【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、ポリマーの重量平均分子量は、GPC(装置:SHODEX社 GPCシステム;標準物質:プルラン)を用いて測定した。
【0066】
[実施例1:AMPS−DAAM 2:1の合成]
2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸(AMPS) 14.9g(72mmol)とダイアセトンアクリルアミド(DAAM) 6.1g(36mmol)とを純水100mLに溶解し、四つ口フラスコに入れて50℃のオイルバス中で1時間窒素バブリングした。その後、過硫酸カリウム(KPS) 0.146g(AMPSとDAAMの総モル量に対して0.5mol%)と亜硫酸ナトリウム 0.068g(KPSと等モル)とを水2mLに溶解して窒素パージした溶液を添加し、50℃で5時間撹拌させて重合した。
【0067】
重合後、得られた水溶液を透析膜(分画分子量:12,000〜14,000)に入れ、RO水で3日以上透析することにより精製した。透析後、凍結乾燥により、AMPS由来の繰り返し単位およびDAAM由来の繰り返し単位から構成される固体ポリマー(ランダム共重合体)を得た。
【0068】
得られた固体ポリマーの重量平均分子量は750万であった。また、固体ポリマーのAMPSおよびDAAMの組成を中和滴定で測定したところ、AMPS:DAAM=2:1(モル比)であった。
【0069】
[実施例2:AMPS−DAAM 1:1の合成]
2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸(AMPS) 11.1g(54mmol)とDAAM 9.12g(54mmol)とを純水100mLに溶解し、四つ口フラスコに入れて50℃のオイルバス中で1時間窒素バブリングした。その後、過硫酸カリウム(KPS) 0.146g(AMPSとDAAMの総モル量に対して0.5mol%)と亜硫酸ナトリウム 0.068g(KPSと等モル)とを水2mLに溶解して窒素パージした溶液を添加し、50℃で5時間撹拌させて重合した。
【0070】
重合後、得られた水溶液を透析膜(分画分子量:12,000〜14,000)に入れ、RO水で3日以上透析することにより精製した。透析後、凍結乾燥により、AMPS由来の繰り返し単位およびDAAM由来の繰り返し単位から構成される固体ポリマー(ランダム共重合体)を得た。
【0071】
得られた固体ポリマーの重量平均分子量は350万であった。また、固体ポリマーのAMPSおよびDAAMの組成を中和滴定で測定したところ、AMPS:DAAM=1:1(モル比)であった。
【0072】
[実施例3:AMPS−DAAM 1:2の合成]
2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸(AMPS) 7.47g(36mmol)とDAAM 12.2g(72mmol)とを純水100mLに溶解し、四つ口フラスコに入れて50℃のオイルバス中で1時間窒素バブリングした。その後、過硫酸カリウム(KPS) 0.146g(AMPSとDAAMの総モル量に対して0.5mol%)と亜硫酸ナトリウム 0.068g(KPSと等モル)とを水2mLに溶解して窒素パージした溶液を添加し、50℃で5時間撹拌させて重合した。
【0073】
重合液をアセトンへ滴下したところ、白い固体が生成した。デカンテーションの後、メタノールに溶解させた。そして、溶解させたものを、再度、アセトン中に沈殿させた。再びデカンテーションを行った後、吸引濾過、減圧乾燥することで、AMPS由来の繰り返し単位およびDAAM由来の繰り返し単位から構成される固体ポリマー(ランダム共重合体)を得た。
【0074】
得られた固体ポリマーの重量平均分子量は210万であった。また、固体ポリマーのAMPSおよびDAAMの組成を中和滴定で測定したところ、AMPS:DAAM=1:2(モル比)であった。
【0075】
[比較例1:AMPS−DAAM 1:8の合成]
2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸(AMPS) 2.49g(12mmol)とDAAM 16.25g(96mmol)とを純水100mLに溶解し、四つ口フラスコに入れて50℃のオイルバス中で1時間窒素バブリングした。その後、過硫酸カリウム(KPS) 0.146g(AMPSとDAAMの総モル量に対して0.5mol%)と亜硫酸ナトリウム 0.068g(KPSと等モル)とを水2mLに溶解して窒素パージした溶液を添加し、50℃で5時間撹拌させて重合した。
【0076】
得られた白い固体部分をアセトンに溶解し、一晩撹拌した後、ヘキサンに滴下した。デカンテーションの後、減圧乾燥してヘキサンを除去し、AMPS由来の繰り返し単位およびDAAM由来の繰り返し単位から構成される固体ポリマー(ランダム共重合体)を回収した。
【0077】
得られた固体ポリマーの重量平均分子量は120万であった。また、固体ポリマーのAMPSおよびDAAMの組成を中和滴定で測定したところ、AMPS:DAAM=1:8(モル比)であった。
【0078】
[比較例2:AMPS−DAAM 8:1の合成]
2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸(AMPS) 19.9g(96mmol)とDAAM 2.03g(12mmol)とを純水100mLに溶解し、四つ口フラスコに入れて50℃のオイルバス中で1時間窒素バブリングした。その後、過硫酸カリウム(KPS) 0.146g(AMPSとDAAMの総モル量に対して0.5mol%)と亜硫酸ナトリウム 0.068g(KPSと等モル)とを水2mLに溶解して窒素パージした溶液を添加し、50℃で5時間撹拌させて重合した。
【0079】
重合後、得られた水溶液を透析膜(分画分子量:12,000〜14,000)に入れ、RO水で3日以上透析することにより精製した。透析後、凍結乾燥により、AMPS由来の繰り返し単位およびDAAM由来の繰り返し単位から構成される固体ポリマー(ランダム共重合体)を得た。
【0080】
得られた固体ポリマーの重量平均分子量は890万であった。また、固体ポリマーのAMPSおよびDAAMの組成を中和滴定で測定したところ、AMPS:DAAM=8:1(モル比)であった。
【0081】
[比較例3:PMEAの合成]
アクリル酸2−メトキシエチル(MEA)26.3g(0.2mol)をトルエン100mLに溶解し、四つ口フラスコに入れて80℃のオイルバス中で1時間窒素バブリングした。その後、アゾビスイソブチロニトリル0.03gをトルエン2mLに溶解して窒素パージした溶液を添加し、80℃で8時間撹拌させて重合した。
【0082】
重合液をヘキサンへ滴下したところ、白い粘性物を生成した。デカンテーションの後、アセトンに溶解させた。これを再びヘキサンに滴下し、デカンテーションを行った後、アセトンに溶解した。これを減圧乾燥してアセトンを除去し、水あめ状のポリマー(PMEA)を回収した。
【0083】
得られた固体ポリマーの重量平均分子量は10万であった。
【0084】
[実施例4:スチレンスルホン酸ナトリウム−DAAM 2:1の合成]
スチレンスルホン酸ナトリウム 7.1g(118mmol)とDAAM 2.9g(59mmol)とを純水47mLに溶解し、四つ口フラスコに入れて50℃のオイルバス中で1時間窒素バブリングした。その後、過硫酸カリウム(KPS) 0.069g(スチレンスルホン酸ナトリウムとDAAMの総モル量に対して0.05mol%)と亜硫酸ナトリウム 0.032g(KPSと等モル)とを水3mLに溶解して窒素パージした溶液を添加し、50℃で窒素バブリングを継続しながら5時間撹拌させて重合した。
【0085】
重合後、重合液をアセトンに再沈殿させ、吸引ろ過により析出した、スチレンスルホン酸ナトリウム由来の繰り返し単位およびDAAM由来の繰り返し単位から構成される、白い固体ポリマー(ランダム共重合体)を回収した。得られた固体ポリマーは4時間減圧乾燥を行った。
【0086】
また、固体ポリマーのスチレンスルホン酸ナトリウムおよびDAAMの組成を中和滴定で測定したところ、スチレンスルホン酸ナトリウム:DAAM=2:1(モル比)であった。
【0087】
[評価]
(試験1−1.抗凝固時間(活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT))測定)
実施例1〜3、比較例1および比較例3で得たポリマーを用いて、下記方法によりAPTT測定を行った。
【0088】
スチールボールを入れ、37℃に温めておいたキュベットに、管理血漿(ベリハイ) 50μLと、測定するポリマーの生理食塩水溶液(1.25mg/mL) 5μLと、APTT試薬 50μLとを分注して、37℃で180秒間静置した。その後、塩化カルシウム試薬 50μLを分注し、スチールボールの振動(振幅)が終了する時間を測定した。測定は2回行い、その平均値を採用した(n=2)。
【0089】
コントロールとして、管理血漿(ベリハイ)50μLおよびAPTT試薬50μLのみからなるものを用いて測定を行った。結果を下記表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
上記表1から、繰り返し単位(B)に相当するAMPSの含有量(ポリマー(100モル%)に対するモル含有量)が25モル%以上である実施例1〜3のポリマーは、コントロール(管理血漿:ベリハイ)に比べて凝固時間(APTT)が有意に延長され、抗凝血活性を発現することが確認された。
【0092】
一方、AMPSの含有量(ポリマー(100モル%)に対するモル含有量)が25モル%未満である比較例1のポリマーは、コントロール(管理血漿:ベリハイ)と同等の凝固時間(APTT)示し、凝固時間の延長効果を発揮できなかった。
【0093】
また、実施例1〜3の比較から、AMPSの含有量が多いほど凝固時間の延長効果(抗凝血活性)が大きいという傾向が確認された。
【0094】
(試験1−2.抗凝固時間(活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT))測定)
実施例4で得たポリマーを用いて、下記方法によりAPTT測定を行った。
【0095】
スチールボールを入れ、37℃に温めておいたキュベットに、管理血漿(ベリハイ) 50μLと、測定するポリマーの生理食塩水溶液(1.25mg/mL) 5μLと、APTT試薬 50μLとを分注して、37℃で180秒間静置した。その後、塩化カルシウム試薬 50μLを分注し、スチールボールの振動(振幅)が終了する時間を測定した。測定は2回行い、その平均値を採用した(n=2)。
【0096】
コントロールとして、管理血漿(ベリハイ) 50μLおよびAPTT試薬50μLのみからなるものを用いて測定を行った。結果を下記表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
上記表2から、繰り返し単位(B)に相当するスチレンスルホン酸ナトリウムの含有量(ポリマー(100モル%)に対するモル含有量)が25モル%以上である実施例4のポリマーは、コントロール(管理血漿:ベリハイ)に比べて凝固時間(APTT)が有意に延長され、抗凝血活性を発現することが確認された。
【0099】
(試験2−1.コート性試験1:PP(ポリプロピレン)シート)
(1)コート溶液の調製
実施例1〜3、および比較例2で得たポリマーを1重量%の濃度で水/メタノール(1/1体積比)混合溶液に溶解し、架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジドをポリマーと等量(ポリマーそのものの重量と同重量)を添加し、コート溶液を調製した。
【0100】
(2)コート層の形成
このコート溶液を、ポリプロピレン製のシート基材にディップコートした後、常温で乾燥することにより、基材上にポリマーのコート層を形成した。
【0101】
コート層をカチオン性の水溶性色素であるトルイジンブルーで染色し、コート班の有無を確認した。
【0102】
結果を下記表3に示す。
【0103】
(試験2−2.コート性試験2:PP(ポリプロピレン)シート)
(1)コート溶液の調製
実施例4で得たポリマーを1重量%の濃度で、水:エタノール:メタノール=6:3:1(体積比)の混合溶媒に溶解し、架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジドをポリマーと等量(ポリマーそのものの重量と同重量)を添加し、コート溶液を調製した。
【0104】
(2)コート層の形成
このコート溶液をポリプロピレン製のシート基材にディップコートした後、常温で3時間乾燥することにより、基材上にポリマーのコート層を形成した。
【0105】
コート層をカチオン性の水溶性色素であるトルイジンブルーで染色し、コート班の有無を確認した。結果を下記表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
上記表3から、繰り返し単位(A)に相当するDAAMの含有量(ポリマー(100モル%)に対するモル含有量)が25モル%以上である実施例1〜4のポリマーは、コート班のない、均一なコート層が簡便なディップコーティングにより得られることが確認された。
【0108】
一方、繰り返し単位(A)に相当するDAAMの含有量(ポリマー(100モル%)に対するモル含有量)が25モル%未満である比較例2のポリマーは、コート班が存在し、コート層が不安定であることが確認された。
【0109】
(試験2−3.コート性試験3:ポリ塩化ビニルチューブ)
(1)コート溶液の調製
実施例4で得たポリマーを1重量%の濃度で、メタノール:水=5:1(体積比)の混合溶媒に溶解し、架橋剤としてアジピン酸ジヒドラジドをポリマーと等量(ポリマーそのものの重量と同重量)を添加し、コート溶液を調製した。
【0110】
(2)コート層の形成
このコート溶液を基材であるポリ塩化ビニルチューブにディップコートした後、常温で3時間乾燥することにより、基材上にポリマーのコート層を形成した。
【0111】
コート層をカチオン性の水溶性色素であるトルイジンブルーで染色し、コート斑の有無を確認した。
【0112】
染色後のコート層は、コート斑無く染色されていた。この結果から、基材としてポリ塩化ビニルチューブを用いた場合にも、斑無くコートできる事が確認された。
【0113】
(試験3−1.血液適合性試験1:ポリ塩化ビニルチューブ)
内径6mm、外径9mmの軟質PVCチューブの内面に実施例1〜3、比較例3のポリマーをそれぞれコートした。
【0114】
各々のチューブにヘパリン濃度0.2U/mLに調整したヒト血液を8mL充填し、ポリカーボネート製のコネクターで両端を接続しループ状とした。円筒型の回転装置に配置、室温、40回転/分の速度で、120分間回転した。その後、血液を回収、プロトロンビンフラグメント濃度をEIA法で測定した。結果を下記表4に示す。
【0115】
【表4】
【0116】
上記表4から、所定の組成を有するAMPS−DAAM共重合体を使用した場合(実施例1〜3)、従来から抗血栓性材料として使用されるPMEAを使用した場合(比較例3)と比べて、凝固系の活性化の程度を示すパラメータであるプロトロビンF1+2の生成量が有意に低かった。これにより、所定の組成を有するAMPS−DAAM共重合体が優れた血液適合性を有することが確認された。
【0117】
(試験3−2.血液適合性試験2:人工肺)
実施例3および比較例3で得たポリマーを1重量%の濃度で、水/メタノール(1/1体積比)混合溶液に溶解した。これを人工肺(テルモ社製)に血液インポート側から充填し、120秒間静置した後に除去、送風乾燥した。
【0118】
これらの人工肺を体外循環回路中に組み込み、ヘパリン加入新鮮血200mlおよび乳酸リンゲル液200mlで充填し、37℃の血液温で500ml/minで3時間灌流した。そして、血液中の凝固系の活性化指標である血中プロトロンビンフラグメント濃度(プロトロンビンフラグメント1+2濃度)をEIA法で測定した。結果を表5に示す。
【0119】
【表5】
【0120】
実施例3のポリマーは、比較例3のポリマーをコートした人工肺と比べ、血液凝固系の活性化指標である血中プロトロンビンフラグメント濃度が有意に低く、血液凝固系の活性化を能動的に抑制する性質を有することが確認された。
【0121】
(試験4.抗血栓性試験:ポリウレタン製チューブ;カテーテル形状)
実施例3および比較例3で得たポリマーを1重量%の濃度で、水/メタノール(1/1体積比)混合溶液に溶解した。これを外径2mmのポリウレタン製チューブの外面にディップコートした後、室温で12時間以上、乾燥した。その後、ヘパリン加新鮮血中に2時間静置した後に生理食塩水で洗浄し、グルタルアルデヒドで固定し、上記外面を電子顕微鏡で観察した。
【0122】
結果を
図1Aおよび
図1Bに示す。
【0123】
実施例3で得たポリマーをコートした場合(
図1A)には血球等の付着がみられなかった。これに対して、比較例3で得たポリマーをコートした場合(
図1B)には表面に多数の血球等の付着が観察された。これにより、所定の組成を有するAMPS−DAAM共重合体は従来の抗血栓性材料であるPMEA(比較例3)に比べて優れた抗血栓性を有することが示された。
【0124】
(試験5.抗バイオフィルム性試験)
実施例3および比較例3で得たポリマーを1重量%の濃度で、水/メタノール(1/1体積比)混合溶液に溶解した。これを、2cm×5cmのポリウレタン製シートの表面にディップコートし、室温で12時間以上、乾燥した。
【0125】
ステリテスト用ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地(シスメックス・ビオメリュー株式会社製)に緑膿菌を懸濁させた菌液(約1×10
6個/ml)中にコートした試験片を入れ7日間、32℃のインキュベーター中に静置した。生理食塩水で洗浄、グルタルアルデヒドで固定した後、電子顕微鏡で表面を観察した。
【0126】
結果を
図2Aおよび
図2Bに示す。
【0127】
実施例3で得たポリマーをコートした表面(
図2A)の表面積500μm
2の領域には緑膿菌の付着、バイオフィルムの形成は全くみられなかった。これに対して、比較例3で得たポリマーをコートした表面(
図2B)の表面積500μm
2の領域には緑膿菌によるバイオフィルムの形成が観察された。これにより、所定の組成を有するAMPS−DAAM共重合体は従来の抗血栓性材料であるPMEAに比べて抗バイオフィルム性にも優れることが確認された。