(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969601
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】押し出し機構を備えた多機能筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/18 20060101AFI20160804BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
B43K24/18 E
B43K29/02 D
【請求項の数】27
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-514546(P2014-514546)
(86)(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公表番号】特表2014-519428(P2014-519428A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】US2012040867
(87)【国際公開番号】WO2012170397
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2014年2月14日
(31)【優先権主張番号】13/156,807
(32)【優先日】2011年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500195219
【氏名又は名称】エイ.ティー.エックス. インターナショナル, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】A.T.X. International, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リーキー,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】キングスリー,ラモン ティー.
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−109591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 24/00−24/18
B43K 27/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多機能筆記具であって、
筆記チップ側開口部を備えたフロント部と、
前記フロント部内部に保持され、前記筆記チップ側開口部から使用位置への伸張のために交互に選択される少なくとも三本の筆記チップであって、うち一本が鉛筆芯チップである筆記チップと、
消しゴム側開口部を備え、前記フロント部に互いに回転可能に結合されたリア部と、
前記リア部に移動可能に設けられ、前記消しゴム側開口部からの伸張のために選択可能であり、消しゴムフォロワを備える消しゴムホルダと、
前記消しゴムホルダに取り付けられた消しゴムと、
前記フロント部に設けられ、複数の溝を備えるガイドと、
各カムフォロワが前記複数の溝のうちの少なくとも1つにスライド可能に取り付けられ、各カムフォロワが筆記チップに結合された複数のカムフォロワと、
各カムフォロワを前記消しゴム側開口部に向かって付勢するための手段と、
前記ガイドに回転可能に結合され、第1カム面と第2カム面とを具備したカムアセンブリとを備え、
前記第1カム面が、前記ガイドに対して前記カムアセンブリが回転すると、前記カムフォロワに係合するための第1カム頂点を具備する第1カム軌道を備え、前記第1カム頂点が、前記筆記チップ側開口部に向かって前記カムフォロワを付勢することで、前記カムフォロワに結合された筆記チップが、前記筆記チップ側開口部を貫通し、前記第2カム面が、前記ガイドに対して前記カムアセンブリが回転すると、前記カムフォロワに係合するための第2カム頂点を具備する第2カム軌道を備え、前記第2カム頂点が、前記消しゴム側開口部に向かって前記消しゴムフォロワを付勢することで、消しゴムはガイドに関連するカムアセンブリの回転に伴って消しゴム側開口部を通過し、前記消しゴムフォロワに結合された消しゴムが、前記消しゴム側開口部を貫通し、
鉛筆芯チップに結合された前記カムフォロワが、前記第1カム頂点によって付勢された時に、相対的な回転を防止するために前記ガイド及び前記カムアセンブリを互いにロックするための手段とを備える多機能筆記具。
【請求項2】
前記第1カム頂点が前記第2カム頂点と位置合わせされる請求項1記載の多機能筆記具。
【請求項3】
相対的な回転を防止するために前記ガイド及び前記カムアセンブリを互いにロックするための前記手段が、前記ガイドの外面から伸びるガイド突出部と前記カムアセンブリに形成されたスロットとを備え、前記カムアセンブリが、前記ガイドに回転可能に設けられ、該ガイドの軸方向にスライド可能であり、前記ガイド突出部が、鉛筆芯チップに結合された前記カムフォロワが前記第1カム頂点によって付勢される時に、前記スロットにスライド可能に係合するような形状及びサイズを有する請求項1記載の多機能筆記具。
【請求項4】
前記第1カム頂点が第1長手方向平面上に位置し、前記第2カム頂点が第2長手方向平面上に位置し、前記第1長手方向平面及び前記第2長手方向平面が互いに平行である請求項1記載の多機能筆記具。
【請求項5】
前記第1カム軌道がさらに、第1傾斜軌道と、短尺の第2傾斜軌道と、前記第2傾斜軌道から伸びる短尺の鉛直方向軌道と、前記第1傾斜軌道及び前記短尺の第2傾斜軌道に結合された周方向軌道とを含み、該周方向軌道が複数の陥凹と各陥凹間のリッジを含み、前記第1傾斜軌道と前記短尺の鉛直方向軌道とを結合する前記第1カム頂点を備え、
前記第2カム軌道がさらに、傾斜縁部と鉛直方向の直線状縁部とを含み、前記第2カム頂点が、傾斜縁部と鉛直方向の直線状縁部との間に位置する請求項1記載の多機能筆記具。
【請求項6】
多機能筆記具であって、
筆記チップ側開口部を備えたフロント部と、
前記フロント部内部に保持され、前記筆記チップ側開口部から使用位置への伸張のために交互に選択される少なくとも一対の筆記チップであって、うち一本が鉛筆芯チップである筆記チップと、
消しゴム側開口部を備え、前記フロント部に互いに回転可能に結合されたリア部と、
前記リア部に移動可能に収容され、前記消しゴム側開口部からの伸張のために選択可能であり、消しゴムフォロワを備える消しゴムホルダと、
前記消しゴムホルダに取り付けられた消しゴムと、
前記筆記チップ側開口部から前記鉛筆芯チップを押し出し、この押し出し動作によって前記リア部を前記フロント部に対して回転させ、前記消しゴム側開口部から前記消しゴムを押し出す押し出し機構と、を備え、
前記押し出し機構が、さらに
前記フロント部に結合され、第1ガイド端部と第2ガイド端と、第1ガイド端部と第2ガイド端との間の複数の溝とを備えるガイドと、
各カムフォロワが前記複数の溝のうちの少なくとも1つにスライド可能に取り付けられ、各カムフォロワが筆記チップに結合された複数のカムフォロワと、
各カムフォロワを前記消しゴム側開口部に向かって付勢するための手段と、
前記消しゴムホルダに取り付けられた消しゴムフォロワと、
前記ガイドに回転可能に結合され、前記カムフォロワに係合するための第1カム頂点を具備する第1カム軌道を備え、前記ガイドに対する回転に伴い、前記筆記チップ側開口部に向かって前記カムフォロワを付勢することで、前記カムフォロワに結合された筆記チップが、前記筆記チップ側開口部を貫通して使用位置まで達する第1カムと、
前記ガイドに回転可能に結合され、前記消しゴムフォロワに係合するための第2カム頂点を具備する第2カム軌道を備え、前記ガイドに対する回転に伴い、前記消しゴム側開口部に向かって前記消しゴムフォロワを付勢することで、前記消しゴムフォロワに結合された消しゴムが、前記消しゴム側開口部を貫通して使用位置まで達する第2カムとを備えることを特徴とする、多機能筆記具。
【請求項7】
前記第1カム頂点が前記第2カム頂点と位置合わせされる請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項8】
前記第1カム及び前記第2カムが、互いに結合されている請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項9】
前記第1カム及び前記第2カムが、筒状中空体の一部をなす請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項10】
前記筒状中空体が、第1開口部と、該第1開口部と対向する第2開口部とを備える請求項9記載の多機能筆記具。
【請求項11】
さらに、鉛筆芯チップに結合された前記カムフォロワが、前記第1カム頂点によって付勢された時に、相対的な回転を防止するために前記ガイド及び前記第1カムを互いにロックするための手段も備える請求項9記載の多機能筆記具。
【請求項12】
相対的な回転を防止するために前記ガイド及び前記第1カムを互いにロックするための前記手段が、第1ガイド端部近傍の前記ガイドの外面から伸びるガイド突出部と、前記筒状中空体の第1開口部からオフセットされたスロットとを備え、前記筒状中空体が前記ガイドに回転可能に取り付けられ軸方向にスライド可能であり、前記ガイド突出部が、鉛筆芯チップに結合された前記カムフォロワが前記第1カム頂点によって付勢される状況では、前記スロットにスライド可能に係合するような形状及びサイズを有する請求項11記載の多機能筆記具。
【請求項13】
前記筒状中空体が前記リア部に収容される請求項9記載の多機能筆記具。
【請求項14】
前記第1カムが、前記筒状中空体の内面から伸びる請求項9記載の多機能筆記具。
【請求項15】
前記第1カム頂点が第1長手方向平面上に位置し、前記第2カム頂点が第2長手方向平面上に位置し、前記第1長手方向平面及び前記第2長手方向平面が互いに平行である請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項16】
前記ガイドが、前記第1カムに回転可能に取り付けられる請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項17】
前記第1カム軌道がさらに、第1傾斜軌道と、短尺の第2傾斜軌道と、前記第2傾斜軌道から伸びる短尺の鉛直方向軌道と、前記第1傾斜軌道及び前記短尺の第2傾斜軌道に結合された周方向軌道とを含み、該周方向軌道が、複数の陥凹と各陥凹間のリッジを含み、前記第1傾斜軌道と前記短尺の鉛直方向軌道とを結合する前記第1カム頂点を備える請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項18】
前記第2カム軌道がさらに、傾斜縁部と鉛直方向の直線状縁部とを含み、前記第2カム頂点が、前記傾斜縁部と前記鉛直方向の直線状縁部との間に位置する請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項19】
前記溝が、前記第1ガイド端部近傍の第1隔壁と前記第2ガイド端近傍の第2隔壁との間に位置し、第2隔壁が複数の開口部を備え、各開口部が一の溝と位置合わせされる請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項20】
前記ガイドの前記溝が、周方向に互いに等間隔をなしている請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項21】
前記第1ガイド端部がT字状の開口部を備える請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項22】
前記溝が、前記ガイドの外面の溝縁部によって規定される上部開口部を備える請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項23】
各カムフォロワが、前方台座と、底部壁と、上部壁と、前記カムフォロワの前記上部壁からオフセットされた段差を有する隆起外形部とを備え、該隆起外形部が、前記前方台座から、前記溝の前記溝縁部上方の開口部を貫通して伸びる請求項22記載の多機能筆記具。
【請求項24】
スプライン結合が、前記ガイドの前記第1ガイド端部に前記消しゴムホルダを結合させる請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項25】
前記消しゴム側開口部からの前記消しゴムの押し出しが、前記筆記チップ側開口部からの前記鉛筆芯の押し出しと略同時に行われる請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項26】
さらに複数のホルダを備え、各ホルダが第1端部と第2端部とを具備し、前記第1端部が前記カムフォロワの一に結合され、前記第2端部が前記筆記チップの一つに結合される請求項6記載の多機能筆記具。
【請求項27】
多機能筆記具の押し出し機構であって、
前記多機能筆記具のフロント部に結合可能とするのに適した形状としたガイドを備え、該ガイドが、第1ガイド端部と、第2ガイド端部と、前記ガイドの中心軸に位置合わせされ、前記第1ガイド端部と前記第2ガイド端部との間を伸びる複数の溝とを備え、
さらに、各カムフォロワが、前記複数の溝の少なくとも一にスライド可能に設けられ、各カムフォロワが、筆記チップに結合可能となるような形状とした複数のカムフォロワと、
各カムフォロワを第2ガイド端部に向かって付勢する手段と、
前記多機能筆記具のリア部に移動可能に収容されるのに適した形状とした消しゴムホルダと、
前記消しゴムホルダに結合された消しゴムフォロワと、
前記ガイドに回転可能に結合され、前記ガイドに対する第1カムの回転に伴い、前記カムフォロワに係合するための第1カム頂点を具備する第1カム軌道を備え、前記筆記チップ側開口部に向かって前記カムフォロワを付勢することで、前記カムフォロワに結合された筆記チップが、前記筆記チップ側開口部を貫通して使用位置まで達する第1カムと、
前記ガイドに回転可能に結合され、前記ガイドに対する前記第1カムの回転に伴い、前記消しゴムフォロワに係合するための第2カム頂点を具備する第2カム軌道を備え、前記消しゴム側開口部に向かって前記消しゴムフォロワを付勢することで、前記消しゴムフォロワに結合された消しゴムが、前記消しゴム側開口部を貫通して使用位置まで達する第2カムを備える多機能筆記具の押し出し機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には筆記具の分野に関し、特に独立して選択可能な複数の
筆記チップを備えて構成された新規かつ有用な筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
多機能筆記具は、同一の筆記具中において、筆記チップの複数の選択肢を利用者に提供することで、持ち運びすべき筆記具の数を減少させる。
【0003】
代表的な多機能筆記具は、インキ式チップと鉛筆型チップを内包している。鉛筆型チップの最大限の利用は、通常筆記具に固定された消しゴムを使用することで実現する。消しゴムは、もっぱら鉛筆型チップとの関連で使用されるため、消しゴムは、一般的に使用時以外にはカバーをかけるか、又は常時露出している。
【0004】
カバーを用いた方法の一例は、スクリューキャップ式の消しゴムカバーの使用である。スクリューキャップ式のカバーでは、筆記具の使用にさらに余分な手順が必要になるため、このカバーの使用の楽しさ及び有用性が減じられる。また、カバーは独立した部品であり、紛失しやすく、筆記具の美観及びスタイルに悪影響を与える。
【0005】
過去において、単一の筆記用カートリッジのみを備えた筆記具であって、筆記チップと消しゴムが、筆記具の反対側に配した開放端からそれぞれ同時に繰り出し及び引き込みを行う筆記具が提案された。このような筆記具は、例えば特許文献1で開示されている。複数のカートリッジと消しゴムとを備えた筆記具を提案したものもあり、消しゴムは、筆記チップの繰り出しと全く協調することなく繰り出される。このような筆記具は、例えば特許文献2で開示されている。
【0006】
しかし、上記の先行技術の筆記具の構成は、複雑であり、多機能筆記具において鉛筆型チップと消しゴムとの繰り出し及び引き込みを同時に行うための出没機構を提供できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4221490号
【特許文献2】米国特許第5890825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、本発明の目的は、鉛筆型チップが使用される状態に選択されている時に限り繰り出される自動繰り出し式消しゴムを備えた多機能筆記具を提供することにある。これによって、多機能筆記具が、消しゴムの利用可能時点を利用者の要請に合わせることができる。
【0009】
本発明のさらなる目的は、多機能筆記具の両端から、鉛筆型チップと消しゴムとの繰り出し及び引き込みを同時に行うことが可能であり、比較的単純で安価な出没機構を備えた多機能筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、上部胴及び下部胴のような相補的な本体を備える本発明の多機能筆記具が提供され、シャープペンシル及びボールペン、マーキング以外の用途の鉄筆、万年筆、ローリングボールペン、又はフェルトチップマーカー、或いは他のタイプのマーキング具として使用するための単一の筆記具を形成するために上部胴及び下部胴が結合される。下部胴は、鉛筆部を含めたシャープペン要素と、1つ以上のインクカートリッジ、さらには、例えば鉄筆のような他のタイプのマーキング具を保持するためのチャンバーを備える。鉛筆の筆記チップ及びインクカートリッジは、下部胴側筆記チップの開口から一本ずつ
伸張可能である
。
【0011】
下部胴の非筆記チップ側の端部は開放されており、上部胴に回転可能に結合するためのスリーブを形成する。上部胴は、筆記チップ側開口部と反対側の自由端部に消しゴム側開口部を備える。消しゴムを保持するための消しゴムホルダは、上部胴に移動可能に収容されている。消しゴムホルダは、消しゴムホルダ上に突起の形状の消しゴムフォロワを備える。消しゴムホルダは、好ましくは消しゴムと柄を保持するための取付部を含む。上部胴に取り付けられる消しゴムホルダバネは、消しゴムホルダを消しゴム側開口部から離間する方向に付勢する。
【0012】
筆記チップ側開口部からの鉛筆芯の
筆記チップの押し出しと、上部胴の消しゴム側開口部からの消しゴムの押し出しとを同時に行うための手段が、筆記具の胴に収容されている。
この押し出しのための手段は、下部胴に結合されたガイドを含む。ガイドは、第1ガイド端部と第2ガイド端部とを備える。ガイドは、ガイドの中心軸に位置合わせされ、第1ガイド端部と第2ガイド端部との間に伸びる複数の溝を含む。
【0013】
カムフォロワが溝の各々にスライド可能に取り付けられている。カムフォロワは、筆記具の胴に格納されているシャープペンシル器具等のリフィルホルダ又は鉛筆ホルダに結合されている。各カムフォロワは、筆記チッ
プに作動結合されている。付勢のための手段は、各カムフォロワを上部胴の消しゴム側開口部に向かって付勢する。好ましくは、付勢手段は、リフィルホルダの周囲に巻回され第1ガイド端部の内壁及びカムフォロワに当接する巻ばねを備える。
【0014】
第1カムは、ガイドに回転可能に結合されている。第1カムは、第1カム頂点を備えた第1カム軌道を含む。カムフォロワは、ガイドに対する第1カムの回転に伴い、第1カム軌道上を移動する。第1カム頂点は、カムフォロワバネの力に抗して、
筆記チップ側開口部に向かってカムフォロワを付勢する。第1カム頂点によって付勢されたカムフォロワに結合された筆記チップは、
筆記チップ側開口部を貫通して、使用位置に達する。第1カムは、カムフォロワに並進移動(translational movement、以下同様)をもたらし、今度はこのカムフォロワが、筆記具の長手軸に平行に、筆記チップを直線的に移動させる。
【0015】
第2カムもまた、ガイドに回転可能に結合されている。第2カムは、第2カム頂点を備える第2カム軌道を含む。消しゴムフォロワは、ガイドに対して第2カムが回転すると、第2カム軌道上を移動する。第2カム頂点は、消しゴムホルダバネの力に抗して消しゴム側開口部まで移動するように、消しゴムフォロワを付勢する。消しゴムホルダは並進移動の状態となり、この並進移動によって、消しゴムが消しゴム側開口部から突出する。
【0016】
消しゴムは、鉛筆の選択に伴い、消しゴム側開口部から突出する。下部胴に対する上部胴の回転に伴い、鉛筆が選択される。鉛筆芯チップが筆記チップ側開口部から突出すると、同時に消しゴムが消しゴム側開口部から突出する。
【0017】
多機能筆記具を操作するには、下部胴に対して上部胴を回転させる。回転によって、個別にインクリフィルと鉛筆芯の筆記チップの押し出しと引き込みが連続的に行われる。鉛筆芯のチップの押し出しに伴い、消しゴムが上部胴の開口部から突出する。それゆえ、鉛筆の筆記チップが押し出されている場合、すなわち、利用者が消しゴムを使用することを必要とする唯一のケースに限り、消しゴムが使用可能になる。
【0018】
本発明の特徴をなす新規性を有するさまざまな特徴が、添付され開示内容の一部となる請求項に個別に示される。本発明、その操作上の利点、及びその使用によって達成される特定の目的をより的確に理解するために、本発明の好適な実施形態を示した添付の図面及び説明事項を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図7】
図6の7−7線に沿って取った本発明のガイドの断面図。
【
図8】
図6の8−8線に沿って取った本発明のガイドの断面図。
【
図9】
図6の9−9線に沿って取った本発明のガイドの断面図。
【
図14】
図13の14−14線に沿って取った本発明のカムアセンブリの断面図。
【
図16】
図15の16−16線に沿って取った本発明のカムアセンブリの断面図。
【
図17】
図15の17−17線に沿って取った本発明のカムアセンブリの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、図面においては、同一又は同様の要素に言及するのに同様の符号が使用されるが、その図面を参照して、
図1、2及び3は、押し出し機構1を備えた多機能筆記具100の図を示す。
図1に示した多機能筆記具は、たとえば上部胴又はキャップであるリア部10と、たとえば下部胴であるフロント部20とを備える。
図2に組み立てられた状態で示した押し出し機構1は、下部胴20の筆記チップ側開口部27から鉛筆チップ2を、さらに、上部胴10の消しゴム側開口部11から消しゴム43を、それぞれ同時に押し出す。鉛筆チップ2と消しゴム43の同時の押し出しは、上部胴10を下部胴20に対して回転させることで引き起こされる。
【0021】
図2及び3を参照して、押し出し機構1は、上部胴10に収容されている。押し出し機構1は、ガイド50と、カムアセンブリ30と、カムフォロワ60と、消しゴムホルダ40とを含む。
【0022】
胴インサート21は、下部胴20の内部に同軸に設けられ、相対的な回転を防止するため、この下部胴に固定されている。胴インサート21は、下部胴20にガイド50を結合させている。胴インサート21は、中空筒体22と、ネック部23と、柄24と、上部開口部26と底部開口部25とを備える。ネック部23は、柄24より大きな内径を有する。ガイド50は、胴インサート21のネック部23と上部開口部26の中に受け入れられている。胴インサート21の内側の内向き突起(図示せず)は、胴インサート21の内側でガイド50を固定する。下部胴20と、ガイド50と、胴インサート21とは、相対的な動作を防止するよう固定されている。
【0023】
図4及び5を参照して、ガイド50は、本体51と、本体51の下端部に設けられたベース52と、本体の上端部に設けられたドラム56とを含む。本体51と、ベース52と、ドラム56とは心合わせされている。第1内壁53aは、本体51とベース52とを隔てる。第1内壁53aは、
図7及び8に示した複数の開口部54を有している。第2内壁53bは、本体51とドラム56とを隔てる。第1内壁53aと第2内壁53bとは、互いに対して平行である。
【0024】
ドラム56は、第2内壁53bの反対側に、開口部59を備える。
図9を参照して、開口部59は好ましくはT字状である。
図5及び6を参照して、突出部58がドラム56の外面に設けられている。突出部58は、好ましくは矩形状を有する。
【0025】
ガイド50の本体51の、第1内壁53aと第2内壁53bとの間には、複数の溝55が設けられている。各溝55は、本体51の外面の縁部55aによって規定される上部開口部を有する。溝55は、本体51の長手軸周りに、周方向に互いに等間隔に離間している。溝55は、第1内壁53aの開口部54と位置合わせされている。
【0026】
ガイド50のベース52は、胴インサート21のネック部23に設けられている。複数の溝57が、ベース52の内面に形成されている。各溝57は、第1内壁53aの開口部54と位置合わせされている。
【0027】
ガイド50は、プラスチックから形成された単一の成形部品を含むとしてもよい。
【0028】
鉛筆ホルダ4(
図2及び3参照)は、鉛筆2を押し出し機構1に結合する。鉛筆ホルダ4は、シャープペンで使用されるような一般的なタイプのホルダである。
図10に示したリフィルホルダ5は、インクリフィル3又は他のタイプのマーキング具、たとえば鉄筆を押し出し機構1に結合する。
【0029】
図1乃至3を参照して、カムフォロワ60は、ガイド50の溝55にスライド可能に取り付けられている。各ホルダ4,5は、第1内壁53aの位置合わせされた開口部54を貫通し、ベース52の内面に設けられた溝57にスライド可能に係合する。
図11を参照して、各カムフォロワ60は、前方台座61と、この前方台座61から伸びる隆起外形部62と、開口部66を備える底部壁64と上部壁65とを含む。隆起外形部62は、段差63を備える。段差63は、カムフォロワ60の上部壁65からオフセットされる。段差63は、上部壁65の平面とは異なり、その下方にある平面上に位置している。開口部66は、鉛筆ホルダ4又はリフィルホルダ5の端部にカムフォロワ60を結合するためにその端部を収容する。
【0030】
鉛筆カムフォロワ60は、鉛筆ホルダ4に結合される。鉛筆カムフォロワ60と、この鉛筆カムフォロワ60がスライド可能に設けられる溝55は、いずれもガイド50の突出部58に位置合わせされる。突出部58は、好ましくは鉛筆カムフォロワ60を収容する溝55の上端の近傍に位置する。他のカムフォロワ60はそれぞれ、リフィルホルダ5に結合される。
【0031】
カムフォロワ60の隆起外形部62は、縁部55aの上方の溝55の開口部から伸びている。
【0032】
図3を参照して、各溝55にはガイドバネ70が設けられている。ガイドバネ70は、好ましくはらせん状であり、芯ホルダ4又はリフィルホルダが中央の開口部を通過するのを可能にするのに合わせた形状とされている。ガイドバネ70は、カムフォロワ60の底部壁64と第1内壁53aとの間を付勢するように装着されている。ガイドバネ70は、カムフォロワ60を消しゴム側開口部11の方向に付勢することで、カムフォロワ60の上部壁65が第2内壁53bに当接する。
【0033】
図12乃至17を参照して、カムアセンブリ30は、筒状中空体31と、前向きカム33(
図14及び16に示したも
の、本明細書では第1カムとも言う。)と、後向きカム32
(本明細書では第2カムとも言う。)とを備える。筒状中空体31は、上部開口部34と、底部開口部35と、筒状中空体31の外面に形成された周溝36とを備える。上部開口部34は、ガイド50の突出部58を収容するのに合わせた形状とされたスロット34aを含む。中空体31の上端は、後向きカム32の近傍において、上縁部38を備える湾曲壁面37を含む。
【0034】
後向きカム32は、湾曲壁面37の上縁部38から伸びる。後向きカム32は、傾斜縁部32aと、上縁部38に垂直な垂直直線縁部32bと、傾斜縁部32aと垂直直線縁部32bとの間に位置する頂点32cとを含み、上記全てが、消しゴムフォロワー44の移動に適した形状とした軌道を規定する。
【0035】
前向きカム33は、中空体31の内部に設けられている。前向きカム33は、好ましくは中空体の内面と一体をなす。前向きカム33は、中空体31の内部に設けられた別体の部材とすることも可能である。
【0036】
前向きカム33は、カムフォロワ60の移動に適した形状とした結合軌道を含む。結合軌道は、第1傾斜軌道33aと、短尺の第2傾斜軌道33bと、第2傾斜軌道33bから伸びる短尺の鉛直方向軌道33cと、この第1傾斜軌道33aに短尺の鉛直方向軌道33cを結合させる頂点33dと、第1傾斜軌道33a及び短尺の第2傾斜軌道33bに結合された周方向軌道36eとを含む。周方向軌道36eは、複数、好ましくは3つとした陥凹33fを含む。リッジ33gが、各陥凹33fを隔てる。
【0037】
第1カムの軌道のピッチ、長さ及び方向が、第2カムの軌道のピッチ、長さ及び方向とは異なるようにすることで、消しゴムと筆記チップとの異なる移動を可能とする。
【0038】
後向きカムの頂点及び/又は前向きカムの頂点は、好ましくは平坦で直線状の縁部を有する。後向きカムの頂点及び/又は前向きカムの頂点は、5度乃至45度の回転角、より好ましくは5度乃至36度の回転角、最も好ましくは5度乃至24度の回転角を有する湾曲状の外形を有することも可能である。
【0039】
カムアセンブリ30は、ガイド50に回転可能に取り付けられ、軸方向にスライド可能である。ガイド50の突出部58は、カムアセンブリ30の上部開口部34のスロット34aとスライド可能に係合するような形状及びサイズとする。カムアセンブリ30は、突出部58がスロット34aに係合した状態では、ガイド50に対して回転しない。突出部58とスロット34aとの係合によって、カムアセンブリ30、さらにこれによって、上部胴10が軸方向前方にスライドし、鉛筆ホルダをノックすることで、筆記チップ側開口部27から鉛筆2を押し出すことが可能となる。
【0040】
図1及び
図3に示したリング46は、ガイド50がカムアセンブリ30の外側に抜け落ちるのを防止している。リング46は、ガイド50のドラム56の自由端部に固定されている。リング46は、カムアセンブリ30の上部開口部34内に嵌入しないようなサイズ及び寸法とする。それゆえ、ガイド50がカムアセンブリ30に対して下方に移動した場合には、リング46は、ガイド50と共に移動し、開口部34の外縁部に当接することで、ガイド50のこれ以上の軸方向の移動を防止する。
【0041】
カムアセンブリ30の上部開口部34に形成されたスロット34aは、前向きカム33の頂点33dに位置合わせされ、これと同一平面上に位置する。スロット34aは、後向きカム32の頂点32cにも、直径方向に位置合わせされている。
【0042】
図2を参照して、上部胴インサート12は、好ましくは密着させた圧着又はフリクション嵌合によって、上部胴10内に設けられているため、上部胴インサート12及び上部胴10は、固定され相対的な動作が防止されている。上部胴インサート12は、上部胴10に対してカムアセンブリ30を連結している。上部胴インサート12は、その両端に開口部を備えた中空体である。後向きカム32は、上部胴インサート12に回転可能に取り付けられている。
【0043】
図1を参照して、消しゴムホルダ40は、ガイド50のドラム56に回転不能に結合されている。
図18及び19に示したとおり、消しゴムホルダ40は、好ましくはスプライン結合を形成するように、ガイド50の開口部59と係合する。消しゴムホルダ40及びガイド50は、一緒に回転する。消しゴムホルダ40は、開口部59の軸方向に自由にスライドする。
図2に示した金環42は、消しゴムホルダ40の上端に固定されている。消しゴム43は金環42に取り付けられている。
【0044】
消しゴム43は、上部胴インサート12内に消しゴムが収容された引き込み位置から、消しゴム43が消しゴム側開口部11から
伸張された
伸張位置まで軸方向に移動する。消しゴムホルダ40は、消しゴムホルダ40の上端近傍の外面に設けられた消しゴムフォロワ44を備える。消しゴムフォロワ44は、ガイド50がカムアセンブリ30に対して回転すると、後向きカム32の軌道を移動することで、消しゴム43を引き込み位置から
伸張位置まで移動させる。消しゴム43の押し出しは、下部胴20の筆記チップ側開口部27からの鉛筆チップの押し出しと同時又は略同時に行われる。
【0045】
図1に示した消しゴムバネ45は、上部胴インサート12に収容される。消しゴムバネ45は、消しゴムホルダ40を引き込み位置に向けて付勢する。好ましくは、消しゴムバネ45は、金環42を収容する巻バネを含む。消しゴムバネ45の下端は、上部胴インサート12の内面に当接する。後向きカム32の作用を受ける場合を除き、消しゴムホルダ40は引き込まれている。
【0046】
ガイド50は、下部胴20に固定される。カムアセンブリ30は回転時において上部胴10に結合される。上部胴10に対する下部胴20の回転は、カムアセンブリ30に対するガイド50の回転によって、筆記具の作動を引き起こす。カムアセンブリ30がカムフォロワ60を付勢することで、カムフォロワ60がガイド溝55内を下部胴20の筆記チップ側開口部27の方向に移動することとなり、筆記チップを押し出す。上部胴10に対する下部胴20の回転は、所望のリフィル2、3が押し出されるまで続けられる。
【0047】
カムフォロワ60の段差63は、上部胴10に対して下部胴20を回転させると、前向きカム33の軌道上を移動する。段差63は、リフィル2、3の筆記チップが下部胴20の内部にある状況では、陥凹33fの中にある。上部胴10に対する下部胴20の回転に伴い、段差63は、陥凹33f上を移動する。さらなる回転に伴い、段差63は、頂点33dに到達しこれと当接するまで、第1傾斜部33aを登りつめる。頂点33dは、ガイド50の溝に収容されるガイドバネ70の力に抗して、カムフォロワ60を押し動かす。筆記チップは、カムフォロワ60の段差63が前向きカム33の頂点33dに対して当接する時、下部胴20の筆記チップ側開口部27を通過する。上部胴10に対する下部胴20の更なる回転で、カムフォロワ60の段差63が頂点33dから離れ、直線状の軌道33c、第2傾斜部33bへと移動し、陥凹33fへと戻ってくることとなる。
【0048】
カムアセンブリ30に対するガイド50の相対的な回転は、上部胴アセンブリ10の上部開口部からの消しゴム43の押し出しも開始する。
消しゴムフォロワー44は、消しゴム43が引き込み位置にある状態では、カムアセンブリ30の上縁部38上にある。カムアセンブリ30の回転は、
消しゴムフォロワー44を、後向きカム32上で移動させ、今度は、後向きカム32が、消しゴムホルダ40を、消しゴムバネ45の力に抗して軸方向に移動させる。
消しゴムフォロワー44が後向きカム32の頂点32cに到達すると、消しゴムホルダ40は最高点に達し、消しゴム43が
伸張位置に達する。
【0049】
前向きカム33及び後向きカム32に対する鉛筆リフィル4及びそのカムフォロワ60の位置と、前向きカム33と後向きカム32との間の関係によって、消しゴム43を
伸張位置に、鉛筆2を筆記位置にそれぞれ同時に軸方向に移動させることが可能になる。
【0050】
後向きカム32の頂点32c及び前向きカム33の頂点33dは、平行な長手方向の面上に位置している。頂点33dは、カムアセンブリ30の上部開口部34のスロット34aに位置合わせされている。芯ホルダ4とこれに結合されたカムフォロワ60をスライド可能に収容する溝55は、ガイド50の突出部58に位置合わせされる。こうして、頂点33dが芯リフィル4のカムフォロワ60の段差63を付勢するのと略同時に、頂点32cは、消しゴムフォロワー44を付勢する。
【0051】
ガイド50の突出部58は、消しゴム43が
伸張位置に押し出された状況では、カムアセンブリ30のスロット34aに収容される。突出部58とスロット34aとの係合によって、消しゴムをノックすることで、芯2を鉛筆ホルダ4から前方へ押し出すことが可能となる。
【0052】
本発明の原理の応用を示す目的で、特定の実施形態が詳細に図示され説明されているが、上記の原理から逸脱することなく、本発明を他の方法で実施することも可能であると理解される。