(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(厚肉構造の金属リングと温度センサとが、複数組設けられている例)
2.変形例
【0016】
<実施の形態>
[概略構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係るカテーテル(カテーテル1)の概略構成例(Z−X上面構成例)を、模式的に表したものである。このカテーテル1は、患者における不整脈等の治療(例えば左房アブレーション術)の際に、その患者の体内の中空器官(例えば食道等)の内部温度(内壁の温度)に関する情報を測定するために用いられるカテーテル(いわゆる食道カテーテル)である。具体的には、詳細は後述するが、このカテーテル1は、鼻を通して(経鼻的アプローチにて)患者の食道等に挿入されるようになっている。
【0017】
このカテーテル1は、
図1に示したように、カテーテル本体(長尺部分)としてのカテーテルチューブ11(カテーテルシャフト)と、このカテーテルチューブ11の基端側に装着されたハンドル12とを有している。
【0018】
(カテーテルチューブ11)
カテーテルチューブ11は、可撓性を有する管状構造(中空のチューブ状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する形状となっている。具体的には、カテーテルチューブ11の軸方向の長さは、ハンドル12の軸方向(Z軸方向)の長さと比べて数倍〜数十倍程度に長くなっている。なお、このカテーテルチューブ11は、その軸方向に向かって同じ特性のチューブで構成されていてもよいが、本実施の形態のように、以下の構成となっているのが好ましい。すなわち、カテーテルチューブ11が、比較的可撓性に優れた先端部分(先端可撓部分11A)と、この先端部分に対して軸方向に一体に形成されると共に先端部分よりも比較的に剛性のある基端部分と、を有するようにするのが好ましい。
【0019】
カテーテルチューブ11はまた、自身の軸方向に沿って延在するように内部に1つのルーメン(内孔,細孔,貫通孔)が形成された、いわゆるシングルルーメン構造、あるいは複数(例えば4つ)のルーメンが形成された、いわゆるマルチルーメン構造を有している。なお、カテーテルチューブ11の内部において、シングルルーメン構造からなる領域とマルチルーメン構造からなる領域との双方が設けられていてもよい。このようなカテーテルチューブ11におけるルーメンには、各種の細線(後出する一対の操作用ワイヤ40a,40bや、後出する導線L1〜L5等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されている。
【0020】
このうち、一対の操作用ワイヤ40a,40b(引張りワイヤ)はそれぞれ、カテーテルチューブ11内を延伸してハンドル12内へと引き出されており、後述するカテーテルチューブ11の先端部分(先端可撓部分11A)の偏向動作の際に用いられるものである。換言すると、これらの操作用ワイヤ40a,40bはそれぞれ、カテーテルチューブ11の先端付近を撓ませるために用いられるものである(例えば
図1中の矢印d2a,d2b参照)。これらの操作用ワイヤ40a,40bにおける各先端は、カテーテルチューブ11内の先端付近において、アンカーおよびはんだ等によって固定されている。また、操作用ワイヤ40a,40bの各基端側は、上記したように、カテーテルチューブ11内からハンドル12内へと延伸され、ハンドル12内で留め具(図示せず)により固定されている。これらの操作用ワイヤ40a,40bはそれぞれ、例えばSUS(ステンレス鋼)やNiTi(ニッケルチタン)等の超弾性金属材料により構成されており、その径は約100〜500μm程度(例えば200μm)である。ただし、必ずしも金属材料で構成されていなくともよく、例えば高強度の非導電性ワイヤ等で構成されていてもよい。
【0021】
このようなカテーテルチューブ11は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド等の合成樹脂により構成されている。また、カテーテルチューブ11の軸方向の長さは、500〜1200mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば800mmである。カテーテルチューブ11の先端可撓部分11Aの軸方向の長さは、40〜100mmであることが好ましく、更に好ましくは50〜80mmである。カテーテルチューブ11の外径(X−Y断面の外径)は、1.3〜4.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば2.4mmである。
【0022】
また、
図1に示したように、カテーテルチューブ11の先端付近(先端可撓部分11A)には、1または複数の金属リング(ここでは、5つの金属リング111〜115)および1つの先端チップ110が、所定の間隔をおいて配置されている。具体的には、金属リング111〜115(温度測定用金属リング)はそれぞれ、先端可撓部分11Aの途中部分(中央領域付近)に固定配置される一方、先端チップ110は、先端可撓部分11Aの最先端側に固定配置されている。
【0023】
なお、このようなカテーテルチューブ11における先端可撓部分11Aの詳細構成例については、後述する(
図2〜
図6)。
【0024】
(ハンドル12)
図1に示したハンドル12は、カテーテル1の使用時に操作者(医師)が掴む(握る)部分である。このハンドル12は、
図1に示したように、カテーテルチューブ11の基端側に装着されたハンドル本体121と、回転操作部122とを有している。
【0025】
ハンドル本体121は、操作者が実際に握る部分(把持部)に相当し、その軸方向(Z軸方向)に沿って延在する形状となっている。このようなハンドル本体121は、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等の合成樹脂により構成されている。
【0026】
回転操作部122は、詳細は後述するが、前述した一対の操作用ワイヤ40a,40bとともに、カテーテルチューブ11の先端付近(先端可撓部分11A)を撓ませる偏向動作の際に用いられる部分である。具体的には、このような偏向動作の際に、回転操作部122が操作(回転操作)されるようになっている。つまりこの例では、ハンドル12(回転操作部122)および一対の操作用ワイヤ40a,40bが、本発明における「偏向機構」の一具体例に対応している。このような回転操作部122は、
図1に示したように、回転板41および調整摘み42を含んで構成されている。
【0027】
回転板41は、ハンドル本体121に対して、その長手方向(Z軸方向)に垂直な回転軸(Y軸方向)を中心として回転自在に装着された部材である。この回転板41は、前述した回転操作の際に操作者が実際に操作を行う部分に相当し、略円盤状の形状からなる。具体的には、この例では
図1中の矢印d1a,d1bで示したように、ハンドル本体121に対し、回転板41をZ−X平面内で双方向に回転させる操作(回転軸を回転中心とした回転操作)が可能となっている。
【0028】
この回転板41の側面には、一対の摘み41a,41bが回転板41と一体的に設けられている。この例では
図1に示したように、回転板41の回転軸を中心として、摘み41aと摘み41bとが互いに点対称となる位置に配置されている。これらの摘み41a,41bはそれぞれ、操作者が回転板41を回転操作させる際に、例えば片手の指で操作される(押される)部分に相当する。なお、このような回転板41は、例えば前述したハンドル本体121と同様の材料(合成樹脂等)により構成されている。
【0029】
調整摘み42は、Z−X平面内で回転可能に構成されており、回転板41の回転位置(カテーテルチューブ11の先端付近の湾曲状態)を固定化(保持)するための部材である。すなわち、操作者がこの調整摘み42をねじって回転板41をハンドル本体121に固定することで、この回転板41の回転位置が固定化されるようになっている。
【0030】
[先端可撓部分11Aの詳細構成例]
続いて、
図2〜
図6を参照して、カテーテルチューブ11における先端可撓部分11Aの詳細構成例について説明する。
【0031】
図2は、
図1に示したカテーテルチューブ11における先端可撓部分11Aの詳細構成例(Z−X上面構成例)を、模式的に表したものである。
図3は、この
図2に示した先端可撓部分11Aにおける、II−II線に沿った矢視断面例(Y−Z断面構成例)を、模式的に表したものである。
図4は、この
図3に示した先端可撓部分11Aにおける、III−III線に沿った矢視断面構成例(X−Y断面構成例)を、模式的に表したものである。
図5は、これら
図2〜
図4に示した先端可撓部分11Aの構成例を、模式的に分解斜視図で表したものである。
図6は、この
図5に示した先端可撓部分11Aの一部を、拡大して模式的に分解斜視図で表したものである。なお、
図6では、図示の簡略化のため、先端可撓部分11Aの一部を省略して示している。
【0032】
(第1チューブ61,第2チューブ62)
このカテーテルチューブ11における先端可撓部分11Aは、
図2〜
図6に示したように、内周側に配置された第1チューブ61(内側チューブ)と、この第1チューブ61の外周側に配置された第2チューブ62(外側チューブ)とを含む多層(2層)構造を有している。なお、この例では、これら第1チューブ61と第2チューブ62とは、互いに別体のチューブ(管状構造体)となっている。また、このうちの第2チューブ62は、互いに独立した部材である、複数の分割チューブ部材(この例では、6つの分割チューブ部材620,621,622,623,624,625)により構成されている。
【0033】
この第1チューブ61は、
図4および
図6に示したように、この例では、その内部に4つのルーメン61A,61B,61C,61Dが形成されたマルチルーメン構造を有している。具体的には、この例では、相対的に大きな径を有する2つのルーメン61A,61B同士は、第2チューブ62内でY軸方向に沿って並設されており、相対的に小さな径を有する2つのルーメン61C,61D同士は、第2チューブ62内でX軸方向に沿って並設されている。また、この例では、ルーメン61A内には後述する各温度センサの導線(導線L1〜L5)が挿通されている一方、ルーメン61C,61Dにはそれぞれ、前述した操作用ワイヤ40a,40bが個別に挿通されている。
【0034】
このような第1チューブ61および第2チューブ62(分割チューブ部材620〜625)はそれぞれ、例えば、前述した合成樹脂により構成されている。すなわち、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド等により構成されている。
【0035】
また、第1チューブ61の外径(X−Y断面の外径)は、1.0〜3.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1.95mmである。
【0036】
同様に、第2チューブ62(分割チューブ部材620〜625)の外径はそれぞれ、1.3〜4.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば2.4mmである。第2チューブ62(分割チューブ部材620〜625)の内径はそれぞれ、1.0〜3.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1.95mmである。また、分割チューブ部材621〜625の軸方向(Z軸方向)の長さはそれぞれ、例えば1.0〜20.0mmとされ、好適な一例を示せば5.0mmである。
【0037】
(金属リング111〜115,先端チップ110)
図1を用いて前述もしたが、
図2に示したように、先端可撓部分11Aには、5つの金属リング111〜115および1つの先端チップ110が配置されている。このうち、先端チップ110は、先端可撓部分11Aの最先端側に固定配置されている。また、金属リング111〜115は、先端可撓部分11Aにおける先端側(先端チップ110側)から基端側に向けて、この順序にて所定の間隔(
図2中に示した金属リング間距離d)で並んで配置されている。なお、この金属リング間距離dは、例えば5mm以下であることが好ましく、更に好ましくは2〜4mm程度(例えば2mm)である。また、
図2中に示した金属リング111〜115の金属リング幅wはそれぞれ、例えば5mm以下であることが好ましく、更に好ましくは1〜4mm程度(例えば2mm)である。
【0038】
また、これら金属リング111〜115はそれぞれ、この例では、上記した第2のチューブ62(分割チューブ部材620〜625)と同程度の外径および内径を有している。具体的には、各金属リング111〜115の外径はそれぞれ、1.3〜4.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば2.4mmである。各金属リング111〜115の内径はそれぞれ、1.0〜3.0mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1.95mmである。また、これら金属リング111〜115はそれぞれ、通常0.15〜0.50mmの厚みからなる厚肉構造を有している。ここで、これら金属リング111〜115の厚みはそれぞれ、0.20〜0.50mmであることが好ましく、好適な一例を示せば0.225mである。すなわち、従来の一般的な厚み(例えば、約0.05〜0.07mm程度)からなる薄肉構造の金属リングと比べ、約2〜10倍程度の厚みとなっている。
【0039】
なお、各金属リング111〜115の外径が1.3mm未満である場合には、金属リング111〜115を含めたカテーテル1を構成する各部材を非常に小さくする必要があることから、組み付けが難しくなるために製造が困難であり、更に、操作ワイヤ40a,40bや導線L1〜L5等の細線が断線するなど、製品の不具合が発生するおそれがある。一方、各金属リング111〜115の外径が4.0mmを超える場合には、カテーテルチューブ11をスムーズに鼻腔内を通過させることが困難になる。
【0040】
ここで、各金属リング111〜115の外径(この例では、カテーテルシャフト11における先端可撓部分11Aの外径と略等しい)に対して、各金属リング111〜115における厚肉構造(=各金属リング111〜115の厚み×2)の占める割合(=厚肉構造/各金属リング111〜115の外径)は、15%以上である。これに対して、上記した従来の一般的な厚みからなる薄肉構造の金属リングでは、この割合が10%未満となっている。
【0041】
また、換言すると、各金属リング111〜115の外径(この例では、カテーテルシャフト11における先端可撓部分11Aの外径と略等しい)に対する各金属リング111〜115の厚みの比率(=各金属リング111〜115の厚み/各金属リング111〜115の外径)は、例えば以下のようになっている。すなわち、この比率は、通常7.5%以上とされ、好ましくは8.0%以上、更に好ましくは9.0%以上とされ、好適な一例を示せば9.4%(=0.225/2.4)である。これに対して、上記した従来の一般的な厚みからなる薄肉構造の金属リングでは、この割合が5.0%未満となっている。
【0042】
なお、上記比率が7.5%以上である場合には、食道E等の内部温度を精度良く測定することが可能である。一方、上記比率が7.5%未満である場合には、後述する温度センサ(温度センサ51〜55)と金属リング111〜115との接続部分が食道E等のどの部分に位置するのかによって、検出される温度のばらつきが大きくなり、食道E等の内部温度を精度良く測定することができないことになる。
【0043】
このような金属リング111〜115はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、SUS、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料により構成されている。また、先端チップ110は、例えばこれら金属リング111〜115と同様の金属材料のほか、例えばシリコーンゴム樹脂やポリウレタンなどの樹脂材料により構成されている。
【0044】
(温度センサ51〜55)
ここで
図3中に模式的に示したように、カテーテルチューブ11における先端可撓部分11Aには、各金属リング111〜115の近傍(例えば、各金属リング111〜115の対向位置)に、これらと対応付けられた5つの温度センサ51〜55が内蔵されている。すなわち、この例では、5つの金属リング111〜115と5つの温度センサ51〜55とが、1対1の対応関係にて複数組(この例では5組)設けられている。なお、この例では、先端チップ110の近傍には、これと対となる(電気的接続された)温度センサは設けられていない。
【0045】
これらの温度センサ51〜55はそれぞれ、例えば前述した左房アブレーション術中において、食道等の内部温度を測定するためのセンサであり、各金属リング111〜115と個別に電気的接続されている。具体的には、
図3に示したように、温度センサ51は、金属リング111の近傍に内蔵されており、この金属リング111に対して電気的に接続されている。同様に、温度センサ52は、金属リング112の近傍に内蔵されており、この金属リング112に対して電気的に接続されている。温度センサ53は、金属リング113の近傍に内蔵されており、この金属リング113に対して電気的に接続されている。温度センサ54は、金属リング114の近傍に内蔵されており、この金属リング114に対して電気的に接続されている。温度センサ55は、金属リング115の近傍に内蔵されており、この金属リング115に対して電気的に接続されている。なお、これらの電気的接続はそれぞれ、例えば、金属リング111〜115の内周面上に温度センサ51〜55が個別にスポット溶接されることで、実現されるようになっている。
【0046】
このような温度センサ51〜55はそれぞれ、例えば熱電対(熱電対の測温接点)を用いて構成されている。また、これらの温度センサ51〜55に個別に電気的接続された導線L1〜L5(リード線)はそれぞれ、例えば
図3〜
図6に示したように、その熱電対を構成する異種同士の金属線からなる。なお、これらの導線L1〜L5はそれぞれ、前述したように、カテーテルチューブ11におけるルーメン内(この例では、
図4において前述したルーメン61A内)に挿通され、ハンドル12内へ引き出されるようになっている。
【0047】
ここで、例えば
図3〜
図6に示したように、先端可撓部分11Aにおける前述した第1チューブ61には、これら温度センサ51〜55と金属リング111〜115との個別の電気的接続を行うための開口S(側孔,貫通孔)が形成されている。すなわち、この開口Sを介して、上記したように、金属リング111〜115の内周面上に温度センサ51〜55が個別にスポット溶接されるようになっている。
【0048】
この開口Sは、例えば
図3〜
図6に示したように、第1チューブ61において、少なくとも金属リング111〜115の配置領域内に形成されている。つまり、開口Sは、金属リング111〜115の各配置領域内にのみ形成されていてもよいし、この例のように(例えば
図5参照)、分割チューブ部材620〜625の配置領域内にも形成されているようにしてもよい。具体的には、この例では
図5に示したように、先端可撓部分11Aの軸方向(Z軸方向)に沿って、開口Sがスリット状(連続した単一の矩形状)に形成されている。
【0049】
(各部材の詳細構成例)
ここで、例えば
図2,
図3,
図5に示したように、このような先端可撓部分11Aでは、第1チューブ61の外周面上に、5つの金属リング111〜115と5つの分割チューブ部材621〜625とがそれぞれ、カテーテルチューブ11の軸方向(Z軸方向)に沿って並んで嵌め込み配置(載置,外嵌)されている。具体的には、この例では5つの金属リング111〜115が、カテーテルチューブ11の軸方向に沿って、4つの分割チューブ部材622,623,624,625を介在して並んで嵌め込み配置されている。つまり、この例では先端可撓部分11Aの先端側(先端チップ110側)から基端側へ向けて、分割チューブ部材621、金属リング111、分割チューブ部材622、金属リング112、分割チューブ部材623、金属リング113、分割チューブ部材624、金属リング114、分割チューブ部材625、金属リング115、分割チューブ部材620の順に、金属リングと分割チューブ部材とが交互に配置されている。
【0050】
なお、詳細は後述するが(
図7A〜
図7C)、例えば
図5中の矢印P1,P2および
図6中の矢印P3で示したように、このような並置構造は、例えば以下のようにして形成されたものとなっている。すなわち、分割チューブ部材620以外の金属リング111〜115および分割チューブ部材621〜625はそれぞれ、第1チューブ61の外周面上に、先端可撓部分11Aの軸方向(Z軸方向)に沿って、上記した並置構造となるように順次嵌め込まれたものとなっている。
【0051】
また、例えば
図2,
図3,
図5に示したように、この先端可撓部分11Aでは、上記した金属リング111〜115および分割チューブ部材620〜625における外周面はそれぞれ、その軸方向(Z軸方向)に沿って平坦状(略平坦状)となっている。換言すると、これらの金属リング111〜115および分割チューブ部材620〜625ではそれぞれ、例えば出っ張り形状や段差形状等が含まれておらず、一見すると先端可撓部分11Aが単一のチューブ構造であるかのような滑らかな外周面となっている。ただし、例えば、金属リング111〜115および分割チューブ部材620〜625の部材間等での微小な凹凸(段差)等については、ここでは考慮しないものとする。
【0052】
[製造方法例]
本実施の形態のカテーテル1は、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、まず、上記した構造の先端可撓部11Aを有するカテーテルチューブ11を作製する。
【0053】
(先端可撓部分11Aの製造工程)
ここで、
図7A〜
図7Cはそれぞれ、
図2〜5に示した先端可撓部分11Aの製造工程例を、工程順に模式図で表したものである。
【0054】
この製造工程例では、まず
図7Aに示したように、内周側の第1チューブ61と、外周側の単一の第2チューブ62aとを含む多層(2層)構造を有するチューブ構造体を形成する。
【0055】
次いで、例えば
図7Bに示したように、このチューブ構造体のうちの外周側の第2チューブ62aの先端側(分割チューブ部材620となる領域を除いた部分)を、所定の工具を用いて削り取る。これにより、金属リング111〜115および分割チューブ部材621〜625の配置予定領域では、第1チューブ61が剥き出しとなって外部に露出された構造となる。このとき、例えば彫刻刀のような工具を用いて、第1チューブの一部も先端から基端に向けて一定の領域(金属リング111〜115および分割チューブ部材621〜625の配置予定領域)を削り取ることにより、例えば前述したスリット状の開口Sを形成しておくようにする。
【0056】
続いて、
図7C中の矢印P4で示したように、第1チューブ61の先端側から基端側(分割チューブ部材620側)に向けて、以下のようにして、前述した各部材を第1チューブ61の外周面上に嵌め込む。具体的には、
図7Cに示したように、前述した構成の金属リング115、分割チューブ部材625、金属リング114、分割チューブ部材624、金属リング113、分割チューブ部材623、金属リング112、分割チューブ部材622、金属リング111および分割チューブ部材621をそれぞれ、この順序にて、第1チューブ61の外周面上に順次嵌め込む。
【0057】
ここで、金属リング111〜115には、予め、温度センサ51〜55と導線L1〜L5の各先端とがそれぞれ、個別に接続されている。したがって、上記のように金属リング111〜115を嵌め込む際には、まず、各導線L1〜L5の基端側を第1チューブ61のルーメン61Aに挿通させて、カテーテルチューブ11の基端から引き出す。次に、引き出した各導線L1〜L5を基端側に引っ張りつつ、各金属リング111〜115を第1チューブ61上の先端から基端側へ向けて移動させる。ここで、金属リング111〜115と温度センサ51〜55と導線L1〜L5との接続部分はそれぞれ、前述したようにスポット溶接されているため、金属リング111〜115の内周面上には溶接部分が隆起していることになる。ただしこの例では、第1チューブ61(ルーメン61A)には前述したように先端からスリット状の開口Sが設けられているため、嵌め込みの際にこの溶接部分が邪魔になることなく、第1チューブ61の軸方向に沿って溶接部分を移動させることが可能となっている。そのため、金属リング111〜115の内径が第1チューブ61の外径と同様の値である場合でも、金属リング111〜115を第1チューブ61の外周上に嵌め込んで配置することが可能になる。
【0058】
そののち、このようにして得られた第1チューブ61および第2チューブ62の最先端に、前述した構成の先端チップ110を取り付けると共に、第1チューブ61内に、前述した構成の操作用ワイヤ40a,40bをそれぞれ配置させる。なお、先端チップ110の内部付近には、予め、これら操作用ワイヤ40a,40bの各先端が、アンカーおよびはんだ等によって固定されている。したがって、これら操作用ワイヤ40a,40bの各基端側をカテーテルチューブ11の基端側に引き出し、先端チップ110を、第1チューブ61および第2チューブ62の最先端に取り付けるようにする。このようにして、
図2〜5に示した先端可撓部分11Aが完成する。なお、この先端可撓部分11Aと、前述したそれ以外の基端部分とを連結させることにより、
図1および
図2に示したカテーテルチューブ11が得られる。
【0059】
(ハンドル12の取付工程)
続いて、このようにして製造された先端可撓部分11Aを含むカテーテルチューブ11の基端側に、前述した構成のハンドル12を装着する。この際、カテーテルチューブ11内からハンドル12内へ、操作用ワイヤ40a,40bおよび導線L1〜L5の基端側をそれぞれ、引き通して延伸させておくようにする。また、これら操作用ワイヤ40a,40bの基端をそれぞれ、ハンドル12内で留め具(図示せず)により固定させる。以上により、
図1〜
図6に示したカテーテル1が完成する。
【0060】
[作用・効果]
(A.基本動作)
このカテーテル1は、患者における不整脈等の治療(例えば左房アブレーション術)の際に用いられることで、その患者の体内の中空器官(食道等)の内部温度に関する情報が測定される。なお、このときのアブレーションの手法としては、高周波電流を用いて高温焼灼(加熱)する手法と、液化亜酸化窒素や液体窒素等を用いて低温焼灼(冷却)する手法とが挙げられる。
【0061】
ここで、
図8に模式的に示したように、このような内部温度測定の際には、例えば患者9の鼻を通して(経鼻的アプローチにて)、カテーテル1におけるカテーテルチューブ11が、その先端側(先端可撓部分11A側)から患者9の食道Eへ挿入される。このとき、カテーテル1の操作者による回転板41の回転操作に応じて、この挿入されたカテーテルチューブ11における先端付近(先端可撓部分11A)の形状が、両方向に変化する。
【0062】
具体的には、例えば、操作者がハンドル12を片手で掴み、その片手の指で摘み41aを操作することにより、回転板41を
図1中の矢印d1a方向(右回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、カテーテルチューブ11内で、前述した操作用ワイヤ40aが基端側へ引っ張られる。すると、このカテーテルチューブ11の先端付近が、
図1中の矢印d2aで示した方向に沿って湾曲する(撓む)。
【0063】
また、例えば、操作者が摘み41bを操作することにより、回転板41を
図1中の矢印d1b方向(左回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、カテーテルチューブ11内で、前述した操作用ワイヤ40bが基端側へ引っ張られる。すると、このカテーテルチューブ11の先端付近が、
図1中の矢印d2bで示した方向に沿って湾曲する。
【0064】
このように、操作者が回転板41を回転操作することにより、カテーテルチューブ11の首振り偏向動作を行うことができる。なお、ハンドル本体121を軸回りに(XY平面内で)回転させることで、カテーテルチューブ11が患者9の体内(食道E内)に挿入された状態のまま、カテーテルチューブ11の先端付近の湾曲方向の向きを自由に設定することができる。このようにしてカテーテル1では、先端可撓部分11Aを偏向させるための偏向機構が設けられているため、カテーテルチューブ11をその先端付近(先端可撓部分11A)の形状を変化させながら挿通させることができる。したがって、複雑な構造を有する鼻腔内をスムーズにカテーテルチューブ11を通過させ、容易に食道まで挿通させることが可能になる。
【0065】
ここで、このようなカテーテルチューブ11における先端可撓部分11Aには、温度測定用金属リングとしての5つの金属リング111〜115と、それらに個別に電気的接続された5つの温度センサ51〜55とが設けられている。そのため、これらを利用して、食道Eの内部温度に関する情報を測定(監視)することが可能となる。なお、カテーテル1のカテーテルシャフト11はその先端側から患者9の食道Eに挿入されると、金属リング111が食道の下側(胃側)、金属リング115が食道の上側(口腔側)をそれぞれ測定するように配置される。
【0066】
このようにして、カテーテル1を利用して患者9の食道Eの内部温度を監視することで、例えば上記した左房アブレーション術の際に、その食道Eが損傷を受けてしまうおそれを回避することが可能となる。すなわち、アブレーションカテーテルを用いて、例えば心臓の左房後壁を焼灼する場合(左房アブレーション術の際には)、一般に、この左房後壁に近接する食道もが加熱または冷却され、食道が損傷を受けてしまうおそれがある。そこで、このようにして食道Eの内部温度を監視することで事前の対応を取ることができるようになり、そのような損傷のおそれを回避することが可能となる。
【0067】
(B.先端可撓部分11Aの作用)
ここで本実施の形態のカテーテル11では、金属リング111〜115がそれぞれ、前述した厚肉構造を有している(各金属リング111〜115の外径に対する各金属リング111〜115の厚みの比率が、7.5%以上となっている)ことにより、例えば以下の利点が得られる。
【0068】
すなわち、まず、例えば前述した従来の薄肉構造の金属リングでは、その金属リングに伝わった熱がすぐに周りの組織へ放熱されてしまうことから、加熱された(または冷却された)食道E等の内部温度が、温度センサに正確に伝わらないことになる。そのため、例えば、温度センサと金属リングとの接続部が、心臓の焼灼部位に近接する食道Eの部分に位置する場合と、心臓の焼灼部位に近接する食道Eの部位から離れた部位に位置する場合とでは、検出される温度が一致しない。すなわち、温度センサと金属リングとの接続部分が食道E等のどの部分に位置するのかによって、検出される温度のばらつきが大きくなり、食道E等の内部温度を測定する際の測定精度が低下してしまうおそれがある。
【0069】
これに対して本実施の形態の金属リング111〜115では、上記した厚肉構造となっていることから、上記したような、金属リング111〜115に伝わった熱が周りの組織へ放熱される割合が、少なくなる。そのため、温度センサ51〜55と金属リング111〜115との接続部が、心臓の焼灼部位に近接する食道Eの部位から離れた部位に位置する場合であっても、心臓の焼灼部位に近接する食道Eの部位に位置する場合と同様の温度が検出される。すなわち、温度センサ51〜55と金属リング111〜115との接続部が食道E等のどの部位に位置するのかにかかわらず、食道E等の内部温度を測定することが可能になる。したがって、加熱された(または冷却された)食道E等の内部温度が温度センサ51〜55へ正確に伝わるようになる結果、従来の薄肉構造の金属リングの場合と比べ、食道E等の内部温度を測定する際の測定精度が向上することになる。これによって、焼灼による食道E等の温度変化を正確に把握することが可能となり、食道E等が損傷を受けてしまう前に事前に対応し、そのような損傷のおそれを回避することが可能となる。
【0070】
ただし、このように厚肉化された金属リング111〜115の場合、カテーテルチューブ11の先端可撓部分11Aを形成する際に、例えば、以下の手法を採用するのが困難となる。すなわち、例えば、単一構造体としての第2チューブ(外側チューブ)の外周面に対して金属リングを埋設させる手法(例えば、外部から金属リングを叩き込んで第2チューブの外周面に埋設させる手法)を採用するのが困難となる。
【0071】
そこで本実施の形態では、例えば
図2,
図3,
図5に示したように、カテーテルチューブ11の先端可撓部分11Aにおいて、第1チューブ61の外周面上に、前述した各部材が並んで嵌め込み配置されている。すなわち、この第1チューブ61の外周面上に、温度センサ51〜55と電気的接続された金属リング111〜115と、第2チューブ62を構成する分割チューブ部材620〜625とがそれぞれ、カテーテルチューブ11の軸方向(Z軸方向)に沿って並んで嵌め込み配置されている。これにより、上記したように金属リング111〜115が厚肉化されたとしても、この先端可撓部分11Aを形成し易くなる。更に、分割チューブ部材620〜625および金属リング111〜115を嵌め込み配置して形成するため、分割チューブ部材620〜625および金属リング111〜115の外径を変更するだけで、これらの各外周面の形状を容易に変更できる。そのため、後述するように、これら金属リング111〜115および分割チューブ部材620〜625における外周面をそれぞれ、その軸方向(Z軸方向)に沿って平坦状となるように形成する場合でも、形成し易くなる。
【0072】
また、特に本実施の形態では、例えば
図2,
図3,
図5に示したように、5つの金属リング111〜115が、カテーテルチューブ11の軸方向に沿って、4つの分割チューブ部材622,623,624,625を介在して並んで嵌め込み配置されている(並置構造)。すなわち、複数の金属リング111〜115と複数の分割チューブ部材620〜625とが、交互に配置されている。このように、所定の間隔を介して複数の金属リング111〜115が並んで嵌め込み配置されていることから、食道E等の内部温度を測定する際の測定範囲が広がることになり、温度測定の際の利便性が向上する。
【0073】
更に、例えば
図5中の矢印P1,P2、
図6中の矢印P3および
図7C中の矢印P4で示したように、金属リング111〜115および分割チューブ部材621〜625はそれぞれ、以下のようにして上記の並置構造となっている。すなわち、第1チューブ61の外周面上に、先端可撓部分11Aの軸方向(Z軸方向)に沿って、これらの各部材が上記した並置構造となるように順次嵌め込まれたものとなっている。このようにして、これらの各部材が順次に嵌め込み配置されることにより、先端可撓部分11Aが更に形成し易くなる。
【0074】
なお、先端可撓部分11Aがこのような嵌め込み配置の構造となっていることに起因して、万が一、分割チューブ部材621〜625や金属リング111〜115が食道E等の内部で脱落したとしても、以下のことが言える。すなわち、血管等の場合とは異なり、人体への悪影響は小さくて済む(ほとんど無い)と言える。
【0075】
また、本実施の形態の先端可撓部分11Aでは、例えば
図3〜
図6に示したように、第1チューブ61に、温度センサ51〜55と金属リング111〜115との個別の電気的接続を行うための開口Sが形成されている。これにより、この開口Sを介して金属リング111〜115と温度センサ51〜55との個別の電気的接続が容易となるため、先端可撓部分11Aが更に形成し易くなる。
【0076】
ここで、この開口Sは、例えば
図3〜
図6に示したように、第1チューブ61において、金属リング111〜115および分割チューブ部材621〜625の配置領域内に形成されている。具体的には、例えば
図5に示したように、先端可撓部分11Aの軸方向(Z軸方向)に沿って、第1チューブ61の先端から開口Sがスリット状(連続した単一の矩形状)に形成されている。これにより、第1チューブ61上に開口Sが形成し易くなる(前述した手法によって第1チューブ61を削り取る加工が容易となる)ため、先端可撓部分11Aがより一層形成し易くなる。更に、第1チューブ61の先端から開口Sが形成されているため、金属リング111〜115を第1チューブ61の外周面上に嵌め込み配置し易くなる。
【0077】
更に、この先端可撓部分11Aでは、例えば
図2,
図3,
図5に示したように、金属リング111〜115および分割チューブ部材620〜625における外周面はそれぞれ、その軸方向(Z軸方向)に沿って平坦状となっている。このようにして、これらの外周面が軸方向に沿って平坦状となっていることにより、本実施の形態では例えば以下説明する比較例(これらの外周面のいずれか一方が非平坦状となっている場合の例)と比べ、例えば以下の利点が得られる。
【0078】
すなわち、まず、鼻腔や食道E等の内部(内壁)を損傷するリスクが抑えられるため、患者9への負担が軽減される。また、この食道E等の内部温度の測定の際には、その食道E等の内壁に対して金属リング111〜115が「面接触」することになるため、測定の際の温度変化に対する(時間的な)応答性が向上し、測定精度が高まることになる。更に、軸方向に沿って平坦状となっていることから、カテーテルチューブ11(先端可撓部分11A)の細径化も可能となる。
【0079】
ここで
図9は、比較例に係るカテーテル(カテーテル100)におけるカテーテルチューブ101の先端付近(先端可撓部分)の構成(Z−X上面構成)を、模式的に表したものである。この比較例のカテーテルチューブ101では、その先端側に先端チップ200が装着されていると共に、その先端可撓部分に、5つの金属リング201,202,203,204,205がそれぞれ、所定の間隔を介して配置されている。なお、この比較例の金属リング201〜205はそれぞれ、本実施の形態の金属リング111〜115とは異なり、カテーテルチューブ101の外周面上(周囲)に単に置かれている(被覆されている)だけの構造となっている。
【0080】
また、
図9に示したように、このカテーテルチューブ101では、金属リング201〜205の各外周面が、その軸方向(Z軸方向)に沿って非平坦状となっている。具体的には、これらの外周面はそれぞれ、外側に突出した出っ張り形状となっている。したがって、各外周面がこのような非平坦状(出っ張り形状)となっていることにより、この比較例では本実施の形態と比べ、例えば以下のデメリットが生じてしまうことになる。
【0081】
すなわち、まず、出っ張り形状によって鼻腔や食道E等の内部(内壁)を損傷するリスクが高まるため、患者9への負担が増大することになる。また、食道E等の内部温度の測定の際には、その食道E等の内壁に対して金属リング201〜205が「点接触」することになるため、測定の際の温度変化に対する(時間的な)応答性が低下し、測定精度も低下してしまうことになる。更に、軸方向に沿って非平坦形状であることから、カテーテルチューブ101(先端可撓部分)の細径化が困難になってしまうことになる。
【0082】
以上のように本実施の形態では、カテーテルチューブ11の先端可撓部分11Aにおいて、第1チューブ61の外周面上に、前述した厚肉構造を有する金属リング111〜115と分割チューブ部材621〜625とをそれぞれカテーテルチューブ11の軸方向に沿って並んで嵌め込み配置するようにしたので、金属リング111〜115が厚肉化されていても、この先端可撓部分11Aを形成し易くすることができる。よって、カテーテル1を簡易に製造することが可能となる。
【0083】
<変形例>
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0084】
例えば、上記実施の形態において説明した各部材の形状や配置位置、材料等は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、材料等としてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態では、カテーテルチューブ11の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えばカテーテルチューブ11の内部に、首振り部材として、撓み方向に変形可能な板バネが設けられているようにしてもよい。また、カテーテルチューブ11における金属リング111〜115および先端チップ110の配置や形状、個数等は、上記実施の形態で挙げたものには限られない。更に、温度センサ(温度測定用金属リング)や導線の個数はそれぞれ、上記実施の形態で説明したもの(5つ)には限定されず、例えば1〜20個の範囲内で適宜調整される。ただし、前述した理由から、これらの個数はそれぞれ2以上(望ましくは4以上程度)であるのが望ましい。加えて、上記実施の形態では先端チップ110には温度センサが電気的接続されていない例について説明したが、これには限られず、例えば、先端チップ110にも温度センサを電気的に接続し、先端チップ110も温度測定機能を有するようにしてもよい。また、この温度センサとしても、上記実施の形態で説明したように熱電対を用いた構成には限られず、例えばサーミスタ等の他の温度センサを用いるようにしてもよい。加えて、金属リング111〜115と温度センサ51〜55とは、必ずしも電気的に接続されていなくともよい。また、この温度センサは、上記実施の形態で説明した体内の中空器官(例えば食道等)の内部温度を測定するためのものには限られず、他の部位の温度を測定するためのものであってもよい(つまり、他の部位の温度を測定するためのカテーテルとして機能するようにしてもよい)。
【0086】
更に、上記実施の形態では、ハンドル12(ハンドル本体121および回転操作部122)の構成についても具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。
【0087】
加えて、カテーテルチューブ11における先端付近の形状の態様は、上記実施の形態で説明したものには限られない。具体的には、上記実施の形態では、カテーテルチューブ11における先端付近の形状が回転板41の操作に応じて両方向に変化するタイプ(バイディレクションタイプ)のカテーテル1を例に挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、本発明は、例えば、カテーテルチューブ11における先端付近の形状が回転板41の操作に応じて片方向に変化するタイプ(シングルディレクションタイプ)のカテーテルにも適用することが可能である。この場合、前述した操作用ワイヤを1本(1つ)だけ設けることとなる。
【0088】
更に、上記実施の形態では、第1チューブ61に形成される開口Sの形状や配置位置等について具体的に挙げて説明したが、この開口Sの形状や配置位置、個数等については、上記実施の形態で説明したものには限られない。すなわち、例えば、開口が非スリット状であったり、互いに独立した複数個設けられているようにしてもよい。