(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969447
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】放射線治療装置における放射線照射野と光照射野との誤差分析方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
A61N5/10 M
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-225850(P2013-225850)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-84939(P2015-84939A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年8月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】502117734
【氏名又は名称】アールテック有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 祐
(72)【発明者】
【氏名】宮浦 和徳
【審査官】
沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−046422(JP,A)
【文献】
特開2004−290242(JP,A)
【文献】
特開2004−294507(JP,A)
【文献】
特開平10−076020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表板部と裏板部とから形成される筐体であって、前記表板部と前記裏板部との間に放射線感光紙の収納室を含む受光箱、及び
(b)前記受光箱を回転可能及び任意の角度で係止可能に支持する支持手段
を含み、
前記表板部は、放射線透過性材料からなる照射壁部を有し、前記照射壁部の表面に光照射野確認用パターンを備え、照射壁部に前記光照射野確認用パターンの特定位置に配置された位置確認用マーカー手段を備える誤差分析器を用いる、放射線治療装置における放射線照射野と、前記放射線照射野と完全に一致する領域を可視光線によって形成するための設備によって形成される光照射野との誤差分析方法であって、
(1)前記誤差分析器を治療室ベッドに載置した状態で、前記収納室内に放射線感光紙を収納した前記誤差分析器の照射壁部を、前記放射線治療装置の回転ガントリーヘッド部から照射される光照射野用可視光線及び治療用放射線の進行方向に対して垂直方向に向け、前記照射壁部上にて、測定対象の光照射野と前記光照射野確認用パターンとを一致させる工程、
(2)回転ガントリーヘッド部から、分析対象の放射線照射野を形成する治療用放射線を照射する工程、及び
(3)前記放射線感光紙を現像し、放射線照射野画像と、前記放射線感光紙に現れた位置確認用マーカー手段の位置とから、放射線照射野と光照射野との誤差を分析する工程、
を含むこと、並びに
前記位置確認用マーカー手段が放射線吸収体であること
を特徴とする、前記の誤差分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置における放射線照射野と光照射野との誤差分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの治療においては、外科療法、化学療法、放射線治療、又は免疫療法などの治療方法が主に使用されている。これらの治療方法の中で、放射線治療は、電磁波(例えば、X線又はγ線)又は粒子線(例えば、電子線、陽子線、又は中性子線)をがん細胞に照射して、がん細胞を死滅させる方法である。この放射線治療は、がん細胞を死滅させるのに十分な量の放射線を体内に照射し、一方では、正常組織に損傷を与えないようにすることを目標としているため、治療用放射線による照射範囲(放射線照射野)の正確な制御が重要である。近年は、高精度放射線治療の登場により、放射線照射野の高精度管理が一層求められるようになっている。
【0003】
放射線治療装置においては、回転ガントリーのヘッド部から、治療用放射線が患者に向けて照射される。治療用放射線は、目視することができないので、治療用放射線が照射される領域(放射線照射野)も、目視で確認することができない。そこで、放射線照射野と完全に一致する領域を可視光線によって形成するための設備(光源ランプ及び反射ミラー)が回転ガントリーヘッド部に設けられている。この可視光線による領域を光照射野と称しており、光照射野を利用して、患者の体表面へのマーキングや、放射線照射時の治療部位の位置合わせを行っている。
【0004】
図9は、回転ガントリーヘッド部における光源ランプL、ミラーM1、及び放射線源S1と、アイソセンタ面Cとの位置関係を示す模式図である。光源ランプLから照射された可視光線Vは、ミラーM1で反射され、反射光R1がアイソセンタ面Cを照射し、光照射野を形成する。この光照射野が、放射線源S1からの治療用放射線Xによって形成される放射線照射野と完全に一致するように、光源ランプLとミラーM1とが配置されている。しかしながら、光源ランプLやミラーM1が正しい位置からずれたり、ミラーM1の反射面の劣化が起きると、光源ランプLによる仮想線源位置がずれ、放射線ビームの中心軸と可視光線の光軸とが一致しなくなる。例えば、
図9に破線で示すように、ミラーM1が位置M2にずれると、反射光R1から軸R2にずれ、仮想線源が正常位置S1から異常位置S2にずれることになる。仮想線源位置がずれることにより、アイソセンタ面での光照射野と放射線照射野にずれが生じるため、光照射野に基づいて、患者の体表面へのマーキングや、放射線照射時の治療部位の位置合わせを実施すると、治療用放射線の誤照射の原因となる。従って、放射線照射野と光照射野とにずれがあるか否かを確認すること、すなわち、ミラー及び光源の設置精度の検証は極めて重要である。
【0005】
従来から、ミラー及び光源の設置精度の検証や照射野サイズの確認には、種々の方法が紹介されている(非特許文献1及び2参照)。通常の代表的方法を紹介すると、以下のとおりである。
(1)暗室状態にて、放射線感光紙を治療室ベッドに粘着テープで張り付けて固定した後、放射線感光紙の上から白紙をかぶせて放射線感光紙を完全にカバーし、同様に粘着テープでベッドに固定する。
(2)明室状態で、回転ガントリーヘッド部から前記白紙に可視光線を照射して、所定の放射線照射野に相当する光照射野を白紙上に形成し、光照射野の四隅をペンなどでマーキングする。
(3)明室状態で、白紙のマーキング位置において、前記白紙に針で穴を開け、放射線感光紙上の前記マーキング相当位置に、針でキズを付ける。
(4)暗室状態にして、白紙を取り外し、放射線感光紙に放射線を照射して、所定の放射線照射野を形成する。
(5)放射線感光紙を現像し、針によるキズ(光照射野の四隅のマーキング位置に相当)と比較することにより、放射線照射野と光照射野とのずれの検証や照射野サイズの確認を行う。
なお、可視光非感受性の放射線感光紙を使用する場合は、前記の各工程を暗室状態で実施する必要はなく、明室状態で実施することができる。
【0006】
前記の従来法では、白紙上へのマーキングと、放射線感光紙へのキズ付け操作を手動で実施するので煩雑であるだけでなく、手振れの影響などを排除することができず、近年の高精度放射線治療の観点から、精度の点で必ずしも十分ではなかった。また、治療室ベッドの水平面上に放射線感光紙や白紙を水平方向に固定する必要があることから、設置精度の検証や照射野サイズの確認を行う回転ガントリーヘッド部の位置が、ベッドの真上に制限されていた。すなわち、実際の放射線治療においては、ガントリーヘッド部が治療室ベッドの周囲で回転し、種々の角度からベッド上の患者に向けて治療用放射線(及び光照射野用可視光線)を照射するのに対し、ガントリーヘッド部がベッドの真上以外の位置に配置された場合については、設置精度の検証や照射野サイズの確認を行うことが実質的には不可能であった。更に、可視光感受性の放射線感光紙を使用する場合には、暗室状態での操作が必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】岡本裕之監修、「詳説 放射線治療の精度管理と測定技術 高精度放射線治療に対応した実践Q&A」、株式会社中外医学社、2012年11月20日、p.84−89
【非特許文献2】大西洋ほか監修、「詳説 体幹部定位放射線治療 ガイドラインの詳細と照射マニュアル」、株式会社中外医学社、2006年4月3日、p.146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、放射線治療装置の放射線照射野と光照射野との誤差分析において、マーキングなどの手動操作を不要にして煩雑性を解消すると共に、手振れの影響なども排除し、治療室ベッドに対して任意の角度に配置したガントリーヘッド部からの放射線照射及び可視光線照射に関する分析が可能で、しかも、暗室状態での操作が不要となる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題は、本発明により、
放射線治療装置における放射線照射野と光照射野との誤差分析器であって、前記誤差分析器は、
(1)表板部と裏板部とから形成される筐体であって、前記表板部と前記裏板部との間に放射線感光紙の収納室を含む受光箱、及び
(2)前記受光箱を回転可能及び任意の角度で係止可能に支持する支持手段
を含み、
前記表板部は、放射線透過性材料からなる照射壁部を有し、前記照射壁部の表面に光照射野確認用パターンを備え、照射壁部に収納室内の放射線感光紙の位置確認用マーカー手段を備える
ことを特徴とする、前記誤差分析器によって解決することができる。
【0010】
本明細書において、放射線照射野と光照射野との誤差の分析には、放射線照射野及び光照射野のずれ(例えば、上下左右の相違及び回転の相違)の有無の検出、前記ずれの距離の測定、サイズの異同の検出又は測定が含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の誤差分析器によれば、例えば、ミラー及び光源の設置精度の検証や照射野サイズの確認において、マーキングなどの手動操作が不要になるので、誤差分析操作の煩雑性が解消され、マーキングなどにおける手振れの影響などを完全に排除することができる。また、本発明の誤差分析器の照射壁部を、治療室ベッド面に平行な水平面だけでなく、任意の角度に向けることができ、例えば、治療室ベッド面に対する垂直面などへの回転も可能であるので、任意の回転角に位置する回転ガントリーヘッド部に関して、放射線照射野と光照射野との誤差の分析を実施することができる。更に、暗室状態での操作が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】放射線感光紙を収納した状態の
図1の誤差分析器のA−A線断面図である。
【
図3】放射線感光紙を収納した状態の
図1の誤差分析器の分解図である。
【
図4】回転ガントリーヘッド部が治療室ベッドの真横に位置している場合の本発明分析器の受光箱回転状態を示す模式的説明図である。
【
図5】回転ガントリーヘッド部が治療室ベッドの真上に位置している場合の本発明分析器の受光箱回転状態を示す模式的説明図である。
【
図6】回転ガントリーヘッド部が治療室ベッドの斜め上方に位置している場合の本発明分析器の受光箱回転状態を示す模式的説明図である。
【
図7】本発明による誤差分析器の表板部における光照射野確認用パターン上に、光照射野を形成した状態を示す説明図である。
【
図8】本発明による誤差分析器を用いて分析を実施した後の放射線感光紙の現像写真を示す説明図である。
【
図9】回転ガントリーヘッド部における光源ランプ、ミラー、及び放射線源と、アイソセンタ面との位置関係を示す模式図である。なお、本明細書に添付した各図面は、本発明による誤差分析器の構造を説明することが主な目的であるので、各部分の厚さなどの寸法を誇張して示すと共に、各部分の厚さの相対比も正確なものではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による誤差分析器の代表的実施態様を添付図面に沿って説明する。
図1〜
図3に示すとおり、本発明による誤差分析器10は、受光箱1と支持手段5とを含み、前記受光箱1は、表板部2と裏板部3とから形成される扁平な直方体状の筐体である。表板部2及び裏板部3は、それぞれ、ほぼ同じ大きさの扁平な板状体であり、それらの大略正方形面を相互に接触させて一体化して形成される扁平な直方体状筐体の最も広い露出表面も、大略正方形となる。裏板部3は、表板部2と一体化して結合する際に表板部2と結合する側(内部に隠れる側)となる表面に、放射線感光紙4を収納可能な寸法の凹部31を備える。また、表板部2も、裏板部3と一体化して結合する際に裏板部3と結合する側(内部に隠れる側)となる表面に、凹部21を備える。表板部2の凹部21は、
図2に示すように、裏板部3が放射線感光紙4を収納した状態で、裏板部3と放射線感光紙4とを収納可能な寸法の凹部であり、表板部2の凹部21と、裏板部3の凹部31とにより、放射線感光紙4の収納室が形成される。
【0014】
後述するように、本発明による受光箱1は、表板部2と裏板部3とを一体化し、更に放射線感光紙4を収納室内部に含んだ状態で回転させて使用するので、受光箱1を回転させた場合でも、放射線感光紙4が収納室内部で移動せず、また、裏板部3も表板部2の凹部21内で移動しないように、裏板部3の凹部31の大きさは、放射線感光紙4を嵌め込んで収納可能な寸法であることが好ましく、表板部2の凹部21の大きさも、裏板部3と放射線感光紙4を嵌め込んで収納可能な寸法であることが好ましい。
【0015】
図1〜
図3に示す誤差分析器10では、表板部2の凹部21の深さは、裏板部3の一部を収容し、裏板部3の側壁の一部を露出させているが、裏板部3の側壁全体を完全に収容する深さとすることもできる。また、
図1〜
図3に示す態様では、裏板部3の凹部31が放射線感光紙4を収納し、更にその裏板部3を表板部2の凹部21が収容するが、表板部2の凹部21によって放射線感光紙4を収納し、その表板部2を裏板部3の凹部31で収容する態様とすることもできる。更に、表板部2の凹部21と裏板部3の凹部31とを同じ寸法で形成し、それら凹部21と凹部31とで放射線感光紙4の収納室を形成させることもできる。
【0016】
図1〜
図3に示す誤差分析器10では、表板部2と裏板部3との結合は、表板部2の凹部21へ裏板部3を嵌め込むことによって行い、特に結合手段を使用しないが、適宜、任意の公知結合手段(例えば、突起と、その突起に嵌合可能な溝との組合せ)を用いることもできる。また、
図1〜
図3に示す誤差分析器10では、凹部21と凹部31とで形成される収納室においても、凹部21の内部壁面と凹部31の内部壁面との押圧によって放射線感光紙4を固定することができるが、任意の公知係止手段(例えば、爪状突起)を設けて収納室内の移動を防止することができる。
【0017】
表板部2は、裏板部3と一体化して受光箱1を形成した際に露出する照射壁部23を備え、その照射壁部23の表面に光照射野確認用パターン25を有する。照射壁部23は、本発明による誤差分析器10において、回転ガントリーヘッド部からの放射線及び可視光線を受光する壁面であり、分析対象の各種光照射野の全体を照射壁部23の表面上に目視可能に形成し、分析対象の各種放射線照射野を構成する全領域の放射線を透過して照射壁部23の内側に存在する放射線感光紙4に放射線照射野の潜像を形成させる必要がある。従って、表板部2は、少なくともその照射壁部23を形成する部分を放射線透過性で、しかも可視光線反射性の材料から形成する必要がある。
図1〜
図3に示す態様では、表板部2の全体が照射壁部23に相当し、表板部2の全体を放射線透過性で、しかも可視光線反射性の材料から形成しているが、照射壁部23の周辺部に、余白領域を設けてもよい。
【0018】
放射線透過性で、しかも可視光線反射性の材料としては、任意の公知材料を用いることができ、具体的には、例えば、各種の合成樹脂(特には、アクリル樹脂や塩化ビニル樹脂)を使用することができるので、通常は白色を呈し、光照射野の確認を容易にしている。
【0019】
表板部2の照射壁部23の露出表面には、光照射野確認用パターン25を設ける。
図1〜
図3に示す態様では、光照射野確認用パターン25として、大きさの異なる4種類の正方形パターン25a,25b,25c,25dと、中心点を通過して相互に直行する2本の目盛パターン25X,25Yを備える(
図3参照)。なお、正方形パターンや目盛パターンの数は限定されない。光照射野確認用パターンの具体的形態は、照射壁部23の露出表面上に形成される測定対象光照射野の位置の確定が可能になる限り特に限定されず、例えば、方眼紙様のパターンや、曲線を含むパターンを形成することもできる。
【0020】
表板部2の照射壁部23は、光照射野確認用パターン25の特定位置に、位置確認用マーカー手段を備える。位置確認用マーカー手段27は、例えば、放射線吸収体又は貫通孔であることができる。
図1〜
図3に示す態様では、放射線吸収体として、33個の放射線吸収球体27を備えており、33個の放射線吸収球体27の配置位置は、4種類の正方形パターン25a,25b,25c,25dのそれぞれの4つのコーナー部(4×4)と、4種類の正方形パターン25a,25b,25c,25dと2本の目盛パターン25X,25Yとの交点(8×2)と、中点の1か所である。あるいは、4種類の正方形パターン25a,25b,25c,25dのそれぞれにそって、線状の放射線吸収体を設けることもできる。このように、表板部2の照射壁部23は、放射線透過性材料中に放射線吸収体を含むので、表板部2の照射壁部23に分析対象放射線照射野を形成する放射線を照射すると、放射線吸収体の部分は放射線が透過せず、それ以外の部分は、放射線が透過して放射線感光紙に潜像を形成するので、その放射線感光紙を現像すると、分析対象放射線照射野の画像内に、放射線吸収体の位置を示す点又は線などが現れる。この放射線吸収体の配置位置は、照射野確認用パターン25の特定位置であるので、照射野確認用パターンとの相対的な位置を把握することができる。放射線吸収体としては、任意の公知材料を使用することができ、例えば、タングステンを用いることができる
【0021】
位置確認用マーカー手段27としては、貫通孔を設け、その貫通孔に針を通して放射線感光紙に傷をつけて、マーキングをすることもできる。この場合は、貫通孔のガイドに沿って針によるマーキングを実施するので、手振れなどの影響は実質的に発生しない。貫通孔の形状は、点状の他、線状(破線状)であることもできる。
【0022】
本発明による誤差分析器10は、支持手段5を含む。支持手段5は、基台部51、支持棒部53、及び連結部55を含む。基台部51は、前記誤差分析器10を、例えば、治療室ベッド上に載置して分析を行うための基台であり、所定位置で前記誤差分析器10を安定に載置することが可能であれば、形態は特に限定されない。
【0023】
支持棒部53は、基台部51から立設する2本の棒状体からなり、連結部55を介して、受光箱1を回転可能及び任意の角度で係止可能に支持する。また、連結部55は、2本の支持棒部53と受光箱1とを、回転可能及び任意の角度で係止可能に、しかも着脱自在に連結する。1対の連結部55が、受光箱1の対向する2側面のほぼ中心点で受光箱1と連結するので、受光箱1は、その2側面のほぼ中心点を結ぶ線を回転軸として回転することができる。回転軸は、厳密に言えば、照射壁部23の表面に垂直に照射された放射線が、放射線感光紙4の上に形成する目盛パターン25Yの線状画像とすることが好ましい。なお、2本の支持棒部53を受光箱1に一体的に設け、2本の支持棒部53を基台部51に着脱自在に連結するか、あるいは、支持棒部53の途中に着脱自在の連結手段を設けることもできる。回転可能及び任意の角度で係止可能に連結する手段としては、任意の公知手段を用いることができる。
【0024】
本発明による誤差分析器10は、治療室ベッドに載置した状態で、受光箱1を回転可能に、かつ任意の角度で係止可能に保持することができるので、回転ガントリーヘッド部を任意の角度で回転した状態で、放射線照射野と光照射野との誤差を分析することができる。例えば、
図4は、回転ガントリーヘッド部(図示せず)が治療室ベッド6の真横に位置しており、分析対象放射線及び可視光線が矢印Bの方向から照射される場合の模式的説明図である。この場合には、本発明による誤差分析器10を治療室ベッド6に載置し、受光箱1の表板部2の照射壁部23を、治療室ベッド6の水平面に対して垂直方向に立設させることにより、目的の誤差の分析を実施することができる。同様に、
図5に示すように、回転ガントリーヘッド部(図示せず)が治療室ベッド6の真上に位置しており、分析対象放射線及び可視光線が矢印Cの方向から照射される場合には、本発明による誤差分析器10を治療室ベッド6に載置し、受光箱1の表板部2の照射壁部23を、治療室ベッド6の水平面に対して平行になるまで回転させて係止させることにより、目的の誤差の分析を実施することができる。更にまた、
図6に示すように、回転ガントリーヘッド部(図示せず)が、
図4に示す状態と
図5に示す状態との中間位置にあり、分析対象放射線及び可視光線が矢印Dの方向から照射される場合には、本発明による誤差分析器10を治療室ベッド6に載置し、受光箱1の表板部2の照射壁部23を、治療室ベッド6の水平面に対して約45°の角度になるまで回転させて係止させることにより、目的の誤差の分析を実施することができる。本発明による誤差分析器10においては、照射壁部23を任意の角度に向けることが可能であるので、分析可能な回転ガントリーヘッド部の位置は制限されない。
【0025】
図1〜
図3に示す誤差分析器10の光照射野確認用パターン25及び放射線吸収球体27を使用して、本発明による誤差分析を実施して得られる放射線照射野の画像について、
図7及び
図8に沿って説明する。
図7は、表板部2の照射壁部23の上に、第2の正方形パターン25bと一致する光照射野Mが形成された状態を示す。この状態の回転ガントリーヘッド部から照射される分析対象放射線照射野が、前記光照射野Mと完全に一致すれば、放射線感光紙上に形成される放射線照射野画像の境界には、その4隅に放射線吸収球体27A,27B,27C,27Dの非露光点が観察されることになる。
【0026】
図8は、放射線感光紙上に形成された放射線照射野画像Nが、
図7の光照射野Mと一致せずに、ずれた場合を示す。すなわち、
図8に示す放射線照射野画像Nにおいては、放射線吸収球体27Aは観察されるものの、放射線吸収球体27B,27C,27Dは観察されない。また、放射線照射野画像Nが、光照射野Mと完全に一致する場合は、放射線照射野画像Nの中の点27Eと27Aとを結ぶ直線が放射線照射野画像Nの端縁となり、点27Fと27Aとを結ぶ直線も放射線照射野画像Nの端縁となるはずである。従って、点27Eと27Aとを結ぶ直線の延長線T1と放射線照射野画像Nの端縁の延長線T2と差異E1は、横方向の誤差を示している。同様に、点27Fと27Aとを結ぶ直線の延長線U1と放射線照射野画像Nの端縁の延長線U2と差異E2は、縦方向の誤差を示している。このようにして、放射線治療装置における放射線照射野と光照射野との誤差を分析することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の誤差分析器によれば、放射線治療装置における治療用放射線の放射線照射野と、可視光線の光照射野との誤差を簡単な操作で検出ないし測定することができ、その分析結果を利用して、放射線治療装置における放射線照射野と光照射野とを高精度に一致させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・受光箱;2・・・表板部;3・・・裏板部;4・・・放射線感光紙;
5・・・支持手段;6・・・治療室ベッド;10・・・誤差分析器;
21・・・表板部凹部;23・・・照射壁部;25・・・光照射野確認用パターン;
27・・・位置確認用マーカー手段;31・・・裏板部凹部;51・・・基台部;
53・・・支持棒部;55・・・連結部;C・・・アイソセンタ面;
L・・・光源ランプ;M1・・・ミラー;R1・・・反射光; S1・・・放射線源;
V・・・可視光線;X・・・治療用放射線。