【文献】
International Journal of Medical Microbiology,2007年,Vol.297 No.Suppl.43,p.124
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記最小炭素培地が、鉄、ビオチン、ニコチン酸、D−パントテン酸、ピリドキサール、ピリドキサミンジヒドロクロリド、チアミンヒドロクロリド、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される補助成分を含む、請求項1または2に記載の方法。
前記複製レベルを、光学密度測定、PCRによるDNA測定、平板計数、限界希釈解析、酵素結合免疫吸着アッセイ、直接的顕微鏡的計数、並びに発光又は着色化合物により微生物を標識して輝度又は着色を測定することからなる群から選択される方法によって判定する、請求項1に記載の方法。
前記試験薬剤と、前記第1ヒト皮膚片利共生微生物とは異なるある量の第2ヒト皮膚片利共生微生物と、前記最小炭素培地と、を含む、第2培養液を準備することと、前記第2培養液の代謝産物濃度又は複製レベルを測定することと、前記第2培養液の代謝産物濃度又は複製レベルを第2対照値と比較することと、前記第1培養液の代謝産物濃度又は複製レベルが前記第1対照値より大きく、前記第2培養液の代謝産物濃度又は複製レベルが前記第2対照値より大きい場合、前記試験薬剤が広域プレバイオティクス剤であると識別することと、を更に含み、前記第2対照値は、前記第2培養液の前記第1ヒト皮膚片利共生微生物と前記最小炭素培地とを含むが、前記試験薬剤を含まない第2対照培養液の代謝産物濃度または複製レベルを測定することによって得られる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
試験薬剤と、ある量の前記第1ヒト皮膚片利共生微生物とは異なる第2ヒト皮膚片利共生微生物と、前記最小炭素培地と、を含む、第2培養液を準備することと、前記第2培養液の代謝産物濃度又は複製レベルを測定することと、前記第2培養液の代謝産物濃度又は複製レベルを第2対照値と比較することと、前記第1培養液及び前記第2培養液のうち一方の代謝産物濃度又は複製レベルが対応する対照値より大きく、前記第1培養液及び前記第2培養液のうち別の方の代謝産物濃度又は複製レベルが対応する対照値未満であるとき、試験薬剤が選択的プレバイオティクス剤であると識別することと、を更に含み、前記第2対照値は、前記第2培養液の前記第1ヒト皮膚片利共生微生物と前記最小炭素培地とを含むが、前記試験薬剤を含まない第2対照培養液の代謝産物濃度または複製レベルを測定することによって得られる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
請求項1に記載の方法によってプレバイオティクス剤を識別することと、前記プレバイオティクス剤を化粧品組成物に組み込むことと、を含む、化粧品組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ヒト皮膚には、多種多様な微生物が定着している。通常は、かつてはノトバイオートであるヒト胎児への定着を典型的に起こす、母体の微生物及びその他環境的事象に乳児が曝露される、出産直後に定着が始まる。初期定着以降は、ヒト皮膚は絶えず変化し、宿主の内因性及び外因性因子に応答して、時間と共に常在微生物相の構成が変わる。
【0003】
一般には、ヒト皮膚に定着する微生物は、(1)散発的な定着微生物で、典型的にはヒト皮膚上で増殖しないもの、(2)増殖でき、比較的短い期間皮膚上に留まるもの、及び(3)持続的に皮膚に定着できるもの、の3つに明確に分類できる。これらの3つの分類の構成は、ヒトの皮膚及び/又は体の好ましい位置に対して異なる場合がある。ヒト皮膚は、一般には冷たく酸性で乾燥した環境であり得るが、皮膚表面の様々な場所で様々な微小環境が見つかることがある。例えば、鼠径部、腋窩、及び足趾の間は、典型的には皮膚及び/又は体の他の部位よりも高温高湿で、このような微小環境に適する微生物(例えば、黄色ブドウ球菌及びコリネバクテリア)の成長を促進する恐れがある。別の例では、典型的にヒトの顔面、胸部、及び背部に存在する脂腺は、プロピオン酸菌等の親油性微生物の成長を促進する恐れがある。また、食事、仕事、衣服選択の変化、又は抗生物質、抗菌石鹸、保湿剤、化粧品、手指消毒剤、及び/若しくはその他抗菌皮膚用製品の使用も、ヒト皮膚微生物相の種類及び/又は量に見られる変化に寄与すると知られている。また、温度、湿度、及び紫外線放射への曝露等の環境要因も、ヒト皮膚微生物相の種類及び/又は量の変化の原因となることが知られている。更に、宿主のゲノム、年齢、性別及び性成熟の度合い等の内因性宿主要因が、ヒト皮膚微生物相の状態に影響する場合がある。
【0004】
ヒト皮膚微生物叢の少なくとも一部の構成微生物は、例えば、ヒト免疫系の刺激及び/又は抗菌物質の産生によって、ヒト宿主に利益をもたらす。例えば、表皮ブドウ球菌は、黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成を阻害する抗菌ペプチドを産生することが示されている。一方、皮膚微生物相の繊細なバランスを乱す撹乱により、宿主及び/又は微生物相に望ましくない結果がもたらされる恐れがある。例えば、アクネ菌の増殖に伴う遊離脂肪酸副産物の産生増加により、座瘡の発生が促進される場合がある。異なる固体間のヒト微生物叢に見られる多様性及び/又は変動にもかかわらず、ヒト微生物叢の一部の構成微生物は、異なる人の間に共通して見られ得ると考えられる。これについては、特定の生物が、典型的にヒト皮膚微生物叢のかなりの部分を占めることが明らかとなっている。
【0005】
皮膚微生物叢の特定の構成微生物の成長及び/又は活性によって宿主に与えられる任意の望ましくない健康上及び/又は美容上の結果に対抗するため、様々な殺菌薬(例えば、抗生物質)が当該技術分野において既知である。殺菌薬の使用は、ヒト皮膚上の有害微生物の成長に関連する症状の低減に対して臨床的に有効な場合があるが、欠点がある。例えば、局所抗生物質、過酸化ベンゾイル、及びアゼライン酸等の殺菌薬は、有益な皮膚微生物相と望ましくない皮膚微生物相の両方に無差別に作用する傾向がある。有益な皮膚微生物相の死滅又は行動変化は、今度は、宿主に対する更に望ましくない健康上及び/又は美容上の影響、例えば、皮膚刺激につながる恐れがある。更に、特定の殺菌薬、特に局所抗生物質は、抗生物質耐性微生物叢(「スーパーバグ」と称されることもある)を促す恐れがある。
【0006】
皮膚微生物叢のバランスを乱す撹乱によって引き起こされる任意の望ましくない健康上及び/又は美容上の結果に対抗するための更に有利な戦略は、宿主に利益をもたらす皮膚微生物叢の構成微生物に対してプレバイオティクス活性を呈する剤を識別することであり得る。続いて、このようなプレバイオティクス剤を含有する組成物を、プレバイオティクス剤を許容可能な皮膚科学的キャリアと組み合わせることによって配合し、局所的に用いる。例えば、ヒトでの使用に好適な保湿剤、ハンドソープ及び/又はボディソープ、化粧品、手指消毒剤、ボディローション、並びに/又はその他皮膚用製品を配合し、プレバイオティクス剤を含めることができる。プレバイオティクス剤を含むスキンケア組成物は、例えば、皮膚刺激の可能性を軽減することによって、従来の殺菌薬のより望ましい代替品を提供できる。
【0007】
現在のところ、限られた数の剤について、ヒト皮膚微生物叢の特定の構成微生物にプレバイオティクス活性を呈することが確認されている。無数の潜在的プレバイオティクス剤のうち、どれが皮膚微生物相に対する好適なプレバイオティクス活性を呈し、局所スキンケア組成物内に組み込むのに好適であるかを効率的に予測することに対して、当該技術分野において一般に認められた既知の方法はない。結果的に、従来のプレバイオティクス剤のスクリーニング法は、所望のプレバイオティクス剤を識別するために、困難で、時間がかかり、かつ面倒な一連のアッセイを使用することもある。そのうえ、従来のアッセイで使用される富栄養培地は、特定の試験薬剤に関するプレバイオティクス活性の検出を試みるとき、所望の感度をもたらさない。換言すれば、好適なプレバイオティクス試験薬剤が、従来のアッセイの感度欠如によって見落とされている恐れがある。
【0008】
当業者は、ヒト皮膚微生物叢の構成微生物に対してプレバイオティクス活性を呈する剤を識別するための、好適なハイスループットスクリーニング法を長く望んでいるが、かかる方法の開発に付随する様々な問題によって開発に成功していない。例えば、皮膚微生物叢の個人間の多様性、アッセイ費用、アッセイに要する試験液の量、培地選択、細胞型選択、検出感度、少量の培養液で一貫したデータを得る困難さ、アッセイ形式、及びアッセイ実施に要する時間は、個々に及び集合的に、産業上適したプレバイオティクス剤のハイスループットアッセイの開発に関する障害の一因となる。そのようなアッセイに好適な培地を識別することも、ヒト皮膚微生物叢の特定の構成微生物による独特の栄養的及び環境的要件のために困難な課題である。加えて、高価で時間がかかるインビボ試験の実施に先立ち、皮膚の潜在的プレバイオティクス化合物の商用大規模スクリーニングにおいて、恐らくより予測的(predicative)な方向のロースループットアッセイと組み合わせた、ハイスループットアッセイを組み込む段階的アッセイ方法の開発に対する要望がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
用語の定義
「ATPアッセイ」は、試験サンプルのアデノシン三リン酸(「ATP」)濃度を測定し、試験値を得ることを意味する。
【0015】
「植物性」は、植物の物質、抽出物又は誘導体を意味する。
【0016】
「化粧品組成物」は、哺乳類の皮膚及び/又は他のケラチン性組織、例えば、毛髪及び爪に局所適用するのに好適な組成物を意味する。局所は、皮膚又は他のケラチン性組織の表面を意味する。化粧品組成物には、任意の着色化粧品、爪、又はスキンケア製品を含む。「スキンケア」は、皮膚の状態の調節及び/又は改善を意味する。スキンケアの非限定例として、より平滑でより均一な外観及び/又は感触の提供による皮膚外観及び/又は感触の改善、油っぽい及び/又はてかった皮膚の外観の低減が挙げられる。化粧品組成物の非限定例として、ファンデーション、マスカラ、コンシーラー、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウ、頬紅、口紅、リップクリーム、フェイスパウダー、固形エマルションコンパクト等といった、顔面に着色を残す製品が挙げられる。「スキンケア製品」として、スキンクリーム、保湿剤、ローション、及びボディソープが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
「皮膚科学的に許容可能なキャリア」は、ケラチン性組織への局所適用に好適で、良好な審美的特性を有し、本発明の実施によって発見されたプレバイオティクス剤及び場合によって他の構成成分と相溶し、並びに、いかなる望ましくない安全性、つまり毒性に対する懸念を招かないキャリアを意味する。皮膚科学的に許容可能なキャリアは、例えば、単純な溶液(水系又は油系)固体形態(例えば、ジェル又はスティック)及び乳濁液等の様々な形態であってよい。
【0018】
「代謝」は、微生物内で起こる任意の化学反応を意味する。代謝には、同化、生体分子の合成(例えば、タンパク質合成及びDNA複製)及び異化(生体分子の分解)が含まれる。
【0019】
「増加」は、基礎濃度を上回って、又は対照と比較して増加していることを意味する。
【0020】
「微生物溶解物」は、微生物の溶解によって生じる細胞成分及び試薬の混合物を意味する。「溶解」は、処理(例えば、化学的、生物学的、機械的、又は熱的処理)によって細胞の細胞壁及び/又は細胞膜を破壊し、その結果、細胞の生物学的構成要素の一部又は全部を放出する作用を含む。
【0021】
「微生物」は、細菌、真菌、藻類を意味する。
【0022】
「最小炭素培地」(「MCM」)は、微生物の生存又は限定的成長(すなわち、24時間で、コロニー形成単位(「CFU」)で0.2ログ未満の増加)の支持が可能な、炭素が限定的資源である物質の混合物を意味する。特定の実施形態では、MCMは、液体又はジェルの形態であってよい。最小炭素必要量は、異なる微生物間で差があり得るため、MCM中に存在する炭素量も変化し得る。いくつかの実施形態では、例えば、MCMは、完全に炭素を含まなくてよい。いくつかの実施形態では、MCMは、実質的に炭素を含まなくてよい(すなわち、培地重量に基づき0.001重量%未満)。いくつかの実施形態では、MCMは、0.001%〜0.1%の炭素を含有してよい。炭素量を、モル分率、又は存在する炭素の分子量%として決定する。例えば、グルコースは40炭素重量%である。
【0023】
「PCR」は、ポリメラーゼ連鎖反応を意味し、リアルタイムPCR、定量的PCR(「QPCR」)、半定量的PCR、及びこれらの組み合わせを含む。
【0024】
「プレバイオティクス剤」は、微生物が栄養素として利用でき、微生物の成長及び/又は活性を誘導でき、微生物の複製を誘導でき、微生物がエネルギー源として利用でき、及び/又は微生物が生体分子(すなわち、RNA、DNA、及びタンパク質)の産生に利用できる、任意の物質又は物質の組み合わせを意味する。プレバイオティクス剤の非限定例として、ムコ多糖、オリゴ糖、多糖類、アミノ酸、ビタミン、栄養素前駆体、回収された生物有機体の代謝産物、微生物溶解物、脂質、及びタンパク質が挙げられる。
【0025】
「複製」は、娘細胞への微生物の分裂(例えば、有糸分裂又は二分裂による)を意味する。
【0026】
「選択的プレバイオティクス剤」は、皮膚片利共生微生物の標的種の代謝及び/又は複製を増加させるが、別の非標的種では増加させない、試験薬剤又は試験薬剤の組み合わせを意味する。
【0027】
「皮膚」は、表皮、真皮、及び下皮(すなわち、皮下組織)を意味し、また粘膜及び皮膚付属器(adenexa)、特に毛包、毛根、毛球、爪床(lectulus)の腹側上皮層、並びに脂腺及び汗腺(エクリン及びアポクリン)も含む。
【0028】
「皮膚片利共生微生物」は、インビトロ、エクスビボ及び/又はインビボで、ヒト皮膚に定着できる(すなわち、ヒト皮膚上で生存して増殖できる)又は一時的に存在できる、原核生物及び真核生物の両方を意味する。代表的な皮膚片利共生微生物として、アルファプロテオバクテリア、ベータプロテオバクテリア、ガンマプロテオバクテリア、プロピオニバクテリア、コリネバクテリア、アクチノバクテリア、クロストリジアーレス、ラクトバチルス、スタフィロコッカス、バチルス、ミクロコッカス、ストレプトコッカス、バクテロイデス、Flavobacteriales、エンテロコッカス、シュードモナス、マラセチア、Maydida、デバリオマイセス(Debaroyomyces)、及びクリプトコッカスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「試験薬剤」は、任意の合成的に若しくは天然に存在する要素若しくは化学的化合物、又は、例えば、コンビナトリアルライブラリーに含まれる若しくは生成される分子及び巨大分子、又はコンピュータ若しくは三次元解析によってデザインされた構造の分子及び巨大分子を含む、任意の組換えで生成された分子を意味する。本明細書で有用な試験薬剤はまた、有機源の粗又は精製抽出物(例えば、動物性抽出物、植物性抽出物、及び微生物溶解物)も含む。本明細書の試験薬剤は、不活性緩衝液(例えば、生理食塩水)又は溶媒と組み合わせてよい。好適な溶媒の非限定例として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール及びエタノール等のアルコール、並びに水及び培養培地等の水溶液が挙げられる。
【0030】
冠詞「a」及び「an」は、1つ以上の請求又は記載されているものを意味するものと理解される。
【0031】
本明細書で引用される特定例は、ヒトの皮膚片利共生微生物のプレバイオティクス剤の識別に言及し得るが、本明細書の方法がかかる実施形態に限定されないことが理解される。実際に、本方法を、プレバイオティクス剤を識別するためのアッセイが必要とされるいかなる状況においても、大いに有利に実施することができる。本明細書に含まれる発明を実施するための形態は、当業者が本明細書の新規方法を別の用途に容易に適応できるようにすると考えられる。そのうえ、特定例では、方法又はその一部を手動で実施するように記載し得るが、当業者は、方法又はその例示された一部を自動化できることを理解するであろう。
【0032】
皮膚片利共生微生物の選択
哺乳類の皮膚表面には、典型的に、種、固体、及び更には固体上の位置によって異なり得る様々な微生物が含まれる。ヒト皮膚上の微生物は、集合的に微生物叢を形成する。健康な皮膚微生物叢は通常、バランスの取れた皮膚片利共生微生物群からなる。ヒトの皮膚微生物叢は、宿主の皮膚の健康及び/又は外観を促進するための手助けをする様々な常在微生物を含み得る。しかし場合によっては、病原菌、酵母、及びかび等の特定の望ましくない微生物が、皮膚への定着を試みる場合があり、健康な微生物叢のバランスを狂わせることがある。幸いにも、典型的に皮膚微生物叢に存在する常在微生物は、様々な能動的及び受動的機構を進化させており、望ましくない微生物の皮膚上への定着を阻止及び/又は予防する。かかる受動的方法の例として、望ましくない微生物が占有し得るニッシェを奪うこと、及び望ましくない微生物の成長及び増殖に必須の栄養素を消費することが挙げられる。能動的機構では、望ましい微生物は、望ましくない微生物の増殖を阻害する、又は更にはそれらを完全に死滅させる代謝産物を産生することがある。望ましくない微生物の阻止に加え、特定の常在微生物相が先天免疫に影響することを示す証拠が相次いでいる。例えば、皮膚微生物叢の特定の構成微生物が、脂質、タンパク質、及び炭水化物の代謝によって、いわゆる皮膚の「酸外套(acid mantel)」の維持に役立つ酸を産生することが示されている。
【0033】
微生物叢を健康でバランスの取れた状態に保つ、及び/又は微生物叢を健康でバランスの取れた状態に戻すための1つの方法は、特定の望ましい微生物に、生育に十分な栄養素を提供し、それによって望ましくない細菌を抑え及び/又は死滅させることであってよい。例えば、日々のスキンケア法において人が用いる組成物中に、1つ以上のプレバイオティクス剤を含めることが望ましいことがある。しかしながら、微生物構成の個人差から、特定の剤が、ある人に対する皮膚片利共生微生物に有効なプレバイオティクス剤として好適であるが、他者にとってはそうでない場合があるため、容易な作業ではない。異なる個人の皮膚片利共生微生物には大きな差があるという長年の考え方にも関わらず、いくらかの共通点が存在することがわかっている。
【0034】
化粧品スキンケア組成物は一般に、ヒトの顔面、手及び/又は前腕に適用するため、インビトロスクリーニング法において、ヒトの顔面、手及び/若しくは前腕に十分に存在し、インビボ、エクスビボ及び/若しくはインビトロ解析及び比較を可能にする、並びに/又はプレバイオティクス剤の存在下で皮膚微生物叢及び/若しくは皮膚の健康に良い影響を及ぼすことができる、ヒト皮膚片利共生微生物を選択することが望ましい。ヒトの顔面及び前腕の両方の微生物叢は、研究されて、Corynebacterium jeikeium(「C.jeikeium」)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(「表皮ブドウ球菌」)、及びプロピオニバクテリウム・アクネス(「アクネ菌」)が様々な程度で、顔面及び前腕の両方に測定可能な量で存在することがわかっており、これらの微生物は、特定の実施形態では、インビトロスクリーニング法での使用に好適な候補微生物となり得る。
【0035】
図1は、ヒトの顔面及び前腕に存在し得る、類似するが多様な微生物叢集団を示す。
図1に示される微生物は、リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)で濡らした無菌スワブを用いて皮膚をサンプリングすることによって単離した。
図1に示すQPCR解析は、スワブサンプルから単離したDNAを使用した。
図1に示すように、スタフィロコッカス、コリネバクテリウム及びアクネ菌は全て、サンプリングされた個人の顔面及び前腕に存在している。したがって、プレバイオティクス剤スクリーニング法においてアクネ菌、スタフィロコッカス及び表皮ブドウ球菌を含めると、潜在的プレバイオティクス剤のインビボ効果を予測するのに特に有用であり得る。
図1はまた、アクネ菌は、前腕よりも顔面によりよく見られることがある一方、コリネバクテリウム及びスタフィロコッカスについてはその反対であると思われることも示す。したがって、アクネ菌に対するインビトロスクリーニング法によって識別が成功した潜在的プレバイオティクス剤は、前腕及び顔面微生物叢の構成に相応に貢献していることから、皮膚の健康及び/又は皮膚微生物叢に、確実に影響する可能性があり得る。一方、コリネバクテリウム及びスタフィロコッカスに対するインビトロスクリーニング法によって識別が成功した潜在的プレバイオティクス剤は、前腕及び/又は類似する微生物叢構成を有する別の身体部位に特異的な、標的化された皮膚健康上の利益をもたらすのに使用できる。
【0036】
皮膚微生物叢及び/又は皮膚の健康に良い影響を及ぼし得る皮膚片利共生微生物について、C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌は、潜在的プレバイオティクス剤を有する化合物と共に提供されると、皮膚の健康及び/又は望ましい微生物叢利益をもたらすと考えられる。特に、C.jeikeiumが鉄を捕捉するシデロホアを産生することが示されている。C.jeikeiumはまた、マンガン獲得に対する特殊機構も利用しており、これらは両方とも特定の望ましくない微生物の成長に必須である。
【0037】
表皮ブドウ球菌は、例えば、トール様受容体(「TLR」)シグナル伝達を介するケラチノサイトの自然免疫応答に影響することによって、皮膚免疫系の刺激において積極的な役割を担うと考えられている。そのうえ、表皮ブドウ球菌は、黄色ブドウ球菌等のより毒性の高い微生物によっても認識される、宿主細胞上の受容体を占有すると考えられている。更に、表皮ブドウ球菌は、バクテリオシンと称されることもあるランチオニン含有抗菌ペプチドを産生し、特定の有害細菌種に対して抗菌性を呈することが知られている。かかるペプチドの例として、epidermin、epilancin K7、epilancin 15X Pep5、及びstaphylococcin 1580が挙げられる。表皮ブドウ球菌が産生するその他ペプチドは、種内及び種間競争相手に対抗する。ペプチドは、ストレプトコッカス・アウレウス(Streptococcus aureus)、A型レンサ球菌、及び化膿レンサ球菌に対して有効である。
【0038】
アクネ菌は、皮膚、口、尿路、及び大腸領域を含むヒトの体の様々な場所で見つかる片利共生非芽胞形成性杆状(桿状)グラム陽性菌である。アクネ菌は、皮膚の油分を消費し、短鎖脂肪酸及びプロピオン酸等の副産物を産生できることで、健康な皮膚バリアの維持に役立つことが知られている。アクネ菌等のプロピオニバクテリアも、バクテリオシン及びバクテリオシン様化合物(例えば、propionicin PIG−1、jenseniin G、propionicins SM1、SM2 T1、及びacnecin)を産生し、望ましくない乳酸産生細菌、グラム陰性菌、酵母、及びかびを抑制する。
【0039】
C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌によってもたらされると考えられる有益な機能、並びにヒトの前腕及び顔面の両方に優位に存在するようであることを考慮すると、これら皮膚片利共生微生物の1つ、2つ、更には全てに対して好適なインビボプレバイオティクス活性を呈する剤を識別することが望ましい。本明細書に記載の一部のスクリーニング法は、C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌の1つ以上を有利に利用できるが、本明細書に記載のスクリーニング法は、別の皮膚片利共生微生物でも有利に使用されてよい。
【0040】
最小炭素培地
一部の消費者が、皮膚上の微生物を死滅させる局所製品を望むことは周知である。この望みが、様々な抗菌製品(例えば、抗菌石鹸、拭き取り用品、硬表面クリーナー等)につながっている。特定の微生物に対する抗菌性について試験薬剤をスクリーニングするとき、従来の方法では、例えば、対象の微生物が典型的に消費する食糧源を大量に含むルリアベルターニ培地等の、富栄養成長培地を典型的に利用する。理論によって制限されることなく、富栄養成長培地中の微生物は増殖し、「栄養が十分な」微生物を試験することによって、微生物に対する試験薬剤の抗生物質活性がより容易に観察及び/又は測定できると考えられる。しかし、異なる微生物の栄養的要件が多様であることがわかっているため、異なる微生物種に対して試験薬剤をスクリーニングするとき、従来のアッセイでは、数種類の異なる富栄養成長培地又は培地成分を使わなくてはならない場合がある。試験において数種類の富栄養成長培地を調製することは、時間とリソースの観点から不必要に高価である場合がある。恐らく、より重要なことには、富栄養成長培地中に懸濁された微生物の使用は、抗生物質活性に対する試験薬剤のスクリーニングには好適であるものの、プレバイオティクス剤の識別に十分な感度をもたらさない場合がある。特に、従来のアッセイで典型的に使用される富栄養成長培地は、栄養が十分な微生物をもたらすことから、好適なプレバイオティクス剤を導入しても、代謝産物濃度又は複製レベル等の測定可能な生物学的指標において、わずかな変化を起こすか、全く変化がない場合がある。生物学的指標の変化が少ない、又は変化が見られないと、測定するとき、プレバイオティクス活性の判定に必要な、なくてはならない信号やダイナミックレンジが提供されないことがある。したがって、プレバイオティクス活性について試験薬剤をスクリーニングするとき、試験薬剤によって誘発される変化で、このような変化の測定に使用されるアッセイによって、容易に検出可能な代謝的変化を可能とする、単一の比較的簡素な培地を使用することが望ましいであろう。
【0041】
従来の方法とは異なり、比較的簡素な培地であり得る最小炭素培地は、プレバイオティクス剤のスクリーニングに特に好適であることが判明した。特に、C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌のそれぞれが、試験薬剤がプレバイオティクス剤である可能性を、効率的に測定可能である十分なダイナミックレンジをもたらしつつも、最大72時間以上(例えば、96又は120時間)、MCM中で生存できることが発見された。理論によって制限されることなく、微生物に対するプレバイオティクス活性の最初の兆候は、例えば、ATP産生の増加といった代謝促進であると考えられる。したがって、ATP濃度の測定は、そのアッセイが、微生物中のATPの変化を検出できるほど感度が高い限りは、微生物に対するプレバイオティクス活性の最も初期兆候の検出に有用であり得る。
【0042】
図2〜4は、ATPアッセイにおいて、C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌における、様々な量のグルコース(すなわち、炭素源)と、水対照に対する検出のダイナミックレンジとの間の比較を示す。
図2及び3では、24時間及び48時間における水対照に対するATP濃度の変化が示される。
図4では、24時間、48時間及び120時間における水対照に対するATP濃度の変化が示される。
図2に示すように、表皮ブドウ球菌は、グルコース0.1%以上で、ATP応答の劇的な増加を示す。したがって、炭素が比較的豊富な試験培地を用いると、対照からプレバイオティクス剤反応を検出する能力(すなわち、「ダイナミックレンジ」)は減少し得るが、これは従来のアッセイでは珍しくない。
図3及び4は、それぞれC.jeikeium及びアクネ菌についての同様の反応を示すが、閾値はより低い。有利なことには、
図2〜4に示すデータは、表皮ブドウ球菌、C.jeikeium、及びアクネ菌は、インビトロスクリーニング法と組み合わせる最小炭素培地の利用に適合する、最小炭素閾値(例えば、それぞれ<0.1%、<0.01%、及び<0.01%グルコース)を有することを示唆する。
【0043】
当然のことながら、グルコースを用いて、C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌が、インビトロスクリーニング法での使用に好適な最小炭素閾値及びダイナミックレンジを有することを確認したが、本明細書に記載のスクリーニング法での使用に好適な最小炭素培地は、グルコースを含む必要はなく、グルコースの閾値(例えば、<0.01%及び<0.1%)は、最小炭素培地中に存在する炭素量の限界を定めるものでもない。
【0044】
プレバイオティクス剤のスクリーニングに対して単一の簡素な培地を提供することに加え、MCMは優れた感度もまたもたらし得る。理論によって制限されることなく、MCM等の低栄養環境中に微生物を懸濁すると、微生物は物理的にストレスを受けるようになり、微生物の代謝産物濃度及び/又は複製レベルは、時間と共に増加しないと考えられる。実際に、MCM中の食糧源が不足しているため、微生物の代謝産物濃度及び/又は複製レベルは、1つ又は両方の指標が初めは比較的安定(すなわち不変)に見え得るものの、最終的に低下する(例えば、24又は48時間以上後)。MCM中の微生物の代謝産物及び/又は複製レベルは、時間と共に減少するか又は不変であるため、プレバイオティクス剤の導入の結果、1つ又は両方の指標で任意の相対的増加が起こると、富栄養環境に懸濁された微生物と比較して検出が容易であり得る。当然のことながら、指標レベルの相対的増加は、指標レベルの実増加を必ずしも必要としないが、その代わりに、MCM中の指標レベルと比べて減少速度が遅くてもよい。本明細書の新規方法で用いるのに好適なMCMは、少なくとも一部の微生物について、MCM中で少なくとも48時間以上生存できるが、増殖できない必要がある。例えば、微生物は、24時間で、CFU数で0.2ログ未満の増加を示し、それでも24及び48時間において、代謝産物濃度及び/又は複製レベルの測定に十分な量で存在しなくてはならない。
【0045】
特定の実施形態では、MCMは、NaCl、NH
4HPO
4、K
2HPO
4、MgSO
4・7H
2O、及び蒸留水の溶液として調製できる。例えば、MCMは、1〜100gのNaCl、0.1〜2.0gのNH
4HPO
4、0.001〜1.0gのK
2HPO
4、0.001〜1gのMgSO
4・7H
2O、及び十分な量の蒸留水を含む溶液の形態であってよい。特に好適な例では、MCMは、5.0gのNaCl、1.0gのNH
4HPO、1.0gのK
2HPO
4、0.1gのMgSO
4・7H
2O、及び500mLの蒸留水から形成される溶液であってよい。MCMは、任意に、ビタミン、アミノ酸、鉄、ビオチン、ニコチン酸、D−パントテン酸、ピリドキサール、ピリドキサミンジヒドロクロリド、チアミンヒドロクロリド、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、及び/又はこれらの組み合わせを補ってもよい。特定の実施形態では、成長に必須のアミノ酸で、微生物に炭素源(すなわち、食糧)を提供できるバリン及びアルギニンを含まないように、最小炭素培地を調製することが特に望ましい場合がある。試験でMCMを使用する前に、MCMを滅菌し(すなわち、微生物がいない状態)、培地への炭素源の追加を回避してもよい。MCMは、当該技術分野において既知の任意の好適な方法で滅菌できる。例えば、MCMを0.2μmのフィルタを通してよい。特定の実施形態では、MCMをフィルタに通す前に、MCMを100〜120℃の温度で、任意にオートクレーブ内で加熱してよい。MCMのpHは、微生物の代謝及び/又は倍加時間に影響し得るため、好適な範囲(例えば、6.6〜7.4、6.8〜7.2、又は更には7.0)内にしなくてはならない。MCMの調製中に、HCl又はNaOHを加えてそれぞれpHを下げる又は上げることによって、MCMのpHを調整してよい。
【0046】
図5〜10及び実施例1(以下に詳述する)を参照すると、試験化合物(例えば、ビートパルプ)について、C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌の富炭素培地に対する最小炭素培地のダイナミックレンジ比較が示される。C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌では、ビートパルプ化合物は、ATP及び平板計数法で測定するとき、皮膚片利共生微生物の活性を増加させた。最小炭素培地は、潜在的プレバイオティクス性を有する化合物のスクリーニングにおいて、富炭素培地に対して、C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌に対して顕著なダイナミックレンジをもたらす。様々な程度の潜在的プレバイオティクス性(又は場合によっては非潜在的プレバイオティクス性)を有する試験化合物間の区別することは、富炭素培地を使用するとはるかに困難であろう。
【0047】
当然のことながら、本明細書に開示される最小炭素培地は、本明細書に開示される特定の方法(例えば、ATPアッセイ及び平板計数)を含む様々なプレバイオティクス剤スクリーニング法で用いるのに特に好適であるが、別のより好ましくない培地も使用してよい。別の好適な培地の非限定例として、高度に希釈した富栄養成長培地(例えば、微生物に応じて10x〜1000X)、発酵ブロス、又はPBS溶液を挙げてよい。
【0048】
アッセイ用培養液の調製
試験薬剤をプレバイオティクス剤であると識別するため、試験薬剤の存在による対象微生物の生存及び/又は成長の促進を示さなくてはならない。特定の実施形態では、試験薬剤への微生物の曝露に起因する微生物の産生物を測定し、試験薬剤が生存及び/又は成長を促進したかどうかを判定できる。例えば、産生物は、細胞溶解によって放出される微生物の代謝産物濃度(例えば、ATP、NAD、NADP、NADH、NADPH、cAMP、cGMP、及び/又はADP)の測定可能な変化の形態であってよい。このような代謝指標は、好適な市販の酵素系アッセイで測定できる。追加的又は代替的に、微生物の数及び/又は濃度(すなわち、複製レベル)の変化を測定し、試験薬剤がプレバイオティクス剤であるかどうかを判定することが望ましい場合もある。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書の新規方法で使用する対象の微生物を、上述の3種類の皮膚片利共生微生物のうち1つ以上から選択してよい。追加的又は代替的に、対象の微生物を、確率論的方法によって選択してよく、又は特定の理由に基づいて選択してよい。選択される微生物は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法によって得てもよい。例えば、選択される微生物は、自然環境(例えば、ヒトの皮膚)から単離してもよく、又は好適な商業的供給源、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC)(Manassas,VA)から購入してもよい。サンプリング又は購入によって得られる微生物の数又は濃度が、試験のニーズに好適でない(例えば、低すぎる)ことは珍しくない。したがって、種培養液を使用し、微生物数を所望の量又は濃度に調節することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、グリセロール及び選択された微生物を含む事前に凍らせたアリコートの解凍させた量をルリアベルターニ培地又は別の富栄養成長培地に入れて、種培養液を得ることができる。特定の実施形態では、選択された微生物を含む寒天平板の穿刺部分、及び/又は選択された微生物を含む平板の画線された単一のコロニーを好適な富栄養成長培地に加えることで、種培養液を作製してもよい。続いて、種培養液を8〜16時間又はより長く好適な温度で培養することによって、種培養液中に存在する選択された微生物を増殖させる。好適な温度とは、選択した微生物に応じて、32℃〜39℃、34〜38℃、又は更には37℃であってよい。場合によっては、種培養液は、選択された微生物の成長に好適な制御された環境内での嫌気性培養を必要とすることもある。種培養液を培養しているとき、例えば、環境の湿度を制御することによって、及び/又は液体不透過性材料(例えば、蓋又はフィルム材料)で種培養液容器を覆うことによって、種培養液からの液体蒸発を最小限にすることが望ましいことがある。また、二酸化炭素及び窒素濃度等の他の環境要因を制御することも望ましい場合がある。
【0050】
選択された微生物の接種後24時間以内に、種培養液を回収してよい。種培養液の回収時間は、当該技術分野において周知であるように、種培養液の対数増殖期から定常期への移行期に相当するものでなくてはならない。回収を開始するため、種培養液を、微生物細胞のペレット化に十分であるが、依然として生存性を維持する速度(例えば、5000〜10,000×g、15分間、4℃)で遠心分離してよい。遠心分離によって、上清を完全にデカント(denayted)しなくてはならない。微生物細胞のペレットを生理食塩水溶液で洗浄し、複合培地から残存する望ましくない汚染物質を除去してよい。デカントし、任意に洗浄された細胞を、最適な培地(例えば、最小炭素培地)に再懸濁し、試験薬剤のスクリーニングに好適な量及び/又は濃度の選択された微生物を含む、使用培養液を得ることができる。特定の実施形態では、使用培養液は、種培養液の1X〜100X(例えば、10X)希釈であってよい。種培養液及び/又は使用培養液中の細胞の濃度は、当業者に既知の任意の手段(例えば、分光光度計で得た光学密度値を細胞数に関連付けること)によって算出できる。
【0051】
選択された微生物を使用培養液に再懸濁した後、1つ以上のサンプル(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上であるが、典型的には100個未満)を使用培養液から取り出し、好適な反応容器に入れる。反応容器は、当該技術分野において既知であり、多穴容器、単一穴容器、1つ以上のチューブ、従来の試験プレート(例えば、12穴プレート、96穴プレート、384穴プレート、1536穴プレート)等が非限定的に挙げられる。サンプルサイズは、反応容器の大きさ及び/又は微生物の濃度によって決定してよい。使用培養液からのサンプル中に、好適な量の選択された微生物が確実に含まれることが重要である。例えば、0.1mLの10X希釈使用溶液を、好適な96穴プレートの各ウェルに入れてよい。試験薬剤のスクリーニングのため、微生物は試験薬剤に曝露されなくてはならない。したがって、試験薬剤及び使用培養液サンプルを混合して試験サンプルを形成する。試験薬剤を、使用培養液からサンプルを加える前、後、又は同じ時間に反応容器に直接加えてよい。追加的又は代替的に、反応容器に入れる前に、使用培養液及び/又は1つ以上のそれらの要素と試験薬剤を混合してよい。試験薬剤と試験サンプルの比率は、任意の標準的希釈率、例えば1:10であってよく、試験容器内に微生物を加えるための十分な余地の確保に留意する。試験薬剤が多すぎると微生物に対して有害になり得るため、適切な比率を提供することが重要である。一方、試験薬剤が少なすぎると、アッセイの感度に望ましくない影響を及ぼす場合がある。
【0052】
プレバイオティクス剤として試験薬剤を識別するためのアッセイ
試験薬剤がプレバイオティクス剤かどうか、又は潜在的プレバイオティクス性を有するかどうかを決定するため、1つ以上の測定値を得て、微生物がいかに試験薬剤に反応するのかについて判定する。所定の時間(例えば、試験サンプル供給後、0、24、48、72、96及び/又は120時間)で、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10時間以上の時間間隔で、及び/又はこれらの組み合わせで、このような測定値を得ることが望ましい場合がある。当然のことながら、前述の時間及び時間間隔の例は、特に限定するものではなく、任意の好適な時間又は時間間隔を所望に応じて使用できる。
【0053】
いくつかの実施形態では、最小炭素培地及び1つ以上の皮膚片利共生微生物と共に、ATPアッセイを利用できる。ATPアッセイは、単独で又は段階的スクリーニング法の一部として、1つ以上の皮膚片利共生微生物の潜在的プレバイオティクス性を有する化合物のハイスループットスクリーニング法として使用するのに特に適していることが発見されている。ATP濃度は、多穴プレート中で非常に素早く(例えば、15又は20分未満)測定できることから、潜在的プレバイオティクス性について何百又は何千もの化合物を迅速にスクリーニングするのに非常に適する。続いて、これらの化合物を、より多くの時間で及び/又はリソース集約的な方法(例えば、平板計数)によって更にスクリーニングし、潜在的プレバイオティクス性を有する化合物の候補集団を精査できる。従来、ATPアッセイは平板計数の増加に相関しており、これは、ある培養条件下の細菌細胞あたりの測定されるATPの本来の量が比較的一定であり、そのため細胞数の増加がATPの増加と相関することを意味する。したがって、ATPによって従来評価される一般的な到達点は、ATPの一定の増加に対して細胞数の増加が相関することである。しかしながら、本明細書の潜在的プレバイオティクス性を有する化合物又は物質をスクリーニングするとき、まず問われるのは細胞数ではなく、むしろ存在する代謝活性量(細胞数の増加に至る場合も至らない場合もある)である。いかなる理論によって制限されるものではないが、最小炭素培地の存在下で代謝困難であるとき、細胞ATP濃度は減少する/プラトーになると考えられる。これら「飢餓」細胞は、プレバイオティクス食糧源に対する準備が整っており、それが存在するとATPを代謝し始めるが、細胞数の増加に至る場合も至らない場合もあるであろう。このように、段階的スクリーニング法において、ATPアッセイに続けて平板計数等のロースループットアッセイを行い、ATPアッセイにおいて潜在的プレバイオティクス性を有すると確認されている化合物又は材料の存在下で、細胞数/成長を評価することが望ましいことがある。平板計数アッセイは、より時間がかかりリソース集約的であるが、試験化合物の潜在的プレバイオティクス性の確実さについて、確証的評価をもたらす。
【0054】
様々な皮膚片利共生微生物に対する潜在的プレバイオティクス性を素早く評価するのに好適であるのに加え、ATPアッセイはまた、皮膚片利共生微生物を利用するプレバイオティクス剤スクリーニング法での使用において、良好な検出閾値も有する。
図11は、C.jeikeium、表皮ブドウ球菌及びアクネ菌における、ATPアッセイと様々な従来のアッセイとの間の比較を示す。
図11に示すように、ATPアッセイは、15分間という素早い検出時間と、はるかに時間がかかる平板計数アッセイに次いで2番目の検出限界をもたらす。したがって、ATPアッセイは、ハイスループットスクリーニングアッセイとして使用するために素早い検出時間と好適な感度をもたらす。
【0055】
使用する際、試験サンプル中のATP又はその他代謝産物の量を測定し、代謝産物濃度を示す試験値を得ることができる。この試験値を対応する対照値と比較し、微生物の代謝に何らかの変化があったかどうかを判定できる。試験値が対応する対照値より大きい場合、試験薬剤は、プレバイオティクス剤として、つまり潜在的プレバイオティクス性を有するものであると識別される。対照値は、対照培養液(例えば、選択された微生物を最小炭素培地中に懸濁することによって形成)中のATP量を測定することによって得てもよく、又は対照値は、事前に算出又は測定された値であってもよい。特定の実施形態では、対照値は、使用培養液又は試験サンプル中の、0分時点(すなわち、微生物を使用培養液中に再懸濁してから30分以内、及び/又は試験容器中に試験サンプルを供給した直後)のATP濃度を測定することによって得ることができる。試験サンプル及び/又は対照中のATP及び/又は他の代謝産物濃度は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法に従って測定してよい。ATP濃度の測定に特に好適な1つの方法は、Promega Corporation(Madison,WI)から入手可能なBacTiter−GLO Microbial Cell Viability Assayによるものである。BacTiter−GLO Microbial Cell Viability Assayは、ルシフェラーゼによる触媒作用でルシフェリンの酸化を促進し、その結果発光させるのに使用できる試薬を含む。発光量を照度計で測定して、存在するATP量に相当する値をもたらす。
【0056】
ATPアッセイの代わりに、いくつかの実施形態では、選択された微生物の複製レベルを測定(例えば、当業者に既知の従来の平板計数アッセイによって)し、試験薬剤がプレバイオティクス剤かどうかを判定することが望ましい場合がある。試験サンプルの複製レベルの変化は、試験サンプル中の微生物の数及び/又は濃度を対照値と比較することによって評価できる。比較によって複製レベルの増加が起こったことが示される場合、試験薬剤は、プレバイオティクス剤として、つまり潜在的プレバイオティクス性を有するものであると識別される。試験サンプルの光学密度の測定、PCRによる試験サンプル中に存在するDNA量、限界希釈解析の実施、酵素結合免疫吸着アッセイの実施、直接的顕微鏡的計数の実施、発光若しくは着色化合物により微生物を標識して輝度又は着色を測定すること、並びに/又は当該技術分野において既知の任意のその他好適な手段によって、試験サンプル中の微生物の数及び/若しくは濃度を測定し、試験値を得ることができる。対照値は、対照培養液(例えば、最小炭素培地中の選択された微生物)中の微生物の数及び/若しくは濃度を測定することによって得てもよく、又は対照値は、事前に算出又は測定された値であってもよい。特定の実施形態では、対照値は、使用培養液又は試験サンプル中の、0分時点の微生物の数及び/又は濃度を測定することによって得ることができる。
【0057】
試験薬剤が広域プレバイオティクス剤又は選択的プレバイオティクス剤であると識別するためのアッセイ
場合によっては、単一の試験薬剤又は試験薬剤の組み合わせが、2種以上の微生物、特に2種以上の皮膚片利共生微生物の代謝及び/又は複製を増加できる(「広域プレバイオティクス剤」)かどうかを判定することが望ましいことがある。この理由の1つは、個人間及び部位間に見られる微生物叢の可変性に起因し得る。特定の実施形態では、MCMの優れた感度を利用し、1つ以上の特定の皮膚片利共生微生物に対するプレバイオティクス活性を呈するが、別の皮膚片利共生微生物に対しては呈さない、1つ以上の試験薬剤をスクリーニングすることが望ましい場合がある。当該技術分野において、体の特定の部分への特定の微生物の存在が望ましくない場合があると認識されている。例えば、アクネ菌は一般に座瘡の発症と関連するため、ヒトの顔面の皮膚上でアクネ菌の成長を促すことが望ましくない場合がある。しかし、ヒトの顔面の皮膚上で表皮ブドウ球菌の成長を促すことが望ましい場合もある。したがって、この例では、アクネ菌ではなく表皮ブドウ球菌に対するプレバイオティクス活性を呈する試験薬剤の識別が望ましいだろう。このような選択的プレバイオティクス剤が識別されると、顔面に使用する化粧品組成物、特にスキンケア組成物に組み込み、顔面皮膚の健康を潜在的に改善することができる。
【0058】
広域プレバイオティクス剤又は選択的プレバイオティクス剤を識別するとき、試験される各微生物に対する使用培養液の調製が必要となる場合がある。各使用培養液は、別の培養液には存在しない少なくとも1つの微生物を含む。例えば、アッセイは、C.jeikeiumを接種した第1種培養液、表皮ブドウ球菌を接種した第2種培養液、及びアクネ菌を接種した第3種培養液を含んでよい。追加的又は代替的に、アッセイは、C.jeikeium及び表皮ブドウ球菌を接種した第1種培養液、並びに表皮ブドウ球菌及びアクネ菌を接種した第2種培養液を含んでよい。更に別の例では、アッセイは、C.jeikeiumを接種した第1種培養液、並びに表皮ブドウ球菌及びアクネ菌を接種した第2種培養液を含んでよい。使用培養液を上記のように形成してよい。使用培養液から1つ以上の試験サンプルを、少なくとも1つの試験薬剤と共に好適な試験容器に入れる。各試験サンプル中の微生物の代謝及び/又は複製を測定し、上述のように、試験薬剤が1つ以上の試験サンプルに対するプレバイオティクス活性を呈するかどうかを判定する。試験薬剤が、2種以上の微生物に対するプレバイオティクス活性を呈する(すなわち、2つの試験サンプルのそれぞれで測定した代謝産物及び/又は複製レベルが、両方とも対照値よりも大きい)場合、試験薬剤を広域プレバイオティクス剤と識別する。試験薬剤が、少なくとも1つの皮膚片利共生微生物に対するプレバイオティクス活性を呈し、少なくとも1つの別の皮膚片利共生微生物に対するプレバイオティクス活性を呈さない場合、試験薬剤は選択的プレバイオティクス剤である。
【0059】
図12〜14は、選択的な潜在的プレバイオティクス性を有する試験薬剤を識別するための、本発明のアッセイの能力を示す。これらの例では、試験薬剤は、B&T Company(Italy)から入手可能な商品名OLIVEM 450として販売される乳化剤である。アクネ菌、表皮ブドウ球菌及びC.jeikeiumに対するOLIVEM 450の潜在的プレバイオティクス性、又はその特性の欠落を、水対照に対する各微生物のATP濃度を測定することによって示す。
図12に示されるように、OLIVEMは、アクネ菌に対する潜在的プレバイオティクス性がない、又は非常に小さいと思われる。一方、それぞれ
図13及び14に示されるように、OLIVEM 450は、MCMと共に用いたとき、表皮ブドウ球菌に対する少なくともある程度の潜在的プレバイオティクス性、及びC.jeikeiumに対する実質的な潜在的プレバイオティクス性を有すると思われる。したがって、本明細書のアッセイは、1つ以上の特定の皮膚片利共生微生物について、潜在的プレバイオティクス性がない、ある程度有する、又は実質的に有する試験薬剤の識別に利用できる。
【0060】
ハイスループット段階的アッセイ
潜在的プレバイオティクス剤の数は膨大であり、本発明のハイスループット段階的アッセイの発明より前には、当該技術分野において、どの試験薬剤がインビボプレバイオティクス活性(すなわち、生きたヒトの皮膚に置かれるときのプレバイオティクス活性)を呈し得るかを予測する、好適な方法はなかった。その結果、各試験薬剤をインビボで試験し、好適なプレバイオティクス活性を呈するかどうかを判定しなければならなかった。しかしながら、インビボ試験は、1つの薬剤でさえも高価で時間がかかることがあり、多数の薬剤のインビボ試験は商業的に実用的ではない。試験薬剤の特定のインビトロスクリーニング法、例えば、従来の平板計数法は、インビボ法よりも必要な時間とリソースが少ない場合があるが、試験薬剤の広範なライブラリのスクリーニングには、インビトロ法でさえも商業的に実用的ではないことがある。例えば、典型的な平板計数アッセイは、インビトロプレバイオティクス活性の指標を得るために、何百枚ものプレートと1〜4日間を要することがある。ATP濃度等の代謝産物濃度の測定は、試験薬剤の広範なライブラリのスクリーニングに比較的迅速な(例えば、15分間)方法を提供するが、望ましくない偽陽性及び/又は偽陰性の結果をもたらす場合がある。偽陽性又は偽陰性は、それぞれ、好適なレベルのプレバイオティクス活性が存在する又は存在しないという、誤った指標である。したがって、ATPアッセイを単独で使用すると、所望のレベルの活性をインビボで呈さないプレバイオティクス剤として、試験薬剤を識別する結果となる恐れがある。
【0061】
段階的アッセイ手法を用いることによって、試験薬剤の広範なライブラリを比較的短時間でスクリーニングでき、試験薬剤がインビボプレバイオティクス活性を呈するかどうかについては、依然として望ましいレベルの予測性を提供できることが明らかとなっている。当然のことながら、本明細書の教示を用いる段階的スクリーニング法に、様々なスクリーニング法を組み合わせることができる。段階的手法では、最初に多数の試験薬剤を選択して、例えば、ATPアッセイ(又は別の代謝指標レベルの測定)で比較的素早くスクリーニングし、潜在的プレバイオティクス性を有する薬剤を識別できる。MCMを利用したATPアッセイは代謝活性の測定を目的としており、必ずしも細胞数又は潜在的プレバイオティクス性に関する別の評価項目に相関しないため、初期ATPアッセイスクリーニングに続けて平板計数等の二次アッセイを行うことが望ましい場合がある。加えて、第1スクリーニング法によってある程度の偽陽性及び/又は偽陰性が識別され得る可能性があるため、第2スクリーニングアッセイが有益である。第1アッセイで潜在的プレバイオティクス性を呈する試験薬剤を、続いて第2アッセイによってスクリーニングし、所望のレベルのインビボプレバイオティクス活性をもたらす可能性が最も高い試験薬剤を精査する。例えば、1000種の試験薬剤の初期ライブラリをATPアッセイでスクリーニングし、潜在的プレバイオティクス性を有するものとして10種の薬剤を識別できる。この例では、10種のプレバイオティクス剤を続いて平板計数アッセイでスクリーニングし、インビボで所望のプレバイオティクス活性をもたらす可能性が最も高い、2種の特に好適なプレバイオティクス剤を識別できる。この例に続けて、2種の特に好適なプレバイオティクス剤をインビボで試験し、ハイスループット段階的アッセイの予測結果を確認する。したがって、この例では、1000種の試験薬剤のライブラリを、インビボ試験においてはるかに少ない数まで候補物質を大いに減らすことができ、投資する時間及びリソースの観点からより商業的に実用的手法を提供する。
【0062】
化粧品組成物
健康でバランスの取れた皮膚微生物叢によりもたらされる健康的及び/又は外観的利益のため、プレバイオティクス剤を化粧品組成物に組み込むことが望ましい場合がある。つまり、化粧組成物中に成分としてプレバイオティクス剤を含むことが望ましい場合がある。ある特定の実施形態では、化粧品組成物は、皮膚科学的に許容可能なキャリアと、プレバイオティクス剤と、提供される特定の化粧品組成物に一般的に含まれる種類の1種以上の任意の成分と、を含んでよい。組成物は、哺乳類の皮膚の状態を調節及び/又は改善するのに有用な、スキンケア有効成分を含んでよい。かかる任意の成分の非限定例として、ビタミン、ペプチド及びペプチド誘導体、並びに糖アミンが挙げられる。他の任意の成分として、日焼け止め活性物質(つまり日焼け止め剤)及び/又は紫外線吸収剤が挙げられる。特定の実施形態では、化粧品組成物は、着色剤、界面活性剤、フィルム形成組成物、及び/又はレオロジー変性剤を含んでよい。本明細書の好適な化粧品組成物は、例えば、乳濁液、ローション、乳液、液体、固体、クリーム、ジェル、ムース(mouse)、軟膏、ペースト、セラム、スティック、スプレー、トニック、エアゾール、フォーム、ペンシル等を含む、当該技術分野において既知の様々な形態のうち任意の1つであってよい。化粧品組成物は、例えば、ジェル、フォーム、ローション及びクリーム等のひげ剃り予備製品に組み込まれてもよく、エアゾールタイプと非エアゾールタイプとの両方が含まれ得る。その他化粧品組成物として、制汗剤、脱臭剤、並びに石鹸及びシャンプー等のパーソナル洗浄組成物が挙げられる。
【0063】
本明細書に記載の新規方法を用いて識別されたプレバイオティクス剤を組み込んだ組成物は、組成物及び局所組成物の製造における、当該技術分野において既知の従来の方法に従って一般に調製できる。かかる方法は、典型的には、加熱、冷却、真空の適用等を用いて、又はこれらを用いずに、1つ又はそれ以上の工程で、成分を比較的均一な状態になるまで混合することを伴う。例えば、乳濁液は、最初に水相物質を脂肪相物質とは別個に混合し、その後2つの相を適宜組み合わせて、所望の連続層を得ることにより調製してよい。特定の実施形態では、組成物を調製し、好適な安定性(物理的安定性、化学的安定性、光安定性等)及び/又は活性物質の送達を提供してよい。本組成物は、治療期間にとって十分な量の組成物を保存するように寸法設定されたパッケージ中で提供されてもよい。パッケージの寸法、形状、及びデザインは幅広いものであり得る。一部のパッケージ例は、米国デザイン特許第D570,707号、同第D391,162号、同第D516,436号、同第D535,191号、同第D542,660号、同第D547,193号、同第D547,661号、同第D558,591号、同第D563,221、並びに米国特許出願公開第2009/0017080号、同第2007/0205226号、及び同第2007/0040306号に記載されている。
【実施例】
【0064】
以下は、本明細書に記載される方法の様々な態様の非限定例である。これらの実施例は単に例示することが目的であり、これらの変更の多くは可能であるので、本発明を限定するものとして解釈されない。
【0065】
(実施例1)
実施例1は、試験薬剤がプレバイオティクス活性を呈するかどうかを判定するための、培地選択が変わり得ることを示す。この実施例では、C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌への影響について、3種の異なる種類の培地を比較した。C.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌は、American Type Culture Collection(ATCC)(Manassas,VA)から、それぞれカタログ番号43734、12228、及び11827を入手する。第1の種類の培地は、3種の微生物それぞれの成長に使用される従来の富栄養成長培地によって代表される。第2の種類の培地は、胃腸内プレバイオティクス培地(「GIPM」)に代表され、胃腸内微生物の試験によく用いられる培地である。GIPMは、ペプトン水、胆汁塩、NaCl、NaHCO
3、K
2HPO
4、Tween 80、KH
2PO
4、ヘミン、MgSO
4・7H
2O、ビタミンK1、CaCl
2・6H
2O、及びシステイン・HClから作られる。第3の種類の培地は、本明細書に開示される新規方法での使用に好適なMCMに代表される。MCMは、NaCl、(NH
4)
2HPO
4、K
2HPO
4、及びMgSO
4から作られ、6.8〜7.2のpHを有する。
【0066】
3種の異なる微生物を、無菌培地(従来の方法(例えば、オートクレーブ)を用いて滅菌してよい)を用いて種培養液中でそれぞれ生育させる。表皮ブドウ球菌は脳心臓浸出物培地(「BHI」)の種培養液中で生育させ、C.jeikeiumは0.1% Tween 80を追加したBHI培地(「BHIT」)の種培養液中で生育させ、アクネ菌は補強クロストリジウムブロス(「RCB」)の種培養液中で生育させる。BHI培地は、1リットルのUSP水に、37グラムの市販の動物組織のペプシン消化物粉末、塩化ナトリウム、デキストロース、ゼラチンの膵液消化物、及びリン酸二ナトリウムを加えることによって作られる。RCBは、1リットルのUSP水に、38グラムの市販のカゼイン酵素加水分解物粉末、牛肉及び酵母抽出物、デキストロース、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、デンプン、及び塩酸l−システインを加えることによって作られる。3種の最近の各グリセロールストック接種材料は、0.75mLの対数培養液を0.25mLの80%グリセロールと混合し、使用するまで−80℃で保存することによって調製される。1日目に、好適な容器内で、BHIT培地にC.jeikeiumを50:1の比で接種することによって(すなわち、1mLのグリセロールストック接種材料対50mLのBHIT培地)、BHITの種培養液を作る。同じく1日目に、好適な容器内で、RCB培地にアクネ菌を50:1の比で接種することによって(すなわち、1mLのグリセロールストック接種材料対50mLのRCB培地)、RCBの種培養液を作る。C.jeikeiumを含む種培養液を、37℃で46〜48時間、好気的に培養する。アクネ菌を含む種培養液を、37℃で46〜48時間、嫌気的に培養する。2日目に、好適な容器内で、BHI培地に表皮ブドウ球菌を50:1の比で接種することによって(すなわち、1mLのグリセロールストック接種材料対50mLのBHI培地)、BHIの種培養液を作り、続いて37℃で22〜26時間、好気的に培養する。
【0067】
3日目に、細菌のペレット化に十分であるが、生存性を維持する速度(例えば、Sorvall Evolution RC遠心分離器で8500rpm)で室温遠心分離することによって、3種の種培養液を回収する。種培養液からの細菌ペレットを、0.90%w/v生理食塩水溶液(「生理食塩水」)で洗浄し、回収して再度ペレット化し、続いて十分な生理食塩水中に再懸濁して、細菌濃度が0.5×10
7CFU/mL〜5×10
8CFU/mLである使用培養液を得る。試験物質を好適な反応容器(すなわち、フラスコ又は96穴プレート等の、サンプリングできる任意の容器)内に分配し、試験サンプルを得る。この実施例では、1部の試験物質を8部の試験培地及び1部の使用培養液に加えることによって、試験サンプルを作製する。例えば、96穴深穴プレートの各ウェルに、0.1mLの試験物質、0.8mLの試験培地、及び0.1mLの使用培養液を組み合わせることによって、試験サンプルを作製できる。この実施例での試験物質は、水中にビートパルプ、又は水中にOLIVEM 450のいずれかを含有する10X試験薬剤原液である。水対照サンプルは、試験サンプル中の試験薬剤を水に代えることによって調製できる。例えば、1部の水を8部の試験培地及び1部の使用培養液に加えることによって、水対照サンプルを作製してよい。試験物質を反応容器に加えた時間がT=0であり、この実施例では、試験物質を96穴深穴プレートのウェルに入れて試験サンプルを形成した時である。C.jeikeium用の試験培地は、MCM、BHIT、PBS及びGIPMである。表皮ブドウ球菌用の試験培地は、MCM、BHI、PBS及びGIPMである。アクネ菌用の試験培地は、MCM、RCB、PBS及びGIPMである。培地又はその他成分の移動は、例えば、Fisher Scientific(Pittsburgh,PA)から入手可能な100μL〜1000μL容量、又は2μL〜20μL容量のEppendorf Research Series Adjustable Volume Pipetterを用いることによって実施してよい。各試験条件を3回繰り返して実施する。測定用のウェルのサンプリングに先立ち、各ウェルの内容物をウェル内でピペッティングすることによって混合するが、これは当該技術分野において既知の従来の混合手技である。各ウェルのATPを測定するため、好適な移動器具を用いて反応容器の各ウェルから一部の試験サンプルを取り出し、96穴黒色ウェルプレートに入れる(例えば、100マイクロリットル)。任意に、表皮ブドウ球菌を含むウェルに、十分なグルコースを最終濃度が1% v/vになるように加えてよく、少なくとも5分間室温で放置する。理論によって制限されることなく、表皮ブドウ球菌は、ストレスがかけられる(すなわち、飢餓状態)と、他の2種の微生物よりもATPの消費が早い傾向があると考えられる。したがって、グルコースの添加は、表皮ブドウ球菌を「刺激」し、対応する平板計数値と釣り合うベースラインATP濃度をもたらすことができる。しかしながら、測定可能なプレバイオティクス活性におけるダイナミックレンジを潜在的に増加するために、表皮ブドウ球菌を含むウェルへのグルコース添加を控えることが望ましい場合がある。黒色ウェルプレートに試験サンプルの一部を入れた後、同量のATP試薬(例えば、Promega CorporationのBacTiter Glo)を各ウェルに加えることによって、試験サンプルのATP濃度を測定する。例えば、100μLの試験サンプルには、メーカーの説明書に従って、100μLのATP試薬を入れることになる。次に、プレートを750rpmで振盪させながら、室温で15分間インキュベートする。培養液の輝度は、好適な発光プレートリーダー(例えば、Victor X Multi Label Plate Reader、Wallac/PerkinElmer(Waltham,MA))を用いて測定しなくてはならず、対応する輝度がATP応答として記録される。試験サンプルのATP濃度を、T=0、T=24時間及びT=48時間で測定する。T=0で測定されるATP濃度は、試験サンプル作製後すぐに、いかなる場合も30分未満で判定する。平板計数評価では、T=0において、各3回繰り返しの反応容器から10μL、合計30μLを取って、970μLの生理食塩水に入れ、必要に応じて連続的に希釈して計数可能な範囲であるプレートあたり20〜300個のコロニーになるようにし、その後、各プレートに50μLの適当な希釈液を加えることによって、2枚のブルセラ血液寒天平板にプレーティングする。得られるプレートを、酸素の存在下33〜37℃で、又は嫌気的に35〜37℃で培養し(微生物が好気的又は嫌気的条件を好むかどうかによる)、48〜72時間後に、当該技術分野において既知の従来のコロニー計数法を用いて分析し、CFUの数を決定する。
【0068】
図5〜10は、対応する水対照サンプルと比較した、実施例1の試験サンプルにおける、ATP又はコロニー数の変化倍率の測定能を示す。T=48時間における各サンプルのATP濃度又はコロニー数を、T=0における対応する値と比較し、ベースライン値からの変化を判定する。次に、試験サンプルのベースライン値からの変化を、対応する水対照サンプルのベースライン値からの変化と比較して、処理の影響による変化倍率を得る。変化倍率は、100%増加(又は減少)の回数を表す。したがって、変化倍率2は200%の変化であり、変化倍率3は300%の変化であり、その他同様である。
【0069】
図5は、水対照と比較する、ビートパルプとの接触による、表皮ブドウ球菌のATP濃度の変化倍率の測定能に対するMCM、PBS、BHI及びGIPMの影響を示す。試験サンプルは、試験物質としてビートパルプと、表皮ブドウ球菌と、
図5に示す試験培地と、を含有する。ビートパルプを蒸留水に代えて、水対照サンプルを作製した。試験サンプル及び対照において、T=0及びT=48におけるATP濃度の変化を比較することによって、ベースラインATP値からの変化を測定した。試験サンプルのベースラインATP値からの変化を、対照のベースラインATP値の変化と比較して、変化倍率を決定した。
図5に示すように、測定したATP濃度における顕著に高い変化倍率によって証明されるように、MCM及びPBS試験培地はBHI及びGIPM試験培地よりも顕著に高い感度をもたらす。
図6は、水対照と比較する、ビートパルプとの接触による、標準的平板計数によって測定するときの表皮ブドウ球菌の数の変化倍率の測定能に対するMCM、PBS、BHI及びGIPMの影響を示す。
図6に示すように、平板計数測定値により、
図5に示されるATPの結果を用いて、試験薬剤のプレバイオティクス活性を好適に予測できることが確認される。
【0070】
図7は、水対照と比較する、ビートパルプとの接触による、C.jeikeiumのATP濃度の変化倍率の測定能に対するMCM、PBS、BHIT及びGIPMの影響を示す。
図7に示すように、測定したATP濃度における顕著に高い変化倍率によって証明されるように、MCM及びPBS試験培地はBHIT及びGIPM試験培地よりも顕著に高い感度をもたらす。
図8は、水対照と比較する、ビートパルプとの接触による、標準的平板計数によって測定するときのC.jeikeiumの数の変化倍率の測定能に対するMCM、PBS、BHIT及びGIPMの影響を示す。
図8に示すように、平板計数測定値により、
図3に示されるATPの結果を用いて、試験薬剤のプレバイオティクス活性を好適に予測できることが確認される。
図7及び8に示す変化倍率は、
図5及び6に示す変化倍率と同じ方法で決定した。
【0071】
図9は、水対照と比較する、ビートパルプとの接触による、アクネ菌のATP濃度の変化倍率の測定能に対するMCM、PBS、RCB及びGIPMの影響を示す。
図9に示すように、測定したATP濃度における顕著に高い変化倍率によって証明されるように、MCM及びPBS試験培地はRCB及びGIPM試験培地よりも顕著に高い感度をもたらす。
図10は、水対照と比較する、ビートパルプとの接触による、標準的平板計数によって測定するときのアクネ菌の数の変化倍率の測定能に対するMCM、PBS、RCB及びGIPMの影響を示す。
図8に示すように、平板計数測定値により、
図7に示されるATPの結果を用いて、試験薬剤のプレバイオティクス活性を好適に予測できることが確認される。
図9及び10に示す変化倍率は、
図5及び6に示す変化倍率と同じ方法で決定した。
【0072】
図5〜10から当然のことながら、本発明の最小炭素培地は、試験薬剤の測定可能な潜在的プレバイオティクス性のより大きいダイナミックレンジをもたらし、場合によっては、試験薬剤の潜在的プレバイオティクス性が観察できる唯一の培地である。これらの結果は、ヒト皮膚片利共生微生物に対するプレバイオティクス活性について試験薬剤をスクリーニングするとき、改善された感度をもたらす最小炭素培地の予想外の効果を証明する。
【0073】
(実施例2)
実施例2は、ATPアッセイの結果を平板計数アッセイと比較する。平板計数アッセイは、培養液中で培養可能な細菌の成長又は生存を測定するための、当該技術分野において既知の一般に認められたアッセイである。平板計数は、プレバイオティクス物質の識別に有用な手段であり得るが、プレバイオティクス性を評価し、試験薬剤が、ヒト皮膚片利共生微生物に対するインビボプレバイオティクス活性を呈するかどうかを予測するには、ロースループットでリソース集約的な方法であると考えられる。対照的に、プレバイオティクス活性に関して試験薬剤をスクリーニングするとき、ATPアッセイをプレスクリーニング手段として用いると、スループットが向上し、実質的にリソースを少なくする。更に、ATPの結果は一般に平板計数結果を予測し、したがって、ATPアッセイの結果は、更なる試験のために、プレバイオティクス剤候補の迅速識別用初期スクリーニング法をもたらすのに十分信頼できると考えられる。
【0074】
実施例2は、上記実施例1のように調製し、回収したC.jeikeium、表皮ブドウ球菌、及びアクネ菌の種培養液を利用する。回収した種培養液を用いて使用培養液を作り、これも上記実施例1のように反応容器に移した。実施例1に記載のようにMCMを調製し、8部のMCMを各ウェルに加えた。適切な重量又は体積のストック材料をUSPグレードの水と混合し、原液(10x)を作製することによって、10X試験薬剤原液を調製した。これらの原液を0.2マイクロメートルのフィルタに通して、汚染細菌を除去した。続いて、1部の試験薬剤原液を8部のMCMに加え、試験サンプルを得た。水(USP)を対照として用いた。25種の試験薬剤をスクリーニングした。試験薬剤は、GTC Nutritionから入手可能なBIOAGAVEブランドのイヌリン、Mark Lyteから入手可能なBac−Lyteブランドのバナナ抽出物、GTC Nutritionから入手可能なPurimuneブランドのガラクトオリゴ糖(「GOS」)、Kirin(Japan)から入手可能なコメヌカ、短鎖オリゴフルクトース(Oligofructose P95)、Roquetteから入手可能なNutriose FB06ブランドの小麦デキストリン、SunOptaから入手可能なCanadian Harvest Oat Fiber 610、ビートパルプ、Wako Pure Chemicalsから入手可能なゲンチオオリゴ糖、Showa Sangoから入手可能なIsomalto 500ブランドのイソマルトオリゴ糖、Vivinal GOS 15ブランドのガラクトオリゴ糖、TSI Health Sciencesから入手可能なPromilin Fengreek抽出物(ヒドロキシイソロイシン)、Vital Foodsから入手可能なZyactinase 45ブランドのキウイ抽出物、Solvayから入手可能なSolactisブランドのガラクトフルクトース、Clasadoから入手可能なBIMUNOブランドのガラクトオリゴ糖、Glycologic Limited(UK)から入手可能なコンニャクグルコマンナン加水分解産物、GTC Nutritionから入手可能なNutrafloraブランドの短鎖フルクトオリゴ糖(scfox P95)、Cargillから入手可能な
【0075】
【数1】
ブランドのポリオール糖アルコール、ラフィノース5水和物、SILAB(France)から入手可能なBiomyoxブランドのオランダガラシ抽出物、Vincience(France)から入手可能なPerenityl PGブランドのヘキシルデカノール/梨種子抽出物、Barnet Productsから入手可能なDermochlorella Dブランドのクロレラ抽出物、Sederma(France)から入手可能なPromatrixylブランドのパルミトイルペンタペプチド−3、eutanol G16ブランドの2−ヘキシルデカノール、及びBiotechmarine(France)から入手可能なPhlorogine BGブランドのカラフトコンブ抽出物とした。試験しなかったが、本明細書に用いるのに好適であり得る他の試験薬剤は、ピテラ(酒酵母発酵素ろ液)である。各試験条件を、ATPについて3回繰り返し、平板計数について2回繰り返した。各ウェルの内容物を混合し、各適切なアッセイ用にサンプリングした。例えば、ATPでは、100マイクロリットルの各サンプルを、浅型黒色ウェルプレートのウェルに入れた。表皮ブドウ球菌を含むウェルに、十分なグルコースを最終濃度が1%(v/v)になるように加え、少なくとも5分間室温でインキュベートした。同量のBacTiter−GLO試薬(Promega Corporation(Madison,WI))を、黒色ウェルプレートの各ウェルに加えた。次に、プレートを750rpmで振盪させながら、室温で15分間インキュベートした。その後、Victor X Multi−Label Plate Reader(PerkinElmer(Waltham,MA)から入手可能)を用いて培養液の輝度を測定した。更に、各反応容器のサンプルを取り除いて、各プレート上で計数可能な範囲の細菌数になるまで必要に応じて生理食塩水で連続的に希釈し(例えば、1:10〜1:10,000)、続いて、試験した細菌に適切な寒天平板(例えば、TSA、TSA−0.1% Tween、RCA)2枚にプレーティングした。全てのプレートを、必要に応じて、酸素の存在下で37℃にて、又は嫌気的に37℃にて培養し、48〜72時間後に分析した。
【0076】
水のみの対照と比較するとき、25種の調べた試験薬剤のうち、22種の試験薬剤が、表皮ブドウ球菌培養液中のATP濃度を増加させ、21種の試験薬剤が、C.jeikeium培養液中のATPの濃度を増加させ、22種の試験薬剤が、アクネ菌培養液中のATP濃度を増加させた。水のみの対照と比較するとき、25種の試験薬剤のうち、23種の試験薬剤が、表皮ブドウ球菌培養液中に存在するCFU数を増加させ、11種の試験薬剤が、C.jeikeium培養液中に存在するCFU数を増加させ、24種の試験薬剤が、アクネ菌培養液中に存在するCFU数を増加させた。表皮ブドウ球菌で用いた20種の試験薬剤、C.jeikeium(C. jeikium)で用いた15種の試験薬剤、及びアクネ菌で用いた22種の試験薬剤において、平板計数とATPアッセイが一致した。しかしながら、ATPアッセイが、いくつかの偽陰性を起こすことが判明した。特に、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)で用いた2種の試験薬剤、及びアクネ菌で用いた3種の試験薬剤は、ATP濃度に影響しないことがわかったが、平板計数によって評価するとき、細菌の複製に影響した。ATPアッセイは、いくつかの偽陽性を起こすことも判明した。特に、表皮ブドウ球菌で用いた2種の試験薬剤、C.jeikeiumで用いた10種の試験薬剤、及びアクネ菌で用いた1種の試験薬剤は、これら培養液中でATP濃度を増加させることがわかったが、平板計数によって評価するとき、細菌の複製に影響しないようであった。偽陽性は望ましくないものの、偽陰性ほど望ましくないものではないことに留意することが重要である。これは、偽陽性は平板計数で再度試験され、典型的には本来の試験薬剤の特徴がもたらされるからである。そのうえ、偽陽性は、ATPアッセイが平板計数アッセイから切り離しできることを判定する指標となる。つまり、単純にATPをサンプル中に存在する微生物数と相関させる、ATPアッセイの従来の用途とは対照的に、ATPアッセイを独立した及び/又は初期のプレバイオティクス活性の指標として用いることができる。
【0077】
表1は、実施例2の25種の試験薬剤をプレバイオティクス活性についてスクリーニングするために、ATPアッセイを用いた結果を示す。表1に示されるように、ATPアッセイは、表皮ブドウ球菌、C.jeikeium及びアクネ菌において、プレバイオティクス活性の好適な指標を提供し、平板計数アッセイと並行して用いるとき、ATPアッセイが、インビボプレバイオティクス活性を呈する可能性がある試験薬剤の識別に対する、信頼できるスクリーニング法を提供できることが証明される。
【0078】
【表1】
【0079】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に断らない限り、そのような寸法のそれぞれは、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40ミリメートル」として開示される寸法は、「約40ミリメートル」を意味するものである。
【0080】
任意の相互参照又は関連特許若しくは関連出願を包含する本明細書に引用される全ての文献は、明確に除外ないしは別の方法で限定されない限り、その全てを本明細書中に参照により組み込まれる。いずれの文献の引用も、こうした文献が本願で開示又は特許請求される全ての発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他の全ての参照文献とのあらゆる組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを参照、教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書において、用語の任意の意味又は定義の範囲が、参考として組み込まれた文書中の同様の用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合には、本文書中で用語に割り当てられる意味又は定義に準拠するものとする。
【0081】
本発明の特定の実施形態が例示され記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を添付の特許請求の範囲で扱うものとする。