(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプと、旋回体と、前記油圧ポンプから吐出される圧油により前記旋回体を駆動する旋回油圧モータと、蓄電装置からの電力により前記旋回体を駆動する旋回電動モータと、前記旋回体の駆動を指令する旋回用操作レバーと、前記油圧ポンプの吐出容量を調整する吐出容量調整手段と、前記旋回用操作レバーが操作されたときに前記旋回油圧モータと前記旋回電動モータの両方を駆動して、前記旋回油圧モータのトルクと前記旋回電動モータのトルクとの合計で前記旋回体の制駆動の制御を行う制御装置とを備えた建設機械において
前記旋回用操作レバーの操作量を検出する操作量検出手段と、前記旋回電動モータの速度を検出する速度検出手段とを備え、
前記制御装置は、前記操作量検出手段が検出した前記旋回用操作レバーの操作量信号と前記速度検出手段が検出した前記旋回電動モータの速度信号とを取込み、これらの検出信号に基づいて前記旋回電動モータへのトルク指令値を算出するトルク指令値演算部と、
前記旋回電動モータへのトルク指令値と前記旋回用操作レバーの操作量信号と前記旋回電動モータの速度信号とに基づいて前記油圧ポンプの出力の減少率を算出し、前記吐出容量調整手段を制御する油圧ポンプ出力減少制御部とを備え
前記油圧ポンプ出力減少制御部は、前記旋回用操作レバーの操作量が所定の操作量以下の微操作の場合には、前記油圧ポンプの出力の減少率を大きく算出し、前記旋回用操作レバーの操作量が前記所定の操作量を超過して大きければ大きいほど、前記油圧ポンプの出力の減少率を小さく算出する
ことを特徴とする建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、建設機械として油圧ショベルを例にとって本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本発明は、旋回体を備えた建設機械全般(作業機械を含む)に適用が可能であり、本発明の適用は油圧ショベルに限定されるものではない。
図1は本発明の建設機械の一実施の形態を示す側面図、
図2は本発明の建設機械の一実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図、
図3は本発明の建設機械の一実施の形態のシステム構成及び制御ブロック図である。
【0016】
図1において、油圧ショベルは走行体10と、走行体10上に旋回可能に設けた旋回体20及び旋回体20に装設したフロント作業装置30を備えている。
【0017】
走行体10は、一対のクローラ11及びクローラフレーム12(
図1では片側のみを示す)、各クローラ11を独立して駆動制御する一対の走行用油圧モータ13、14及びその減速機構等で構成されている。
【0018】
旋回体20は、旋回フレーム21と、旋回フレーム21上に設けられた、原動機としてのエンジン22と、エンジンにより駆動されるアシスト発電モータ23と、旋回電動モータ25及び旋回油圧モータ27と、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25に接続される電気二重相キャパシタ24と、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転を減速する減速機構26等から構成され、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の駆動力が減速機構26を介して伝達され、その駆動力により走行体10に対して旋回体20(旋回フレーム21)を旋回駆動させる。
【0019】
また、旋回体20にはフロント作業装置30が搭載されている。フロント作業装置30は、ブーム31と、ブーム31を駆動するためのブームシリンダ32と、ブーム31の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム33と、アーム33を駆動するためのアームシリンダ34と、アーム33の先端に回転可能に軸支されたバケット35と、バケット35を駆動するためのバケットシリンダ36等で構成されている。
【0020】
旋回体20の旋回フレーム21上には、上述した走行用油圧モータ13、14、旋回用油圧モータ27、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36等の油圧アクチュエータを駆動するための油圧システム40が搭載されている。油圧システム40は、油圧源となり、エンジン22によって回転駆動される油圧ポンプ41(
図2参照)と、各アクチュエータを駆動制御するためのコントロールバルブ42(
図2参照)とを含む。
【0021】
次に、油圧ショベルの電動・油圧機器のシステム構成について概略説明する。
図2に示すように、エンジン22の駆動力は油圧ポンプ41に伝達されている。コントロールバルブ42は、旋回用の操作レバー装置72からの旋回操作指令(油圧パイロット信号)に応じて、旋回油圧モータ27に供給される圧油の流量と方向を制御する。またコントロールバルブ42は、旋回以外の操作レバー装置(図示せず)からの操作指令(油圧パイロット信号)に応じて、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36及び走行用油圧モータ13,14に供給される圧油の流量と方向を制御する。
【0022】
なお、本実施の形態に係るコントロールバルブ42は、旋回操作レバーの操作量が中間域(中立と最大の間)の時のブリードオフ開口面積を通常機よりも大きくし、操作量が中間域での旋回油圧モータ27の駆動トルク(旋回体20を駆動する方向のトルク)が通常機よりも小さくなるようにしている。
【0023】
旋回制御システムは、
図2に示すように、操作レバー装置72からの指令に応じた制御信号を、コントロールバルブ42と、キャパシタ24の充放電を制御するパワーコントロールユニット55とに出力するコントローラ80が備えられている。パワーコントロールユニット55は、キャパシタ24から旋回電動モータ25への電力供給と、旋回電動モータ25から回収された電力のキャパシタ24への充電を制御するものであって、キャパシタ24から供給される直流電力を所定の母線電圧に昇圧するチョッパ51と、旋回電動モータ25を駆動するためのインバータ52と、アシスト発電モータ23を駆動するためのインバータ53と、母線電圧を安定化させるために設けられる平滑コンデンサ54とを備えている。旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転軸は結合されており、これらの各モータが発生する合計のトルクで旋回体20を駆動する。アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25の駆動状態(力行しているか回生しているか)によって、キャパシタ24は充放電されることになる。
【0024】
次に、本発明による旋回制御を行うのに必要なデバイスや制御手段、制御信号等を
図3を用いてさらに詳細に説明する。
油圧ショベルは、上述したコントローラ80と、コントローラ80の入出力に係わる油圧/電気信号変換装置74a,74b,74c,74d、電気/油圧信号変換装置75b,75cを備え、これらは旋回制御システムを構成する。油圧/電気信号変換装置74a,74b,74c,74dはそれぞれ例えば圧力センサであり、電気/油圧信号変換装置75b,75cは例えば電磁比例減圧弁である。
【0025】
コントローラ80は、
図3に示すように、異常監視/異常処理制御ブロック81、エネルギマネジメント制御ブロック82、油圧電動複合旋回制御ブロック83、及び油圧単独旋回制御ブロック84とからなる。
【0026】
異常監視・異常処理制御ブロック81には、パワーコントロールユニット55から出力されるエラー・故障・警告信号が入力される。エネルギマネジメント制御ブロック82は、パワーコントロールユニット55から出力されるキャパシタ残量信号とチョッパ電流信号と旋回モータ速度と、コントロールバルブ42から出力され、油圧/電気信号変換装置(例えば、圧力センサ)74c,74dによって電気信号に変換された旋回作動圧とを入力し、油圧電動複合旋回制御ブロック83への制動トルク要求値を出力する。
【0027】
油圧電動複合旋回制御ブロック83は、旋回操作レバー72から出力され、油圧/電気信号変換装置(例えば、圧力センサ)74a,74bによって電気信号に変換された旋回パイロット圧信号と、パワーコントロールユニット55から出力される旋回モータ速度と、コントロールバルブ42から出力され、油圧/電気信号変換装置(例えば、圧力センサ)74c,74dによって電気信号に変換された旋回作動圧とを入力し、油圧ポンプ41へのポンプ吸収トルク補正指令を吐出容量調整手段であるレギュレータ41aへ出力する。また、コントロールバルブ42へリリーフ圧切替信号を、パワーコントロールユニット55へ、旋回電動モータトルク指令をそれぞれ出力する。
【0028】
油圧単独旋回制御ブロック84は、旋回操作レバー72から出力され、油圧/電気信号変換装置74a,74bによって電気信号に変換された旋回パイロット圧信号を入力し、コントロールバルブ42への油圧旋回特性補正指令と、旋回パイロット圧補正信号とを電気/油圧信号変換装置75b,75cを介して出力する。
【0029】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態における旋回油圧システムについて
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は本発明の建設機械の一実施の形態の油圧システムを示すシステム構成図、
図5は本発明の建設機械の一実施の形態における旋回用スプールのメータアウト開口面積特性を示す特性図である。
図4及び
図5において、
図1乃至
図3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0030】
図3のコントロールバルブ42はアクチュエータごとにスプールと呼ばれる弁部品を備え、旋回操作レバー72や他の図示しない操作装置からの指令(油圧パイロット信号)に応じて対応するスプールが変位することで開口面積が変化し、各油路を通過する圧油の流量が変化する。
図4に示す旋回油圧システムにおいて、コントロールバルブ42は、旋回スプール44と、可変オーバーロードリリーフ弁28、29等を含むものである。
【0031】
図4において、旋回油圧システムは、上述した油圧ポンプ41及び旋回油圧モータ27と、旋回操作レバー72と、旋回スプール44と、旋回用の電磁式の可変オーバーロードリリーフ弁28,29とを備えている。
【0032】
油圧ポンプ41は可変容量ポンプであり、レギュレータ41aを備え、レギュレータ41aを動作させることで油圧ポンプ41の傾転角が変わって油圧ポンプ41の容量が変わり、油圧ポンプ41の吐出流量と出力トルクが変わる。
図3に示す油圧電動複合旋回制御ブロック83から吐出容量調整手段であるレギュレータ41aにポンプ吸収トルク補正指令が出力されると、レギュレータ41aが動作し、油圧ポンプ41の傾転角が変わり、油圧ポンプ41の最大出力トルクを減少させることができる。
【0033】
油圧ポンプ41からの圧油は、中立位置OからA位置(例えば左旋回位置)又はC位置(例えば右旋回位置)に連続的に切り替わる旋回スプール44によって、旋回油圧モータ27へ切り替え供給される。また、旋回スプール44は中立位置Oにあるとき、油圧ポンプ41からの圧油がブリードオフ絞りを通ってタンクへ戻るように配管接続されている。
【0034】
旋回油圧モータ27は、作動油の入口と出口とになる2つのポートを有していて、本実施の形態においては、左旋回する際に作動油の入口となるポートをAポートと、出口となるポートをBポートとし、右旋回する際に作動油の入口となるポートをBポート、出口となるポートをAポートと定義する。ここで、旋回油圧モータ27のAポートに接続された配管には、圧力を検出する圧力センサである油圧/電気信号変換装置74cが設けられていて、旋回油圧モータ27のBポートに接続された配管には油圧/電気信号変換装置74dが設けられている。
【0035】
可変オーバーロードリリーフ弁28は、旋回油圧モータ27のAポート圧力を制御するものであって、電磁操作部でコントローラ80からの電気指令を受けて、リリーフ圧力を切り替える。同様に、可変オーバーロードリリーフ弁29は、旋回油圧モータ27のBポート圧力を制御するものであって、電磁操作部でコントローラ80からの電気指令を受けて、リリーフ圧力を切り替える。
【0036】
旋回操作レバー72は、レバー操作量に応じて接続されているパイロット油圧源(図示せず)からの圧力を減圧する減圧弁を内蔵している。レバー操作量に応じた圧力(油圧パイロット信号)を旋回スプール44の左右いずれかの操作部に与える。旋回スプール44は、旋回操作レバー72からの旋回操作指令(油圧パイロット信号)に応じて中立位置OからA位置又はB位置に連続的に切り替わる。
【0037】
旋回操作レバー72が中立状態の場合は、旋回スプール44は中立位置Oにあり、油圧ポンプ41から吐出された作動油はブリードオフ絞りを通って全量タンクへ戻る。一方、旋回操作レバー72が左旋回を行うように操作された場合は、旋回スプール44がA位置に切り換わってブリードオフ絞りの開口面積が減少し、旋回スプール44のメータイン絞り、メータアウト絞りの開口面積が増加する。油圧ポンプ41から吐出された作動油はこのA位置のメータイン絞りを通って旋回油圧モータ27のAポートに送られ、旋回油圧モータ27からの戻り油はA位置のメータアウト絞りを通ってタンクへ戻る。このような作動油の制御を行うことで、旋回油圧モータは左に回転する。
【0038】
また、例えば、旋回操作レバー72が右旋回を行うように操作された場合は、旋回スプール44がB位置に切り換わってブリードオフ絞りの開口面積が減少し、旋回スプール44のメータイン絞り、メータアウト絞りの開口面積が増加する。油圧ポンプ41から吐出された作動油はB位置のメータイン絞りを通って旋回油圧モータ27のBポートに送られ、旋回油圧モータ27からの戻り油はB位置のメータアウト絞りを通ってタンクへ戻る。このような作動油の制御を行うことで、旋回油圧モータ27はA位置の場合とは逆方向の右に回転する。
【0039】
旋回スプール44が中立位置OとA位置の中間に位置しているときは、油圧ポンプ41が吐出した作動油はブリードオフ絞りとメータイン絞りに分配される。このとき、メータイン絞りの入側にはブリードオフ絞りの開口面積に応じた圧力が立ち、その圧力で旋回油圧モータ27に圧油が供給され、その圧力(ブリードオフ絞りの開口面積)に応じた作動トルクが与えられる。また、旋回油圧モータ27からの排出油はそのときのメータアウト絞りの開口面積に応じた抵抗を受けて背圧が立ち、メータアウト絞りの開口面積に応じた制動トルクが発生する。中立位置OとB位置の中間においても同様である。
【0040】
旋回操作レバー72を中立位置に戻し、旋回スプール44を中立位置Oに戻したとき、旋回体20は慣性体であるため、旋回油圧モータ27はその慣性で回転を続けようとする。このとき、旋回油圧モータ27からの排出油の圧力(背圧)が旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁28又は29の設定圧力を超えようとするときは、旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁28又は29が作動して圧油の一部をタンクに逃がすことで背圧の上昇を制限し、旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁28又は29の設定圧力に応じた制動トルクを発生する。
【0041】
旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁28及び29は、それぞれ電磁操作部を有している。旋回用の可変オーバーロードリリーフ弁28及び29の設定圧力は、電磁操作部で受信するコントローラ80からの電気指令によって可変できる。
【0042】
図5は、本発明の一実施の形態における旋回スプール44のスプールストロークに対するメータアウト開口面積特性を示す図である。横軸のスプールストロークは、旋回操作レバー72の操作量によってのみ変化するので、旋回操作レバー72の操作量と考えても良い。
【0043】
図5において、実線で示す特性が本実施の形態のものであって、破線は、旋回油圧モータ単独で旋回体を駆動する従来の油圧ショベルにおいて良好な操作性を確保できるメータアウト開口面積特性である。本実施の形態における旋回スプール44のメータアウト開口面積の大きさは、制御開始点及び終点は、従来のものとほぼ同一であるが、中間領域では従来のものに比べて開き勝手(大きな開口面積となるよう)に設計されている。
【0044】
旋回スプール44のメータアウト絞りの開口面積が広くなると、旋回油圧モータ27で得られる制動トルクは小さくなる。このように、制動トルクの大きさはメータアウト絞りの開口面積の大きさに依存するので、旋回操作レバー72の操作量が中間域における本実施の形態の旋回油圧モータ27の制動トルクは、従来機の旋回油圧モータの制動トルクよりも小さくなるように設定されている。また、旋回操作レバー72の操作量が中立および最大状態においては、従来機のメータアウト絞りの開口面積とほぼ同じにしているので、旋回油圧モータ27の制動トルクの大きさは、従来機とほぼ同一となるように設定されている。
【0045】
また、本実施の形態において、旋回スプール44のスプールストロークに対するブリードオフ開口面積特性は、旋回油圧モータ単独で旋回体を駆動する従来の油圧ショベルにおいて良好な操作性を確保できるブリードオフ開口面積特性と同一に設定されている。したがって、駆動トルクは、従来機の旋回油圧モータの駆動トルクと同等となるように設定されている。
【0046】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態を構成するコントローラの油圧電動複合旋回制御ブロックについて
図6乃至
図10を用いて説明する。
図6は本発明の建設機械の一実施の形態における旋回パイロット圧に対応する旋回電動モータと旋回油圧モータの出力特性を示す特性図、
図7は本発明の建設機械の一実施の形態を構成するコントローラの油圧電動複合旋回制御ブロックを示すブロック図、
図8は本発明の建設機械の一実施の形態における旋回パイロット圧と旋回速度に基づき電動力行トルクを算出する特性図、
図9は本発明の建設機械の一実施の形態における旋回パイロット圧に対応する制動ゲインの特性を示す特性図、
図10は本発明の建設機械の一実施の形態における旋回パイロット圧と旋回速度に基づきポンプ出力減少率を算出する特性図である。
図6乃至
図10において、
図1乃至
図5に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施の形態においては、旋回油圧モータ27と旋回電動モータ25の合計出力で旋回体20を駆動するが、旋回操作レバー72の操作量に相当する旋回パイロット圧信号に応じて、旋回電動モータ25の出力と旋回油圧モータ27の出力の割合を変更している。
図6に示すように、旋回パイロット圧がMより低い領域においては、旋回電動モータ25のみで旋回体を駆動し、旋回パイロット圧がMより高い領域で旋回油圧モータ27の出力を徐々に増加させている。つまり、旋回パイロット圧の増加にしたがって、旋回電動モータ25の出力の割合を減少させるように設定している。
【0048】
これは、旋回パイロット圧が低く旋回速度が低い領域では、旋回油圧モータ27で駆動するよりも旋回電動モータ25で駆動した方が高効率となり、旋回パイロット圧が高くなるような旋回速度が高い領域では、旋回油圧モータ27による駆動の方が高効率となるからである。このことにより、消費エネルギの低減化が図れる。
【0049】
特に、旋回操作が微操作である場合には、ポンプ流量をスタンバイ流量程度に下げることにより、油圧部での損失を大幅に低減できる。そのためには、旋回電動モータ25の出力に応じて、旋回油圧モータ27の出力を減らす必要がある。本実施の形態においては、旋回駆動時において、油圧ポンプ41の出力を減らすことにより、上述した駆動トルクを、従来機の旋回油圧モータの駆動トルクよりも減らすようにしている。また、上述した合計出力は、従来機の油圧モータ単独で旋回駆動を行う場合に用いられるような旋回油圧モータの全出力と同等となるようにすることで、従来機と同等の操作性を確保できる。
【0050】
次に、コントローラ80の油圧電動複合旋回制御ブロック83について説明する。
図7に示すように油圧電動複合旋回制御ブロック83は、目標力行トルク演算部83aと、制動ゲイン演算部83bと、制動トルク演算部83cと、トルク指令値演算部83dと、リリーフ弁制御部83eと、油圧ポンプ出力減少制御部83fと、ポンプ吸収トルク補正演算部83gとを備えている。ここで、目標力行トルク演算部83aと制動ゲイン演算部83bと制動トルク演算部83cとトルク指令値演算部83dとで、旋回電動モータ制御部83Xを構成している。
【0051】
目標力行トルク演算部83aは、旋回操作レバー72から出力され、油圧/電気信号変換装置(例えば、圧力センサ)74a,74bによって電気信号に変換された旋回パイロット圧信号とパワーコントロールユニット55から出力される旋回モータ速度と、エネルギマネジメント制御部82で算出された制動トルク要求値とを入力し、これらの信号に基づいて、力行トルク指令Taddを演算する。具体的には、例えば、旋回レバー操作量と旋回モータ速度に基づいたテーブルを参照して力行トルク指令を算出する。
【0052】
図8にこのテーブルの一例を示す。
図8において、横軸は旋回レバー操作量に相当する旋回パイロット圧であって、各特性線において速度の低い方から順にW0、W1、W2としている。このテーブルで定義する旋回電動モータ25のトルク指令値は、旋回油圧モータ27、油圧ポンプ41、コントロールバルブ42など油圧回路部の損失、旋回電動モータ25、インバータ等の電気機器の効率を加味して決定するものである。
【0053】
図8に示すように、旋回操作が大きくなる旋回パイロット圧の増加につれて、力行トルク指令が大きくなるように設定し、旋回速度が速くなるにつれて力行トルク指令が小さくなるように設定している。目標力行トルク演算部83aで算出した力行トルク指令の信号は、トルク指令値演算部83dへ入力される。
【0054】
制動ゲイン演算部83bは、旋回パイロット圧信号を入力し、この信号に基づいて、制動ゲインを演算する。具体的には、例えば、旋回レバー操作量に基づいたテーブルを参照して制動ゲインを算出する。
図9にこのテーブルの一例を示す。本実施の形態においては、旋回操作レバー72の中間操作域において、制動ゲインが最大となるように設定されている。これは、本実施の形態における旋回スプール44のメータアウト開口面積が、
図5で示したように、旋回操作レバー72の中間操作域では従来のものに比べて開き勝手(大きな開口面積となるよう)に設計されているため、この中間操作域において、従来のものに比べて制動トルクが小さくなることを補正するためである。制動ゲイン演算部83bで算出した制動ゲインの信号は、制動トルク演算部83cへ入力される。
【0055】
制動トルク演算部83cは、旋回油圧モータ27のAポートおよびBポートの圧力であって、油圧/電気信号変換装置(例えば、圧力センサ)74c,74dによって電気信号に変換された旋回作動圧信号と、制動ゲイン演算部83bで算出された制動ゲインの信号とを入力し、これらの信号に基づいて、旋回電動モータの制動モータトルク指令値Tms1を算出する。具体的には、圧力センサ74c,74dによって検出された旋回油圧モータ27のAポート圧力とBポート圧力の差圧から、旋回油圧モータトルクを算出し、この旋回油圧モータトルクと、制動ゲイン演算部83bで算出された制動ゲインの信号とを乗算して制動モータトルク指令値Tms1を算出する。この制動モータトルク指令値Tms1は、従来機の油圧モータのトルクとほぼ同じになるように設定されている。制動トルク演算部83cで算出した制動モータトルク指令値Tms1の信号は、トルク指令値演算部83dへ入力される。
【0056】
トルク指令値演算部83dは、目標力行トルク演算部83aで算出された力行トルク指令Taddと、制動トルク演算部83cで算出された制動モータトルク指令値Tms1と、後述するリリーフ弁制御部83eで算出されたリリーフ指令信号とを入力し、これらの信号に基づいて、旋回電動モータ25のトルク指令値Tmsを算出する。
【0057】
具体的には、まず、制動モータトルク指令値Tms1と力行トルク指令Taddとを合計して旋回電動モータのトルク指令値Tms2(Tms2=Tms1+Tadd)を算出する。次に、リリーフ弁制御部83eで算出されたリリーフ指令信号により、リリーフ圧が下がっているか否かを判断し、リリーフ圧が下がっている場合に減少する旋回油圧モータ27のトルクを補償する電動モータトルク指令値Tms3を算出する。そして、算出したTms2とTms3のいずれか大きい方を、旋回電動モータ25のトルク指令値として選択し、トルク制限処理およびトルク変化率制限処理を実行して最終的なトルク指令Tmsを算出する。トルク指令値演算部83dで算出した電動モータトルク指令値Tmsの信号は、パワーコントロールユニット55の旋回電動モータ25用のインバータ52に出力すると共に、油圧ポンプ出力減少制御部83fへ入力される。
【0058】
リリーフ弁制御部83eは、油圧/電気信号変換装置(例えば、圧力センサ)74a,74bによって電気信号に変換された旋回パイロット圧信号とパワーコントロールユニット55から出力される旋回モータ速度と、油圧/電気信号変換装置(例えば、圧力センサ)74c,74dによって電気信号に変換された旋回作動圧信号とを入力し、これらの信号に基づいて、旋回油圧システムを構成するコントロールバルブ42の可変オーバーロードリリーフ弁28,29への電気指令を算出する。リリーフ弁制御部83eで算出した電気指令の信号は、コントロールバルブ42の可変オーバーロードリリーフ弁28,29の電磁操作部に出力すると共に、トルク指令値演算部83dへ入力される。
【0059】
油圧ポンプ出力減少制御部83fは、油圧/電気信号変換装置(例えば、圧力センサ)74a,74bによって電気信号に変換された旋回パイロット圧信号とパワーコントロールユニット55から出力される旋回モータ速度と、トルク指令値演算部83dで算出した電動モータトルク指令値Tmsの信号とを入力し、これらの信号に基づいて、ポンプ出力減少指令を算出する。ここで、ポンプ出力減少指令とは、旋回電動モータ25の駆動トルクによって、旋回体20に与えた仕事量の分、旋回油圧モータ27による仕事量を減らすための制御指令である。
【0060】
具体的には、まず、電動モータトルク指令値Tmsと旋回モータ速度Wsとを乗算して旋回電動モータ25の出力Pms(Pms=Tms×Ws)を算出する。次に、例えば、旋回レバー操作量と旋回モータ速度に基づいたテーブルを参照してポンプ出力減少率を算出し、旋回電動モータ25の出力Pmsとポンプ出力減少率とを乗算して、ポンプ出力減少指令を算出する。
【0061】
図10にこのテーブルの一例を示す。
図10において、横軸は旋回レバー操作量に相当する旋回パイロット圧であって、各特性線において速度の低い方から順にW0、W1、W2としている。このテーブルで定義するポンプ出力減少率は、旋回油圧モータ27、油圧ポンプ41、コントロールバルブ42など油圧回路部の損失、旋回電動モータ25、インバータ等の電気機器の効率を加味して決定すると共に、旋回油圧モータ27のトルクも必要な分だけを出力するように設定している。
【0062】
図10に示すように、旋回操作が微操作域となるような旋回パイロット圧の領域では、ポンプ出力減少率が大きくなるように設定し、旋回速度が速くなるにつれてポンプ出力減少率が小さくなるように設定している。これは、ポンプやバルブの効率が悪い状態ほど、ポンプ出力減少率を大きくすることで、旋回油圧モータ27のトルクも必要な分だけを出力するように制御するためである。油圧ポンプ出力減少制御部83fで算出したポンプ出力減少指令の信号は、ポンプ吸収トルク補正演算部83gへ入力される。
【0063】
ポンプ吸収トルク補正演算部83gは、油圧ポンプ出力減少制御部83fで算出されたポンプ出力減少指令を入力し、この信号に基づいて、旋回電動モータ25のポンプ吸収トルク指令を算出する。具体的には、ポンプ出力減少指令に相当する油圧ポンプ41の傾転角を算出し、レギュレータ制御指令であるポンプ吸収トルク指令をレギュレータ41aに出力し、レギュレータ41aが斜板の傾転角を制御することで、油圧ポンプ41の出力が減少する。
【0064】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態におけるAポート側の可変オーバーロードリリーフ弁28の制御方法について
図11を用いて説明する。
図11は本発明の建設機械の一実施の形態における可変オーバーロードリリーフ弁のリリーフ圧を設定する処理フローを示すフローチャート図である。
【0065】
図11における処理は、コントローラ80の油圧電動複合旋回制御ブロック83のリリーフ弁制御部83eで主に実行される。
リリーフ弁制御部83eは、Aポートのリリーフ圧が通常の所定値であるか否かを判断する(ステップS101)。具体的には、リリーフ圧の通常設定指令が出力されたか否か(前のサンプリング処置を確認すること)で判断する。油圧ショベルのシステム起動の際には、Aポートのリリーフ圧は通常所定の値に設定されている。Aポートのリリーフ圧が通常の所定値である場合には、(ステップS102)へ進み、それ以外の場合には、(ステップS105)へ進む。
【0066】
リリーフ弁制御部83eは、Aポートの旋回作動圧が予め定めた閾値P1未満か否かを判断する(ステップS102)。ここで、閾値P1は、リリーフ圧の設定圧を下げた場合の設定圧以下の値に設定している。Aポートの旋回作動圧が閾値P1未満の場合には、(ステップS103)へ進み、それ以外の場合には、リターンへ進む。
【0067】
リリーフ弁制御部83eは、旋回モータ速度が予め設定した正値である閾値N1の−1倍未満である、又は、旋回操作レバー72の左側旋回操作量が予め設定した閾値L1超過か否かを判断する(ステップS103)。ここで、旋回モータ速度は、左旋回を正、右旋回を負と定義し、閾値N1は旋回モータ速度0近傍の値に設定している。また、閾値L1は、旋回レバー操作量に相当する旋回パイロット圧0近傍の値に設定している。旋回モータ速度が予め設定した正値である閾値N1の−1倍未満である、又は、旋回操作レバー72の左側旋回操作量が予め設定した閾値L1超過である場合には、(ステップS104)へ進み、それ以外の場合には、リターンへ進む。
【0068】
リリーフ弁制御部83eは、Aポートのリリーフ圧を下げる制御を行う(ステップS104)。具体的には、コントロールバルブ42の可変オーバーロードリリーフ弁28の電磁操作部へリリーフ圧下降信号を出力する。
【0069】
リリーフ弁制御部83eは、(ステップS104)の処理終了後、又は、(ステップS102)にて、Aポートの旋回作動圧が閾値P1未満以外と判断した場合、又は、(ステップS103)にて、旋回モータ速度が予め設定した正値である閾値N1の−1倍未満である、又は、旋回操作レバー72の左側旋回操作量が予め設定した閾値L1超過であると判断されなかった場合には、リターンを経由して(ステップS101)に戻り、再度処理を開始する。
【0070】
(ステップS101)において、Aポートのリリーフ圧が通常の所定値でないと判断された場合、リリーフ弁制御部83eは、旋回モータ速度が予め設定した正値である閾値N2の−1倍超過である、かつ、旋回操作レバー72の左側旋回操作量が予め設定した閾値L2未満か否かを判断する(ステップS105)。ここで、閾値N2は閾値N1以下であって旋回モータ速度0近傍の値に設定している。また、閾値L2は閾値L1以下であって、旋回レバー操作量に相当する旋回パイロット圧0近傍の値に設定している。旋回モータ速度が予め設定した正値である閾値N2の−1倍超過である、かつ、旋回操作レバー72の左側旋回操作量が予め設定した閾値L2未満である場合には、(ステップS106)へ進み、それ以外の場合には、リターンへ進む。
【0071】
リリーフ弁制御部83eは、Aポートのリリーフ圧を通常値に戻す制御を行う(ステップS106)。具体的には、コントロールバルブ42の可変オーバーロードリリーフ弁28の電磁操作部へリリーフ圧を通常値に戻す信号を出力する。
【0072】
リリーフ弁制御部83eは、(ステップS106)の処理終了後、又は、(ステップS105)にて、旋回モータ速度が予め設定した正値である閾値N2の−1倍超過である、かつ、旋回操作レバー72の左側旋回操作量が予め設定した閾値L2未満であると判断されなかった場合には、リターンを経由して(ステップS101)に戻り、再度処理を開始する。
【0073】
Bポート側の可変オーバーロードリリーフ弁29の制御方法については、旋回方向が左右で逆であることと、それに伴い旋回速度の正負が逆になること以外は、
図11に示したAポート側の可変オーバーロードリリーフ弁28の制御方法の処理フローと同じである。以上のような制御フローに基づいて、AポートおよびBポートのリリーフ圧を下げることで、旋回油圧モータ27が出力する制駆動トルクを小さくすることができる。
【0074】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態における旋回電動モータ25の制御方法について
図12を用いて説明する。
図12は本発明の建設機械の一実施の形態における旋回電動モータのトルクを算出する処理フローを示すフローチャート図である。
図12において、
図1乃至
図11に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0075】
図12における処理は、コントローラ80の目標力行トルク演算部83aと制動ゲイン演算部83bと制動トルク演算部83cとトルク指令値演算部83dとで構成する旋回電動モータ制御部83Xで主に実行される。
旋回電動モータ制御部83Xは、旋回油圧モータ27のトルクTmoを計算する(ステップS111)。具体的には、圧力センサ74c,74dによって検出された旋回油圧モータ27のAポート圧力とBポート圧力の差圧から、旋回油圧モータトルクTmoを算出する。
【0076】
旋回電動モータ制御部83Xは、旋回体20を駆動する出力Pmを計算する(ステップS112)。具体的には、旋回油圧モータ27と旋回電動モータ25のトルクを合計し、旋回電動モータ25の速度を乗じて次式により旋回体出力Pmを算出する。
Pm=(Tmo+Tms)×Ws・・・(1)
数式(1)において、Tmoは旋回油圧モータトルク、Tmsは旋回電動モータトルク、Wsは旋回速度を表す。ここで、旋回電動モータトルクTmsは、1サンプル前に算出した電動モータトルク指令値Tms3を用いている。
【0077】
旋回電動モータ制御部83Xは、旋回体20が駆動しているか否かを判断する(ステップS113)。具体的には、数式(1)で算出した旋回体出力Pmが、正の場合を駆動中、負の場合を制動中として判断している。旋回体20が駆動中と判断した場合は、(ステップS114)へ進み、それ以外の場合(制動中)は、(ステップS115)へ進む。
【0078】
旋回電動モータ制御部83Xは、駆動ゲインテーブルを用いて駆動モータトルク指令Tms1を計算する(ステップS114)。本実施の形態において、駆動時には、旋回スプールの開口面積の設定によって旋回油圧モータトルクを算出しないので、駆動ゲインテーブルはゼロと設定している。このため、(ステップS114)においてTms1=0となる。
【0079】
(ステップS113)にて、旋回体20が制動中と判断した場合には、旋回電動モータ制御部83Xは、制動ゲインテーブルを用いて制動モータトルク指令Tms1を計算する(ステップS115)。具体的には、制動ゲイン演算部83bと制動トルク演算部83cとで制動モータトルク指令Tms1を算出する。
【0080】
旋回電動モータ制御部83Xは、力行要求トルクを計算する(ステップS116)。具体的には、目標力行トルク演算部83aで力行要求トルクTaddを算出する。
【0081】
ここで、
図3に示す油圧システムにおいて、吐出流量がスタンバイ流量程度になるように油圧ポンプ41の出力を下げ、旋回電動モータ25のトルクを出力すると、旋回電動モータ25の駆動トルクにより、旋回体20が力行駆動する。このとき、旋回油圧モータ27は旋回電動モータ25によって回されるので、メータアウト圧が高くなり、制動トルクが発生する。
【0082】
したがって、この制動トルクを上回るように、旋回電動モータ25の駆動トルクを出力する必要がある。また、上述した動作により、メータアウト圧損が増加するが、油圧ポンプ41の出力を大幅に減らすことができるため、ブリードオフ損失は減少し、油圧システム全体としては高効率となる。
【0083】
また、旋回油圧モータ27が制動トルクを出力する場合において、力行時に必要とされる従来機と同等の全トルクよりも、旋回電動モータ25の出力を多く出す必要があるが、電動機器の効率を付加することにより、全体では、油圧のみで駆動する場合よりも損失を低減させることができる。
【0084】
旋回電動モータ制御部83Xは、力行要求トルクTaddが、エネルギマネジメント制御ブロック82から要求された制限値Tadd1を超えていないかを判断する(ステップS117)。力行要求トルクTaddが、制限値Tadd1より小さいと判断した場合は、(ステップS118)へ進み、それ以外の場合(制限値Tadd1より大きい)は、(ステップS119)へ進む。
【0085】
旋回電動モータ制御部83Xは、出力する力行要求トルクの値をTaddとして出力する(ステップS118)。
【0086】
(ステップS117)にて、力行要求トルクTaddが制限値Tadd1より大きいと判断した場合には、旋回電動モータ制御部83Xは、出力する力行要求トルクの値を、エネルギマネジメント制御ブロック82から要求されている制限値で制限をかけ、Tadd=Tadd1として出力する(ステップS119)。
【0087】
旋回電動モータ制御部83Xは、(ステップS115)で算出した制動モータトルクと(ステップS118)又は(ステップS119)で算出した力行側のトルクとを合計して、旋回電動モータ25のトルク指令値Tms2(Tms2=Tms1+Tadd)を算出する(ステップS120)。具体的には、トルク指令値演算部83dにて実行される。
【0088】
旋回電動モータ制御部83Xは、可変オーバーロードリリーフ弁のリリーフ圧が下がっているか否かを判断する(ステップS121)。具体的には、リリーフ弁制御部83eからの入力信号で判断する。リリーフ圧が下がっている場合は、(ステップS122)へ進み、それ以外の場合(リリーフ圧が通常値)は、(ステップS125)へ進む。
【0089】
旋回電動モータ制御部83Xは、他の旋回電動モータ25のトルク指令値Tms3をTRとして算出する(ステップS122)。具体的には、Aポートのリリーフ圧が下がっていて、かつAポート圧力が閾値P1よりも高いとき、又はBポートのリリーフ圧が下がっていて、かつBポート圧力が閾値P1よりも高いときに、電動モータトルク指令値Tms3=TRとする。このTRの値は、リリーフ圧を下げたことにより、旋回油圧モータ27のトルクが通常時よりも小さくなった分だけ、電動モータトルク指令値Tms3が発生するように設定するものである。
【0090】
(ステップS121)において、リリーフ圧が下がっていないと判断した場合には、旋回電動モータ制御部83Xは、他の旋回電動モータ25のトルク指令値Tms3を0として算出する(ステップS125)。
【0091】
旋回電動モータ制御部83Xは、旋回電動モータトルク指令値のTms2とTms3のいずれか大きい方を選択する(ステップS123)。具体的には、トルク指令値演算部83dにて、実行され、選択した値を旋回電動モータトルク指令値Tmsとする。
【0092】
旋回電動モータ制御部83Xは、(ステップS123)で算出した旋回電動モータトルク指令値Tmsに対して、トルク制限処理及びトルク変化率制限処理を行い、最終的な旋回電動モータトルク指令Tmsを出力する(ステップS124)。
【0093】
(ステップS124)の処理実行後、リターンを経由して(ステップS111)に戻り、再度処理を開始する。
【0094】
以上の処理フローにより算出した旋回電動モータ25のトルク指令値Tmsをパワーコントロールユニット55に出力する。
上述した旋回電動モータ25のトルク指令の算出方法によれば、従来機である旋回油圧モータによる旋回体の制駆動の特性を旋回電動モータ25にて模擬することができる。本実施の形態においては、力行の要求として算出した力行要求トルクTaddが、旋回油圧モータにおけるメータインの特性を模擬し、回生の要求として算出した旋回電動モータトルク指令値Tms1がメータアウトの特性を模擬している。このことにより、旋回油圧モータと同等の旋回特性を実現できるので、従来の油圧機における旋回操作性を確保することができる。
【0095】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態における油圧ポンプの出力を減少させる方法について
図13を用いて説明する。
図13は本発明の建設機械の一実施の形態におけるポンプ出力減少指令を算出する処理フローを示すフローチャート図である。
図13において、
図1乃至
図12に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0096】
本実施の形態において、旋回電動モータ25で駆動トルクを発生した場合には、その旋回電動モータ25が旋回体20に行った仕事量の分だけ、旋回油圧モータ27による旋回体20の仕事量を減らすように、油圧ポンプ41の容積を減少させる制御を行う。このことにより、エンジン22の負荷を減らすことができる。
【0097】
図13における処理は、コントローラ80の油圧ポンプ出力減少制御部83fとポンプ吸収トルク補正演算部83gで主に実行される。
油圧ポンプ出力減少制御部83fは、旋回電動モータ25の出力Pmsを計算する(ステップS131)。具体的には、トルク指令値演算部83dで算出した電動モータトルク指令値Tmsの信号と旋回モータ速度Wsとを乗算して次式により旋回電動モータ25の出力Pmsを算出する。
Pms=Tms×Ws・・・(2)
油圧ポンプ出力減少制御部83fは、旋回電動モータ25が力行中か否かを判断する(ステップS132)。具体的には、数式(2)で算出した旋回電動モータ25の出力Pmsが、0以上の場合を力行中として判断している。旋回電動モータ25が力行中と判断した場合は、(ステップS133)へ進み、それ以外の場合は、リターンへ進む。
【0098】
油圧ポンプ出力減少制御部83fは、ポンプ出力減少指令を計算する(ステップS133)。具体的には、旋回レバー操作量と旋回モータ速度に基づいたテーブルを参照してポンプ出力減少率を算出し、旋回電動モータ25の出力Pmsとポンプ出力減少率とを乗算して、ポンプ出力減少指令を算出する。
【0099】
油圧ポンプ出力減少制御部83fは、出力制限処理を行う(ステップS134)。具体的には、ポンプ出力減少指令に出力制限処理を行い、その後、ポンプ吸収トルク補正演算部83gで、ポンプ吸収トルク指令として、レギュレータ41aに出力する。この結果、レギュレータ41aが斜板の傾転角を制御することで、油圧ポンプ41の出力が減少する。
【0100】
油圧ポンプ出力減少制御部83f及びポンプ吸収トルク補正演算部83gは、(ステップS134)の処理終了後、又は、(ステップS132)にて、旋回電動モータ25が力行中であると判断されなかった場合には、リターンを経由して(ステップS131)に戻り、再度処理を開始する。
【0101】
上述した本発明の建設機械の一実施の形態によれば、旋回電動モータ25の力行時に、旋回電動モータ25の出力に油圧ポンプ効率を加味して油圧ポンプ41の動力を下げるように制御するので、旋回の駆動に必要な分だけの油圧ポンプ41の動力を確保できる。この結果、良好な操作性を確保することができ、大きな燃費低減効果を得ることができる。
【0102】
また、上述した本発明の建設機械の一実施の形態によれば、旋回電動モータ25の力行時における旋回電動モータ25のトルクを、旋回体20の旋回操作レバー72の操作量と旋回速度に基づいて算出するので、旋回操作レバー72の操作量や負荷に応じて変化する旋回油圧モータ27のトルクを旋回電動モータ25が補償することができる。この結果、所望のトルクを得ることができ、良好な操作性が確保できる。