特許第5969473号(P5969473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969473
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】多層被膜を有する切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20160804BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   B23B27/14 A
   C23C14/06 M
   C23C14/06 A
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-522222(P2013-522222)
(86)(22)【出願日】2011年8月1日
(65)【公表番号】特表2013-534186(P2013-534186A)
(43)【公表日】2013年9月2日
(86)【国際出願番号】EP2011063234
(87)【国際公開番号】WO2012016954
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2014年4月23日
(31)【優先権主張番号】102010039035.6
(32)【優先日】2010年8月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510000378
【氏名又は名称】バルター アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ファイト シアー
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−293131(JP,A)
【文献】 特開2007−319964(JP,A)
【文献】 特開2011−051033(JP,A)
【文献】 特開平08−134629(JP,A)
【文献】 特開昭59−025968(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/083457(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0226273(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/14
B23C 5/16
C23C 14/06
C23C 28/00
C23C 30/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体および前記本体上の多層被膜を含む切削工具であって、前記本体の直接上の窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化チタンアルミニウムケイ素(TiAlSiN)、窒化クロム(CrN)、窒化アルミニウムクロム(AlCrN)、窒化アルミニウムクロムケイ素(AlCrSiN)および窒化ジルコニウム(ZrN)から選択された硬質材料の第1層A
前記第1層Aの直接上のアモルファス窒化ケイ素(Si)の第2層Bと、
前記第2層Bの上の層Aと層Bとのさらに周期的に繰り返された少なくとも1つの連続と
を含み、
記第1層Aが、0.5〜4μmの範囲の層厚を有し、前記第2層Bが、0.2〜5μmの範囲の層厚を有し、そして
記層Aと層Bとのさらに周期的に繰り返された連続中の前記層Aはまた、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化チタンアルミニウムケイ素(TiAlSiN)、窒化クロム(CrN)、窒化アルミニウムクロム(AlCrN)、窒化アルミニウムクロムケイ素(AlCrSiN)および窒化ジルコニウム(ZrN)から選択されており前記第1層Aの前記硬質材料と同じであるかまたは異なり、そして前記層Bはアモルファス窒化ケイ素(Si)でできており、
前記層Aと層Bとのさらに周期的に繰り返された連続中の層Aは0.2〜2μmの範囲の層厚を有し、
前記層Aと層Bとのさらに周期的に繰り返された連続中の層Bは0.2〜5μmの範囲の層厚を有し、
前記多層被膜は2〜10μmの範囲の全層厚を有する、切削工具。
【請求項2】
硬質材料層Bの前記窒化ケイ素(Si)が、それぞれ20原子%まで、好ましくは5原子%までの通常のもしくは通常でない不純物またはドーピング元素、好ましくは酸素、炭素、ホウ素、ガリウムおよびヒ素から選択される不純物またはドーピング元素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記第1層Aの前記硬質材料が、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項4】
前記層Aおよび層B上に酸化アルミニウム、酸化アルミニウムクロム、酸化クロム、窒化ジルコニウム、窒化チタンおよびアルミニウム金属から選択される少なくとも1つのさらなる硬質材料層または金属層を含み、ここですべての前記硬質材料は、1種または2種以上のさらなる元素により任意選択的にドープされることができることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項5】
前記層Aおよび層B上の酸化アルミニウムを含む少なくとも1つのさらなる硬質材料層と、その上の窒化ジルコニウム、窒化チタンまたはアルミニウム金属のさらなる層と、を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項6】
前記多層被膜が、3〜6μmの範囲の全層厚を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項7】
前記本体の直接上の前記第1層Aが、1〜3μmの範囲の層厚を有し、そして存在するさらなる層Aが、0.3〜1μmの範囲の層厚を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項8】
前記層Bが、0.3〜3μmの範囲、好ましくは0.5〜1μmの範囲の層厚を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項9】
前記本体が硬質金属、陶性合金、スチールまたは高速スチール(HSS)でできていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体および本体に適用された多層被膜を含む切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具は、例えば、硬質金属、陶性合金、スチールまたは高速スチールでできた本体、および耐用年数を増加させるため、または切削特性を改善するために本体に適用された単層または多層の硬質材料の被膜を含む。CVDプロセス(化学的蒸着)および/またはPVDプロセス(物理的蒸着)は、硬質材料の被膜を適用するために使用される。
【0003】
国際公開第96/23911号パンフレットは、複数の個々の層を含む多層の耐摩耗性被膜を含む切削工具であって、硬質金属材料を含む個々の層が本体に直接適用されており、そしてそれらの上にさらに個々の層が並べられて、3つの異なるそれぞれの個々の層を含む周期的に繰り返された複合物を個々の層が形成しており、個々の層それぞれが、2つの異なる金属性硬質材料層および共有結合性硬質材料層を含む工具を記載する。好ましいとして記載されたある態様では、3層の複合物が窒化チタンおよび炭化チタンの2つの個々の層および共有結合性硬質材料炭化ホウ素を含む個々の層を含む。耐摩耗性被膜は、少なくとも3つの共有結合性硬質材料層部分を含み、したがって少なくとも9の個々の層を含むことがそこに記載されている。好ましくは、スチールまたは硬質金属の本体に良好に接着すると言われているので、本体の上に配置された第1の個々の層は、窒化チタンまたは炭化チタンの層である。特に好ましい炭化ホウ素に加えて、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、サイアロン(ケイ素および酸窒化アルミニウムの混合結晶)、炭素などが、共有結合性硬質材料の個々の層のために特定される。しかし、硬質金属材料窒化チタンおよび炭化チタンを含む記載された個々の層は、摩耗からの保護に関する今日の要求を満たさないことが見いだされた。炭化チタンは確かに硬質であるが、耐摩耗性層としては脆すぎる。窒化チタンは、炭化チタンより軟質でありかつより脆くない。炭化チタンおよびまた窒化チタンの両者は、高温装填を含む使用のための不充分な耐温度性を有する。金属切削の場合、チップおよび切削具への熱放散はまた、不充分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、本体上の最先端のものと比較して、改善された接着を有する本体および多層被膜、並びに匹敵するかまたは良好な硬度値および改善された耐摩耗性を有するより良好な高温特性を有する切削工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本体および本体に適用された多層被膜を含む切削工具であって、本体が窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化チタンアルミニウムケイ素(TiAlSiN)、窒化クロム(CrN)、窒化アルミニウムクロム(AlCrN)、窒化アルミニウムクロムケイ素(AlCrSiN)および窒化ジルコニウム(ZrN)から選択された硬質材料の第1層Aを適用されており、そして窒化ケイ素(Si)の第2層Bが第1層Aの上に直接適用されている工具によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
例えば最先端で知られたTiCまたはTiNのような金属性硬質材料層と比較して、第1の窒化物層Aは、著しく改善された耐温度性、および同時にTiCの硬度に匹敵するがTiCほど脆くない高度の硬度を有する。窒化ケイ素(Si)の第2層は硬質かつ耐摩耗性であり、そして第1の窒化物との組み合わせで、層Aは、耐摩耗性被膜を通る本体への熱の移送を非常に有効に予防し、したがって切削工具を用いた金属機械加工における改善されたチップへの熱放散および切断を促進する。熱移送の防止は、硬質の耐摩耗性層として非常にしばしば使用される酸化アルミニウムによって生じるのと同じように窒化ケイ素によって同様に有効に生じる。さらに窒化ケイ素(Si)の第2層Bは、高温においてさえ非常に高い抗酸化性を有する。
【0007】
本発明の特に好ましい態様において、硬質材料の第1層Aは本体に直接適用される。特に第1層AがTiAlNを含む場合、これは、窒化ケイ素と本体との間に特に良好な接着を与える。
【0008】
本発明のさらに好ましい態様において、層Aおよび層Bの少なくとも1つのさらに周期的に繰り返された連続が第2層Bの上に適用され、層Aおよび層Bの周期的に繰り返された連続中の層Aはまた、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化チタンアルミニウムケイ素(TiAlSiN)、窒化クロム(CrN)、窒化アルミニウムクロム(AlCrN)、窒化アルミニウムクロムケイ素(AlCrSiN)および窒化ジルコニウム(ZrN)から選択されるが、第1層Aの硬質材料と異なることができる。好ましくは、層Aは、それぞれの窒化チタンアルミニウム(TiAlN)であり、そして層Bはそれぞれ窒化ケイ素(Si)である。
【0009】
本発明のさらに好ましい態様において、硬質材料層Bの窒化ケイ素(Si)はアモルファスである。アモルファス窒化ケイ素は、驚くほど良好な耐摩耗特性および良好な耐温度性、同時に高いレベルの硬度を有する。
【0010】
硬質材料層Bの窒化ケイ素(Si)は、それぞれ20原子%まで、好ましくは5原子%までの通常のもしくは通常でない不純物またはドーピング元素を含むことができる。これらの通常のもしくは通常でない不純物またはドーピング元素は、好ましくは、酸素、炭素、ホウ素、ガリウムおよびヒ素から選択される。
【0011】
本発明のかなり特に好ましい態様において、第1層Aの硬質材料は窒化チタンアルミニウム(TiAlN)である。TiAlNは、窒化ケイ素(Si)の第2層Bとの組み合わせに特に好都合であることが証明された。TiAlNは、TiAlN層中に5wt%の量までまた含まれることができるTiAlSiNのように面心立方体の結晶格子を有する。
【0012】
本発明のさらなる態様では、さらなる硬質材料層または酸化アルミニウム、酸化アルミニウムクロム、酸化クロム、窒化ジルコニウム、窒化チタンおよびアルミニウム金属から選択される金属層の少なくとも1層が、層Aおよび層Bまたは層Aおよび層Bの周期的に繰り返された複合物の上に適用されており、すべての前記の硬質材料は、1種または2種以上のさらなる元素で任意選択的にドープされていることができる。
【0013】
本発明の変化形において、酸化アルミニウムを含む少なくとも1層のさらなる硬質材料層が層Aおよび層Bの上に適用されており、そして窒化ジルコニウム、窒化チタンまたはアルミニウム金属のさらなる層がその上に適用されている。
【0014】
層Aおよび層Bの上に適用されることができるさらなる層は、基本的に公知である。酸化アルミニウムは、例えば、非常に硬質かつ良好な耐摩耗性層であり、そして酸化アルミニウムクロムおよび酸化クロムも同様である。それに引き替え、窒化ジルコニウム、窒化チタンおよびアルミニウム金属は、切削工具を着色するために、および最も外側の層の形態で切削工具での使用のためのインジケーター層として通常適用される。
【0015】
望ましくは、本発明による多層被膜は、2〜10μm、好ましくは3〜6μmの範囲の全層厚を有する。望ましくは、本体に好ましくは直接適用される第1層Aは、0.5〜4μm、好ましくは1〜3μmの範囲の層厚を有する。任意選択的に存在するさらなる層Aの層厚は、それと比較すると、望ましくは0.2〜2μm、好ましくは0.3〜1μmの範囲である。望ましくは、層Bは、0.2〜5μm、好ましくは0.3〜3μmの範囲、特に好ましくは0.5〜1μmの範囲の層厚を有する。過度の大きい層厚では、層中の過度に高い機械的な応力により、通常、破砕のリスクがある。過度に小さい層厚では、それぞれの個々の層がそこから欲しい機能を果たさないか、または機能を充分に果たせない危険性がある。
【0016】
好ましくは本発明による被膜中の層Aおよび層Bは、PVDプロセスによって本体に適用された層であり、層Aは、特に好ましくはアーク蒸着(arc PVD)によって適用され、そして層Bは、特に好ましくはマグネトロンスパッタリング、特にデュアルマグネトロンスパッタリングまたはHIPIMS(高出力インパクトマグネトロンスパッタリング)によって適用される。
【0017】
本発明による切削工具の本体は、好ましくは硬質金属、陶性合金、スチールまたは高速スチール(HSS)から生産されている。
【0018】
本発明の新規な被膜は、切削工具の耐摩耗性、耐用年数および切削特性を改善する、そして/または適合させるための広範な可能性のある選択肢を与える。切削工具への被膜の耐摩耗性、安定性および切削特性は、例えば、切削工具の本体の材料、継承(succession)、被膜中の層の性質および組成、種々の層の厚さおよび特に切削工具を用いて行われる切断作業の性質等の種々の因子に依存する。加工される加工対象物の性質、それぞれの機械加工工程および例えば、高温の発生または腐食性冷却流体の使用等の機械加工作業の間のさらなる条件に依存して、全く同一の切削工具において、異なるレベルの耐摩耗性が与えられることができる。さらにそれぞれの機械加工作業によって多かれ少なかれ、道具の使用期間、つまりその耐用年数に影響する場合がある種々の摩耗の種類の間において大きな違いがある。したがってどの道具特性が改善されるべきか、そして最先端のものと比較して匹敵する条件下にあると評価されるべきかを考慮して、切削工具のさらなる開発および切削工具の改善が常に考慮されている。
【0019】
本発明による本体および多層被膜を用いた本発明による切削工具における実質的な改善は、最先端のものより改善されている本体上への被膜の接着、より良好な高温特性、より良好な硬度値および改善された耐摩耗性である。
【0020】
本発明による被膜を用いて観察されたさらに驚くべき効果は、被膜全体の熱伝導度の減少である。被膜の熱伝導度において驚くほど達成された減少は、切削金属および複合材料におけるそうした切削工具の使用において非常に有益な効果を有する。減少した熱伝導度は、改善された熱衝撃抵抗、したがって本体の材料、特に硬質金属の増加したコームクラッキング(comb cracking)強度となる。
【0021】
すべての個々の特徴は本発明によるある態様のために、本明細書中に記載されているので、これが技術的に有意であり、そして可能である限り、本発明による態様のすべての他の記載された特徴と組み合わせることができ、そしてそうした組み合わせが、本明細書内に開示されているものと見なされることが自明である。すべての可能な組み合わせの個々の名前が本明細書中において省略されるのは、より読みやすいという理由のみによる。
【0022】
本発明のさらなる利点、特徴および態様が、以下の例によって記載される。
【実施例】
【0023】
PVD被膜設備(Flexicoat;Hauzer Techno Coating)中で、硬質金属本体に多層PVD被膜を提供した。本体の形状は(DIN−ISO1832による)SEHW120408またはADMT160608−F56であった。層の堆積の前に設備を1x10−5mbarに排気し、そして硬質金属表面を170Vのバイアス電圧においてアルゴンイオンを用いてエッチングによりクリーニングした。
【0024】
例1
層A:TiAlN
PVD−工程:アーク蒸着(Arc−PVD)
ターゲット:Ti/Al(33/67原子%)、円形源(round source)(63mm直径)
堆積:温度:500℃;蒸気化電流:65アンペア;
3.2Pa N圧力、50ボルトの基材バイアス電圧
【0025】
層B:Si
PVD工程: デュアルマグネトロンスパッタリング
ターゲット: 長方形Si源(80cmx20cm)
堆積:温度:500℃;6W/cm;200sccm N
0.5Pa Ar圧力、90ボルトの基材バイアス電圧
構造 X線アモルファス
結合の特徴:XPSにより共有結合性
層の継承:本体/2.5μm TiAlN/0.6μm Si
【0026】
比較例1
3.3μm厚のTiAlN層の堆積、さもなければ、例1の堆積パラメーターでのTiAlN層の堆積であるがさらなる窒化ケイ素層Bの堆積なし。
【0027】
42CrMo4−スチール(強度:950MPa)を含む加工対象物上のミリング試験中で、例1および比較例1の切削工具を比較した。速度v=235m/分の切断速度およびf=0.2mmの歯前進(tooth advance)で滑剤を冷却することなくダウンミリングを行った。4800mmのミリングトラベル後に、(主刃先において)平均摩耗マーク幅(wear mark widths)VBmmとしてレリーフ(relief)表面上で摩耗を測定した。
以下の摩耗マーク幅VBが見いだされた:
【0028】
表1
摩耗マーク幅VB
例1: 0.06mm
比較例1: 0.10mm
【0029】
例2
TiAlNの層およびSiの層Bを、同じPVDプロセスおよび同じ例1中のパラメーターで堆積させた。
層の継承:本体/2.5μm TiAlN/0.6μm Si/0.3μm TiAlN/0.1μm Si/0.3μm TiAlN/0.1μm Si
【0030】
比較例2
比較例1のようであるが、4.0μm厚のTiAlN層の堆積を有する。
例1のよう行ったが、切断速度v=283m/分および歯前進f=0.3mmのミリング試験において、以下の摩耗マーク幅VBが見いだされた:
【0031】
表2
摩耗マーク幅VB
例2: 0.10mm
比較例2: 0.30mm
(態様)
(態様1)
本体および前記本体に適用された多層被膜を含む切削工具であって、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化チタンアルミニウムケイ素(TiAlSiN)、窒化クロム(CrN)、窒化アルミニウムクロム(AlCrN)、窒化アルミニウムクロムケイ素(AlCrSiN)および窒化ジルコニウム(ZrN)から選択された硬質材料の第1層Aが前記本体に適用されており、そして、
窒化ケイ素(Si)の第2層Bが、前記第1層Aの上に直接適用されている、工具。
(態様2)
層Aおよび層Bの少なくとも1つのさらに周期的に繰り返された連続が、前記第2層Bの上に適用されており、ここで前記層Aおよび層Bの周期的に繰り返された連続中の前記層Aはまた、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)、窒化チタンアルミニウムケイ素(TiAlSiN)、窒化クロム(CrN)、窒化アルミニウムクロム(AlCrN)、窒化アルミニウムクロムケイ素(AlCrSiN)および窒化ジルコニウム(ZrN)から選択されているが、前記第1層Aの前記硬質材料と異なることができることを特徴とする、態様1に記載の切削工具。
(態様3)
前記硬質材料層Bの前記窒化ケイ素(Si)がアモルファスであることを特徴とする、態様1および2のいずれか一項に記載の切削工具。
(態様4)
硬質材料層Bの前記窒化ケイ素(Si)が、それぞれ20原子%まで、好ましくは5原子%までの通常のもしくは通常でない不純物またはドーピング元素、好ましくは酸素、炭素、ホウ素、ガリウムおよびヒ素から選択される不純物またはドーピング元素を含むことを特徴とする、態様1〜3のいずれか一項に記載の切削工具。
(態様5)
前記第1層Aの前記硬質材料が、窒化チタンアルミニウム(TiAlN)であることを特徴とする、態様1〜4のいずれか一項に記載の切削工具。
(態様6)
硬質材料を含む第1層Aが前記本体に直接適用され、そして/または酸化アルミニウム、酸化アルミニウムクロム、酸化クロム、窒化ジルコニウム、窒化チタンおよびアルミニウム金属から選択される少なくとも1つのさらなる硬質材料層または金属層が、前記層Aおよび層Bの上に適用され、ここですべての前記硬質材料は、1種または2種以上のさらなる元素により任意選択的にドープされることができることを特徴とする、態様1〜5のいずれか一項に記載の切削工具。
(態様7)
酸化アルミニウムを含む少なくとも1つのさらなる硬質材料層が前記層Aおよび層Bの上に適用され、そして窒化ジルコニウム、窒化チタンまたはアルミニウム金属のさらなる層がさらにそこに適用されていることを特徴とする、態様1〜6のいずれか一項に記載の切削工具。
(態様8)
前記多層被膜が、2〜10μm、好ましくは3〜6μmの範囲の全層厚を有することを特徴とする、態様1〜7のいずれか一項に記載の切削工具。
(態様9)
前記本体に直接適用された前記第1層Aが、0.5〜4μm、好ましくは1〜3μmの範囲の層厚を有し、そして任意選択的に存在するさらなる層Aが、0.2〜2μm、好ましくは0.3〜1μmの範囲の層厚を有することを特徴とする、態様1〜8のいずれか一項に記載の切削工具。
(態様10)
前記層Bが、0.2〜5μm、好ましくは0.3〜3μmの範囲、特に好ましくは0.5〜1μmの範囲の層厚を有することを特徴とする、態様1〜9のいずれか一項に記載の切削工具。
(態様11)
前記層Aおよび層BがPVDプロセスによって前記本体に適用された層であり、前記層Aが好ましくはアーク蒸着(arc PVD)によって適用されており、そして/または前記層Bがマグネトロンスパッタリング、好ましくはデュアルマグネトロンスパッタリングまたはHIPIMSによって適用されていることを特徴とする、態様1〜10のいずれか一項に記載の切削工具。
(態様12)
前記本体が硬質金属、陶性合金、スチールまたは高速スチール(HSS)から生産されていることを特徴とする、態様1〜11のいずれか一項に記載の切削工具。