特許第5969422号(P5969422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969422
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ロールの硬化肉盛構造
(51)【国際特許分類】
   B02C 4/30 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   B02C4/30
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-72485(P2013-72485)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-195771(P2014-195771A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2013年5月13日
【審判番号】不服2015-10045(P2015-10045/J1)
【審判請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 誠秀
(72)【発明者】
【氏名】畑中 治
【合議体】
【審判長】 伊藤 元人
【審判官】 金澤 俊郎
【審判官】 槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−347175(JP,A)
【文献】 特表平10−506686(JP,A)
【文献】 特開昭58−133842(JP,A)
【文献】 実開平2−133435(JP,U)
【文献】 特開昭60−174266(JP,A)
【文献】 特開平7−51585(JP,A)
【文献】 特開昭62−207579(JP,A)
【文献】 特開2006−102564(JP,A)
【文献】 特開昭63−143949(JP,A)
【文献】 特開昭64−44288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 2/10
B02C 4/30
B02C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心まわりに回転して、径方向で対向する相手部材との間に噛み込まれた被砕物を粉砕するロールに適用されるものであり、前記ロールの中心部を構成するロール本体の外周面を、前記ロール本体の周方向に延びる肉盛溶接ビードで形成された硬化肉盛層が覆っているロールの硬化肉盛構造において、
前記ロール本体の外周面には軸方向に延びる内部溝が少なくとも一つ設けられており、この内部溝に前記硬化肉盛層が入り込んで、前記硬化肉盛層の外周面に前記内部溝の内側で軸方向に延びる表面溝が形成されていることを特徴とするロールの硬化肉盛構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルロールクラッシャーの粉砕用ロール等に適用されるロールの硬化肉盛構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ダブルロールクラッシャーの粉砕用ロール等、軸心まわりに回転して、径方向で対向する相手部材との間に噛み込まれた被砕物を粉砕するロールにおいて、その外周面の耐摩耗性を向上させるために、ロールの中心部を構成するロール本体の外周面を覆うように硬化肉盛層を設けることはよく知られている。
【0003】
ところが、上記のような硬化肉盛層を設けたロールでは、所定の粉砕能力が確保できない場合がある。これは、硬化肉盛層がロール本体の外周面への肉盛溶接によって形成されており、その溶接方向(溶接ビードの延びる方向)がロールの周方向であるため、ロール使用中に硬化肉盛層の表面が滑らかに摩耗して、被砕物との間で滑りを生じてしまうようになるからである。
【0004】
一方、ダブルロールクラッシャーの粉砕用ロール等においては、その粉砕能力の向上を図るために、外周面に軸方向に延びる溝(または歯)を設けていることも多い(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−216476号公報(段落0065)
【特許文献2】特開2006−102564号公報(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、外周部に硬化肉盛層を有する粉砕用のロールに対して、硬化肉盛層の外周面に軸方向の溝を機械加工で形成すると、その溝縁がエッジ状になって被砕物がロールと相手部材との間に噛み込みやすくなり、粉砕能力が向上する反面、ロール使用中に硬化肉盛層の溝縁部が欠損しやすくなり、溝縁部から剥離した小片が被砕物に混入して問題となるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、外周部に硬化肉盛層を有する粉砕用のロールを、粉砕能力が高く、かつ安定して使用できるものとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、軸心まわりに回転して、径方向で対向する相手部材との間に噛み込まれた被砕物を粉砕するロールに適用されるものであり、前記ロールの中心部を構成するロール本体の外周面を覆うように硬化肉盛層を設けたロールの硬化肉盛構造において、前記ロール本体の外周面に軸方向に延びる内部溝を少なくとも一つ設け、この内部溝に前記硬化肉盛層を入り込ませて、前記硬化肉盛層の外周面に前記内部溝に沿って延びる表面溝を形成した構成を採用した。ここで、軸方向に延びる内部溝は、軸方向と平行に延びるものだけでなく、らせん状等、軸方向に対して傾斜した方向に延びるものも含む。
【0009】
上記の構成によれば、ロールが回転するときに、被砕物が硬化肉盛層の外周面に形成された表面溝に嵌まり込んでロールと相手部材との間に噛み込みやすくなり、粉砕能力を向上させることができるとともに、硬化肉盛層の表面溝の溝縁がなだらかになって、ロール使用中の表面溝縁部の欠損を生じにくくすることができる。
【0010】
ここで、前記硬化肉盛層の外周面と表面溝の側面とのなす角度を鈍角とすれば、溝縁部の欠損が一層生じにくくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のロールの硬化肉盛構造は、上述したように、粉砕用ロールの中心部を構成するロール本体の外周面に軸方向の内部溝を設け、この内部溝に硬化肉盛層を入り込ませて、硬化肉盛層の外周面にロール本体の内部溝に沿って延びる表面溝を形成したものであるから、被砕物をロールと相手部材との間へ噛み込みやすくすることができるとともに、ロール使用中の表面溝縁部の欠損を防止することができる。したがって、この硬化肉盛構造を適用した粉砕用ロールは、粉砕能力が高く、かつ安定して長期間使用できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の硬化肉盛構造を有するロールを用いたダブルロールクラッシャーの要部の正面断面図
図2図1のロールの一部切欠き側面図
図3図2のIII−III線に沿った拡大断面図
図4図1のダブルロールクラッシャーの変形例を示す要部の正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1に示すように、この実施形態の硬化肉盛構造を適用したロール1は、ダブルロールクラッシャーの内部に一対で互いに径方向で対向するように配置され、一対のそれぞれが軸心まわりに内向きに回転して、互いの間に噛み込まれた被砕物Aを粉砕するものである。
【0014】
図1および図2に示すように、前記ロール1は、円筒状のロール本体2と、ロール本体2の内周に嵌入固定された回転軸3と、ロール本体2の中央部(軸方向両端部を除いた部分)の外周面を覆うように設けられた硬化肉盛層4とからなる。
【0015】
そして、図示は省略するが、各回転軸3の一端にはプーリーが取り付けられており、それぞれのプーリーがモータの主軸に取り付けられたプーリーとベルトで連結され、各ロール1が2つのプーリーとベルトを介してモータにより回転駆動(プーリー駆動)されるようになっている。ここで、各ロールの駆動は、チェーンやギヤを用いた同期駆動とすることもできるが、プーリー駆動の方が運転状況(被砕物のつまり等)による両ロールの回転位相のずれを許容でき好ましい。
【0016】
前記硬化肉盛層4の外周面には、軸方向と平行に延びる表面溝5が周方向に90°間隔で4つ設けられている。ロール本体2の軸方向両端部は、外径が硬化肉盛層4の外径とほぼ同じになるように中央部よりもわずかに大径に形成され、その外周面に硬化肉盛層4の各表面溝5に連続する軸方向の短溝6が設けられている。
【0017】
なお、図1に示した例では、一対のロール1をそれぞれの表面溝5(および短溝6)の位相が同じになるように配置したが、両ロール1間で表面溝5の位相が例えば45°程度ずれるように配置してもよい。
【0018】
図2および図3に示すように、前記ロール本体2の外周面には、硬化肉盛層4の各表面溝5と同じ周方向位置に表面溝5よりも幅の広い内部溝7が設けられている。
【0019】
すなわち、この実施形態の硬化肉盛構造は、ロール本体2の外周面に軸方向と平行に延びる内部溝7を4つ設け、これらの各内部溝7に硬化肉盛層4を入り込ませて、硬化肉盛層4の外周面に内部溝7に沿って延びる表面溝5を形成したものである。ここで、表面溝5は、図3に示すように、その側面と硬化肉盛層4の外周面とのなす角度θが鈍角となるように形成されている。
【0020】
前記ロール1の製造手順は、まず、ロール本体2の素材を鋳造によって製作し、その周方向の4箇所で、軸方向両端部の外周面に短溝6を、中央部の外周面には内部溝7をそれぞれ機械加工によって形成する。そして、ロール本体2の中央部の外周面に周方向に沿って肉盛溶接を行い、硬化肉盛層4を設けると同時に、その一部をロール本体2の内部溝7に入り込ませて、ロール本体2の短溝6に連続する表面溝5を形成する。
【0021】
この実施形態の硬化肉盛構造は、上述したように、ロール本体2の外周面に設けた軸方向の内部溝7に硬化肉盛層4を入り込ませて、硬化肉盛層4の外周面に内部溝7に沿って延びる表面溝5を形成したので、ロール1が回転するときに被砕物Aの一部が表面溝5に嵌まり込んでロール1どうしの間に噛み込みやすくなり、また溝のない場合よりもサイズの大きい被砕物Aがロール1どうしの間に噛み込まれるようになり、粉砕能力の向上を図ることができる。
【0022】
しかも、硬化肉盛層の表面溝を機械加工で形成した場合に比べて、この実施形態では、硬化肉盛層4の表面溝5の溝縁がなだらかになるので、ロール1使用中に表面溝縁部8の欠損が生じにくく(図3参照)、それによるトラブルを未然に防止することができる。ここで、表面溝5はその側面と硬化肉盛層4の外周面とのなす角度θが鈍角となるように形成されており、このことが表面溝縁部8をより欠けにくいものとしている。
【0023】
また、表面溝を機械加工で形成すると、底面に露出したロール本体が優先摩耗してロール全体が短寿命となるおそれがあるのに対して、この実施形態では、表面溝5の底面が硬化肉盛層4で形成されており優先摩耗することがないため、この点でも長期間安定して使用できる。なお、硬化肉盛層4の残厚、すなわち使用限界までの余裕度は、表面溝5の深さを観察することにより、ロール1に直接触れることなく容易に把握することができる。
【0024】
図4は、上述したダブルロールクラッシャーの一対のロール1のうちの一方を、表面溝のない通常の粉砕用のロール11に代えた変形例を示す。実施形態のロール1の相手部材となるロール11は、表面溝とロール本体2の短溝および内部溝がないほかは実施形態のロール1と同じ構造である。この変形例のようにしても、ダブルロールクラッシャーとしての粉砕能力を十分に確保できる場合が多い。
【0025】
なお、上述した実施形態では、硬化肉盛層4の表面溝5を周方向の4箇所に設けた例を説明したが、表面溝は少なくとも周方向の1箇所に設ければよい。また、その表面溝は、実施形態のように軸方向と平行に延びるものに限らず、らせん状等、軸方向に対して傾斜した方向に延びるものでもよい。
【0026】
また、本発明は、実施形態のようなダブルロールクラッシャーの粉砕用ロールだけでなく、例えば竪型ミルの粉砕テーブルとの間で被砕物を粉砕するロール等、軸心まわりに回転して、径方向で対向する相手部材との間に噛み込まれた被砕物を粉砕するロールの硬化肉盛構造に広く適用することができる。特に、鉄鉱石、焼結体、コークス、石炭、セメント、アスファルト、岩石等の粉砕に用いられ、耐摩耗性、粉砕能力および信頼性が求められるロールに有効に適用できる。
【0027】
さらに、本発明の硬化肉盛構造を、被処理物に定常的に摩擦されるロール以外の耐摩耗部材、例えば混練ミキサーのケーシング内面に内張りされるライナー等に応用して、その表面溝の深さの観察により使用限界までの余裕度の把握を行うようにすることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 ロール
2 ロール本体
3 回転軸
4 硬化肉盛層
5 表面溝
6 短溝
7 内部溝
8 表面溝縁部
11 ロール
図1
図2
図3
図4