特許第5969459号(P5969459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969459
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】鉱油を処理する方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   C10G 31/06 20060101AFI20160804BHJP
【FI】
   C10G31/06
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-504059(P2013-504059)
(86)(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公表番号】特表2013-531690(P2013-531690A)
(43)【公表日】2013年8月8日
(86)【国際出願番号】AT2011000184
(87)【国際公開番号】WO2011127512
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年4月14日
(31)【優先権主張番号】A597/2010
(32)【優先日】2010年4月14日
(33)【優先権主張国】AT
(31)【優先権主張番号】A596/2010
(32)【優先日】2010年4月14日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】512264585
【氏名又は名称】プリステック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デルガド カスティロ、ホセ ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェネシアーノ リヴェラ、アニバル ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ノイルク、ルーディガー ウヴェ
(72)【発明者】
【氏名】チェルニコフ、フョードル
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−535922(JP,A)
【文献】 特開昭58−183791(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/067636(WO,A1)
【文献】 特開昭63−296830(JP,A)
【文献】 特表2007−537351(JP,A)
【文献】 特開2001−029775(JP,A)
【文献】 特開2003−105343(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/002962(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低沸点留分の割合を増加させるために鉱油を処理する方法において、前記処理が、
第1の振動数を有する圧力波を発生させるステップと、
圧力波発生装置を通るように鉱油を通過させることにより、印加領域において前記鉱油に前記圧力波を当てるステップと、
システムを、当該システムの共振振動数である第2の振動数で励振するステップであって、前記システムは、前記圧力波発生装置と、前記圧力波発生装置まで延びておりさらには前記圧力波発生装置から離れるようにして延びるパイプと、中に含まれる前記鉱油とを含み、前記パイプのうち少なくとも一部のパイプは、前記印加領域のすぐ次にある、前記処理される鉱油を通過させるために設けられている、励振するステップと、
前記共振状態が、前記印加領域を通過した後且つタンクに到達する前に前記鉱油の一部を引き抜き、前記鉱油の前記引き抜かれた一部を再循環パイプを介して前記印加領域に再供給し、前記再循環パイプ内の圧力を、少なくとも1つの調整可能絞り弁の補助によって調整することによって実現されるステップと、
処理された前記鉱油をタンクに供給するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の振動数が、2kHzから20kHzの範囲内で選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の振動数が、補助的な発振器によって、前記励振されるシステムに印加されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧力波発生装置が、ハウジング内に装着され且つ前記処理される鉱油を通過させるロータの形態になっていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記再循環パイプ内の圧力が2つの連続する調整可能絞り弁の補助によって調整されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の方法を実施するための、低沸点留分の割合を増加させるために鉱油を処理するデバイスにおいて、
前記デバイスが、第1の振動数を有する圧力波を発生させる圧力波発生装置を有し、前記圧力波発生装置が、印加領域において前記鉱油に前記圧力波を当てるように構成される、デバイスであって、
励振されるシステムの共振振動数である第2の振動数で振動させるようにシステムを励振する手段が設けられ、前記励振されるシステムが、前記圧力波発生装置と、前記圧力波発生装置まで延びておりさらには前記圧力波発生装置から離れるようにして延びるパイプと、中に含まれる前記鉱油とを含み、前記パイプのうち少なくとも一部のパイプは、前記印加領域のすぐ次にある、前記処理される鉱油を通過させるために設けられており、前記圧力波発生装置の下流側の引き抜き箇所において前記処理される鉱油の一部を引き抜くための、さらには、前記圧力波発生装置の上流側の再供給箇所において前記圧力波発生装置に前記処理される鉱油を再供給するための、再循環パイプが設けられ、圧力を調整するために前記再循環パイプには少なくとも1つの調整可能絞り弁が配置されることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
前記圧力波発生装置が、前記鉱油が流れる前記パイプを介して、処理される鉱油に連通されることを特徴とする、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記圧力波発生装置が、ハウジング内に装着され且つ前記処理される鉱油を通過させるためのロータを有し、前記ロータが、回転するように装着され、且つ、リング形状の壁を有するディスクであり、前記ディスクには、前記リング形状の壁に沿って互いに等距離に複数の開口部が配置され、さらに、前記ロータに対して同軸に配置されるステータが、前記ステータと前記ロータの前記リング形状の壁との間に環状隙間を形成するように装着されることを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ロータが、前記リング形状の壁の内側で同軸に配置されるディスクを有し、前記ディスクが互いに等距離の複数の開口部を有し、追加の振動数の圧力波を発生させるために前記リング形状の壁に対して回転可能になっていることを特徴とする、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
鉱油中の低沸点留分の割合を増加させることを目的として、第1の振動数を用いて、鉱油を処理する圧力波発生装置の動作点を調整する方法であって、
前記圧力波発生装置が、が流れる配管を介して当該水に連通され、印加される振動数が変更され、前記動作点が、前記圧力波発生装置を通過した後の前記の温度上昇が最大となるように、前記印加される振動数の関数として決定されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低沸点留分の割合を増加させるために、液体、特に鉱油を処理する方法に関するものであり、この処理は、第1の振動数を有する圧力波を発生させるステップと、印加領域において液体に上記の圧力波を当てるステップと、そのようにして処理された液体をタンクに供給するステップとを含む。さらに、本発明は、液体を処理するための圧力波発生装置の運転位置を調整する方法に関するものである。
【0002】
さらに、本発明は、特に本発明の方法を実施するための、低沸点留分の割合を増加させるために、液体、特に鉱油を処理するデバイスに関するものであり、このデバイスは、第1の振動数を有する圧力波を発生させる圧力波発生装置を有し、この圧力波発生装置は、印加領域において液体に上記の圧力波を当てるように構成される。
【背景技術】
【0003】
この種の方法及び対応するデバイスは、例えば、欧州特許出願公開第1260266号明細書により知られており、これは、精製の過程で短鎖の割合を増加させてそれによって低沸点留分を増加させるために、鉱油及び同様の物質などの液体中の化学結合を弱めて分解する働きをする。この目的のために、機械的な振動エネルギーが、化学結合を破壊するような圧力波の形態で液体中に導入され、それによって、長鎖の高沸点分子留分の鎖が破壊される。実際に起こる分子過程はまだ完全には解明されていないが、特定の振動数を有する圧力波を用いて原油及び別の鉱油を適切に処理することにより、蒸留プロファイルが短鎖の低沸点留分に良好にシフトされ、それによって、原油及び鉱油から得られる高価値製品の収量を増加させることができることは確かである。現在、振動エネルギーによって、上記のように鎖を破壊するための共振励振を、振動数を適切に選択して液体中に引き起こすことが想定されている。
【0004】
欧州特許出願公開第1260266号明細書には、機械的振動の発生源としてロータが記載されており、このロータでは、処理される液体が、回転可能に装着される部材の中空部分内に誘導され、そこで液体は径方向外向きに流れ、そこから液体はさらにロータ内の放射状開口部を通って環状隙間内に入るように誘導され、この放射状開口部は、ロータの外側表面上で均等に配置構成される。ロータが高速で回転することにより、隙間内の液体が、回転速度及びロータの外側表面の開口部の数の関数である一定の振動数を有する振動する圧力波を受け、それにより、大量のエネルギーが液体中に導入され、化学結合が弱められるか又は分解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1260266号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低沸点留分の割合をさらに増加させるために液体をさらに効果的に前処理することを目的として、上述した種類の方法を改善することである。さらに、本発明の目的は、この方法を実施するためのデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を解決するために、本発明による上述の種類の方法は、上記の印加領域のすぐ次にある、処理液体が流れる少なくとも1つのパイプが、励振されるシステムの共振振動数である第2の振動数で振動するように励振されるように工夫されている。
【0008】
上で言及した現況技術から出発して、出願人は、第1の振動数を有する上記の圧力波を印加することに加えて、圧力波発生装置と、圧力波発生装置まで延びておりさらには圧力波発生装置から離れるように延びており当然ながらシステムを通って流れる液体を含む配管と、から構成される又はそれらを含むシステム全体が第2の振動数で振動するように励振された場合、さらにより効果的に液体の前処理が行われ、又は液体中の化学結合がさらに弱まることに気付いた。この第2の振動数はシステム全体の共振振動数であり、この振動数は、配管、特に再循環パイプ及び他のすべての器具の長さ、強度、重量及び幾何形状に加えて、設備が建てられている地面の減衰特性によって決定される。好適と考えられる特定の第1の振動数を有する圧力波を印加することを継続して実施しながら同時に第2の共振振動数で振動させるようにシステム全体を励振することにより、特に効果的に液体が前処理され、その後の蒸留ステップ及び精留ステップにおいて特に高い割合で所望の低沸点留分が得られる。しかし、上記の第2の振動数でシステム全体が共振する状態はあらゆる場合で即座に起こるわけではなく、共振状態を維持するために処理中に運転のパラメータを特定の範囲内に維持する必要があり、共振状態は、配管及び発振器を通して供給され処理される液体の量並びにその密度及び粘度に依存して実現される。
【0009】
好適には、第1の振動数を有する上記の圧力波は、処理される液体が流れる配管(flowed through piping)を介してさらには配管で構成されるシステムを介して接続される圧力波発生装置の補助により、液体中に導入され、場合によっては、圧力波発生装置は第2の振動数で振動するように励振される。第1の振動数は、第2の振動数と併せて、処理される液体中の化学結合を弱める働きをし、それによって蒸留プロファイルが鉱油の低沸点留分へとシフトされる。
【0010】
共振状態を確実に達成するために、本発明による方法は好適には、上記の印加領域を通過した後且つタンクに到達する前に、液体の一部が引き抜かれ、液体の上記の引き抜かれた一部が再循環パイプを介して上記の印加領域に再供給され、ここでは、再循環パイプ内の圧力が少なくとも1つの調整可能絞り弁の補助によって調整されるように工夫されている。本発明の方法では、第1の振動数を有する圧力波を印加することは、それ自体は現況技術により既知である振動の振動数で実施され、ここでは、通常はシステム全体の共振は起こらない。しかし、圧力波の印加領域の通過後に液体の一部を再循環させ、さらに少なくとも1つの調整可能絞り弁の補助により再循環パイプ内の圧力を変化させ、それにより、引き抜き箇所又は再供給箇所に適切に過剰圧力及び不足圧力(underpressure)を発生させることにより、圧力波発生装置によりシステム全体に発せられる圧力波が変化し、その結果、システム全体が共振し、既に上で言及したように運転パラメータの特定の範囲にわたって安定した状態が維持される。言及した過剰圧力及び不足圧力に加えて、共振状態を実現するためには、圧力波発生装置内の液体の実際の圧力も重要であると考えられてよく、したがって、少なくとも1つの調整可能絞り弁は、共振状態を実現することを目的として圧力波発生装置内で圧力を正確に調整する手段としてもみなされてよい。この特定の圧力は既に上で言及した種々のファクタによって決定される。したがって、共振状態では、共振状態を弱めることなく、処理される液体のスループット及び物理的特性を特定の範囲内で変化させることができる。また、共振状態では、処理される液体を再循環パイプを介して再供給することを中断したり又は停止したりすることができる。本発明の運転モードは、運転パラメータが過度に変化して共振状態が損なわれ、新たに共振状態を誘発しなければならない場合にのみ、再び必要となる。一方で、再循環パイプを通る特定の流れを維持することが有用である場合がある。処理される液体の一部は圧力波発生装置を複数回通過することで、第1の振動数の圧力波を複数回受けることになり、それにより、液体中の化学結合がさらに激しく弱まる。
【0011】
第1の振動数は、好適には、化学結合を最大限に弱める振動数範囲であることが分かっている、2kHzから150kHzの間の範囲、特に2kHzから20kHzの間の範囲内で選択される。第2の振動数は通常、第1の振動数とは異なり、1015Hz程度の高い振動数になる可能性もある。本発明の好適な実施例によれば、第2の振動数は、補助的な発振器により、励振されるシステムに印加される。第2の振動数は、共振状態を確実且つ迅速に実現するために、補助的な発振器によりシステム全体に対して計画的に誘発され得る。
【0012】
原理的には、圧力波発生装置として、機械的エミッタ、電気機械的エミッタ、圧電エミッタ、及び、別の音響エミッタが使用され得る。しかし、本発明の好適な実施例によれば、本方法は、圧力波発生装置が、ハウジング内に装着される、処理される液体が流れるためのロータを有し、したがって、このロータは欧州特許出願公開第1260266号明細書による言及した現況技術に見られるようなロータであってもよい。以下でより詳細な説明を行うように工夫されている。
【0013】
実際には、2つの連続する調整可能絞り弁の補助により再循環パイプ内の圧力を調整するような運転モードが特に好適であることが分かった。これらの2つの連続する調整可能絞り弁は、圧力波発生装置の後ろの引き抜き箇所における再循環パイプ内の圧力が再供給箇所の圧力とは別に調整され得るような形で、再循環パイプ内において流れ方向に連続して配置される。これにより最大の処理能力が得られ、熟練者により迅速に共振状態が得られるようになる。
【0014】
特に本発明の方法を実施するための、低沸点留分の割合を増加させるために、液体、特に鉱油を処理するための本発明のデバイスは、第1の振動数を有する圧力波を発生させるための圧力波発生装置を有し、上記の圧力波発生装置は、印加領域において液体に上記の圧力波を当てるように構成され、また、このデバイスは、少なくとも1つのパイプが、処理される液体がそこを通って流れることができるように構成され、且つ、上記の印加領域のすぐ後方にくるように構成され、ここでは、励振されるシステムの共振振動数である第2の振動数で振動させるように上記のパイプを励振するための手段が設けられることを特徴とする。
【0015】
好適な一実施例によれば、圧力波発生装置の下流側の引き抜き箇所において処理液体の一部を引き抜くための、さらには、圧力波発生装置の上流側の再供給箇所において圧力波発生装置に処理液体を再供給するための、再循環パイプが設けられ、したがって、圧力を調整するために再循環パイプ内には少なくとも1つの調整可能絞り弁が配置される。
【0016】
好適な一実施例によれば、このデバイスはさらに、圧力波発生装置が、フロースルー配管を介して、処理される液体、特に鉱油に接続されるように実施される。
【0017】
好適には、このデバイスは、圧力波発生装置が、ハウジング内に装着され且つ処理される液体を通過させるためのロータの形態をとり、このロータがその軸が回転するように装着され且つリング形状の壁を有するディスクとして実施され、ここでは、このリング形状の壁に沿って互いに等距離に複数の開口部が配置され、さらに、ロータに対して同軸にステータが装着され、それにより、ステータとロータのリング形状の壁との間に環状隙間が形成されるように実施される。
【0018】
一部の用途では、ロータのリング形状の壁とステータとの間での相互作用によって発生する振動数の影響を一般には受けない化学結合を弱めるために、1つの第1の振動数に加えて追加の振動数を発生させることが有用である場合がある。この目的のために、本発明は有利には、ロータが、リング形状の壁の内側で同軸に配置されるディスクを有し、このディスクが、互いに等距離の複数の開口部を有するように工夫されている。所望される場合、ディスクはさらに、リング形状の壁に対して回転可能に装着されてよい。この場合、ロータのディスク及びリング形状の壁は、それらが相対的に回転可能であることにより、ちょうどロータのリング形状の壁及びステータとして機能するような追加のシステムを形成することになる。いずれの場合も、ディスク上で均等な間隔で配置される開口部の間の距離を適切に選択することにより、追加の振動数を所望される通りに発生させることができる。この追加の振動数は、励振されるシステムの共振振動数である第2の振動数に乱されない。
【0019】
液体中の低沸点留分の割合を増加させることを目的として、第1の振動数を用いて、液体、特に鉱油を処理するための圧力波発生装置の動作点を調整するための本発明の方法は、圧力波発生装置がフロースルー配管を介して液体、特に水に連通され、圧力波発生装置を通過した後の液体の温度上昇が最大になるように、印加される振動数が変更され、さらには、印加される振動数の関数として動作点が決定されるように実施される。
【0020】
出願人は、圧力波発生装置に連通されている水の温度を急激に上昇させるような振動数で圧力波発生装置が運転される場合、実際に鉱油も特に効果的に処理されることを意図せず確認した。したがって、本発明の方法は、圧力波発生装置を非常に単純に較正することが可能である。
【0021】
表1では、鉱油及び2つの異なるタイプの圧力波発生装置を用いて実施されたテストランのデータが示されている。密度及びAPI°の値は鉱油の密度を表している。試料の粘度に加えて、Wt%が軽量の低沸点留分の割合を示している。
【0022】
1行目は鉱油の未処理の試料のデータを示している。2行目及び3行目は、2行目が図2に示されるロータを用いた処理を示しており、3行目が図3に示されるロータを用いた処理を示しており、2つの異なるタイプの圧力波発生装置を用いて処理を行った後で、鉱油の軽量留分の割合が大幅に増加し、その結果、原油の試料から高価値の留分(high−value fraction)が得られたことを示している。
【0023】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、概略的に示される実施例を用いた図を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0026】
図1では、例えば鉱油のような液体を処理する本発明の方法を実施するデバイスが1で示されている。このデバイスは原油タンク2及び生成物容器3を有する。原油又は鉱油がタンク2から容器3までポンプで注入されるか又はタンク2から容器3まで流れ込むときに、例えばロータの形態の圧力波発生装置又は発振器4を通過する。該当する配管が5で示されている。共振状態を実現するために、引き抜き箇所7において発振器から液体の一部を引き抜き、再供給箇所8においてその液体の一部を発振器に再供給するための再循環パイプ6が設けられる。引き抜き箇所7の圧力は調整可能絞り弁9を介して調整され得る。この圧力は、調整可能絞り弁9における圧力降下に関係なく、再供給箇所8において圧力を所望される通りに調整するために、調整可能絞り弁10上でさらに低減され得る。配管5及び発振器4のスループットに応じて、さらには、運ばれた処理される液体の物理的特性に応じて、調整可能絞り弁9及び調整可能絞り弁10の特定の調整値において発振器4から発せされる圧力波が配管5のシステム内に伝播し、その結果、システム全体における共振状態が実現され、それにより、処理される液体中の化学結合が所望される通りに弱まる。
【0027】
図2では、本発明の方法を実施するのに使用され得るロータが描かれている。発振器4は、駆動装置12及び適切な動力伝達装置13に加えて、ロータ・ハウジング14と、ロータ・ハウジング14に装着されるステータ16と協働するロータ15と、を有する。ロータ15とステータ16の間に、環状隙間17が形成される。処理される液体が矢印18の方向において入口開口部19内へと誘導されてロータの内部20に入る。ロータ15が回転することによって発生する遠心力により、内部20内の処理される液体がステータ16に向かうように移動され、それにより、ロータ15内の開口部21を介して環状隙間17内に流れ込むことができるようになる。開口部21はロータ15の円周に沿って等距離で配置される。図2の環状隙間17はロータ15に対して非常に大きく描かれているが、実際には、ロータ15とステータ16との間の隙間はほんの数ミリメートルであり、したがって、ロータ15が回転することより、さらには、開口部21の構成により、この領域に特定の周波数を有する圧力波が発生し、その結果、処理される液体中に、化学結合を弱めるための大量のエネルギーが導入される。前処理された液体は開口部22を介して引き抜かれて生成物容器内へと運搬され得る。再循環パイプは、図1では7及び8で示されている適切な箇所でロータ・ハウジング14に接続される。この種類のロータは、処理される液体に含まれる分子内の隣接する炭素原子間の化学結合を弱めるのに特に使用されることから、このタイプのロータは「炭素アクチベータ(炭素活性装置、carbon activator)」と称される。
【0028】
図3では、ロータ15の代替の実施例が描かれている。ロータ15上では、追加のディスク23がロータ15に装着されている。これにより、ロータ15とステータ16との間で発生する振動数の影響を一般に受けない化学結合を弱める働きをする補助的な振動数が発生する。しかし、第2の振動数がシステム全体の共振振動数であることから、本発明の用語においては、これらの振動数は共に第1の振動数とみなされる。この種類のロータは、処理される液体に含まれる分子内の炭素原子と水素原子との間の化学結合を弱めるのに特に使用されることから、このタイプのロータは「水素アクチベータ(水素活性装置、hydrogen activator)」と称される。
【0029】
図4はテストランからのデータを示しており、発振器の上流側の箇所で測定された温度が24で示されており、発振器の下流側で測定された温度が25で示されている。このテストランでの回転速度は2990rmpで固定され、これは、運転の約200秒後の2つの曲線の間のところで水の温度を最大に上昇させ、ここでの最大の温度差は約10℃であった。図5では、同じ試験設備を用いて3590rmpで試験を行った。この場合、2つの曲線間での水の温度の最大の上昇は約300秒後に見られ、約35℃であった。したがって、これらの運転パラメータは鉱油の処理において最適となるように決定される。
図1
図2
図3
図4
図5