特許第5969495号(P5969495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5969495-液晶ポリマーマイクロニードル 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969495
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】液晶ポリマーマイクロニードル
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20160804BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20160804BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   A61K9/00
   A61M37/00
   A61K47/34
【請求項の数】1
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-541980(P2013-541980)
(86)(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公表番号】特表2014-505671(P2014-505671A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】US2011038026
(87)【国際公開番号】WO2012074576
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年5月15日
(31)【優先権主張番号】61/419,049
(32)【優先日】2010年12月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シー.デュアン
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー レンドン
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/117602(WO,A1)
【文献】 特表2002−532165(JP,A)
【文献】 特表平04−502417(JP,A)
【文献】 特開平04−220334(JP,A)
【文献】 特表2004−512195(JP,A)
【文献】 特開2009−072271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーモトロピック液晶ポリマーマイクロニードルを含む、デバイスであって、前記マイクロニードルが先端部と基底部を含み、前記マイクロニードルが、前記先端部から前記基底部への距離の15%において測定した時に30,000〜60,000mN−μmの曲げモーメントを有し、かつ、前記先端部から前記基底部への距離の60%において測定した時に85,000〜105,000mN−μmの曲げモーメントを有する、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は液晶ポリマーマイクロニードル、特にサーモトロピック液晶ポリマーマイクロニードルに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
1つの態様においては、本明細書はサーモトロピック液晶ポリマーマイクロニードルを含むデバイスを提供する。
【0003】
他の態様においては、本明細書は、2ポンドの力(8.9N)を10秒間かけた場合にマイクロニードルが50〜120マイクロメートルの侵入深さを有する、液晶ポリマーマイクロニードルのアレイを含むデバイスを提供する。
【0004】
他の態様においては、本明細書は、3ポンドの力(13.3N)を10秒間かけた場合にマイクロニードルが50〜150マイクロメートルの侵入深さを有する、液晶ポリマーマイクロニードルアレイを含むデバイスを提供する。
【0005】
更に他の態様においては、本明細書は、3ポンドの力(13.3N)を10秒間かけた場合にマイクロニードルが70%以上の侵入効率を有する、液晶ポリマーマイクロニードルアレイを含むデバイスを提供する。
【0006】
他の実施形態においては、本明細書はサーモトロピック液晶ポリマーマイクロニードル及びマイクロニードルアレイの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図面において、
図1】本明細書のデバイスの側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書の成形プロセスは、以下の利点の1つ以上を提供することができる。すなわち、サーモトロピック液晶ポリマー(「TLCP」)中のメソゲンの、成形中における流動配向の生成及び/又はタンブル流の生成の程度を選択的に制御することによって、成形品の巨視的な特性を調整する能力、結果として得られる成形品において物品の成形型キャビティの形状を確実に複製する能力、サブマイクロメートル寸法の物品の特徴部を生成する能力、異方性の物理特性を有する微細物品の特徴部を生成する能力、及び/又は均衡した物理的メゾスコピック特性を有する微細物品の特徴部を生成する能力である。
【0009】
商業に関連するTLCPにおいて、メソゲンは、長距離配向秩序を見せるが、短距離のみのパッキング又は位置秩序の中間相単位を特徴とする「ネマチック」として知られる配列における構造秩序を誘導する、液晶ポリマーの最も基本の単位を構成する。「ディレクター」として定義される平均配向方向(又はベクトル)に沿ったメソゲンの整列は、メソゲン分子配向のランダム分布(すなわち、異方性)に対して0〜完全分子整列に対して1の範囲である、分子異方性因子(以下「異方性因子」と称する)により特徴付けられる。
【0010】
本明細書において使用する時、用語「溶融TLCP」は、溶融状態である(すなわち、そこではそのメソゲンがタンブル流を生成し得る)すべてのTLCPだけではなく、そのメソゲンを固体の配向結晶性領域(例えば、そこではメソゲンが流動配向している)の形態として有し、TLCPの残部は溶融している(例えば、1つ又は複数個の流体非晶質領域の形態である)TLCPも指す。
【0011】
本明細書において使用する時、用語「流動配向した」は、流れ方向に対して、少なくとも約0.4〜1.0、好ましくは少なくとも約0.5〜1.0未満、及びより好ましくは約0.6〜1.0未満の範囲の異方性因子を呈する、TLCPメソゲンの状態を指す。
【0012】
本発明に従って、各成形型チャンバを充填する溶融組成物は、利用に応じて、成形型チャンバを充填するTLCPメソゲンの少なくとも約30%〜100%、35%〜100%、40%〜100%、45%〜100%、50%〜100%、55%〜100%、60%〜100%、65%〜100%、70%〜100%、75%〜100%、80%〜100%、85%〜100%、90%〜100%、又は95%〜100%が流動配向した場合、相当な量の流動配向したTLCPメソゲンを有すると見なされる。これに応じて、各成形型チャンバにより形成されるデバイス又は成形物品(例えば各マイクロニードル)の部分は、マイクロニードル全域のTLCPメソゲンの少なくとも約30%〜100%、35%〜100%、40%〜100%、45%〜100%、50%〜100%、55%〜100%、60%〜100%、65%〜100%、70%〜100%、75%〜100%、80%〜100%、85%〜100%、90%〜100%、又は95%〜100%が流動配向した場合、相当な割合の整列したTLCPメソゲンを有すると見なされる。マイクロニードル全域のTLCPのメソゲンの最大約25%がタンブル流動であること(すなわち、デバイス又は成形物品の対応する部分の微小寸法の最大約25%が等方性であること)が望ましい場合がある。他の利用においては、各マイクロニードル中により多量のタンブル流動のTLCPメソゲンが許用されてよい。他の利用においては、タンブル流動TLCPメソゲンのより低い最大値のマイクロニードルさえも望ましいことがある。
【0013】
TLCPメソゲンは、TLCPが溶融している成形温度で、流動配向した状態から速やかに回転を開始する。それ故、少なくともマイクロニードル成形チャンバ中の溶融TLCPを、マイクロニードルの成形型チャンバが充填された後速やかに固化させ、流動配向したメソゲンのかなりの量が成形されたマイクロニードルの中で流動配向した状態に確実に留まるようにしなければならない。各マイクロニードルの成形型キャビティの寸法は、キャビティ中の溶融TLCPの冷却速度に影響を与え得る。例えば、成形型キャビティの寸法が小さいほど、固化する溶融TLCPの量がより少ないので、冷却速度はより速い。更に、成形型が例えば銅合金のような熱伝導率の高い材料に比べて、例えばステンレス鋼のような熱伝導率の低い材料で作製されている場合、熱伝導率のより低い成形型材料はより遅い速度で溶融TLCPから熱を奪うので、成形型の設計が大型化又は巨大化するほど冷却速度は遅くなる。適量のTLCPメソゲンが固化した成形物品に望ましい物理特性を提供する流動配向した状態に留まるか否かを、この冷却速度が決定する。
【0014】
流動配向したTLCPメソゲンは、各キャビティにより形成された又は少なくとも各マイクロニードル成形キャビティによって形成された物品の成形された要素全体に見いだされる。あるいは、各マイクロニードル成形キャビティによって形成された成形要素の流動配向したTLCPメソゲンは、外側領域又は層厚に比べて、流動配向していない(例えば、大部分又は完全にタンブル流動であるかそうでなければ等方性である)TLCPメソゲンを含有する溶融組成物の芯を包み込む外側領域又は層厚(例えばスキン)において認めることができる。流動配向したTLCPメソゲンのそのような外側領域又は層厚は、3つの可能な条件下で形成され得る。(1)微小寸法が大きすぎて、微小寸法全体において十分に高い流速を可能にすることができない場合、(2)外側部分のみが、メソゲンを流動配向した状態で固化するのに十分急速に冷却される場合、又は(3)(1)及び(2)の両方である。マイクロニードルの寸法が十分小さく、溶融TLCPの冷却速度が十分に速い場合には、マイクロニードル全体にわたる溶融TLCP中のすべてのメソゲンは、流動配向した状態であることができ、溶融TLCPが固化した時点で流動配向した状態に留まることができる。
【0015】
本明細書によるマイクロニードルの製造方法の詳細は、米国特許仮出願第61/287,799号(2009年12月18日に出願)に記載されている。下記の例示的な方法は、ラミネートキャビティのツール構成を用いる、TLCPマイクロニードルアレイの射出成形に関連する成形手順を述べる。
【0016】
低から中圧縮用に設計された22mm往復スクリューを備えたKrauss−Maffei射出成形機(Krauss−Maffei,Florence,KYから入手可能)を使用して、純粋なTLCP材料(例えばTicona Engineering Polymers,Inc,Florence,KYから入手できるVectra MT1300)の固体ペレットを可塑化することから、この方法が始まる。スクリューの供給部位にポリマーの公称融点(例えば、Vectra MT1300,については<480°F(249℃))に近い温度で材料を導入し、材料の熱暴露履歴を確実に制限する。スクリューの回転につれて材料は可塑化し始め、スクリューの圧縮区域に移動し、そこでポリマーは高せん断力を呈し始め、これにより柔軟化中の材料の520〜540°F(271〜282℃)にいたる融解プロセスが始まる。
【0017】
射出ショットが完了すると、ポリマーはスクリューの計量部分を通り、射出待機(この時点で560°F(293℃))となる。材料は、該当するキャビティへの射出の前に、更にホットマニホールド(又はホットランナー)に導入することもまたできる。ホットランナードロップは、スクリューの計量ゾーンと同じ公称温度に保たれている。
【0018】
材料のショットが完了し、ポリマーがスクリュー及びバレルアセンブリと熱平衡に達すると、サイクルの開始準備が完了である。可塑化プロセス中に得た異方性の量を減らし、またポリマーが成形型の入口付近において時期尚早に凝固しないことを確保する温度に、TLCPを保つ。
【0019】
成形型を閉め、材料を射出した場合のキャビティの内部圧力(20Kpsi(137.9MPa)を超える)に打ち勝つように、20〜30トンの間の十分なクランプ力を確保する。クランプ力が高まり次第、望ましい速度に達するに十分な第1段階の圧力(25Kpsi(172.4MPa)を超える)が得られるとして、TLCPを射出装置のラムにより高速(>4インチ/秒(10.16cm/s))で射出する。成形型の温度は、サイクルの継続期間を通して180°F(82℃)に固定する。
【0020】
流入する高分子材料は射出ゲートを通して極めて高いせん断速度に会い、このことは成形されたマイクロニードルの機械特性がニードルの長軸方向(すなわち、正方形ピラミッドのニードルでは、ベースから先細先端部に向かう軸に沿った)に優勢的になることを確実にする、高度の分子異方性を促進する。材料が平衡の「タンブル流動」状態から「流動配向」の1つの状態へ遷移するのは、この工程中である(米国特許仮出願第61/287,799号(2009年12月18日に出願)を参照)。
【0021】
TLCPのための別の加工要素は、材料の射出速度で同時にキャビティを脱気することを促進するのに役立つP20又は420ステンレス鋼をラミネートしたツールの使用である。空気の粘度は十分低く、ガスはニードルの形状を画定するサブミクロン表面を通して抜け出ることができる。同時に、急速に入り、配向し、そして固化しつつあるポリマーの粘度が、ラミネートされたツールのキャビティにより画定されたサブミクロン表面に入るには高すぎて、それ故空気のみが逃げることができる。
【0022】
第1段階の充填は、材料のフローパスの広がりに依存して、典型的には、0.3秒未満に起こる。より典型的には、第1段階の射出中にキャビティを完全に充填するのには0.1秒必要である。
【0023】
第1段階(速度によって制御される)の射出により材料が入りキャビティの約98%を満たした時点で、成形型の残りの部分は第2段階(圧力によって制御される)の射出により充填される。
【0024】
18Kpsi(124.1MPa)又はそれに近い第2段階の圧力は、成形型のあらゆる残部(マクロ又はミクロ)も完全に充填され、そしてどのような材料の収縮も、スクリューの前で得られる少量のポリマークッションによりあてがわれる余分の材料により補われることを、保証する。
【0025】
350°F(177℃)の熱変形温度(HDT)未満への材料の急速固化で、マイクロニードルアレイは、プロセスの排出フェースの準備が完了する。
【0026】
排出は、成形した部品を射出成形型キャビティから取り除くための機構である。これは、典型的には、部品が適切にツールから確実に取り除かれ得るように、一連の、排出ピン、空気介助、真空介助などによって生じてもよい。
【0027】
射出成形ポリカーボネートアレイの比較実施例もまた実施される。ラミネートキャビティツール構成を使用する、カーボネート(PC)系マイクロニードルアレイの射出成形に使用する、比較成形手順を以下に記述する。
【0028】
中圧縮用に設計された18mm往復スクリューを備えたKrauss−Maffei射出成形機を使用して、純粋なポリカーボネート(「PC」)材料(Sabic Innovative Plastics,Pittsfield,MAから入手できる、Lexan HPS1R)の固体ペレットを可塑化することから、この方法が始まる。
【0029】
スクリューの供給部位にポリマーの公称融点(例えば、Lexanについては、<480°F(249℃))に近い温度で材料を導入し、材料の熱暴露履歴を確実に制限する。スクリューの回転につれて材料は可塑化し始め、スクリューの圧縮区域に移動し、そこでポリマーは高せん断力を呈し始め、これにより柔軟化中の材料の540°F(282℃)にいたる融解プロセスが始まる。
【0030】
射出ショットが完了すると、ポリマーはスクリューの計量部分を通り、射出準備完了領域に入る(まだ540°F(282℃)であり、スクリューの長手方向に直線状の温度分布を保持している)。該当するキャビティへの射出の前に、更にホットマニホールド(又はホットランナー)に材料を導入することもまたできる。ホットランナードロップは、スクリューの計量ゾーンと同じ公称温度に保たれている。
【0031】
材料ショットが完了し、ポリマーがスクリュー及びバレルアセンブリと熱平衡に達すると、サイクルの開始準備が完了である。ラミネートされた成形型キャビティの表面をポリカーボネートが完全に複製することを保証するために、流入するポリマーの温度が軟化点未満とはならず、該当キャビティを満たすのに十分低い粘度をポリマーが持つことを保証する適切な状態まで、成形型の温度を上げる必要がある。
【0032】
キャビティ近くの成形型温度を、330〜360°F(166〜182℃)の温度まで急速に上昇させる。この温度は、材料のずり粘度、メルトフローインデックス、マクロ対ミクロの成形型キャビティ特徴部のサイズ及びベントに依存して変化する。第2段階の前に当該キャビティの完全な充填を保証するに十分な長さでこの温度を保持する。温度に到達した時点で成形型を閉め、材料を射出した場合のキャビティの内部圧力(16Kpsi(110.3MPa)を超える)に打ち勝つように、十分なクランプ力(20〜30トン)をかける。クランプ力が高まり次第、望ましい速度に達するに十分な第1段階の圧力が得られるとして、PCを射出装置のラムにより比較的低速(<2インチ/s(5.08cm/s))で射出する。
【0033】
流入する材料は高いせん断力を受けるが、しかし、成形型の温度が第1段階の射出中非常に高く保たれることを前提にすれば、この力は従来のPCの射出成型に比較して相当低い。これは、冷却後の最終物品に付随する、熱及びせん断応力が最小であることを保証する。これはとりもなおさず、物品の均一でバランスの取れた巨視的及び微視的微細特性の増進に役立つことになる。
【0034】
材料の射出速度で同時にキャビティを脱気できることが、ラミネートしたツールを使用するPCマイクロニードルアレイの加工にとって有用である。空気の粘度は十分低く、ガスはニードルの形状を画定するサブミクロンの表面を通して抜け出ることができる。同時に、急速に入り、配向し、そして固化しつつあるポリマーは、ラミネートされたツールのキャビティにより画定されたサブミクロン表面に入るには粘度が高すぎる。
【0035】
成形型は196(14×14)のキャビティからなり、それぞれが700マイクロメートルの深さであり、直径5マイクロメートル未満の先端に狭まる。第1段階の充填は、材料のフローパスの広がり次第であるが、典型的には、2秒未満に起こる。より典型的には、第1段階の射出中にキャビティを完全に充填するには1秒が必要である。
【0036】
第1段階(速度によって制御される)の射出により材料が入り、キャビティの約98%が満たされるとすぐに、成形型の残りの部分が第2段階(圧力によって制御される)の射出により充填される。第2段階の射出は、成形型のあらゆる残った部分(マクロ又はミクロ)も完全に充填され、そしてどのような材料の収縮も、スクリューの前で得られる少量のポリマークッションによりあてがわれる余分の材料により補われることを、保証する。
【0037】
ポリマーの温度を材料のガラス転移未満にするために、成形型の温度(240〜250°F(116〜121℃))を劇的に低下させるのは、第2段階においてである。材料の固化が完了する時点で(ポリマーがそのHDT未満であることを確実にして)、マイクロニードルアレイは、プロセスの排出フェースの準備が完了する。
【0038】
排出は、成形した部品を射出成形型キャビティから取り除くための機構である。これは、典型的には、部品が適切にツールから取り除かれ得ることを保証するために、一連の、排出ピン、空気介助、真空介助などによって生じてもよい。
【0039】
上記例示の方法のそれぞれを使用して、多様な異なる成形物品を形成することができる。更に、各特徴部のキャビティに溶融組成物を充填することによって、中空の構造の特徴部(例えば、中空のニードル)、中実である構造の特徴部(例えば、中実のニードル又はピン)、又は双方の組み合わせをもたらすことができる。
【0040】
1つの態様においては、本明細書はサーモトロピック液晶ポリマーマイクロニードルを含む、デバイスを提供する。
【0041】
この出願において使用する時、マイクロニードルは、典型的には、1000マイクロメートル未満の高さ、800マイクロメートル未満の高さ、時には500マイクロメートル未満の高さである。マイクロニードルは50マイクロメートルを超える高さ、200マイクロメートルを超える高さ、時には500マイクロメートルを超える高さであってもよい。
【0042】
マイクロニードルはアスペクト比により特徴付けることができる。本明細書において使用するとき、用語「アスペクト比」は、マイクロニードルの高さ(マイクロニードルのベースを囲む表面の上方)の、最大のベース寸法、すなわち、ベースが占める最長の直線(マイクロニードルのベースが占める表面上の)の寸法に対する比である。長方形のベースを有するピラミッド型マイクロニードルの場合には、最大のベース寸法はベースを横切って対角を結ぶ対角線である。本明細書によるマイクロニードルは、典型的には、約2:1〜約6:1の間の、時には約2.5:1〜約4:1の間のアスペクト比を有する。
【0043】
本明細書に記載された任意の実施形態により作製されるマイクロニードルアレイは、開示が本明細書に援用される、以下の特許及び特許出願に記載されたものなどの任意のさまざまな構造を含んでもよい。マイクロニードルデバイスの1つの実施形態は、米国特許出願公開第2003/0045837号に開示された構造を含む。前述の特許出願において開示された微細構造体は、各マイクロニードルの外表面に形成された少なくとも1つのチャネルを含む傾斜構造を有するマイクロニードルの形態である。マイクロニードルは、1つの方向に引き延ばされたベースを有してもよい。引き延ばされたベースを有するマイクロニードルのチャネルは、伸長されたベースの末端部の1つから、マイクロニードルの先端へ延びていてもよい。マイクロニードルの側面に沿って形成されたチャネルは、任意に、マイクロニードルの先端の手前で終わってもよい。マイクロニードルアレイは、マイクロニードルアレイが位置する基材の表面に形成される導管構造もまた含んでもよい。マイクロニードル中のチャネルは、導管構造体と流体連通していてもよい。マイクロニードルデバイスに関する別の実施形態は、切頭の傾斜した形体と制御されたアスペクト比を持つマイクロニードルを記載する、同時係属中の米国特許出願公開第2005/0261631号に開示された構造を含む。更にマイクロニードルアレイに関する別の実施形態は、中空の中央チャネルを有する傾斜した構造を記述する、米国特許第6,313,612号(Shermanら)に開示された構造を含む。更にマイクロニードルアレイに関する別の実施形態は、少なくとも1つの縦ブレードをマイクロニードルの先端の頂上表面に有する中空のマイクロニードルを記述する、国際特許公開WO 00/74766号(Gartsteinら)に開示された構造を含む。
【0044】
1つの実施形態においては、マイクロニードルは0.3を超え1.0までの範囲の異方性因子に分子的に整列した、メソゲンを含む。本明細書に記載の成形工程は、このような異方性を有するマイクロニードルに導くことができる。例えば、図1は本明細書によるデバイスの断面図を示す。デバイス10は、ベース130及びマイクロニードル100を含む。マイクロニードル100は更に整列したメソゲン層110及び整列していないメソゲン層120を含む。ベース130は整列していないメソゲン層120と同じくらいの整列した層を含んでもよい。
【0045】
図1においては、整列したメソゲン層110はベースで終わっているように示されているが、ある程度の整列を有する層がベース130の表面に沿って存在してもよいことに留意されるべきである(マイクロニードルの近傍及びマイクロニードルの反対側の表面に沿っての両方)。ほとんどの場合、樹脂が成形型と接触するどのような場所においても、特にこのような部位が整列を保存するのに十分速やかに冷却し得る場所である場合には、ある程度のメソゲン的整列があることがある。このような整列は、TLCPが成形型キャビティを充填する際に受ける流動応力、及び同時に起こる成形型表面に最も近いTLCPの急速冷却が原因であり得る。
【0046】
本明細書のデバイスは、例えば皮膚への容易な侵入が可能な、高い曲げ弾性率のマイクロニードルを提供することができる。更に、本明細書のマイクロニードルは丈夫である。「丈夫」により、本明細書によるデバイスはニードルがベースから完全には折れないことを意味する。特に本明細書のデバイスに関しては、ニードルの中央部に十分高い力を無理に加えるとマイクロニードルはベースで折れることがあるが、ニードルはベースから分離しない傾向にあることが観察された。
【0047】
幾つかの実施形態においては、マイクロニードルはベース130と一体であり、ベース130から突き出ている。上記の方法において記載のとおり、メソゲンの少なくとも一部は流動配向していてもよい。更なる実施形態においては、少なくとも約30%のメソゲンが流動配向している。更に別の実施形態においては、少なくとも約10%のメソゲンが流動配向しており、残りのメソゲンは比較的等方性の配向状態を有する。
【0048】
理論に束縛されるものではないが、整列したメソゲン層110の高度に整列した整列メソゲン「スキン」は、本明細書のデバイスの容易な皮膚侵入を可能にする強度を与え得ると信じられる。一方において、整列していないメソゲン層は、その整列していない状態により、ベース130の整列していない状態とともに、高結晶性の成形したポリマーマイクロニードルデバイスに典型的にみられる折れによる不具合にマイクロニードルが抵抗できる強靱性を与え得る。
【0049】
更なる実施形態において、それ自身が先端及びベースを含むマイクロニードルを、本明細書のデバイスは含む。ニードルの剛性を説明するため、幾つかの実施形態において、先端からベースまでの距離の15%において測定した30,000〜60,000mN−μmの曲げモーメントをマイクロニードルが有することを観察し得る。更に他の実施形態においては、先端からベースまでの距離の60%において測定した85,000〜105,000mN−μmの曲げモーメントをマイクロニードルは有する。
【0050】
マイクロニードルを含むデバイスの性能は、破壊的変形が観察される前にマイクロニードルの先端に加えられることが必要な座屈力により説明することができる。例えば、1つの実施形態においては、マイクロニードルを含む本明細書のデバイスは0.2〜0.5Nの座屈力を持つ。参照のために実施例に示されるように、ポリカーボネートマイクロニードルの類似の座屈力の値は約0.1Nで、本明細書のマイクロニードルにおいて破壊的変形をもたらすのに要求される力の半分未満である。
【0051】
本明細書のデバイスを説明する更に他の方法は、マイクロニードルの断面の弾性率を明らかにすることである。例えば、1つの実施形態においては、分子的に整列したメソゲンを含有するマイクロニードルの領域は、6〜8Gpaの弾性率を有する。他の実施形態においては、マイクロニードルはメソゲンが実質的にほぼ等方性(例えば、整列していないメソゲン層120)である領域を更に含む場合には、等方性領域は4〜6Gpaの弾性率を有する。この差のある弾性率は、マイクロニードルの皮膚への容易な挿入を可能にし、一方同時にマイクロニードルの折れる傾向を減らすことができる。
【0052】
本明細書のデバイスは、その配向度により記述され得るマイクロニードルを有する。例えば、Hermans配向関数は、特定のポリマーの試料の配向度を記述する比較的簡単な数学的表現である。例えば、上述のように製造されたPCアレイは、散漫なx線散乱を示すのみで、整列した結晶質材料の証拠は示さない。しかし、本明細書によるTLCPマイクロニードルに関しては、0.4〜0.8、より正確には0.6〜0.75、のHermans配向関数の値が観測される。
【0053】
他の態様においては、本明細書は2ポンドの力(8.9N)を10秒間かけた場合に、マイクロニードルが50〜120マイクロメートルの侵入深さを有する、液晶ポリマーマイクロニードルアレイを含むデバイスを提供する。
【0054】
他の態様においては、本明細書は3ポンドの力(13.3N)を10秒間かけた場合に、マイクロニードルが50〜150マイクロメートルの侵入深さを有する、液晶ポリマーマイクロニードルアレイを含むデバイスを提供する。
【0055】
当業者は、侵入深さの調査は被侵入基材の選択に影響され得ることを理解するであろう。例えば、実施例でより詳細に説明するように、豚に関する侵入深さの調査結果は、試験がもも肉か又はあばら肉で行われたかによって異なる。本出願においては特に断りのない限り、豚のあばら部分に適用して測定された侵入深さの値が提供される。
【0056】
更に1つの態様においては、本明細書は3ポンドの力(13.3N)を10秒間かけた場合に、マイクロニードルが70%以上、又は80%以上、又は90%以上さえもの侵入効率を有する、液晶ポリマーマイクロニードルアレイを含むデバイスを提供する。この文脈においては、侵入効率は、与えられたマイクロニードルアレイに関して、皮膚に侵入するマイクロニードルのアレイ中のニードルの総数に対する比を指す。測定技術のより詳細な説明は実施例に記載する。
【0057】
再度この文脈においいて、侵入効率の調査は被侵入基材の選択に影響され得る。本出願においては特に断りのない限り、豚のハム部分に適用して測定された侵入効率値が提供される。
【0058】
更に別の態様においては、本明細書は手で挿入可能な成形したプラスチックマイクロニードルに関する。より具体的には、マイクロニードルはサーモトロピック液晶ポリマーであってもよい。1つの実施形態においては、手により挿入可能は、通常手で加えられる圧力によりヒトの皮膚への挿入が可能であることを意味する。例えば、好適な手で加えられる圧力は、8ポンド(35.6N)力未満、5ポンド(22.2N)力未満、又は3ポンド(13.3N)力未満でさえもあり得る。
【0059】
ヒトに対するこのようなデバイスの試験は都合のよいことではないので、手による挿入の可能性の決定には代用動物の使用が要求される可能性があることが理解されるであろう。同業者は、典型的に、豚の皮膚がヒトの皮膚に近い動物モデルであると考えている。したがって、1つの実施形態においては、マイクロニードルは、手で加えられる通常の圧力を使用して、豚の皮膚に手で挿入可能であり得る。例えば、手で加えられる適した圧力は、8ポンド(35.6N)力未満、5ポンド(22.2N)力未満、又は3ポンド(13.3N)力未満でさえもあり得る。
【0060】
更なる実施形態においては、本明細書のデバイスをヒトの皮膚に挿入するのに要求される力は十分低くてもよく、マイクロニードルは十分短い長さであってもよく、このようなデバイスのヒトの皮膚への手による挿入では、わずかにしか出血しないか又は出血しない。これは、その長さが原因である侵入深さのため、典型的に、皮膚挿入時に出血させる、例えば、ランセット、皮下注射針などと対照的である。
【0061】
本明細書によるデバイス及びマイクロニードルアレイは、多くの用途に使用できる。例えば、中空のマイクロニードル又はマイクロニードルアレイは、活性薬剤製剤の皮内空間への送達に使用され得る。更に、中空のマイクロニードル又はマイクロニードルアレイは、キャピラリー力、吸引、又は他の適切な方法を使用する引き抜き、皮膚からの体液(例えば間質液など)の引き抜きに使用され得る。本明細書による固体マイクロニードル又はマイクロニードルアレイは、多くの方法により使用することができる。固体マイクロニードル又はマイクロニードルアレイに活性薬剤を塗布し、活性薬剤を角質層を通す皮内空間への送達に使用することができる。固体マイクロニードル又はマイクロニードルアレイはまた、角質層を貫通する皮内空間へのチャネルの提供にも使用することもでき、経皮的な貼付剤、クリームなどの適用などの後処置がこれに続き得る。更に、チャネルをマイクロニードルの中(例えば適切な形の成形型キャビティを使用して)に作ることができ、このチャネルはキャピラリーの作用により体液(例えば間質液)を引き抜くことができるように構成することができる。
【0062】
以下の実施例は、あくまで本発明の特徴、利点、及び他の詳細を更に説明する目的で選択されたものである。しかしながら、実施例はこの目的の働きをしているが、各実施例の詳細は、本発明の範囲を過度に限定するように解釈されるべきではないことを明確に理解すべきである。
【実施例】
【0063】
(実施例1)
皮膚への手による適用をシミュレーションするように適用し、液晶ポリマーマイクロニードルアレイの侵入深さ(DOP)を、イン.ビボによりドメスティックヨークシャー交雑ブタ(Midwest Research Swine,Gibbon,Minnesota)を使用して測定した。各アレイは、Vectra MT1300サーモトロピック液晶ポリマー(Ticona Engineering Polymers,Florence,Kentucky)を使用して成形され、15行×15列のパターンの四角錐形のマイクロニードルを特徴とし、公称700マイクロメートルのマイクロニードルの高さ、約3.1のアスペクト比、公称550マイクロメートルの隣接するマイクロニードルの間の先端間距離を有していた。
【0064】
適用に先立ち、DOP測定のためにマイクロニードルを薄い不透明なローダミンBのコーティングにより完全被覆した。アレイを2工程の下塗りプロセスにより下塗りした。工程1)アレイを35μlの0.5mg/mlポリビニルアルコール(80%加水分解)(Sigma−Aldrich,Inc,St.Louis,Missouri)、90%(v/v)エタノール/水中の35ug/mlのTween(登録商標)80(Sigma−Aldrich,Inc,St.Louis,Missouri)によりフラッドコーティングし、95°F(35℃)で20分間乾燥し、次に工程2)アレイを35μlの33.3mg/mlの硫酸カリウムアルミニウム(Penta Manufacturing,Livingston,New Jersey)水溶液によりフラッドコーティングし、95°F(35℃)で30分間乾燥した。次いで、下塗りしたアレイを35μlの0.08%(w/v)ローダミンB(Aldrich Chemical Company,Inc,Milwaukee,Wisconsin)水溶液によりフラッドコーティングし、95°F(35℃)で30分間乾燥した。
【0065】
動物の適用部位をクリップし、実施例に2に記載のとおりに剃って、あばら及びハム領域から毛を除去し、動物にイソフルランガスを使用して麻酔し、実験中麻酔を継続した。
【0066】
ローダミンBを塗布したTLCPマイクロニードルアレイを両面感圧テープにより、Chatillon(登録商標)フォースゲージ(モデルDFS−050)のシャフトに取り付け、適用時の力の大きさを測定した。アレイを豚の皮膚に、2lbf(8.9N)、3lbf(13.3N)、及び5lbf(22.2N)の力で、10秒間適用した。試験アレイ(n=3)を、各印加力で骨(あばら領域)の上の組織及び堅くひきしまった筋肉(ハム領域)の上の組織の両方に適用した。
【0067】
マイクロニードルの先端から、皮膚に適用後にローダミンBの塗膜がマイクロニードルから拭き取られているか溶解している場所までの距離を測定することにより、皮膚への侵入の深さを間接的に測定した。侵入深さの解析は、Pro(登録商標)Plus画像解析ソフトウェア(Media Cybernetics,Inc,Bethesda,Maryland)を備えた顕微鏡を使用して、マイクロニードルを撮像して実施した。各アレイの平均DOPは、アレイパターンの4つの領域において、アレイ毎にある225の全マイクロニードルの中の66を測定して決めた。
【0068】
豚の皮膚に適用した、ローダミンBをコーティングしたTLCPマイクロニードルアレイの侵入深さの結果を、骨(あばら領域)の上の組織に適用したアレイについては表1に、堅くひきしまった筋肉(ハム領域)の上の組織に適用したアレイについては表2に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
(実施例2)
比較調査においては、マイクロニードルアレイをVectra MT−1300サーモトロピック液晶ポリマーを使用して成形し、アレイはまたLEXAN HPS1R−1125ポリカーボネート(PC)(GE Plastics,Pittsfield,Massachusetts)を使用しても成形した。各ケースにおいて同じ成形型インサートを使用した。マイクロニードルアレイは、14行×14列パターンの三角錐形のマイクロニードルを特徴とし、公称700マイクロメートルのマイクロニードル高さ、公称550マイクロメートルの隣接するマイクロニードルの間の先端間距離を有していた。個々のニードルは三面から構成されており、1つの壁はアレイベースに垂直であり、他の2つは傾斜していた。マイクロニードルの垂直の壁は、アレイベースに交わるところで275マイクロメートルの幅があり、ニードルの3つの壁間の角度はすべて60度であった。
【0071】
手で印加される力を模したマイクロニードルの皮膚への侵入能力の試験を、イン.ビボでドメスティックヨークシャー交雑ブタ(Midwest Research Swine,Gibbon,Minnesota)を使用して行なった。ハム領域をまず電気バリカン(#50ブレードを備えたOster Golden A5バリカン)により刈り、次いで剃刀とシェービングクリームを使用して剃った。次いで、ハムを脱イオン水ですすぎ、70/30のイソプロパノール水で拭いた。マイクロニードルアレイをハム領域に適用し、加えた力を(範囲が0〜5lbf(0〜22.2N)であるフォースメーター、Ametek Mansfield & Green Division Accu Force Cadet)を使用して測定した。試験するマイクロニードルアレイを皮膚の表面に置き、次いで規定の力のフォースメーターを使用して、力をアレイに規定の時間かけた。
【0072】
マイクロニードルによる皮膚角質層への侵入は、脱イオン水中の、Tween 80(2.0mg/ml)を含むメチレンブルー(2.0mg/ml)染色溶液による、イン.ビボの適用後染色により評価した。マイクロニードルアレイを適用後、アレイを皮膚から取り除き、メチレンブルー染色溶液を飽和した先端が綿のアプリケータを使用して、適用場所を湿らせた。メチレンブルー染色溶液でほぼ飽和している適用部位を、Hill Top Chamber(登録商標)システム(Hill Top Research,Inc.,Cinncinnati,Ohio)により直ちに覆い、液体と皮膚との接触を保った。10分の染色時間後、Hill Top Chamber(登録商標)を取り除き、適用部位を脱イオン水でよくすすぎ、紙タオルで吸い取り乾燥した。部位を写真撮影した。
【0073】
マイクロニードルの侵入の結果、角質層が破れ染色溶液の下の組織への拡散が可能となり、青色の染色された穴が生じた。染色された穴のパターン(すなわち、ニードル及びアレイのニードルパターン間の間隔)は目に見え、毛嚢又は剥離若しくはかすり傷が原因の皮膚の損傷領域から容易に識別できた。ニードルが侵入した部位の数は、該当する青色ドットを数えることにより測定した。
【0074】
TLCPマイクロニードルアレイを使用して、豚ハムに3lbf(13.3N)を10秒間適用して、合計6回の反復を行った。PCマイクロニードルアレイを使用して、豚ハムに5lbf(22.2N)を30秒間適用して、合計6回の反復を行った。各アレイの種類について個々の反復の結果を、平均し、アレイ中の適用部位に侵入したマイクロニードルのパーセントの形式として、報告した(表3)。アレイ中のTLCPマイクロニードルの平均89%が豚ハムに侵入したが、一方アレイ中のPCマイクロニードルの平均36%が豚ハムに侵入した。
【0075】
【表3】
(実施例3)
TLCPマイクロニードルのX線回折(XRD)分析を以下の手順により実施した。Vectra MT1300サーモトロピック液晶ポリマー(Ticona Engineering Polymers,Florence,Kentucky)を用いて、マイクロニードルアレイを成形した。TLCPマイクロニードルアレイは、八角形のパターンの316の四面ピラミッド形のマイクロニードルを特徴とし、公称500マイクロメートルのマイクロニードル高さ、約3.1のアスペクト比、公称550マイクロメートルの隣接するマイクロニードルの間の先端間距離を有していた。マイクロニードルの1つの行を、両側で、アレイベース面に垂直に、かつマイクロニードルの行に平行に切断し、アレイから取り除いた。得られたマイクロニードルの行を、両面接着テープを使用して平らな1mmのガラス片に乗せた。行中の5つの個々のマイクロニードルを調べた。Bruker GADDSマイクロディフラクトメータ(Bruker−AXS,Madison,Wisconsin)、銅Kα放射、及びVÅNTEC 2000 2D光位置センサ(Bruker−AXS)を使用して、透過構造データを集めた。500μmのピンホールでコリメートした入射x線ビームを、黒鉛モノクロメータで調整し、ニードルの長軸が垂直に位置するように置いた試料ニードルの軸に垂直に向けた。試料と検出器との距離を12cmとし、データを3時間蓄積した。検出器電子装置は、2D検出器レジストリー面の全域にわたる2048×2048チャネルに設定し、0度(2シータ)に中心を合わせた。試料傾斜角(ω)をゼロ、X線発生装置を50kV、50mAに設定した。観測された2Dデータを、Bruker GADDSソフトウェア(バージョン4.1.32、Bruker−AXS)を使用して、空間線形性と感度に関して、処理し修正した。各2D検出器イメージを使用して、最大回折ピークを特定した。マイクロニードルの長軸に沿ったポリマー鎖の整列により、最大は2D検出器画像の赤道に沿って起こった。TLCPマイクロニードルは、19.7度(2シータ)の散乱角(0.1度の標準偏差、0.5%の% RSD)において、測定平均(n=5)赤道回折ピークの最大を示した。
【0076】
360度の方位角にわたり、0.5度の散乱角(2シータ)ウィンドウ幅を有する最大を中心とする方位トレースを、1度角刻みで2Dデータセットから選択した。方位トレースデータを調べて、データの最大の角度の位置を特定した。方位最大の中心を特定し、角ファイ(φ)値としてゼロを与えた。ファイ=0及びファイ=90の間の観測した方位強度データを表にした。方位バックグラウンド強度(I−bkg)値は、85度及び90度間のファイ値における方位強度の平均として見積もった。平均方位バックグラウンド値(I−bkg)を、ファイ=0及びファイ=90度の間の各観測方位強度データ(I−観測)から差し引き、修正強度値(Iφ)を得た。参考資料、X−ray Diffraction Methods in Polymer Science,Leroy E.Alexander(1969),John Wiley & Son,Inc.,New York;Chapter 4,「Preferred Orientation in Polymers」中の手順を使用して、Hermans配向関数値(f)を決定した。Hermans配向関数の計算及びデータの可視化は、表示及び計算ソフトウェア、ORIGINバージョン6.1(MicroLab Corp.,Northampton,Massachussetts)を使用して行った。TLCPマイクロニードルの平均(n=5)Hermans配向関数は、0.61(標準偏差が0.12、%RSDが19.6%であった。TLCPマイクロニードルの測定平均方位ピーク幅は、33.9度(標準偏差が1.4度、%RSDが4.1%)であった。
【0077】
(実施例4)
アレイ中の個々のマイクロニードルの座屈力(P)は、マイクロメカニカルテスター(参考資料、Parker,E.R.,Rao,M.P.,Turner,K.L.,Meinhart,C.D.,MacDonald,N.C.,Journal of Micromechanical Systems,2007,16巻,289〜295ページの図4に記載の一般的な設計の改良バージョン、改良の詳細を以下に示す)を使用して測定した。VectraMT1300 TLCP(Ticona Engineering Polymers,Florence,Kentucky)を使用して成形したアレイ中の、マイクロニードルを試験した。TLCPマイクロニードルアレイは、八角形パターンの、316の四面ピラミッド形のマイクロニードルを特徴とし、公称500マイクロメートルのマイクロニードル高さ、約3.1のアスペクト比、公称550マイクロメートルの隣接するマイクロニードルの間の先端間距離を有していた。
【0078】
マイクロニードルの軸の向きがプローブの長軸に対して0度となるように(すなわちマイクロニードルの先端がプローブ方向に配向する)、エポキシを使用してアレイをメカニカルテストベッドに装着した。テストベッドは、手動のz軸マイクロメートル制御を含んでいた。
【0079】
National Jet NAJET Flat Nose Punch Series 100(材料はHSSC、シャンクは0.040インチ(0.10cm)、OAL7/8インチ.0.002インチ×7X(2.22cm、0.0051cm×7X))(The National Jet Company,LaVale,Maryland)を、エポキシを使用してねじ込みインサートに付着させ、次いでこれをGSO−150ロードセル(Transducer Techniques,Temecula,California)に取り付けた。ロードセルを、メカニカルテストベッドに面して置かれたTLSR−75B2軸移動ステージ(x軸及びy軸制御)に搭載した。ステージは、プログラムできる速度傾斜及びジョイスティックドライブ(Zaber Technologies,Vancouver,Canada)を特徴としていた。ポジションゲージは、Lion CPL 290 Capacitance Gauge(Lion Precision,Saint Paul,MN)であった。パンチのマイクロニードル方向への前進は、倍率200倍のVH−220デジタル顕微鏡(Keyence Corporation,Osaka,Japan)により観測した。顕微鏡のカーソルを使用して、パンチの中心がマイクロニードルの先端に激突するように、パンチを配置した。パンチを、4マイクロメートル/秒の速度で進むように、プログラムした。荷重変位データを実時間で記録し、グラフ処理ソフトウェアパッケージIgor Proバージョン3.1.5(WaveMetrics,Lake Oswego,Oregon)を使用して解析した。力及び変位に関して記録された電圧を、力[N]及び変位[マイクロメートル]の単位に変換した。力対サンプルポイントをプロットし、力の突然の低下がプロットで観測される前に印加された最大の力を、座屈力(P)として記録した。1本のTLCPマイクロニードルに関する平均(n=4)座屈力値は、0.34N(標準偏差が0.03N、%RSDが8.8%)と測定された。
【0080】
LEXAN HPS1R−1125ポリカーボネート(PC)(GE Plastics,Pittsfield,Massachusetts)を使用してマイクロニードルアレイを成形して、比較実施例を準備した。PCマイクロニードルアレイは、八角形パターンの366の四面ピラミッド形のマイクロニードルを特徴とし、公称500マイクロメートルのマイクロニードル高さ、約3.1のアスペクト比、公称550マイクロメートルの隣接するマイクロニードルの間の先端間距離を有していた。1本のPCマイクロニードルに関する平均(n=3)座屈力の値は、0.15N(標準偏差が0.017N、%RSDが11.3%)と測定された。
【0081】
(実施例5)
TLCPマイクロニードルアレイ中の1本のマイクロニードルの最大持続曲げモーメント(M)は、実施例4と同じアレイタイプ、計装、及び測定条件を使用し、以下の変更を加えて測定した。曲げモーメントのデータ解析では、マイクロニードルが単純に担持されたカンチレバーとしてモデル化できると仮定する。アレイ中のマイクロニードルの軸の向きが、プローベの長軸に対して90度となるように、アレイを装着した。内部のマイクロニードルに近づくために、アレイをアレイベース面に垂直に分割した。マイクロニードルの全長の先端からベースまでを測った15%又は65%の位置において、パンチの中央がマイクロニードルに衝撃を与えるように、パンチを調整した。
【0082】
マイクロニードルの最初の高さの寸法に基づき、マイクロニードルの高さの、試験によるが、15%又は60%を計算した。すべての測定は、マイクロニードルの先端を基準とした(例えば15%におけるたわみ試験では、最初にニードルの全長の測定を行ない、この値の15%を計算し、次にプローブをマイクロニードルの先端から測定した長さの15%下に置く)。次いで、マイクロニードルの長軸に垂直な、試験が行われる位置においてマイクロニードルを通るセンターライン上に、パンチの中心点が位置するように、プローブを置いた。曲げモーメントの測定におけるレバーアームを、レバー=L−L15%とし、ここでLはニードルの長さであり、L15%はマイクロニードルの長さの15%である。最大持続曲げモーメント(M)は、荷重−変位からの最大力にレバーアームの長さを乗じて計算した。表4は、アレイ中の1本のTLCPマイクロニードルについて測定した、平均最大持続曲げモーメント(n=3)を与える。
【0083】
【表4】
LEXAN HPS1R−1125ポリカーボネート(PC)(GE Plastics,Pittsfield,Massachusetts)を使用して、マイクロニードルアレイを成形して、比較実施例を準備した。PCマイクロニードルアレイは実施例4と同じものであった。アレイ中の1本の比較PCマイクロニードルに関する、測定された平均最大持続曲げモーメント(n=3)を表5に示す。
【0084】
【表5】
(実施例6)
マイクロニードルの弾性応答はE、弾性率、で測定され、一方塑性(永久変形に対する抵抗)応答はH、材料の堅さ、で示される。ナノインデンテーション測定法を使用して、弾性率(E)及び硬さ(H)をマイクロニードルの表面への深さの連続関数として測定した。硬さ及びモジュラスの一点評価のために、1000nmの空間ウィンドウに関して弾性率及び硬さのデータを平均した。TLCPマイクロニードルアレイタイプとPCマイクロニードルアレイタイプは、実施例4におけるものと同じであった。
【0085】
試験するマイクロニードルを、マイクロニードルの先端か、先端から測ったマイクロニードルの長さの15%下のいずれかにおいてエポキシで取り付けた後、ミクロトームにより輪切りにした。Agilent Nanoindenter XP(Agilent Technologies,Santa Clara,California)を使用して、アレイの1本のマイクロニードルを、マイクロニードルの端及びマイクロニードルの中央において、試験した。
【0086】
ダイヤモンド製のBerkovichプローブを使用し、空間ドリフトセットポイントを最大0.8nm/sにセットした。一定ひずみ速度実験は、0.05/sにて、1000nmの指示深さまで実施した。試験領域は、400倍の倍率でビデオ画面を介して見た際に、トップダウンに見えるように配置した。Nanoindentor XPの400倍のビデオ倍率で試験領域を局所的に選定して、試験領域が試料材料を確実に代表するように(すなわち、空隙、介在物、又はくずがない)した。圧子の動的励起周波数及び振幅は、全実験において45hz及び1nmの一定に保った。各サンプルに対して試験を複数回実施して、再現性を評価した。Nanoindenter XPを組み込んだCSM法、「XP CSM Standard Hardness Modulus and Tip Cal」により、ポアソン比を0.35と仮定して、弾性率及び硬さを測定した。弾性率(E)及び硬さ(H)の平均値をGPa単位で報告し、表6〜8に示した。
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】
本発明はまた、以下の項目1〜17の内容を包含する。
(1)
サーモトロピック液晶ポリマーマイクロニードルを含む、デバイス。
(2)
前記マイクロニードルが、0.3より大きく1.0以下の範囲の異方性因子で分子配向したメソゲンを含む、項目1に記載のデバイス。
(3)
前記マイクロニードルが基底部と一体でありかつ前記基底部から突き出ており、更に前記メソゲンの少なくとも一部が流動配向した、前記基底部を更に含む、項目1に記載のデバイス。
(4)
前記メソゲンの少なくとも約30%が流動配向した、項目3に記載のデバイス。
(5)
前記メソゲンの少なくとも約10%が流動配向し、前記メソゲンの残り部分が比較的等方性の配向状態を有する、項目2に記載のデバイス。
(6)
前記マイクロニードルが先端部と基底部を含み、前記マイクロニードルが、前記先端部から前記基底部への距離の15%において測定した時に30,000〜60,000mN−μmの曲げモーメントを有する、項目1に記載のデバイス。
(7)
前記マイクロニードルが先端部と基底部を含み、前記マイクロニードルが、前記先端部から前記基底部への距離の60%において測定した時に85,000〜105,000mN−μmの曲げモーメントを有する、項目1に記載のデバイス。
(8)
前記マイクロニードルが0.2〜0.5Nの座屈力を有する、項目1に記載のデバイス。
(9)
前記マイクロニードルの前記分子配向したメソゲン含有領域が、6〜8Gpaの弾性率を有する、項目2に記載のデバイス。
(10)
前記マイクロニードルは、前記メソゲンが実質的に等方性である領域を更に含む、項目2又は9に記載のデバイス。
(11)
前記等方性領域が4〜6Gpaの弾性率を有する、項目10に記載のデバイス。
(12)
前記マイクロニードルが0.4〜0.8のHermans配向関数値を有する、項目1に記載のデバイス。
(13)
前記サーモトロピック液晶ポリマーが、主鎖型サーモトロピック液晶ポリマーマイクロニードルである、項目1に記載のデバイス。
(14)
前記サーモトロピック液晶ポリマーが、主鎖型ポリエステルサーモトロピック液晶ポリマーマイクロニードルである、項目1に記載のデバイス。
(15)
2ポンドの力(8.9N)を10秒間掛けた場合に、前記マイクロニードルが50〜120マイクロメートルの侵入深さを有する、液晶ポリマーマイクロニードルアレイを含む、デバイス。
(16)
3ポンドの力(13.3N)を10秒間掛けた場合に、前記マイクロニードルが50〜150マイクロメートルの侵入深さを有する、液晶ポリマーマイクロニードルのアレイを含む、デバイス。
(17)
3ポンドの力(13.3N)を10秒間掛けた場合に、前記マイクロニードルが70%以上の侵入効率を有する、液晶ポリマーマイクロニードルアレイを含むデバイス。
図1