特許第5969397号(P5969397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969397
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/16 20060101AFI20160804BHJP
   E02D 13/04 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   E02D5/16
   E02D13/04
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-888(P2013-888)
(22)【出願日】2013年1月8日
(65)【公開番号】特開2014-133980(P2014-133980A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】杜若 善彦
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−162804(JP,A)
【文献】 実開昭55−081138(JP,U)
【文献】 実開昭62−038953(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00−5/20
E02D 7/00−13/10
F16B 5/00−5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に爪部を有する鋼矢板とほぼ同一の断面形状で、前記爪部に相当するガイド用溝部分は、その外周壁の上端角部を切り欠いて開口を大きくした位置合わせ用ガイド治具であり、既設の鋼矢板の上端にこれを延設するように載置した際に既設の鋼矢板の上端側面に添わせる係止片を下方に向け突設し、かつ、この係止片の一つまたは一部を介して既設の鋼矢板と締め付け金具により締め付け固定するための、締め付け金具挿入用の窓孔を形成したことを特徴とする鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具。
【請求項2】
背面を跨ぐように補強部材を連結固定した請求項1記載の鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築分野における土留め壁、基礎構造、港湾河川の護岸・岸壁、さらには止水壁に用いる構造部材として用いられる鋼矢板(シートパイル)を地面に沿って連ねて打設する際、鋼矢板の継手部同士を繋ぎ合わせるときに使用する鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼矢板(シートパイル)は、その一例としてU形、Z形、直線形、ハット形等があり、土木建築工事に際しては、その継手どうしを嵌合させながら打設することで一体の地中連続壁とする。
【0003】
図8はU形鋼矢板の1例であり、鋼矢板1は、ウエブ2aとフランジ2bからなるU形の板状部2の両端部に継手としての巻回部による爪部3を設けている。
【0004】
図9に示すように、鋼矢板1をその幅方向側端部の継手の爪部3同士を繋ぎ合わせて、これら鋼矢板1をその幅方向に連ねて地中に打設する場合、従来から、クレーン装置等で鋼矢板1を吊上げて順次地面に挿入するようにして行われている。
【0005】
この場合、先ず、クレーンオペレーターと玉掛け作業者とが共同で打設しようとする鋼矢板1を既に打設された鋼矢板2の上方で位置を微調整して、これら鋼矢板1の側端部の継手部同士の位置を正確に一致させる位置決めが行われる。
【0006】
その後、打設しようとする鋼矢板を既打設済みの鋼矢板の側面に沿ってスライドさせて鋼矢板を溝に挿入する。この作業を繰り返して鋼矢板の打設作業は進められている。
【0007】
しかし、鋼矢板の継手部同士の位置を正確に一致させることは、風の影響を受けやすく非常に困難である。また、かかる作業は、クレーンオペレーターの技量やクレーンオペレーターと玉掛け作業者のタイミング調整等により左右され、安全性の確保及び作業効率の向上を図ることが非常に困難であった。
【0008】
下記特許文献は、海上等での鋼矢板打ち込み作業における鋼矢板のセクション合わせ用治具として提案されたものである。
【特許文献1】実開平2−139938号公報
【0009】
この特許文献1は、図10図11に示すように、横断面形状が鋼矢板1の板状部2の横断面形状と同一に形成された板状体10を設け、この板状体10の下部の前面と後面に、取付部材11,12を4対対向させて下方に突出させて設け、板状体10の両端部には、鋼矢板1の両端部に設けられた連結用の巻回部による爪部3の弧状基部4と同一形状に形成された弧状案内片13のみを設け、板状体10の上部には、3箇所に窓孔14を設けた。
【0010】
図12に示すように、打設済みの鋼矢板1上に装着し、次に打設する鋼矢板1のセクション合わせを行って鋼矢板1を下降させ、下降する途中の鋼矢板1は、鋼矢板1の前後に並列した道枠18によって導かれて打ち込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献1の鋼矢板のセクション合わせ用治具では、既設の鋼矢板1の上に単に置くだけであり、取付部材11,12を4対対向させて下方に突出させて設けているものの、この取付部材11,12は既設の鋼矢板1の上端を差し入れるだけの隙間を有するものに過ぎず、完全に固定して治具を設けるものではない。
【0012】
風があって打設しようとする鋼矢板があおられて大きく振られた場合、鋼矢板のセクション合わせ用治具にぶつかり、これを倒してしまうおそれもあり、また、弧状案内片13に打設しようとする鋼矢板の爪部を合わせようとしても容易に係合できないこともある。
【0013】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、締め付け固定して打設済みの鋼矢板に装着できるので、風があっても影響を受けず、また、打設しようとする鋼矢板の爪部を合わせやすいように開口を大きくした鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、両端に爪部を有する鋼矢板とほぼ同一の断面形状で、前記爪部に相当するガイド用溝部分は、その外周壁の上端角部を切り欠いて開口を大きくした位置合わせ用ガイド治具であり、既設の鋼矢板の上端にこれを延設するように載置した際に既設の鋼矢板の上端側面に添わせる係止片を下方に向け突設し、かつ、この係止片の一つまたは一部を介して既設の鋼矢板と締め付け金具により締め付け固定するための、締め付け金具挿入用の窓孔を形成したことを要旨とするものである。
【0015】
請求項1記載の本発明によれば、位置合わせ用ガイド治具は既設の鋼矢板に対してその上端にこれを延設するように載置する際に締め付け金具により締め付け固定するので、強固に取り付けることができ、風があって打設しようとする鋼矢板があおられて衝突などしても影響を受けない。
【0016】
また、両端の爪部に相当する溝形成部分の外周壁の上端角部を切り欠いて開口を大きくしたので、打設しようとする鋼矢板の下端部の片脇側の爪部をこれに係合させ易く、係合させたのち、打設しようとする鋼矢板を下降させれば、そのまま下方の打設済みの鋼矢板の爪部に係合させていくことができる。
【0017】
請求項2記載の本発明は、背面を跨ぐように補強部材を連結固定したことを要旨とするものである。
【0018】
請求項2記載の本発明は、短尺な位置合わせ用ガイド治具であっても、補強部材を有することにより、堅牢なものとすることができ、また、この補強部材は背面を跨ぐように連結固定するので、ガイド用溝部分の妨げにはならない。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明の鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具によれば、締め付け固定して打設済みの鋼矢板に装着できるので、風があっても影響を受けず、また、ガイド用溝部分は打設しようとする鋼矢板の爪部を合わせやすいように開口を大きくしたので、使い勝手がよいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具の1実施形態を示す正面図、図2は同上側面図、図3は同上要部の平面図、図4は同上背面図で、鋼矢板としてはU形鋼矢板の場合に使用するものである。
【0021】
先にU形鋼矢板について説明すると、図8に示すように、鋼矢板1は、ウエブ2aとフランジ2bからなるU形の板状部2の両端部に継手としての巻回部による爪部3を設けている。そして、図9に示すように、鋼矢板1をその幅方向側端部の継手の爪部3同士を繋ぎ合わせて、これら鋼矢板1をその幅方向に連ねて地中に打設する。
【0022】
本発明の位置合わせ用ガイド治具5は、前記両端に爪部3を有する鋼矢板1とほぼ同一の断面形状で、かつ、上下に短い、板状部6を本体部としている。板状部6はウエブ6aとフランジ6bからなるU形のものである。なお、本実施形態では、ほぼ矩形のウエブ6aに対してフランジ6bは、前側は同じ高さで、後ろに行くに従い高さが高くなる台形状とした。
【0023】
なお、位置合わせ用ガイド治具5は、鋼矢板1を切断することにより、容易にその基の材料を得ることができる。
【0024】
この位置合わせ用ガイド治具5で、鋼矢板1の前記爪部3に相当するガイド用溝部分7は、巻回部による爪部3と全く同じ断面形状のものとせずに、その外周壁の上端角部を三角状または四角状の切り欠き8を設けて、開口9を大きくした。
【0025】
さらに、詳細に説明すると、前記爪部3と同じ断面形状とすると、爪部3を形成するには、フランジ6bの一部である内側壁15と、弧状基部16と、外側壁17とからなるが、内側壁15と弧状基部16とはそのまま残し、外側壁17は上端から下方に向けて順次拡径する三角状または四角状のものとする。
【0026】
また、位置合わせ用ガイド治具5の他端の部分は、図示は省略するが、爪部3と全く同じ断面形状のものとしてもよいし、また、弧状基部16を僅かに残した直線状のものとしてもよい。
【0027】
さらに、位置合わせ用ガイド治具であり、既設の鋼矢板の上端にこれを延設するように載置した際に既設の鋼矢板の上端側面に添わせる係止片19,20を下方に向け突設した。これら係止片19,20は縦長の矩形片を溶接して爪状の突設したもので、係止片19はウエブ6aの裏側下端に、係止片20はフランジ6bの裏側下端に設ける。
【0028】
なお、前記係止片19,20はこれを一体の帯状のものとしてもよく、また、前記特許文献1の取付部材11,12のように対向させて下方に突出するようにしたものでもよい。
【0029】
ウエブ6aの前記係止片19を設けた近傍に、締め付け金具挿入用の窓孔21を形成する。締め付け金具22としては種々のものが使用可能であるが、図7に示すようなチャンネル材ヤアングル材を山越えで接合する場合に使用される、“ブルマン”(ブルマン株式会社の登録商標)が好適であり、C字形またはU字形の本体22aにボルト22b(締付けボルト)を設けたクランプタイプのものである。
【0030】
前記窓孔21は、本実施形態では、下方に抜ける切欠き穴として形成したが、閉鎖された穴でもよい。
【0031】
位置合わせ用ガイド治具5はU形で、背面は凹面の解放面となっているが、この背面を跨ぐようにアングル材による補強部材23を左右のフランジ6bを連結固定するように溶接した。
【0032】
次に、使用について説明する。まず、本発明の位置合わせ用ガイド治具5をセットするには、図5に示すように、打設済みの鋼矢板1の上にこれを延設するように載置する。その際、係止片19,20は打設済みの鋼矢板1の上端の裏側に当接する。
【0033】
このように、係止片19が鋼矢板1のウエブ2aに当接し、係止片20が鋼矢板1のフランジ2bに当接して、矢板法線方向の規制と矢板法線直角方向の規制が得られる。
【0034】
このように本発明の位置合わせ用ガイド治具5を打設済みの鋼矢板1の上に載置した上で、締め付け金具22により係止片19と打設済みの鋼矢板1を締付ける。その結果、発明の位置合わせ用ガイド治具5を打設済みの鋼矢板1に締付け固定される。
【0035】
図6に示すように、打設しようとする鋼矢板1はその爪部3を位置合わせ用ガイド治具5のガイド用溝部分7に係合させ下降させれば、そのまま下方の打設済みの鋼矢板1の爪部3に係合させていくことができる。
【0036】
以上の実施形態は本発明の位置合わせ用ガイド治具5をU形鋼矢板に使用する場合について説明したが、ハット形、直線形等他の形状の鋼矢板でも爪部による継手を有するものに対して、本発明は適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具の1実施形態を示す正面図である。
図2】本発明の鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具の1実施形態を示す側面図である。
図3】本発明の鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具の1実施形態を示す要部の平面図である。
図4】本発明の鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具の1実施形態を示す背面図である。
図5】本発明の鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具の使用状態を示す正面図である。
図6】本発明の鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具の使用状態を示す斜視図である。
図7】本発明の鋼矢板の位置合わせ用ガイド治具で使用する締め付け金具の説明図である。
図8】U形鋼矢板の1例を示す平面図である。
図9】U形鋼矢板の連結状態を示す平面図である。
図10】従来例を示す斜視図である。
図11】従来例を示す横断平面図である。
図12】従来例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…鋼矢板 2…板状部
2a…ウエブ 2b…フランジ
3…爪部 4…弧状基部
5…位置合わせ用ガイド治具 6…板状部
6a…ウエブ 6b…フランジ
7…ガイド用溝部分 8…切り欠き
9…開口
10…板状体 11,12…取付部材
13…弧状案内片 14…窓孔
15…内側壁 16…弧状基部
17…外側壁 18…道枠
19,20…係止片
21…窓孔 22…締め付け金具
22a…本体 22b…ボルト
23…補強部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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