(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969574
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】過大負荷を検出するモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/02 20160101AFI20160804BHJP
【FI】
H02P29/02
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-227484(P2014-227484)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-93040(P2016-93040A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年9月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】置田 肇
【審査官】
上野 力
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−270607(JP,A)
【文献】
特開2013−196572(JP,A)
【文献】
特開平5−169347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(11)に流れる電流および該モータの速度に基づいて前記モータに掛かる負荷トルクを推定する負荷トルク推定部(21)と、
該負荷トルク推定部により推定された負荷トルクと基準トルクとを比較するトルク比較部(22)と、
前記負荷トルクが前記基準トルクを上回っている経過時間を計測する時間計測部(23)と、
前記時間計測部により計測された経過時間と基準時間とを比較する時間比較部(24)と、
該時間比較部において前記経過時間が前記基準時間を越えている場合に前記モータに過大な負荷が掛かっていると判定する判定部(27)と、
前記モータの状態を判定するモータ状態判定部(25)と、
該モータ状態判定部により判定された前記モータの状態に応じて前記基準時間を設定する設定部(26)と、を具備し、
前記モータ状態判定部により前記モータが加工中であると判定された場合には、前記設定部は第一所定値を前記基準時間として設定し、
前記モータ状態判定部により前記モータが加工中でないと判定された場合には、前記設定部は前記第一所定値よりも小さい第二所定値を前記基準時間として設定する、モータ制御装置。
【請求項2】
前記モータが工作機械(10)の主軸(15)を駆動するモータである請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
さらに、前記設定部は、前記工作機械が実施する加工の種類に応じて前記基準時間および前記基準トルクのうちの少なくとも一方を設定する、請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
さらに、前記設定部は、前記工作機械の主軸に備えられた工具の種類に応じて前記基準時間および前記基準トルクのうちの少なくとも一方を設定する、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに過大負荷が掛かっていることを検出するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の切削工具を駆動させる主軸に過大な負荷が継続的に掛かると、主軸が破損する場合がある。このため、従来技術においては、主軸を回転させるモータに掛かる負荷トルクを監視する場合がある。そして、負荷トルクが基準値を超えた場合には、モータを停止させ、主軸が破損するのを防止している。
【0003】
特許文献1においても、外乱推定オブザーバから推定外乱トルクを求め、推定外乱トルクが基準値を超えた場合にアラームを出力している。また、特許文献2においては、検出された負荷トルクが所定の上限値または下限値を超えた場合に、アラームを出力してモータを停止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-116094号公報
【特許文献2】特開2003-80529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、切削工具がワークを切削開始するときには、主軸のモータに掛かる負荷トルクが瞬間的に上昇する。このような場合には、切削開始時の負荷トルクが前述した基準値を超えるので、モータが停止する事態になる。
【0006】
しかしながら、切削開始時には負荷トルクが大きくなる場合が存在し、基準値を小さく設定しようとすると、それを超えてしまう場合がある。このような場合には、瞬間的に生じる過大な負荷は無視し、工作機械を継続して運転することが望まれる。
【0007】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、過大な負荷が継続的に生じた場合にのみ、モータを停止させることのできるモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、モータに流れる電流および該モータの速度に基づいて前記モータに掛かる負荷トルクを推定する負荷トルク推定部と、該負荷トルク推定部により推定された負荷トルクと基準トルクとを比較するトルク比較部と、前記負荷トルクが前記基準トルクを上回っている経過時間を計測する時間計測部と、前記時間計測部により計測された経過時間と基準時間とを比較する時間比較部と、該時間比較部において前記経過時間が前記基準時間を越えている場合に前記モータに過大な負荷が掛かっていると判定する判定部と、
前記モータの状態を判定するモータ状態判定部と、該モータ状態判定部により判定された前記モータの状態に応じて前記基準時間を設定する設定部と、を具備し、前記モータ状態判定部により前記モータが加工中であると判定された場合には、前記設定部は第一所定値を前記基準時間として設定し、前記モータ状態判定部により前記モータが加工中でないと判定された場合には、前記設定部は前記第一所定値よりも小さい第二所定値を前記基準時間として設定する、モータ制御装置が提供される。
2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記モータが工作機械の主軸を駆動するモータである。
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、さらに、前記設定部は、前記工作機械が実施する加工の種類に応じて前記基準時間および前記基準トルクのうちの少なくとも一方を設定する。
4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明において、さらに、前記設定部は、前記工作機械の主軸に備えられた工具の種類に応じて前記基準時間および前記基準トルクのうちの少なくとも一方を設定する。
【発明の効果】
【0009】
1番目の発明においては、負荷トルクが基準トルクを上回っている時間が基準時間を越えた場合に、過大な負荷が継続的に発生していると判定している。このため過大な負荷が瞬間的にのみ生じた場合には、モータを継続して駆動させられる。
さらに、モータの状態、つまりモータが加工中であるか否かに応じて基準時間を変更できる。過大な負荷トルクが瞬間的に発生した場合に、モータの状態に応じて適切な処置をとることができる。
2番目の発明においては、工作機械の主軸と、主軸に備えられる工具、主軸で加工されるワークが破損するのを避けられる。
3番目の発明においては、加工の種類に応じて基準時間および基準トルクを変更できるので、より適切な制御を行うことができる。
4番目の発明においては、工具の種類に応じて基準時間および基準トルクを変更できるので、より適切な制御を行うことができる。
【0010】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれら目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明解になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に基づくモータ制御装置のブロック線図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に基づくモータ制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】負荷トルクおよびアラーム出力部のタイムチャートである。
【
図4】本発明の第二の実施形態に基づくモータ制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】基準時間についての第一所定値のマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づくモータ制御装置のブロック線図である。
図1に示されるように、工作機械10は、主軸15に備えられた工具12を駆動する主軸用モータ11を有している。モータ11によって工具12が駆動されると、ワークが加工、例えば切削される。また、モータ11には検出部13が備えられている。この検出部13は、モータ11に流れる電流を検出する電流検出部と、モータ11の回転数からその速度を算出する速度検出部としての役目を果たす。
【0013】
また、モータ制御装置20は、工作機械10に接続されていて工作機械10を制御するデジタルコンピュータである。
図1に示されるように、モータ制御装置20は、検出部13により検出されたモータ11に流れる電流およびモータ11の速度に基づいてモータ11に掛かる負荷トルクTを推定する負荷トルク推定部21を有している。なお、負荷トルクTの推定については公知であるので詳細な説明を省略する。
【0014】
さらに、モータ制御装置20は、負荷トルク推定部21により推定された負荷トルクTと基準トルクT0とを比較するトルク比較部22と、負荷トルクTが基準トルクT0を上回っている経過時間Cを計測する時間計測部23と、時間計測部23により計測された経過時間Cと基準時間C0とを比較する時間比較部24とを含んでいる。なお、基準トルクT0および基準時間C0は図示しないモータ制御装置20の記憶部に記憶されているものとする。
【0015】
図1に示されるように、モータ制御装置20は、さらに、時間比較部24において経過時間Cが基準時間C0を越えている場合にモータ11に過大な負荷トルクが掛かっていると判定する判定部27と、判定部27がモータ11に過大な負荷トルクが掛かっていると判定した場合に過大負荷信号を出力する信号出力部28と、信号出力部28が過大負荷信号を出力した場合にモータ11を停止させるモータ停止部29とを含んでいる。また、
図1から分かるように、信号出力部28が過大負荷信号を出力した場合にアラームを出力するアラーム出力部30がモータ制御装置20に接続されている。
【0016】
さらに、モータ制御装置20は、モータ11の状態、つまりモータが加工中であるか否かを判定するモータ状態判定部25と、モータ状態判定部25により判定されたモータ11の状態に応じて基準時間C0を設定する設定部26とを含んでいる。また、設定部26は、工作機械10が実施する加工の種類および/または工作機械10の主軸15に備えられた工具12の種類に応じて基準時間C0および基準トルクT0のうちの少なくとも一方を設定することもできる。
【0017】
図2は本発明の第一の実施形態に基づくモータ制御装置の動作を示すフローチャートである。さらに、
図3は負荷トルクTおよびアラーム出力部のタイムチャートである。以下、
図1から
図3を参照しつつ、本発明の第一の実施形態に基づくモータ制御装置の動作を説明する。なお、
図2に示されるモータ制御装置の動作は所定の制御周期毎に繰返し実施されるものとする。また、以下においては工具12がワークを切削加工する場合について説明するが、本発明は切削加工に限定されないことに留意されたい。
【0018】
はじめに、
図2のステップS11において、負荷トルク推定部21が検出部13からモータ11の電流および速度を取得して、モータ11に掛かる負荷トルクTを推定する。次いで、ステップS12において、トルク比較部22は負荷トルクTが基準トルクT0以上であるか否かを判定する。
【0019】
ここで、
図3を参照すると、工作機械10が動作開始した時刻P1においては、実線で示されるように負荷トルクTは基準トルクT0よりも小さい。例えば基準トルクT0は、時刻P1における負荷トルクTを10%だけ増やした値である。そして、時刻P2に達すると、負荷トルクTは基準トルクT0以上になる。
【0020】
このような状態になると、時間計測部23は、負荷トルクTが基準トルクT0以上である経過時間Cを計測開始する(ステップS13)。なお、負荷トルクTが基準トルクT0以上でない場合には、ステップS20に進んで経過時間Cがリセットされる。
【0021】
次いで、
図2のステップS14においては、モータ状態判定部25がモータ11の状態、すなわちモータ11が加工中であるか否かを判定する。モータ11が加工中である場合には、ステップS15に進んで、設定部26が第一所定値C1を基準時間C0として設定する。
【0022】
これに対し、モータ11が加工中でない場合には、ステップS16に進んで、設定部26が第二所定値C2を基準時間C0として設定する。ここで、第一所定値C1は第二所定値C2よりも大きい値である。例えば第一所定値C1は100msであり、第二所定値C2は10msである。
【0023】
次いで、ステップS17において、判定部27は、負荷トルクTが基準トルクT0以上である経過時間Cが基準時間C0以上であるか否かを判定する。ここで、
図3を参照すると、時刻P2から計測開始された経過時間Cは時刻P3において基準時間C0に到達する。このように経過時間Cが基準時間C0以上である場合には、ステップS18に進んで、信号出力部28が過大負荷信号を出力する。なお、経過時間Cが基準時間C0以上でない場合には、処理を終了する。
【0024】
次いで、ステップS19においては、出力された過大負荷信号がモータ停止部29およびアラーム出力部30に供給される。モータ停止部29はモータ11を停止させるので、主軸15や工具12、ワークが破損するのを防止できる。そして、
図3に示されるようにアラーム出力部30がアラームを出力し、それにより、操作者に注意を促すようにする。
【0025】
従来技術においては、ステップS12において、負荷トルクTが基準トルクT0を上回っていると判断された場合にモータ11を停止させていた。これに対し、本発明においては、負荷トルクTが基準トルクT0を上回っている経過時間Cが基準時間C0を越えた場合に、過大な負荷トルクTが継続的に発生していると判断してモータ11を停止させる。
【0026】
言い換えれば、本発明においては、過大な負荷トルクTが継続的に生じた場合にのみ、モータ11を停止させ、主軸15や工具12、ワークが破損するのを防止する。このため、本発明において、過大な負荷トルクTが瞬間的にのみ生じた場合には、モータ11を継続して駆動させることが可能である。
【0027】
そして、本発明においては、モータ11が加工中であるか否かに応じて基準時間C0を第一所定値C1または、第一所定値C1よりも小さい第二所定値C2に変更している。加工時には基準時間C0を比較的大きい第一所定値C1に設定しているので、過大な負荷トルクが瞬間的に発生した場合には、工作機械10を継続して運転させられる。そして、過大な負荷トルクが継続的に発生した場合にモータ11を停止させられる。
【0028】
これに対し、非加工時には基準時間C0を比較的小さい第二所定値C2に設定している。このため、例えばワークの送り時などに過大な負荷トルクが瞬間的に発生した場合には、例えば工作機械10が周辺機器に衝突したことにより過大な負荷トルクが生じたと推察され、即時にモータ11を停止させている。これにより、主軸15や工具12、ワークが破損するのを防止する。
【0029】
ところで、
図4は本発明の第二の実施形態に基づくモータ制御装置の動作を示すフローチャートである。また、
図5は基準トルクT0のマップを示す図であり、
図6は基準時間C0についての第一所定値C1のマップを示す図である。以下、
図4から
図6を参照しつつ、本発明の第二の実施形態に基づくモータ制御装置の動作を説明する。ただし、第一の実施形態と同一のステップについては、簡潔にする目的で、説明を省略する。
【0030】
図4に示されるように、第二の実施形態においては、ステップS11とステップS12との間のステップS11’において、設定部26は、加工の種類および工具12の種類に応じて基準トルクT0を設定する。
図5に示されるように、基準トルクT0は加工の種類および工具12の種類の関数として予め求められ、マップの形でモータ制御装置20の記憶部(図示しない)に記憶されている。なお、加工の種類とは、例えば切削、穿孔、研磨、研削などである。工具12の種類とは、例えば切削工具、穿孔工具、研磨工具、研削工具などである。そして、ステップS11’で設定された基準トルクT0が、ステップS12において負荷トルクTと比較される。
【0031】
さらに、ステップS14とステップS15との間のステップS14’において、設定部26は、加工の種類および工具12の種類に応じて第一所定値C1を設定する。
図6に示されるように、第一所定値C1は加工の種類および工具12の種類の関数として予め求められ、マップの形でモータ制御装置20の記憶部(図示しない)に同様に記憶されている。そして、ステップS14’で設定された第一所定値C1は基準時間C0として設定され、ステップS17において基準時間C0は経過時間Cと比較される。
【0032】
このように、本発明においては、加工の種類および工具12の種類に応じて基準時間C0(第一所定値C1)および基準トルクT0を変更できる。従って、加工の種類および工具12の種類に応じた、より適切な制御を行えるのが分かるであろう。
【0033】
典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、前述した変更および種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【符号の説明】
【0034】
10 工作機械
11 主軸用モータ
12 工具
13 検出部
15 主軸
20 モータ制御装置
21 負荷トルク推定部
22 トルク比較部
23 時間計測部
24 時間比較部
25 モータ状態判定部
26 設定部
27 判定部
28 信号出力部
29 モータ停止部
30 アラーム出力部