(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
極性炭化水素選択溶媒、測定可能な量の重質芳香族炭化水素、及び熱的に分解又は酸化された溶媒と重質芳香族炭化水素と添加物と間の反応により生成されるポリマー材料を含有する溶媒リッチストリームから、炭化水素および他の不純物を実質的に含んでいない選択溶媒を回収する方法であって、前記方法は、
(a) 極性及び無極性炭化水素を含有するフィード(供給原料)を抽出蒸留塔(EDC)の中央部に導入するとともに、溶媒リッチストリームを前記EDCの上部に選択溶媒のフィードとして導入するステップ、
(b) 前記EDCの最上部から水を含有する無極性炭化水素リッチストリームを回収するとともに、前記EDCの底部から溶媒及び極性炭化水素を含有する第1の溶媒リッチストリームを引き出すステップ、
(c) 前記第1の溶媒リッチストリームを溶媒回収塔(SRC)の中央部に導入し、前記SRCの最上部から溶媒及び無極性炭化水素を殆ど含まない極性炭化水素リッチストリームを回収するとともに、前記SRCの底部から第2の溶媒リッチストリームを取り出すステップ、
(d) 前記第2の溶媒リッチストリームの第1部分を前記ステップ(a)における選択溶媒フィードとして前記EDCの上部に導入するステップ、
(e) 前記ステップ(c)における前記第2の溶媒リッチストリームの第2部分を25〜80℃の温度に冷却し、前記溶媒リッチストリームの冷却した第2部分を溶媒洗浄ゾーンの上部に導入して溶媒相を形成し、当該溶媒洗浄ゾーンにおけるラフィネート対溶媒フィード重量比が0.5〜10であるステップ、
(f) 軽質非芳香族炭化水素リッチストリームを前記溶媒洗浄ゾーンの下部に重質芳香族炭化水素置換剤として導入して前記溶媒相から重質芳香族炭化水素及びポリマー材料を炭化水素相内に追い出すステップ、
(g) 前記溶媒洗浄ゾーンの上部から、重質芳香族炭化水素及びポリマー材料を含有する蓄積した炭化水素相を引き出すとともに、前記溶媒洗浄ゾーンの下部から、溶媒と、重質芳香族炭化水素置換剤として作用する軽質非芳香族炭化水素とを含有するとともに実質的に低減されたレベルの重質芳香族炭化水素及びポリマー材料を有する溶媒相を回収するステップ、及び
(h) 前記ステップ(g)における前記溶媒洗浄ゾーンからの前記溶媒相を前記ステップ(a)における選択溶媒フィードの一部分として前記EDCの上部に導入して浄化された溶媒を溶媒ループに再利用するステップ、
を備えることを特徴とする選択溶媒回収方法。
前記ステップ(d)は、前記第2の溶媒リッチストリームの大部分を前記EDCの上部に導入するとともに、前記第2の溶媒リッチストリームの第1の小部分を高温熱溶媒再生ゾーンの上部に導入し、前記溶媒再生ゾーンの最上部から溶媒、水及び溶媒の沸点より低い沸点を有する炭化水素及び他の化合物を含有する第3の溶媒リッチストリームを回収するとともに、前記溶媒再生ゾーンの下部から重質スラッジを除去するステップを備え、前記ステップ(e)は、前記ステップ(d)における前記第3の溶媒リッチストリーム及び前記ステップ(c)における前記第2の溶媒リッチストリームの第2の小部分を含む混合物を冷却し、前記混合物を前記溶媒洗浄ゾーンの上部に供給して溶媒相を形成するステップを備える、請求項1記載の方法。
前記ステップ(d)において、前記第2の溶媒リッチストリームは、前記EDCの上部に導入される前に、磁界で機能強化されたインラインフィルタによってフィルタ処理される、請求項1又は2記載の方法。
極性炭化水素選択溶媒、測定可能な量の重質芳香族炭化水素、及び熱的に分解又は酸化された溶媒と重質芳香族炭化水素と添加物との間の反応により生成されるポリマー材料を含有する溶媒リッチストリームから、炭化水素および他の不純物を実質的に含んでいない選択溶媒を回収する方法であって、前記方法は、
(a) 極性及び無極性炭化水素を含有するフィード(供給原料)を液−液抽出塔(LLE)の中央部に導入するとともに、溶媒リッチストリームを前記LLEの上部に選択溶媒フィードとして導入するステップ、
(b) 前記LLEの最上部から水を含有する無極性炭化水素リッチストリームを回収するとともに、前記LLEの底部から溶媒、極性炭化水素、微量の無極性炭化水素及び測定可能な量の重質炭化水素及びポリマー材料を含有する第1の溶媒リッチストリームを引き出すステップ、
(c) 前記第1の溶媒リッチストリーム及び溶媒回収塔(SRC)の底部からの第3の溶媒リッチの小部分を抽出ストリッピング塔(ESC)の上部に導入し、無極性炭化水素及び有意の量のベンゼン及び重質芳香族を含有する炭化水素リッチ蒸気を回収し、該蒸気を凝縮して還流として前記LLEの下部に循環させるとともに、前記ESCの底部から溶媒、無極性炭化水素を殆ど含まない極性炭化水素及び測定可能な量のポリマー材料を含有する第2の溶媒リッチストリームを引き出すステップ、
(d) 前記ステップ(c)における前記第2の溶媒リッチストリームを前記SRCの中央部に導入し、前記SRCの最上部から溶媒及び無極性炭化水素を殆ど含まない極性リッチストリームを引き出すとともに、前記SCRの底部から第3の溶媒リッチストリームを取り出すステップ、
(e) 前記第3の溶媒リッチストリームの一部分を前記ステップ(a)における選択溶媒フィードとして前記LLEの上部に導入するステップ、
(f) 前記ステップ(d)における前記第3の溶媒リッチストリームの小部分を25〜80℃の温度に冷却し、前記第3の溶媒リッチストリームの冷却した小部分を溶媒洗浄ゾーンの上部に導入して溶媒相を形成し、当該溶媒洗浄ゾーンにおけるラフィネート対溶媒フィード重量比が0.5〜10であるステップ、
(g) 軽質非芳香族炭化水素リッチストリームを前記溶媒洗浄ゾーンの下部に重質芳香族炭化水素置換剤として導入して前記溶媒相から重質芳香族炭化水素及びポリマー材料を炭化水素相内に追い出すステップ、
(h) 前記溶媒洗浄ゾーンの上部から、重質芳香族炭化水素及びポリマー材料を含有する蓄積した炭化水素相を引き出すとともに、前記溶媒洗浄ゾーンの下部から、溶媒と、重質芳香族炭化水素置換剤として作用する軽質非芳香族炭化水素とを含有するとともに実質的に低減されたレベルの重質芳香族炭化水素及びポリマー材料を有する溶媒相を回収するステップ、及び
(i) 前記ステップ(h)における前記溶媒洗浄ゾーンからの前記溶媒相を前記ステップ(a)における選択溶媒フィードの一部分として前記LLEの上部に導入して浄化された溶媒を溶媒ループに再利用するステップ、
を備えることを特徴とする選択溶媒回収方法。
前記ステップ(e)は、前記第3の溶媒リッチストリームの大部分を前記ステップ(a)における前記LLEの上部に導入するとともに、前記第3の溶媒リッチストリームの第1の小部分を高温熱溶媒再生ゾーンの上部に導入し、前記溶媒再生ゾーンの最上部から溶媒、水及び溶媒の沸点より低い沸点を有する炭化水素及び他の化合物を含有する第4の溶媒リッチストリームを回収するとともに、前記溶媒再生ゾーンの下部から重質スラッジを除去するステップを備え、前記ステップ(f)は、前記ステップ(e)における前記第4の溶媒リッチストリーム及び前記ステップ(d)における前記第3の溶媒リッチストリームの第2の小部分を含む混合物を冷却し、前記混合物を前記溶媒洗浄ゾーンの上部に供給して溶媒相を形成するステップを備える、請求項7記載の方法。
前記ステップ(e)において、前記第3の溶媒リッチストリームは、前記LLEの上部に導入される前に、磁界で機能強化されたインラインフィルタによってフィルタ処理される、請求項7又は8記載の方法。
【背景技術】
【0002】
長年に亘り、スルホラン又はポリアルキレングリコールを抽出溶媒として使用する液−液抽出(LLE)が、改質油、熱分解ガソリン、コークス炉油及びコールタールを含む石油ストリームから全種類(C
6−C
8)の芳香族炭化水素を精製する最も重要な商業的プロセスであった。抽出溶媒としてN−メチルピロリドンを用いる抽出蒸留(ED)もコールタール及びコークス炉油からのベンゼン回収に広く使用されてきた。近年では、スルホラン溶媒を用いるEDが、C
8+留分を供給原料から除去した後での改質油又は熱分解ガソリンからのベンゼン及びトルエン回収に対して商業的に実行可能になってきている。EDプロセスにおいても、LLEプロセスにおいても、芳香族回収用の抽出溶媒はプロセスシステム内において閉ループで永遠に内部循環される。
【0003】
一般に、ED又はLLEの供給原料は、重質部分を除去し、ED塔又はLLE塔に供給すべき所望の部分のみを残す前分留塔に供給される。良く設計された前分留塔であっても、適切な動作状態に下で、測定可能な量の重質炭化水素がED又はLLEプロセスへの供給ストリームに入り込む。十分に動作しない又は正常に動作しない前分留塔の下では、供給ストリーム中の重質炭化水素の量が著しく増加する。それ以降、重質炭化水素の濃度のみならず、重質炭化水素、分解された溶媒、溶媒添加剤及び機材腐食からの種の相互作用により生成されるポリマー材料の濃度も急速に増加して、溶媒性能が悪化し得る。厳しい場合には、プロセスが動作不能になり得る。
【0004】
ディアスの米国特許第4,820,849号(特許文献1)は、8.5以上のpHを有する、石油から芳香族炭化水素を抽出するプロセスに由来するスルホラン溶媒中の腐食性不純物のレベルを減少させるプロセスを開示している。このプロセスは、スルホラン溶融多塩基酸物質をスルホランと混合して少なくとも腐食性不純物の一部分を含有する固相を形成し、この固相からスルホランを分離している。多塩基酸物質は硫酸又は燐酸である。この方法は長たらしく、酸の添加及び固形物処理を必要とし、溶媒中の腐食性不純物のみを処理するものである。この方法は重質炭化水素又はポリマー材料の除去に適用することはできない。ラルの米国特許第5,053,137号(特許文献2)に開示されている再生又は精製方法は、溶媒(スルホラン)からイオン及び極性不純物を除去するために、直列に配列された陽イオン交換体を含有する第1の塔と陰イオン交換体を含有する第2の塔の1対の塔を使用している。
【0005】
酸化した溶媒から生じる重質炭化水素及びポリマー材料及び極性不純物を除去するために、商業的LLE又はEDプロセスに広く使用されている方法では熱溶媒再生器を使用し、再生された溶媒又はその沸点より低い沸点を有する重い成分を回収するために、ストリッピング蒸気を使って又は使わずにリーン溶媒の小さなスリップストリーム(総合リーン溶媒ストリームの約1−2%)を加熱する。溶媒の沸点より高い沸点を有する重い芳香族物質は溶媒再生器の底部からスラッジとして除去される。この熱溶媒再生方式の基本概念は芳香族回収用LLEプロセスに関連してアッセリンの米国特許第4,046,676号及び同第4,048,062号に開示され、溶媒回収塔(SRC)の底部からリーン溶媒の一部分を溶媒再生ゾーン内へ転流させている。種々の蒸気性ストリッピング媒体(蒸気)が個別に溶媒再生ゾーン内に導入され、再生された溶媒とともに回収され、ストリッピング蒸気の少なくとも一部分としてSRC内に導入される。抽出溶媒としてスルホラン/水又はポリアルキレングリコール/水を使用してLLEプロセスに適用するとき、熱溶媒再生はリーン溶媒において重質炭化水素及びポリマー材料を許容レベルに維持することに商業的に成功している。これは、原料中のかなりの量の重質炭化水素(C
9〜C
12+)がLLE塔内において溶媒相で除去され、ラフィネート相で非芳香族の一部分として取り除かれる。同種の分子に対して、沸点が高いほど、極性が低くなる。重質炭化水素の中で、C
9+芳香族化合物のみが溶媒により抽出されやすく、通常の動作状態の下でSRC内において溶媒から殆ど完全にストリッピングすることができる。
【0006】
しかしながら、通常の芳香族回収用EDプロセスにおいては、重質炭化水素のすべてはそれらの高い沸点のために抽出蒸留塔(EDC)の底部のリッチ溶媒中に残存する傾向がある。ベンゼン及びトルエン回収に対する(C
6−C
7)原料の沸点範囲が狭いことを考慮に入れても、リーン溶媒からさらなる重質炭化水素を追い出すためにSRCの動作状態をさらに厳しくする(温度及び真空レベルをより高くするとともにストリッピング蒸気をより多量にする)にもかかわらず、溶媒中にトラップされた3−5%の重質炭化水素が存在し得る。しかし、ベンゼン、トルエン及びキシレン回収のためのフル沸点範囲(C
6−C
8)に対して、殆どの重質炭化水素の沸点は高すぎてSRC内において溶媒からストリッピングされず、また溶媒は閉じたループ内でEDCとSRCの間を無期限に循環するので、殆どの重質炭化水素は溶媒中に蓄積する。
【0007】
上記の溶媒再生方式はEDプロセスに適さない。なぜなら、上記の溶媒再生方式は、酸化又は分解された溶媒成分と溶媒中の微量の重質炭化水素との反応により形成され得る相対的に微量のポリマー材料を除去するLEEプロセス用に特別に設計されているためである。確かに、これらの溶媒再生方式をEDプロセスとともに実施すると、重質炭化水素は閉じた溶媒ループ内に蓄積し重合しやすい。この蓄積は重合した物質がスルホランの沸点より高い沸点(>287℃)に達するまで続き、そのとき重合した物質は溶媒再生器の底部から閉じたループを出て行く。溶媒中の過剰なポリマー材料は溶媒特性を大きく変化させるのみならず、ポンプ、弁、塔内部、管路などのプロセス機器を詰まらせてEDプロセスを動作不能にするので、破滅的な状態を生じる可能性がある。
【0008】
ED及びLLEのための殆どの抽出溶媒は水溶性であることを利用するために、ウーに付与された米国特許第7,666,299号(特許文献5)は抽出溶媒から重質炭化水素を除去する異なる方法を採用し、この方法によればリーン溶媒が低温の省エネルギーで操作しやすい溶媒洗浄ゾーン内に導入され、閉ループ内を循環するプロセス水の蒸気と接触させられる。溶媒は水相に溶解されるが、重質炭化水素は水により除去され、炭化水素相に蓄積される。少なくとも、溶媒洗浄ゾーンはバルク水相から微量の重質炭化水素相を除去し分離するためのデカンタとして作用する。デカントされた炭化水素相はデカンタの最上部に蓄積し、そこから周期的に回収される。一つの構成では、洗浄水はリーン溶媒と向流接触させて溶媒を水相内に抽出し、重質炭化水素及び他の不水溶性物質を油相内に除去する。本質的に純粋な溶媒を含有する水相は接触器の下部から連続的に引き出される。微量の炭化水素相が接触器の最上部に蓄積し、接触器からレベル制御の下で周期的に除去される。溶媒洗浄ゾーン内で形成された固体沈殿物は接触器の底部から除去される。この方法は多量の水を必要とするため、プロセス水を閉鎖システム内で平衡させ分布させることが困難になり得る。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、さもなければ閉溶媒ループ内に生じる重質炭化水素及びポリマー材料を有効に除去し得るED及びLEEプロセス用の改良された溶媒再生システムを提供するものである。本発明は、芳香族炭化水素回収用ED又はLLEにより生成されるラフィネート
ストリーム中の軽質非芳香族炭化水素は、特に溶媒中の重質芳香族炭化水素がC
10+分子の重量範囲内にあるとき、重質非芳香族炭化水素のみならず抽出溶媒からの重質芳香族炭化水素とも置き換わることができるという実証に部分的に基づくものである。本発明のプロセスは、溶媒を浄化するために重質炭化水素及び不純物から溶媒を抽出するための水を必要としないで、溶媒に少なくとも部分的に溶解する「置換剤(displacement agent)」と称する高極性の炭化水素を、低極性の重質物質を溶媒から追い出すために使用する。
【0011】
一つの態様では、本発明は、極性炭化水素選択溶媒、測定可能な量の重質炭化水素、及び熱的に分解又は酸化された溶媒と重質炭化水素と添加物との間の反応により生成されるポリマー材料を含有する溶媒リッチストリームから、炭化水素および他の不純物を実質的に含んでいない選択溶媒を回収する方法に関し、前記方法は、
(a) 極性及び無極性炭化水素を含有するフィード(供給原料)を抽出蒸留塔(EDC)の中央部に導入するとともに、溶媒リッチストリームを前記EDCの上部に選択溶媒のフィードとして導入するステップ、
(b) 前記EDCの最上部から水を含有する無極性炭化水素リッチストリームを回収するとともに、前記EDCの底部から溶媒、極性炭化水素及び測定可能な量の重質炭化水素及びポリマー材料を含有する第1の溶媒リッチストリームを引き出すステップ、
(c) 前記第1の溶媒リッチストリームを溶媒回収塔(SRC)の中央部に導入し、前記SRCの最上部から溶媒及び無極性炭化水素を殆ど含まない極性炭化水素リッチストリームを回収するとともに、前記SRCの底部から第2の溶媒リッチストリームを取り出すステップ、
(d) 前記第2の溶媒リッチストリームの第1部分を前記ステップ(a)における選択溶媒フィードとして前記EDCの上部に導入するステップ、
(e) 前記ステップ(c)における前記第2の溶媒リッチストリームの第2部分を冷却し、前記溶媒リッチストリームの冷却した第2部分を溶媒洗浄ゾーンの上部に導入して溶媒相を形成するステップ、
(f) 軽質炭化水素リッチストリームを前記溶媒洗浄ゾーンの下部に重質炭化水素置換剤として導入して前記溶媒相から重質炭化水素及びポリマー材料を炭化水素相内に追い出すステップ、
(g) 前記溶媒洗浄ゾーンの上部から、重質炭化水素及びポリマー材料を含有する蓄積した炭化水素相を引き出すとともに、前記溶媒洗浄ゾーンの下部から、重質炭化水素置換剤として作用する、溶媒及び軽質炭化水素を含有するとともに実質的に低減されたレベルの重質炭化水素及びポリマー材料を有する溶媒相を回収するステップ、及び
(h) 前記ステップ(g)における前記溶媒洗浄ゾーンからの前記溶媒相を前記ステップ(a)における選択溶媒フィードの一部分として前記EDCの上部に導入して浄化された溶媒を溶媒ループに再利用するステップ、
を備えることを特徴とする。
【0012】
好ましい実施形態では、前記ステップ(d)は、前記第2の溶媒リッチストリームの大部分を前記EDCの上部に導入するとともに、前記第2の溶媒リッチストリームの第1の小部分を高温熱溶媒再生ゾーンの上部に導入し、前記溶媒再生ゾーンの最上部から溶媒、水及び溶媒の沸点より低い沸点を有する炭化水素及び他の化合物を含有する第3の溶媒リッチストリームを回収するとともに、前記溶媒再生ゾーンの下部から重質スラッジを除去するステップを備え、前記ステップ(e)は、前記ステップ(d)における前記第3の溶媒リッチストリーム及び前記ステップ(c)における前記第2の溶媒リッチストリームの第2の小部分を含む混合物を冷却し、前記混合物を前記溶媒洗浄ゾーンの上部に供給して溶媒相を形成するステップを備える。
【0013】
他の態様では、本発明は、極性炭化水素選択溶媒、測定可能な量の重質炭化水素、及び熱的に分解又は酸化された溶媒と重質炭化水素と添加物との間の反応により生成されるポリマー材料を含有する溶媒リッチストリームから、炭化水素および他の不純物を実質的に含んでいない選択溶媒を回収する方法に関し、前記方法は、
(a) 極性及び無極性炭化水素を含有するフィード(供給原料)を液−液抽出塔(LLE)の中央部に導入するとともに、溶媒リッチストリームを前記LLEの上部に選択溶媒フィードとして導入するステップ、
(b) 前記LLEの最上部から水を含有する無極性炭化水素リッチストリームを回収するとともに、前記LLEの底部から溶媒、極性炭化水素、微量の無極性炭化水素及び測定可能な量の重質炭化水素及びポリマー材料を含有する第1の溶媒リッチストリームを引き出すステップ、
(c) 前記第1の溶媒リッチストリーム及び溶媒回収塔(SRC)の底部からの第3の溶媒リッチの小部分を抽出ストリッピング塔(ESC)の上部に導入し、無極性炭化水素及び有意の量のベンゼン及び重質芳香族を含有する炭化水素リッチ蒸気を回収し、該蒸気を凝縮して還流として前記LLEの下部に循環させるとともに、前記ESCの底部から溶媒、無極性炭化水素を殆ど含まない極性炭化水素及び測定可能な量のポリマー材料を含有する第2の溶媒リッチストリームを引き出すステップ、
(d) 前記ステップ(c)における前記第2の溶媒リッチストリームを前記SRCの中央部に導入し、前記SRCの最上部から溶媒及び無極性炭化水素を殆ど含まない極性リッチストリームを引き出すとともに、前記SCRの底部から第3の溶媒リッチストリームを取り出すステップ、
(e) 前記第3の溶媒リッチストリームの一部分を前記ステップ(a)における選択溶媒フィードとして前記LLEの上部に導入するステップ、
(f) 前記ステップ(d)における前記第3の溶媒リッチストリームの小部分を冷却し、前記第3の溶媒リッチストリームの冷却した小部分を溶媒洗浄ゾーンの上部に導入して溶媒相を形成するステップ、
(g) 軽質炭化水素リッチストリームを前記溶媒洗浄ゾーンの下部に重質炭化水素置換剤として導入して前記溶媒相から重質炭化水素及びポリマー材料を炭化水素相内に追い出すステップ、
(h) 前記溶媒洗浄ゾーンの上部から、重質炭化水素及びポリマー材料を含有する蓄積した炭化水素相を引き出すとともに、前記溶媒洗浄ゾーンの下部から、重質炭化水素置換剤として作用する、溶媒及び軽質炭化水素を含有するとともに実質的に低減されたレベルの重質炭化水素及びポリマー材料を有する溶媒相を回収するステップ、及び
(i) 前記ステップ(h)における前記溶媒洗浄ゾーンからの前記溶媒相を前記ステップ(a)における選択溶媒フィードの一部分として前記LLEの上部に導入して浄化された溶媒を溶媒ループに再利用するステップ、
を備えることを特徴とする。
【0014】
好ましい実施形態では、前記ステップ(e)は、前記第3の溶媒リッチストリームの大部分を前記ステップ(a)における前記LLEの上部に導入するとともに、前記第3の溶媒リッチストリームの第1の小部分を高温熱溶媒再生ゾーンの上部に導入し、前記溶媒再生ゾーンの最上部から溶媒、水及び溶媒の沸点より低い沸点を有する炭化水素及び他の化合物を含有する第4の溶媒リッチストリームを回収するとともに、前記溶媒再生ゾーンの下部から重質スラッジを除去するステップを備え、前記ステップ(f)は、前記ステップ(e)における前記第4の溶媒リッチストリーム及び前記ステップ(d)における前記第3の溶媒リッチストリームの第2の小部分を含む混合物を冷却し、前記混合物を前記溶媒洗浄ゾーンの上部に供給して溶媒相を形成するステップを備える。
【0015】
本発明は、閉じた溶媒ループ内に閉じ込められる重質(C
9−C
12)炭化水素の量を大幅に低減し、よって溶媒性能の向上、通常の熱溶媒再生器で処理すべき1サイクル当たりの溶媒の量の低減(ゼロにすることさえできる)、及び重質炭化水素の価値の回復並びにプロセスエネルギーの節約をもたらす、EDプロセス及びLLEプロセス用の改良された溶媒再生システムを提供する。
【0016】
本発明のEDプロセスによれば、増加した量のC
9+炭化水素をED塔の底部において芳香族とともにリッチ溶媒内に混入可能にすることによって、C
9+炭化水素は取付け自他溶媒ループから除去し回収することができるため、向上したベンゼン回収を達成できる。本発明のプロセスは、ED又はLLEプロセスの芳香族生産セクションにおいてC
9+炭化水素からキシレン製品を分離するために従来技術で一般に使用されるキシレン塔を必要とせず、プロセスエネルギーの節約及び総運転コストの低減をもたらす。これは、ほぼすべてのC
9+炭化水素をSRCの底部にリーン溶媒とともに維持することによって、部分的に達成され、ほぼすべてのC
9+炭化水素を閉じた溶媒ループから除去し回収することができる。同様に、オレフィン炭化水素も重質炭化水素留分内に集中し、ほぼすべてのC
9+炭化水素及びリーン溶媒とともにSRCの底部に維持されるため、本発明は芳香族製品からオレフィン炭化水素を除去するクレイ塔や他のシステムの負荷を大幅に低減する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の技術は極性炭化水素及び無極性炭化水素を含有する混合物から極性炭化水素を選択的に分離及び回収するためのED又はLLEプロセスに組み込むことができる。本発明のプロセスは、パラフィン、イソパラフィン、ナフテン及び/又はオレフィンなどの芳香族及び非芳香族炭化水素を含有する混合物からの芳香族炭化水素の分離及び回収に関連して記載するが、本発明の技術は多数の炭化水素の混合物に適用可能である。
【0019】
芳香族炭化水素を回収するための本発明の一つの実施形態においては、
図1及び
図3に示すように、ED又はLEEプロセスにおける測定可能な量の重質炭化水素及びポリマー材料を含有するリーン溶媒の一部分がSRCの底部から引き出され、熱溶媒再生器のオーバヘッドからの再生溶媒と混合される。混合されたストリームは冷却後に、低温で省エネルギーで操作が簡単な溶媒洗浄ゾーンに導入される。溶剤洗浄ゾーンは(又は溶媒洗浄塔)は好ましくはトレイ、パッキング部及び/又は回転ディスクを備える塔又はパルス塔からなる。EDプロセスにおけるED塔のオーバヘッド(又はLLEプロセスにおけるLLE塔のオーバヘッド)からのラフィネートストリームも、合成された溶媒ストリームに接触させるために溶媒洗浄ゾーンに導入される。少なくとも、溶媒洗浄ゾーンは、例えばセトリングタンク又はデカンタの形態の相分離器として作用し、溶媒相から「追い出された」重質炭化水素及びポリマー材料を含有する炭化水素相を除去及び分離して、軽質非芳香族(置換剤)及び十分に低減されたレベルの重質炭化水素のみを含有する溶媒相を生成する。分離された炭化水素相は相分離器の最上部から連続的に引き出される。或いはまた、溶媒洗浄ゾーンはラフィネートと溶媒ストリームを混合する静的ミキサ及び混合された組成物を導入分離する相分離器を備えることができる。
【0020】
好ましくは、ラフィネート(置換剤を含有する)は重質炭化水素及びポリマー材料を溶媒相から炭化水素相へ追い出すために合成溶媒ストリームと向流接触する。本質的に溶媒、軽質置換剤(軽質非芳香族)及び大きく低減されたレベルの重質炭化水素及びポリマー材料を含有する溶媒相は、接触器の下部から連続的に引き出され、浄化された溶媒を閉じた溶媒ループに再利用する手段として、ED塔(又はLLEプロセスのLLE塔)にリーン溶媒フィードの一部分として供給される。接触器の上部からの炭化水素相は接触器から好ましくはレベル制御の下で連続的に取り出され、炭化水素相中の溶媒を除去するために水洗浄塔に供給される。
【0021】
或いはまた、リーン溶媒から重質炭化水素及びポリマー材料を除去するために、ベンゼンが含まれていない任意の軽質炭化水素混合物を置換剤として使用することができる。本発明を使用して、重質炭化水素及びポリマー材料の相当部分を除去するために溶媒洗浄ゾーンを組み込むと、熱溶媒再生器を使用する場合にその熱溶媒再生器の負荷要件を大幅に減少でき、プロセス、特にEDプロセスをより容易に動作させることが可能になる。
【0022】
本発明の別の実施形態では、
図2及び4に示すように、溶媒再生系は効率的で低温で省エネルギーの溶媒洗浄システムを使用する。本プロセスは高温でエネルギー集約型の熱溶媒再生器を必要としない。SRCの底部から引き出されるリーン溶媒ストリームの一部分は冷却後溶媒洗浄ゾーンに転流され、導入される。ED塔のオーバヘッド(又はLLEプロセスにおけるLLE塔のオーバヘッド)から収集されるラフィネートの一部分は溶媒洗浄ゾーンに導入され、転流されてきたリーン溶媒蒸気と接触する。少なくとも、溶媒洗浄ゾーンは、例えばセトリングタンク又はデカンタの形態の相分離器として作用し、溶媒相から「追い出された」重質炭化水素及びポリマー材料を含有する炭化水素相を除去及び分離して、軽質非芳香族(置換剤)及び十分に低減されたレベルの重質炭化水素のみを含有する溶媒相を生成する。分離された炭化水素相は相分離器の最上部から連続的に引き出される。
【0023】
溶媒洗浄処理は一般に連続多段接触装置、好ましくは向流抽出用に設計されたこの種装置で行われる。適切な設計の装置は、トレイを備える塔、パッキング部を備える塔、回転ディスクを備える塔、パルス塔、多段ミキサ/セトラ及び任意の他のタイプの回転型接触器を含む。或いはまた、溶媒洗浄ゾーンは、ラフィネートと溶媒ストリームを混合する静的ミキサ及び混合された組成物を導入分離する相分離器を備えることができる。好ましくは、置換剤は重質炭化水素及びポリマー材料を溶媒相から炭化水素相へ追い出すためにリーン溶媒と向流接触する。本質的に溶媒、軽質非芳香族(軽質置換剤)及び大きく低減されたレベルの重質炭化水素及びポリマー材料を含有する溶媒相は、接触器の下部から連続的に引き出され、浄化された溶媒を閉じた溶媒ループに再利用する手段として、ED塔(又はLLEプロセスのLLE塔)にリーン溶媒フィードの一部分として供給される。「追い出された」重質炭化水素及びポリマー材料を含有する炭化水素相は接触器の最上部に蓄積され、この炭化水素相は接触器から好ましくは界面レベル制御の下で周期的に取り出される。或いはまた、リーン溶媒から重質炭化水素及びポリマー材料を除去するために、ベンゼンが含まれていない任意の軽質炭化水素混合物を置換剤として使用することができる。任意選択として、分解された溶媒と種々の溶媒添加物並びに重質炭化水素との相互作用により生成される常磁性種を選択的に除去するために、フィルタ、好ましくは磁界で機能強化されたフィルタを溶媒ループ内に組み込むことができる。磁石付の適切なフィルタはエン他の米国特許出願公開第20100065504号に開示されている。
【0024】
上述した好ましい実施形態では、C
9+重質炭化水素は溶媒洗浄ゾーンにおいてリーン溶媒から回収されるという事実のために、EDプロセスのED塔は、すべてのC
9+炭化水素をリッチ溶媒(エクストラ)ストリームでED塔の底部に維持することによって、ベンゼン回収が最大になるような条件の下で動作させるのがこのましい。SRCは、リッチ溶媒ストリームからC
8及びそれより軽い炭化水素のみをストリッピングするとともにほぼすべてのC
9及びそれより重い炭化水素をSリーン溶媒ストリームでRCの底部に維持するような条件の下で動作させるのが好ましい。
【0025】
図1は芳香族炭化水素回収用のEDプロセスの概略図であり、このプロセスは、数ある装置の中で特に、抽出蒸留塔(EDC)、溶媒回収塔(SRC)、熱溶媒再生器(SRG)、溶媒洗浄塔(SCC)及び水洗浄塔(W
WC)を使用する。芳香族及び非芳香族炭化水素の混合物を含有する炭化水素フィード(供給原料)がライン41を経てEDCの中央部に供給されるとともに、SRCの底部からリーン溶媒がライン55,57,59及び71を経てオーバヘッド還流入口点より下のEDCの最上部の近くに供給される。適切な抽出溶媒は、共溶媒として水とともに、例えばスルホラン、アルキルスルホラン、N−ホルミルグリコール、N−メチルピロリドン、テトラエチルグリコール、ジエチレングリコール及びその混合物を含む。好ましい溶媒は共溶媒として水とともにスルホランを備える。
【0026】
EDCの最上部に存在する非芳香族蒸気はライン42を経て凝縮器(図示せず)内で凝縮され、その凝縮物はオーバヘッド容器D1に移送され、この容器は非芳香族炭化水素相と水相との相分離をもたらす。非芳香族炭化水素相の一部分はライン43及び44を経てEDCの最上部に還流として再循環されるとともに、その第2部分はライン45及び70を経てWWCに送られる。オーバヘッド容器D1からの水相はラ
イン49を経てWWCからのライン69内の水と混合され、その混合物はライン60を経て蒸気生成器SR1に移送されてストリッピング蒸気を生成し、このストリッピング蒸気はライン61を経て溶媒再生器SRGに導入される。EDCの底部から、溶媒、芳香族炭化水素及び測定可能なレベルの重質炭化水素を含有するリッチ溶媒ストリームがライン46を経て引き出される。リッチ溶媒の一部分はリボイラR1で加熱され、EDC内に蒸気流を発生させるためにライン47を経てEDCの底部へ再循環されるとともに、リッチ溶媒の残部はライン48を経てSRCの中央部に供給される。
【0027】
ストリッピング蒸気は、ライン62を経てSRCの下部に注入されるとき、溶媒から芳香族炭化水素を除去するのに役立つ。水を含むが溶媒及び非芳香族炭化水素を殆ど含まない芳香族濃縮物がSRCからライン50を経てオーバヘッド蒸気ストリームとして引き出され、凝縮器(図示せず)で液化された後、その液体はオーバヘッド容器D2に導入される。このオーバヘッド容器は芳香族炭化水素相と水相の相分離をもたらす。ライン51からの芳香族炭化水素相の一部分はライン52を経て還流としてSRCへ再循環されるとともに、その残部はライン53を経て芳香族炭化水素製品として引き出される。水相はライン54を経てWWCの最上部に再循環され、そこから溶媒を含まない非芳香族製品がライン72を経て引き出される。
【0028】
SRCの底部温度を最低にするために、容器D2は真空源に接続されてSRC内に減圧状態を生成する。測定可能な量の重質炭化水素を含有するリーン溶媒ストリームがSRCの底部からライン55を経て引き出される。その大部分がライン57及び59を経て最循環され、SCCからのライン67内の溶媒相と混合されてリーン溶媒フィード71を形成し、これが芳香族炭化水素を抽出するためにEDCの上部に供給される。リーン溶媒の小部分がライン58を経てSRGへ転流されるとともに、蒸気がリーン溶媒フィード入口点より下の入口点でライン61を経てSRGに導入される。リーン溶媒の別の小部分がリボイラR2で加熱され、ライン56を経てSRCの底部に再循環される。
【0029】
劣化した溶媒及びポリマースラッジが底部ストリームとしてライン73を経て引き出されるとともに、(溶媒の沸点より低い沸点を有する)重質物質及びほぼすべてのストリッピング蒸気を含有する再生された溶媒がオーバヘッド蒸気ストリーム63として引き出される。この蒸気は、SRCの底部からライン64を経て引き出される、溶媒と測定可能な量の重質炭化水素とほぼすべてのストリッピング蒸気を含有する分割されたリーン溶媒と混合され、形成された混合物は冷却器C1で凝縮され、冷却された後、ライン65を経て溶媒/炭化水素界面の位置より下のSCCの上部に導入される。EDCのオーバヘッドから収集されたラフィネートの一部分はライン43及び45を経てSCCからのストリーム68内の溶剤相と混合され、形成された混合物はライン70を経てWWCに移送される。ラフィネートの他の部分はライン43及び66を経てSCCの下部に導入され、置換剤としてリーン溶媒相と向流接触して溶媒相から重質炭化水素及びポリマー材料を追い出す。任意選択として、ベンゼンを含まない外部軽質炭化水素ストリームを置換剤として有効に使用することもできる。SRGの底部の温度を最低にするために、SRGは減圧(真空)下で動作させるのが好ましい。
【0030】
図1に示すEDプロセスの好ましい応用例では、好ましくは溶媒としてスルホランを使用し、SRGからのオーバヘッド蒸気63の温度は典型的には、0.1〜10気圧、好ましくは0.1〜0.8気圧の下で、150℃〜200℃、好ましくは160℃〜180℃の範囲とする。蒸気63は冷却器C1で約0〜100℃、好ましくは25〜80℃の温度に冷却される。SCC内のラフィネート対溶媒フィード重量比は典型的には0.1〜100、好ましくは0.5〜10である。SCC内の接触温度は典型的には0〜100℃、好ましくは25〜80℃の範囲である。SCCの動作圧力は1〜100気圧、好ましくは1〜10気圧の範囲である。
【0031】
図2は芳香族炭化水素回収用のEDプロセスの一実施形態を示し、このプロセスでは軽質炭化水素置換剤を用いて溶媒を再生するために洗浄塔を単独で使用する。高温でエネルギー集約型で操作の難しい熱溶媒再生器が溶媒再生系から取り除かれる。このプロセスは
図1に示すプロセスと同じ溶媒を使用することができる。このEDプロセスは、数ある装置の中で特に、抽出蒸留塔(EDC)、溶媒回収塔(SRC)、溶媒洗浄塔(SCC)及び水洗浄塔(W
WC)を使用する。
【0032】
芳香族及び非芳香族炭化水素の混合物を含有する炭化水素フィードがライン81を経てEDCの中央部に供給されるとともに、SRCからライン95,97,99及び105を経て供給される底部ストリームをSCCからの溶媒ストリームと混合してなるストリーム108中のリーン溶媒がオーバヘッド還流入口点より下のEDCの最上部の近くに供給される。SRCからのリーン溶媒は磁石強化型フィルタF1でフィルタ処理して鉄さび粒子及び常磁性の他のポリマースラッジを除去することができる。EDCの最上部に存在する非芳香族蒸気はライン82を経て凝縮器(図示せず)で凝縮され、その凝縮物はオーバヘッド容器D1に移送され、この容器は非芳香族炭化水素相と水相との相分離をもたらす。非芳香族炭化水素相の一部分はライン83を経てEDCの最上部に還流として再循環されるとともに、その第2部分はライン85及び107を経てWWCに送られる。オーバヘッド容器D1からの水相はライン89を経てWWCからのライン100内の水と混合され、その混合物はライン102を経て蒸気生成器SR1に移送されてストリッピング蒸気を生成し、このストリッピング蒸気はライン103を経て溶媒再生器SRCに導入され、溶媒からの芳香族の除去を助ける。EDCの底部から溶媒、芳香族炭化水素及び測定可能なレベルの重質炭化水素を含有するリッチ溶媒ストリームがライン86を経て引き出される。リッチ溶媒の一部分はリボイラR1で加熱され、EDC内に蒸気流を発生させるためにライン87を経てEDCの底部へ再循環されるとともに、リッチ溶媒の残部はライン88を経てSRCの中央部に供給される。
【0033】
水を含むが溶媒及び非芳香族炭化水素を殆ど含まない芳香族濃縮物がSRCからライン90を経てオーバヘッド蒸気ストリームとして引き出され、凝縮器(図示せず)で液化された後、その液体はオーバヘッド容器D2に導入される。このオーバヘッド容器は芳香族炭化水素相と水相の相分離をもたらす。ライン91からの芳香族炭化水素相の一部分はライン92を経て還流としてSRCへ再循環されるとともに、その残部はライン93を経て芳香族炭化水素製品として引き出される。水相はライン94を経てWWCの最上部に再循環され、そこから溶媒を含まない非芳香族製品がライン109を経て引き出される。
【0034】
SRCの底部温度を最低にするために、容器D2は真空源に接続されてSRC内に減圧状態を生成する。測定可能な量の重質炭化水素を含有するリーン溶媒ストリームがSRCの底部からライン95を経て引き出される。その大部分はライン97及び99を経て最循環され、SCCからのライン105中の溶媒相と混合されてリーン溶媒フィード108を形成し、これが芳香族炭化水素を抽出するためにEDCの上部に供給される。リーン溶媒の小部分がライン98を経て転流され、冷却器C1で冷却された後、ライン101を経て溶媒/炭化水素界面より下のSCCの上部に導入される。リーン溶媒の別の小部分がリボイラR2で加熱され、ライン96を経てSRCの底部に再循環される。EDCのオーバヘッドから収集されたラフィネートの一部分はライン83及び104を経てSCCの下部に導入され、置換剤としてリーン溶媒と向流接触して溶媒相から重質炭化水素及びポリマー材料を追い出す。
【0035】
浄化された溶媒、軽質非芳香族置換剤及び十分に低減されたレベルの重質炭化水素及びポリマー材料を含むSCCの底部ストリーム105からの溶媒相がSCCの下部から連続的に引き出され、浄化された溶媒を溶媒ループに再利用する手段として、ライン108を経てEDCにリーン溶媒フィードの一部分として導入される。SCCの最上部にたまる少量の炭化水素相は界面レベル制御の下でSCCのオーバヘッドからライン106を経て周期的に引き出され、次いで最終ラフィネート製品から溶媒を除去するためにライン107を経てWWCに供給される前に、EDCのオーバヘッドからのラフィネートと混合される。溶媒洗浄処理は任意の他の連続多段接触装置、好ましくは向流抽出用に設計されたもの、例えば多段ミキサ/セトラ又は他の任意の回転型接触器で行うこともできる。通常の熱溶媒再生器がない場合には、フィルタF1をSRCとEDCとの間のリーン溶媒ライン内に組み込んで分解された溶媒と種々の溶媒添加物並びに重質炭化水素との相互作用により生成される常磁性種を選択的に除去するのが好ましい。
【0036】
図2に示すEDプロセスの好ましい応用例では、好ましくは溶媒としてスルホランを使用し、SRCの底部からの溶媒は冷却器C1で約0〜100℃、好ましくは25〜80℃の範囲内の温度に冷却する。SCC内のラフィネート対溶媒フィード重量比は典型的には0.1〜100、好ましくは0.5〜10である。SCC内の接触温度は典型的には0〜100℃、好ましくは25〜80℃の範囲である。SCCの動作圧力は1〜100気圧、好ましくは1〜10気圧の範囲である。
【0037】
図1及び
図2に示す両プロセスとも、EDCの動作状態は、ほぼすべてのC
9+炭化水素をEDCの底部にリッチ溶媒(エクストラクト)ストリームで保持することによって、ベンゼン回収が最大になるようにほぼすべてのベンゼン(最も軽い芳香族炭化水素)をEDCの底部に維持するように調整するのが好ましい。SRCの動作状態も、リッチ溶媒ストリームからC
8及びそれより軽い炭化水素のみをストリッピングし、C
9及びそれより重い炭化水素のほぼすべてをSRCの底部にリーン溶媒ストリームで維持するように調整する。これは、C
9+炭化水素は溶媒洗浄ゾーンにおいてリーン溶媒から回収できるためである。
【0038】
図3は芳香族炭化水素回収用のLLEプロセスの概略図であり、このプロセスは、数ある装置の中で特に、液−液抽出塔(LLE)、溶媒回収塔(SRC)、溶媒再生器(SRG)、溶媒洗浄塔(SCC)、水洗浄塔(WWC)及び抽出ストリッピング塔(ESC)を含む。
図1及び
図2に示すプロセスと同じ溶媒を使用することができる。芳香族及び非芳香族の混合物を含有する炭化水素フィードがライン161を経て液−液抽出塔LLEの中央部に供給されるとともに、リーン溶媒がライン162を経てLLEの最上部の近くに導入され、炭化水素フィードと向流接触する。フィード内の芳香族炭化水素は典型的には、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、C
9+芳香族及びその混合物を含み、非芳香族炭化水素は典型的には、C
5−C
9パラフィン、ナフテン、オレフィン及びその混合物を含む。
【0039】
本質的に非芳香族と少量の溶媒を含有するラフィネート相がLLEの最上部からストリーム163として引き出され、その一部分がライン194を経てWWCの中央部に供給されるとともに、その残部がライン193を経てSCCの中央部に供給される。LLEの底部からのライン164中の抽出相はライン165からの二次リーン溶媒と混合され、混合されたストリーム166はESCの最上部に供給される。
【0040】
ESCを貫流する蒸気流がリボイラR1の作用により発生され、それによって底部ストリーム170のリッチ溶媒の一部分がライン171を経てESCに循環される。リボイラR1は通常蒸気によって、塔底部の温度、オーバヘッドストリームの組成及び流量を制御するのに十分なレートで加熱される。ESCの最上部に存在するオーバヘッド蒸気は冷却器(図示せず)で凝縮され、その凝縮物はライン167を経てオーバヘッド容器D1に移送される。容器D1は炭化水素相と水相との相分離をもたらすものである。非芳香族及び30−40%までのベンゼン及びそれより重い芳香族を含有する炭化水素相はライン169を経てLLEの下部に還流として循環される。水相はライン168及び187を経て蒸気発生器SR1に移送され、SRC用のストリッピング蒸気を発生する。溶媒、非芳香族を含まない芳香族、及び測定可能な量の炭化水素及びポリマー材料からなるリッチ溶媒がESCの底部から引き出され、ライン170及び172を経てSRCの中央部に移送される。ストリッピング蒸気が蒸気発生器SR1からライン184を経てSRCの下部に注入され、溶媒からの芳香族炭化水素の除去を助ける。水を含むが溶媒及び非芳香族を殆ど含まない濃縮芳香族がSRCからオーバヘッド蒸気ストリームとして引き出され、冷却器(図示せず)で凝縮された後にライン173を経てオーバヘッド容器D2に導入される。SRCの底部温度を最低にするために、容器D2は真空源に接続してSRC内を減圧状態にする。
【0041】
オーバヘッド容器D2は芳香族炭化水素相と水相との相分離を生じさせるものである。芳香族炭化水素相の一部分はライン174を経てSRCの最上部へ還流として循環されるとともに、その残部はライン176を経て芳香族炭化水素製品として引き出される。オーバヘッド容器D2の水脚部にたまる水相はライン172を経てWWCの最上部近傍の炭化水素相と水相との界面より低い位置でWWCに洗浄水として供給される。溶剤はLLEラフィネートから向流水洗浄によって除去され、炭化水素相中に蓄積する無溶媒の非芳香族がWWCの最上部から無溶媒の非芳香族製品としてライン185を経て引き出される。溶媒を含有する水相はライン186を経てWWCの底部から出て行き、ライン186中のD1からの水相と混合され、ライン187を経て蒸気発生器SR1に供給され、ここでストリッピング蒸気に変換されて、ライン184を経てSRCに導入されるとともにライン182を経てSRGに供給される。
【0042】
SRCからライン178及び180を経て引き出されたリーン溶媒の一部分がライン181を経てSRGに分流され、蒸気がライン182を経てSRGに、リーン溶媒フィード入口点より低い位置で導入される。リーン溶媒の別の部分がリボイラR2で加熱され、ライン179を経てSRCの底部へ循環される。劣化した溶媒及びポリマースラッジが底部ストリームとしてライン188を経て引き出されるとともに、再生された溶媒及びほぼすべてのストリッピング蒸気がオーバヘッド蒸気ストリーム183として引き出される。ライン183中のこの蒸気が、SRCの底部からライン189を経て分流された、溶媒、測定可能な量の重質炭化水素及びほぼすべてのストリッピング蒸気を含有するリーン溶媒の一部分と混合され、形成された混合物は冷却器C1で凝縮され、冷却された後、ライン190を経て溶媒/炭化水素界面の位置より下のSCCの上部に導入される。
【0043】
軽質非芳香族置換剤を含有するラフィネートがSCC内で溶媒相と接触して溶媒相から重質炭化水素及びポリマー材料を炭化水素相に追い出す。任意選択として、ベンゼンを含まない外部軽質炭化水素ストリームを置換剤として有効に使用することもできる。本質的に浄化された溶媒、軽質非芳香族(置換剤)及び大幅に低減されたレベルの重質炭化水素を含有する溶媒相がSCCの下部から連続的に引き出され、浄化された溶媒を溶媒ループに再利用する手段として、ライン191,195及び162を経てLLEにリーン溶媒フィードの一部分として導入される。炭化水素相はSCCの最上部に連続的に蓄積され、界面レベルの制御の下でSCCのオーバヘッドからライン192を経て周期的に除去され、次いでLLEのオーバヘッドからのラフィネートと混合され、ライン194を経てWWCに供給される。溶媒洗浄処理は任意の他の連続多段接触装置、好ましくは向流抽出用に設計されたもの、例えば多段ミキサ/セトラ又は他の任意の回転型接触器で行うこともできる。
【0044】
図3に示す、溶媒としてスルホランを使用するのが好ましいLLEプロセスの好ましい応用例では、SRGからのオーバヘッド蒸気の温度は典型的には、0.1〜10気圧、好ましくは0.1〜0.8気圧の圧力の下で、150〜200℃、好ましくは160〜180℃である。SRGからの溶媒蒸気及びSRCからのリーン溶媒を含む混合物は冷却器C1で凝集され、約0〜100℃、好ましくは25〜80℃の範囲内の温度に冷却される。SCC内のラフィネート対溶媒フィード重量比は典型的には0.1〜100、好ましくは0.5〜10である。SCC内の接触温度は典型的には0〜100℃、好ましくは25〜80℃である。SCCの動作圧力は典型的には1〜100気圧、好ましくは1〜10気圧である。
【0045】
図4は芳香族炭化水素及び非芳香族炭化水素の混合物から芳香族炭化水素回収するためのLLEプロセスを示し、このプロセスでは、軽質炭化水素置換剤を用いて溶媒を再生するために溶媒洗浄塔を単独で使用する。高温でエネルギー集約型で操作の難しい熱溶媒再生器は溶媒再生系から取り除かれる。このプロセスは
図3に示すプロセスと同じ溶媒を使用することができる。図に示すプロセスは、数ある装置の中で特に、液−液抽出塔(LLE)、溶媒回収塔(SRC)、溶媒洗浄塔(SCC)、水洗浄塔(WWC)及び抽出ストリッピング塔(ESC)を含む。芳香族及び非芳香族の混合物を含有する炭化水素フィードがライン201を経て液−液抽出塔LLEの中央部に供給されるとともに、リーン溶媒がライン202を経てLLEの最上部の近くに導入され、炭化水素フィードと向流接触する。本質的に非芳香族と少量の溶媒を含有するラフィネート相がLLEの最上部からストリーム203として引き出され、その一部分がライン227を経てWWCの中央部に供給されるとともに、その残部がライン223を経てSCCの中央部に供給される。抽出相がLLEの底部からライン164を経て送出され、ライン205からの二次リーン溶媒と混合され、混合されたストリーム206がESCの最上部に供給される。
【0046】
ESCを貫流する蒸気流がリボイラR1の作用により発生され、それによって底部ストリーム210のリッチ溶媒の一部分がライン211を経てESCに循環される。リボイラR1は一般に蒸気によって、塔底部の温度、オーバヘッドストリームの組成及び流量を制御するのに十分なレートで加熱される。ESCの最上部に存在するオーバヘッド蒸気は冷却器(図示せず)で凝縮され、その凝縮物はライン207を経てオーバヘッド容器D1に移送される。容器D1は炭化水素相と水相との相分離をもたらすものである。非芳香族及び30−40%までのベンゼン及びそれより重い芳香族を含有する炭化水素相はライン209を経てLLEの下部に還流として循環される。水相はライン208及び226を経て蒸気発生器SR1に移送され、SRC用のストリッピング蒸気を発生する。溶媒、浄化された芳香族及び測定可能な量の炭化水素及びポリマー材料からなるリッチ溶媒がESCの底部から引き出され、ライン210及び212を経てSRCの中央部に移送される。ストリッピング蒸気が蒸気発生器SR1からライン234を経てSRCの下部に注入され、溶媒からの芳香族炭化水素の除去を助ける。水を含むが溶媒及び非芳香族を殆ど含まない濃縮芳香族がSRCからオーバヘッド蒸気ストリームとして引き出され、冷却器(図示せず)で凝縮された後にライン213を経てオーバヘッド容器D2に導入される。SRCの底部温度を最低にするために、容器D2は真空源に接続してSRC内を減圧状態にする。
【0047】
オーバヘッド容器D2は芳香族炭化水素相と水相との相分離を生じさせるものである。芳香族炭化水素相の一部分はライン214を経てSRCの最上部へ還流として循環されるとともに、その残部はライン216を経て芳香族炭化水素製品として引き出される。オーバヘッド容器D2の水脚部にたまる水相はライン217を経てWWCの最上部近傍の炭化水素相と水相との界面より低い位置でWWCに洗浄水として供給される。溶剤はLLEラフィネートから向流水洗浄によって除去され、炭化水素相中に蓄積する無溶媒の非芳香族がWWCの最上部から無溶媒の非芳香族製品としてライン228を経て引き出される。溶媒を含有する水相はライン235を経てWWCの底部から出て行き、ライン208内のD1からの水相と混合され、ライン226を経て蒸気発生器SR1に供給され、ここでストリッピング蒸気に変換されて、ライン234を経てSRCに導入される。
【0048】
SRCからライン218及び220を経て引き出されたリーン溶媒の一部分がライン221を経て分流され、冷却器C1で凝縮及び冷却され、次いでライン212を経て溶媒/炭化水素界面の位置より低いSCCの上部に導入される。リーン溶媒の別の部分がリボイラR2で加熱され、ライン219を経てSRCの底部へ循環される。SRCの底部からのライン218中のリーン溶媒の大部分がライン202を経てLLCに移送されるようにするのが好ましい。
【0049】
軽質非芳香族置換剤を含有するラフィネートがSCC内で溶媒相と接触して溶媒相から重質炭化水素及びポリマー材料を炭化水素相に追い出す。本質的に浄化された溶媒、軽質非芳香族(置換剤)及び大幅に低減されたレベルの重質炭化水素を含有する溶媒相がSCCの下部から連続的に引き出され、浄化された溶媒を溶媒ループに再利用する手段として、ライン224,229及び202を経てLLEにリーン溶媒フィードの一部分として導入される。ライン229内には磁界で機能強化されたフィルタF1を組み込んで分解された溶媒と種々の溶媒添加物並びに重質炭化水素との相互作用により生成される常磁性種を選択的に除去するのが好ましい。
【0050】
SCCの最上部に連続的に蓄積する炭化水素相は界面レベル制御の下でSCCのオーバヘッドからライン225を経て周期的に引き出され、次いでLLEのオーバヘッドからのラフィネートと混合された後にライン277を経てWWCに供給され、そこで最終ラフィネートから溶媒が除去される。
【0051】
図4に示す、溶媒としてスルホランを使用するのが好ましいLLEプロセスの好ましい応用例では、SRCの底部から引き出され冷却器C1に供給されるリーン溶媒の一部分は典型的には0〜100℃、好ましくは25〜80℃の範囲内の温度に冷却される。更に、SCC内のラフィネート対溶媒フィード重量比は典型的には0.1〜100、好ましくは0.5〜10である。SCC内の接触温度は典型的には0〜100℃、好ましくは25〜80℃である。SCCの動作圧力は典型的には1〜100気圧、好ましくは1〜10気圧である。
【0052】
[実施例]
本発明の異なる態様及び実施形態を更に説明するために以下の例を提示するが、これらの例は本発明の範囲を限定するものとみなされるべきものではない。
【0053】
図1に示す抽出蒸留プロセスを使用する芳香族炭化水素回収プロセスを工場設備で試験した。リーン溶媒から重質炭化水素及びポリマー材料を除去するために質軽質無極性炭化水素を置換剤として使用する有効性を確かめるために、抽出蒸留塔のオーバヘッドからのラフィネート及び溶媒洗浄塔に供給されるリーン溶媒の試料を試験し分析した。
【0054】
(例1)
図1のライン66に対応するEDCのオーバヘッドストリームからのラフィネートの試料を抽出し分析した。この試料のパラフィン、オレフィン、ナフテン及び芳香族(PONA)分析は要約すると以下の通りであった。
【0056】
表1のデータは、EDCラフィネートの主成分はC
6−C
7の範囲の極性の低い炭化水素であり、微量成分はC
8−C
9の範囲のものである。
【0057】
図1のライン65からのスルホランを含有するリーン溶媒も試験し、1.4重量%の重質炭化水素及びポリマー材料を含むことが分かった。この溶媒試料のPONA分析は要約すると次の通りであった。
【0059】
表2に示す結果は、リーン溶媒中の同定可能なC
7−C
14炭化水素のほぼすべてが芳香族であることを示している。重質炭化水素及びポリマー材料の種を同定するために、同じリーン溶媒試料をガスクロマトグラフ-質量分析(GC/MS)法を用いて分析した。リーン溶媒試料の重質炭化水素及び未知物質のクロマトグラムが
図5に示されている。予想通り、ほんの少数の重質炭化水素種をそれらの分子構造により同定することができた。それにもかかわらず、
図5は、多非縮合環芳香族化合物からなる重質炭化水素の主要部はC
12炭化水素より重いことが分かる境界を確定する。特定の理論に制限することなく、重質炭化水素は個々の芳香族環が反応によって脂肪族鎖により結合されることによって形成されるものと考えられる。反応はリーン溶媒において長期に亘る上昇温熱状態によって誘起される。
【0060】
(例2)
溶媒から重質炭化水素及びポリマー材料を除去する置換剤の能力を測定するために、リーン溶媒の試料とラフィネート(置換剤)の試料とを異なるラフィネート対溶媒重量比(R/S)で混合した。溶媒及びラフィネートの試料は
図1の試料と同じ組成を有するものとした。溶媒及びラフィネートは容器内において室温で厳密なシェーキングにより十分に混合した。シェーキングを停止するとすぐに炭化水素相と溶媒相の明確な相分離が観測されたが、炭化水素相と溶媒相の分離は30分間続けた。実験室抽出試験の結果は表3に要約されている。
【0062】
表3のデータは、炭化水素相の総重量の増加(又は溶媒相の総重量の減少)はR/S(使用するラフィネートの量)に比例することを示している。ラフィネートフィードは相当量の非芳香族炭化水素を含んでいたため、ラフィネートはスルホラン溶媒にあまり溶解できず、またその逆にスルホラン溶媒はラフィネートにあまり溶解できなかった。その結果、2つの相の間の物質移行は、分子−分子ベースでの溶媒相へのラフィネート(置換剤)の溶解と溶媒相からの重質炭化水素及びポリマー材料の同時置換とによって行われたものと考えられる。重質炭化水素及びポリマー材料の分子重量はラフィネート中の種の分子重量より著しく重いので、炭化水素相の重量増加は分子−分子ベースで出入りする入重質物質から出ラフィネート(置換剤)の種を差し引いた重量差による。換言すれば、この試験は、相接触によってリーン溶媒からの重質炭化水素及びポリマー材料がラフィネート中の種と置換されることが起こることを示している。
【0063】
(例3)
例2の結果から導かれる結論を確認するために、3.0のR/Sの下で、ラフィネートに接触する前および後のリーン溶媒試料(リーン溶媒フィード及びラフィネート接触後の溶媒相をGC/MSにより分析した。両溶媒試料のクロマトグラムを得た。ラフィネートと接触前のリーン溶媒試料のクロマトグラムは、スルホランピークが溶媒中の主成分としてGC溶出時間で21分から23分に現れることを示した(22.1分にマークされている)。スルホランの沸点より低い沸点を有するいくつかの重要な重質炭化水素が溶出時間で12.5分、12.9分、13.9分、16.2分、16.4分、17.0分、18.5分及び20.2分に現れるが、それらは溶出時間で23分から31分に現れるスルホランより高い沸点を有する。
【0064】
リーン溶媒がラフィネート(置換剤)と接触した後、これらの重質炭化水素ピークは殆ど溶媒相に存在しなくなる。特に、クロマトグラムは、ラフィネートに接触後、溶媒相は殆ど溶出時間で1.9から7.1分に現れるピークを有するラフィネートからの種のみを含有することを示した。この結果は、スルホラン溶媒が周囲条件でラフィネートに1度接触するだけでも、ラフィネートはスルホランからの重質炭化水素の置換に極めて有効であることを証明しているので、予想外であり、驚くべきことであった。
【0065】
(例4)
本例では、3.0のR/Sにおける溶媒とラフィネートの接触前及び後でリーン溶媒中の個々の重質炭化水素種の質量を測定した。それぞれの質量の差は個々の種に対する除去効率を与え、表4に示されている。
【0067】
表4に示す結果は、ラフィネート(軽質炭化水素置換剤)は本質的に重質炭化水素及びポリマー材料(溶媒より高い又は低い沸点を有する)の全てをリーン溶媒から置換除去するのに極めて有効であることを示している。室温での1段抽出で、ラフィネートは溶媒から86〜95%の重質種を置換除去した。リーン溶媒中の重質炭化水素及びポリマー材料は大きなエネルギー消費を要することなくもう2〜3段の抽出を用いることによって完全に除去できることが予想される。