特許第5969492号(P5969492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5969492液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969492
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セル
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20160804BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20160804BHJP
   C08G 59/56 20060101ALI20160804BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   C08G59/62
   C08G59/56
   C09K3/10 L
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 B
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-540738(P2013-540738)
(86)(22)【出願日】2012年10月17日
(86)【国際出願番号】JP2012076801
(87)【国際公開番号】WO2013061837
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-233105(P2011-233105)
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】坂野 常俊
(72)【発明者】
【氏名】林原 昌一
(72)【発明者】
【氏名】三輪 広明
【審査官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/016507(WO,A1)
【文献】 特開2009−013282(JP,A)
【文献】 特開平11−015005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェノールノボラック樹脂、(b)2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物及びエポキシ樹脂アミンアダクトから選ばれる少なくとも1種、及び(c)エポキシ樹脂を含有し、120℃におけるゲルタイムが100秒以上270秒以下である液晶シール剤。
【請求項2】
前記成分(b)の含有量が前記成分(a)の含有量に対して38質量%以上70質量%以下である請求項1に記載の液晶シール剤。
【請求項3】
前記成分(a)が、軟化点が75℃以下のフェノールノボラック樹脂である請求項1又は2に記載の液晶シール剤。
【請求項4】
前記成分(a)が、下記式(1)で表される化合物である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はハロゲン原子を示し、rは1〜3の整数を示す。rが2又は3のとき、それぞれのRは同一であっても異なっていてもよい。sは0又は正の整数を示す。)
【請求項5】
前記成分(c)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項6】
更に、(d)カップリング剤を含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項7】
前記成分(d)が、アミノシランカップリング剤である請求項6に記載の液晶シール剤。
【請求項8】
更に、(e)有機溶剤を含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項9】
前記成分(e)が、二塩基酸ジメチルエステル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される1又は2以上の有機溶剤である請求項8に記載の液晶シール剤。
【請求項10】
更に、(f)無機充填剤を含有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セルに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や液晶モニター等の小型ディスプレイから大型テレビに至るまで、今日では液晶表示セルの使用領域は多岐に亘り、今後も更なる伸長が期待されている。この液晶表示セルの製造方法としては、液晶注入方式と液晶滴下方式との2つが主流である。液晶滴下方式は、透明電極や配向膜を適宜配した透明なガラス基板やプラスチック基板上に液晶シール剤を塗布し、その堰の内側に液晶を滴下し、液晶表示セルを製造する方法であり、生産タクトタイム(1工程あたりにかかる時間)短縮、大型化が容易といった観点より、需要を伸ばしている。しかし、未硬化の液晶シール剤と液晶とが接触する工程により、液晶が汚染され、液晶表示セルの品質に問題を与えるという課題が存在する。これに比べ、液晶注入方式は、予め上下ガラス基板等を液晶シール剤で接着して空セルを作成し、注入口から液晶を注入、最後に注入口を封止する方式である。この方法では、高品位の液晶表示セルを製造することが可能であり、また、液晶シール剤を熱のみによって硬化することも可能であるため、特に小型の液晶表示セルの製造においては、有効な製造方法である。
【0003】
上記液晶注入方式に用いられる空セルを作成するにあたっては、液晶シール剤をディスペンスやスクリーン印刷等によって基板に塗布した後、予備過熱(プリキュアー)を行い、その後対向基板を重ね合わせ、液晶シール剤を硬化させている。
【0004】
液晶シール剤は、ガラス基板やプラスチック基板を接着し、その内側に液晶を封じ込める役割をもつ、硬化性樹脂組成物である。上記液晶滴下方式に使用される液晶シール剤は光硬化性樹脂組成物が主流であり、液晶注入方式に使用される液晶シール剤は熱硬化性樹脂組成物が主流である。すなわち、使用方式によって液晶シール剤に要求される特性は大きく異なるものである。特に液晶注入方式に使用される液晶シール剤については、塗布作業性に優れること、予備加熱(プリキュアー)による増粘挙動が安定していること、貼り合わせ後に未硬化の状態で搬送されるため、対向基板(液晶シール剤が塗布されない基板)への接触性に優れること、熱硬化時に形状保持性があること等が特有の課題である。なお、対向基板への接触性とは、予備加熱後、対向基板と貼り合わされた時に、液晶シール剤が十分に潰れ、対向基板への接触面積が広い場合に良好とされ、理想としては、液晶シール剤が塗布された基板と同じ面積で接触する場合である。また、接触性が悪い場合とは、予備加熱による増粘が大きすぎ、液晶シール剤が十分に潰れず、対向基板への接触面積が小さくなってしまう場合である。
【0005】
更に、最近の液晶表示セルは、大きなガラス基板に多数の電極を形成後、上下基板を貼り合わせて組み立てた後に、1個1個の液晶表示セルに分断するマルチ加工プロセスを採っているが、その加工枚数も増え、またマザーガラス(分断前の基板)も大型化していることから、硬化後の液晶シール剤にかかる応力は大きくなってきている。これに伴い、液晶シール剤の接着強度や可撓性の更なる改良が求められている。
【0006】
更に、最近では製造時における上下基板の剥離という問題も顕在化してきている。この課題は、上下基板の貼り合わせを行った後、熱オーブン中で加熱して液晶シール剤の硬化を行う際に、空セル内の空気が膨張し、上下基板が剥離してしまうというものである。これは、近年の液晶表示セルの広表示領域化という設計によるものである。すなわち、一枚のマザーガラス中の取り数を同じくして、液晶表示セルを大きくするため、各液晶表示セル間の距離や、液晶シール剤のシール幅が狭くなっている。その結果として、空セル中の空気が逃げ難くなり、かつ上下基板の接着強度がシール幅の細さにより低下するために、上記現象が起こる。
【0007】
液晶注入方式に用いられる液晶シール剤は上記のような種々の課題を有するが、未だこれらを満足するものが得られていないため、非常に精力的に開発がなされている。
例えば、特許文献1には接着性、耐湿信頼性、可撓性に優れる熱硬化型液晶シール剤が開示されている。
特許文献2には接着性、耐湿信頼性、可撓性、熱硬化性に優れる熱硬化型液晶シール剤が開示されている。
特許文献3にはスクリーン印刷性、耐湿信頼性に優れる熱硬化型液晶シール剤が開示されている。
特許文献4には高温時に強い接着強度を有する熱硬化型液晶シール剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−273644号公報
【特許文献2】特開平11−15005号公報
【特許文献3】国際公開第2005/038519号
【特許文献4】国際公開第2006/016507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、製造時、特に液晶シール剤の熱硬化時における基板の剥離を発生させず、硬化後の接着強度及び可撓性に極めて優れ、また塗布作業性、対向基板への接触性、予備過熱後の粘度安定性にも優れる、熱硬化性の液晶シール剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、フェノールノボラック樹脂の存在が上下基板の剥離を抑制し、また一定の反応速度を確保することによって更にその効果を補強することができ、これらの相乗効果が上記課題の解決を可能とすることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、次の1)〜11)に関するものである。
1)
(a)フェノールノボラック樹脂、(b)2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物及びエポキシ樹脂アミンアダクトから選ばれる少なくとも1種、及び(c)エポキシ樹脂を含有し、120℃におけるゲルタイムが100秒以上270秒以下である液晶シール剤。
2)
上記成分(b)の含有量が上記成分(a)の含有量に対して38質量%以上70質量%以下である上記1)に記載の液晶シール剤。
3)
上記成分(a)が、軟化点が75℃以下のフェノールノボラック樹脂である上記1)又は2)に記載の液晶シール剤。
4)
上記成分(a)が、下記式(1)で表される化合物である上記1)乃至3)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はハロゲン原子を示し、rは1〜3の整数を示す。rが2又は3のとき、それぞれのRは同一であっても異なっていてもよい。sは0又は正の整数を示す。)
5)
上記成分(c)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である上記1)乃至4)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
6)
更に、(d)カップリング剤を含有する上記1)乃至5)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
7)
上記成分(d)が、アミノシランカップリング剤である上記6)に記載の液晶シール剤。
8)
更に、(e)有機溶剤を含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
9)
上記成分(e)が、二塩基酸ジメチルエステル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びエチレングリコールジブチルエーテルからなる群から選択される1又は2以上の有機溶剤である上記8)に記載の液晶シール剤。
10)
更に、(f)無機充填剤を含有する上記1)乃至9)のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
11)
上記1)乃至10)のいずれか一項に記載の液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液晶シール剤は、液晶表示セルの製造時、特に液晶シール剤の熱硬化時における基板の剥離を発生させず、硬化後の接着強度及び可撓性に極めて優れ、また塗布作業性、対向基板への接触性、予備過熱後の粘度安定性にも優れる。したがって、高い信頼性を有する液晶表示セルの製造を容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いられる成分(a)はフェノールノボラック樹脂であり、例えば、ビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4−ビフェニルフェノール、2,2,6,6−テトラメチル−4,4−ビフェニルフェノール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、アリルフェノール類、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂;キシリレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂等のフェノールノボラック樹脂;フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを下記式(2)〜(4)のいずれかの架橋基(アラルキレン基)で結合させたフェノールノボラック樹脂;等が挙げられる。
【0014】
【化2】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリル基、又はハロゲン原子を示し、mは1〜4の整数を示す。mが2以上のとき、それぞれのRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0015】
【化3】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリル基、又はハロゲン原子を示し、n及びpはそれぞれ独立に1〜4の整数を示す。n又はpが2以上のとき、それぞれのR及びRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0016】
【化4】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリル基、ハロゲン原子、又は水酸基を示し、qは1〜5の整数を示す。qが2以上のとき、それぞれのRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0017】
好ましいフェノールノボラック樹脂としては、フェノール類、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、アリルフェノール類、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂;キシリレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラック樹脂;フルオレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂;フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを上記式(2)〜(4)のいずれかの架橋基(アラルキレン基)で結合させたフェノールノボラック樹脂;が挙げられる。
【0018】
より好ましいフェノールノボラック樹脂としては、フェノール類、クレゾール類、オクチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノール類を原料とするノボラック樹脂;フェノール、クレゾール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを上記式(2)〜(4)の架橋基(アラルキレン基)で結合させたフェノールノボラック樹脂;が挙げられる。
【0019】
更に好ましいフェノールノボラック樹脂としては、フェノールを原料とするフェノールノボラック樹脂、クレゾール類を原料とするクレゾールノボラック樹脂等に代表されるモノフェノール類を原料とするノボラック樹脂;フェノール類、クレゾール類、ビスフェノールA等の各種フェノールを下記式(5)〜(9)のいずれかの架橋基で結合させたフェノールノボラック樹脂;が挙げられる。
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
【化9】
【0025】
本発明で用いられる特に好ましいフェノールノボラック樹脂はモノフェノール類を原料とするフェノールノボラック樹脂であり、下記式(1)で表されるものである。
【0026】
【化10】
(式中、Rは、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はハロゲン原子を示し、rは1〜3の整数を示す。rが2又は3のとき、それぞれのRは同一であっても異なっていてもよい。sは0又は正の整数を示す。)
【0027】
上記式(1)〜(9)において、炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、オクチル等が挙げられる。低級アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル等の炭素数1〜8のアルキル基、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。低級アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等の炭素数1〜8のアルコキシ基、好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、臭素原子、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。上記式(1)において、sにおける0又は正の整数としては、0〜15が好ましく、より好ましくは0〜10である。
【0028】
また、成分(a)としては、軟化点が75℃以下であるフェノールノボラック樹脂が好ましく、より好ましくは軟化点が65℃以下、更に好ましくは軟化点が50℃以下であるフェノールノボラック樹脂である。軟化点の下限値は、特に限定されるものではないが、好ましくは40℃以上である。軟化点はJIS K7234に規定される環球法により測定される。
具体的には、PN−152(日本化薬株式会社製)等が市販品として市場から入手が容易である。
【0029】
これらのフェノールノボラック樹脂は、単独で又は2種以上を混合して使用される。本発明で用いられるフェノールノボラック樹脂の使用量は、液晶シール剤中のエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、ノボラック樹脂中の水酸基の当量として0.2〜1.4化学当量、好ましくは0.3〜1.0化学当量、より好ましくは0.5〜1.0化学当量である。このフェノールノボラック樹脂の使用量は、液晶シール剤の対向基板への接触性に影響を与える。
【0030】
本発明で好適に用いられるフェノールノボラック樹脂は、上記式(1)で表される化合物である。上記式(1)において、s=1以上である成分は樹脂粘度が高くなるので、s=0である成分(2核体)が存在している方が好ましく、その存在量は、フェノールノボラック樹脂中、通常20〜80質量%、好ましくは25〜70質量%、より好ましくは30〜50質量%程度である(残りはs=1以上である成分)。フェノールノボラック樹脂のエポキシ樹脂との反応において、3核体以上(例えば上記式(1)においてs=1の化合物)のフェノールノボラック樹脂は3次元架橋構造をとるのに対して、2核体(例えば上記式(1)においてs=0の化合物)のフェノールノボラック樹脂は線形に架橋するため、剛直な構造に可撓性が出ることにより、ガラス基板との接着性が向上する。更に、本発明で好適に用いられるフェノールノボラック樹脂は樹脂粘度が低いため、スクリーン印刷性に優れ、液晶表示装置製造時の上下ガラス基板の貼り合わせ、ギャップ形成が容易になる。
【0031】
本発明の液晶シール剤100質量部中、成分(a)の含有量は5〜40質量部が好ましく、より好ましくは7〜30質量部、更に好ましくは10〜25質量部である。
【0032】
本発明で用いられる成分(b)は、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物及びエポキシ樹脂アミンアダクトから選ばれる少なくとも1種である。これらの化合物は硬化促進剤として用いられる。これらの硬化促進剤を含有することは、反応性の観点より非常に有利である。また、硬化促進剤は、触媒として機能するため、結合を形成しない状態で液晶シール剤の硬化物中に遊離状態で残存する場合もあるが、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物及びエポキシ樹脂アミンアダクトは、そういった場合にも液晶に溶解して、液晶を汚染する可能性が低い。これらの化合物は、2MAOK−PW(四国化成工業株式会社製)、MY−H(味の素ファインテクノ株式会社製)として市場から入手することができる。
【0033】
本発明においては、成分(b)の含有量は、成分(a)の含有量に対して38質量%以上70質量%以下であることが好ましい。この量でなくとも、本発明の効果を奏することは可能であるが、従来の硬化促進剤の添加量よりも非常に多い38質量%以上70質量%以下である場合には特にその効果は顕著なものとなる。本発明の液晶シール剤は、硬化促進剤が、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物及びエポキシ樹脂アミンアダクトから選ばれる少なくとも1種であるために、通常より非常に多い38質量%以上という含有量が可能となる。すなわち、上記の通り遊離状態で残存する可能性のある硬化促進剤が多くなっても、液晶に与える影響が極めて小さいためである。但し、多過ぎる場合には反応が速過ぎるため、液晶シール剤の保存安定性が悪くなってしまう。
【0034】
本発明で用いられる成分(c)は、グリシジル基を有する化合物であれば特に限定されるものではない。具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;4,4’−ビフェニルフェノールジグリシジルエーテル;2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェニルフェノールジグリシジルエーテル;2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)のグリシジルエーテル;トリスヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル;ピロガロールトリグリシジルエーテル;ジイソプロピリデン骨格を有するフェノールのグリシジルエーテル;1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類のグリシジルエーテル;フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物;シクロヘキサン等の脂肪族骨格を有する脂環式エポキシ樹脂;イソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂;ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック等のブロム化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;N,N−ジグリシジル−o−トルイジン;N,N−ジグリシジルアニリン;フェニルグリシジルエーテル;レゾルシノールジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;(3,4−3’,4’エポキシシクロ)ヘキシルメチルヘキサンカルボキシレート;ヘキサヒドロ無水フタル酸ジグリシジルエステル;等の一般に製造、販売されているエポキシ樹脂が挙げられるが、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン、(3,4−3’,4’エポキシシクロ)ヘキシルメチルヘキサンカルボキシレート、ヘキサヒドロ無水フタル酸ジグリシジルエステルであり、より好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂である。これらのエポキシ樹脂は、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記エポキシ樹脂は液状のものや固形のものがあるが、所望の粘度に応じて、適宜混合して使用することも可能である。
【0035】
本発明で使用するエポキシ樹脂のエポキシ当量は230以下が好ましく、より好ましくは210以下、更に好ましくは190以下である。230以上では硬化剤との反応性が劣り、作業性も問題が生じる。また、本発明に使用する液状エポキシ樹脂の全塩素量は1500ppm以下が好ましく、より好ましくは1200以下、更に好ましくは1000以下である。全塩素量が1500以上では液晶セルのITO電極の腐食が著しくなる。なお、エポキシ当量はJIS K7236により、全塩素量は加水分解法により測定される。
【0036】
本発明の液晶シール剤100質量部中、成分(c)の含有量は20〜70質量部が好ましく、より好ましくは25〜60質量部、更に好ましくは30〜50質量部である。
【0037】
本発明の液晶シール剤は、120℃におけるゲルタイムが100秒以上270秒以下である。ゲルタイムが270秒より長い場合には、加熱プレス後の液晶シール剤の硬化が十分でなくなり、本硬化をする際に150℃等の温度に上げると、パネル内の残存エアの影響によって基板にかかる応力により液晶シールに剥がれが生じたり、シールエッジ部分に微小な気泡をかみこんでしまったりする不具合が生じやすくなる。逆に100秒より短くなると、液晶シール剤自体の保存安定性に影響を与える。より好ましいゲルタイムは120秒以上270秒以下である。なお、本明細書において、ゲルタイムとは、自動ゲル化テスタ(伊予電子製)を使用し、測定温度120℃雰囲気下で、測定部に0.4mLの液晶シール剤を入れ、取り付けたテフロン(登録商標)製ニードルを自転部300rpmにて回転させて液晶シール剤を撹拌し、トルクセンサーが70gcmのトルクを検出するまでの時間と定義する。
【0038】
本発明の液晶シール剤は、更なる接着強度の向上を図る目的で、成分(d)としてカップリング剤を含有してもよい。カップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤;Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニウムジルコニウムカーボネート等のジルコニウム系カップリング剤;Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のアルミニウム系カップリング剤;等が挙げられるが、好ましくはシラン系カップリング剤であり、より好ましくはアミノシラン系カップリング剤である。カップリング剤を使用することにより、耐湿信頼性が優れ、吸湿後の接着強度の低下が少ない液晶シール剤が得られる。具体的には、KBM−573(信越化学工業株式会社製)等が市場から入手できる。
カップリング剤(d)の液晶シール剤に占める含有量は、本発明の液晶シール剤の総量を100質量部とした場合、0.05〜3質量部が好適である。
【0039】
本発明の液晶シール剤は、作業性を向上させるために低粘度化することを目的として成分(e)有機溶剤を含有してもよい。使用し得る有機溶剤としては、例えばアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、アセテート系溶剤、二塩基酸ジメチルエステルが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で混合して用いてもよい。
【0040】
アルコール系溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルキルアルコール類;3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−エトキシブタノール、3−メチル−3−n−プロポキシブタノール、3−メチル−3−イソプロポキシブタノール、3−メチル−3−n−ブトキシシブタノール、3−メチル−3−イソブトキシシブタノール、3−メチル−3−sec−ブトキシブタノール、3−メチル−3−tert−ブトキシシブタノール等のアルコキシアルコール類;等が挙げられる。
【0041】
エーテル系溶剤としては、例えば、1価アルコールエーテル系溶剤、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤、ジアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤、トリアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤等が挙げられる。
【0042】
1価アルコールエーテル系溶剤としては、例えば、3−メチル−3−メトキシブタノールメチルエーテル、3−メチル−3−エトキシブタノールエチルエーテル、3−メチル−3−n−ブトキシシブタノールエチルエーテル、3−メチル−3−イソブトキシシブタノールプロピルエーテル、3−メチル−3−sec−ブトキシブタノール−イソプロピルエーテル、3−メチル−3−tert−ブトキシブタノール−n−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0043】
アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0044】
アルキレングリコールジアルキルエーテル系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジイソブチルエーテル、プロピレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、プロピレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジイソブチルエーテル、エチレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、エチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。
【0045】
ジアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤としては、例えば、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0046】
トリアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤としては、例えば、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−tert−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジイソブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−sec−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−tert−ブチルエーテル等のトリアルキレングリコールジアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0047】
アセテート系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−エトキシブチルアセテート、3−メチル−3−プロポキシブチルアセテート、3−メチル−3−イソプロポキシブチルアセテート、3−メチル−3−n−ブトキシエチルアセテート、3−メチル−3−イソブトキシシブチルアセテート、3−メチル−3−sec−ブトキシシブチルアセテート、3−メチル−3−tert−ブトキシシブチルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0048】
二塩基酸ジメチルエステルとしては、例えば、CHOCO−(−CH−)−COOCH(n=2〜4)で示されるエステルを挙げることができる。このようなエステルとして具体的には、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル等が挙げられる。また、これら2種以上を混合してもよい。また、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、及びコハク酸ジメチルを混合したものは、例えばローディアソルブRPDE(ローディア日華社製)として市場から入手することもできる。
【0049】
これらの有機溶剤のうち、好ましくはプロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、二塩基酸ジメチルエステル(ローディアソルブRPDE等)、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルであり、より好ましくはプロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、二塩基酸ジメチルエステル(ローディアソルブRPDE等)、エチレングリコールジブチルエーテルである。
【0050】
有機溶剤の使用量は、液晶シール剤がディスペンス、スクリーン印刷等の方法で塗布できる粘度(例えば15〜60Pa・s(25℃))に調整するのに必要な任意の量を用いることができ、通常、液晶シール剤中の不揮発成分が70質量%以上、好ましくは85〜95質量%になるように使用する。
【0051】
本発明の液晶シール剤では、成分(f)無機充填剤を用いて、接着強度向上や耐湿信頼性向上を図ることができる。この(f)無機充填剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、より好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクである。これら無機充填剤は2種以上を混合して用いてもよい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、3μm以下が適当であり、好ましくは2μm以下である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定できる。
【0052】
本発明の液晶シール剤で使用し得る無機充填剤(f)の液晶シール剤中の含有量は、本発明の液晶シール剤の総量を100質量部とした場合、通常10〜60質量部、好ましくは20〜50質量部である。無機充填剤の含有量が10質量部より少ない場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。一方、無機充填剤の含有量が60質量部より多い場合、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
【0053】
本発明の液晶シール剤には、更に必要に応じて、有機充填剤、顔料、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を配合することができる。
【0054】
本発明の液晶シール剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、成分(a)、成分(c)、必要に応じて成分(e)を溶解混合し、これに必要に応じ成分(d)を添加する。この混合液に、必要に応じて成分(f)、並びに有機フィラー、消泡剤、レベリング剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、次いで成分(b)を添加し撹拌混合し、金属メッシュにて濾過することにより、本発明の液晶シール剤を製造することができる。
【0055】
本発明の液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、スクリーン印刷装置等を用いて該液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、80〜120℃で3〜30分間予備加熱を行う。その後、もう一方のガラス基板を重ね合わせ、加熱しながらギャップ出しを行う。ギャップ形成後、100〜180℃で30分〜3時間硬化することにより空セルを得ることができる。本発明の液晶シール剤は、この加熱工程における空気の膨張によって、剥離することがない。この空セルに、予め設けておいて液晶シール剤の切れ目(注入口)から、真空中で液晶の注入を行うことにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。
このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、接着性、可撓性に優れるため、落下等の衝撃には非常に強いものである。また、耐湿信頼性に優れたものでもある。スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等が挙げられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100質量部に対し、通常0.1〜4質量部、好ましくは0.5〜2質量部、より好ましくは0.9〜1.5質量部程度である。
【0056】
本発明の液晶シール剤は、作業性に非常に優れる。すなわち、ディスペンス、スクリーン印刷等による塗布作業性が良好であり、また、予備過熱において一定の粘度まで速やかに上昇し、その後は安定化するため、使用が容易である。また、上記の通り、熱硬化工程において基板剥離を生じない。更には、対向基板との接触性に優れるため、搬送時に基板同士が剥離することがなく、また、熱硬化性が非常に良好であり、加熱工程において速やかに硬化する。したがって、未硬化成分を残存させることがなく、構成成分の液晶への溶出も極めて少なく、液晶表示セルの表示不良を低減することが可能である。更に、その硬化物は接着強度、耐熱性、耐湿性等の各種硬化物特性にも優れるため、本発明の液晶シール剤を用いることにより、信頼性に優れる液晶表示セルを作成することが可能である。また、本発明の液晶シール剤を用いて作成した液晶表示セルは、電圧保持率が高く、イオン密度が低いという液晶表示セルとして必要な特性も充足される。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0058】
[液晶シール剤の調製]
下記表1に示す割合で各樹脂成分(成分(a)、成分(c))及び有機溶剤(成分(e))を混合し、加熱溶解した。室温まで冷却後、カップリング剤(成分(d))、無機充填剤(成分(f))等を適宜添加し、硬化促進剤(成分(b))を添加し、3本ロールにて均一に混合し金属メッシュで濾過し、実施例1〜5の液晶シール剤を調製した。また、同様にして、比較例1〜4の液晶シール剤を調製した。なお、表中括弧内、成分(b)について、括弧内に記載した数値は、成分(b)の成分(a)に対する量を表す。
【0059】
[ゲルタイム]
自動ゲル化テスタ(伊予電子製)を使用し、測定温度120℃雰囲気下にて、調製した液晶シール剤を測定部に0.4mL入れ、取り付けたテフロン(登録商標)製ニードルを自転部300rpmにて回転させてシール剤を撹拌し、トルクセンサーが70gcmのトルクを検出するまでの時間をゲルタイムとした。結果を表1に示す。
【0060】
[粘度測定]
E型粘度計(VISCONIC EHD型、コーン3°×R14:東京精機株式会社製)にて25℃、10rpmの粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
[チクソ比]
E型粘度計(VISCONIC EHD型、コーン3°×R14:東京精機株式会社製)にて25℃での、10rpm及び1rpmの粘度を測定し、1rpmの粘度/10rpmの粘度の値をチクソ比とした。結果を表1に示す。
【0062】
[保存安定性テスト]
調製した液晶シール剤を25℃雰囲気に48時間保管したものをE型粘度計(VISCONIC EHD型、コーン3°×R14:東京精機株式会社製)にて25℃、10rpmの粘度を測定し、初期粘度からの増粘度を算出し、48時間後の増粘率とした(計算式は、{(48時間後の粘度−初期粘度)/(初期粘度)}×100とした)。結果を表1に示す。
【0063】
[接着性テスト]
洗浄した1.5cm×3cmのガラス基板に、5μmのガラスファイバー(PF−50S:日本電気硝子株式会社製)を液晶シール剤に対して1質量%添加した液晶シール剤を、5μmの厚さに潰したときの直径が0.8〜1.2mmになるように塗布した。90℃設定のホットプレートにて10分間予備加熱を行い、対向基板として、洗浄した1.5cm×3cmのガラス基板を十字の形にて貼り合わせ、バインダークリップNo.155(ライオン事務機器製)にて2箇所をとめ、基板を固定させた。150℃設定の電気乾燥機にこの試験片を1時間投入して液晶シール剤を硬化した後、室温まで冷却した。ボンドテスター(SS−30WD:西進商事製)の引っ張りモードにて3.3mm/秒の速度にて引っ張り方向の強度を測定した。強度をシールの単位面積当たりに換算し、接着強度とした。結果を表1に示す。
【0064】
[熱硬化時剥離性テスト]
8cm×8cm、厚さ0.7mmのガラス基板の中央部に、5μmのガラスファイバー(PF−50S:日本電気硝子株式会社製)を液晶シール剤に対して1質量%添加した液晶シール剤を、断面積5000μmにて一辺4cmのコの字型のパターンをディスペンサーにて塗布した。90℃に設定した電気乾燥機にて10分間予備加熱を行った。室温に戻したガラス基板に、1質量%のグラスファイバー(PF−50S:日本電気硝子株式会社製)を添加したUV硬化型液晶シール剤(KAYATORON HM−1400:日本化薬株式会社製)を、断面積10000μmにて一辺7cmの正方形のパターンでディスペンサーにて塗布した。このガラス基板に対し、ナトコ株式会社製ナトコスペーサーKSEB−525Fを塗布した8cm×8cm、厚さ0.7mmのガラス基板を対向基板として、真空貼り合わせ装置にて7Paの気圧下にて貼り合わせを行った。大気圧下にした後、UV照射し、外側のUV硬化型液晶シール剤を硬化させ、150℃設定の電気乾燥機に7分間放置し、シール剤のギャップ形成を行った。ガラスカッターを用いてガラス基板のコーナー部分を、UV硬化型液晶シール剤の一部も併せて切断し、UV硬化型液晶シール剤の内部を大気圧にした。切断部分を株式会社EHC製封口剤UV−RESIN LCB−610にて封口し、UVを照射して、封口剤を硬化させた。150℃設定の電気乾燥機に60分間投入し、基板内の残存エアを膨張させて、調製した液晶シール剤に応力をかけた。基板を室温に冷却後、基板の液晶シール剤部分を光学顕微鏡にて観察した。観察結果について、以下基準によって評価した。評価結果を表1に示す。
◎・・・シール部分に剥がれや微小気泡がない。
○・・・液晶シール剤のコーナー部分に微小気泡がシール幅に対して20%未満の範囲で観察される。
△・・・液晶シール剤のコーナー部分や直線部分に微小気泡がシール幅に対して30%未満の範囲で観察される。
×・・・液晶シール剤のコーナー部分や直線部分に剥がれがあるか、微小気泡がシール幅に対して30%以上の範囲で観察される。
【0065】
[印刷性テスト]
調製した液晶シール剤を、スクリーン印刷機(LS−150:ニューロング精密工業株式回社製)にてガラス基板に印刷塗布した。これを目視にて確認した。かすれ、液晶シール剤の切れ等の有無を観察した。評価の基準は以下による。結果を表1に示す。
○・・・かすれ、切れが無い。
×・・・かすれ、切れが有る。
【0066】
[ディスペンス性テスト]
調製した液晶シール剤をシリンジに充填・脱泡した後、ディスペンサー(ショットマスター300:武蔵エンジニアリング社製)にてガラス基板上に30mm/secで塗布し、形状を目視にて確認した。かすれ、液晶シール剤の切れ等の有無を観察した。評価の基準は以下による。結果を表1に示す。
○・・・かすれ、切れが無い。
×・・・かすれ、切れが有る。
【0067】
[比抵抗値測定テスト]
10mLサンプル瓶の底に調製した液晶シール剤を100mg程度均一に塗布した後、90℃に設定した電気乾燥機にて10分間溶剤乾燥(プリキュア)を行った。その後150℃に設定した電気乾燥機にて60分間硬化した。室温に冷却後、液晶(MLC−6866−100:メルク株式会社製)を液晶シール剤の10倍量加えた。90℃設定の電気乾燥機にて24時間加熱した後、30分間冷却した。それぞれの上澄みをデカンテーションにて分け取り、デジタル超高抵抗計(R8340:株式会社アドバンテスト製)にて比抵抗値を測定した。評価の基準は以下による。結果を表1に示す。
○・・・比抵抗値が1.0×10E+12以上
×・・・比抵抗値が1.0×10E+12未満
なお、比抵抗値の「1.0E+12」は「1.0×1012」を表し、他の記載も同様である。
【0068】
[吸水率]
5cm×7cmのガラス基板上に調製した液晶シール剤を25μmのクリアランスのアプリケーターを使用して塗布した。90℃に設定した電気乾燥機にて10分間溶剤乾燥を行い、150℃に設定した電気乾燥機にて60分間硬化させた。60℃90%に設定した恒温恒湿槽(HPAV−80−20:いすゞ製作所)に24時間投入後室温にて冷却した液晶シール剤と硬化直後の液晶シール剤との重量変化から吸水率を算出した。算出式は{(吸水後の液晶シール剤重量−吸水前の液晶シール剤重量)/(吸水前の液晶シール剤重量)}×100とした。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1の結果より、本発明の液晶シール剤は、印刷性、ディスペンス性に優れ、液晶パネル製造時の作業性にも優れ、熱硬化時に剥離性もないものであった。また、接着性、吸湿性、液晶汚染性においても優れた結果を示していた。一方、比較例については、印刷性、ディスペンス性に優れているものであっても熱硬化時に剥離が発生し、液晶表示セルの製造ができなかった。また、接着強度が著しく低いものもあった。したがって、本発明の液晶シール剤は、工程を通じて不具合がなく、信頼性に非常に優れたシール剤であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本願発明の液晶シール剤は、熱硬化工程において上下基板が剥離する現象を引き起こさず、塗布作業性等にも優れ、硬化後の接着強度、低液晶汚染性等にも極めて優れる。したがって、信頼性の高い液晶表示セルを容易に製造することを可能とするものである。