特許第5969612号(P5969612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5969612
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月17日
(54)【発明の名称】ベンジル化ポリアミン硬化剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20160804BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20160804BHJP
   C07C 209/26 20060101ALI20160804BHJP
   C07C 211/27 20060101ALI20160804BHJP
【FI】
   C08G59/50
   C08L63/00 Z
   C07C209/26
   C07C211/27
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-531807(P2014-531807)
(86)(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公表番号】特表2014-531496(P2014-531496A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】US2012039234
(87)【国際公開番号】WO2013043241
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2014年5月21日
(31)【優先権主張番号】13/242,153
(32)【優先日】2011年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ルネ エドゥアール レイモン
(72)【発明者】
【氏名】ガミニ アナンダ ベダージ
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−172721(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102061011(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102061061(CN,A)
【文献】 国際公開第2013/010842(WO,A1)
【文献】 米国特許第04308085(US,A)
【文献】 英国特許第02045269(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 63/00−63/10
C07C 209/26
C07C 211/27
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物を含むエポキシ樹脂用硬化剤組成物であって、前記ベンジル化ポリアミン化合物はベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と下記式
2N−CH2−A−CH2−NH2
(上式中、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)によるポリアミンの反応生成物であり、
前記ベンズアルデヒド化合物はベンズアルデヒドであり、
前記少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物は下記式
【化1】
(上式中、RAは未置換ベンジル基であり、RB、RC及びRDは水素原子であり、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)を有する、エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項2】
前記ベンジル化ポリアミン化合物はベンジル化オルトキシリレンジアミン、ベンジル化メタキシリレンジアミン、ベンジル化パラキシリレンジアミン、ベンジル化1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ベンジル化1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ベンジル化1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項1に記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン化ベンジル化合物はフッ化ベンジル、塩化ベンジル、臭化ベンジル又はヨウ化ベンジルからなる群より選ばれる、請求項1に記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項4】
前記ハロゲン化ベンジル化合物は式PhCH2−による置換ベンジル基を含み、式中、Phは芳香環を含む部分であり、Phは未置換であるか、又は、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル、メトキシ、エトキシ、アミノ、ヒドロキシルもしくはシアノ基の1つ以上により置換されている、請求項1に記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
【請求項5】
ベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と下記式
2N−CH2−A−CH2−NH2
(上式中、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)によるポリアミン化合物を接触させること、
前記ベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と前記ポリアミン化合物をベンジル化ポリアミン化合物を生成するのに十分な条件下に反応させることを含み、
前記ベンズアルデヒド化合物はベンズアルデヒドであり、
前記少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物は下記式
【化2】
(上式中、RAは未置換ベンジル基であり、RB、RC及びRDは水素原子であり、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)を有する、エポキシ樹脂用硬化剤組成物の形成方法。
【請求項6】
前記ベンジル化ポリアミン化合物はベンジル化オルトキシリレンジアミン、ベンジル化メタキシリレンジアミン、ベンジル化パラキシリレンジアミン、ベンジル化1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ベンジル化1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ベンジル化1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化ベンジル化合物はフッ化ベンジル、塩化ベンジル、臭化ベンジル又はヨウ化ベンジルからなる群より選ばれる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化ベンジル化合物は式PhCH2−による置換ベンジル基を含み、式中、Phは芳香環を含む部分であり、Phは未置換であるか、又は、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル、メトキシ、エトキシ、アミノ、ヒドロキシルもしくはシアノ基の1つ以上により置換されている、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ベンズアルデヒド化合物及びポリアミン化合物を、ベンズアルデヒド化合物/ポリアミン化合物のモル反応体比1:1〜1.6:1で反応させる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ハロゲン化ベンジル化合物及びポリアミン化合物を、ハロゲン化ベンジル化合物/ポリアミン化合物のモル反応体比1.2:1〜1.5:1で反応させる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂用硬化剤組成物は3個以上の活性アミン水素を有する少なくとも1種の多官能アミンをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物を含むエポキシ樹脂用硬化剤組成物であって、前記ベンジル化ポリアミン化合物はベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と下記式
2N−CH2−A−CH2−NH2
(上式中、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)によるポリアミンの反応生成物である、エポキシ樹脂用硬化剤組成物、及び、
少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物、
の接触生成物を含み、
前記ベンズアルデヒド化合物はベンズアルデヒドであり、
前記少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物は下記式
【化3】
(上式中、RAは未置換ベンジル基であり、RB、RC及びRDは水素原子であり、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)を有する、アミン−エポキシ組成物。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂用硬化剤組成物は3個以上の活性アミン水素を有する少なくとも1種の多官能アミンをさらに含む、請求項12に記載のアミン−エポキシ組成物。
【請求項14】
請求項12に記載のアミン−エポキシ組成物を含む物品。
【請求項15】
前記物品は接着剤、コーティング、プライマー、シーラント、硬化性コンパウンド、建設製品、床材製品及び複合材製品からなる群より選ばれる、請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ樹脂を硬化させるためのポリアミンのベンジル化方法及びベンジル化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
第一級アミンの量を低減することによって、エポキシ処理におけるカルバメート化を低減するために、種々の方法が使用されてきた。一つの方法は、アミンをモノグリシジルエーテルと付加させることを含む。しかし、この方法は、生成物の粘度を増加させるという欠点がある。さらなる方法は、第一級アミンにアクリロニトリルのマイケル付加を行うことを含む。その場合には、粘度が低いままであるが、生じる逆反応は、やがて、遊離アクリロニトリルを解放し、それにより、生成物が非常に毒性となり、取扱が困難になる。
【0003】
ホルムアルデヒド及びフェノールとのポリアミンの反応によりマンニッヒ塩基を製造するなどの他の方法を試験してきたが、限定的な成功となっている。このような場合には、かなりの量のフェノールが残存し、それが生成物を毒性としている。この毒性は、アミノ交換反応において、トリス−ジメチルアミノメチルフェノール(K−54)をアミンと反応させ、アミンがジメチルアミン(DMA)を置換し、それを蒸留し、そしてリサイクルのために回収することによって低減することができる。この反応は、望ましくないほどの高粘度の欠点がある。
【0004】
米国特許第7,396,902号明細書(参照によりその全体を本明細書中に取り込む)は、メタキシリレンジアミン又は1,3−BAC(1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)のスチレン化から製造されるエポキシ樹脂用硬化剤を開示している。第7,396,902号特許はスチレン化工程が複雑かつ困難であるという欠点に悩まされる。
【0005】
ベンジル化アミノプロピル化エチレンジアミン及びベンジル化ポリアルキレンポリアミン、ならびに、それらの使用は、一般に、米国特許出願公開第2009/0030125号及び同第2009/0029175号明細書(参照によりその全体を本明細書中に取り込む)に開示されている。第2009/0030125号及び同第2009/0029175号明細書は広範な製品及び特性をもたらし、ここで、得られるベンジル化生成物に、より大きな適応性及び特定の製品仕様が与えられることが当該技術分野で望まれている。
【0006】
米国特許第3,634,316号明細書(参照によりその全体を本明細書中に取り込む)はオゾン劣化防止性キシリレンジアミン誘導体の形成方法を開示している。この方法は、キシリレンジアミンとハロゲン化アルキルの脱ハロゲン化水素化を含む。例示の関連請求項はオゾン劣化防止剤は、Ν,Ν'−ジベンジル−m及びp−キシリレンジアミンであるとしている請求項2である。第3,634,316号特許の生成物は、例えば、請求項2において、ジベンジル化生成物であり、その製造法は特定されていない。第3,634,316号特許は、生成された化合物がエポキシ樹脂を架橋及び硬化させる架橋剤で使用されることを開示していない。さらに、第3,634,316号特許は特性が調整可能又は適応可能である方法を開示又は提供していない。
【0007】
エポキシ樹脂がほとんどの非芳香族アミンで硬化されるときに、エポキシ樹脂とこれらのアミンの混和性は常に良いものではなく、ある不完全な硬化が起こることがある。硬化を改善するために、ベンジルアルコールなどのいくつかの希釈剤を使用することができる。これは、系に溶媒を導入し、そして得られる系は放出性と考えられ、一旦、硬化されると、原料は時間をかけてコーティングから放出されるであろうことを意味する。より厳格な法律の導入のために、非放出性コーティングがより有価になってきた。
【0008】
また、豊富な第一級アミンの存在は、より低い温度及びより高い相対湿度でコーティングによって経験されるカルバメート化の量を増加するであろうことも知られている。これらの問題を克服するために、アミンはモノグリシジルエーテル、特に、フェニルグリシジルエーテル又はo−クレシルグリシジルエーテルと付加されている。これらの反応は蒸気圧を低下させ、樹脂に対するアミンの混和性を向上するのに非常に有利であるが、残念ながら、この付加は非常に高いレベルに粘度を増加させる傾向があり、製品の塗布を妨げることがある。このタイプの付加は、また、遊離アミンの除去を要求することがある。もしも、付加が全ての遊離アミンを除去するには十分すぎるほど行われると、粘度があまりにも高くなってしまい、ある場合には、生成物が固体にさえなりうる。このタイプの付加は、アミン1分子あたりに使用される各分子が反応性部位を除去するときに制限され、特に4個以下の反応性部位しか有しないアミンでは、系の架橋密度を減少させる可能性がある。
【0009】
多数のアミン系硬化剤及びアミン−エポキシ組成物はアミン−エポキシコーティング産業において使用されているが、既知の製品は完全には上記の要求に取り組み損ない又は解決し損なっている。したがって、本発明が指向するのはこの解決である。具体的には、カルバメート化を低減し、毒性を低減し、上記の欠点に悩まされないエポキシ硬化剤及び硬化エポキシ製品の製造方法は当該技術分野において望ましいであろう。
【発明の概要】
【0010】
本開示は硬化剤組成物を含む。硬化剤組成物は少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物を含む。ベンジル化ポリアミン化合物はベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と下記式
2N−CH2−A−CH2−NH2
(上式中、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)によるポリアミンの反応生成物である。
【0011】
別の実施形態において、本開示は硬化剤組成物の形成方法を含む。本方法はベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と下記式
2N−CH2−A−CH2−NH2
(上式中、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)によるポリアミン化合物を接触させることを含む。ベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物はポリアミン化合物と、ベンジル化ポリアミン化合物を生成するのに十分な条件下に反応される。
【0012】
別の例示の実施形態において、本開示はアミン−エポキシ組成物を含む。アミン−エポキシ組成物は、
少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物を含む硬化剤組成物であって、前記ベンジル化ポリアミン化合物はベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と下記式
2N−CH2−A−CH2−NH2
(上式中、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)によるポリアミンの反応生成物である、硬化剤組成物、及び、
少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物、
の接触生成物を含む。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の原理を例として示す添付の図面と組み合わせて下記の好ましい実施形態のより詳細な説明から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
カルバメート化が低減され、そして毒性が低減された、エポキシ硬化剤及び硬化エポキシ製品の製造方法は提供される。本開示にかかるエポキシ硬化剤は低い粘度を有し、樹脂と良好な混和性を有し、そしてエポキシ樹脂の架橋剤として使用したときに望ましい特性を発現する。本開示に係る硬化剤組成物は長期間にわたり、単一相均一性を維持することができ、そのことは製品の貯蔵及び意図した用途でのその後の使用のために要求されうる。さらに、もし、これらの組成物が実質的に溶媒を含まないならば、実質的にVOCを有せず、そのことは当業者に評価されるであろうとおり、環境、健康及び安全上の問題に関して有利であることができる。本開示の実施形態は硬化系中、特に、硬化系が高湿分の存在下にあるときに、硬化系中のカルバメート化の量を低減する。さらに、本開示に係るエポキシ硬化剤は室温にて100%又は約100%硬化を提供し、B段階硬化を克服するためにベンジルアルコール又は他の同様の化合物を使用することの必要性を低減し又はなくす。本開示に係るエポキシ硬化剤は望ましく遅い硬化を提供する。本開示に係る方法は、樹脂との良好な相溶性を有するエポキシ樹脂用硬化剤をデリバリーするための、より容易な方法である。さらに、本開示の実施形態は簡単な配合のために他のアミンと混合可能である成分をもたらす。本開示の実施形態は95〜98%以上の転化率を含む、エポキシ転化率及び架橋率%となるエポキシ硬化剤を含む。
【0015】
当業者が本発明の詳細な説明を理解するのを助けるために、以下の定義及び略語を提供する。
AHEW−アミン水素当量、
DGEBA−ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、EEW182〜192、
DERTM331−液体DGEBA、
EDA−エチレンジアミン、
EEW−エポキシ当量、
EPIKOTE(登録商標) 828 (EPON(登録商標)828)−EEWが184〜192である液体エポキシ樹脂、
EPIKOTE(登録商標)及びEPON(登録商標)はMomentive Specialty Chemicals Inc., New Jerseyの登録商標である。
mXDA−Mitsubishi Gas Chemical Co.製のメタキシリレンジアミン、
IPDA−イソホロンジアミン、AHEW=43、
PHR−100質量部の樹脂あたりの部
【0016】
用語「接触生成物」は、本明細書中で使用されるときに、成分が任意の順序で、任意の様式で、又は、任意の時間長さで接触される組成物を記載する。例えば、成分はブレンディング又は混合によって接触させることができる。さらに、任意の成分の接触は、本明細書中に記載される組成物又は配合物の任意の他の成分の存在下又は非存在下で起こることができる。なおもさらに、接触生成物の2つ以上の成分は反応して、他の成分構成組成物を生成することができる。追加の材料又は成分を組み合わせることは、当業者に既知の任意の方法によって行うことができる。
【0017】
本開示の実施形態は、硬化剤組成物及びこのような組成物の製造方法を含む。これらの硬化剤組成物は、エポキシ樹脂を固化し、硬化し、及び/又は架橋するために使用することができる。1つの実施形態は、少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物を含む硬化剤組成物であって、該ベンジル化ポリアミン化合物はベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と、下記式
2N−CH2−A−CH2−NH2
(上式中、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)によるポリアミンの反応生成物である、硬化剤組成物を含む。1つの実施形態では、ベンジル化化合物としては、式(I)のジアミンによるベンズアルデヒド化合物の還元性アミノ化の反応生成物が挙げられる。別の実施形態では、ベンジル化ポリアミン化合物としては、式(I)のポリアミンとハロゲン化ベンジルとの反応生成物が挙げられる。さらに別の実施形態において、少なくとも1種の式(I)のポリアミンはベンジル化されている。一般に、本開示の実施形態に係る硬化剤組成物は、100%固形分を基準としたアミン水素当量(AHEW)が約40〜約200、又は、約75〜約150である。ベンジル化の程度は、還元性アミノ化反応において、例えば、式(I)のポリアミン中の反応性アミン水素に対するベンズアルデヒド化合物の当量比に依存する。したがって、本開示の例示的な実施形態において、硬化剤組成物は、1個又は2個又は3個又は4個のベンジル基を有するポリアミン又はそれらの任意の組み合わせを含む式(I)成分のベンジル化ポリアミンを含む。別の態様において、本発明のための式(I)成分のためのこのようなベンジル化ポリアミンは、少なくとも2個のベンジル基、すなわち、2個以上のベンジル基を有する式(I)のベンジルポリアミンを少なくとも20wt%含む。本発明の他の態様において、式(I)成分のベンジル化ポリアミンは20〜90wt%、特に、30〜80wt%の、少なくとも2個のベンジル基を有する式(I)のベンジル化ポリアミンを含む。一般に、この硬化剤組成物は、100%固形分を基準としたアミン水素当量(AHEW)が約50〜約160である。異なる態様では、硬化剤組成物は100%固形分を基準としたAHEWが約80〜約120である。さらに、硬化剤組成物は100%固形分を基準としたAHEWが約30〜約100であることができる。これらの態様では、好ましい実施形態は、式(I)のベンジル化ポリアミンを含む。
【0018】
本開示に係る特定の実施形態において、本発明は(i)少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物及び(ii)少なくとも1種の、3個以上の活性アミン水素を有する多官能アミンの接触生成物を含む硬化剤組成物を提供する。
【0019】
本発明の別の態様において、少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物は下記式
【化1】
(上式中、RAは置換もしくは未置換ベンジル基であり、RB、RC及びRDは独立にRAであるか、又は、水素原子であり、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)を有し、ただし、式(I)のベンジル化ポリアミン化合物は2個より多くの活性アミン水素原子を有する。特に適切な実施形態において、RA及びRCはベンジル又はバニリルであり、好ましくはベンジルである。特に適切な実施形態において、Aはフェニレンである。
【0020】
本発明のさらに別の態様において、式(I)の化合物のベンジル化ポリアミンは上記の式(II)のものであり、RAはベンジル又はバニリルであり、RB、RC及びRDは水素原子である。さらなる態様において、RA及びRCはベンジル又はバニリルであり、特に、ベンジルであり、そしてRB及びRDは水素原子である。これらの態様の望ましい実施形態において、Aはフェニレンである。
【0021】
ベンジル基が水素原子を置換することができる、式(I)の化合物のポリアミン上の多くの可能な位置があるとすれば、式(I)の化合物である少なくとも1種のポリアミン及びベンズアルデヒド化合物の還元性反応、又は、ハロゲン化ベンジルとの反応から生じる生成物は、必ず、多くの異なる種の混合物であり、RB、RC及びRD基の幾つかは水素であり、他のものはベンジル基である。どの、そしていくつの「R」基が水素から転化されてベンジル基になるかは、多くの要因に依存し、反応条件、触媒選択、反応体比、反応体の選択(特定のハロゲン化物化合物又はベンズアルデヒド化合物)などが挙げられる。例えば、ベンズアルデヒド/式(I)の化合物のポリアミンのモル反応体比が約1:1〜1.9:1であるベンズアルデヒド化合物を反応体として使用して、反応生成物の主要成分はRAがベンジルであり、RCがベンジル又は水素原子であり、RB及びRDが水素原子であるものである。
【0022】
さらに、本明細書に記載の硬化剤組成物は溶媒系であることができる。又は、本発明の別の態様において、これらの組成物は少なくとも1種の希釈剤、例えば、有機溶媒、又は、有機もしくは無機酸をさらに含むことができる。適切な有機溶媒はアミン配合物化学の技術分野の当業者によく知られている。本発明での使用に適する例示の有機溶媒としては、限定するわけではないが、ベンジルアルコール、ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトンなど、又は、それらの組み合わせが挙げられる。有機酸及び無機酸の非限定的な例は、酢酸、スルファミン酸、乳酸、サリチル酸、セバシン酸、ホウ酸、リン酸など、又は、それらの組み合わせである。このような酸は硬化剤組成物の硬化速度を増加させることができる。
【0023】
硬化剤組成物は、また、例えば、フェニルグリシジルエーテル、o−ジクレシルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル及び他の同様のグリシジルエーテル又はエステルなどの単官能エポキシドによりさらに変性されうる。また、本明細書に開示の硬化剤組成物は他の市販の硬化剤とブレンドされうる。このような市販の硬化剤としては、限定するわけではないが、溶媒系、無溶媒系又は水性の硬化剤が挙げられ、それを、硬化速度、乾燥速度、硬度発現、透明度及び光沢などの特定の性質を標的として、ブレンド中で用いることができる。
【0024】
ベンジル化ポリアミン化合物の形成方法は、式(I)により示される脂肪族ポリアミン及びベンズアルデヒドを添加し、次いで、Pd/C触媒などの触媒の存在下で、H2により還元することを含む。本発明の式(I)のベンジル化ポリアミンはベンズアルデヒド化合物と少なくとも1種の式(I)の化合物のポリアミンの還元性アミノ化によって調製することができる。ベンズアルデヒドの還元性アミノ化のための手順は一般に当業者に知られている。一般に、これらの手順は、アミンとベンズアルデヒドを縮合し、次いで、中間体シッフ塩基を還元することを含む。還元は、典型的には、大気圧より高い圧力で水素リッチの雰囲気中で、金属触媒の存在下に行われる。1つの例示的な実施形態では、ベンジル化mXDAはmXDAをベンズアルデヒドと反応させ、次いで、適切な触媒の存在下に系の還元を行うことによって調製される。mXDAのベンジル化は、1モルのmXDAあたりに2モル未満のベンズアルデヒド値、好ましくは、1モルのアミンあたりに1.2〜1.3モルのベンズアルデヒド値で行い、それゆえ、少量の遊離アミンを含む生成物となった。
【0025】
本明細書中に開示の硬化剤組成物及びこのような組成物の製造方法によると、ベンズアルデヒド化合物/少なくとも1種の式(I)の化合物のポリアミンのモル反応体比は約0.8:1〜約1.98:1の範囲にある。別の態様において、ベンズアルデヒド化合物/少なくとも1種の式(I)の化合物のポリアミンのモル反応体比は約0.9:1〜約1:1、約1.1:1、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.7:1、約1.8:1又は約1.9:1である。さらに別の態様において、モル反応体比は約0.9:1〜約1.8:1、又は、約1:1〜約1.6:1の範囲にある。さらなる態様において、ベンズアルデヒド化合物/少なくとも1種の式(I)の化合物のポリアミンのモル反応体比は約1.2:1〜約1.5の範囲にある。さらに別の態様では、生成物は2個より多くの反応性アミン水素を保持すべきであり、それにより、エポキシ樹脂の適切な架橋を可能とする。1:1未満のベンズアルデヒド化合物/少なくとも1種の式(I)の化合物のポリアミンのモル反応体比でも、ジベンジル化アミノプロピル化アルキレンジアミンAPADAは少量で製造される。しかしながら、十分な量の式(I)のジベンジル化ポリアミンを提供するために、1:1〜1.6:1のベンズアルデヒド化合物/少なくとも1種の式(I)の化合物のポリアミンのモル反応体比は好ましくは使用される。
【0026】
本開示の式(I)のベンジル化ポリアミンは、また、ハロゲン化ベンジルと、少なくとも1種の式(I)の化合物であるポリアミンの反応によっても調製することができる。一般に、少なくとも1種のハロゲン化ベンジル化合物/少なくとも1種のAPADA化合物のモル反応体比は約0.8:1〜約2:1の範囲内である。別の態様において、モル反応体比は約0.9:1、約1:1、約1.1:1、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.7:1、1.8:1又は1.9:1である。なおも別の態様では、少なくとも1種のハロゲン化ベンジル/少なくとも1種の式(I)の化合物のポリアミンのモル反応体比は約1.2:1〜約1.5:1の範囲にある。
【0027】
本開示のこの態様の別の実施形態では、硬化剤組成物は、1又は2又は3又は4個のベンジル基を有するポリアミン又は任意のそれらの組み合わせを含む式(I)のベンジル化ポリアミン成分を含む。1つの態様では、本発明のための式(I)のこのようなベンジル化ポリアミン成分は少なくとも2個のベンジル基、すなわち、2個以上のベンジル基を有する式(I)のベンジル化ポリアミンを少なくとも20wt%含む。他の態様において、式(I)のベンジル化ポリアミン成分は、少なくとも2個のベンジル基を有する式(I)のベンジル化ポリアミンを、20〜90wt%、特に、30〜80wt%含む。硬化剤組成物は、本発明のこの態様では、100%固形分基準で約50〜約160のAHEWを有することができる。また、このような硬化剤組成物は、100%固形分基準で約80〜約120の範囲のAHEWを有することができる。異なる態様では、硬化剤組成物は100%固形分基準で約30〜約100のAHEWを有する。これらの態様では、好ましい実施形態は式(I)のベンジル化ポリアミンを含む。
【0028】
本発明の上記態様の各々において、硬化剤組成物は、1又は2又は3又は4個のアルキル基を有するポリアミン分子又は任意のそれらの組み合わせを含む式(I)のベンジル化ポリアミン成分を含む。本発明のための式(I)のこのようなベンジル化ポリアミン成分は1個以上のベンジル基を有する式(I)のベンジル化ポリアミンを少なくとも20wt%、1個以上のベンジル基を有する式(I)のベンジル化ポリアミンを好ましくは20〜90wt%含み、特に30〜80wt%含む。
【0029】
本開示の他の実施形態としては、アミン−エポキシ組成物が挙げられる。例えば、本開示に係るアミン−エポキシ組成物はA)少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物及びB)少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物の反応生成物を含む。別の実施形態において、アミン−エポキシ組成物はA)(i)少なくとも1種のベンジル化物及び(ii)3個以上の活性アミン水素を有する少なくとも1種の多官能アミンの接触生成物を含む硬化剤組成物、及び、B)少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物の反応生成物を含む。場合により、種々の添加剤は所望の特性に依存して、製造品を製造するために使用される組成物又は配合物中に存在することができる。これらの添加剤としては、限定するわけではないが、溶媒(水を含む)、促進剤、可塑剤、フィラー、ガラス繊維又は炭素繊維などの繊維、顔料、顔料分散剤、レオロジー調整剤、チキソトピー剤、フロー又はレベリング助剤、界面活性剤、脱泡剤、殺生物剤又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0030】
本開示によるベンジル化ポリアミン化合物を製造するのに有用であるポリアミン化合物としては、限定するわけではないが、式(I)により表されるジアミンが挙げられる。他の好適なポリアミンとしては、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリリレンジアミン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。メタキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが特に適している。これらのアミンは個々に用い又は互いに混合することができる。
【0031】
ベンジル化ポリアミン化合物はベンジル化されたポリアミンであって、該ポリアミンはは式(I)による構造を有する。上記態様の各々の別の実施形態では、ベンジル化アミンはベンジルオルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンであることができ、これらのうち、メタキシリレンジアミン及び1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン又はそれらの混合物であることができる。1つの実施形態では、ベンジル化アミンはベンジル化ポリアミン化合物の混合物であり、例えば、ベンジル化オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンを含む混合物、又は、ベンジル化1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを含む混合物である。
【0032】
ポリアミンのベンジル化での使用に適したベンズアルデヒド化合物としては、未置換ベンズアルデヒド及び置換ベンズアルデヒドが挙げられる。適切な置換ベンズアルデヒドとしては、限定するわけではないが、式PhCHOの化合物であって、Phは芳香環を含む部分であり、Phは未置換であるか、又は、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル、メトキシ、エトキシ、アミノ、ヒドロキシル又はシアノ基の1つ以上により置換されている化合物が挙げられる。1つの実施形態では、ベンズアルデヒド化合物はベンズアルデヒドであり、別の実施形態では、ベンズアルデヒド化合物はバニリンである。
【0033】
ポリアミンのベンジル化での使用に適したハロゲン化ベンジル化合物としては、フッ化ベンジル、塩化ベンジル、臭化ベンジル又はヨウ化ベンジルが挙げられる。ベンジル基は、未置換ベンジル又は置換ベンジル基を含むことができる。置換ベンジル基としては、限定するわけではないが、式PhCH2−(式中、Phは芳香環を含む部分であり、ここで、Phは未置換であるか、又は、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル、メトキシ、エトキシ、アミノ、ヒドロキシル又はシアノ基の1つ以上で置換されている)の基が挙げられる。1つの実施形態では、ベンジル基はベンジルであり、別の実施形態では、ベンジルはバニリルである。
【0034】
メタキシリレンジアミンなどの式(I)のポリアミンがベンジル化されたときに、得られる生成物はほとんど又は全く遊離アミンが最終生成物中に存在しない点までベンジル化が可能である、より低い粘度を有する。理論に束縛されることを望まないが、遊離アミンの除去は水及び二酸化炭素の存在下における第一級アミンの反応により生じるフィルムのカルバメート化を減らすのに役立つと考えられる。煙生成又は発煙の減少/非存在、エポキシ樹脂との相溶性の向上、カーバメート化に対する低い傾向、最終生成物中の遊離の未反応のアミンのレベルが低いことは、取扱性の改良をもたらす。
【0035】
本開示に係る硬化剤組成物は少なくとも1種の多官能アミンを含むことができる。多官能性アミンは、本明細書中で使用するときに、アミン官能基を含む、3個以上の活性アミン水素を含有する化合物を記載する。
【0036】
本発明の範囲内である多官能性アミンの非限定的な例としては、限定するわけではないが、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、ポリ(アルキレンオキシド)ジアミン又はトリアミン、脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンのマンニッヒ塩基誘導体、脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンのダイマー脂肪酸もしくはダイマー酸と脂肪酸との混合物とのポリアミド誘導体、脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンの脂肪酸とのアミドアミン誘導体、脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンのビスフェノールA又はビスフェノールFのグリシジルエーテル又はエポキシノボラック樹脂とのアミン付加物誘導体など、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0037】
多官能アミンが式(I)のベンジル化ポリアミンと異なるならば、AHEWは、その化学構造に基づいて計算することができ、又は、しばしば、混合物の場合にはアミンの供給業者によって提供される。式(I)の化合物のベンジル化ポリアミンのAHEWである、AHEWBは下記の式を用いて決定され、ただし、式(I)のポリアミンは、例えば、1モルの式(I)の化合物FORMIあたりにxモルのベンズアルデヒドの還元性アミノ化生成物であるとを仮定する(式(I)のポリアミン化合物及びベンズアルデヒドは下記に詳細に議論する)。
【数1】
上式中、MWFormIは式(I)のポリアミンの平均分子量であり、
MWAldはベンズアルデヒドの分子量であり、
fは式(I)のポリアミンの平均アミン水素官能価であり、
xは使用されるベンズアルデヒドのモル数であり、
MWBformIは、式(I)のベンジル化ポリアミンの平均分子量であり、下記のとおりに計算することができる。
【数2】
【0038】
1種より多くの多官能アミンは本発明の組成物に使用することができる。例えば、少なくとも1種の多官能アミンは脂肪族アミン及び脂環式アミンのマンニッヒ塩基誘導体を含むことができる。また、少なくとも1種の多官能アミンは1種の脂肪族アミン及び1種の異なる脂肪族アミンを含むことができる。
【0039】
例示の脂肪族アミンとしては、ポリエチレンアミン(EDA、DETA、TETA、TEPA、PEHAなど)、ポリプロピレンアミン、アミノプロピル化エチレンジアミン( Am3、Am4、Am5など)、アミノプロピル化プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、3,3,5−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,5,5−トリメチル−1,6− ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンなど、又はそれらの組み合わせが挙げられる。本発明の1つの態様では、少なくとも1種の多官能アミンは、EDA、DETA、TETA、TEPA、PEHA、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラアミン、Am3、Am4、Am5、N−3−アミノプロピル−1,3−ジアミノプロパン、N,N'−ビス(3−アミノプロピル)-1,3−ジアミノプロパン、N,N,N'−トリス(3−アミノプロピル)−1,3−ジアミノプロパン又はそれらの任意の組み合わせである。さらに、Huntsman CorporationからJEFFAMINE(登録商標)の商標で市販されているポリ(アルキレンオキシド)ジアミン及びトリアミンは本発明において有用である。例示の例としては、限定するわけではないが、JEFFAMINE(登録商標)D-230、JEFFAMINE(登録商標)D-400、JEFFAMINE(登録商標) D-2000、JEFFAMINE(登録商標)D-4000、JEFFAMINE(登録商標)T-403、JEFFAMINE(登録商標) EDR-148、JEFFAMINE(登録商標) EDR-192、JEFFAMINE(登録商標) C-346、JEFFAMINE(登録商標) ED-600、JEFFAMINE(登録商標) ED-900、JEFFAMINE(登録商標) ED-2001など又はそれらの組み合わせが挙げられる。JEFFAMINE(登録商標)はHuntsman Petrochemical LLCの登録商標である。
【0040】
脂環式及び芳香族アミンとしては、限定するわけではないが、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、 水素化オルト−トルエンジアミン、水素化メタ−トルエンジアミン、メタキシリレンジアミン、水素化メタキシリレンジアミン(商業的に1,3−BACと称される)、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、メチレン橋かけポリ(シクロヘキシル−芳香族)アミンの混合物など、又はそれらの組み合わせが挙げられる。メチレン橋かけ(シクロヘキシル−芳香族)アミンの混合物は、MBPCAA又はMPCAのどちらかと省略され、米国特許第5,280,091号明細書中に記載されており、その全体を参照により本明細書に取り込む。本発明の1つの態様において、少なくとも1種の多官能アミンはメチレン橋かけポリ(シクロヘキシル−芳香族)アミンの混合物(MPCA)である。
【0041】
マンニッヒ塩基誘導体は、フェノール又は置換フェノール及びホルムアルデヒドと上述の脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンとの反応によって製造することができる。本発明において有用なマンニッヒ塩基を製造するために使用される例示的な置換フェノールはカシューナッツ殻液から得られるカルダノールである。あるいは、マンニッヒ塩基は、トリス−ジメチルアミノメチルフェノール(Air Products and Chemicals, Inc.からANCAMINE(登録商標) K- 54として市販されている)又はビス-ジメチルアミノメチルフェノールなどのマンニッヒ塩基を含有する第三級アミンと多官能アミンの交換反応により調製することができる。ポリアミド誘導体は、ダイマー脂肪酸又はダイマー脂肪酸と脂肪酸との混合物と、脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンの反応により調製することができる。アミドアミン誘導体は、脂肪酸と脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンの反応により調製することができる。アミン付加物はビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fジグリシジルエーテル又はエポキシノボラック樹脂などのエポキシ樹脂と脂肪族アミン、脂環式アミン又は芳香族アミンとの反応によって調製することができる。脂肪族、脂環式及び芳香族アミンは、また、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、他のアルキルグリシジルエーテルなどの単官能性エポキシ樹脂と付加されることもできる。
【0042】
本発明のアミン−エポキシ組成物は硬化剤組成物及び少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物の反応生成物を含む。本明細書で使用されるとおりの多官能エポキシ樹脂は、1分子あたりに2個以上の1,2−エポキシ基を含む化合物を記載する。このタイプのエポキシド化合物は、当業者によく知られており、Y. Tanaka,"Synthesis and Characteristics of Epoxides", in C. A. May, ed., Epoxy Resins Chemistry and Technology (Marcel Dekker, 1988)に記載されており、その全体を参照により本明細書に取り込む。
【0043】
エポキシ組成物対硬化剤組成物又は硬化剤(ハードナー)のために選択される相対量は、例えば、最終使用製品、その所望の特性及び最終使用製品を製造するために使用される製造方法及び条件に応じて変えることができる。例えば、特定のアミン−エポキシ組成物を用いたコーティング用途では、硬化剤組成物の量に対して、より多量のエポキシ樹脂を取り込むと、乾燥時間が増加しているが、硬度が増加し、光沢により測定される外観が改良しているコーティングをもたらすことができる。本発明のアミン−エポキシ組成物は、一般に、約1.5:1〜約0.7:1の範囲のエポキシ組成物中のエポキシ基/硬化剤組成物中のアミン水素の化学量論比を有する。例えば、このようなアミン−エポキシ組成物は約1.5:1、約1.4:1、約1.3:1、約1.2:1、約1.1:1、約1:1、約0.9:1、約0.8:1又は約0.7:1の化学量論比を有することができる。別の態様では、化学量論比は約1.3:1〜約0.7:1の範囲である。さらに別の態様では、化学量論比は約1.2:1〜約0.8:1の範囲である。さらに別の態様では、化学量論比は、約1.1:1〜約0.9:1の範囲である。
【0044】
本発明における使用に好適な1つのクラスのエポキシ樹脂は二価フェノールのグリシジルエーテルを含む、多価フェノールのグリシジルエーテルを含む。例示的な例としては、限定するわけではないが、レソルシノール、ヒドロキノン、ビス−(4−ヒドロキシ-3,5−ジフルオロフェニル)−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)− エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4− ヒドロキシフェニル)−プロパン(商業的にビスフェノールAとしても知られている)、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン(商業的にビスフェノールFとして知られており、種々の量の2−ヒドロキシフェニル異性体を含むことができる)などのジグリシジルエーテル、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。さらに、下記の構造のアドバンス化二価フェノールも本発明に有用である。
【化2】
(上式中、mは整数であり、Rは、上記の二価フェノールなどの二価フェノールの二価炭化水素基である)。この式による材料は、二価フェノールとエピクロロヒドロリンの混合物を重合することにより、又は、二価フェノールのジグリシジルエーテルの混合物をアドバンス化させることによって調製されうる。任意の所与の分子において、mの値は整数であるが、材料は、常に、必ずしも整数ではないmの平均値を特徴とすることができる混合物である。mが0〜約7の平均値を有するポリマー材料は本発明の1つの態様で使用することができる。
【0045】
別の態様では、ノボラック樹脂のグリシジルエーテルであるエポキシノボラック樹脂は、本発明に係る多官能エポキシ樹脂として使用することができる。さらに別の態様では、少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂はビスフェノール−Aのグリシジルエーテル(DGEBA)、DGEBAのアドバンス化又は高分子量形態、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、又は、それらの任意の組み合わせである。DGEBAの高分子量形態又は誘導体は過剰のDGEBAをビスフェノール−Aと反応させ、エポキシ末端生成物を得るアドバンスメント法によって調製される。そのような生成物のエポキシ当量(EEW)は約450〜3000又はそれ以上の範囲である。これらの生成物は室温で固体であるので、それらは、しばしば、固体エポキシ樹脂と呼ばれる。
【0046】
DGEBA又はアドバンス化DGEBA樹脂は、しばしば、それらの低コスト及び一般的に高性能である特性の組み合わせのために、コーティング配合物中に使用される。EEWが約174〜約250の範囲にあり、より一般的には約185〜約195の範囲にある商業グレードDGEBAは容易に入手可能である。これらの低分子量では、エポキシ樹脂は液体であり、しばしば、液体エポキシ樹脂と呼ばれる。これは、純粋なDGEBAはEEWが174であるので、液体エポキシ樹脂のほとんどのグレードはわずかにポリマー性であることが当業者に理解される。また、一般的にアドバンスメント法によっても調製される、EEWが250〜450である樹脂は、半固体エポキシ樹脂と呼ばれる。というのは、それらは室温で固体及び液体の混合物であるからである。一般的には、固形分を基準とした約160〜約750のEEWを有する多官能樹脂は本発明において有用である。別の態様において、多官能エポキシ樹脂はEEWが約170〜約250の範囲にある。
【0047】
最終使用用途に応じて、エポキシ成分を変性することによって、本発明の組成物の粘度を低下させることが有益であることがある。例えば、粘度は依然として容易な塗布を可能にしながら配合物又は組成物中の顔料のレベルの増加を可能にするように、又は、より高分子量のエポキシ樹脂の使用を可能にするように低減することができる。これにより、少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ成分が単官能エポキシドをさらに含むことは本発明の範囲内である。モノエポキシドの例としては、限定するわけではないが、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、及び、フェノール、クレゾール、tert-ブチルフェノール、他のアルキルフェノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、C4〜C14アルコールなどのグリシジルエーテル、又は、それらの組み合わせが挙げられる。多官能エポキシ樹脂は、また、溶液又はエマルジョン中に存在することもでき、希釈剤は水、有機溶媒又はそれらの混合物であることができる。
【0048】
本発明の組成物を使用して種々の製造品を生産することができる。製品の製造の間又は製品の最終使用用途に要求される要件に応じて、様々な添加剤を配合物又は組成物中に使用して、特定の特性を調整することができる。これらの添加剤としては、限定するわけではないが、溶媒(水を含む)、促進剤、可塑剤、フィラー、ガラス繊維又は炭素繊維などの繊維、顔料、顔料分散剤、レオロジー調整剤、チキソトロピー剤、フロー又はレベリング助剤、界面活性剤、脱泡剤、殺生物剤、又は、それらの任意の組み合わせが挙げられる。当技術分野で知られている他の混合物又は材料が組成物又は配合物に含まれてよく、本発明の範囲内であることが理解される。
【0049】
本開示は、また、本明細書に開示の組成物を含む製造品に関する。例えば、物品は、硬化剤組成物及びエポキシ組成物の反応生成物を含むアミン−エポキシ組成物を含むことができる。本明細書に開示のアミン−エポキシ組成物から製造される製造品としては、限定するわけではないが、接着剤、コーティング、プライマー、シーラント、硬化性コンパウンド、建設品、床材製品及び複合製品が挙げられる。さらに、このようなコーティング、プライマー、シーラント又は硬化性コンパウンドは金属又はセメント質基材に塗布することができる。これらのアミン−エポキシ組成物に基づくコーティングは無溶媒型であるか、又は、特定の用途の要求に応じて、水又は有機溶媒などの希釈剤を含むことができる。コーティングは、ペイント及びプライマーの用途に使用するための様々なタイプ及び量の顔料を含むことができる。アミン−エポキシコーティング組成物は、金属基材上に塗布される保護コーティングにおける使用のために、厚さが40〜400μm(マイクロメートル)の範囲であり、好ましくは80〜300μm、より好ましくは100〜250μmの範囲の層を含むことができる。さらに、床材製品又は建設物製品における使用のために、コーティング組成物は、製品のタイプ及び要求される最終特性に応じて、厚さが50〜10,000μmの範囲である層を含む。限られた機械的及び化学的耐性を提供するコーティング製品は厚さが50〜500μm、好ましくは100〜300μmの範囲である層を含み、一方、高い機械的及び化学的耐性を提供する自己レベリングフロアなどのコーティング製品は厚さが1,000〜10,000μm、好ましくは1,500〜5,000μmの範囲である層を含む。
【0050】
当業者によく知られているように、多くの基材は適切な表面調製でもって本発明のコーティングを塗布するのに適している。このような基材としては、限定するわけではないが、コンクリート及びスチール及びアルミニウムなどの種々のタイプの金属及び合金が挙げられる。本発明のコーティングは、船舶、橋梁、工業プラント及び装置ならびにフロアを含む大きな金属物又はセメント質基材の塗装又はコーティングをするのに適している。
【0051】
本発明のコーティングは、スプレー塗布、ブラシ塗布、ローラー塗布、ペイントミットなどを含む任意の数の技術によって適用することができる。非常に高い固形分又は100%固形分の本発明のコーティングを適用するためには、複数成分スプレー塗布装置は使用でき、ここで、アミン及びエポキシ成分はスプレーガンに至るライン中で混合され、スプレーガン自体の中で、又は、スプレーガンを出てくるときに2つの成分を一緒に混合することによって混合されうる。この技術を使用すると、典型的にはアミン反応性及び固形分含有量の両方が増加するときに低下する配合物のポット寿命に関する制限を回避することができる。加熱された複数成分装置は、成分の粘度を低減し、それにより、塗布の容易性を向上させるために用いることができる。
【0052】
建設用途及び床材用途としては、コンクリート又は建設業界で一般的に使用される他の材料と組み合わせた本発明のアミン−エポキシ組成物を含む組成物が挙げられる。本発明の組成物の用途としては、限定するわけではないが、プライマー、深浸入性プライマー、コーティング、硬化性コンパウンド及び/又は新しい又は古いコンクリートのためのシーラントとしての使用が挙げられ、ASTM C309−97に参照されるとおりであり、それを参照により本明細書中に取り込む。プライマー又はシーラントとして、本発明のアミン−エポキシ組成物はコーティングの塗布前に接着結合性を改善するために表面に適用することができる。それはコンクリート及びセメント質適用に関連するときに、コーティングは保護又は装飾層あるいはコートを作成するための表面上の適用に使用される薬剤である。クラック注入及びクラック充填製品は、また、本明細書に開示の組成物から調製されうる。本発明のアミン−エポキシ組成物は、ポリマー又は変性セメント、タイルグラウトなどを形成するために、コンクリートミックスなどのセメント質材料と混合することができる。本明細書に開示のアミン−エポキシ組成物を含む複合材製品又は物品の非限定的な例としては、テニスラケット、スキー板、バイクフレーム、航空機の翼、ガラス繊維強化複合材及び他の成形品が挙げられる。
【0053】
本発明の特定の使用では、これらの硬化剤組成物はエポキシフィラメント巻きタンク、ウインドミルブレードなどの注入複合材、航空宇宙用接着剤、工業用接着剤の製造用途、ならびに、他の関連用途を有するであろう。複合材は、異なる物質から製造される材料であり、樹脂技術の場合には、複合材は、樹脂は樹脂含浸系と呼ばれ、ここで、得られる製品の一般的特性を改善するためのフィラー及び繊維などの補強材の添加によって樹脂が補強される。これらの材料は一緒に加工されるが、お互いに溶解しない。この場合には、結合剤成分はエポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤を含む。プリプレグ、ラミネート、フィラメント巻線、編組、引抜成形、湿潤塗布及び注入複合材などの複合材用途の多くの種類が存在する。樹脂注入又は樹脂トランスファーは樹脂が複合材モールド中に導入される方法であり、補強材は既にモールド内に配置され、樹脂導入前に閉じている。真空補助されるなどのこの方法の変法がある。
【0054】
複合材料を製造するためのアミン−エポキシ組成物中の式(I)のベンジル化ポリアミンの使用の利点は、非変性ポリアミンより長いポット寿命及び改良された相溶性である。接着剤における利点も、より長いポット寿命であり、この場合には、大きな航空機及びウインドミルブレードの場合に主な懸念事項となる、接着剤ビードを全部品を横切って配置するのに長時間を要する場合に、部品同士が接着する前にスキンオーバーがないことである。スキンオーバーが少ないことに加えて、ベンジル基によるブラッシュ(blush)が少ない。低粘度がより高いフィラー量を可能にする。2つのピースを一緒に圧着するときに、最後の接着剤が部品上に配置される前に、最初に部品上に配置された接着剤が硬化し又はブラッシュ(blush)を開始するならば、最初のビードとの結合が弱くなるであろう。
【0055】
熱硬化後に、本発明のベンジル化硬化剤は、機械的強度及びエポキシ樹脂との相溶性のために複合材中に使用されているイソホロンジアミン(IPDA)などのアミンに匹敵する良好な物理的特性を示す(下記表を参照されたい)。しかしながら、一般式(I)のこれらのベンジル化ポリアミンの硬化剤はIPDAよりも低いTgであるから、完全に硬化するために、大きな硬化時間/温度を必要とせず、処理コストを低くする。多くのアミン硬化型エポキシ配合物と同様に、IPDA−EPON(登録商標)828は完全に硬化されないときに脆いことが知られており、配合物が室温硬化コーティングにおいてIPDAとともに高レベルの可塑剤(ベンジルアルコール)を使用し、そしてそのことは複合材用途でIPDAが完全に硬化されることが必要である理由の1つである。
【0056】
アミン系硬化剤で硬化され及び/又は架橋されるエポキシ樹脂の使用は周知である。これらのアミン−エポキシ材料は、プライマー、タイコート及び仕上げなどの種々の用途に用いることができるコーティングの範囲の用途に広く使用される。該材料は多くの基材上に塗布することができる。該材料は、ラミネート、接着剤、床材、ダストフリー仕上げ、二次容器、ライニング、補強材、補修配合物、ツーリング、ポッティング及びキャスティングに使用することができる。該材料はビルディング(食品製造、橋、下水処理場)、自動車、海洋用途(船舶塗装、ブイ塗装、輸送コンテナ)、航空(部品の接着、キャビン構造のためのハニカム強化、衛星用再突入シールド)、エレクトロニクス(プリント回路基板、電子部品のポッティング、電線絶縁)、スポーツ(テニスラケット、ゴルフクラブ、カヌー、スキー)及び、容器及びタンクのフィラメント巻きなど、風力エネルギー及び飛行機用プロペラのためのラミネート、シンタクチックフォーム、ならびに、当業者に周知である他の多くの用途などの多くの産業で使用されうる。
【0057】
エポキシ樹脂のための硬化剤として、硬化剤はコーティングなどの広い用途で使用することができ、それは、プライマー、タイコート及び仕上げなどの種々の用途に用いることができる。それは多くの基材上に塗布することができる。それは、ラミネート、接着剤、床材、ダストフリー仕上げ、二次容器、ライニング、補強材、補修配合物、ツーリング、ポッティング及びキャスティングに使用することができる。それはビルディング(食品製造、橋、下水処理場)、自動車、海洋用途(船舶塗装、ブイ塗装、輸送コンテナ)、航空(部品の接着、キャビン構造のためのハニカム強化、衛星用再突入シールド)、エレクトロニクス(プリント回路基板、電子部品のポッティング、電線絶縁)、スポーツ(テニスラケット、ゴルフクラブ、カヌー、スキー)及び、容器及びタンクのフィラメント巻きなど、風力エネルギー及び飛行機用プロペラのためのラミネート、シンタクチックフォーム、ならびに、当業者に周知である他の多くの用途などの多くの産業で使用されうる。
【0058】
本発明は、また、上記のとおりのアミン−エポキシ組成物を含む製造品を含む。このような物品としては、限定するわけではないが、接着剤、コーティング、プライマー、シーラント、硬化性コンパウンド、建設物製品、フローリング製品、複合材製品、ラミネート、ポッティングコンパウンド、グラウト、フィラー、セメント系グラウト又はセルフレベリング床材を挙げることができる。追加の成分又は添加剤を本発明の組成物と一緒に使用して、製造品を製造することができる。また、このようなコーティング、プライマー、シーラント、硬化性コンパウンド又はグラウトを金属又はセメント質基材に適用することができる。
【実施例】
【0059】
本開示は下記の実施例によりさらに例示され、実施例は本発明の範囲に限定を課すものと解釈されるべきではない。本明細書中の説明を読んだ後に、種々の他の態様、実施形態、変更及び等価物は本発明の精神又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく当業者に自明であろう。
【0060】
[例1:ベンジル化メタキシリレンジアミン1.15/1.0のモル比の合成]
ベンジル化メタキシリレンジアミンの合成は1バッチ法である。416gのmXDA(3.06モル)及び4.2gのPd/C触媒を1リットルオートクレーブバッチ反応器中に入れた。反応器をシールし、次いで、窒素でパージし、その後、水素でパージし、反応器からすべての空気を除去した。約15〜20分にわたって、372.4gのベンズアルデヒド(3.51モル)を反応器に添加した。ベンズアルデヒドの添加が完了した後に、反応器の内容物をさらに15分間又は反応が完了するまで攪拌し、その時点で、反応発熱が沈静化し始めた。この時点で、反応器を8.17atm(120psi)に水素で加圧し、反応器を80℃に加熱した。水素吸収の速度が遅くなったときに、圧力は54.4atm(800psi)に増加し、温度が120℃に上昇した。水素化プロセスを水素吸収速度が0.0034MPa/分(0.5psi/分)未満に低下するまで続けた。合計水素化時間は約5時間であった。反応器を60℃に冷却し、そして脱圧し、反応生成物をろ過して、触媒を除去した。20mmHg真空下で120℃までの温度で操作しているロータリーエバポレータを用いて水を除去した。得られた反応生成物はベンジル化mXDAであり、粘度、AHEW及びアミン価(測定値)であった。特性を表1に示す。
【表1】
【0061】
[例2:ベンジル化メタキシリレンジアミン1.30/1.0のモル比の合成]
ベンジル化メタキシリレンジアミンの合成は1バッチ法である。750gのmXDA(5.51モル)及び7.5gのPd/C触媒を1ガロンオートクレーブバッチ反応器中に入れた。反応器をシールし、次いで、窒素でパージし、その後、水素でパージし、反応器からすべての空気を除去した。約15〜20分にわたって、758.6gのベンズアルデヒド(7.15モル)を反応器に添加した。ベンズアルデヒドの添加が完了した後に、反応器の内容物をさらに15分間又は反応が完了するまで攪拌し、その時点で、反応発熱が沈静化し始めた。この時点で、反応器を8.17atm(120psi)に水素で加圧し、反応器を80℃に加熱した。水素吸収の速度が遅くなったときに、圧力は54.4atm(800psi)に増加し、温度が120℃に上昇した。水素化プロセスを水素吸収速度が0.0034MPa/分(0.5psi/分)未満に低下するまで続けた。合計水素化時間は約5時間であった。反応器を60℃に冷却し、そして脱圧し、反応生成物をろ過して、触媒を除去した。20mmHg真空下で120℃までの温度で操作しているロータリーエバポレータを用いて水を除去した。得られた反応生成物はベンジル化mXDAであり、粘度、AHEW及びアミン価(測定値)であった。特性を表2に示す。
【表2】
【0062】
[比較例3:スチレン化メタキシリレンジアミン約1.30/1.0のモル比の合成]
Mitsubishi Gas Co. Inc., Japan 製の、817.2g(6.0モル)のメタキシリレンジアミン(以下において、MXDAと呼ぶ)、及び、Merk製の試薬である2.9g(0.13モル)のリチウムアミドを、攪拌機、温度計、窒素ガスインレット、滴下漏斗及び凝縮器を備えた2リットルの内部体積を有するフラスコに装填した。
【0063】
その後、その温度を窒素ガス流中で攪拌しながら80℃に上げた。温度を上げた後に、Wako Pure Chemicals Industries Ltd., Japan製の特殊等級試薬である、625.2g(6.0モル)のスチレンをそれに2時間にわたって滴下により添加した。滴下添加の完了後に、その温度を80℃に1時間維持した。
【0064】
その後、80℃の618.2gの蒸留水をそれに添加した。15分間の攪拌後に、反応液体を5分間静置して維持し、分離させた。フラスコ中の液体の上層を除去した。上記と同一の量の80℃の蒸留水を残留物に添加し、同一の操作を再び行った。7回同一の操作を繰り返した後に、下層に溶解した蒸留水を真空蒸留により除去し、1115.2gのポリアミノ化合物を得て、それは種々の付加生成物及び0.7質量%の未反応MXDAを含んだ。
【表3】
【0065】
[例4〜6−例1、2及び3から調製されたコーティング]
表4は例4、5及び6中に使用されたアミン−エポキシ組成物を要約する。例えば、例4の組成物は100gのEPIKOTE(商標)828エポキシ樹脂及び44.2gの例1の硬化剤組成物であった。表1に示すとおり、例1はベンズアルデヒドとmXDAの反応、次いで、還元性水素化の生成物を含む硬化剤組成物であった。例4、5及び6に示す硬化剤及びそのそれぞれの量は表4及び5に従って使用された。
【0066】
表1、2及び3からの硬化剤の粘度を比較すると、ベンズアルデヒドによるベンジル化は最終製品の粘度にあまり影響を及ぼさないことが判る(例1〜3を参照されたい)。ポット寿命に関して、式(I)のポリアミンのベンジル化はスチレン化と(同程度の反応で)大体同一の効果を有する。
【0067】
表4は、ベンジル化が樹脂の架橋度に対して若干好ましい影響を及ぼすことを示す。Tgは若干高かった。同一の脆さとなった。
【表4】
【0068】
アミン−エポキシ組成物の乾燥時間を表5に要約する。乾燥時間は23℃及び65%相対湿度(RH)でBek-Kollerレコーダを用いて、ASTM D5895により決定した。手順は約6ミルの湿潤フィルム厚さでアミン−エポキシ組成物にてガラスパネルをコーティングすることを含んだ。長時間又は短時間乾燥時間のいずれかでのコーティング組成物の選択は最終使用用途の要求による。一般に、表5中の結果は本発明の例4、5及び6のコーティングが使用されるベンジル化/スチレン化の程度により種々の乾燥時間を有した。
【0069】
表5は、また、23℃及び50%相対湿度で、それぞれ、第一日、第三日及び第七日後のペルソー硬度試験結果を示す。コーティングをガラスパネルに湿潤膜厚さ約8ミルで塗布し、ISO1522により試験した。表5に示すとおり、本発明の例4及び5の配合物はスチレン化硬化剤と同様のペルソー硬度発現を有する。さらに、本発明の例4及び5のコーティングはスチレン化アミン例よりも、24時間後により速い硬度発現を有した。
【0070】
表5は23℃及び50%相対湿度で、それぞれ、第一日、第三日及び第七日後の60°光沢験結果を示す。示した結果は10個の測定値の平均である。コーティングをガラスパネルに湿潤膜厚さ約8ミルで塗布し、ASTM D523により試験した。光沢はガードナー光沢計を用いて60°の角度で測定した。測定は黒色カードボード背景上に配置したガラスパネルを用いて行った。表5に示すとおり、例4は遊離アミンのより高い含有分のために、例5よりも低い光沢値を有する。しかしながら、例5は高い光沢値を有する例6と良好に比較され、これは両方の場合に、硬化剤の樹脂との良好な混和性によるものである。
【表5】
【0071】
標準的なビスフェノール−A系エポキシ樹脂(DGEBA,EEW=190)と化学量論的に混合したアミン硬化剤組成物を含む150gの物質に対してポット寿命/ゲル化時間を試験し、Techneゲルタイマーで25℃にて測定した。
【0072】
二成分(2K)接着剤では、長いポット寿命は、結合する必要がある大きな複合材構造上で複数のポイントに接着剤ビードを適用するために十分な処理時間を可能にするので、物性を維持しながら、脂肪族アミン系接着剤に対するポット寿命を改良することは魅力的である。接着剤において長い開放時間における有意な要因は開放時間の間の硬化を最小限に確保するが、接着剤結合を有意に弱めることがあるスキンオーバーを防止するために最小限のブラッシュ(blush)を確保するための長時間ポット寿命である。このことは最初に塗布した接着剤ビードの結合は最後に塗布した接着剤ビードの結合よりも弱く、そして部品に弱いポイントを形成する大きな部品で重要である。
【0073】
種々のアミン硬化剤組成物を標準的なビスフェノール−A系エポキシ樹脂(DGEBA,EEW=190)と化学量論的に混合し、冷間圧延鋼板上に2ミルの厚さで塗布した。パネルを室温で硬化させ、そして2日及び7日で評価した。25℃でのブラッシュ抵抗等級を下記の表6に示す。
【0074】
表6において、例4は、遊離アミン含有分がより高いことから、例5よりも低いブラッシュに対する抵抗を示した。しかしながら、例5は高いブラッシュに対する抵抗を有する例6と有利に比較され、このことは、両者の場合に、遊離アミン価が低く、かつ、硬化剤と樹脂との混和性が良好であるからである。
【表6】
【0075】
ベンジル化又はスチレン化はこれらのアミンのブラッシュ抵抗性を改良する。示した試験では、式(I)のポリアミンのベンジル化はスチレン化の使用よりも若干にしか改良を示していないが、ベンジル化のために使用されるプロセスは、硬化エポキシ樹脂の特性になんらの損失をも伴わずに、スチレン化を用いるよりも容易であることが生成物1及び2の合成から明らかである。
【0076】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更がなされ、そして要素を等価物で置き換えることができることは当業者に明らかであろう。さらに、特定の状況又は材料を本発明の教示に適用するために多くの変更をその本質的範囲を逸脱することなくなされることができる。それゆえ、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の形態として開示されている特定の実施形態に限定されず、本発明は添付の特許請求の範囲に該当するすべての実施形態を包含することが意図される。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物を含む硬化剤組成物であって、前記ベンジル化ポリアミン化合物はベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と下記式
2N−CH2−A−CH2−NH2
(上式中、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)によるポリアミンの反応生成物である、硬化剤組成物。
(付記2)前記ベンジル化ポリアミン化合物はベンジル化オルトキシリレンジアミン、ベンジル化メタキシリレンジアミン、ベンジル化パラキシリレンジアミン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、付記1に記載の硬化剤。
(付記3)前記少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物は下記式
【化1】
(上式中、RAは置換もしくは未置換ベンジル基であり、RB、RC及びRDは独立にRAであるか、又は、水素原子であり、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)を有し、ただし、前記ベンジル化ポリアミン化合物は2個より多くの活性アミン水素原子を有する、付記1に記載の硬化剤。
(付記4)RA及びRCはベンジル又はバニリルである、付記3に記載の硬化剤。
(付記5)前記ベンズアルデヒド化合物は式PhCHOによる置換ベンズアルデヒドを含み、式中、Phは芳香環を含む部分であり、Phは未置換であるか、又は、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル、メトキシ、エトキシ、アミノ、ヒドロキシルもしくはシアノ基の1つ以上により置換されている、付記1に記載の硬化剤。
(付記6)前記ベンズアルデヒド化合物はベンズアルデヒド又はバニリンである、付記1に記載の硬化剤。
(付記7)前記ハロゲン化ベンジル化合物はフッ化ベンジル、塩化ベンジル、臭化ベンジル又はヨウ化ベンジルからなる群より選ばれる、付記1に記載の硬化剤。
(付記8)前記ハロゲン化ベンジル化合物は式PhCH2−による置換ベンジル基を含み、式中、Phは芳香環を含む部分であり、Phは未置換であるか、又は、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル、メトキシ、エトキシ、アミノ、ヒドロキシルもしくはシアノ基の1つ以上により置換されている、付記1に記載の硬化剤。
(付記9)ベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と下記式
2N−CH2−A−CH2−NH2
(上式中、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)によるポリアミン化合物を接触させること、
前記ベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と前記ポリアミン化合物をベンジル化ポリアミン化合物を生成するのに十分な条件下に反応させることを含む、硬化剤組成物の形成方法。
(付記10)前記ベンジル化ポリアミン化合物はベンジル化オルトキシリレンジアミン、ベンジル化メタキシリレンジアミン、ベンジル化パラキシリレンジアミン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、付記9に記載の方法。
(付記11)前記少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物は下記式
【化2】
(上式中、RAは置換もしくは未置換ベンジル基であり、RB、RC及びRDは独立にRAであるか、又は、水素原子であり、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)を有し、ただし、前記ベンジル化ポリアミン化合物は2個より多くの活性アミン水素原子を有する、付記9に記載の方法。
(付記12)RA及びRCはベンジル又はバニリルである、付記11に記載の方法。
(付記13)前記ベンズアルデヒド化合物は式PhCHOによる置換ベンズアルデヒドを含み、式中、Phは芳香環を含む部分であり、Phは未置換であるか、又は、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル、メトキシ、エトキシ、アミノ、ヒドロキシルもしくはシアノ基の1つ以上により置換されている、付記9に記載の方法。
(付記14)前記ベンズアルデヒド化合物はベンズアルデヒド又はバニリンである、付記9に記載の方法。
(付記15)前記ハロゲン化ベンジル化合物はフッ化ベンジル、塩化ベンジル、臭化ベンジル又はヨウ化ベンジルからなる群より選ばれる、付記9に記載の方法。
(付記16)前記ハロゲン化ベンジル化合物は式PhCH2−による置換ベンジル基を含み、式中、Phは芳香環を含む部分であり、Phは未置換であるか、又は、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル、メトキシ、エトキシ、アミノ、ヒドロキシルもしくはシアノ基の1つ以上により置換されている、付記9に記載の方法。
(付記17)前記ベンズアルデヒド化合物及びポリアミン化合物を、ベンズアルデヒド化合物/ポリアミン化合物のモル反応体比1:1〜1.6:1で反応させる、付記9に記載の方法。
(付記18)前記ハロゲン化ベンジル化合物及びポリアミン化合物を、ハロゲン化ベンジル化合物/ポリアミン化合物のモル反応体比1.2:1〜約1.5:1で反応させる、付記9に記載の方法。
(付記19)前記硬化剤組成物は3個以上の活性アミン水素を有する少なくとも1種の多官能アミンをさらに含む、付記9に記載の方法。
(付記20)少なくとも1種のベンジル化ポリアミン化合物を含む硬化剤組成物であって、前記ベンジル化ポリアミン化合物はベンズアルデヒド化合物もしくはハロゲン化ベンジル化合物と下記式
2N−CH2−A−CH2−NH2
(上式中、Aはフェニレン基又はシクロヘキシレン基である)によるポリアミンの反応生成物である、硬化剤組成物、及び、
少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ組成物、
の接触生成物を含む、アミン−エポキシ組成物。
(付記21)前記硬化剤組成物は3個以上の活性アミン水素を有する少なくとも1種の多官能アミンをさらに含む、付記20に記載のアミン−エポキシ組成物。
(付記22)付記20に記載のアミン−エポキシ組成物を含む物品。
(付記23)前記物品は接着剤、コーティング、プライマー、シーラント、硬化性コンパウンド、建設製品、床材製品及び複合材製品からなる群より選ばれる、付記22に記載の物品。