【文献】
GEORGES BRAM,EASY AND EFFICIENT HETEROGENEOUS NUCLEOPHILIC FLUORINATION WITHOUT SOLVENT,SYNTHETIC COMMUNICATIONS,米国,TAYLOR AND FRANCIS INC,1988年10月 1日,V18 N14,P1661-1667
【文献】
KREMSNER J M,MICROWAVE-ASSISTED ALIPHATIC FLUORINE-CHLORINE EXCHANGE USING TRIETHYLAMINE TRIHYDROFLUORIDE(TREAT-HF),TETRAHEDRON LETTERS,NL,ELSEVIER,2009年 7月 1日,V50 N26,P3665-3668
【文献】
James H. Clark,Reactions of potassium fluoride in glacial acetic acid with chlorocarboxylic acids, amides, and chlorides. The effect of very strong hydrogen bonding on the nucleophilicity of the fluoride anion,JOURNAL OF THE CHEMICAL SOCIETY, DALTON TRANSACTIONS,1975年,20,P2129-2134
【文献】
Dong Wook Kim,Facile Nucleophilic Fluorination Reactions Using tert-Alcohols as a Reaction Medium: Significantly Enhanced Reactivity of Alkali Metal Fluorides and Improved Selectivity,THE JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,2008年,73 (3),P957-962
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応が水性媒質内で実施され、少なくとも前記塩と少なくとも前記式(I)の有機化合物とを含む前記水性反応媒質中に存在する前記水の量は、水/フッ化物アニオンのモル比が1〜20となるものである、請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
形成されたフッ素化有機化合物(II)は、例えば、下記式、
R
4-nC(F)
k(Nu)
n-k(式中k=1、2または3でありk≦nである)
を有する。
【0020】
複数のNu基または原子が存在する場合、それらは、等しいものであっても異なるものであってもよい。
【0021】
複数のR基または原子が存在する場合、それらは等しいものであっても異なるものであってもよい。
【0022】
G1、G2及び/またはG3基は置換されてよい。これらは特に、明細書中で定義されている通り、1つ以上の離核性基Nuを含んでいてよい。従って有機化合物(I)は、1つ以上のフッ素原子を用いて本発明の反応によってフッ素化されてよい。
【0023】
「アルキル」という用語は、G1基と同様、別段の指示のないかぎり、1つ以上のヘテロ原子(N、O、S)を含んでいてよく、1つ以上の不飽和を含んでいてよくかつ1つ以上の置換基を含んでいてよい飽和した直鎖、分岐または環状炭化水素系鎖を特に網羅する。好ましくは、このような直鎖または分岐鎖は、1〜15個の炭素原子、好ましくは1個または2〜10個の炭素原子を含む。環状アルキルは、シクロアルキルと呼ばれる。
【0024】
飽和直鎖炭化水素系鎖には特に、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル及びn−デシルが含まれる。
【0025】
飽和分岐鎖には、特にイソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルヘキシル、2,4−ジメチルヘキシル、2,5−ジメチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,2−ジメチルヘキシル、3,3−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルヘキシル、4,4−ジメチルヘキシル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、2−メチル−2−エチルペンチル、2−メチル−3−エチルペンチル、2−メチル−4−エチルペンチル、2−メチル−2−エチルヘキシル、2−メチル−3−エチルヘキシル、2−メチル−4−エチルヘキシル、2,2−ジエチルペンチル、3,3−ジエチルヘキシル、2,2−ジエチルヘキシル及び3,3−ジエチルヘキシルが含まれる。アルキルラジカルは、1つ以上の置換基で置換されてもいなくてもよい。
【0026】
「シクロアルキル」という用語は、特に、単環式または多環式そして融合または非融合(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)であってよい環状アルキルを意味するように意図されている。好ましくは、この環は3〜12個の原子を含み、それが少なくとも1つのヘテロ原子を含む場合複素環を形成することができる。「シクロアルキル」という用語は、詳細には3〜8個の炭素原子を含む環状、優先的に単環式の炭化水素系基を意味するように意図されている。
【0027】
「複素環」という用語は、好ましくは、それ自体ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メトキシ、カルボキシ、アミノ、オキソ、ニトロまたはシアノ基から選択された1つ以上の置換基を担持することのできる窒素、硫黄及び酸素から選択された1、2、3または4個のヘテロ原子を含む飽和または不飽和5員または6員環を意味するように意図されている。
【0028】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、酸素、臭素またはヨウ素原子を意味するように意図されている。
【0029】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、特に2〜11個の炭素原子を有し飽和しているかまたは1つ以上の不飽和を含むものの芳香族ではない、特にO、N及びSから選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式または多環式基を網羅する。例としては、特に以下のものが含まれる:ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオピラニルスルホン、テトラヒドロチオピラニルスルホキシド、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル−2−オン、テトラヒドロチエニル、及びテトラヒドロ−1,1−ジオキソチエニル。
【0030】
典型的には、単環式ヘテロシクロアルキルは、3〜7個の原子で構成されている。好ましい3〜7員の単環式ヘテロシクロアルキルは、5個または6個の原子が環内に含まれているものである。
【0031】
ヘテロシクロアルキルは、1つ以上の置換基で置換されてよい。
【0032】
G2基などのような、「芳香族」という用語は、炭素及び水素原子を含む単環式または多環式アリールまたはヘテロアリールラジカルを特に網羅する。アリールまたはヘテロアリールラジカルは、好ましくは特に窒素、硫黄及び酸素から選択された、例えば1、2、3、4または5個のヘテロ原子を含む5員〜6員の芳香環である。アリールまたはヘテロアリールラジカルはそれ自体、例えばハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メトキシ、カルボキシ、アミノ、オキソ、ニトロまたはシアノ基から選択された1つ以上の置換基を担持していてよい。芳香族基の例としては、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル及びナフチル及びベンゾ融合カルボキシルラジカル、例えば5,6,7,8−テトラヒドロナフチルが含まれるが、これらに限定されない。芳香族基は1つ以上の置換基で置換されてもよいし、あるいは未置換であってもよい。
【0033】
一変形形態によると、芳香環は6個の炭素原子を伴う単環式核である。
【0034】
ヘテロアリールの例としては、ピリジル、1−オキソピリジル、フラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ベンゾ[1,4]ジオキシニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、キノリニル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、チアジアゾリル、イソキノリニル、インダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾフリル、インドリジニル、イミダゾピリジル、テトラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾキサジアゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キナゾリニル、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジニル、ピラゾロ[3,4]ピリミジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、プリン及びベンゾ(b)チエニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
ヘテロ原子は、置換基で置換されてよく、例えば窒素原子に結合された水素原子が、tert−ブトキシカルボニル基で置換されてよい。
【0036】
ヘテロアリールは、1つ以上の置換基で置換されてよい。
【0037】
「置換された」という用語は、考慮中の基の1つ以上の水素原子が1つ以上の「置換基」で置き換えられることを意味する。置換基は、以下のものであってよい:
− 第1の置換基例は、特に以下のものである:ハロゲン(塩素、ヨウ素、臭素またはフッ素);アルキル(詳細には、メチル、エチルまたは他の直鎖アルキル);アルケニル;アルキニル;ヒドロキシル;アルコキシ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナト;ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;ケトン;アルデヒド;エステル;酸素(O
-);ハロアルキル(例えば:トリフルオロメチル);単環式または多環式かつ融合または非融合型であってよいシクロアルキル(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)、または単環式または多環式かつ融合または非融合型であってよいヘテロシクロアルキル(例えばピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルまたはチアジニル)、単環式または多環式かつ融合または非融合型であってよいアリールまたはヘテロアリール(例えば:フェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニルまたはベンゾフラニル);アミン(第1級、第2級または第3級);CO
2CH
3;CONH
2;OCH
2CONH
2;NH
2;SO
2NH
2;OCHF
2;CF
3;OCF
3である。
【0038】
第2の置換基例は特に、−C(O)NR13R14、−NR13C(O)R14、ハロゲン、−OR13、シアノ、ニトロ、ハロアルコキシ、−C(O)R13、−NR13R14、−SR13、−C(O)OR13、−OC(O)R13、−NR13C(O)NR13R14、−OC(O)NR13R14、−NR13C(O)OR14、−S(O)rR13、−NR13S(O)rR14、−OS(O)rR14、S(O)rNR13R14、−O、−S及び−N−R13であり、式中、rは1または2であり;R13及びR14は、第1の置換基例に従って記載された置換基から選択される。
【0039】
G1、G2及びG3の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、アミノ、スルホネート、ホスホネート、ニトロ、シアノ、アリールまたはヘテロアリール、アルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アルキルスルファモイル、アルキルスルホニルアミノ、アルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルアミノからなる群から選択されてよく、前記アルキル基は、好ましくはハロゲン、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシル、カルボニル、アミン、ニトロ、尿素、アリールまたはヘテロアリールから選択される同一であるかまたは異なるものであってよい1〜4個の置換基をそれ自体が担持する、1つ以上のアミノ、アミド、チオアミド、スルホニル、スルホンアミド、カルボキシル、チオカルボキシル、カルボニル、チオカルボニル、ヒドロキシイミン、エーテルまたはチオエーテルラジカルを適宜含む直鎖、分岐または環状でかつ飽和または不飽和の1、2、3、4、5または6個の炭素原子を好ましくは含んでいる。
【0040】
「アルコキシ」という用語は、特に、酸素原子によって別のアルキルラジカルに対して共有結合を介して結合されたアルキルを網羅する。アルコキシの例としては、特にメトキシ、イソプロポキシ、エトキシ及びtert−ブトキシが含まれる。アルコキシラジカルは、1つ以上の置換基で置換されていてもいなくてもよい。
【0041】
1つの好ましい変形形態によると、本発明の有機化合物(I)は、下記式
R(4〜n)−C−(Nu)n
を有し、式中Cは、共有結合を介してR基及びNu基に結合されたsp3炭素原子である。
【0042】
別の変形形態によると、本発明の有機化合物(I)は、下記式
R(4〜n)−C−(Nu)n
を有し、式中Cは、共有結合を介してR基及びNu基に結合されたsp2炭素原子であり、2重結合がR基を炭素原子Cに連結することを特徴とする。
【0043】
好ましくは、本発明の有機化合物(I)は、下記式
R(4〜n)−C−(Nu)n
を有し、式中、
Cは、共有結合を介してR基またはNu基に結合されたsp3炭素原子であり;
−Nuは離核性基または原子であり;
−Rは、
−H(水素原子)、
−F(フッ素原子)、
アルキル−G1基、
芳香族−G2基、
アルケニル−G3基、
−C(=A)−R’
[式中、 AはO原子であり、
−R’=
−H、
−G1、−G2または−G3基、
−OR1(式中R1は水素原子または−G1、−G2または−G3基である)、
−NR2R3(式中R2及びR3は同一であるかまたは異なるものであり、H、−G1、−G2または−G3から選択される)、
−OM(式中Mはカチオンであり、好ましくはMはアルカリ金属、アルカリ土類金属またはカラム3〜10の元素のうちの一つである)、
ハロゲン原子F、Cl、BrまたはI、である]、
−S(=O)pR10
[式中、 p=1または2であり;
R10は、
先に定義されたR’基から独立して;
−NHM(式中Mは先に定義された通りである);
−NHS(=O)mR11(式中m=1または2であり、R11は硫黄原子Sに結合されており、R11はH、−G1、−G2及び−G3から選択され);
−NMS(=O)mR12(式中m=0、1または2であり、硫黄S及び窒素N原子は共有結合を介して結合されており、Mはカチオンであり、R12は硫黄原子Sに結合されており、R12はH、−G1、−G2及び−G3から選択されている)から選択されている]、
から独立して選択されており、
nは1、2または3である。
【0044】
特に好ましいものである有機化合物(I)は、
−H(水素原子)、
−F(フッ素原子)、
1〜4個の炭素原子を含むアルキル−G1基、
−C(=A)−R’
[式中、 AはO原子であり、
−R’=
−H、
1〜4個の炭素原子を含むアルキル−G1基、
−OR1(式中R1はHまたは1〜4個の炭素原子を含むアルキルG1基である)、
−OM(式中Mはカチオンであり、好ましくはMはアルカリ金属、アルカリ土類金属またはカラム3〜10の元素のうちの一つであるか、またはハロゲン原子F、Cl、BrまたはIである);
−NR2R3(式中R2及びR3は同一であるかまたは異なるものであり、H、及び1〜4個の炭素原子を含むアルキルG1基から選択される)];
−S(=O)pR10
[式中、 p=1または2であり;
R10は、
先に定義されたR’基から独立して;
−NHM(式中Mは先に定義された通りである);
−NHS(=O)mR11(式中m=1または2であり、R11は硫黄原子Sに結合されており、R11は−H、及び1〜4個の炭素原子を含むアルキルG1基から選択されている);
−NMS(=O)mR12(式中m=0、1または2であり、硫黄S及び窒素N原子は共有結合を介して結合されており、Mはカチオンであり、R12は硫黄原子Sに結合されており、R12は−H、1〜4個の炭素原子を含むアルキル−G1基から選択されている)から選択されている]、
から独立して選択されている少なくとも1つのR基を含み、
nは1、2または3である。
【0045】
式(I)の化合物の1つの変形形態によると、nは2または3である。
【0046】
式(I)の化合物の別の変形形態によると、nは1である。
【0047】
特に好ましいものである有機化合物(I)は、下記式(Ia)、(Ib)、(Ic)または(Id)
【化1】
によって表わされ、式中、Ra及びRbは、
− Raが実施形態及び変形形態の何れか1つに従って以上で定義されているRであり、好ましくは、
− フッ素原子、
− 好ましくは1〜4個の炭素原子を含み、特にメチル、エチルまたはイソプロピルであるアルキルG1基、
から独立して選択され、
− Rbが、実施形態及び変形形態の何れか1つに従って以上で定義されているRであり、好ましくは、
− −C(=O)−R’
[式中、 −R’=
−H、
好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルキルG1基、
−OR1(式中R1はHまたは、好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルキルG1基である)、
−OM(式中Mはカチオンであり、好ましくはMはアルカリ金属、アルカリ土類金属またはカラム3〜10の元素のうちの一つである);
−NR2R3(式中R2及びR3は同一であるかまたは異なるものであり、H、及び好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルキルG1基から選択される)である];
− −S(=O)pR10
[式中、 p=1または2であり;
R10は、
先に定義されたR’基から独立して;
−NHM(式中Mは先に定義された通りである);
−NHS(=O)mR11(式中m=1または2であり、R11は硫黄原子Sに結合されており、R11は−H及び好ましくは1〜4個の炭素原子を含む−G1から選択され);
−NMS(=O)mR12(式中m=0、1または2であり、硫黄S及び窒素N原子は共有結合を介して結合されており、Mはカチオンであり、R12は硫黄原子Sに結合されており、R12は−H及び好ましくは1〜4個の炭素原子を含む−G1から選択されている)から選択されている];
から独立して選択されており、
− yが1、2、または3であり、
− Nuが離核性基であり、
− xが1、2または3であり、zが1または2、
となるような形で独立して選択されている。
【0048】
任意に(四価の)炭素原子Cに結合された水素原子は、表わされていない。
【0049】
下記式(Ia)、(Ib)、(Ic)または(Id)の化合物の変形形態によると、
− Raは、
フッ素原子、
好ましくは1〜4個の炭素原子を含み、特にメチル、エチルまたはイソプロピルであるアルキルG1基、
から独立して選択され、かつ
− Rbは、−C(=O)−R’であり、好ましくはR’は、
H;
OR1(式中R1は好ましくはHまたは、好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルキルG1基から選択される)及び、
OM(式中Mはカチオンであり、好ましくはMはアルカリ金属、アルカリ土類金属またはカラム3〜10の元素のうちの一つである)及び、
−NR2R3(式中R2及びR3は同一であるかまたは異なるものであり、H、かつ好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルキルG1基から選択される)である。
【0050】
RaまたはRbが式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)中に数回存在する場合、
【0051】
化合物(Ia)及び(Ib)の1つの特定の変形形態によると、Nuはハロゲン原子ではない。
【0052】
式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)の化合物の1つの変形形態によると、xは2または3であり、zは2である。
【0053】
式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)の化合物の1つの変形形態によると、xは1であり、zは1である。
【0054】
式(Ia)、(Ib)、(Ic)または(Id)の化合物の一変形形態によると、
Ra及びRbは、
− Raが、
− フッ素原子、
− 好ましくは1〜4個の炭素原子を含み、特にメチル、エチルまたはイソプロピルであるアルキルG1基、
から独立して選択され、
− Rbが、
− −S(=O)pR10
[式中、 p=1または2であり;
R10は、
好ましくは1〜4個の炭素原子を含み、特にメチル、エチル、イソプロピルであるアルキルG1基;
−NHM(式中Mは先に定義された通りである);
−NHS(=O)mR11(式中m=1または2であり、R11は硫黄原子Sに結合されており、R11は−H及び好ましくは1〜4個の炭素原子を含む−G1から選択される);
−NMS(=O)mR12(式中m=0、1または2であり、硫黄S及び窒素N原子は共有結合を介して結合されており、Mはカチオンであり、R12は硫黄原子Sに結合されており、R12は−H及び好ましくは1〜4個の炭素原子を含む−G1から選択される)から選択されている];
から独立して選択されている。
【0055】
詳細には、Rbは独立して、−S(=O)pR10を表してよく、ここで式中、
p=2であり;
−NHM(式中Mは先に定義された通りである);
−NHS(=O)mR11(式中m=2であり、R11は硫黄原子Sに結合されており、R11は−H及び好ましくは1〜4個の炭素原子を含む−G1から選択され);
−NMS(=O)mR12(式中m=2であり、硫黄S及び窒素N原子は共有結合を介して結合されており、Mはカチオンであり、R12は硫黄原子Sに結合されており、R12は−H及び、任意には1つ以上のNu基及び/またはフッ素原子で置換される、好ましくは1〜4個の炭素原子を含む−G1から選択されている);
そしてMは好ましくはリチウムである。
【0056】
G1基は、1〜20個の原子または20個超の原子を含んでいてよい。G1は、詳細には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、ヘプチルまたはオクチル基を表わす。G1基は同様に、糖(単糖類)例えば、特にマンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マルトースを含めた単糖、二糖またはオリゴ糖、または多糖質、例えばセルロース、デンプン、マンナン、グルカン、フルクタン、ガラクタン及びグルコサミノグルカンも網羅する。
【0057】
G2基は、5〜14個の原子を含んでいてよく、詳細にはフェニル、トリル、ナフチル、トリフルオロメチルベンゼン、クロロベンゼン、アミノベンゼン、メトキシベンゼン、フェノール、ニトロベンゼンまたはアントラセン基を表わす。
【0058】
アルケニルG3基は、典型的に、式(I)の炭素原子Cとの関係においてアルファ位置に不飽和(C=C)を含む炭化水素系基である。
【0059】
−変形形態によると、G3は1つ以上の水素原子、置換ヘテロ原子(NまたはO)、または1つ以上のアルキル基、例えばG1で置換されていてもいなくてもよい。
【0060】
一変形形態によると、本発明は、酸官能基を含むフッ素化有機化合物(II)の調製に関する。
【0061】
別の変形形態によると、本発明は、カルボニル官能基を含むフッ素化有機化合物(II)の調製に関する。
【0062】
別の変形形態によると、本発明は、第1級、第2級または第3級アルコール官能基を含むフッ素化有機化合物(II)の調製に関する。
【0063】
別の変形形態によると、本発明は、ジェミナルジオールとビシナルジオールを含めたジオール官能基を含むフッ素化有機化合物(II)の調製に関する。
【0064】
一変形形態によると、本発明は、エステル官能基を含むフッ素化有機化合物(II)の調製に関する。
【0065】
別の変形形態によると、本発明は、スルホネート官能基を含むフッ素化有機化合物(II)の調製に関する。
【0066】
従って本発明は、少なくとも1つのRラジカルが、酸、カルボニル、アルコール、ジオール、エステル、スルホネートまたはエポキシド官能基を含むフッ素化有機化合物(II)に関する。好ましくは、この官能基(酸、カルボニル、アルコール、ジオール、エステル、スルホネートまたはエポキシド)は、離核性基Nuを担持する炭素Cとの関係においてアルファ位にある。
【0067】
一変形形態によると、有機化合物(I)は、少なくとも1つの離核性基Nuを担持する1つ以上の非対称炭素原子を含む。本発明に係る反応は立体特異的であることが発見された。有機化合物(I)が、鏡像体富化されている場合、フッ素化有機化合物(II)も同様に鏡像体富化される。
【0068】
本発明の方法によると、有機化合物(I)は、離核性基Nuとフッ化物アニオンにより導入されたフッ素の間の交換反応に付される。
【0069】
「離核性基Nu」という用語は、考慮対象の反応条件下で少なくとも1つのフッ化物アニオンを提供する塩のフッ素原子のものよりも低い炭素原子に対する求核性を有する、炭素原子に結合した原子または原子群を意味するように意図されている。離核性は、特に、考慮対象の離核性基の共役酸のpKaを用いて測定可能である。考慮対象の基のpKaが低くなればなるほど、その離核性は高くなる。従って本発明は、特に、大気圧(101 325Pa)で25℃の水中で5未満のpKaを有する離核性基Nuを網羅する。原子または原子群の離核性は同様に、それをとり囲む原子即ち有機化合物(I)のその位置及び有機化合物(I)の原子によっても左右される。離核性は同様に、考慮対象の離核性基の反応活性度に影響を及ぼす反応条件によっても左右される。特に溶媒は、重要な役目を果たす場合がある(「Comprehensive organic chemistry」、K.Peter、C.Vollhardt、Neil E.Schore著を参照のこと)。
【0070】
1つの好ましい実施形態において、前記離核性基Nuは、塩素、臭素、ヨウ素及びそれらの混合物から選択される。
【0071】
1つの好ましい実施形態によると、前記離核性基Nuは、O−アルキル、OSO
2−アルキル、OAc、OCOアルキル、OCOCF
3、OSO
2CF
3、OSO
2CH
3、OSO
2−p−C
6H
4Me、SCN及びスルホニウムから選択される。
【0072】
本発明は、特にモノフッ素化化合物の調製を網羅している。本発明は同様に、ジフッ素化化合物の調製も網羅している。ジフッ素化化合物の調製は、2つの離核性基Nuまたは1つの離核性基Nu及びフッ素原子を含む化合物から出発して実施可能である。本発明は同様に、トリフッ素化化合物の調製も網羅している。トリフッ素化化合物の調製は、3つの離核性基Nuまたは2つの離核性基Nuと1つのフッ素原子または1つの離核性基Nuと2つのフッ素原子を含む化合物から出発して実施可能である。「モノ、ジまたはトリフッ素化」という用語は、1つの炭素原子上にそれぞれ1つ、2つまたは3つのフッ素原子を含む化合物を意味するものとして意図されている。フッ素化有機化合物(II)はモノ、ジまたはトリフッ素化炭素原子を複数含んでいてよい。
【0073】
本発明は、詳細には、以下の化合物の調製を網羅している:
【化2】
【0074】
本発明は更に、特に、例えば異なる離核性基Nuを用いた合成経路を示す以下のスキームに従って調製される場合がある、対応する出発誘導体からの2−フルオロプロピオン酸の調製を網羅している。
【化3】
【0075】
本発明は同様に、例えばクロロプロピオン酸アルキルからのフルオロプロピオン酸アルキルの調製をも網羅している。本発明は更に、フルオロプロピオン酸メチル、より具体的には2−フルオロプロピオン酸メチルの調製も網羅している。
【0076】
有機化合物(I)のなかでも、工業的に有利な以下の化合物に言及することができるが、このリストは限定的なものではない:(CCl
3SO
2)
2NH、CCl
3SO
2NH
2;CCl
3SO
2NHSO
2CHCl
2、HCl
2SO
2NHSO
2CHCl
2、HCCl
2SO
2NH
2、CCl
3SO
2NHSO
2CH
2CH=CH
2、その金属塩またはそのN−アルキル誘導体。本発明は、詳細には、例えばこれらの対称化合物から調製されるフッ素化化合物(II)、即ち(CF
3SO
2)
2NH、CF
3SO
2NH
2;CF
3SO
2NHSO
2CHF
2、HF
2SO
2NHSO
2CHF
2、HCF
2SO
2NH
2、CF
3SO
2NHSO
2CH
2CH=CH
2、それらの金属塩またはN−アルキル誘導体を網羅する。本発明は、特に、化合物LiTFSI即ちリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((CF
3SO
2)
2NLi)の調製を網羅する。
【0077】
1つの特定の実施形態によると、有機化合物(I)は、例えば以上で言及したものの中の、複数の離核性基Nuを含む。例えば有機化合物(I)は2つの離核性基Nuを含む。
【0078】
1つの特定の変形形態によると、有機化合物(I)は、それが、同一の離核性を有する少なくとも一対の離核性基Nuを含むという意味において、対称である。従って、少なくとも1つのフッ素化アニオンを提供する塩は、対称有機化合物(I)の離核性基Nuの一方または他方に対する選好性を全く有さず、有機化合物(I)内に存在する離核性基Nuの対を選好性無く置換することになる。
【0079】
従って、本発明は、分子が対称点、対称軸または対称面を有するという意味において、対称フッ素化有機化合物の調製を網羅している。
【0080】
本発明の一変形形態によると、有機化合物(I)は水溶性である。
【0081】
一変形形態によると、本発明は、フルオロメチルピラゾール化合物の調製に関するものではない。これは、詳細には、以下に記載する式(IIA)のフルオロメチルピラゾール化合物を意味する。
【0082】
別の変形形態によると、本発明は、フルオロメチルピラゾール化合物の調製に関する。
【0083】
メチルヒドラジンとエチル2−エチルオキシメチレン−4,4−ジフルオロ−3−オキソブチレートタイプの誘導体とを反応させることによるジフルオロメチルピラゾールタイプの化合物の製造は、すでに米国特許第5093347号明細書中に記載されている。マイクロ波照射下でのHF−Et
3N錯体を用いたエチル3−ジクロロメチル−1−メチル−4−ピラゾールカルボキシレートの直接的フッ素化も同様に、Tetrahedron Letters(2009)、50(26)、3665〜3668中に記載されている。公知の方法に係るこれらのフルオロメチルピラゾールタイプの化合物の生産には、詳細には、工業的環境において実施するのに好適でない条件が求められるという欠点がある。
【0084】
ピラゾール環がカルボン酸官能基または前記酸から誘導された官能基で4位において置換されているフルオロメチルピラゾール化合物は、医薬品及び農薬の利用分野において極めて有利である。従って、上述の欠点を克服し、この部類のフルオロメチルピラゾール化合物の生産を容易にするために、本発明は、革新的な代替的方法の実施を提案している。
【0085】
従って本発明の目的は、下記式(IIA)
【化4】
のフルオロメチルピラゾール化合物の調製方法において、式中、
R’がヒドロキシルOH基、OR基(式中Rはアルキルフラグメント及びシクロアルキルフラグメントである)、OMe基(式中Meは金属カチオン、アミド基またはハロゲン原子Zである)を表わし、
Qが、水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシルOH基を表わし、
Pが、アルキル基またはアリール基を表わし、
Xが、塩素及び/または臭素原子を表わし、
ここで0≦q<3及び0≦r<3(q+r<3)であり、qとrは整数であり、
塩素、臭素及び塩素と臭素の混合物から選択される少なくとも1つのハロゲン原子Xを含む下記式(IA)
【化5】
[式中R’、Q、P及びXは式(IIA)について示されたものと同じ定義を有し、0≦q<3、1≦i<3で0<q+i≦3であり、iは厳密にrより大きい]
の少なくとも1つのハロメチルピラゾール化合物と少なくとも1つのフッ化物アニオンを提供する少なくとも1つの塩とを水性媒質中で反応させるステップを含む方法にある。
【0086】
本発明に係る方法によると、フッ素原子以外の少なくとも1つのハロゲン原子Xを含む式(IA)のハロメチルピラゾール化合物は、前記ハロゲン原子Xとフッ化物アニオンによって導入されるフッ素との間の交換反応に付される。本発明によると、前記ハロゲン原子Xは、塩素、臭素及び塩素と臭素の混合物から選択される。
【0087】
本発明に係る調製方法において試薬として使用される式(IA)のハロメチルピラゾール化合物は、4位で複素環により担持されているCOR’官能基中に存在するR’ラジカルがヒドロキシル基(R’=OH)となるような酸形態であってよい。
【0088】
本発明に係る調製方法において試薬として使用される式(IA)のハロメチルピラゾール化合物は、4位で複素環により担持されているCOR’官能基中に存在するR’ラジカルがOR基(ここでRはアルキルフラグメント及びシクロアルキルフラグメントから選択される)となるようなエステル化形態であってよい。エステル化形態においては、式(IA)の化合物の酸形態中に存在する水素原子は、アルキルフラグメントまたはシクロアルキルフラグメントで置き換えられている。好ましくは、前記アルキルフラグメントRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びt−ブチルから選択される。より好ましくは、前記アルキルフラグメントRは、メチル、エチル、プロピル及びブチルから選択され、更に一層好ましくは、前記アルキルフラグメントRは、メチル及びエチルから選択される。前記シクロアルキルフラグメントRは、有利には、シクロペンチルまたはシクロヘキシル、非常に有利にはシクロヘキシルである。
【0089】
本発明によると、以上で定義された前記アルキルフラグメント及び前記シクロアルキルフラグメントから選択されるフラグメントR中に存在する1つ以上の水素原子は、所望される式(IIA)のフッ素化化合物の獲得と干渉しないかぎり、置換基(例えばハロゲン、特にフッ素原子)で置き換えられてよい。この実施形態によると、フラグメントRは、1〜10個の炭素原子及び1〜21個のフッ素原子、好ましくは3〜21個のフッ素原子を含むフルオロアルキルまたはペルフルオロアルキルを表わしていてよい。
【0090】
本発明に係る調製方法において試薬として使用される式(IA)のハロメチルピラゾール化合物は同様に、4位で複素環により担持されているCOR’官能基中に存在するR’ラジカルがOMe基(ここでMeは金属カチオンである)となるような塩化形態であってもよい。塩化形態においては、式(IA)の化合物の酸形態中に存在する水素原子は金属カチオンで置き換えられている。前記金属カチオンは、好ましくは、1価または2価の金属のカチオンである。更に詳細には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンに言及することができる。塩の更に具体的な例としては、アルカリ金属カチオン、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムカチオン;及びアルカリ土類金属カチオン、好ましくはマグネシウム、カルシウムまたはバリウムカチオンに言及することができる。上述のリスト中、好ましい金属カチオンはナトリウムまたはカリウムカチオンである:
【0091】
本発明に係る調製方法において試薬として使用される式(IA)のハロメチルピラゾール化合物は同様に、4位で複素環により担持されているCOR’官能基中に存在するR’ラジカルが、優先的に−NH
2、−NHR1または、−NR1R1’基[ここでR1及びR1’は、式(IA)のハロメチルピラゾール化合物のエステル化形態について上述したフラグメントRについて示されたものと同じ意味を有するアルキルフラグメントである]となるようなアミド形態であってもよい。好ましくはR1とR1’はメチル、エチル、プロピル及びブチルから選択される。
【0092】
本発明に係る調製方法において試薬として使用される式(IA)のハロメチルピラゾール化合物は同様に、4位で複素環により担持されているCOR’官能基中に存在するR’ラジカルが、塩素、臭素及びフッ素から選択されたハロゲン原子Zで構成されているような形態であってもよい。本発明によると、前記ハロゲン原子Zの存在は、いかなる形であれ所望の式(IIA)の化合物の獲得と干渉しない。
【0093】
本発明に係る調製方法において試薬として使用される式(IA)のハロメチルピラゾール化合物は、複素環上の5位に置換基Qを有する。前記置換Qは、水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシルOH基を表わす。好ましくは、前記置換基Qは、水素原子、フッ素原子またはヒドロキシルOH基である。
【0094】
本発明に係る調製方法において試薬として使用される式(IA)のハロメチルピラゾール化合物は、複素環上の1位で窒素原子に連結されている置換基Pを有する。前記置換基Pは、アルキル基またはアリール基を表わす。Pがアルキル基である場合、Pは、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜5個の炭素原子を有する炭化水素系連鎖である。より詳細には、Pはメチル基またはエチル基である。Pがアリール基である場合、Pは優先的にフェニル−C
6H
5基である。
【0095】
本発明の方法によると、式(IA)の化合物中のハロゲン原子Xは、1つ以上の塩素原子かまたは1つ以上の臭素原子であるか、更には塩素原子と臭素原子の混合物の何れかである。好ましくは、全てのハロゲン原子Xは塩素原子である。式(IA)の化合物は、1〜3個のハロゲン原子を含む(i=1、2または3)。有利には、式(IA)の化合物は、i=2でかつ、q=1またはi=3でq=0となるように選択される。
【0096】
本発明の方法によると、複素環上の3位に置かれた置換基CH
qXiF
(3-q-i)は、q+iが厳密に正となるように最高2個の水素原子(q=0、1または2)と同様最高2個のフッ素原子を含む。有利には、i=2でq=1またはi=3でq=0である場合、前記置換基CH
qXiF
(3-q-i)にはフッ素の存在が欠如している。
【0097】
より好ましくは、式(IA)のハロメチルピラゾール化合物は、
R’=OH;Q=H;P=CH
3;X=Cl;q=1;i=2.
R’=OH;Q=H;P=CH
3;X=Cl;q=0;i=3.
R’=OC
2H
5またはR’=OCH
3;Q=H;P=CH
3;X=Cl;q=1;i=2.
R’=OC
2H
5またはR’=OCH
3;Q=H;P=CH
3;X=Cl;q=0;i=3.
R’=OMe(ここでMe=NaまたはK);Q=H;P=CH
3;X=Cl;q=1;i=2.
R’=OMe(ここでMe=NaまたはK);Q=H;P=CH
3;X=Cl;q=0;i=3
である化合物から選択されるようなものである。
【0098】
本発明に係る方法によると、式(IA)の前記ハロメチルピラゾール化合物は、フッ化物アニオンを提供する少なくとも1つの塩と反応し、こうして式(IA)の化合物中に存在する塩素原子及び/または臭素原子(X=Cl及び/またはBr)と前記フッ化物アニオンにより導入されるフッ素原子の間の交換反応が確立され、結果として式(IIA)のフルオロメチルピラゾール化合物が生産されることになる。本発明の方法によると、式(IA)の化合物中に存在する塩素原子及び/または臭素原子、優先的には塩素原子は、少なくとも1つのフッ素原子と交換され、こうして式(IIA)の所望のフルオロメチルピラゾール化合物は式(IA)の化合物よりも多くのフッ素原子(i>r)を含むことになる。
【0099】
少なくとも前記フッ化物アニオンを提供する前記塩の性質は、可変的であってよい。フッ化物イオンを提供する作用物質は、式M’Fの化合物(式中Fはフッ素原子であり、M’はカチオンである)によって表わされてよい。
【0100】
有利には、前記塩は金属フッ化物、フッ化オニウム及びそれらの混合物から選択される。
【0101】
本発明に係る方法においてフッ化物アニオンを提供する塩として有利に使用される前記金属フッ化物は優先的に、金属カチオンが元素周期表のIA族、IIA族及びIIB族に属しているフッ化物である。本発明の方法を実施するために好適であるカチオンの例としては、より詳細には、元素周期表のIA族のカチオンのうちリチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウムカチオン、元素周期表のIIA族のカチオンのうちマグネシウム及びカルシウムカチオン、そして元素周期表のIIB族のカチオンのうち亜鉛カチオンに言及することができる。上述の塩のうち、好ましくはフッ化カリウム及びフッ化ナトリウムが選択される。
【0102】
本発明は、特に2重塩例えば2重アルミニウム及びナトリウムまたはカリウムフッ化物及びフルオロケイ酸ナトリウムまたはカリウムの使用を網羅している。
【0103】
本発明に係る方法において、フッ化物アニオンを提供する塩として有利にも使用される前記フッ化オニウムは、優先的に、単独でまたは混合物として取上げたフッ化アンモニウム、フッ化ホスホニウム、フッ化イミダゾリウム及びフッ化ピリジニウムから選択される。
【0104】
フッ化アンモニウム及びフッ化ホスホニウムは、詳細には下記式(III)
【化6】
に対応するカチオンを有する塩であり、式中
− WはNまたはPを表わし、
− 同一であるかまたは異なるものであってよいR
2、R
3、R
4及びR
5は、
1〜16個の炭素原子を有し、任意には1つ以上のヘテロ原子またはフェニル、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、アルコキシまたはアルコキシカルボニル基で置換される直鎖または分岐アルキル基(アルコキシ基は1〜4個の炭素原子を有する);
2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルケニル基;
6〜10個の炭素原子を有し、任意には、1つ以上のヘテロ原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基(アルコキシル基は1〜4個の炭素原子を有する)、またはハロゲン基で置換されるアリール基;
を表わす。
【0105】
本発明に係る方法を実施するために優先的に使用されるフッ化アンモニウム及びフッ化ホスホニウムは、式(III)に対応するカチオンを有し、ここでWは窒素またはリン原子であり、同一であるかまたは異なるものであってよいR
2、R
3、R
4及びR
5は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基及びベンジル基から選択される。
【0106】
より具体的な例として、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化メチルトリ(n−ブチル)アンモニウム、フッ化N−メチル−N,N,N−トリオクチルアンモニウム、フッ化トリメチルフェニルホスホニウム、フッ化テトラブチルホスホニウム、フッ化メチルトリ(n−ブチル)ホスホニウム、フッ化メチルトリ(イソブチル)ホスホニウム及びフッ化ジイソブチル−n−オクチルメチルホスホニウムに言及することができる。フッ化テトラブチルアンモニウム(R
2=R
3=R
4=R
5=ブチル及びW=N)及びフッ化テトラブチルホスホニウム(R
2=R
3=R
4=R
5=ブチル及びW=P)が優先的に選択される。
【0107】
フッ化イミダゾリウム及びフッ化ピリジニウムは、フッ化物アニオンを提供する塩であり、そのカチオンはそれぞれ下記式(IV)または(V)
【化7】
に対応し、式中
− R
6基は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、
− R
7基は、水素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、
− R
8基は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、
− R
9基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表わす。
【0108】
式(IV)及び(V)に対応するカチオンの中でも、1−アルキル−2,3−ジメチルイミダゾリウム(R
6=C
1〜C
20アルキル、R
7=R
8=メチル)、1−アルキル−3−メチルイミダゾリウム(R
6=C
1〜C
20アルキル、R
7=H、R
8=メチル)及び1−アルキルピリジニウム(R
9=C
1〜C
6アルキル)カチオンが好ましい。
【0109】
フッ化イミダゾリウムのより具体的な例としては、フッ化1−アルキル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、例えばフッ化1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、フッ化1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムまたはフッ化1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム;四ホウフッ化1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、四ホウフッ化1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム;フッ化1−アルキル−3−メチルイミダゾリウム、例えばフッ化1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、フッ化1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、フッ化1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、フッ化1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、フッ化1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、フッ化1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム、フッ化1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムまたはフッ化1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム;六リンフッ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、六リンフッ化1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、六リンフッ化1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム;四ホウフッ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、四ホウフッ化1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムに言及することができる。好ましいフッ化イミダゾリウムは、六リンフッ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム及び四ホウフッ化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである。フッ化ピリジニウムのより具体的な例としては、1−アルキルピリジニウム塩、例えばフッ化1−エチルピリジニウム、フッ化1−ブチルピリジニウム、フッ化1−ヘキシルピリジニウム;六リンフッ化1−ブチルピリジニウム、六リンフッ化1−ヘキシルピリジニウム;四ホウフッ化1−ブチルピリジニウム、四ホウフッ化1−ヘキシルピリジニウムに言及することができる。
【0110】
本発明は、塩化物または臭化物である前記フッ化イオニウムのハロゲン化前躯体の使用を網羅しており、対応するフッ化物は、場合によって、先に定義した通りの金属フッ化物、好ましくはフッ化カリウムとの反応によってインサイチュで形成される。
【0111】
本発明に係る方法は、以上で定義したフッ化物アニオンを提供するさまざまな塩の混合物を使用することによって実施可能である。詳細には、フッ化カリウムなどの金属フッ化物と先に定義した通りのフッ化オニウムの混合物を使用することが有利である。この場合、フッ化オニウムの量は、式(I)の有機化合物との関係において表わした場合1mol%〜10mol%を占めていてよい。
【0112】
本発明の方法の一変形形態によると、少なくとも1つのフッ化物アニオンを提供する前記塩と前記式(I)の化合物の間の、交換反応と呼ばれる反応は、80℃〜250℃、好ましくは100〜170℃の間の温度で実施される。
【0113】
有利には、反応は、100℃以上の温度で実施される。意外なことに、温度がそれより低い場合、競合的加水分解反応が主に観察され、フッ素化有機化合物の合成に向かう選択度が低下する可能性がある。
【0114】
好ましくは、温度は200℃未満である。好ましくは、水性媒質中、反応温度は190℃未満、好ましくは170℃未満そしてより好ましくは150℃未満である。
【0115】
一変形形態によると、出発有機化合物(I)は反応温度において液体または固体形態である。
【0116】
本発明に係る方法によると、少なくともフッ化物アニオンを提供する前記塩と、塩素、臭素及び塩素と臭素の混合物から選択される少なくとも1つのハロゲン原子Xを含む少なくとも式(IA)の前記ハロメチルピラゾール化合物との反応は、水性媒質中で実施される。
【0117】
本発明の目的のためには、「水性媒質」という用語は、単一の水相(単相媒質)または液体水相及び水相と不混和性である液体有機相を含む2相媒質を含んでいてよい媒質を意味するように意図される。本発明によると、前記反応を単相水性媒質中で実施する変形形態が好ましい。単相水性媒質の中でも、本発明は2つの変形形態、即ち(a)唯一の反応溶媒としての水、及び(b)反応溶媒としての水が水混和性有機溶媒の存在下にある媒質を網羅している。
【0118】
有利には、本発明に係る方法は、単相または2相媒質(更には多相媒質)中で実施されるが、気相の物質を全く含まない。反応は、液体/液体または液体/固体媒質中で実施されてよい。
【0119】
好ましくは、水/フッ化物アニオンモル比は1〜20、好ましくは1〜10、そして好ましくは1.2〜5である。1.2以上のH
2O/M’F比が、フッ素化有機化合物(II)の合成に向かう選択度を改善できることも観察されている。好ましくは、1.2〜10、好ましくは1.2〜5のH
2O/M’F比、詳細にはH
2O/KF比が使用される。
【0120】
本発明の一実施形態によると、使用される試薬、即ち少なくとも前記少なくとも1つのフッ化物アニオンを提供する塩及び前記式(IA)のハロメチルピラゾール化合物は、ハロゲン原子X1個あたり1〜20、好ましくは4〜10モル当量のフッ化物アニオンが使用されることになる割合で用いられる。
【0121】
前記有機溶媒は有利には、アルコール、芳香族化合物、塩素化化合物、例えばジクロロエタン、塩素化芳香族化合物、エステル官能基を有する化合物、5〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルカン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、アジポニトリル、アセトニトリル及びそれらの任意の混合物の中から選択される。アルコールの中では、前記溶媒は、1〜5個の炭素原子を有する脂肪族第1級アルコール、詳細にはメタノール及びエタノールから優先的に選択される。水性−アルコール媒質を形成するための水との混合物としてのアルコール混合物も同様に有利である。水と優先的に混合される溶媒として使用される芳香族化合物の中では、クロロベンゼン、ジシクロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クレゾール及びアニソールが好ましい。水と優先的に混合される溶媒として使用されるアルカンの中では、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカン、デカリン、ヘプタン及び石油留分が好ましい。前記特定の態様の実施のために使用される有機溶媒の量は、水/溶媒重量比が10/90〜98/2となる量である。
【0122】
有利には、フッ化物イオンを提供する塩が化学量論的余剰で使用される。典型的には、優れた選択度を得るために余剰のフッ化カリウムを使用してよい。好ましくは、有機化合物(I)(1モル当量)との関係において2モル当量超、更に好ましくは5モル当量超の余剰のフッ化物イオンを提供する塩(詳細にはKF)が使用される。
【0123】
前記交換反応は、大気圧下または試薬の自己圧力下、優先的には大気圧下で実施される。反応条件は、加水分解反応を犠牲にしてフッ素化反応を促進するように最適化される。
【0124】
好ましくは、反応圧力は大気圧(およそ101 325Pa)である。
【0125】
1つの特定の実施形態によると、前記反応は、好ましくは、7メガパスカル(MPa)(およそ70バール)未満、好ましくは5メガパスカル(MPa)(およそ50バール)未満、そしてより好ましくは2メガパスカル(MPa)(およそ20バール)未満の圧力で実施される。より好ましくは、反応は、1メガパスカル(MPa)(およそ10バール)未満、そしてより好ましくは0.5メガパスカル(MPa)(およそ5バール)未満の圧力で実施される。詳細には、反応は、上述の圧力より低い自己圧力下で実施されてよい。
【0126】
交換反応は、一般に、好ましくは不活性ガスの制御された雰囲気下で実施される。希ガス、好ましくはアルゴンの雰囲気を確立することができるが、窒素を使用するのがより経済的である。
【0127】
試薬は、異なる変形形態に従って任意の順序で導入可能であるが、一部の順序が選好される。1つの好ましい実施形態は、任意にはすでに溶媒が添加されている水と、本明細書中で以上に定義づけした少なくとも1つのフッ化物アニオンを提供する少なくとも1つの塩、例えばフッ化カリウムとを混合することからなる。この混合物は、80〜250℃、好ましくは100〜170℃の所望の反応温度まで加熱され、次に前記式(I)の化合物が前記混合物中に導入される。反応混合物は有利には、加熱が維持される期間全体を通して撹拌される。式(I)の化合物は、水中または前記有機溶媒中または水−溶媒混合物中に溶解した状態で純粋な形で導入される。前記式(I)の化合物は、一度に全てまたは分量で漸進的に導入可能である。本発明に係る方法の前記第1の変形形態の別の好ましい実施形態は、少なくとも前記少なくとも1つのフッ化物アニオンを提供する塩と前記式(I)の化合物を、任意にはすでに有機溶媒が添加されている水中に同時に導入し、その後所望の反応温度まで前記反応混合物を加熱することからなる。
【0128】
水性媒質中で実施される本発明の方法の1つの特定の実施形態によると、pHは有利には、反応中に3〜9の間に調整される。pHの調整は、特に無水酸、例えばフッ化水素酸あるいは塩基性水溶液、例えばKOHまたはNaOHを含む溶液を用いて実施されてよい。
【0129】
反応混合物の加熱は、可変的時間中維持される。好ましくは、反応混合物の加熱は、30分〜48時間、より好ましくは1時間〜10時間、更により好ましくは1〜5時間維持される。
【0130】
反応媒質を選択した温度に維持した後、反応の終りで式(II)のフッ素化有機化合物が得られる。
【0131】
例えばフルオロメチルピラゾール化合物(IIA)については、フッ素化有機化合物は、使用される出発有機化合物の形態に応じて優先的に酸形態、エステル化形態または塩化形態で得られる。前記フッ素化有機化合物(II)または式(IIA)のフルオロメチルピラゾールは、フッ素化すべきフラグメント中に存在するフッ素原子[フルオロメチルピラゾール(IIA)について:式(IA)のハロメチルピラゾール化合物により担持されているCHqXiF
(3-q-i)]よりも多いフッ素原子[フルオロメチルピラゾール(IIA)について:CHqXrF
(3-q-r)]をフッ素化されたフラグメント中に含む。
【0132】
式(II)のフッ素化有機化合物には、当業者にとって公知の従来の技術の何れかに従って、例えば液体−液体抽出とそれに続く結晶化または蒸留による精製によって、反応混合物から回収される。式(II)のフッ素化有機化合物を回収するための分離技術は(特にそれが塩化形態である場合)、例えば国際公開第2010/03986号パンフレット中に記載されている。
【0133】
水性媒質または水性−有機媒質中で実施される本発明の方法は、有利には、反応媒質による腐食に耐えることのできる設備内で実施される。好ましくは、前記設備の製造材料は、グラファイト材料及びフルオロポリマー及びそれらの誘導体から選択される。フルオロポリマーの中では、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)及びPFA(ペルフルオロアルキル樹脂)が、本発明の方法を実施するために極めて好適である。炭化ケイ素誘導体も同様に好適である。それが好ましいというわけではないが、Hastelloy(登録商標)ブランドで販売されているモリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素及びタングステンをベースとする合金、またはInconel(登録商標)の名称で販売されている銅及び/またはモリブデンが添加されたニッケル、クロム、鉄及びマンガンの合金、より詳細にはHastelloy C276またはInconel600、625または718合金を使用することも同様に可能である。
【0134】
ステンレス鋼、例えばオーステナイト鋼[Robert H.Perryら、「Perry’s Chemical Engineers’ Handbook」、第6版(1984)、pages23〜44]そしてより詳細には304、304L、316または316Lステンレス鋼が選択される場合もある。多くとも22重量%、好ましくは6%〜20%そしてより好ましくは8%〜14%のニッケル含有量を有する鋼が使用されている。
【0135】
304及び304L鋼は、8%〜12%で変動するニッケル含有量を有し、316及び316L鋼は10%〜14%で変動するニッケル含有量を有する。
【0136】
前記少なくとも1つのフッ化物アニオンを提供する塩と前記式(I)、例えば式(IA)の化合物の間の交換反応と呼ばれる反応は、水に加えてDMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、スルホラン、DMI(ジメチルイミダゾリジノン)、アジポニトリル、アセトニトリル、ホルムアミド、トルエン、キシレン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンから優先的に選択される有機溶媒を含む2相媒質の存在下で、実施可能である。
【0137】
一変形形態によると、前記塩と例えば式(IA)の前記化合物(I)を含む単相または2相水性媒質/有機溶媒反応媒質中で使用される例えば式(IA)の化合物(I)の量は、例えば式(IA)の前記化合物(I)の重量濃度が、前記極性非プロトン性溶媒の総重量との関係において1重量%〜50重量%、好ましくは20重量%〜40重量%となる量である。
【0138】
利用される試薬、即ち少なくとも前記少なくとも1つのフッ化物アニオンを提供する塩及び少なくとも前記例えば式(IA)の化合物(I)は、存在するNu基1個あたりそして存在するNu基が全てハロゲン原子である場合、存在するハロゲン原子1個あたり1〜20、好ましくは1〜2モル当量のフッ化物アニオンが使用されることになる割合で、使用される。
【0139】
試薬は、異なる変形形態に従って任意の順序で導入可能であるが、一部の順序が選好される。詳細には、1つの好ましい実施形態は、純粋なまたは反応溶媒中に溶解した状態で存在する例えば式(IA)の化合物(I)を、前記溶媒中の少なくとも前記フッ化物アニオンを提供する少なくとも1つの塩の懸濁液または溶液中に導入することからなり、前記懸濁液または溶液は、選択された反応温度まで予め加熱されている。反応混合物の加熱は、有利には、2〜20時間、優先的には2〜10時間の範囲内の時間維持される。
【0140】
反応媒質を選択された温度に維持した後、使用される式(IA)の化合物の形態に応じて優先的に酸形態、エステル化形態または塩化形態の例えば式(IIA)のフッ素化有機化合物(II)が、反応の終りで得られる。フッ素化有機化合物(II)は、当業者にとって公知の従来の技術の何れかに従って、例えば液体−液体抽出または塩(余剰のフッ化物)の濾過後の結晶化により、反応混合物から回収される。
【0141】
本発明に係る方法は、有利には、水性溶媒/有機溶媒反応混合物による腐食に耐えることができる設備内で実施可能である。
【0142】
本発明の方法は、連続的にまたはバッチモードで実施されてよい。
【0143】
水性媒質内で実施される本発明に係る方法は、反応混合物を高温に加熱する必要がないことから、きわめて有利である。
【0144】
本発明の例示的実施形態を以下に記す。これらの実施例は、非限定的な例として示される。実施例中では、得られる収量が規定されており、前記収量は、使用される酸形態またはエステル化形態のフッ素化有機化合物(II)のモル数と酸形態またはエステル化形態の化合物(I)のモル数との比に対応している。
【実施例】
【0145】
実施例1:
ラシュトン撹拌器が備わった完全撹拌式PTFE反応装置内で、水(18g;1mol)中のフッ化カリウム(23.2g;0.4mol)の溶液を120℃の温度に加熱する。エチル3−(ジクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(4.74g;20mmol)を、この温度で純粋な状態で添加し、撹拌を5時間維持する。次に温度を周囲温度に戻し、相を分離する。収穫した有機相(wt=3.4g)のNMR分析により、エチル3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキシレートの濃度が87重量%であることがわかる。フッ素化反応の収量は84%である。
【0146】
実施例2
ラシュトン撹拌器が備わった完全撹拌式PTFE反応装置内で、フッ化カリウム(23.2g;0.4mol)と水(18g;1mol)と3−(ジクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(3.52g;20mmol)の溶液を、3時間、120℃の温度に加熱する。周囲温度に戻した後、媒質を酢酸エチル(100ml)で抽出する。有機相を回収し、媒質を、同量の酢酸エチルを用いて更に2回抽出する。その後、有機相を組合せ、次に真空(P=300mbar)下で濃縮する。94重量%の3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸を含む油(wt=2.58g)を得る。フッ素化反応の収量は69%である。
【0147】
実施例3:
ラシュトン撹拌器が備わった完全撹拌式PTFE反応装置内で、水(18g;1mol)中のフッ化カリウム(23.2g;0.4mol)の溶液を120℃の温度に加熱する。エチル3−(トリクロロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(5.42g;20mmol)を、この温度で純粋な状態で添加し、撹拌を9時間維持する。次に温度を周囲温度に戻し、相を分離する。収穫した有機相(wt=4.1g)のNMR分析により、エチル3−(トリフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキシレートの濃度が64重量%であることがわかる。フッ素化反応の収量は57%である。
【0148】
実施例4〜12
試薬の量、性質及び作業条件を下表に記す。一般的手順は以下の通りである:
4枚羽根の撹拌器スピンドルの備わった恒温反応装置に、フッ化カリウムと水を投入する。混合物全体を、撹拌しながら所望の温度に加熱する。有機化合物をこの温度で添加する。この温度で下表に示された時間、媒質を撹拌し続ける。周囲温度に戻した後、媒質をプロトン及びフッ素NMRによって分析する。当量数はモル単位で示されている。
【0149】
【表1】