特許第5969438号(P5969438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969438太陽光発電システム及び太陽光発電制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969438
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】太陽光発電システム及び太陽光発電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20160804BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   H02J7/35 K
   H02J3/38 130
   H02J7/35 A
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-172923(P2013-172923)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-42102(P2015-42102A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 博基
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−270758(JP,A)
【文献】 特開2009−027797(JP,A)
【文献】 特開2013−165533(JP,A)
【文献】 特開2007−037226(JP,A)
【文献】 特開2009−065820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電パネルと、
前記太陽光発電パネルが発電した電力を交流電力に変換する電力変換部と、
前記太陽光発電パネルが発電した電力により充電されると共に、充電された電力を前記電力変換部に放電する蓄電部と、
前記太陽光発電パネルでの発電量の変動を予測し、その予測した変動が一定時間以内に所定量以上の変動であるとき、前記蓄電部での放電又は充電により、前記電力変換部に入力される電力の変動を、前記一定時間を越えた時間による変動に緩和する蓄電制御部とを備え、
前記蓄電制御部は、発電量が単位時間当たり所定量以上低下することを予測し、前記蓄電部での充電残量が放電で緩和できる量であると判断したとき、発電量が低下すると予測されるタイミングから前記蓄電部で放電を行うことで、前記電力変換部に入力する電力の変動を緩和する
太陽光発電システム。
【請求項2】
太陽光発電パネルと、
前記太陽光発電パネルが発電した電力を交流電力に変換する電力変換部と、
前記太陽光発電パネルが発電した電力により充電されると共に、充電された電力を前記電力変換部に放電する蓄電部と、
前記太陽光発電パネルでの発電量の変動を予測し、その予測した変動が一定時間以内に所定量以上の変動であるとき、前記蓄電部での放電又は充電により、前記電力変換部に入力される電力の変動を、前記一定時間を越えた時間による変動に緩和する蓄電制御部とを備え、
前記蓄電制御部は、発電量が単位時間当たり所定量以上上昇することを予測し、前記蓄電部での充電残量が放電で緩和できる量であると判断したとき、発電量が上昇すると予測されるタイミングの前から前記蓄電部からの放電を行うことで、前記電力変換部に入力する電力の変動を緩和する
太陽光発電システム。
【請求項3】
太陽光発電パネルと、
前記太陽光発電パネルが発電した電力を交流電力に変換する電力変換部と、
前記太陽光発電パネルが発電した電力により充電されると共に、充電された電力を前記電力変換部に放電する蓄電部と、
前記太陽光発電パネルでの発電量の変動を予測し、その予測した変動が一定時間以内に所定量以上の変動であるとき、前記蓄電部での放電又は充電により、前記電力変換部に入力される電力の変動を、前記一定時間を越えた時間による変動に緩和する蓄電制御部とを備え、
前記蓄電制御部は、発電量が単位時間当たり所定量以上上昇することを予測し、前記蓄電部での充電残量が放電で緩和できない量であると判断したとき、発電量が上昇すると予測されるタイミングから前記蓄電部に充電を行うことで、前記電力変換部に入力する電力の変動を緩和する
太陽光発電システム。
【請求項4】
太陽光発電パネルと、前記太陽光発電パネルが発電した電力を交流電力に変換して出力する電力変換部と、前記太陽光発電パネルが発電した電力により充電されると共に充電された電力を放電する蓄電部とを備えた太陽光発電システムを制御する太陽光発電制御方法において、
前記太陽光発電パネルでの発電量の変動を予測する予測処理と、
前記予測処理で予測した変動が一定時間以内に所定量以上であるとき、前記蓄電部での放電又は充電により、前記電力変換部に入力される電力の変動を、前記一定時間を越えた時間による変動に緩和する充放電制御処理とを含み、
前記充放電制御処理は、発電量が単位時間当たり所定量以上低下することを予測し、前記蓄電部での充電残量が放電で緩和できる量であると判断したとき、発電量が低下すると予測されるタイミングから前記蓄電部で放電を行うことで、前記電力変換部に入力する電力の変動を緩和する処理を行う
太陽光発電制御方法。
【請求項5】
太陽光発電パネルと、前記太陽光発電パネルが発電した電力を交流電力に変換して出力する電力変換部と、前記太陽光発電パネルが発電した電力により充電されると共に充電された電力を放電する蓄電部とを備えた太陽光発電システムを制御する太陽光発電制御方法において、
前記太陽光発電パネルでの発電量の変動を予測する予測処理と、
前記予測処理で予測した変動が一定時間以内に所定量以上であるとき、前記蓄電部での放電又は充電により、前記電力変換部に入力される電力の変動を、前記一定時間を越えた時間による変動に緩和する充放電制御処理とを含み、
前記充放電制御処理は、発電量が単位時間当たり所定量以上上昇することを予測し、前記蓄電部での充電残量が放電で緩和できる量であると判断したとき、発電量が上昇すると予測されるタイミングの前から前記蓄電部からの放電を行うことで、前記電力変換部に入力する電力の変動を緩和する処理を行う
太陽光発電制御方法。
【請求項6】
太陽光発電パネルと、前記太陽光発電パネルが発電した電力を交流電力に変換して出力する電力変換部と、前記太陽光発電パネルが発電した電力により充電されると共に充電された電力を放電する蓄電部とを備えた太陽光発電システムを制御する太陽光発電制御方法において、
前記太陽光発電パネルでの発電量の変動を予測する予測処理と、
前記予測処理で予測した変動が一定時間以内に所定量以上であるとき、前記蓄電部での放電又は充電により、前記電力変換部に入力される電力の変動を、前記一定時間を越えた時間による変動に緩和する充放電制御処理とを含み、
前記充放電制御処理は、発電量が単位時間当たり所定量以上上昇することを予測し、前記蓄電部での充電残量が放電で緩和できない量であると判断したとき、発電量が上昇すると予測されるタイミングから前記蓄電部に充電を行うことで、前記電力変換部に入力する電力の変動を緩和する
太陽光発電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システム及び太陽光発電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各地で、太陽光発電パネルを多数配置した、大規模な太陽光発電所が設置されている。太陽光パネルは、日射量により発電量の変動が大きい。すなわち、太陽光発電パネルに明るい日光が照射されたとき発電量が大きく、太陽光パネルに照射される日光の低下によって発電量が低下する。
例えば、太陽に雲がかかっていない状況から、厚い雲に覆われた状況に変化したとき、発電量は急激に落ち込む。逆の場合には、発電力が急激に増える。
【0003】
送配電を行う電力系統から見た場合、太陽光発電所の発電量の急激な変動は好ましくない。すなわち、発電量の急激な変動があると、電力系統は、電力系統自身が持つ周波数調整能力を超えて、周波数が規定値を維持できなくなってしまう。また、電圧についても、発電量の急激な変動時に規定された範囲外になる可能性がある。
【0004】
従来、太陽光発電所での発電量の変動に対処する技術としては、特許文献1,2,3に記載されたものが提案されている。
特許文献1に記載された技術は、太陽光発電システムの出力予測を行い、その出力予測結果により、ガスエンジン発電機やディーゼルエンジン発電機の出力を調整して、一定の地域内でのエネルギーの自給自足を行うものである。
特許文献2に記載された技術は、全天カメラで空を撮影して、太陽光発電に影響する雲を観察して、その観察結果に基づいて、ガスエンジン発電機を起動させるものである。
特許文献3に記載された技術は、カメラで雲を撮影して、太陽電池の出力変動を予測し、その予測に基づいて、合計の発電量が減少しないように発電機の起動状態を制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−252940号公報
【特許文献2】特開2007−184354号公報
【特許文献3】特開2005−312163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2,3に記載されるように、太陽光発電所とは別に設置された発電機を制御することで、発電量の変動を少なくすることは、従来から様々な提案がなされている。しなしながら、太陽光発電所と発電機を連携させるためには、太陽光発電所の発電量の減少に応じて、直ちに発電機を起動できるようにする必要がある。そのため、発電機を常時待機させておく必要があり、システム構成が複雑かつ大規模になってしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献3には、発電機の代わりに大容量の蓄電池を使用して、太陽光発電システムの出力変動に対処することも記載されている。しかしながら、従来から提案されている蓄電池を使用したシステムは、いずれも太陽光発電の出力が低下したとき、その低下した発電量そのものを蓄電池が補うものである。したがって、メガソーラー発電所のような大規模な発電所になるに従って、必要な蓄電池の容量が非常に大きくなってしまうという問題がある。
また、蓄電池は、充電や放電を適切に制御する必要がある。すなわち、蓄電池は、蓄電量が少ないときに放電を行って過放電となったり、蓄電量が多いときに充電を行って過充電となることがある。このような過放電や過充電があると、蓄電池の寿命を極端に短くしてしまう場合があり、したがってこのような事態を防ぐためにも、適切な充放電の制御が必要である。
しかしながら、太陽光発電パネルと蓄電池を組み合わせて、太陽光発電パネルの出力の変動を抑える処理を行うようにした場合に、蓄電池の寿命を考慮した制御を行うと、発電量の変動抑圧が十分にできない状況が発生し、好ましくない。
【0008】
本発明は、太陽光発電パネルの出力変動を抑えることが、簡単な構成で良好に行える太陽光発電システム及び太陽光発電制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の太陽光発電システムは、太陽光発電パネルと、太陽光発電パネルが発電した電力を交流電力に変換する電力変換部と、太陽光発電パネルが発電した電力により充電されると共に、充電された電力を電力変換部に放電する蓄電部と、蓄電制御部とを備える。
蓄電制御部は、太陽光発電パネルでの発電量の変動を予測し、その予測した変動が一定時間以内に所定量以上の変動であるとき、蓄電部での放電又は充電により、電力変換部に入力される電力の変動を、一定時間を越えた時間による変動に緩和する。
さらに、蓄電制御部は、発電量が単位時間当たり所定量以上低下することを予測し、蓄電部での充電残量が放電で緩和できる量であると判断したとき、発電量が低下すると予測されるタイミングから蓄電部で放電を行うことで、電力変換部に入力する電力の変動を緩和する処理を行う。
あるいは、蓄電制御部は、発電量が単位時間当たり所定量以上上昇することを予測し、蓄電部での充電残量が放電で緩和できる量であると判断したとき、発電量が上昇すると予測されるタイミングの前から蓄電部からの放電を行うことで、電力変換部に入力する電力の変動を緩和する処理を行う。
あるいはまた、蓄電制御部は、発電量が単位時間当たり所定量以上上昇することを予測し、蓄電部での充電残量が放電で緩和できない量であると判断したとき、発電量が上昇すると予測されるタイミングから蓄電部に充電を行うことで、電力変換部に入力する電力の変動を緩和する処理を行う。
【0010】
本発明の太陽光発電制御方法は、太陽光発電パネルと、太陽光発電パネルが発電した電力を交流電力に変換して出力する電力変換部と、太陽光発電パネルが発電した電力により充電されると共に充電された電力を放電する蓄電部とを備えたシステムを制御する。
そして、本発明の太陽光発電制御方法は、太陽光発電パネルでの発電量の変動を予測する予測処理と、蓄電部の充放電制御処理とを行う。
蓄電部の充放電制御処理は、予測処理で予測した変動が一定時間以内に所定量以上であるとき、蓄電部での放電又は充電により、電力変換部に入力される電力の変動を、一定時間を越えた時間による変動に緩和する処理を行う。
さらに、充放電制御処理として、発電量が単位時間当たり所定量以上低下することを予測し、蓄電部での充電残量が放電で緩和できる量であると判断したとき、発電量が低下すると予測されるタイミングから蓄電部で放電を行うことで、電力変換部に入力する電力の変動を緩和する。
あるいは、充放電制御処理として、発電量が単位時間当たり所定量以上上昇することを予測し、蓄電部での充電残量が放電で緩和できる量であると判断したとき、発電量が上昇すると予測されるタイミングの前から蓄電部からの放電を行うことで、電力変換部に入力する電力の変動を緩和する。
あるいはまた、充放電制御処理として、発電量が単位時間当たり所定量以上上昇することを予測し、蓄電部での充電残量が放電で緩和できない量であると判断したとき、発電量が上昇すると予測されるタイミングから蓄電部に充電を行うことで、電力変換部に入力する電力の変動を緩和する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、太陽光発電パネルの発電量の急激な変動が予測されるとき、その急激な変動が予想されるタイミングの前又は後で蓄電部の放電又は充電を行い、電力の変動を長い時間での変動に緩和することで、電力系統への影響を小さくすることができる。
この場合、蓄電部で蓄電する容量は、少なくとも発電量の急激な変動を緩和する程度の容量を備えればよく、小容量の蓄電部で実現が可能であり、システム構成を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態によるシステム構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態による撮影画像から太陽と雲の関係を予測する例を示す図である。
図3】本発明の一実施の形態による雲濃度と太陽の遮蔽率との関係の例を示す図である。
図4】本発明の一実施の形態による出力予測に基づいた充放電制御処理の例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施の形態による充電と放電の決定処理の例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施の形態による発電出力の変動例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.システム全体の構成例]
以下、本発明の一実施の形態の例(以下、「本例」と称する。)を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本例の太陽光発電システムの全体構成を示すブロック図である。
本例のシステムは、太陽光発電パネル3と、太陽光発電パネル3が発電した直流電源を交流電源に変換する電力変換装置5とを備える。電力変換装置5が変換した交流電力は、電力系統6に送電される。太陽光発電パネル3は、比較的広い面積の場所に多数設置される、例えばメガソーラーと称されるもの(最大出力が1000kW以上のシステム)が好ましい。但し、メガソーラーなどの大規模なシステムに適用するのは1つの例であり、住宅の屋根などに設置された出力が数kW程度のシステムでもよい。
【0014】
電力変換装置5には、発電量計測部21が設けられ、太陽光発電パネル3の発電量が計測される。この発電量計測部21が計測する発電量は、設置された全ての太陽光発電パネル3の合計の発電量を計測する場合と、所定数のパネルごとの発電量を計測する場合のいずれでもよい。
【0015】
また、本例のシステムでは、電力変換装置5に蓄電池4が接続されている。蓄電池4は、太陽光発電パネル3が発電した直流電源により充電される。また、蓄電池4によって放電される電力が、電力変換装置5に供給される。蓄電池4は、電力変換装置5内の充放電処理部22により充電と放電が繰り返し実行される。なお、充電と放電の実行処理の詳細については後述する。
【0016】
蓄電池4としては、例えば、リチウムイオン電池、鉛電池、ナトリウム・硫黄電池、レドックス・フロー電池など、実用化された各種二次電池が使用可能である。蓄電を行う手段として蓄電池を使用するのは一例であり、蓄電池4の代わりに、二次電池以外の蓄電部を使用してもよい。すなわち、蓄電部として、蓄電池と同様に充電と放電が可能な大容量のコンデンサ(電気二重層コンデンサなど)などを使用してもよい。但し、蓄電部は、後述する充放電動作で説明するように、比較的急速な充電や放電が行えるものが好ましい。
蓄電池4は、太陽光発電パネル3が発電した電力で充電されることが基本であるが、例えばシステムの起動時などの通常とは異なる状態のときに、電力系統6から得た交流電源を電力変換装置5で変換した直流電源で充電してもよい。
【0017】
電力変換装置5には、ネットワーク2を介して充放電制御装置1が接続されている。充放電制御装置1は、電力変換装置5内の発電量計測部21が計測した発電量と、充放電制御装置1自身が予測した発電量の変化に基づいて、充放電処理部22に蓄電池4の充電又は放電を指示する。なお、蓄電池4が太陽光発電パネル3の発電電力で充電を行うということは、電力変換装置5が電力系統6側に供給する交流電源が、充電分だけ減少することを意味する。また、蓄電池4が放電を行うということは、電力変換装置5が電力系統6側に供給する交流電源が、放電分だけ増加することを意味する。
【0018】
充放電制御装置1は、太陽光発電出力予測部11と、計画立案パラメータ設定部12と、蓄電池充放電計画立案部13と、表示部14と、蓄電量計算部15と、充放電指示部16と、通信部17とを備える。また、充放電制御装置1は、カメラ18を備える。カメラ18は、太陽光発電パネル3が設置された場所の上空を撮影してカラー画像を得る。この場合、カメラ18は、少なくとも太陽が通過する南側の空が撮影できる位置であればよい。あるいは、カメラ18が、パン・チルターと称される駆動機構を備えて、カメラ18が太陽を追尾する構成としてもよい。カメラ18が撮影した画像データは、太陽光発電出力予測部11に供給される。
【0019】
太陽光発電出力予測部11は、カメラ18が撮影した画像から、太陽光発電パネル3の発電出力の変化を予測する。カメラ18が撮影した画像を基に太陽光発電出力予測部11が行う予測処理は、空画像中の太陽と雲の位置に基づいて、太陽にどの程度の厚さの雲がかかるかを判断して行う予測処理であり、比較的短い時間(例えば数分先まで)の予測処理である。なお、太陽光発電出力予測部11が行う予測処理の具体的な例については後述する。
【0020】
太陽光発電出力予測部11が予測した発電出力の変化のデータは、蓄電池充放電計画立案部13に供給される。蓄電池充放電計画立案部13には、計画立案パラメータ設定部12が接続されており、この計画立案パラメータ設定部12から蓄電池充放電計画立案部13に計画立案に必要なパラメータのデータが供給される。
また、蓄電量計算部15は、電力変換装置5からネットワーク2及び通信部17を介して、蓄電池4の状態を取得し、蓄電池4の充電残量を計算する。蓄電池充放電計画立案部13には、蓄電量計算部15が計算した蓄電池残量のデータが供給される。
【0021】
そして、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電出力予測部11からの発電出力の変化データと、計画立案パラメータ設定部12からの計画立案に必要なパラメータのデータと、蓄電量計算部15からの蓄電池残量のデータとを使用して、蓄電池4の充放電計画を立案する。但し、ここでの蓄電池4の充放電計画は、比較的短い時間の発電出力の変化の予測に基づいた、比較的短時間の充放電計画である。
蓄電池充放電計画立案部13が作成した充放電計画のデータは、充放電指示部16に供給される。充放電指示部16は、充放電計画に基づいて、通信部17から電力変換装置5に充電又は放電の指示を行う。この充電又は放電の指示を受信した電力変換装置5の充放電処理部22が、蓄電池4の充電又は放電を指示する。
【0022】
また、充放電制御装置1は、表示部14を備える。この表示部14は、太陽光発電出力予測部11が予測した発電出力の変化予測結果や、蓄電池充放電計画立案部13が作成した蓄電池充放電計画などを表示する。
【0023】
なお、充放電制御装置1の構成として示した各部分は、それぞれ個別に予測などの計算処理を行う処理部として構成してもよいが、例えば、コンピュータ装置と、コンピュータ装置に接続された周辺機器で構成してもよい。このコンピュータ装置とその周辺機器で構成した場合には、太陽光発電出力予測部11や蓄電池充放電計画立案部13などの処理部は、コンピュータ装置に実装されたソフトウェアの実行で、制御部がメモリ上に作成する作業領域などに形成される。
【0024】
[2.空画像から太陽と雲の位置を予測する例]
図2は、カメラ18が撮影した空画像から、発電出力の変化を予測する処理を説明する図である。太陽光発電出力予測部11は、カメラ18が撮影した空画像から太陽光発電出力の変化を予測する。
図2(a)は、太陽光発電出力予測部11が、カメラ18から受け取った空画像41の例である。
【0025】
カメラ18は、一定周期(例えば5秒周期)で、太陽及びその周辺の雲を撮影し、太陽光発電出力予測部11は、その一定周期で撮影された空画像41を取得する。快晴の場合を除いて、空画像41には、雲42bが含まれている。また、空画像41中には、太陽が存在する。しかしながら、太陽の明度は極端に高く、空画像41においては、ハレーション42aとして太陽が現れ、太陽の輪郭が現れないことが多い。
したがって、太陽光発電出力予測部11は、空画像41中の所定の閾値以上の明度を有する箇所をハレーション42aとして検出し、検出したハレーション42aを含む所定の大きさの領域43を空画像41から切り取る。太陽光発電出力予測部11は、このような画像の切り取り処理を、それぞれのタイミングで撮影された空画像41について実行する。
【0026】
図2(b)は、太陽光発電出力予測部11が、ハレーション42aを太陽44に置き換える処理の例を説明する図である。
太陽光発電出力予測部11は、切り取った領域43のハレーションの重心部分を中心とし、所定の半径を有する円(太陽44)によってハレーションを置換する。太陽44は、画像中の大きさがほぼ一定であり、事前に半径を設定することができる。太陽光発電出力予測部11は、このような処理を、5秒毎のタイミングで撮影された空画像41から切り出した領域43について実行する。
【0027】
図2(c)は、太陽光発電出力予測部11が、雲の移動ベクトルを取得する処理の例を説明する図である。
太陽光発電出力予測部11は、連続する2つのタイミングn−1、nについての切り取った領域43同士を比較する。具体的には、太陽光発電出力予測部11は、タイミングnの雲42bの任意の小領域45aを取得し、タイミングn−1の雲42bのうちから、取得した小領域45aと形状が一致又は類似する小領域45bを探し出す。そして、小領域45b内のある点を起点とし、小領域45a内の対応する点を終点とする移動ベクトル46を定義する。
【0028】
太陽光発電出力予測部11は、この移動ベクトル46の向きから、雲42bの画像上における移動方向を取得する。さらに、タイミングn−1とタイミングnとの間の時間間隔と移動ベクトル46の長さから、雲42bの画像上における移動速度を取得する。太陽光発電出力予測部11は、このようにして取得した雲42bの移動方向及び移動速度に基づいて、現時点をタイミングnとした場合の、任意の将来時点における雲42bの画面上の位置を特定できる。
【0029】
[3.雲濃度と遮蔽率との関係の例]
太陽光発電出力予測部11は、このようにして太陽の周囲の雲の位置を予測すると、雲が太陽を遮蔽する遮蔽率を取得する。
図3(a)は、太陽光発電出力予測部11が遮蔽率を取得する処理の例を説明する図である。図3(a)の左側に示す太陽44−1は、雲が完全に覆った状態を示し、図3(a)の右側に示す太陽44−2は、雲が太陽を覆っていない領域44aと、雲が太陽を覆った領域44bとがある状態を示す。雲が完全に覆った太陽44−1は、領域44aと領域44bの双方が、雲の領域である。
【0030】
ここで遮蔽率は、太陽44と雲42bとが重複する部分の画素数を、太陽44全体の画素数で除算した百分率(%)である。すなわち、図3(a)において、右側の太陽44−2の領域44b(網掛け部分)の画素数を、左側に示す太陽44−1の領域44aと領域44bの合計の画素数で除算した百分率である。太陽光発電出力予測部11は、この遮蔽率と雲濃度とに基づいて、発電の低下率を取得する。
【0031】
図3(b)は、太陽光発電出力予測部11が雲濃度を取得する処理を説明する図である。
太陽光発電出力予測部11は、雲42bの「グレースケール」を算出する。空画像41(図2(a))は、カラー画像であり、雲42bを表示する画素は、R(赤)、G(緑)及びB(青)の3つの原色の画素値を有している。これらの画素値は、例えば8ビットで表現される場合、0〜255の範囲内のいずれかの値である。これら3つの画素値を単純平均し、又は、所定の重みを乗じた上で平均して、1つの画素値にしたものがグレースケールである。
【0032】
太陽光発電出力予測部11は、太陽44を隠している雲42bの領域のグレースケールを算出する。そして、太陽光発電出力予測部11は、算出したグレースケールを、図3(b)の雲濃度表47に当てはめ、雲濃度を取得する。図3(b)の例では、雲濃度表47は、所定の複数の閾値(「179」、「192」、・・・)によって複数の部分に区分される。例えば、太陽を隠している雲42bのグレースケールが「232」であった場合、当該太陽を隠している雲42bの雲濃度は「1」となる。雲濃度は、明るい方から順に、「1」、「2」、・・・、「5」である。また、グレースケールが「242」を越えて「255」までの範囲では、太陽光発電出力予測部11は、ハレーションと判断する。このハレーションの領域から太陽の位置を判断する処理については、既に説明した。
なお、図3(b)に示したグレースケールと雲濃度との関係は一例であり、太陽光発電出力予測部11は、ユーザ操作などで、雲濃度段階の数及びその段階を決める閾値の数値を任意に設定することができる。例えば、図3(b)では5段階の雲濃度を示したが、雲濃度「5」よりもグレースケールの値が小さい場合には、より高い雲濃度段階の数を設定してもよい。
【0033】
図3(c)は、発電電力の低下率マトリクス48の一例を示すものである。
低下率とは、ある遮蔽率かつある雲濃度における発電出力が、遮蔽率が0%である場合の発電出力を基準にして、どの程度発電量が低下するかを示す数値である。例えば、低下率10%は、雲が全く太陽を隠していない場合の発電出力を「100」とした場合、その遮蔽率かつその雲濃度における発電出力が「90」にまで低下することを意味する。図3(c)の低下率マトリクス48の縦軸は遮蔽率であり、横軸は雲濃度である。縦軸と横軸との交点のセルに、その遮蔽率かつその雲濃度における低下率が記憶されている。つまり、遮蔽率と雲濃度の組合せに関連付けて低下率が記憶されている。低下率は、太陽光発電パネル3の設置条件(設置場所、受光面の法線ベクトルの方角、受光面が地面となす角度等)、太陽光発電パネル3の性能等によっても変化する。ここでは、低下率として、発電出力を予測する対象である特定の太陽光発電パネル3の設置条件及び性能を考慮した値が記憶されている。
この図3(b)及び図3(c)に示す雲濃度や低下率を決める値は、例えば計画立案パラメータ設定部12によって不図示のメモリ等に記憶される。
【0034】
また、太陽光発電出力予測部11は、図2(c)で説明した移動ベクトル46を用いて、将来のあるタイミングでの雲の画面上の位置を算出し、算出した雲の画面上の位置に基づき、遮蔽率を算出する。なお、撮影画像から検出したそれぞれの雲の雲濃度については、現在のタイミングでの雲濃度が、将来の予測タイミングまで維持されると仮定する。そして、太陽光発電出力予測部11は、算出した遮蔽率及び仮定した雲濃度を低下率マトリクス48に当てはめて、その将来時点の発電電力の低下率を算出する。
【0035】
例えば、予測した1分後の遮蔽率が10.0%で、遮蔽した雲の雲濃度が「1」であるとき、太陽光発電出力予測部11は、図3(c)の低下率マトリクス48から、低下率5.0%と判断する。同じ雲濃度「1」で、遮蔽率が100.0%のとき、太陽光発電出力予測部11は、低下率50.0%と判断する。そして、雲濃度が高くなるに従って、それぞれの遮蔽率での低下率が高くなる。
【0036】
[4.充放電計画の立案処理の例]
図4は、蓄電池充放電計画立案部13が行う蓄電池4の充放電計画の立案処理と、その立案された充放電計画に基づいた充放電の実行処理の例を示すフローチャートである。
【0037】
図4のフローチャートに従って説明すると、まず、蓄電池充放電計画立案部13は、計画立案パラメータ設定部12において設定した計画立案のためのパラメータを取得する(ステップS101)。ここでの計画立案パラメータには、短時間での急激な変動を判定するための出力変動時間パラメータ、出力変動値パラメータ、変動緩和時間パラメータ、並びに蓄電池残量下限値及び蓄電池残量上限値を含む。
【0038】
また、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電出力予測部11から発電出力予測結果を取得する(ステップS102)。ここで、蓄電池充放電計画立案部13は、その発電出力予測結果で、単位時間あたり所定量以上となる、短時間での急激な発電出力の変動があるか否かを判断する(ステップS103)。なお、急激な変動と判断する具体的な例については後述する。このステップS103の判断で、急激な発電出力の変動がないと判断した場合には、蓄電池充放電計画立案部13は、蓄電池4の充放電による計画を立案しない。
【0039】
そして、ステップS103で急激な発電出力の変動があると判断した場合、蓄電池充放電計画立案部13は、蓄電量計算部15から蓄電池4の充電残量を取得する(ステップS104)。そして、蓄電池充放電計画立案部13が、その取得した充電残量で実行可能な蓄電池の充放電計画を作成する(ステップS105)。ここで作成する蓄電池の充放電計画は、太陽光発電パネル3の発電出力の変動を緩和するためのものである。
【0040】
ステップS105で蓄電池の充放電計画が立案されると、蓄電池充放電計画立案部13は、その立案した計画のデータを充放電指示部16に送り、充放電計画を実行させる(ステップS106)。充放電指示部16は、蓄電池充放電計画立案部13から伝送された充放電計画で充電又は放電が指示されたタイミングに、指示された電力量の充電又は放電の指示を電力変換装置5に対して行う。
【0041】
[5.充電と放電の具体的な設定例]
上述したように、太陽光発電パネル3の発電出力が急激に変動すると予測した場合、蓄電池充放電計画立案部13は、蓄電池4の充電又は放電により、太陽光発電電力の変動を緩和するように充放電計画立案する。この場合、太陽光発電出力予測部11は、空の画像中の雲と太陽との位置関係の変化から、発電出力の予測を行っているため、実際に急激な変動が発生する前から蓄電池の制御を開始することができ、柔軟な充放電計画を立案可能である。
【0042】
図5は、蓄電池充放電計画立案部13が行う、充放電計画の立案処理の例を示すフローチャートである。
まず、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の発電出力の急激な変動が、出力が減少する変動であるか、あるいは出力が上昇する変動であるかを判断する(ステップS111)。ここで、出力が急激に減少する変動であると判断したときには、蓄電池4の現在の残量が十分な残量であるか否か、すなわち、残量の閾値Eaよりも上か否かを判断する(ステップS112)。充電残量が閾値Ea以上であるとは、蓄電池4が蓄電池残量上限値に近い状態であることを示す。
【0043】
ステップS112で充電残量が閾値Ea以上であると判断したとき、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の出力が急激に低下を開始すると予測したタイミングから、蓄電池4の放電を開始させる充放電計画を立案する(ステップS113)。このステップS113で立案される充放電計画は、後述する図6(c)に示す状態の計画である。
【0044】
ステップS112で充電残量が閾値Ea未満であると判断したときには、蓄電池充放電計画立案部13は、さらに蓄電池4の現在の残量が、比較的少ない残量であるか否か、すなわち、残量の閾値Eb以下か否かを判断する(ステップS114)。充電残量が閾値Eb以下であるとは、蓄電池4が蓄電池残量下限値に近い状態であることを示す。
【0045】
ステップS114で充電残量が閾値Eb以下であると判断したとき、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の出力が急激に低下を開始すると予測したタイミングの所定時間前(数秒前)から、蓄電池4の充電を開始させる充放電計画を立案する(ステップS115)。このステップS115で立案される充放電計画は、後述する図6(b)に示す状態の計画である。
【0046】
ステップS114で充電残量が閾値Eb以下でないと判断したときには、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の出力が急激に低下を開始すると予測したタイミングの所定時間前(数秒前)から、蓄電池4の充電を開始させた後、途中で充電を放電に切り換える充放電計画を立案する(ステップS116)。このステップS116で立案される充放電計画は、後述する図6(d)に示す状態の計画である。
【0047】
また、ステップS111で、出力が急激に上昇する変動であると判断したときには、蓄電池4の現在の残量が、閾値Eaよりも上か否かを判断する(ステップS117)。
【0048】
ステップS117で充電残量が閾値Ea以上であると判断したとき、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の出力が急激に上昇を開始すると予測したタイミングの所定時間前(数秒前)から、蓄電池4の放電を開始させる充放電計画を立案する(ステップS118)。このステップS118で立案される充放電計画は、後述する図6(g)に示す状態の計画である。
【0049】
ステップS117で充電残量が閾値Ea未満であると判断したときには、蓄電池充放電計画立案部13は、さらに蓄電池4の現在の残量が、閾値Eb以下か否かを判断する(ステップS119)。
【0050】
ステップS119で充電残量が閾値Eb以下であると判断したとき、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の出力が急激に上昇を開始すると予測したタイミングから、蓄電池4の充電を開始させる充放電計画を立案する(ステップS120)。このステップS120で立案される充放電計画は、後述する図6(f)に示す状態の計画である。
【0051】
ステップS119で充電残量が閾値Eb以下でないと判断したときには、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の出力が急激に上昇を開始すると予測したタイミングの所定時間前(数秒前)から、蓄電池4の放電を開始させた後、途中で放電を充電に切り換える充放電計画を立案する(ステップS121)。このステップS121で立案される充放電計画は、後述する図6(h)に示す状態の計画である。
【0052】
この図5のフローチャートに示した充放電計画の作成処理を、充放電後の蓄電池残量から見た制御状態で示した式が、次の式1である。なお、「制御後蓄電池残量」は、充放電が行われた後の蓄電池残量である。

蓄電池残量下限値<制御後蓄電池残量<蓄電池残量上限値・・・(式1)
【0053】
ここで、充電量は、蓄電池4の充電面積×充電効率、放電量は、蓄電池4の放電面積×放電効率で表すことができる。したがって、制御後蓄電池残量は次の式2で示される。

制御後蓄電池残量=制御前蓄電池残量+充電面積×充電効率―放電面積×放電効率
・・・(式2)
この式2の条件を満たすように、蓄電池充放電計画立案部13は、充放電計画を立案する。
【0054】
図6は、太陽光発電パネル3の出力が急激に低下又は上昇したときの制御例を示す。図6において、実線で示す出力値(出力予想値)は、太陽光発電パネル3の出力値を示し、破線で示す出力値は、充電又は放電を行うことで緩和される出力値を示す。
【0055】
まず、太陽光発電パネル3の出力が急激に低下したときの例を、図6(a)〜(d)で説明する。
図6(a)は発電出力が急激に減少すると予測した場合の発電出力の変動の一例を示す。予想した出力変動が継続する時間が、予め設定した出力変動時間パラメータで決めた時間よりも短く、かつ、予想した出力変動幅が、予め設定した出力変動幅パラメータで決めた変動幅よりも大きい場合に、蓄電池充放電計画立案部13が充放電計画を立案する。出力変動時間の具体的な例としては、例えば出力変動時間が3秒よりも短い場合に、充放電計画を立案する。
【0056】
図6(b)は、蓄電池4の残量が少ない場合の制御例である。この図6(b)の場合には、太陽光発電パネル3の発電量がタイミングTaで低下を開始し、タイミングTbで低下が止まると予測したとする。このとき、蓄電池充放電計画立案部13は、タイミングTaよりも所定時間前(例えば数秒前)のタイミングTcで、蓄電池4への充電を開始し、タイミングTbで蓄電池4の充電を停止する充放電計画を立案する。このタイミングTcからタイミングTbまでの充電を行う時間は、変動緩和時間パラメータにより決まる。例えば、3秒以内の発電量の急激な変化を、3秒以上の変化である、約2倍の6秒間の変化や、約3倍の9秒間の変化に緩和する。なお、以下に説明する他の例(図6(c),(d),(f),(g),(h)など)の場合についても、同様に6秒間の変化や9秒の変化などに緩和するものである。
この蓄電池4の充電により、電力変換装置5に供給される電力の変化は、図6(b)に破線で示すような長い時間での変化に緩和されることになる。
【0057】
図6(c)は、蓄電池4の残量が多い場合の制御例である。この図6(c)の場合には、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の発電量の低下が始まるタイミングTaで、蓄電池4の放電を開始し、発電量の低下が終了したタイミングTbよりも所定時間後(例えば数秒後)のタイミングTdで、蓄電池4の放電を停止する充放電計画を立案する。このタイミングTaからタイミングTdまでの放電を行う時間についても、変動緩和時間パラメータにより決まる。
この蓄電池4の放電により、電力変換装置5に供給される電力の変化は、図6(b)に破線で示すような長い時間での変化に緩和されることになる。
【0058】
図6(d)は、蓄電池4の残量がある程度の範囲内である場合の制御例である。この図6(d)の場合には、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の発電量の低下が始まるタイミングTaよりも所定時間前(例えば数秒前)のタイミングTcで、蓄電池4への充電を開始し、その後、充電を放電に切り換えて、タイミングTfで蓄電池4の放電を停止する充放電計画を立案する。充電を放電に切り換えるタイミングは、例えば太陽電池の発電量が低下を開始するタイミングTaと、低下が停止するタイミングTbのほぼ中間位置とする。なお、発電量の予測を1秒以下の細かい時間ごとに行って、充電と放電が切り替わるタイミングについても、より正確に制御するようにしてもよい。
この蓄電池4の充電と放電とを組み合わせることにより、電力変換装置5に供給される電力の変化は、図6(d)に破線で示すような長い時間での変化に緩和されることになる。
【0059】
次に、太陽光発電パネル3の出力が急激に上昇したときの例を、図6(e)〜(h)で説明する。
図6(e)は発電出力が急激に上昇すると予測した場合の発電出力の変動の一例を示す図である。すなわち、予想した出力変動が継続する時間が、予め設定した出力変動時間パラメータで決めた時間よりも短く、かつ、予想した出力変動幅が、予め設定した出力変動幅パラメータで決めた変動幅よりも大きい場合に、蓄電池充放電計画立案部13が充放電計画を立案する。出力変動時間の具体的な例としては、例えば出力変動時間が3秒よりも短い場合に、充放電計画を立案する。
【0060】
図6(f)は、蓄電池4の残量が少ない場合の制御例である。この図6(f)の場合には、太陽光発電パネル3の発電量がタイミングTgで上昇を開始し、タイミングThで上昇が止まると予測したとする。このとき、蓄電池充放電計画立案部13は、タイミングTgで、蓄電池4への充電を開始し、発電量の上昇が終了したタイミングThよりも所定時間後(例えば数秒後)のタイミングTiで、蓄電池4の充電を停止する充放電計画を立案する。このタイミングTgからタイミングTiまでの充電を行う時間は、変動緩和時間パラメータにより決まる。
この蓄電池4の充電により、電力変換装置5に供給される電力の変化は、図6(f)に破線で示すような長い時間での変化に緩和されることになる。
【0061】
図6(g)は、蓄電池4の残量が多い場合の制御例である。この図6(g)の場合には、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の発電量の上昇が始まるタイミングTgよりも所定時間前(例えば数秒前)のタイミングTjで、蓄電池4の放電を開始し、発電量の上昇が終了したタイミングThで、蓄電池4の放電を停止する充放電計画を立案する。このタイミングTjからタイミングThまでの放電を行う時間についても、変動緩和時間パラメータにより決まる。
この蓄電池4の放電により、電力変換装置5に供給される電力の変化は、図6(g)に破線で示すような長い時間での変化に緩和されることになる。
【0062】
図6(h)は、蓄電池4の残量がある程度の範囲内である場合の制御例である。この図6(h)の場合には、蓄電池充放電計画立案部13は、太陽光発電パネル3の発電量の上昇が始まるタイミングTgよりも所定時間前(例えば数秒前)のタイミングTkで、蓄電池4からの放電を開始し、その後、放電を充電に切り換えて、タイミングTmで蓄電池4の充電を停止する充放電計画を立案する。放電を充電に切り換えるタイミングは、例えば太陽電池の発電量が上昇を開始するタイミングTgと、上昇が停止するタイミングThのほぼ中間位置とする。なお、発電量の予測を1秒以下の細かい時間ごとに行って、放電と充電が切り替わるタイミングについても、より正確に制御するようにしてもよい。
この蓄電池4の放電と充電とを組み合わせることにより、電力変換装置5に供給される電力の変化は、図6(h)に破線で示すような長い時間での変化に緩和されることになる。
【0063】
以上説明したように、本例の太陽光発電システムによると、太陽光発電パネル3の出力が短時間に急激に変化すると予測されたとき、蓄電池4の充電又は放電を行うことで、電力変換装置5から電力系統6に供給される電力の変化が緩和されるようになる。この点の効果について説明すると、電力会社などが管理する電力系統6は、ある程度の周波数調整力を持っており、緩やかな発電出力の変動については、電力系統6が備える周波数調整力で十分に調整することができる。しかしながら、短時間での急激な出力変動については、電力系統6が持つ周波数調整力では対応できない。
【0064】
ここで本例の太陽光発電システムの場合には、発電出力の変動すべてを蓄電池4で補償するのではなく、蓄電池4を適切に充放電制御することによって、太陽光パネル3の発電出力と蓄電池4の充放電を合算することで、電力系統6への出力変動を緩和することができる。したがって、電力系統6が備える周波数調整力で対処できる程度に緩和できれば、太陽光発電パネル3の発電量の変動による電力系統6への影響を極力抑えることができるという効果を有する。
また、本例の場合には、変動を緩やかにできるだけの蓄電量が確保できればよいため、出力変動のすべてを補償する場合と比べて、非常に容量の小さな蓄電池(蓄電部)で実現できる。このため、出力変動の緩和のための構成が、低コストで実現できる。
【0065】
[6.変形例]
上述した実施の形態の例では、充放電計画を作成する際には、蓄電池(蓄電部)の充電残量に基づいて、図6に示した各例の処理を切り換えるようにした。これに対して、予め何れかの処理を優先的に行うようにして、その優先的に選ばれる処理ができない条件があるときだけ、他の処理に切り換えるようにしてもよい。例えば、発電出力が急激に低下するときには、出力の低下開始と同時に放電を行う処理(図6(c)の処理)を優先的に行うようにしてもよい。
あるいは、発電出力が急激に低下するときには、図6(d)に示した充電と放電を切り換える処理だけを行い、発電出力が急激に上昇するときには、図6(h)に示した放電と充電を切り換える処理だけを行うようにしてもよい。この図6(d)や図6(h)に示す処理の場合には、蓄電池4の容量が、他の例に比べて約半分でよく、それだけ容量の小さな蓄電池(蓄電部)で実現できるようになる。
【0066】
また、上述した実施の形態の例では、図6に示した各例の処理を選択して充放電計画を作成する際に、その時点の蓄電池(蓄電部)の充電残量を、一定の閾値と比較して判断するようにした。この充電残量を閾値と比較するのは1つの例であり、蓄電部での充電残量が放電又は充電で緩和できる量であるか否かを判断できれば、その他の判断で充放電計画を作成するようにしてもよい。例えば、予想される発電出力の変化から、必要となる放電量や充電量そのものを判断して、放電と充電と充電・放電の組み合わせのいずれかを選択するようにしてもよい。
【0067】
また、カメラ18が撮影した画像から発電出力の変化を予測するのは1つの例であり、その他の処理で発電出力の変化を予測してもよい。例えば、大規模な太陽光発電所が近隣に多数存在する場合には、各太陽光発電所の制御装置どうしで通信を行って、他の太陽光発電所での発電量の変化などから、予測を行うようにしてもよい。この場合でも、カメラが撮影した画像と併用して、より正確な予測を行うようにしてもよい。
カメラが撮影した画像を利用する際に、太陽光発電出力予測部11がハレーションを利用して太陽の位置を検出する処理についても、一例であり、その他の処理で太陽の位置を検出してもよい。
【0068】
また、図6に示した充電や放電を行う例では、作成された充放電計画が終わるまで充電又は放電を行うようにしたが、実際の太陽光発電パネル3での発電量の変化をモニタして、予測した状態と所定量以上の相違があるとき、充放電計画をリアルタイムで修正するようにしてもよい。
【0069】
また、上述した実施の形態の例では、電力変換装置5と充放電制御装置1とを別の装置として構成したが、例えば太陽光発電パネル3と電力系統6の間に接続される装置が、電力変換部と蓄電制御部とを一体に備えた装置としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…充放電制御装置、2…ネットワーク、3…太陽光発電パネル、4…蓄電池、5…電力変換装置、6…電力系統、11…太陽光発電出力予測部、12…計画立案パラメータ設定部、13…蓄電池充放電計画立案部、14…表示部、15…蓄電量計算部、16…充放電指示部、17…通信部、21…発電量計測部、22…充放電処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6