(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
膜分離槽から活性汚泥を含む混合液を取り出して、該混合液を少なくとも第1反応室及び第2反応室に分配して返送する際、第1反応室に返送する混合液の量よりも第2反応室に返送する混合液の量を多くすることを特徴とする請求項9に記載の油分含有排水の処理方法。
第1反応室内の活性汚泥を含む混合液、又は、膜分離槽内の活性汚泥を含む混合液を取り出して、曝気装置を備えた貯留槽において、前記混合液を10分以上の滞留時間で曝気した後、第1反応室に供給することを特徴とする請求項9に記載の油分含有排水の処理方法。
第1反応室内の曝気装置による曝気風量を停止するか、或いは、第1反応室内の混合液中の汚泥が停滞/浮上する程度の曝気風量に制御するかして、第1反応室に流入した油分の浮上を促進させると共に、油分が付着した活性汚泥の浮上を促進させて、浮上した成分をスカム/オイルスキマーで回収除去することを特徴とする請求項9又は11に記載の油分含有排水の処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明するが、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
<本排水処理装置>
本実施形態の一例に係る排水処理装置(「本排水処理装置」と称する)は、被処理水の流れ方向である上流から下流方向に流通可能に配設された生物反応槽2と分離膜槽3とを備えた膜分離活性汚泥槽1を有し、当該生物反応槽2内、並びに生物反応槽2と分離膜槽3との境には、被処理水の流れが上下迂回流となるように、少なくとも1つ以上の仕切り4が設けられ、当該生物反応槽2内が第1反応室2A及び第2反応室2B、必要に応じてさらに別の反応室2C、2D・・に区画されている(
図1では5つの反応室)。
また、本排水処理装置は、分離膜槽3から活性汚泥を含む混合液を取り出して、該混合液の一部を生物反応槽2の第1反応室及び第2反応室などの反応室に分配して返送する返送管11と、該混合液の他部を排泥として排出する汚泥排出管12とを備えている。
【0020】
(被処理水)
生物反応槽2の入り口側、すなわち第1反応室2Aの入り口側には排水導入管6が接続され、被処理水である油分含有排水が排水導入管6を通じて第1反応室2Aに流入するようになっている。
【0021】
ここで、被処理水である油分含有排水(「本被処理水」と称する)は、油分を含む排水であればよい。
具体的には、石油、石炭、天然ガス、シェールガス、コールドベッドメタン(CBM)、オイルサンド、シュールオイルなどの産出及び生産に伴って発生する油分含有排水や、各種工場から排出される油分含有排水、例えば石油化学工場や自動車製造工場などから排出される油分含有排水を処理対象、すなわち被処理水とすることができる。
また、石炭化学工場やコークス製造工場などから排出される排水の処理にも適用することができる。
【0022】
本被処理水には、有機物などのように微生物に容易に分解される成分(「易分解成分」と称する)のほか、油分として。水に溶解せず、水中を浮上する油分、例えば重油質などのフリーの油分と、ベンゼンやトルエンなど一部が可溶化している油分が含まれる。このうち、重油質などのフリーの油は活性汚泥により分解しづらい難分解性成分(以下、これらを「難分解性成分」と称する)であり、他方、ベンゼンやトルエンなどの油分は馴到すれば比較的容易に微生物により分解する成分である。
また、重油質などのフリーの油分が活性汚泥粒子の表面に付着すると、酸素の透過を阻止して分解活性を低下させると共に、油分の付着によって比重が軽くなり水中を浮上するようになる。
本被処理水には、さらにフェノール、シアン、クレゾールなどの生物阻害物質(以下、これらを「生物阻害物質」と称する)が含まれる可能性があり、これらは一定量以上多くなると生物阻害作用を発揮するようになる。
【0023】
(生物反応槽)
生物反応槽2は、好気性の多様な微生物集団である活性汚泥が存在する槽であり、その内部には、被処理水の流れが上下迂回流となるように少なくとも1つ以上の仕切り4が設けられており、生物反応槽2の内部は第1反応室2A及び第2反応室2B、必要に応じてさらに別の反応室2C、2D・・に区画されている。また、生物反応槽2と分離膜槽3との境にも仕切り4が設けられている。
【0024】
生物反応槽2の第1反応室2A内に流入した被処理水(排水)は、上下迂回流となって生物反応槽2内を流動し、この流動する過程で、排水中の有機物や分解可能な油分などは活性汚泥によって分解され、分離膜槽3に流入するようになっている。
このように、上下迂回流となるように生物反応槽2内を複数の反応室に区画することにより、生物反応槽2内に大量の油分などが流入しても、その影響を第1反応室2Aで受け止めることができ、下流側の反応室への影響を軽減することができ、分離膜槽3に油分が到達する量を軽減することができる。
かかる観点から、生物反応槽2内を少なくとも3つ以上の反応室に区画するのが好ましく、分離膜槽3への油分の到達量を軽減する観点からは、5つ以上に区画するのが好ましい。
【0025】
各反応室の大きさは同じでもよいし、異なっていてもよい。ただし、第1反応室2Aは、大量の油分などが流入してきた場合のバッファー槽としての役割を果たすから、バッファー機能をより高める目的で、第2反応室以降の反応室2B、2C・・などの大きさよりも大きくするのが好ましい。
【0026】
仕切り4は、仕切り板、仕切り壁及びその他のいずれの形態であってもよい。
仕切り4は、生物反応槽2の上部と下部に交互に設けられ、生物反応槽2内を被処理水(排水)が交互に上下迂回流となって流動するようになっている。
生物反応槽2の上部に設けられる仕切り4は、その両側端部が生物反応槽2の側壁に固定され、その上端部が水面上に出る一方、下端部は底面との間を開口するように垂直に設置されている。
他方、生物反応槽2の下部に設けられる仕切りは、下端部が生物反応槽2の底面に固定されると共に両側端部が生物反応槽2の側壁に固定され、その上端部は生物反応槽2の天井面との間を開口し、且つ水面下に位置するように垂直に設置されている。
【0027】
第1反応室2A内の被処理水の流れは下向き流であるのが好ましい。下向き流であれば、浮上する成分、すなわち、油分や、油分が付着した活性汚泥、スカムなどは、下向き流中を浮上するため、これら浮上する成分を効率よく分離除去することができる。
よって、第1反応室2Aを下向き流とするため、生物反応槽2の入り口側から最初の仕切り4は上部に設け、次の仕切り4は下部に設けるように順次上下交互に設けて、交互に上下迂回流とすることができる。
また、第1反応室2Aは下向き流とするのが好ましいから、排水導入管6は第1反応室2Aの入り口側壁の中間の高さより少なくとも上側位置、望ましくは水面上に接続するのが好ましい。
【0028】
なお、最も下流側の反応室(
図1では、第5反応室2E)、すなわち分離膜槽3の直前の反応室も、分離膜槽3内に油分が流入するのを防ぐため、下向き流とするのが好ましい。よって、最も下流側に設ける仕切り、すなわち生物反応槽2と分離膜槽3との境に設ける仕切り4は、上部に設けて、その手前の反応室の流れ方向を下向きとするのが好ましい。
【0029】
生物反応槽2の第1反応室2Aには、スカム/オイルスキマー7と曝気装置8とが設けられており、曝気装置8から送気された空気/酸素によって活性汚泥の微生物は活性化すると共に、第1反応室2Aに流入した被処理水中の油分やスカム、さらに油分が付着した活性汚泥は浮上してスカム/オイルスキマー7によって回収除去される。
【0030】
スカム/オイルスキマー7は、第1反応室2Aの上部、すなわち水面付近に設けるのが好ましく、
図1に示すように、仕切り7に当接してその手前或いは当接しない程度の近傍手前に、幅方向に渡って配置するのが好ましい。
このスカム/オイルスキマー7は、各反応室に設置してもよい。ただし、下向き流とすることにより浮上する成分を効率よく分離除去することができるから、下向き流となる反応室(
図1の第1反応室2A、第3反応室2C、第5反応室2E)に第1反応室2Aと同様に設置するのが好ましい。
このように、第1反応室2A、第3反応室2C、第5反応室2Eなどにスカム/オイルスキマー7を設置することにより、曝気装置8を通して送気された空気/酸素によって浮上した油分や、油分が付着した活性汚泥、スカムなどを、各反応室のスカム/オイルスキマー7で回収除去することができ、分離膜槽3へ油分が流入するのを防ぐことができる。
【0031】
曝気装置8は、活性汚泥に供給する空気/酸素の気泡を発生させる装置であり、第1反応室2Aばかりではなく、第2反応室2B及びそれより下流の各反応室2C、2D・・の底部にそれぞれ設置するのが好ましい。
各反応室にそれぞれ曝気装置8を設置する場合、
図1に示すように、各曝気装置8を空気/酸素を供給する管で連結するのが好ましい。
【0032】
(分離膜槽)
分離膜槽3には、浸漬膜ユニット9と、処理水排水管10と、返送管11と、排泥排水管12と、が配設されている。
生物反応槽2(
図1では、第5反応室2E)から流入した被処理水は、浸漬膜ユニット9により固液分離され、分離膜を通過した処理水は処理水排水管10を通じて排出され、残渣成分(活性汚泥を含む)を含む混合液、すなわち、分離膜槽3内において浸漬膜ユニット9の手前側(上流側)に存在する混合液は、返送管11を通じて生物反応槽2に返送すると共に、一部の混合液は排泥排水管12を通じて適宜のタイミングで排出されるようになっている。
【0033】
浸漬膜ユニット9は、分離膜を集積して面積を大きくしユニット化したものであり、分離膜槽3内に浸漬した状態で設置され、吸引ポンプにより連続的に膜ろ過を行うことができる構成とするのが好ましい。
また、
図1に示すように、浸漬膜ユニット9に気泡を供給することができるように、分離膜槽3の底部に曝気装置8を設けるか、或いは、浸漬膜ユニット毎に気泡を供給する散気装置を設置するのが好ましい。
【0034】
浸漬膜ユニット9の分離膜は、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)などを挙げることができるが、これらに限定するものではない。
膜の形状は、平膜、中空糸、チューブラー、モノリスのいずれでもよく、またその材質もPVDFやPE、PAN、CAなどの有機素材でも、またセラミック、金属などの無機素材でもよい。
【0035】
排泥排水管12は、バルブ等の開閉装置を備えているのが好ましい。
【0036】
浸漬膜ユニット9を洗浄する手段を設けてもよい。
例えば、浸漬膜ユニット9に逆洗ポンプを備えた逆洗配管を接続し、膜ろ過処理水で浸漬膜ユニット9を逆洗可能としてもよい。
また、間欠吸引ろ過方式や間欠吸引吐出方式による洗浄を行うことができるように設計してもよい。
さらにまた、浸漬膜ユニット9を水洗浄や薬剤洗浄を実施することができるように設計してもよい。
【0037】
(返送)
分離膜槽3には、返送管11が設けられており、該返送管11によって分離膜槽3内の活性汚泥を含む混合液が取り出されて、少なくとも生物反応槽2の第1反応室2A及び第2反応室2Bに分配されて返送されるようになっている。第1反応室2A及び第2反応室2B、必要に応じてさらに第2反応室2Bより下流側の反応室2C、2D・・などに分配することも可能である。
【0038】
生物反応槽2内の活性汚泥は、排水と共に上流から下流に流動するため、そのままでは生物反応槽2内の活性汚泥濃度は低下してしまう。そこで、分離膜槽3から混合液を取り出して生物反応槽2の第1反応室2A及び第2反応室2B、必要に応じてさらに下流側の反応室に分配して返送することにより、生物反応槽2内の活性汚泥濃度を維持することができる。
この際、第1反応室2A及び第2反応室2B、必要に応じてさらに下流側の反応室に分配して返送することにより、第2反応室2B以降の活性汚泥濃度を高くすることができる。よって、例えば多量の油分や生物阻害物質の流入により、第1反応室2A内の活性汚泥が損傷を受けたとしても、第2反応室2B及びそれより下流側の反応室内の活性汚泥で分解処理することができるから、安定して生物反応処理を行うことができる。
【0039】
返送される混合液中には、活性汚泥、活性を失った微生物、活性汚泥によって分解された分解処理物、活性汚泥に分解されなかった排水含有物などが含まれる。
【0040】
なお、汚泥を返送する手段は、特に限定されるものではなく、通常の汚泥ポンプを使用することができる。
また、返送量を制御する流量調整装置を使用して、分離膜槽3から生物反応槽2への返送量を制御することもできる。
【0041】
(自動制御装置)
分離膜槽3内に存在する混合液を第1反応室2A及び第2反応室2B、必要に応じてさらに下流側の反応室に分配して返送する際、分離膜槽3からの返送量及び各反応室への分配割合(配分比)を、自動制御装置20を用いて制御することができる。
【0042】
各反応室への配分比の制御に関しては、排水導入管6内を流通する被処理水(排水)中の油分濃度や生物阻害物質濃度を測定する計測器21を設け、その数値によって調整することができる。例えば、生物阻害物質であるフェノール類が含まれる場合、フェノール濃度と臭気濃度の関係を求め、臭気濃度の値から分配比を制御することができる。
【0043】
また、第1反応室2A内の被処理水の呼吸速度(汚泥重量当りの酸素消費速度)を計測器22で定期的に計測し、その数値が前の値より著しく変化して低下する時に第1反応室2Aに返送する混合液の量もしくは割合を変える指示を出すコンピュータやシーケンサーなどの自動制御装置20を用いて制御することもできる。
具体的には、例えば流入水の有機物濃度は変動するため、呼吸速度の値が前の計測時より25%以上低下した時に第1反応室2Aに戻す量を増やすように制御すればよい。その後、次の計測で更に呼吸速度が低下するようであれば、第1反応室2Aに戻す量を更に増やし、最初の値に戻るようであれば、しばらくその量に一定時間保った後、段階的に返送流量を減らす設定を行うようにすればよい。
これらの設定、計測の時間間隔は自動制御装置20を用いて任意に設定できる。
【0044】
なお、呼吸速度を求めるには、汚泥濃度計23と酸素濃度計が必要である。
酸素濃度の測定は、第1反応室2A内の被処理水をサンプル瓶に一定量取り、回分的に酸素濃度の時間変化を読み取ることで行うことができる。また、一定の流量で連続的に通水した配管の前後に酸素濃度計を用いて入口と出口の酸素濃度を測定し、配管の滞留時間で割ることでも、酸素濃度の時間変化を求めることができる。
一方、汚泥濃度は、汚泥濃度計23を反応槽に浸漬させることで求めることができる。
油分等で計測器が汚れて誤差が起きる可能性がある場合は、返送する混合液の汚泥濃度を測定し、第1反応室2Aへの返送流量、流入水量の流量計測値から計算で求めることもできる。
【0045】
第2反応室2Bにも呼吸速度計測値を設け、その値の変化を用いて第1反応室2Aに戻す返送量を制御することで、毒物や油分が流入してもより精度の高い返送量制御を実施することができる。
【0046】
(貯留槽・貯留活性化槽)
図1に示すように、膜分離活性汚泥槽1とは別に貯留槽13及び貯留活性化槽14を設け、第1反応室2Aに排水管15とバルブ16を設け、バルブ16を開けることで第一反応室2Aから排水管15を通じて排水を排出させ、該排水を貯留槽13に一旦貯留した後、貯留活性化槽14に供給して、ここで微生物を活性化させることができる。
【0047】
バルブ16を開けて、第1反応室2Aから排水を取り出すことで、第2反応室2Bに流れる量を減らすことができ、第1反応室2Aに流入した油分や生物阻害物質が第2反応室2B及びその下流に流れる量を減らすことができる。
この際、第1反応室2Aから取り出した排水を、貯留活性化槽14に直接送るのではなく、貯留槽13で一旦貯留することにより、貯留活性化槽14内に汚染された汚泥などが一気に流入するのを防ぐことができる。
【0048】
貯留活性化槽14は曝気装置を備えており、槽内に貯留された活性汚泥を活性化させることができ、バルブ17の開閉によって、貯留活性化槽14内の貯留液を、給水管18を通じて第1反応室2Aに戻すことができるようになっている。
この際、貯留活性化槽14では、少なくとも10分以上の滞留時間で曝気を行って微生物を活性化させるのがよい。
上述のように第1反応室2A内の被処理水の呼吸速度を計測器22などで測定し、呼吸速度が一定の設定値以上に低下した時に、貯留活性化槽14内の貯留液を、給水管18を通じて第1反応室2Aに戻すようにすることができる。このようにすれば、大量の油分や生物阻害成分が流入した場合、貯留活性化槽14に溜めた活性汚泥を第1反応室2Aに供給することで、その多くを第1反応室2Aの供給された活性汚泥に吸着・吸収させ、第1反応室2A以降の生物反応室での活性汚泥による分解阻害を抑えることができる。
【0049】
また、
図1に示すように、上記の排泥排水管12を貯留活性化槽14に接続して分離膜槽3から取り出した混合液を貯留活性化槽14に供給し、ここで汚泥を活性化させることができるように構成することもできる。
また、図示はしないが、各反応室に設けたスカム/オイルスキマー7を、通水管を介して貯留活性化槽14に接続し、スカム/オイルスキマー7で回収した成分を貯留活性化槽14で活性化させるようにすることもできる。
【0050】
<本排水処理方法>
上記構成を備えた本排水処理装置を利用して、次のように油含有排水を処理することができる(この方法を「本排水処理方法」と称する。)。
但し、実施する装置が上記本排水処理装置に限定される意味ではない。
【0051】
本排水処理方法では、油分含有排水を第1反応室2Aに供給し、第1反応室2A内では、該第1反応室2Aで曝気装置8による曝気によって油分及び該油分に付着した汚泥を浮上させ、浮上した油分及び該油分に付着した汚泥をスカム/オイルスキマー7によって回収及び排除し、残りの排水を第2反応槽2Bに供給し、分離膜槽3において固液分離し、分離された処理液を排出する一方、分離された固形分を含む混合水を分離膜槽3から取り出して、該混合液を少なくとも第1反応室2A及び第2反応室2Bに分配して返送するようにして、油分含有排水を処理することができる。
【0052】
このように、生物反応槽2内を複数の反応室に区画することにより、突発的に多量の油分や生物阻害物質が流入してきた場合でも、排水が最初に流入する第1反応室2Aがバッファー槽として機能するため、第2反応室2B及びそれ以降の反応室への影響を抑制することができる。
しかも、生物反応槽2内において、被処理水の流れを上下迂回流とすることで、浮上し易い成分を効率良く分離することができ、浮上した成分をスカム/オイルスキマー7で回収除去することができるため、分離膜槽3に流入する油分を減少させ、油分による膜の汚染を抑制することができる。
さらに、分離膜槽3から活性汚泥を含む混合液を取り出して、該混合液を第1反応室2Aばかりではなく、第2反応室2B、必要に応じてそれより下流の反応室に分配して返送することにより、第2反応室2B及びそれより下流の反応室における活性汚泥濃度を高めることができるため、装置全体としての分解効率を高めることができる。
【0053】
なお、第1反応室2Aに被処理水(油分含有排水)を流入させる前に、この被処理水を前処理、例えば、凝集分離処理、加圧浮上分離処理、電解処理などの前処理を行い、その後第1反応室2Aに流入させるようにしてもよい。
【0054】
生物反応槽2(
図1では、第5反応室2E)から分離膜槽3内に流入した被処理水は、浸漬膜ユニット9により固液分離して、分離膜を通過した処理水は処理水排水管10を通じて排出し、分離膜槽3内の残渣成分(活性汚泥を含む)を含む混合液、すなわち、分離膜槽3の浸漬膜ユニット9の手前側(上流側)に存在する混合液は、その一部を返送管11を通じて生物反応槽2に返送し、残りの混合液は定期的若しくは適宜タイミングで排泥排水管12を通じて排出させることができる。
【0055】
(返送量の制御)
分離膜槽3内に存在する混合液を生物反応槽2の第1反応室2A及び第2反応室2B、必要に応じてさらに下流の反応室に分配して返送するに当たっては、例えば第1反応槽2A内の処理液の呼吸速度(汚泥重量当りの酸素消費速度)を定期的に計測する装置を設け、その数値が前の値より低下する時に第1反応槽2Aに返送する混合液の量及び合を増やすようにすることができる。
すなわち、流入水の有機物濃度は変動するため、呼吸速度の値が前の計測時より25%以上低下した時に第1反応室2Aに返送する量を増やすように制御するのが好ましい。
また、その後、次の計測で更に呼吸速度が低下するようであれば、第1反応室2Aに戻す量を更に増やせばよく、逆に最初の値に戻るようであれば、しばらくその量に保った後、流量を減らす設定を行うようにすればよい。
これらの設定、計測の時間間隔は、制御系を用いて任意に設定できる。
【0056】
第2反応室2Bにも呼吸速度計測値を設け、その値の変化を用いて第1反応室2Aに戻す返送量を制御することで、毒物や油分が流入してもより精度の高い返送量制御を実施することができる。
更に、呼吸速度が一定の設定値以上に低下する時は、貯留活性化槽14から活性汚泥を含む貯留液を第1反応室2Aに追加的に送るようにしてもよい。
【0057】
(分配制御)
分離膜槽3内に存在する混合液を生物反応槽2の第1反応室2A及び第2反応室2B、必要に応じてさらに下流の反応室に分配して返送する際、各反応室への分配は、個々のポンプを用いてもよいが、堰を設け、堰高さを調整することでもよい。また、配管に設けたバルブの開度を調整してもよい。
【0058】
各反応室への分配割合は、任意に設定することができる。
但し、第1反応室2A内のBODに比べて第2反応室2B内のBODは少なくなり、分解しづらい成分の濃度が高まる点などを考慮すると、第1反応室2Aに返送する混合液の量よりも第2反応室2Bに返送する混合液の量を多くするのが好ましい。
具体的には、例えば、反応槽全体の汚泥に対する流入水BODの負荷が0.15kg-BOD/kg-VSS/日以下の場合は、第1反応室2Aへの返送量と第2反応室2Bの返送量の比率を1:1〜1:10の配分比率とするのが好ましく、中でも1:3〜1:10の配分比率とするのがさらに好ましい。
一方、流入排水中の油分や生物阻害成分が設計値以上に著しく高い濃度で流入した場合は、第1反応室へ返送する混合液量を増やすべく、返送管11を通じて返送する混合液の量を増やす必要があり、配分比は1:1〜5:1に制御するのが好ましい。
【0059】
この配分比の変更は、例えば、流入水の油分濃度やフェノール濃度と臭気濃度の関係を求め、臭気濃度の値から分配比を制御することもできる。
【0060】
(突発時の対応方法)
大量の油分や生物阻害物質などが第1反応室2A内に流入してきた場合には、第1反応室2Aの曝気風量を止めるか弱めて、油分が第1反応室2Aの上部に浮上するのを促進させ、スカム/オイルスキマー7での回収除去を促進させることができる。これによって、第2反応室2B及びそれより下流側に流入する油分や生物阻害物質の流入量を減らすことができる一方、第2反応室2Bに返送する混合液によって有機物等の分解を行うことができるから、安定した処理が行うことができる。
【0061】
また、突発的に大過剰の油分などが第1反応室2A内に流入してきた場合、第1反応室2A内の被処理水(排水)を排水管15を通じて排出させ、貯留槽13で一旦貯留した後、貯留活性化槽14に供給して、ここで汚泥を活性化させ、その後、貯留活性化槽14内で活性化された活性汚泥を含む貯留液を、給水管18を通じて第1反応室2Aに注入することもできる。
第1反応室2Aから排水を取り出すことで、第2反応室2Bに流れる量を減らすことができ、吸着させた油分や生物阻害物質が第2反応室2B以下に流れる量を減らすことができると共に、油分などを分解して微生物の負担を軽減した上で第1反応室2Aに戻すことができるから、下流側の反応室への影響を緩和することができる。
【0062】
また、スカム/オイルスキマー7によって回収された回収液を、膜分離活性汚泥槽1とは別に設けたタンク(図示なし)内に貯留すると共に、連続/間欠的な曝気処理を行うことで、吸着したオイルや生物阻害物質を時間をかけて分解してタンクに貯留しておき、例えば油分や生物阻害物質が生物反応槽2内に異常流入したときなどに、第1反応室2A或いは第2反応室2Bに戻すことができる。
【0063】
本排水処理方法の被処理水である油分含有排水は、窒素分を多く含むこともあるため、例えば第1反応室2A内での曝気を弱め、分離膜槽3からの混合液を返送することで、脱窒素除去の運転をすることができる。すなわち、酸素が少ない環境を作ることで、微生物にNO
2やNO
3などの窒素酸化物の酸素を取り込ませて窒素ガス(N
2)として脱窒素することができる。
【0064】
(洗浄方法)
分離膜槽3における浸漬膜ユニット9及びその分離膜は、膜詰りがほとんど発生しないため、膜の洗浄を常時行う必要はない。しかし、適宜、間欠吸引ろ過方式や間欠吸引吐出方式を適用して洗浄することが好ましい。
仮に膜詰りが発生した場合には、インライン洗浄やオフライン洗浄で洗浄するのが好ましい。
分離膜の洗浄方法としては、水洗浄や薬剤洗浄が適用できる。薬剤としては、苛性ソーダや次亜塩素酸ソーダ、塩酸、クエン酸等が適用できる。
【0065】
但し、分離膜の流動性(flux)は徐々に低下するため、数ヶ月毎に分離膜の化学洗浄を行うのが好ましい。その際、分離膜槽3だけは、前段の反応室とバルブやゲートで締め切りできるような構造にすることで、オンサイトで容易に洗浄を行い易くすることができる。すなわち、分離膜槽3への混合液を、弁又はゲートを有する連通部を通して流入させ、該連通部を閉じて膜洗浄を行うようにすることもできる。
【0066】
<第2の実施形態>
図2は、
図1に示した排水処理装置の変形例を示した図であり、生物反応槽2内に、吸着担体固定部25を設けた点に特徴がある。
【0067】
吸着担体固定部25は、難分解性成分を吸着可能な担体を固定して配置したものである。
難分解性成分を吸着可能な担体としては、例えば活性炭、種々のプラスチック担体、スポンジ担体などを挙げることができる。中でも、微生物が付着し易い点などから、繊維状活性炭や粒状活性炭は特に好ましい。難分解性成分を選択的に吸着する担体でなくても、難分解性成分を吸着できる担体であればよく、前記の例に限定されるものではない。
また、担体を固定する手段としては、前記担体を、例えばこれをメッシュの籠に入れることで固定することができる。但し、固定手段は任意である。
【0068】
生物反応槽2内では、入り口側から分離膜槽3に向かって排水が流れ、その過程で易分解成分から微生物によって分解されるため、下流側に行くほど易分解成分の量は減り、相対的に難分解性成分の濃度は高まることになる。そのため、生物反応槽2において、できるだけ下流側の反応室、すなわち分離膜槽3の手前の反応室(
図2では、第5反応室2E)に吸着担体固定部25を配設すれば、難分解性成分と共に微生物が次第に担体に吸着されて集まるようになり、さらには付着する微生物は周囲に残存する有機物が難分解性成分が主体であるため、難分解成分を選択的に分解できる微生物の存在率が高くなり、難分解性成分を分解することができる。
この際、易分解性成分がほとんどないため、吸着担体付着生物も肥大化することもなく安定に維持できる。
このような理由から、吸着担体固定部25は、生物反応槽2内のいずれの反応室に設けることも可能であるが、下流側の反応室、中でも分離膜槽3の前段の反応室(
図2では、第5反応室2E)に設けるのが好ましい。
【0069】
<第3の実施形態>
図3は、
図1に示した排水処理装置の変形例を示した図であり、第1反応室2A内に疎水性担体30を投入して浮遊させた点、及び、
図4に示すように、第1反応室2Aと第2反応室2Bの下部連通部にスクリーン31を設けた点に特徴がある。
【0070】
第1反応室2A内に排水とともに流入した油分は、疎水性担体30に吸収、濃縮されると共に、周囲の活性汚泥によって分解もされるため、通常は疎水性担体30の油分吸着容量よりも十分少ない状態で浮遊する。しかし、突発的に流入水中の油分濃度が増加した場合、これらの疎水性担体30に吸着されるため、第2反応室2Bに流入する油分量を抑えることができる。第1反応室2A内に流入する水中の油分濃度がもとの正常な値に戻ると、吸着された疎水性担体30の油分は周囲の活性汚泥によって可溶化・分解されるため、疎水性担体30の油分吸着量が低下することで、油分の吸着容量に余力を持たせることができる。
【0071】
疎水性担体30としては、油吸着機能を有する素材であれば任意に採用可能である。中でも、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など、油分などの炭化水素化合物に親和性のあるものが最適である。これらの担体は、短繊維を混紡したり、端面を融着させたり、或いはスポンジ状にして集塊物としたものを使用することができ、中でも、炭化水素の吸収量を多くするため密に形成されたものが好ましい。
【0072】
疎水性担体30の素材は、一般的に微生物付着性が小さいため、担体に付着して増殖する微生物は少ない。その一方、疎水性の担体に親水性の担体を結合或いは混合すれば、担体に微生物を多く付着させることができるようになる。例えば疎水性素材の一部に綿やレーヨン等のOH基を多く持つ親水性素材を混ぜたり、貼り合わせたりすることで、担体に微生物を多く付着させることができるようになる。この場合、疎水性素材に吸着した油分等が担体に付着増殖した微生物によってより効果的に分解させることができる。
【0073】
疎水性担体30の大きさは、スクリーンから流出しない形状、大きさであればよく、例えば3mm〜10mmであるのが好ましい。疎水性担体30の大きさが細か過ぎると、スクリーンが詰まるなどの問題も発生するため、直径または一辺が2mm以下であると実用的ではない。
疎水性担体30の比重は0.9〜1.1であるのが好ましい。中でも、流動性を保つ観点からは0.95〜1.03であるのが好ましい。
【0074】
スクリーン31は、疎水性担体30が第2反応室2B内に流入しないように、疎水性担体30よりも目幅の狭いものであればよい。
なお、流れによって疎水性担体30がスクリーン31に押し付けられてスクリーン31を閉塞するのを防ぐため、スクリーン31を第1反応室2A側に寄せ、スクリーン31下部の第2反応室2B側に散気装置を設けて、第1反応室2A側上部に向かって曝気することで、疎水性担体30を第1反応室2A上部に流動させ、閉塞を防止させることができる。
【0075】
<第4の実施形態>
図5(1)(2)は、
図1に示した排水処理装置の変形例を示した図であり、仕切り4によって区画された第1反応室32A、第2反応室32B、さらに下流の反応室32C、32D、32E、32F、32G及び分離膜槽33を一列に配設するのではなく、折り返して2列に配設すると共に、分離膜槽33と第1反応室32Aとの間に分配室34を設け、分離膜槽33と分配室34とを連通するゲート35を設け、分配室34と第1反応室32Aとを連通するゲート36を設け、分配室34と第2反応室32Bとを連通するゲート37を設けた点に特徴がある。
【0076】
第1反応室32A内に流入した排水は、上下に迂回して流れながら、第1反応室32A、第2反応室32B、さらに下流の反応室32C、32D、32E、32F、32Gから分離膜槽33内に流入し、分離膜槽33の浸漬膜ユニット9で固液分離され、清澄なろ液は処理水として排出され、分離残渣を含む分離膜槽33内の混合液は、分離膜槽33内の曝気によるエアリフトによってゲート35を介して分配室34内に流入し、分配室34からゲート36及び37を介して第1反応室32A及び第2反応室32Bに分配返送される。
【0077】
この際、分離膜槽33内の混合液を第1反応室32A及び第2反応室32Bに返送する量は、分離膜槽33内の曝気風量とゲート35の開度の調整によって制御することができる。
また、第1反応室32A及び第2反応室32Bに返送する配分は、ゲート36及び37の開度の調整によって制御することができる。
【0078】
このように、本実施形態の排水処理装置によれば、分離膜槽33内での曝気を利用して分離膜槽33内の混合液を、第1反応室32A及び第2反応室32Bに返送するようにしたことで、返送ポンプを使わなくとも簡単に返送できるため、返送に必要な動力の削減と、装置全体の小型化を図ることができる。
さらには、第1反応室2Aと第2反応室2Bの曝気風量を汚泥が沈降しない程度に落とすことで、硝化脱窒運転を容易に行うこともできる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0080】
<実施例1・比較例1>
反応槽実容積7Lの水槽を2系列作成し、一方の本系列(実施例1)は、当該水槽内に5枚の仕切り板を、槽内の流れが上下迂回流になるように配設し、6つの反応室(第1反応室、第2反応室、・・・第5反応室及び分離膜槽)に区画し、最も下流側の分離膜槽内には浸漬膜ユニットを配置してMBR処理槽とした。さらに、前記分離膜槽内の混合液を第1反応室及び第2反応室に分配返送するようにした。この際、第1反応室に20L/d及び第2反応室に100L/dの割合で分配するように返送した。
【0081】
他方、対象系列(比較例1)は、当該水槽内に仕切り板を設けず、完全混合槽とすると共に、被処理水の入り口側の反対側に浸漬膜ユニットを配置した。また、対象系列(比較例1)は完全混合槽であるので返送は行わなかった。
【0082】
本系列(実施例1)、対象系列(比較例1)ともに、浸漬膜ユニットとして、長さ150mmの中空糸膜(膜面積1700cm
2)からなる浸漬膜ユニットを配設し、油含有排水にフェノールを一部加えた原水で、回分的に培養して馴致させた汚泥を投入し、流量35L/dで連続処理を行った。また、末端部でのMISS濃度が7500〜8800mg/Lに維持するように、排泥を反応槽末端から2日に一度500mL引き抜いた。
【0083】
【表1】
【0084】
Run1では、1日目から14日目までで表1に示す濃度に調整した原水水質を添加した。
原水には比較的難分解な油分、生物阻害性を持つフェノール類のほか生分解性の良い有機酸やアルコール類も含まれていた。
14日目の夕方から18日目まで別途用意した油とフェノールの混合液を追加し、これらの成分の添加濃度をおよそ1.5倍に高めた運転を行った(Run2)。
その後25日目までは元の濃度にもどして通水し(Run3)、25日の夕方から27日にかけ再度、濃度を2.5倍に増やした(Run4)。その後、また元の原水濃度に戻した(Run5)。
なお、 Run4では、あらかじめ溜めておいた本発明系列の汚泥10Lを曝気しながら5L/dの割合で間欠的に第1反応室2Aに添加し、同時に同量を第1反応室2A表層部および中間部からポンプで混合液を引き抜いた。
【0085】
(結果)
原水、対象系列(比較例1)、本系列(実施例1)における原水、膜ろ過後の処理水のCODcr、BOD、油分、フェノールの水質分析結果を
図6〜
図9に示す。
【0086】
(考察)
Run1は、両系列ともBOD汚泥負荷0.13kg/(kg-MISS・日)の低い条件で運転したこともあり、いずれも安定して良好な処理結果を示した。CODcrやBODの水質は、本系列(実施例1)の方が微小ではあるが常に低い傾向があり、押し出し流れによる除去効果が認められた。
油とフェノール濃度を約1.5倍に高めたRun2では、両系列でBOD処理水質に明らかに差が生じた。
対象系列(比較例1)は、原水濃度を元に戻したRun3でも、BOD濃度が元の低い値に戻るのに時間を要した。CODcr、油分、フェノールについては若干の差は生じたが大きな差はなかった。本系列(実施例1)では、油分やフェノール濃度を上げた翌日に処理水BODが少し増加したことから第一反応室に戻す混合液の割合を10L/dに増加させた。その結果、処理水BODは低下し、第一反応室に戻る返送の割合を増すことで処理効果が上がることが認められた。
このことは呼吸速度の測定結果からも確認できた。第一反応室の呼吸速度は、濃度を上げたRun2の前日は15mg−O
2/(g−ss・hr)の値であったが、濃度を上げた翌日は10mg−O
2/(g−ss・hr)まで低下していた。そして、第一反応室への返送割合を上げた翌日には13mg−O
2/(g−ss・hr)にあがった。
このことから、本系列(実施例1)では、原水の濃度や負荷の増加に対し、第一反応室に戻す返送割合を上げることで安定した処理が行えることが示された。
【0087】
負荷を元に戻したRun3の後、再度、油分とフェノール濃度を約3倍に上げたRun4の実験を行った。
対象系列(比較例1)は、BODのみならず、CODcr、油分、フェノールの分解除去にも大きな影響がでて処理水濃度が著しく増加した。この影響は3日後に濃度を元に戻したにもかかわらず、処理水水質が元に戻るのに長時間を要した。また膜からの排出量も減る傾向が認められたため、排出用に用いていたチューブポンプの回転数を高めるようにした。
他方、本系列(実施例1)では、濃度の増加と共に第一反応室の曝気を弱め、フリーの油分を浮上させるようにすると共に汚泥貯留していた余剰汚泥をあらかじめ10分以上曝気して第一反応室に注入した。その結果、前回より流入水の油分やフェノール濃度が高かったにもかかわらず、処理水水質にはほとんど影響が生じなかった。また膜からの排出量も変わらず、Fluxに対する影響は認められなかった。
一方、呼吸速度は濃度を高める前の第一反応室の値は17mg−O
2/(g−ss・hr)であったが、濃度を上げた直後は5mg−O
2/(g−ss・hr)まで低下し、阻害の影響が大きかったことが示された。しかし、第二反応槽の呼吸速度は10mg−O
2/(g−ss・hr)〜8mg−O
2/(g−ss・hr)になったが、大きな影響はなく後段の反応槽の微生物は安定した処理が行えていたことを示した。
【0088】
以上のことから返送を2段に分けた本系列(実施例1)は、油分等の難分解性成分やフェノール等の生物阻害物質が含まれる排水における濃度変動や負荷変動に対しても安定した処理が行えることを確認することができた。
【0089】
<実施例2>
次に、実施例1で使用した本発明のMBR処理槽をもう1系列用意し、当該MBR処理槽内に上記馴致汚泥を等量入れると共に、最も下流側の反応室、言い換えれば膜分離槽の手前の反応室内に、径3mmの粒状活性炭を入れた網籠を浸漬させて実施例2とした(「活性炭添加系列」と称する)。
上記本系列(実施例1)と実施例2の活性炭添加系列を使用して、表1の排水を連続処理した。比較結果を
図10に示す。
【0090】
活性炭添加系列(実施例2)は、処理開始時は無添加系(実施例1)に比べて明らかに低い値を示した。これは排水の難分解性成分が活性炭に物理的吸着した結果である。16日目以降吸着量が飽和に近づき、20日目には物理的吸着に基づくCOD除去は飽和したとみられる。しかし、それ以降も、活性炭添加系列(実施例2)の処理水COD値は無添加系に比べて低い値が継続し、明らかに活性炭添加の効果が継続した。このとき顕微鏡観察によって活性炭表面には薄層になって微生物が付着していた。
【0091】
<実施例3>
次に、実施例1で使用したMBR処理槽をさらにもう1系列用意し、その第一反応室内に、ポリエチレンの短繊維からなる1辺4mmのスポンジ状の立方体担体を第一反応室容積の20%分添加して存在させた、また、第1反応室と第2反応室の連通部に目幅2mmの金網(スクリーン)を設置し、前記担体が第2反応室内に流入しないようにした(実施例3)。
他の系列は、実施例1と同様に何も添加しなかった。
実施例1の系列、実施例3の系列ともに、排水に馴致させた汚泥を等量投入し、実施例1におけるRun1の操作条件で連続運転を開始した。
【0092】
運転開始後20日目に、実施例1のRun2と同様に油分とフェノールの濃度を2倍にした原水を3日間通水した。但し、両系列とも第一反応室に戻す返送汚泥の割合は変えなかった。このときの処理水質の平均値を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
疎水性担体無添加系列(実施例1)は、第一反応室への返送割合を増やさなかったためか、実施例1に比べ油分濃度及びフェノール濃度がともに若干高くなる傾向があった。一方、疎水性担体を入れた系列(実施例3)は、油分濃度も低くCOD、BOD共無添加系列に比べ低く安定していた。
投入した担体を取り出して手で圧迫すると、油がにじみ出てきており、明らかにこの担体が流入した油分を吸着したことで後段の生物処理機能への悪影響を抑制したことが伺えた。油分やフェノール濃度を元の濃度に戻して処理を継続したが1週間後には担体に吸着した油はしみだすことがなくなったことから分解されたものと見られた。
次に、疎水性担体の半分を取り出し、疎水性繊維であるポリプロピレンと親水性繊維であるレーヨンを混紡して綿状にした径5mm、厚さ3mmの円盤状の担体を投入した。表1に示す排水で更に3週間ほど連続処理した後、前例と同様に3日間油分とフェノール濃度を倍にして処理を行った。結果を表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
無添加系列(実施例1)は、前回と同様の水質であったが、疎水性と親水性を混ぜた担体を入れた添加系列は前回に比べ、処理水フェノール濃度が明らかに低下し、BOD濃度も低い値を得た。前回の疎水性担体のみを入れた場合は、第一反応室の表面に油膜やスカムが浮上するのが認められたが、疎水性と親水性を混ぜた担体を入れた場合は、こうした現象は認められず取り出した担体から染み出す油分量明らかに低かった。担体を取り出して揉み解し、付着している微生物量を重量換算で測定した結果、疎水性担体で2mg/担体-gに対し、疎水性繊維と親水性繊維を混ぜた担体は8mg/担体-gとなり、明らかに微生物の付着量が多かった。この微生物の付着量の違いが処理性能の安定や油分の分解速度を高めたものと推察された。