する対応するデータを示している。
【0086】
ラマンデータを特徴的なピーク(D2、D1、G2、G1)にフィッティングさせた。ピークの位置に加え、追加のフィッティングパラメータは、ピーク強度、幅、および形状であり、後者は、ガウスとローレンツの寄与の複合関数として近似した。理論により拘束することを意図せずに、G1とD1のピークは、ハニカム網目構造の規則的な構造に帰因するのに対し、G2とD2のピークは、網目構造において結合角に歪みがある不規則的な構造に帰因すると考えられる。
【0087】
D2、D1、G2およびG1の各々に関するピーク位置は、入射するレーザ波長の関数である。それぞれのピーク位置が、アルゴンイオンレーザおよびろ波されたダイオードレーザの両方に関して、表4に示されている。
【表4】
【0088】
800から1900cm
-1の領域のラマンスペクトルの全てについて、線形背景でのフィッティング分析を行った。フィッティングされたデータのピーク形状は、約30から60%ガウスである。
【0089】
図4を参照すると、ここに開示された微小孔性活性炭、並びに市販のクラレの炭素は、フィッティングしたラマンピーク強度または面積により特徴付けることができる。G2/G1ピークパラメータの比(強度比または面積比)を使用して、本発明の微小孔性炭素材料を、市販の炭素から区別することができる。表5は、両方の入射波長でのテストした炭素の各々についてのG2/G1比を要約している。ピーク強度の比について、G2/G1比は、基線補正後に、1500cm
-1および1600cm
-1での強度の比によって近似した。ピーク強度の比G2/G1は、不規則な構造の内容に関連すると考えられる。
【表5】
【0090】
ここに開示された微小孔性活性炭は、市販の活性炭よりも非晶質であることがラマンデータから分かる。理論により拘束することを意図するものではなく、高い程度の非晶質特性が、小さい荷電粒子の移動度をもたらすと考えられ、ここに開示された微小孔性活性炭の高い導電率は、比較上高いキャリア密度のためであると考えられ、ここで、導電率は、キャリア密度と移動度の積に比例する。
【0091】
ある実施の形態において、本開示による微小孔性活性炭材料は、488nmの励起について、少なくとも0.8(例えば、少なくとも0.8、0.85または0.9)のG2/G1比(面積/面積)、および/または785nmの励起について、少なくとも1.25(例えば、少なくとも1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50または1.55)のG2/G1比(面積/面積)により特徴付けることができる。さらに別の実施の形態において、本開示による微小孔性活性炭材料は、488nmの励起について、少なくとも0.4(例えば、少なくとも0.4、0.45または0.5)のG2/G1比(強度/強度)、および/または785nmの励起について、少なくとも0.4(例えば、少なくとも0.4、0.45または0.5)のG2/G1比(強度/強度)により特徴付けることができる。
【0092】
本開示は、EDLC用途の活性炭材料を提供する。この活性炭材料は、高い微小気孔率により特徴付けられる。そのような炭素は、高い比静電容量を提供し、また、EDLCにおける高いエネルギー蓄積容量および長期安定性を提供する。そのような活性炭材料を製造する方法も開示されている。
【0093】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更を本発明に行えることが当業者には明白である。本発明の精神および実体を含む開示の実施の形態の改変、組合せ、下位の組合せ、および変種は、当業者に想起されるであろうから、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内の全てを含むと解釈すべきである。